(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139520
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】磁気的閉じ込め及びファラデーシールド付き誘導結合型プラズマシステム並びに磁気的閉じ込め及びファラデーシールドを提供する方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20170522BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20170522BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20170522BHJP
C23C 16/507 20060101ALI20170522BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20170522BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
H01L21/205
C23C16/507
H01L21/265 F
H01L21/22 E
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-520297(P2014-520297)
(86)(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公表番号】特表2014-527685(P2014-527685A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012046369
(87)【国際公開番号】WO2013009941
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】13/181,210
(32)【優先日】2011年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター エム バンヴェニスト
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトラーナ ラドヴァノフ
(72)【発明者】
【氏名】コステル ビロイウ
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−128887(JP,A)
【文献】
特開平08−203873(JP,A)
【文献】
特開平11−251303(JP,A)
【文献】
特開平09−266096(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/142016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/205
C23C 16/507
H01L 21/265
H01L 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的閉じ込めとファラデーシールドの両方を提供する誘導結合型RFプラズマシステムであって、前記誘導結合型RFプラズマシステムは、
RF電流を発生するRF電源と、
プラズマを生成するために使用し得る作動ガスで充填されるように動作するプラズマチャンバと、
内部表面及び外部表面を有し、その内部表面がプラズマチャンバの壁を形成する誘電体窓と、
電気的に相互接続され且つ一端でアースに接続され平行に配列された磁石からなり、前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して磁気カスプ配置に埋め込まれた永久カスプ磁石アレイと、
前記RF電源と結合され、前記RF電流が循環する平行に配列されたチューブからなるアンテナアレイとを備え、
前記アンテナアレイは前記永久カスプ磁石アレイに対し直角に配向されている、
誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項2】
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石は、マルチカスプ磁場を形成するために、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマに向かう方向及び前記プラズマから離れる方向に交互に磁化されている、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項3】
