【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図11の例(特許文献1)ではギャッシュ7の底面の、半径方向中心(回転軸)側から外周側へかけての半径方向に対する傾斜が緩く、エンドミルの端面に平行に近いため、ギャッシュ7からの切屑排出効果はあまり期待できない。またギャッシュ7に連続する刃溝8は半径方向外周寄りに偏って形成されているため、ギャッシュ7からの刃溝8への誘導効果も期待できないと考えられる。
【0010】
図11の例ではまた、外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねているため、兼ねない場合より
図7−(b)の実線で示すように刃溝8(チップポケット)の容積を幾らか大きく取ることができる。但し、刃溝8が半径方向外周寄りに偏って形成されているため、刃溝8の容積を稼ぐ利点は生かされていない。チップポケット(CP)はギャッシュの容積と刃溝の容積の和であり、この容積が大きい程、切屑の蓄え能力と排出効果が高いと言える。
図7−(b)中、実線は外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねる場合の断面を示し、二点鎖線は外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねない場合の断面を示している。
【0011】
特許文献2ではコーナ刃12が生成した切屑のギャッシュ7側への回り込みを阻止するために、ギャッシュ7と切屑排出溝4との間に介在する凹部10のギャッシュ7側の面に、隆起した壁面13を形成している(段落0019)。このため、底刃9が生成し、ギャッシュ7内に落下した切屑の切屑排出溝4への排出効果を凹部10が阻害する可能性があり、ギャッシュ7内からの切屑排出溝4への切屑の誘導効果は得られないと考えられる。
【0012】
本発明は上記背景より、特許文献1の例に比べて顕著にギャッシュからの切屑排出効果と刃溝への誘導効果を高める形態の多刃エンドミルを提案するものである。
【0013】
従来から3軸や5軸のNC制御の工作機械を用い、湾曲した表面を有する前記のインペラーの表面を高速度で高送りの切削加工を行ったときに、生成された切屑を短時間でエンドミルから排出することが困難になり、切削加工を阻害する事態が発生することがあった。この背景から、インペラーの表面を高速度で高送りの切削加工を行うことができる多刃エンドミルの開発が要望されていた。ブレード等の難削性合金部材を対象にする場合も同様である。
【0014】
この点を受け、本発明の基本的な目的は難削性合金部材に対して高送りの切削加工を実施しても上記した切屑の排出性が良好な、切れ刃部の構造を改良した多刃のラジアスエンドミルを提供することにある。
【0015】
詳しく言えば、本発明は3軸や5軸のNC工作機械に装着される多刃のラジアスエンドミル(多刃エンドミル)を用いながら、従来、困難であった、難削性合金の薄肉部材からなり、湾曲した表面を有するインペラー等の難削性合金部材の表面を、一本の多刃エンドミルで高送りの仕上げ用の切削加工を従来よりも高能率(高速度加工)で長時間、行えるようにすることを目的とする。併せて高送りの切削加工を行っても、生成される切屑の排出を良好にすることを目的とする。
【0016】
なお、「多刃」とは、
図1、
図2に示すように工具本体(多刃エンドミル)の先端部の回転軸O側(半径方向中心側)からシャンク部2aの半径方向外周側へかけて底刃6と、底刃6に連続するコーナR刃5と、コーナR刃5に連続する外周刃4とから構成される切れ刃3を複数枚、特に6枚以上、備えるラジアスエンドミルを言う。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明の多刃エンドミルは、シャンク部の先端部に形成され、回転軸O側から前記シャンク部の半径方向外周側へかけて底刃と、底刃に連続するコーナR刃と、コーナR刃に連続する外周刃とから構成される複数枚の切れ刃を備えた切れ刃部と、前記回転軸O回りの回転方向Rに隣接する前記切れ刃間の、前記半径方向の中心側と外周側にそれぞれ形成されたギャッシュと刃溝とを有する多刃エンドミルであって、
前記切れ刃のすくい面が前記半径方向中心側から外周側へかけて前記底刃のすくい面と、この底刃のすくい面に隣接し、前記底刃のすくい面と異なる面を形成し、前記コーナR刃のすくい面を兼ねる前記外周刃のすくい面とから構成され、
