特許第6139543号(P6139543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139543X線分析エンジンおよび分析器のために高度に位置合わせされた単色化X線光学素子および支持構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139543
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】X線分析エンジンおよび分析器のために高度に位置合わせされた単色化X線光学素子および支持構造体
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20170522BHJP
   G02B 17/06 20060101ALI20170522BHJP
   G02B 13/14 20060101ALI20170522BHJP
   G02B 7/182 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G01N23/223
   G02B17/06
   G02B13/14
   G02B7/182
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-539003(P2014-539003)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2014-532866(P2014-532866A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】US2012061900
(87)【国際公開番号】WO2013063253
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/551,602
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500577987
【氏名又は名称】エックス−レイ オプティカル システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼウー チェン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー ディー.ディレーニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エイチ.バーデット
(72)【発明者】
【氏名】カイ シン
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−195963(JP,A)
【文献】 特表2005−534921(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/022333(WO,A1)
【文献】 特表2011−513751(JP,A)
【文献】 特表2007−536754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G02B 7/00
G02B 7/18− 7/24
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に位置合わせされた複数の湾曲X線光学素子を有する支持構造体であって、前記X線光学素子が取り付けられる複数の部分的または完全な内部の同心状表面を有することで、前記X線光学素子の中心光軸に沿って、ないしは前記支持構造体を組み合わせて使用可能である線源、サンプル、および/または検出器に対して、前記X線光学素子が位置合わせされており、
前記同心状表面が前記中心光軸の周りで入れ子式となっており、
前記支持構造体は、前記中心光軸の周りで、長手方向にセクションに分割されており、および、
前記セクションは、前記中心光軸に対し平行に延びる複数の壁であって、前記中心光軸から前記支持構造体の外壁に向って放射状に広がっている複数の壁により分割されていることを特徴とする支持構造体。
【請求項2】
前記セクションは、前記中心光軸に対し平行に延びる3つの壁であって、前記中心光軸から前記支持構造体の前記外壁に向って放射状に広がっている3つの壁により分割されており、前記3つの壁が3つの120度のセクションを形成することを特徴とする請求項1に記載の支持構造体。
【請求項3】
前記X線光学素子の少なくとも一つは、発散X線ビームを受け、焦点領域にビームを集束するための湾曲回折光学素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の支持構造体。
【請求項4】
前記X線光学素子が集束単色化光学素子であることを特徴とする請求項に記載の支持構造体。
【請求項5】
前記X線光学素子が、二重湾曲結晶光学素子またはHOPG光学素子または多層光学素子であることを特徴とする請求項に記載の支持構造体。
【請求項6】
前記回折光学素子が、単層の塑性変形したLiF光学素子を備えていることを特徴とする請求項に記載の支持構造体。
【請求項7】