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石は、アルミニウム、ニッケル及びコバルト(Al−Ni−Co)、サマリウム及びコバルト(Sm−Co)、又はネオジム、鉄及びホウ素(Nd−Fe−B)を含む金属合金からなる永久磁石からなる、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項4】
前記アンテナアレイは前記誘電体窓の前記外部表面と接触して配置されている、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項5】
前記誘電体窓は、さらに、
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石を受け入れるように構成された複数の平行溝を含む第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層に結合され、それによって前記永久カスプ磁石アレイを前記プラズマから分離する前記第1の誘電体層より薄い第2の誘電体層と、
からなる、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項6】
前記誘電体窓を構成する誘電体材料はアルミナ、アルミニウム窒化物、石英又はサファイヤのうちの1つからなる、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項7】
前記磁気カスプ配置は3/8インチ(0.9525cm)のピッチを有する、請求項1記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項8】
磁気的閉じ込めとファラデーシールドの両方を提供する誘導結合型RFプラズマシステムであって、前記誘導結合型RFプラズマシステムは、
RF電流を発生するRF電源と、
プラズマを生成するために使用し得る作動ガスで充填されるように動作するプラズマチャンバと、
内部表面及び外部表面を有し、前記内部表面がプラズマチャンバの壁を形成する誘電体窓と、
電気的に相互接続され且つ一端でアースに接続され平行に配列された磁石からなり、前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して磁気カスプ配置に埋め込まれた永久カスプ磁石アレイと、
前記RF電源と結合され、前記RF電流が循環する平行に配列されたチューブからなるアンテナとを備え、
前記アンテナは前記永久カスプ磁石アレイに対し直角に向いている、
誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項9】
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石は、マルチカスプ磁場を形成するために、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマに向かう方向及び前記プラズマから離れる方向に交互に磁化されている、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項10】
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石は、アルミニウム、ニッケル及びコバルト(Al−Ni−Co)、サマリウム及びコバルト(Sm−Co)、又はネオジム、鉄及びホウ素(Nd−Fe−B)を含む金属合金からなる永久磁石からなる、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項11】
前記アンテナは前記誘電体窓の外部表面と接触して配置されている、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項12】
前記誘電体窓は、さらに、
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石を受け入れるように構成された複数の平行溝を含む第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層に結合され、それによって前記永久カスプ磁石アレイを前記プラズマから分離する前記第1の誘電体層より薄い第2の誘電体層と、
からなる、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項13】
前記磁気カスプ配置は3/8インチ(0.9525cm)のピッチを有する、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項14】
前記誘電体窓を構成する誘電体材料はアルミナ、アルミニウム窒化物、石英又はサファイヤのうちの1つからなる、請求項8記載の誘導結合型RFプラズマシステム。
【請求項15】
誘導結合型RFプラズマシステムに磁気的閉じ込めとファラデーシールドを提供する方法であって、前記方法は、
RF電流を発生するRF電源を設けるステップと、