前記切れ刃の逃げ面が前記半径方向中心側から外周側へかけて前記底刃の逃げ面と、この底刃の逃げ面に隣接する前記コーナR刃の逃げ面と、このコーナR刃の逃げ面に隣接する前記外周刃の逃げ面とから構成され、
前記刃溝が前記外周刃のすくい面と、これに回転方向R前方側に対向する刃溝面と、前記外周刃のすくい面と前記刃溝面との境界に形成された底面とから構成され、
前記底刃のすくい面と前記外周刃のすくい面との境界に位置する凸の稜線と、前記底刃のすくい面と前記刃溝の底面との境界に位置する凸の稜線との交点が、前記コーナR刃の逃げ面と前記底刃の逃げ面との境界より前記半径方向中心側へ入り込んでいることを特徴とする。
【0018】
請求項1における「半径方向」とは、回転軸Oに直交する断面上の回転軸Oを通る放射方向を言い、ギャッシュ7は切れ刃部2bをシャンク部2aの先端部側、すなわち多刃エンドミル1の先端部1a側からシャンク部2a側に見たとき、半径方向の回転軸O(中心)寄りの、回転方向Rに隣接する底刃6、6の逃げ面6b、6b間に形成される。刃溝8は半径方向の外周側の、回転方向Rに隣接するコーナR刃5、5の逃げ面5b、5b間に形成される。「シャンク部2aの先端部」は「多刃エンドミル1の先端部1a」と同義である。
【0019】
「外周刃4のすくい面4aが底刃6のすくい面6aと異なる面を形成する」とは、外周刃4のすくい面4aと底刃6のすくい面6aとが同一面内にないことを言う。「外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねる」とは、外周刃4のすくい面4aが外周刃4からコーナR刃5に跨って形成されることを言うが、外周刃4のすくい面4aは後述のように外周刃4から底刃6にまで跨る。
【0020】
刃溝8は外周刃4のすくい面4aと、これに多刃エンドミル1の回転方向R前方側に対向する刃溝面8aとで構成されるが、外周刃4のすくい面4aと刃溝面8aとの境界には刃溝8の底になる底面8bが形成される(請求項3)。底面8bは回転方向R(多刃エンドミル1の周方向)に幅を持ち、
図5に示すように幅方向(回転方向R)両側の、底面8bと外周刃4のすくい面4aとの間に境界線10aが形成され、底面8bと刃溝面8aとの間に境界線10bが形成される。境界線10aと境界線10bは共に凹の稜線をなす。底面8bは多刃エンドミル1を半径方向外周側から中心側へ見たとき、下に凸の曲面状、もしくはV字状等に形成される場合と、平坦面に形成される場合がある。
【0021】
「底刃6のすくい面6aと外周刃4のすくい面4aとの境界に位置する凸の稜線64」とは、
図5、
図6に示すように半径方向に連続するコーナR刃5と底刃6をなす凸の稜線がコーナR刃5から底刃6に移行するときに、底刃6に面するギャッシュ面7a側(底刃6のすくい面6a側)へ向かって分岐した稜線を指す。稜線64はコーナR刃5の逃げ面5bと底刃6の逃げ面6bとの境界付近からギャッシュ面7aへ分岐し、底刃6のすくい面6aと外周刃4のすくい面4aとの境界線になる。
【0022】
「底刃6のすくい面6aと刃溝8の底面8bとの境界に位置する凸の稜線68」とは、刃溝8の底面8bと刃溝面8aとの境界線10bの延長線上にあり、境界線10bから、ギャッシュ7に面する底刃6(底刃6のすくい面6a側)側へ向かう稜線を指す。稜線68は底刃6のすくい面6aと刃溝8の底面8bとの間の境界線になる。稜線68は外周刃4のすくい面4aに回転方向R前方側に対向する刃溝面8aとギャッシュ7の底面7bとが交わる位置から底刃6側へ向かい、稜線64と互いに交差する。ギャッシュ7の底面7bは底刃6のすくい面6aとこれに回転方向R前方側に対向するギャッシュ面7aとの間の境界に形成される(請求項2)。
【0023】
稜線64は外周刃4のすくい面4aを底刃6のすくい面6aから区画する(区切る)ため、コーナR刃5からギャッシュ面7a側へ向かって分岐することで、
図5、
図6に示すように外周刃4のすくい面4aを底刃6のすくい面6a側へ入り込ませる(食い込ませる)。同様に稜線68は刃溝8の底面8bを底刃6のすくい面6aから区画する(区切る)ため、境界線10bから底刃6側へ向かうことで、刃溝8の底面8bを底刃6のすくい面6a側へ入り込ませる(食い込ませる)。
【0024】