前記回折光学素子は複数のセグメントを含み、各セグメントが湾曲形状に曲げられて、前記支持構造体内の湾曲パターンに配置されていることを特徴とする請求項に記載の支持構造体。
【請求項8】
第1のX線光学素子がX線源からの第1エネルギーを単色化し、第2光学素子がX線源からの第2エネルギーまたは制動放射エネルギーを単色化することを特徴とする請求項1に記載の支持構造体。
【請求項9】
前記複数の壁のうち少なくとも1つが、前記支持構造体内で、前記同心状表面のうち少なくとも1つのために支持を提供する請求項1に記載の支持構造体。
【請求項10】
X線エネルギーを受けて向きを変えるための形状に塑性変形させた単一層の材料を含む湾曲単色化X線光学素子であって、請求項1に記載の支持構造体と組み合わされることを特徴とする湾曲単色化X線光学素子。
【請求項11】
前記材料がLiFであることを特徴とする請求項1に記載の湾曲単色化X線光学素子。
【請求項12】
前記光学素子が単湾曲のものであることを特徴とする請求項1に記載の湾曲単色化X線光学素子。
【請求項13】
前記光学素子が二重湾曲のものであることを特徴とする請求項1に記載の湾曲単色化X線光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年10月26日に出願された特許文献1の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本出願はまた、2005年8月23日に発行され、「XRF System Including Focusing Optic on Excitation Side and Monochromatic Collection」と題された特許文献2、2010年6月16日に発行され、「Highly Aligned X-Ray Optic and Source Assembly for Precision X-Ray Analysis Applications」と題された特許文献3、および、2011年7月14日に公開され、「XRF System Having Multiple Excitation Energy Bands in Highly Aligned Package」と題された特許文献4に関連する。これらは本発明の譲受人であるX-Ray Optical Systems, Inc.に譲渡されており、参照により各々の全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
現在の状況、例えば玩具中の毒素の発見、環境空気および水の問題、そしてもたらされた規制は、有毒な要素の決定のための分析器が緊急に必要であることを指示している。高度な蛍光X線(XRF)分析装置は、種々の試料中の関心のあるそのような毒素および他の多くの物質、例えば消費者向けの製品中の毒素および石油製品中の様々な有害な要素の定量化に重要な役割を果たし得る。
【0004】
顕著な例として、製造者、供給業者、流通業者、小売業者および規制当局は、多種多様な消費財の有毒要素分析のための長期的な解決策を必要としている。多くの新しい規制では、例えば鉛(Pb)、水銀(Hg)、砒素(As)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、臭素(Br)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、バリウム(Ba)および塩素(CI)などの多くの要素を検出することを製造業者に求めている。EUの規制では、均質な材料中の最大濃度は、六価クロム(Cr6+)、Hg、Pb、ポリ臭化ビフェニル(PBB)およびポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)については1,000ppmであり、Cdについては100ppmである。子供向け製品に対する米国の新規則(CPSIA)は遥かに厳格である。例えば、玩具や子供向け宝石における鉛の最大許容レベルは、製品へのアクセスが可能ないかなる部分においても100ppm以下である。
【0005】
現在の測定方法は、十分に正確ではあるが工場フロアで使用できないものであるか、または、工場フロアでの使用に便利ではあり得るが感度および反復性が大幅に足りないものであるか、のいずれかである。結果として、このアプリケーションの真の目的に合った分析器が必要とされている。
【0006】
より一般的には、製造施設においてアットラインまたはオンラインのいずれかで、あるいは流通網のいずれの場所においても、単一の機器で重要かつ決定的な測定を実行するために、迅速で、信頼性が高く、便利で、破壊的でなく、高感度であり、定量的で、費用対効果のある分析器についての強い市場ニーズがある。汚染された製品は、偶発的な生産廃棄物およびエラーを実質的に緩和ないしは除去する、プロセスで最も有利な場所で排除することができる。同様の能力は、流通のいくつかの段階で、あるいは材料や製品の適合性を検証するための規制当局によっても、強く要望されている。
【0007】
