(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139529
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】透析液流制御
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
A61M1/16 117
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-527677(P2014-527677)
(86)(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公表番号】特表2014-529453(P2014-529453A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012066978
(87)【国際公開番号】WO2013030350
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】102011053200.5
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/529,965
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599117152
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッパーシュミット パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ガーゲル アルフレート
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−504181(JP,A)
【文献】
特開平03−173569(JP,A)
【文献】
特表2009−539440(JP,A)
【文献】
特表2001−504735(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074603(WO,A1)
【文献】
特開2001−218837(JP,A)
【文献】
特表2001−511029(JP,A)
【文献】
特表2005−537840(JP,A)
【文献】
特開2001−029456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − 1/16
A61M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液流を制御する装置であって、
血液を灌流する血液室と、半透過性の膜により前記血液室と隔離されており、透析液が灌流される透析室とを備えている透析器と、
前記透析室を通過する透析液流を生成する手段と、
前記透析器を通じた物質交換の尺度である制御因子を特定するユニットと、
前記制御因子を特定するユニットにより特定された前記制御因子に基づいて、前記透析器の前記透析室を通過する前記透析液流を制御する制御設備と、
を備えており、
前記制御設備は、前記制御因子の値の変化量が臨界域を上回ると前記透析液の流量を増加させ、前記制御因子の値の変化量が前記臨界域を下回ると前記透析液の流量を減少させるように、前記透析液流を生成する手段に指示を行ない、
前記制御因子は、浄化能力が存在する場合に前記透析液流が増加するとその値が増加し、かつそのゲインが常に減少するようなパラメータであり、
前記制御因子は、
前記透析室を通過する前記透析液流を変化させて前記透析器の下流における前記透析液または前記血液の特性の変化を検出することにより、あるいは
前記透析器の上流において前記透析液または前記血液の特性を連続的に変化させて前記透析器の下流における当該透析液または血液の特性の変化を検出することにより、
予め特定される、装置。
【請求項2】
前記透析室を通過する前記透析液流の流量を変化させて前記透析器の下流における前記透析液または血液の特性を検出することによって前記制御因子が特定され、前記制御因子を特定するユニットは、前記流量の変化の前後に対応する当該透析液または血液の特性の複数の値から得られる比または差によって前記制御因子を特定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記透析器の上流において前記透析液または血液の特性を連続的に変化させて前記透析器の下流における当該透析液または血液の特性を検出することによって前記制御因子が特定され、前記制御因子を特定するユニットは、前記透析器の上流および下流における当該透析液または血液の特性より得られる比または差によって前記制御因子を特定する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記透析液または血液の特性が導電率であり、前記透析器の上流および下流における前記透析液と前記血液の少なくとも一方の導電率の値を特定する手段をさらに備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記透析液または血液の特性が温度であり、前記透析器の上流および下流における前記透析液と前記血液の少なくとも一方の温度の値を特定する手段をさらに備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