プラズマを生成するために使用し得る作動ガスで充填されるように動作するプラズマチャンバを設けるステップと、
内部表面及び外部表面を有し、その内部表面が前記プラズマチャンバの壁を形成する誘電体窓を設けるステップと、
平行に配列された磁石からなる導電性の永久カスプ磁石アレイを前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して埋め込むステップと、
前記永久カスプ磁石アレイを一端でアースに接続するステップと、
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石を、マルチカスプ磁場を形成するために、前記プラズマチャンバ内の前記プラズマに向かう方向及び前記プラズマから離れる方向に交互に磁化するステップと、
前記誘電体窓の外部に前記永久カスプ磁石アレイに対し直角に配向され平行に配列されたチューブからなるアンテナアレイを前記RF電源と結合するステップと、
を備える方法。
【請求項16】
前記プラズマチャンバ内に電磁界を誘導するために前記RF電流を前記アンテナアレイを通して循環させるステップをさらに備える、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記アンテナアレイを前記誘電体窓の外部表面と熱接触するように配置するステップをさらに備える、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記永久カスプ磁石アレイの前記平行に配列された磁石は、アルミニウム、ニッケル及びコバルト(Al−Ni−Co)、サマリウム及びコバルト(Sm−Co)、ネオジム、鉄及びホウ素(Nd−Fe−B)又は他の希土類磁石合金を含む金属合金からなる永久磁石からなる、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記誘電体窓を構成する誘電体材料はアルミナ、アルミニウム窒化物、石英又はサファイヤのうちの1つからなる、請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は半導体の製造分野に関する。より詳しくは、本発明は磁気的閉じ込め及びファラデーシールドの両方を提供し得る誘導結合型RFプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマはウェハ又は基板に様々なドーパントを注入して薄膜を堆積又はエッチングする半導体処理に様々な方法で使用されている。このようなプロセスはターゲット基板の表面上又は表面下へのイオンの方向性堆積又はドーピングを含む。他のプロセスはエッチング種の方向性によりエッチングされる溝の品質が決まるプラズマエッチングを含む。
【0003】
一般に、プラズマは、ターゲット基板に注入される電荷キャリアを生成するために、チャンバ内に導入される中性ガスにエネルギーを供給することによって発生される。例えば、プラズマドーピング(PLAD)システムは、概して半導体デバイスの製造に浅い接合が要求される場合に使用され、この場合にはより低いイオン注入エネルギーによりドーパントイオンをウェハの表面近傍に閉じ込める必要がある。このような場合には、注入の深さはウェハに供給されるバイアス電圧に関係する。具体的には、ウェハはプラテン上に置かれ、接地されたプラズマチャンバに対して負電位にバイアスされる。所望のドーパント物質を含有するガスがプラズマチャンバに導入される。プラズマはガス原子及び/又は分子をイオン化することによって発生される。
【0004】
プラズマが発生されると、プラズマとワークピースを含む周囲面との間にプラズマシースが存在する。シースは本質的に、電気的に中性のバルクプラズマに比較して密度の高い正イオン(即ち、過剰の正電荷)を有するプラズマの境界における薄い層である。この場合、プラズマからのイオンがプラズマシースを横切るようにするために、プラテン及び基板(例えばドーピング用のウェハ)は負電圧にバイアスされる。シースを横切る間にイオンはシース間の電位降下に等しい運動エネルギーを獲得する。それゆえ、イオンは供給されたバイアス電圧に比例した深さでウェハ内に注入される。ウェハ内に注入されたイオンドーズにより注入された領域の電気的特性が決まり、ウェハ全域のドーズの均一性により半導体ウェハ上のすべてのデバイスが指定の限界値内で等しい動作特性を有することが保証される。これらのパラメータの各々は、半導体製造プロセスにおいてすべてのデバイスが所望の動作特性を有するようにするために絶対不可欠である。
【0005】