X線分析システムでは、サンプルの曝露時間を減少させ、空間分解能を向上させ、その結果として、信号対バックグラウンド比およびX線分析測定の全体的な品質を改善するために、高いX線ビーム強度および小さいビームスポットサイズが重要となる。以前は、研究所における回転陽極X線管またはシンクロトロンなどの高価で強力なX線源が、高強度のX線ビームを生成するのに利用できる唯一の選択肢であった。最近では、X線光学系の発展により、X線を集束することによってX線源からの発散放射の収集が可能となっている。X線集束光学系と小型・低電力のX線源と組み合わせることで、大型・大電力でより高価な装置で達成されるものに匹敵する強度をもつX線ビームを生成することができる。その結果、小型にして低廉なX線源、励起光学素子および集光光学素子との組み合わせに基づくシステムが、例えば小さな研究室や、フィールド、工場あるいは診療所などにおいても、X線分析装置の可用性および能力を大幅に拡大している。
【0008】
励起および/または検出経路内のX線ビームの単色化もまた、関心のある種々の要素(鉛など)様々な要素に正確に対応するX線エネルギースペクトルの部分を励起および/または検出する上で有用である。X線単色化技術は、例えばゲルマニウム(Ge)またはシリコン(Si)結晶などの光学結晶のX線の回折に基づいている。湾曲結晶は、X線源からターゲット上へと発散する放射線の偏向を提供するだけでなく、ターゲットに到達するフォトンの単色化を提供することができる。湾曲結晶の2つの代表的なタイプは、単湾曲結晶(singly-curved crystal)類と二重湾曲結晶(doubly-curved crystal;DCC)類として知られている。ローランド円の幾何学的形状として当技術分野で知られているものを使用することで、単湾曲結晶は、第3すなわち直交面内ではX線放射を集束させないまま、2次元での集束を提供する。二重湾曲結晶は、3次元のすべてで、線源から点ターゲットへのX線の集束を提供する。この3次元集束は、当該技術分野において「二地点間(point-to-point)」集束と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/551,602号明細書
【特許文献2】米国特許第6,934,359号明細書
【特許文献3】米国特許第7,738,630号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2011/0170666号明細書
【特許文献5】米国特許第7,072,439号明細書
【特許文献6】国際公開第2009/111454号公報
【特許文献7】米国特許第6,285,506号明細書
【特許文献8】米国特許第6,317,483号明細書
【特許文献9】米国特許第7,035,374号明細書
【特許文献10】米国特許第7,738,629号明細書
【特許文献11】米国特許第5,192,869号明細書
【特許文献12】米国特許第5,175,755号明細書
【特許文献13】米国特許第5,497,008号明細書
【特許文献14】米国特許第5,745,547号明細書
【特許文献15】米国特許第5,570,408号明細書
【特許文献16】米国特許第5,604,353号明細書
【特許文献17】米国特許第7,110,506号明細書
【特許文献18】米国特許第7,209,545号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新たなX線分析システム(寸法、重量、電力およびコストの削減とともに、性能および位置合わせの改善は依然として必要とされている)において、単色化光学素子の製造および取り付けを行う際に現れる課題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、X線分析システムにおける単色化光学素子の製造、位置合わせおよび取り付けを行う際に現れる課題に対処する。そのことに関連し、一形態における本発明は、高度に位置合わせされた複数の湾曲X線光学素子を有する支持構造体であり、該支持構造体は、前記光学素子が取り付けられる部分的または完全な同心状の複数の内部表面を有し、それにより、前記光学素子の中心光軸に沿って、ひいては、前記支持構造体を組み合わせて使用可能である線源、サンプル、および/または検出器に対して、前記光学素子が位置合わせされる。
【0012】
前記表面は、中心光軸の周りで入れ子式のものとすることができ、支持構造体は、中心光軸の周りで、壁により長手方向セクションに分割されたものとすることができる。
【0013】
X線光学素子の少なくとも一つは、発散X線ビームを受け、焦点領域にビームを集束するために、一実施形態では集束単色化光学素子である湾曲回折光学素子(curved diffracting optic)を含む。
【0014】
改良された実施形態では、光学素子は、単層の塑性変形したLiF光学素子を備えている。
【0015】
光学素子は複数のセグメントを含んでもよく、各セグメントは湾曲形状に曲げられて、支持構造体内の湾曲パターンに配置される。
【0016】