記制御因子を特定するユニットは、前記透析液流より得られる前記制御因子の微分値によって前記制御因子の値の変化を特定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記臨界域は、毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%の値の許容誤差に対応している、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置を、治療処置の対象となる血液が前記血液室を潅流するように備えている、体外血液治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置における透析液流を制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで用いられる透析装置という語は、特に体外血液治療用の装置を指し、例えば血液透析や限外ろ過用に構成された装置を指す。
【0003】
血液透析中は、透析装置における患者の血液は、透析器の血液室を通じて体外血液循環に導かれる。血液室は、透析器の透析室から半透過性の膜によって隔てられている。透析室は、透析液により灌流されている。透析液は、血液電解質を含んでおり、その濃度は、健常者の血液中における濃度に対応している。治療中は、血液が半透過性の膜の一方の側を所定の流量で流れ、透析液が当該膜の逆側を所定の流量で流れる。血液と透析液の流れる向きは互いに逆であることが一般的である。尿により排出されるべき物質は、血液室から膜を通じて透析室へ拡散する。同時に、血液と透析液中に存在する電解質は、高濃度の室から低濃度の室へ向かって拡散する。
【0004】
また、血液は、透析器の半透過性膜に圧力勾配を形成することにより、脱水されうる。結果として、透析室の側へ、血液から水が押し出される。この処理は、限外ろ過と呼ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透析装置すなわち血液治療における透析器の有効性は、透析液流の大きさ、すなわち透析液の流量にも依存している。透析液の流量が高ければ、血液治療の有効性を最大限にできるが、透析液およびエネルギーの消費増にもつながる。
【0006】
したがって、血液治療の効果をできるだけ高めつつ、透析液とエネルギーの消費を許容範囲内に抑えるために、透析装置における透析液流の量を特定することが望まれており、これが本発明の目的である。また、そのような透析液流の量の特定が、使用される透析器の種別、血流、特定の患者パラメータに係る知識(例えば、再循環の存在)に関わりなくなされうることがさらに望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、透析液流を制御する方法において、透析器の血液室が血液で灌流されるとともに、半透過性の膜により当該血液室と隔離された透析室が透析液で灌流される。透析液流を制御するために、透析液または血液の特性変化、あるいは透析液の流量変化に起因する制御因子の値の変化が特定される。制御因子は、透析器を通じた物質交換、すなわち透析器の有効性の尺度である。制御因子の値の変化が臨界を超えると前記透析液の流量が増加される。他方、制御因子の値の変化が当該臨界に達しないと透析液の流量が減少される。
【0008】
本発明によれば、透析液流を制御する装置は、
血液を灌流する血液室と、半透過性の膜により前記血液室と隔離されており、透析液が灌流される透析室とを備えている透析器と、
前記透析室を通過する透析液流を生成する手段と、
前記透析器を通じた物質交換、すなわち前記透析器の有効性の尺度である制御因子を特定するユニットと、
前記透析液または前記血液の特性変化、あるいは前記透析液の流量変化に起因して制御因子の値が変化し、臨界から外れると、前記透析器の前記透析室を通過する前記透析液流を制御する制御設備と、
を備えており、
前記制御設備は、前記制御因子の値の変化が前記臨界を上回ると前記透析液の流量を増加させ、前記制御因子の値の変化が前記臨界を下回ると前記透析液の流量を減少させるように、前記透析液流を生成する手段に指示を行なう。
【0009】
前記制御因子の値の変化が前記透析液の流量変化に起因する場合、前記制御因子は、前記流量変化の前後に対応する複数の値から得られる比または差を含んでいることが好ましい。この場合、前記複数の値は、前記透析器の下流における前記透析液または前記血液の特性値である。すなわち、前記比または差を特定するために、前記透析液流の変化は既に生じている前記透析器の出口における前記透析液または前記血液の特性値と、前記透析液流の変化が未だ生じていない前記透析器の入口における前記透析液または前記血液の特性値とが使用される。
【0010】
前記制御因子の値の変化が前記透析液または前記血液の特性の変化に起因する場合、前記制御因子は、前記透析器の上流および下流における当該特性より得られる比または差を含んでいることが好ましい。すなわち、透析器の下流における透析液または血液の特性値と、透析器の上流における透析液または血液の特性値とにより、透析液の特性変化について比または差が特定されうる。したがって、血液の特性変化についても同様に、透析器の下流における透析液または血液の特性値と、透析器の上流における透析液または血液の特性値とにより、比または差が特定されうる。制御因子は、透析器の上流における透析液の特性値に対する透析器の下流における透析液の特性値の比を含んでいることが好ましい。制御因子に係る表現に含まれている「差」は、透析器の下流における透析液の特性値および透析器の上流における透析液の特性値から得られることが好ましい。