RF駆動プラズマ源は容量結合、誘導結合又は波動結合(ヘリコン波)とすることができる。容量結合では、プラズマ中の電子は概してMHz範囲(0.4−160MHz)内で動作するRF電源により電極の表面に発生される局所的電界によって直接加速される。これらの電界は電極表面に垂直に向いているので、これらの電界はイオンを電極表面又は電極の前に置かれた誘電体表面に衝突するように加速する。電極又は誘電体表面へのイオン衝突はエネルギーを消費し、プラズマ発生用エネルギーの減少を生じる。さらに、電極又は誘電体表面へのイオン衝突は衝突表面の望ましくないスパッタリングを生じる。スパッタリングはエネルギー粒子によるターゲットの衝撃によって固体表面から原子が放出されるプロセスである。容量結合RFプラズマ源は他の欠点も被る。例えば、電極が時々望ましくない不純物をプラズマ中に開放する。さらに、容量結合RFプラズマ源はプラズマ密度が低いため、イオン源応用にはあまり適さない。
【0006】
誘導結合では、プラズマ電子が、マックスウェル−ファラデー方程式:
【数1】
ここで、
は電界を示し、
は磁界を示す;
に従う誘導磁界から生じる電界によって電流搬送アンテナに平行な方向に加速される。アンテナの電流はRF電源により発生される。誘導結合は結合エネルギーの大部分を中性ガスとの電子衝突により消費するために容量結合より効率が良い。アンテナの長さ及びインダクタンスに比例する電圧がアンテナの両端間に発生し、この電圧がプラズマに寄生容量結合を誘起する。寄生容量は互いに近くにある2つの電子構成要素間に存在し得る不所望の容量である。これは前述した望ましくない追加の電力消費及びスパッタリングを生じる。しかしながら、この容量成分はアンテナとプラズマとの間にファラデーシールドを挿入することによって抑えることができる。
【0007】
ファラデーシールドは電界をブロック及び収束するように設計された装置である。このようなファラデーシールドはアンテナ電流に対し直交する接地導体のアレイで構成することができる。ファラデーシールドは磁界を伝播し得るが電界を終端するように設計される。
【0008】
誘導結合型プラズマ発生構成は2つのカテゴリ、即ち内部アンテナを使用する構成及び外部アンテナを使用する構成に分けることができる。内部アンテナ構成では、アンテナ(即ち、誘導カプラ)が局所的な真空フィードスルーによりチャンバ壁を貫通してプラズマチャンバ内に挿入される。外部アンテナ構成では、アンテナは誘電体窓で分離されたプラズマチャンバの外部に置かれる。
【0009】
チャンバ壁へのプラズマ損失を低減するためにプラズマチャンバの内部表面に対して磁気的閉じ込めを提供するのが有利である。これにより、低いRF電力で高いプラズマ密度を駆動することが可能になり、さらに低い中性ガス圧力及び高いプラズマ均一度での動作を提供することが可能になる。磁気的閉じ込めは概して、マルチカスプ磁石をプラズマチャンバ壁のすぐ外に分布させることによって達成される。内部アンテナ構成は外部アンテナ構成より良好な磁気的閉じ込めが可能であるが、ファラデーシールドの使用が不可能になる。外部アンテナ構成ではアンテナが誘電体窓の背後に配置され、これによりプラズマチャンバ表面積の大部分(即ち、誘電体窓)上にマルチカスプ磁気的閉じ込め装置を装着することが妨げられる。
【0010】
従って、内部アンテナ構成と外部アンテナ構成との間には、外部アンテナ構成はプラズマアンテナチャンバ内部でのファラデーシールドの使用が可能であるが、プラズマ閉じ込めのために磁石を設けることが不可能であり、内部アンテナ構成は良好なプラズマ閉じ込めのための磁石の使用が可能であるがファラデーシールドを設けることが不可能であるという二律背反がある。
【0011】
従って、本明細書に開示し、特許請求の範囲に記載する実施形態は上記の従来技術の改良を提供し、誘導結合型RFプラズマ源にファラデーシールドと磁気的閉じ込めの両方を提供する方法及び装置を記載する。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態において、プラズマ損失を低減するための磁気的閉じ込めと、寄生容量成分を抑えるためのファラデーシールドとの両方を提供する誘導結合型RFプラズマシステムを開示する。本誘導結合型RFプラズマシステムは、RF電流を発生するRF電源と、プラズマチャンバと、永久磁石のアレイと、アンテナ(又はアンテナアレイ)とを備える。プラズマチャンバは壁と誘電体窓とからなり、誘電体窓は内部表面及び外部表面を有し、その内部表面がプラズマチャンバの壁を形成する。前記永久磁石アレイの平行導電性永久磁石は電気的に相互接続され且つ前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して埋め込まれ、一方の端でアースに接続される。永久磁石アレイ素子は、マルチカスプ磁場を形成するように、プラズマチャンバ内のプラズマへ向かう方向又はそれから離れる方向に交互に磁化される。前記アンテナアレイはRF電流を循環する平行チューブで構成される。前記アンテナアレイは前記永久磁石の磁化ベクトルに直角方向の平面内に含まれる。
【0013】