第1のX線光学素子はX線源からの第1エネルギーを単色化することができ、第2光学素子はX線源からの第2エネルギーまたは制動放射エネルギーを単色化することができる。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、湾曲単色化X線光学素子およびその形成方法に係り、X線エネルギーを受けて向きを変えるための形状に塑性変形させた単一層の材料を含む。その材料はLiFであってもよく、光学素子は単湾曲でも二重湾曲でもよい。
【0018】
光学素子は、単一層の材料を加熱し、加熱しながらその層を曲げ、冷却後にもその曲げ形状が保持されるようにすることによって、本明細書に開示される支持構造体への容易な取り付けを可能にする構造的な剛性をもつように形成することができる。
【0019】
さらに、付加的な特徴および利点は、本発明の技術によって実現される。本発明の他の実施形態および態様は、特許請求の範囲の発明の一部として考察される。
【0020】
本発明と見なされる主題は、本明細書に添付した特許請求の範囲に特に示され、明確に記載される。本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の支持構造体および光学素子とともに使用可能な、例示的MWD XRF X線エンジンの模式図である。
図2】本発明の支持構造体および光学素子とともに使用可能な、例示的ME EDXRF X線エンジンの模式図である。
図3】本発明の一形態に係る光学素子支持構造体を、未装着状態で示す端面図である。
図4】本発明の一形態に係る光学素子支持構造体を、未装着状態で示す斜視図である。
図5】本発明の一形態に係る光学素子支持構造体を、単一ピースの単色化光学素子を装着した状態で示す端面図である。
図6】本発明の一形態に係る光学素子支持構造体を、単一ピースの単色化光学素子を装着した状態で示す斜視図である。
図7】本発明の一形態に係る完成した4層単色化光学素子を示す。
図8A】他の実施形態の点集束二重湾曲単色化光学素子を示す。
図8B】A−A線に沿って取った図8Aの断面を示している立面図である。
図9】上述した光学素子構造体の同様のまたは異なる複数の例(instance)を用いる集束湾曲単色化光学素子を示す(且つ、ローランド円の幾何学的形状を示している)。
図10A】本発明に係る単一層の1次元湾曲光学素子の斜視図である。
図10B】本発明に係る単一層の2次元湾曲光学素子の斜視図である。
図11】本発明の一形態に係る、サンプル上に懸架されたX線エンジンを有する分析器の斜視図である。
図12】本発明の一形態に係る、例示的なハンドヘルドX線分析装置および関連するヒューマン・インターフェース・モジュールの斜視図である。
図13図11および/または図12の分析器の例示的なグラフィカル・ユーザ・インターフェースである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述したように、単色化および集束光学素子は、X線分析器に利益をもたらすことができる。このような分析器のための2つの「エンジン」、MWD XRFとME−EDXRFによるアプローチについて簡単に説明する。
【0023】
例示的なMWDXRF X線分析エンジン
本発明の譲受人は、図1に概略的に示されるような、2つの単色化光学素子セットを用いる波長分散型X線蛍光(Monochromatic Wavelength Dispersive X-ray Fluorescence;MWD XRF)分析器を先に開示している(特許文献3および特許文献5;参照によりそれらの全体が本明細書に包含される)。ディーゼル燃料およびその他の燃料留分中の硫黄測定に関連したSINDIE(Sulfur IN DIEsel)製造ラインはXRFを根本的に変えており、次を含む多くの利点をもたらしている。すなわち、(1)信号/バックグラウンド(S/B)が、DCC1によるサンプルの単色励起に基づいて改善されること、すなわち、蛍光ピークより下のエネルギーをもつ制動放射の光子(関心のあるそれらのピークは通常圧倒されている)は、散乱を通じて検出器に到達することのみが可能であり、それにより、多色励起に比べて飛躍的にS/B比が改善されること、(2)優れたエネルギー分解能がすべての一般的な干渉問題を排除し、上流側のアプリケーションに対して物理的根拠を提供すること、(3)本質的な堅牢性および低メンテナンス性:可動部および気体の消費がなく、分析エンジンが低消費電力で小型であること、および(4)かつてないダイナミックレンジ(例えば0.3ppm〜5%のサンプル中の硫黄)、である。
【0024】
図1に模式的に示すMWD XRFエンジン10は、サンプル12上に焦点領域を形成する励起および検出経路に湾曲した単色化光学素子14を含んだ、上述のSINDIE硫黄分析器の形態である。しかしながら、これらの経路に1つの光学素子のみがあってもよいが、それでも正確な位置合わせは必要である。一例では、本明細書に記載のタイプのいずれかの光学素子が励起経路に1つだけ存在し、検出経路にはエネルギー分散型検出器が含まれていてもよい。これは、エネルギー分散型蛍光X線(EDXRF)システムの一般的な構成である。
【0025】
例示的なME EDXRF X線分析エンジン