外周刃4のすくい面4aと刃溝8の底面8bは刃溝8を構成するため、外周刃4のすくい面4aと刃溝8の底面8bが共に底刃6のすくい面6a側へ入り込むことで、ギャッシュ7内に存在する切屑の刃溝8内への落下を誘導させる効果が生まれ、ギャッシュ7内からの切屑の排出性が向上する。
【0025】
「底刃6のすくい面6aと外周刃4のすくい面4aとの境界に位置する凸の稜線64と、底刃6のすくい面6aと刃溝8の底面8bとの境界に位置する凸の稜線68の交点66が、コーナR刃5の逃げ面5bと底刃6の逃げ面6bとの境界より半径方向回転軸O側へ入り込んでいる」とは、
図3、
図6に示すように切れ刃部2bをシャンク部2a(多刃エンドミル1)の先端部1a側から回転軸O方向に見たときに、稜線64と稜線68の交点66がコーナR刃5の逃げ面5bと底刃6の逃げ面6bとの境界(境界線)より半径方向回転軸O側へ入り込んでいることを言う。
図3、
図9中、コーナR刃5と底刃6に接近している破線は凸の稜線64を示している。
【0026】
図5等では半径方向に隣接する底刃6の逃げ面6bとコーナR刃5の逃げ面5bとの間、及びコーナR刃5の逃げ面5bと外周刃4の逃げ面4bとの間に境界を示す線が表されているが、実際にはこの線は肉眼では見えないこともある。例えば隣接する底刃6の逃げ面6bとコーナR刃5の逃げ面5b、及びコーナR刃5の逃げ面5bと外周刃4の逃げ面4bが、コーナR刃5の逃げ面5bをその面内方向(周方向)に見たときのクロソイド曲線のように隣接する曲面(平面を含む)の曲率が次第に変化するような場合には境界線は見えない。曲率が変化する部分には境界線が見えることもある。
【0027】
「稜線64と稜線68の交点66が底刃6の逃げ面6bとコーナR刃5の逃げ面5bとの境界よりシャンク部2aの半径方向の回転軸O側へ入り込んでいること」は、稜線64と稜線68の交点66がコーナR刃5の逃げ面5bと底刃6の逃げ面6bとの境界より回転軸O側に位置していることであり、稜線64と稜線68が半径方向外周側から中心側(回転軸O)へ向かって互いに交差する線をなしていることである。
【0028】
稜線64と稜線68の交点66が逃げ面6bと逃げ面5bの境界よりシャンク部2aの半径方向の回転軸O側へ入り込んでいることで、多刃エンドミル1を先端部1a側から見れば、刃溝8が半径方向外周側から中心側(回転軸O側)へかけ、コーナR刃5から底刃6に跨るように形成されるため、前記のようにギャッシュ7から刃溝8への切屑の誘導効果が得られる。同時に、
図7−(b)に実線で示すように外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねることによる刃溝8の容積を稼ぐ利点が生かされるため、刃溝8の容積、すなわちチップポケット(CP)の容積を拡大することが可能になる。刃溝8の容積の拡大は切屑の蓄え能力と排出効果が向上することを意味する。チップポケット(CP)はギャッシュ7を形成する空間の容積と刃溝8を形成する空間の容積の和を言う。
【0029】
刃溝8が半径方向外周側から中心側(回転軸O側)へかけ、コーナR刃5から底刃6に跨って形成されることで、外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねることによる、刃溝8(チップポケット)の容積を大きく取ることの利点が生かされる。外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねることで、刃溝8の容積を大きく取れることは、前記のように
図7−(b)に示すようにコーナR刃5に直交する断面で見たときに、コーナR刃5の逃げ面5bと刃溝8の底面8bが単一の平面、もしくは曲面であるすくい面4aのみで結ばれるため、二点鎖線で示すコーナR刃5のすくい面がある場合より刃溝8側に突出する分の体積が不在になることによる。
図7−(b)は
図5のz−z線の断面を示している。
【0030】
外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねることは、コーナR刃5のすくい面を形成しないことであるから、外周刃4のすくい面4aを含め、切れ刃3のすくい面全体を形成(研削加工)する上での加工の手間を軽減し、切れ刃3のすくい面全体の加工性を高める利点を得る意味もある。
【0031】
コーナR刃5のすくい面5aが形成される場合には、
図7−(b)に示すようにコーナR刃5と境界線10aを結ぶ直線の刃溝8側に二点鎖線のハッチングで示す突起部分が形成される。これに対し、請求項1では外周刃4のすくい面4aがコーナR刃5のすくい面を兼ねることで、ハッチングの突起部分が形成されないため、すくい面5aがある場合の突起部分だけ、刃溝8(チップポケット)の容積が増すことになる。