別の実施形態において、磁気的閉じ込めとファラデーシールドの両方を提供する誘導結合型RFプラズマシステムは、RF電流を発生するRF電源と、ポンプダウン後にイオン化してプラズマに変換可能な反応ガスで充填されるように動作するプラズマチャンバとを備える。プラズマチャンバは内部表面及び外部表面を有する誘電体窓を含み、その内部表面がプラズマチャンバの壁を形成する。永久カスプ磁石のアレイが電気的に相互接続され、一方の端でアースに接続され、且つ前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して埋め込まれる。アンテナアレイがRF電源と結合され、RF電流を循環する細長いチューブを含む。前記アンテナは永久マルチカスプ磁石の磁化ベクトルに対して直角に配置される。
【0014】
別の実施形態において、誘導結合型RFプラズマシステムに磁気的閉じ込めとファラデーシールドを提供する方法は、RF電流を発生するRF電源を設けるステップと、プラズマを生成するために使用できる作動ガスで充填されるプラズマチャンバを設けるステップとを含む。前記プラズマチャンバは、壁と誘電体窓からなり、前記誘電体窓は内部表面及び外部表面を有し、その内部表面がプラズマチャンバの壁を形成する。導電性の永久カスプ磁石アレイを前記誘電体窓内に前記内部表面に隣接して埋め込む。前記永久カスプ磁石アレイを一端でアースに接続するとともに、前記永久カスプ磁石アレイを、マルチカスプ磁場を形成するために、前記プラズマチャンバ内のプラズマに向かう方向及びプラズマから離れる方向に交互に磁化する。アンテナ(又はアンテナアレイ)をRF電源と結合する。前記アンテナアレイは、前記誘電体窓の外部に、前記永久カスプ磁石アレイに対し直角になるように配置された平行細長チューブを含む。前記アンテナ又はアンテナアレイにRF電流を循環させてチャンバ内に可変の磁場を誘導するとともにガスをイオン化し得る電場を自動的に発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明の一実施形態によるプラズマ源の断面ブロック図を示す。
【
図1b】本発明の一実施形態による誘電体窓構造を示す。
【
図1c】アンテナのアレイと磁石のアレイとの間の配向を示す。
【
図2】
図1aのプラズマ源の一部分の第1のより詳細な断面ブロック図を示す。
【
図3】
図2から90度ずれたプラズマ源の一部分の第2のより詳細な断面ブロック図を示す。
【
図4】マルチカスプ磁界のψ方向の減衰を示すグラフである。
【
図5】磁気マルチカスプ構成の幾何学的特徴を示す誘電体窓の一部分の部分断面ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照して本発明を以下により詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態に具体化することができ、ここに記載する実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が全体的に完全になり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるようにするために提供される。図中、同等の番号は全図を通して同等の素子を示す。
【0017】
前述したように、誘導結合型プラズマ発生構成は2つのカテゴリ、即ち内部アンテナを使用する構成及び外部アンテナを使用する構成に分けることができる。内部アンテナ構成では、アンテナ(即ち、誘導カプラ)が局所的な真空フィードスルーによりチャンバ壁を貫通してプラズマチャンバ内に挿入される。外部アンテナ構成では、アンテナは誘電体窓で分離されたプラズマチャンバの外部に置かれる。
【0018】
チャンバ壁へのプラズマ損失を低減するためにプラズマチャンバの内部表面に対してプラズマ磁気的閉じ込めを提供するのが有利である。これにより、低いRF電力で高いプラズマ密度を駆動することが可能になり、さらに低い中性ガス圧力及び高いプラズマ均一度での動作を提供することが可能になる。磁気的閉じ込めは概して、マルチカスプ磁石をプラズマチャンバ壁のすぐ外に分布させることによって達成される。
【0019】
内部アンテナ構成は外部アンテナ構成より良好な磁気的閉じ込めが可能であるが、ファラデーシールドの使用が不可能である。外部アンテナ構成ではアンテナが誘電体窓の背後に配置され、これによりプラズマチャンバ表面積の大部分(即ち、誘電体窓)上にマルチカスプ磁気的閉じ込め装置を装着することが妨げられる。以下に記載する実施形態は外部アンテナを使用して磁気的閉じ込めとファラデーシールドの両方を達成し得るRF誘導結合をもたらす装置を実証する。
【0020】