【0011】
前記透析液の前記特性は、当該透析液の導電率または温度であることが好ましい。また、前記血液の前記特性は、当該血液の導電率または温度であることが好ましい。
【0012】
前記制御因子の値の変化を特定するために、前記透析液または前記血液の前記特性が、少なくとも時間連続的に変えられることが好ましい。前記制御因子自身の値の変化は、前記透析液流より得られる前記制御因子の微分値により特定されることが好ましい。
【0013】
前記臨界は、毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%の値の許容誤差に対応していることが好ましい。ここで前記許容誤差の範囲は、毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の1%であることが好ましい。この場合、臨界が毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の10%である場合、当該臨界の範囲は、毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の9.5%から10.5%となる。あるいは、前記許容誤差の範囲はゼロとされうる。この場合、臨界は、毎分100mlの透析液流量の変化に対する前記制御因子の値の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%の値に一致する。
【0014】
本発明に係る透析液流を制御する装置は、体外血液治療装置(例えば透析装置)に用いられることが好ましい。
【0015】
以下、図面と関連付けて本発明がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】毎分800mlの透析液流について、注入濃度の変化あるいは透析液に加える熱の変化に伴う、透析器の上流(グラフC1)と下流(グラフC2)における透析液の導電率(左縦軸)と温度(右縦軸)の経時変化を示す図である。
【
図2】透析液流量の関数として、透析器の上流と下流における透析液の導電率または温度の値の振幅比(左縦軸に対応するグラフC3)、および振幅比の相対変化(右縦軸に対応するグラフC4)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上式で表される制御因子は、透析器の有効性の尺度として使える。ここでQ
dは、透析器中の透析液流を示し、A
d,inとA
d,outは、透析液の特性(例えば、透析器の上流および下流における透析液の導電性や温度)を示す。A
d,out(0)は、浄化能力が消失した場合(例えば血流が消失した場合)の透析液の特性値を示す。浄化能力が存在する場合は、透析液流が増加すると制御因子k
dが増加する。しかしながら、制御因子k
dのゲインは常に減少する。すなわち、透析液流の増加により透析液とエネルギーの消費が急速に増加すると、透析器の有効性をさらに高めようとしても、ある臨界値からの透析液流のさらなる増加が望めなくなる。
【0019】
制御因子k
dを透析液流量Q
dで割った商を透析液流量Q
dで微分すると、制御因子k
d/Q
dの変化が得られる。すなわち、透析液流量Q
dの変化による透析器の有効性の規格化ゲインが得られる。
【0021】
上式においては、透析器の上流における透析液の特性A
d,inが透析液流量Q
dに依存していないことがわかる。当該透析液の特性が、例えば導電性である場合、例えば透析器に注入される電解液の量が変化しても、透析器の上流における透析液の導電性の値は一定に維持されうる。この事は、後述するように、特に制御因子の値の変化を特定するために透析液の特性が連続的に変更される場合において重要である。
【0022】
また、制御因子k
dを透析液流量Q
dで割った商を透析液流量Q
dで微分する式においては、A
d,out(0)の項は無視できる。これにより微分演算を簡略化できる。
【0023】
血液治療中においては、透析液流は変更され、制御因子k
d/Q
dの変化が特定される。これにより、透析液流の変化が、注目する透析液流の変化によるものなのか、血液治療中におけるパラメータの変化によるものなのかが特定されうる。制御因子k
d/Q
dの変化の特定は、透析液流の変化の前後において制御因子k
d/Q
dを特定することにより、あるいは、制御因子k
dを透析液流量Q
dで割った商を透析液流量Q
dで微分する演算を連続的に行なうことにより、注目する透析液流の変化の範囲内で行ないうる。
【0024】
そして、予め特定された制御因子の変化が、臨界値あるいは臨界域(上限値と下限値を有する)と比較される。制御因子の変化が臨界値あるいは臨界域の下限値未満であれば、透析液流は減少される。他方、制御因子の変化が臨界値あるいは臨界域の上限値を上回れば、透析液流は増加される。毎分100mlの透析液流の変化に対して制御因子の値の10%〜20%が、臨界値として非常に好ましいことがわかっている。これら臨界値の各々について、対応する許容誤差を定める上限値と下限値が同様に定められうる。許容誤差は、毎分100mlの透析液流の変化に対して制御因子の値の1%となることが好ましい。例えば、毎分100mlの透析液流の変化に対して制御因子の値の20%が臨界値である場合、臨界域の上限値と下限値は、毎分100mlの透析液流の変化に対して制御因子の値の19.5%と20.5%に対応する。このような制御により、透析器の有効性に応じて透析液流が最適化されるだけでなく、透析液とエネルギーの消費も最適化される。