【0032】
稜線64と稜線68の交点66が底刃6の逃げ面6bとコーナR刃5の逃げ面5bの境界よりシャンク部2aの半径方向の回転軸O側へ入り込んでいることの結果として、外周刃4のすくい面4aは底刃6のすくい面6aに対し、相対的に回転方向R後方側に位置する。すくい面4aがすくい面6aに対して回転方向R後方側に位置することで、ギャッシュ7内に存在する切屑が多刃エンドミル1の回転に伴い、刃溝8内に入り込み易くなる上、刃溝8内の切屑が多刃エンドミル1外へ排出され易くなるため、この点(すくい面4aがすくい面6aの回転方向R後方側に位置すること)からもギャッシュ7及び刃溝8からの切屑排出性の向上が図られることが言える。
【0033】
前記のように刃溝8の底面8bは回転方向Rに幅を持つが、底面8bが幅を持つことで、幅がない場合より、底刃6やコーナR刃5等、切れ刃3のいずれかから直接、またはギャッシュ7から刃溝8内に落下した切屑を停滞しにくくする効果がある。同様にギャッシュ7内に落下した切屑の排出性をよくする上でも、ギャッシュ7の底面7bには回転方向Rに幅が与えられる。この場合、ギャッシュ7と刃溝8の底面7b、8bが共に幅を持つが、刃溝8内での切屑の停滞があれば、ギャッシュ7内からの切屑の排出が阻害される可能性がある。このことから、ギャッシュ7内に存在する切屑の刃溝8への排出の効率を上げるには、ギャッシュ7からの排出先での排出性がよいことが条件になるため、相対的には刃溝8の底面8bの幅がギャッシュ7の底面7bの幅より大きく確保されていることが適切である(請求項2)。
【0034】
ギャッシュ7の底面7bと刃溝8の底面8bに幅を持たせることは
図11に示す例においても見られるが、この例では刃溝8の底面8bの幅がギャッシュ7の底面7bの幅より相対的に小さいため、刃溝8内で切屑の停滞が生じたときにギャッシュ7からの切屑の排出が阻害されるか、排出が停滞する可能性がある。これに対し、刃溝8の底面8bの幅がギャッシュ7の底面7bの幅より大きい場合には(請求項2では)、刃溝8内で切屑の停滞が生じにくいため、ギャッシュ7からの切屑の排出が阻害される可能性と、排出が停滞する可能性が低下する。
【0035】
外周刃4の逃げ面4bは
図2、
図10に示すようにシャンク部2aの表面2cに隣接し、表面2cに連続した面をなすため、「稜線64と稜線68との交点66が逃げ面6bと逃げ面5bとの境界より半径方向中心側へ入り込んでいること」は「外周刃4のすくい面4aが、底刃6の逃げ面6bからシャンク部2aの表面2cにまで跨っていること」とも言い換えられる。外周刃4のすくい面4aが底刃6の逃げ面6bからシャンク部2aの表面2cにまで跨っていることで、ギャッシュ7から刃溝8を経由しての切屑の、多刃エンドミル1外への排出性と排出速度が向上することが言える。
【0036】
請求項1では「底刃6のすくい面6aと外周刃4のすくい面4aとの境界の凸の稜線64と、底刃6のすくい面6aと刃溝8の底面8bとの境界の凸の稜線68との交点66が、底刃6の逃げ面6bとコーナR刃5の逃げ面5bとの境界より回転軸O側へ入り込んでいること」の要件を備えることで、底刃6が発生させた切屑がギャッシュ7を経由して刃溝8へ落下する分と、直接、刃溝8に落下する分とに分割されることになる。このことが、ギャッシュ7内に切屑が溜まりにくく、切屑のギャッシュ7からの排出効果とギャッシュ7からの刃溝8への誘導効果が発揮されることの根拠になっている。
【0037】
前記のように刃溝8の底面8bの幅方向両側には外周刃4のすくい面4aとの境界線10aと刃溝面8aとの境界線10bが凹の稜線として形成される。ここで、特に
図5に示すように底面8bと外周刃4のすくい面4aとの境界線10aが、すくい面6aとすくい面4aとの境界の凸の稜線64と、すくい面6aと底面8bとの境界の凸の稜線68との交点66を通る場合(請求項3)には、外周刃4のすくい面4aと刃溝8の底面8bとで谷を形成するため、ギャッシュ7内に存在する切屑が刃溝8内に落下し易くなり、ギャッシュ7からの刃溝8への誘導効果が更に向上することが言える。
【0038】