図1aは、本発明の一実施形態によるプラズマ源5の断面ブロック図を示す。プラズマチャンバ10は壁7で画定され、壁7はボリューム部を形成するために誘電体窓で密閉される。真空ポンピングは、粗引きポンプで支援されたターボ分子ポンプからなるポンプシステム(図示せず)によってスリット8を通して達成される。スリット8はイオンビームの引き出しにも役立つ。壁7のガスフィードスルー開口部20はプラズマを維持するとともに消費されたガスを補給するために作動ガスをプラズマチャンバ10内に連続的に導入することができる。プラズマ分解に伴うガス副生成物はスリット8を通して連続的に排出される。作動ガスは、所望のドーパント特性に応じて、例えばBF
3、B
2H
6,PF
3,PH
3,GeF
4,AsF
3等とすることができる。
【0021】
誘電体窓12内には、誘電体窓12の外部に配置されるアンテナアレイ16に対して直角に走行する永久カスプ磁石アレイ14が埋め込まれる。永久マルチカスプ磁石アレイ14は導電性で且つ接地され、ファラデーシールドを形成する。アンテナアレイ16はRF電源9により駆動される。RF電源9(RF発生器及び整合回路網を含む)は概して0.4MHz〜160MHzの周波数範囲内で動作する。アンテナアレイ16を流れるRF電流(Irf)により発生される可変磁界はプラズマチャンバ内に局所磁場を誘導する。その結果、自由電子がエネルギーを獲得し、作動ガス原子及び/又は分子をイオン化衝突によりイオン化する。永久カスプ磁石アレイ14内の磁石は、アルミニウム、ニッケル及びコバルト(Al−Ni−Co)、サマリウムコバルト(Sm−Co)、又はネオジム、鉄及びホウ素(Nd−Fe−B)からなる合金とし得るが、これらに限定されない。高い磁束エネルギー製品目的に対しては、希土類合金からなる他の永久磁石を使用してよい。永久磁石の特性は高い磁界強度、高い動作温度及び導電性を示すものとすべきである。
【0022】
図1bは本発明による誘電体窓12の構成を示す。誘電体窓12は2つの層で形成することができる。幅w1の第1の層12aには平行な溝12bが加工されている。溝12bはアレイ14を構成する永久カスプ磁石を受け入れるように構成されている。幅w2の第2の薄い層12cは層12aに結合され、それによって永久カスプ磁石アレイ14をプラズマ11から分離する。誘電体材料はアルミナ、アルミニウム窒化物、石英又はサファイヤとし得るが、これらに限定されない。
【0023】
図1cはアンテナアレイ16と永久カスプ磁石アレイ14の相対的配向を示す。アンテナアレイ16と永久カスプ磁石アレイ14は互いに直角に配向される。
図1cには示されていないが、アンテナアレイ16と永久カスプ磁石アレイ14は、
図1bにつき上述したように、誘電体窓12により分離されている。
図1cは相対的配向を示すことのみを目的としている。導電性の永久カスプ磁石アレイ14はファラデーシールドを形成する。導電性永久カスプ磁石アレイ14はアンテナアレイ16に対して直角に配置されるため、導電性永久カスプ磁石アレイ14はアンテナアレイ16に平行な導電性パスを与えず、従ってRF電源9で駆動されるアンテナアレイ16により与えられるプラズマ内への可変磁場の侵入を妨げない。
【0024】
図2は、
図1aに示すプラズマ源の一部分の詳細な断面ブロック図を示す。この図にはプラズマ源5の一断面が示され、この断面ではアンテナアレイ16を流れるRF電流
18(Irf)は紙面に垂直に向いているが、永久マルチカスプ磁石アレイ14はその磁化ベクトルとともに紙面内にある。同様に、
図3は
図2から90度オフセットした
図1aのプラズマ源5の一部分の詳細な第2の断面ブロック図を示す。この図にはプラズマ源5の一断面が示され、この断面では永久磁石アレイ14の磁化ベクトルとアンテナアレイ16を流れるRF電流18(Irf)の両方が紙面内にある。
【0025】
図2及び
図3を参照すると、アンテナアレイ16はプラズマ源の外部に配置され、プラズマチャンバの誘電体窓12と熱接触させることができる。誘電体窓12は通常動作中にイオン衝撃プロセスにより加熱されるため、アンテナアレイ16を誘電体窓12と熱接触状態に配置することによって、アンテナアレイ16は誘電体窓12の熱の一部分をヒートシンクすることにより冷却機構として作用する。誘電体窓12内に埋め込まれる永久カスプ磁石アレイ14は、アンテナアレイ16に対して直角に、プラズマチャンバの内部表面の近くに配置される。
図1bに示すように、永久カスプ磁石アレイ14は第1の誘電体窓層12aの溝12b内に埋め込まれ、その後第2の誘電体窓層12cに結合される。さらに、永久カスプ磁石アレイ14は導電性の強力な永久磁石で構成することができる。アンテナアレイ16は概してRF電流が循環する平行チューブからなる。代替実施形態では、単一のチューブでアンテナアレイ16を構成することができる。RF電流は概して0.4〜160MHzで動作するRF電源9により発生される。
【0026】
以上説明したように、アンテナアレイ16は誘電体真空窓12によりプラズマ11から分離される。プラズマは誘導結合を利用して発生され、プラズマ電子は、