単色励起のエネルギー分散型X線蛍光(ME−EDXRF)分析器はまた、本明細書に説明した光学技術の恩恵を受けることができる。かかるエンジン技術は、例えば、特許文献4および「HIGHLY ALIGNED PACKAGE IN MULTIPLE」と題された特許文献6(ともに譲渡されている)に開示されており、参照によりそれらの全体が本明細書に包含されるものとする。一実施形態では、このエンジン20は、図2に模式的に示されているようにHD XRFとして知られている単色励起を伴う。HD XRFは、従来のEDまたはWD XRFを超える大幅に強化された検出性能を提供する多元素分析手法(multi-element analysis technique)である。この技術は、複数の最先端の単色化および集束光学素子を適用してサンプル上の焦点領域22を照明し、サンプル上の広範なターゲット元素を効果的に励起する複数選択エネルギーの励起ビームを可能にする。単色励起は蛍光ピークの下の散乱バックグラウンドを劇的に低減し、元素の検出限界と精度を大幅に高める。HD XRFは直接測定技術であって、消耗品ないしは特別なサンプル調製を必要としない。
【0026】
単色化光学素子のための例示的な支持構造
上述のような高度なX線分析器は、複数のX線光学素子のための改良された取り付け装置、および/または、ともに単一の光学素子を近似する複数のセクションから形成された光学素子を必要とする。(本明細書において光学素子という語は、単一のセグメント、投射X線の集束および/または単色化に用いられるその大部分または全体、もしくは、複数のセグメントにおける個々のセグメント、組み合わされて作動して投射X線の集束および/または単色化を行うその全体を含むものとして広く使用される。)図3図4を参照するに、高度に位置合わせされる複数の光学素子のための、本発明に係る支持構造体100が示されている。構造体は、光学素子を取り付け可能な、部分的または全体的に同心の内表面102および104、および/または、光学素子を取り付け可能な、その他のタブ状ガイドすなわち構造物106を有することができる。それらの表面は、図示のように中心光軸の周りで入れ子式となっていてもよい。構造体は、本明細書およびここに包含した文献に開示されたものも含めて、本発明に係るX線光学素子を取り付けるために使用することができる。構造体は、単体の金属構造に鋳造されたものであってもよいし、個々の(例えば金属の)シートから形成されたものであってもよい。
【0027】
図5図6の装着状態での構造体200に示されるように、部分的または完全な円形状の光学素子203,205,207が取り付けられており、例えば、それらの入力および/または出力側の焦点は中心軸に沿って位置合わせされている。取り付けは、接着剤または他の接着化合物、もしくは他の機械的取付け機能を使用して行うことができる。この例のように、「低エネルギー」光学素子203は、約240度の回転角度にわたって、2つのセグメントから形成されていてもよく、「中エネルギー」光学素子205および「高エネルギー」光学素子207は、図示のように支持構造物の全360度の回転角度にわたって、3つのセグメントから形成されていてもよい。本実施の形態では、後述するように、光学素子203は層状光学素子であり、光学素子205および207は単一層の光学素子を含んでいる。
【0028】
本支持構造は、次のような特徴および利点を含んでいる。
【0029】
・製造の間、X線エンジンの他の能動部品(すなわち、線管および検出器の部分)への挿入を必要とすることなく、光軸に沿って光学素子を位置合わせできること。正確に製造され、位置合わせされた支持構造体を用いることで、光学素子が構造体に装着されると、自動的にその中心軸に対して(および、例えば図1および図2のように、線管、サンプルおよび/または検出器に対して)位置合わせされ、装着状態の構造体がエンジン内に挿入されると(製造過程の後半部分において)、光学素子は自動的にエンジン内で位置合わせされる。これは、製造工程の早期の段階でエンジン内に個々の光学素子を位置合わせする、コストと時間がかかる工程を不要とする。
【0030】
・少ない部品数。取り付け用化合物を用いる好適実施形態では、独立した機械的な取り付け部品が不要となる。
【0031】
・支持構造体への、および支持構造体からの照射経路を制御する円形のX線開口部(不図示)。これは支持構造体円形の端部に容易に取り付け可能である。
【0032】
・強力な円筒構造の形態としたこと、および、120度の内部セクションを形成し、さらなる強度を呈するよう3つの支持内壁を設けたことによる堅牢性。これは、落下にさらされ得るハンドヘルド分析器(図12)にとって特に重要である。
【0033】
支持構造体に取り付け可能な例示のタイプの光学素子については、図5図6の装着状態での構造体に関して次に説明する。しかしながら、X線光学素子は概して、例えば、共通して譲渡されている特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10に開示されているような湾曲結晶の単色化光学素子、および/または、多層光学素子、および/または、共通して譲渡されている特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15および特許文献16に開示されているような多管型(polycapillary)光学素子を含むことができる。共通して譲渡されている特許文献17および特許文献18に開示されているような光学素子/線源の組み合わせを用いることもできる。上述の特許および特許出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