また外周刃4のすくい面4aと、これに回転方向R前方側に対向する刃溝面8aとから構成される刃溝8の空間の容積は、刃溝面8aが、ギャッシュ7の底面7bに回転方向R後方側に接する内側面81aと、内側面81aと異なる面を形成し、ギャッシュ面7aに半径方向に接する外側面82aとの少なくとも2面を持つことで(請求項4)、更に増大する。ギャッシュ面7aは底刃6のすくい面6aに回転方向R前方側に対向する面である。この場合の外側面82aは
図8に示すように内側面81aに対し、多刃エンドミル1のシャンク部2a側から先端部1a側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜し、または半径方向中心側から外周側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜し、内側面81aと外側面82aとの間には境界線88として凸の稜線が表れる。「少なくとも2面を持つ」とは、刃溝面8aが3面以上の面を持つ場合があることを言う。
【0039】
「外側面82aが多刃エンドミル1のシャンク部2a側から先端部1a側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜し」とは、多刃エンドミル1を側面から半径方向中心側へ見たときの外側面82aの傾斜状況を述べており、「半径方向中心側から外周側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜し」とは、多刃エンドミル1を先端部1a側からシャンク部2a側へ見たときの外側面82aの傾斜状況を述べている。
【0040】
「内側面81aがギャッシュ7の底面7bに回転方向R後方側に接する」とは、前記した凸の稜線68の延長線上に位置し、境界線10bから分岐した境界線を挟んで底面7bと内側面81aとが隣接し、内側面81aが底面7bに対し、相対的に回転方向R後方側に位置していることを言う。この底面7bと内側面81aとの間の境界線は前記した、すくい面6aと底面8bとの境界に位置する凸の稜線68の一部になっているため、底面7bと内側面81aとは凸の稜線68を挟んで隣接する。
【0041】
「外側面82aがギャッシュ面7aに半径方向に接する」とは、ギャッシュ面7aと外側面82aが境界線を挟んで隣接し、外側面82aがギャッシュ面7aに対し、相対的に半径方向外周側に位置していることを言う。このギャッシュ面7aと外側面82aとの間の境界線はギャッシュ面7aと刃溝面8aとの間の境界線78であり、この境界線78は前記した内側面81aと外側面82aとの間の境界線88である凸の稜線に連続する。
【0042】
「外側面82aが内側面81aに対し、シャンク部2a側から先端部1a側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜する」とは、
図8に示すように外側面82aが内側面81aに対し、刃溝8の底面8b側から、回転方向R前方側に位置するコーナR刃5の逃げ面5b側へかけて回転方向R後方側から前方側へ向かって傾斜することである。
【0043】
「外側面82aが内側面81aに対し、半径方向中心側から外周側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜する」とは、外側面82aが内側面81aに対し、多刃エンドミル1の半径方向中心側から外周側へかけて回転方向R後方側から前方側へ向かって傾斜することである。結果として外側面82aは刃溝8の底面8b側から、回転方向R前方側に位置するコーナR刃5の逃げ面5b側へかけて、切れ刃3の背面(回転方向R後方側の面)側の面を薄く切り取るように、あるいは削ぎ落とすように形成される。
【0044】
外側面82aは内側面81aに対し、シャンク部2a側から先端部1a側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜すると同時に、半径方向中心側から外周側へかけて回転方向R後方側から前方側へ傾斜する場合もある。
【0045】
請求項4では刃溝面8aが内側面81aと、内側面81aと異なる面を形成する外側面82aとの少なくとも2面を持つことで、外周刃4のすくい面4aの先端部1a側の位置と、これに対向する刃溝面8aの先端部1a側の位置との間の周方向(回転方向R)の距離が拡大するため、刃溝8の空間の容積が増大し、ギャッシュ7の容積と合わせたチップポケット(CP)の容積が増大する。刃溝8(チップポケット)の空間の容積の増大により切屑の排出性が一層、向上する利点が得られることになる。