【数2】
に従う誘導可変磁場により生じる電界によって、アンテナ16を流れる電流に平行な方向に加速される。アンテナアレイ16に対して直角に走行する永久カスプ磁石アレイ14はプラズマ11に向かう方向及びそれから離れる方向に交互に磁化され、それによりプラズマ11内に進入する深さdにつれて強度を失うマルチカスプ磁場13を形成する。永久カスプ磁石アレイ14はまた導電性であり(又は金属被覆で導電性にされ)、電気的に相互接続され、アレイ全体が一端で接地21に結合され、それにより寄生容量成分を抑圧するファラデーシールドを構成する。永久磁石アレイ14はアンテナアレイ16に平行な導電性パスを与えないため、プラズマ内への可変磁場の侵入が妨げられることはない。
【0027】
プラズマチャンバの構成に際して、永久カスプ磁石アレイ14のプラズマ11との直接触は避けるのが望ましい。永久カスプ磁石アレイ14のプラズマとの直接接触はプラズマの汚染及び永久カスプ磁石アレイ14の過熱をもたらし得る。プラズマの汚染はプラズマへの望ましくない不純物の導入をもたらし、プラズマイオンに曝されるワークピース上に望ましくない不純物が堆積される結果をもたらし得る。永久カスプ磁石アレイ14の過熱は磁気強度の不均一な弱化及び/又は最終的な減磁をもたらし得る。
【0028】
永久カスプ磁石アレイ14のプラズマ11との直接接触を避けることは、誘電体真空窓12を2つの層に分割して構成することによって達成される。永久カスプ磁石アレイ14を受け入れる溝が加工された第1の層と、永久カスプ磁石アレイ14をプラズマ11から分離するために第1の層に結合される第2の薄い層を有する。誘電体真空窓12は通常動作中にプラズマ11により加熱されるため、永久カスプ磁石アレイ14は冷却するのが望ましい。
【0029】
永久カスプ磁石アレイ14の冷却は誘電体真空窓12と熱接触させた冷却アンテナアレイによる放熱を実施することによって達成することができる。アンテナアレイ16を誘電体窓12と熱接触配置することによって、アンテナアレイ16は誘電体窓12内の永久カスプ磁石の熱の一部分をヒートシンクして、一種の冷却機構として作用し得る。
【0030】
また、磁気的閉じ込めは、RFエネルギーが
図2−5に示す閉じ込められたプラズマボリューム部内に蓄積されるように、誘電体真空窓12の内部表面に近接してプラズマスキン深さδより小さい距離範囲d以内に生じさせるのが望ましい。プラズマスキン深さδは
図2−5に線15で示され、最大のRF電力を伝達し得るプラズマの深さを言う。プラズマの磁気的閉じ込めは、壁損失を低減し、イオン化効率を自動的に高めるために望ましい。プラズマの均一性については、カスプ磁場がプラズマ内に深く進入しないことが望ましい。磁気的閉じ込めを誘電体窓12の内部表面の近くに維持するために、磁気カスプ配置は小さいピッチを有するものとすべきである。
【0031】
他方、有効な磁気的閉じ込めを達成するためには、永久カスプ磁石アレイ14を誘電体窓12の内部表面にできるだけ近づけて位置させることが重要である。誘電体窓12の近傍に大きな傾斜磁場が発生し、この磁場はプラズマ11内の深いところ(およそスキン深さδに近いところ)で起こるRF電力の蓄積を妨げない。
【0032】
磁場は約1/πのピッチに等しい特性距離を有する永久カスプ磁石アレイ14の表面から指数的に減衰する。
図4はチャンバ壁に直角の方向(ψ)におけるマルチカスプ磁場の減衰を示すグラフであり、(d)はカスプ磁場が荷電粒子の捕捉に有効でなくなる点の距離であり、(δ)はプラズマスキン深さであり、最大の電力蓄積が生じる距離である。
【0033】
大ざっぱに言って、最適な磁気的閉じ込めは、磁気カスプ配置のピッチが磁石の幅に等しいときに得られる。例えば、一例において、3/8インチの磁石幅及び3/8インチのピッチの場合には、2630MGOeの磁気エネルギー積を有するSm−Co磁石は磁石表面から約2.5cmの位置で約500ガウスの磁界強度を生じる。これは次式:
【数3】
から導出され、ここで、Bは窓に直角の方向の距離ψにおける磁界強度、B
0は磁石表面における磁界強度、Δは磁気カスプ配置のピッチ、及びwは永久磁石の幅である。
【0034】
図5は磁界強度及び侵入深さを導く幾何学的変数を示す。距離(ψ)における磁界強度は各々幅wの連続する永久磁石14間の距離として示されるピッチ(Δ)を用いて計算される。連続する永久磁石14の交互の磁極の間に磁力線が示され、これらの磁力線が誘電体窓を通ってプラズマチャンバ10内に侵入する。
【0035】
本発明は特定の実施形態につき開示したが、記載した実施形態に対して多くの修正、変更及び変形が添付の特許請求の範囲において特定される本発明の範囲から逸脱することなく考えられる。従って、本発明は開示の実施形態に限定されず、下記の請求項の言語及びその同等物で特定される全範囲を含むことを意図している。