低エネルギーのDCC光学素子−203
単なる例として、異なる2つのタイプの例示的な低エネルギー光学素子について説明する。一方は5.4keVの回折エネルギーと80mmの入射側焦点距離(IFD)をもち、他方は7keVの回折エネルギーと120mmのIFDを有したものとすることができる。よりコンパクトなシステムが望まれている場合には、入射側焦点距離をより短くする設計がなされる。2つの例示的結晶材料が開示され、それはゲルマニウム(Ge)(111)およびペンタエリスリトール(PET)(002)である。
【0035】
中エネルギーのDCC光学素子−205
異なる結晶材料、シリコン(Si)およびフッ化リチウム(LiF)を用いる異なる2つのタイプの中エネルギー光学素子が開示される。光学素子の性能を最大にする目的で、光学素子によって選択されたターゲットエネルギーは、陽極ターゲット材料からの強い特性線である必要がある。17.5keVでMoKαなどの中エネルギー源との効率的な統合を行うために、他の材料を使用することができる。
【0036】
LiF(200)は、湾曲結晶光学素子に対して単色ビーム光束の流れを増加させることができる。LiFは広いロッキングカーブ(rocking curve)を有し、より大きな線源スポットサイズからより多くの光子を捕捉することができ、従って、より大きな線源スポットサイズからの回折効率はSi結晶よりも高くなる。従って、より大きな線源スポットサイズに対し、回折光束はSi結晶よりかなり大きくなる(例えば500μm超)。加えて、同じ厚みに対し、LiFはSiよりも容易に曲げることができる。SiおよびLiFからなる光学素子の双方は、本明細書の他の箇所で説明するように、ヨハン幾何学設計を有することができる。
【0037】
高エネルギーのDCC光学素子−207
中エネルギー光学素子は、X線源から多色スペクトルの最も強い部分である特性線を捕捉するために使用される一方、高エネルギー光学素子は、例示的Mo源からバックグラウンドないしは制動放射を捕捉するために使用され得る。制動放射強度は特性線よりもかなり低い。2つの例示的高エネルギー光学素子の実現技術が本明細書に開示される。第1の形態は層状二重湾曲結晶(LDCC)の光学素子の設計を必要とし、第2は単層形態の光学素子のためにLiFを使用することである。LDCC設計は、30〜40keVの範囲の広い帯域幅の制動放射エネルギーを捕捉する多層技術に基づいている。LDCC光学素子は、各層が隣接する狭い帯域幅を捕捉する多層構造を有していてもよい。中エネルギー光学素子で使用されるLiF結晶材料をまた、この高エネルギー光学素子に用いることもできる。光束は同じ回折結晶領域で増加する。LiFが広いロッキングカーブを有し、より厚いLiF結晶はより高い回折効率を有しているからである。中エネルギー光学素子の部分で説明したのと同様の方法で回折領域を増加させることにより、そしてより大きな立体角で集光することにより、光束を大きく改善することができる。より高い光束が望まれるのであれば、LiF結晶の厚みを大きくすることができる。LiFを容易に曲げられるからである。LiFは、光学素子の回折効率を高めるために、Siよりもより厚い結晶として用いることができる。
【0038】
高強度のビームを実現するために、非常に高い集光立体角(collection solid angle)を持つジオメトリが開示される。図5図6に示すようなこの高エネルギー光学素子のための、LiFの完全回転楕円体(fully revolved ellipsoid)による二地点間集束が開示される。全360度楕円対向学素子を実現するために、各々が約120度の回転角を持つ、同様の3つの楕円体セグメントが開示される。3つのセグメントは同じ焦点に位置合わせされ、完全回転楕円体光学素子を形成する。この設計の総集光立体角は0.03srより大であり、これは従来の設計の40倍程度大きい。楕円の焦点から発する点光源について入射角が僅かに変化すると、反射エネルギー帯域幅が広くなる。帯域幅は、80mmの焦点距離および45mmの光路長を有する30keV光学素子について、エネルギーの約10%であると推定される。
【0039】
高エネルギー光学素子のためにMgO結晶材料を用いる別のアプローチについても開示される。のMgO(220)ウエハを用いると、面(220)と結晶表面との間の角度を正確に制御することができる。これにより、ヨハンソンジオメトリの段階的な近似値を使用できるようになる(本明細書の他の箇所で論じる)。MgO(220)の別の利点は、ブラッグ角がLiF(200)に比べて大きいことである。ブラッグ角を大きくすることで、光学部品の集光立体角を大きくすることができるようになる。MgO結晶体を使用することの欠点は、積分反射率(integral reflectivity)がLiFに比べて低いことである。