【0025】
ある透析液流に対して、患者の血液の特性についての対応する比率が得られる。血液の特性の例としては、導電性、温度、マーカ物質(Naイオン、尿素、β2−ミクログロブリンなど)の濃度が挙げられる。当該比率は、透析器の上流(入口)における透析液の特性に対応する値に対する、透析器の下流(出口)における透析液の特性に対応する値の比率である。透析液流の変化は、透析器の出口における透析液の特性に対応する値を変化させる。よって、注目する透析液流の変化の前後で制御因子を特定することにより、注目する透析液流の変化に基づく制御因子の変化が特定されうる。なお、上記透析液の特性に対応する値は、当該透析液が透析器を出た後に特定される。その後、注目する透析液流の変化がいつ透析器の出口に及んだのかが特定される必要がある。すなわち、ある透析液流の変化に対して制御因子の変化を対応付けできるようにするために、特定の透析液流に対する透析器の流体的な応答遅れを知る必要がある。透析器の流体的な応答遅れを特定する方法は公知である。注目する透析液流の変化は、一時的なものでありうる。すなわち、透析液の流量変化は、周期的あるいはパルス的にごく短時間だけ継続すればよい。
【0026】
制御因子を特定するために、注目する透析液流の変化に代えて、透析器に入る前の透析液の特性が連続的に(すなわち周期的に)変更されうる。透析器への進入時における透析液の特性値A
d,inの連続的な変調は、透析器の出口における透析液の特性値A
d,outの変調をもたらす。これにより、定常状態においては、ある時点の透析器の出口において透析液の特性値がどのようなものであるかが判り、透析液流の変化が直ちに透析器の出口における透析液の特性値変化に関連付けられうる。また、透析器の透水性、変調周波数、およびチューブ形状に依存する複合伝達関数を知る必要がない。
【0027】
透析液の特性が透析液の導電性
あるいは温度である場合、
図1は、研究所における(インビトロな)透析治療について、透析器の上流(線C1)と下流(線C2)における透析液の導電性(左縦軸)
あるいは温度(右縦軸)の経時変化を示している。透析液流は毎分800mlである
。すなわち、透析器に入る透析液の導電性や温度は、透析液に注入される物質(すなわち電解質)の量を変化させるか、透析液に加える熱を変化させることにより、当該変化とほぼ調和するように変化する。透析液中に含まれる少なくとも1種の電解質濃度の変更や、透析液の熱変調は、患者に対する生理的な害のない範囲内で行われる。
【0028】
透析器の容積に応じて、異なる物質(すなわち、異なる特性を有する複数の透析液)が透析器内で混合されうる。この混合物は、変調(すなわち、透析器から流出する透析液の導電率あるいは温度の変化)の緩衝をもたらす。これにより、透析器から流出する透析液の導電率あるいは温度の、変調周期および透析器の容積への依存性が抑制される。さらに、変調された透析液の一部は、半透過性膜を通過して体外循環(血流)に至る。これにより、透析器から流出する透析液の導電率あるいは温度の変調がさらに抑制される。変調の抑制は、
図1における曲線C1とC2を比べることにより(特に振幅を比較することにより)明らかに認識されうる。
【0029】
透析器の上流と下流における透析液の導電率または温度の値は、測定セルにより検出されうる。測定セルからのデータより、透析液流の変化の効果が直接に検出されうる。これにより、透析液流の制御すなわち最適化が非常に迅速に遂行されうる。
【0030】
図2に示すように、透析器の上流と下流における透析液の導電率または温度の値の振幅比は、透析液流量の関数(左縦軸に対応する曲線C3)として表される。また、振幅比の相対変化は、透析液流量の関数(右縦軸に対応する曲線C4)として表される。
【0031】
曲線C3は、透析液流量が大きくなるにつれて増加している。よって、透析器の上流と下流における透析液の導電率または温度の値の比は、透析液流量が大きくなるにつれて減少する。したがって、曲線C4は、透析液流量が大きくなるにつれて、振幅比の相対変化は小さくなる。透析液流量の値が毎分約650mlの場合、振幅比の相対変化、すなわち透析器の効果の増分は、わずか10%未満となる。
【0032】
透析器の入口における透析液の特性値と出口における透析液の特性値を検出することにより制御因子の変化を特定すること、すなわち、透析器の側で透析液の特性値変化を検出することに代えて、透析器において透析液から血液へ伝えられる特性は、血液側でも測定されうる。すなわち、当該測定は、透析器に入る前と透析器の出口における血液の特性を検出することによりなされうる。例えば、透析器を通じた透析液中の温度ボーラスの血液への移動は、静脈管系内で測定されうる。制御因子は、次式に示すように、治療の有効質量も透析液流量の関数として含んでいる。
【0034】
ここでQ
bは血流、すなわち血液の流量を示す。Qdは透析器中の透析液流を示す。A
b,inは、透析器の上流における血液の特性(例として導電率または温度)を示す。A
b,outは、透析器の出口における当該血液の特性を示している。A