【0040】
上述した集光光学素子のいずれでも、達成可能なスポットサイズを直径が約0.4mmから0.8mmまで、1.0mmまで、2.0mmまでの範囲とすれば、消費者向け製品において小さな特徴の分析を行う助けとなる。加えて、光学素子が、その形状に応じた任意の形状でスポットサイズを生成するようにすることができる。
【0041】
光学素子実現の技術
第1の例として、上述の層状光学素子のいずれもが、ともに譲渡され2012年6月15日に発行された、「X-RAY FOCUSING OPTIC HAVING MULTIPLE LAYERS WITH RESPECTIVE CRYSTAL ORIENTATIONS」と題された先願である特許文献10(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される技術に応じて実現することができる。
【0042】
図7は、その結果である、4つの完成した層(各々が自身の、所定の結晶配向性をもつ)を有する薄膜の層状構造1110の一部分の断面を示す。この例では4つの層が示されているが、本発明は、設計パラメータに応じて、任意の複数の層を包含することができる。そして、全ての配向が異なっている必要はない。それぞれの層の結晶配向性を予め決定することによって、全体としての構造体の回折特性を最適化することができる。
【0043】
個々の結晶層は、個々の回折効果をもたらすことができる。これらの回折効果を別々にモデル化することができ、完成した光学素子におけるそれらの集合的な効果は最終的な設計基準に従って予測し、実現することができる。これは、各層には回折効果がないが層間の相互作用によって全体的な回折効果が生じる、オングストローム/ナノメートルの厚さの多くの層を有する公知の「多層」光学素子とは対照的である。
【0044】
本発明の別の形態では、材料組成の異なる層を、層(またはその融合物(mix))の間で同じまたは異なる結晶方位をもつようにして、同じ光学素子に使用することができる。また、類似の(または同じ)材料組成の層を、この場合でも層(またはその融合物(mix))の間で同じまたは異なる結晶方位をもつようにして使用することができる。本発明のこれらの形態のいずれにおいても、材料−絶縁層構成(material-on-insulator)を使用することもできるし、本出願に包含される出願に記載された工程の順序に従って、隣接する結晶層を結合するべく接着剤(例えばエポキシ)層を使用することもできる。
【0045】
構造体1110はその後、二重湾曲結晶(DCC)光学素子(またはその個々のセグメント)を含む湾曲単色化光学素子に形成することができる。かかる二重湾曲光学デバイスの一実施形態は図8Aおよび図8Bに示されており、2001年9月4日に発行された特許文献7に詳細に記載されているが、参照によりその全体が本明細書に包含される。
【0046】
積層型の光学素子構造は、次のような利点を提供する。
【0047】
・光学素子のモザイク性やロッキング曲線が層の配向設計によって制御されること。
【0048】
・光学素子の効率が高くなること。各層(独自のカスタム配向をもつ)は独自の視野を有することができ、その結果、合成視野によって効率が向上し、光学素子がより大きい線源スポットサイズに対応できるようになる。そして、光学素子がより大きい線源スポットサイズに対応することにより、システム実装が容易となる。
【0049】
・光学素子の帯域幅(すなわち単色化の)が制御可能であり、有利には、特定の単色化アプリケーションで拡大可能であること。
【0050】
別の例として、図8Aの実施形態において、二重湾曲光学デバイスは、可撓性のある層状光学素子1110(または単層光学素子)、厚いエポキシ層1112およびバッキングプレート1114を含むことができる。そのデバイスの構造は、さらに、図8Bの立断面図に更に示されている。これらの構成は、ともに譲渡され2001年9月4日に発行された「CURVED OPTICAL DEVICE AND METHOD OF FABRICATION」と題された特許文献7に開示されており、参照によってその全体を本明細書に包含するものとする。
【0051】
このデバイスにおいて、エポキシ層1112は、可撓性層1110を保持し、曲率を有する選択された幾何学的形状に規制する。好ましくは、エポキシ層の厚さは20μmより大きく、可撓性層の厚さは5μmよりも大きい。また、エポキシ層の厚さは、フレキシブル層の厚さよりも一般に厚い。可撓性層は、本明細書で説明するものを含め、多種多様な材料のいずれであってもよい。エポキシ層1112は、10〜10poiseのオーダの粘度および30〜60分の可使時間(pot life)を有するペースト状のものとすることができる。バッキングプレート1114は、エポキシとの接着性がよい固体の物質とすることができる。バッキングプレートの表面1118は、平坦(図8A)または湾曲したものとすることができ、形状および表面仕上げが正確であることは、可撓性層の形状および表面仕上げには重要ではない。図8A図8Bのデバイスでは、特別に調製されたバッキングプレートは必要とされない。
【0052】