b,out(0)は、透析器の出口における浄化能力が消失した血液の特性値を示す。
【0035】
繰り返しになるが、制御因子k
bを直接使うのではなく、制御因子k
bを血流量Q
bで割った商を透析液流量Q
dで微分したもの、すなわち透析液流量Q
dの変化に伴う制御因子k
d/Q
dの変化を用いることが有意義である。
【0036】
よって、本発明は、透析液の特性を変化させ、血液側において対応する血液の特性変化を検出することにより、透析液流の制御も可能にする。
【0037】
注目する透析液流の変化による制御因子の変化を特定する場合においても必要とされる透析液または血液の特性変化の検出が、透析液側または血液側で行なわれうる。
【0038】
透析器に入る前の透析液の特性変化に代えて制御因子の変化を特定するために、透析器に入る前の血液の特性が連続的に(例えば周期的に)変えられうる。そして、透析器の出口における血液の特性に対する治療効果が、血液側または透析液側で測定されうる。よって、透析器に入る前の血液の特性変化は、患者に負担のないわずかな血液温度の変化からなりうる。透析器に入る前の血液へのヘパリン入力を変化させてもよい。透析液の凝固を防ぐために、透析器に入る前に血液透析ヘパリンまたは抗凝固剤(クエン酸塩)が患者の血液に連続的に加えられる場合、例えばこれらの薬剤を含むシリンジポンプが用いられる。このポンプ(ヘパリンポンプ)の流量は、適宜に変更されうる。さらなる別例として、置換率も変更されうる。ここで適用されることが好ましい前希釈のために、無菌代用剤が透析器に入る前の患者の血液に加えられる。血液中における当該代用剤の成分(例えば、グルコース、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、および重炭酸塩)は、血液側から透析液側へ透析器内を通過し、少なくとも間接的に検出される。例えば電解質の場合、導電率測定セルによって検出される。
【0039】
よって、本発明は、血液の特性を変化させ、血液側または透析液側で当該特性変化を検出することによる透析液流の制御も可能とする。
【0040】
透析器の上流における透析液の導電率(LF
d,in)と透析器の下流における透析液の導電率(LF
d,out)の比を特定する最も簡単な方法は、透析器に入る透析液の導電率(LF
d,in)のピークトゥピーク値と、透析器の出口における透析液の導電率(LF
d,out)のピークトゥピーク値を比較することである。しかしながら、この手法は、ノイズや擾乱が測定値に直接影響を及ぼし、特定される振幅比の正確性を低下させる点において有利でない。
図1に示した曲線C2の場合、透析器の出口における透析液の導電率の値に占める擾乱の割合は約10%である。よって、正確性を向上させるためには、半周期2/Tに対応する数の値を平均する必要がある。
【0041】
したがって、次式を通じて導電性曲線における複数の領域の絶対値を比較することによって、信号を平均化することがより好ましい。
【0043】
これにより、時間tについて全ての測定値が考慮され、統計的誤差が最小限とされる。しかしながら、この手法は、半周期分遡っての透析器に入る透析液の導電率の平均値と透析器の出口における透析液の導電率の平均値を必要とする。よって、平均化期間を長くすると、ドリフト等が生じた場合にシステム的な測定誤差が生じうる。まず全測定値を保存し、後に計算を実行するという選択肢もありうる。しかしながら、この手法は、高いメモリ容量を必要とする。
【0044】
したがって、次式を通じて透析液の導電率曲線の分散を比較することによって、信号の標準偏差あるいは交流成分の有効値を求めることが好ましい。
【0046】
実際には、(LF
d,in/LF
d,out)および(LF
d,in2/LF
d,out2)の値のみを半周期分にわたって足し合わせるのみでよい。
【0047】
透析器の上流と下流における透析液の導電率の比を特定する上述の各手法は、透析液や血液に係る他の特性を特定するに際し、類推的に適用されうる。
【0048】
透析液流は、例えばポンプと弁の少なくとも一方を用いて生成および変更されうる。
【0049】
透析器の上流と下流における透析液または血液の特性値より制御因子を特定するために、また、透析液流から制御因子の微分値を特定するために、例えばプログラム可能なプロセッサが使用されうる。また、当該プロセッサは、透析液流を制御し、ポンプや弁に関するコマンドを生成する制御ユニット内で使用されうる。制御設備は、臨界値や臨界域に係る条件、および本発明に係る方法を実行するプログラムに係る条件を格納するストレージを備えることが好ましい。また、プログラムの実行開始時あるいは実行中において、臨界値や臨界域に係る条件は変更されうる。これにより、毎分100mlの透析液流変化に対する制御因子の初期値(例えば20%)に代えて、毎分100mlの透析液流変化に対する制御因子の値は、別の値(例えば5%)に調整されうる。また、臨界値の許容誤差(すなわち当該臨界値の上限値と下限値)は、プログラムの実行開始時あるいは実行中において変更されうる。
【0050】
結論として、本発明によれば、透析装置内における透析液流は、透析器の有効性に関して(すなわち血液治療の有効性に関して)、使用される透析器の種別、血流、特定の患者パラメータに係る知識によらず最適化される。透析液の流量が大きく増加しても、透析器の有効性に顕著な変化をもたらすことはない。