可撓性層の周囲には薄いプラスチックなどの保護材の薄いシート1116があってもよく、これは可撓性層の縁の周りで用いられている(図8A参照)。保護材料は、再利用可能となるように製造金型を保護するものであり、可撓性層の正確なサイズ以下である金型、または犠牲鋳型(sacrificial mold)には不要となり得る。
【0053】
本明細書に開示された光学素子のいずれも、単方向の曲率(単湾曲結晶;SCC)、二方向の曲率(二重湾曲結晶;DCC)およびその他の設計を含む応用に応じて(それらに限られるものでもないが)、いかなる方法でも成形することができる。二重湾曲結晶(DCC)光学素子などの二重湾曲光学デバイスは、大きな立体角からX線を集光および集束し、X線源からの利用可能な光束を増加させる物質の分析に使用することができる。特性X線の3次元集束は、小型X線源と共に使用されるトロイダル結晶からの回折によって実現することができる。この二地点間ヨハンジオメトリは図9に示されている。各結晶光学素子1200の回折面を結晶面に平行にすることができる。点光源および焦点を含む焦点円1210が半径Rを有している場合、結晶面は、例えば、線源と焦点との間に引かれた線分を中心とした半径に関し、焦点円の面内で2Rの曲率の半径Rと、垂直な面内でr=2RsinθBragの曲率半径とを有する。線源から発散し、結晶のロッキングカーブ内の角度で結晶面に入射するX線は焦点または結像点で効率的に反射される。DCCベースのシステムに対する焦点での単色光束の密度は、より大きい電力源と同様の線源・対象物間距離とをもつ従来のシステムに比べて数桁増大する。この増大により、(本明細書に記載されるような)蛍光X線および回折を含む多くの異なる用途での使用に対して非常に高い感度が得られる。
【0054】
さらに増大させるものとして、図9は、光学デバイスがローランド円の周りに格子パターン状に配置された複数の二重湾曲結晶光学セグメント1200を備え得ることを示している。各要素は、上述したような可撓性構造体1110(同様の、または異なる要素同士(element-to-element)の層構造のいずれかである)。かかる構造は、ブラッグ回折を介して発散放射の捕捉および向きの変更(redirection)を最適化するように構成されてもよい。一形態では、変化する原子回折面方位を有する複数の光学結晶を、発散するX線を捕捉し焦点に向かって集束させるために用いることができる。他の形態では、2次元または3次元マトリックスの結晶を、3次元で発散X線を捕捉および集束させるためにX線源に対して位置決めすることができる。かかる構造のさらなる詳細は、2006年4月25日に発行され、「AN OPTICAL DEVICE FOR DIRECTING X-RAYS HAVING A PLURALITY OF OPTICAL CRYSTALS」と題された特許文献9に開示されており、参照によってその全体を本明細書に包含するものとする。
【0055】
単層光学素子
図10A図10Bを参照するに、別の改善案として、本発明に係る3次元「単層」光学素子1300および1400が示されている。上述したように、より高エネルギーの用途に対しては、LiFを光学材料に選択することが好適であり得る。高エネルギー光子は、LiFの中にさらに侵入することができるので、LiF DCCをより厚くすることで効率をより高くすることができる。従って単層のLiFからなる厚いピースはこの目的のために好ましく、同様に、曲率を維持するために必要な構造的完全性、および、配置を容易にするために、上述した支持構造への配置の容易性のためにも好ましい。
【0056】
厚いLiFウエハを3次元形状に曲げることは、本発明に係るこれらの高エネルギーX線光学素子を作ることの基本である。3次元の曲げを企図すると応力が発生することがあり、この応力が<100>での破断応力を超えている場合、結晶に亀裂を生じさせ得る。LiFには室温でいくらかの塑性変形能があるものの、それは、一般的には機能光学素子への3次元曲げ加工を許容および維持するのに十分ではない。
【0057】
本発明者らは、LiFは、昇温させると塑性変形し、その後は追加の支持なしで冷却時にその形状を維持する能力が増大することを見出した。本発明によれば、概ね平坦なウエハ切片は、昇温下で曲げられ、それらの成形工具(図示せず)あるいは任意の他の支持層または材料から分離し、室温での冷却した後にも、必要な精密形状を維持する。
【0058】
例えば、加熱チャンバ内の温度を1000℃に向かって上昇させ、あるいはさらに高くする。例えば図10A図10Bに示した所望の光学曲率プロファイルに一致する所望の曲率をもつ光学素子成形工具(shaped optic tooling)を用いて、LiFの結晶を加熱チャンバ内の所定の位置に保持し、工具の相補的な形状に形成することができる。その後、ウエハは高温でその形状となり、成形工具(図示せず)あるいは任意の他の支持層または材料から分離し、チャンバの外側で冷却しても、その形状を保持する。
【0059】
98keVという高エネルギー、および/または120keVというさらに高いエネルギーをもつ単湾曲または二重湾曲の光学素子は、この方法で製造することができる。上述したように、例えば約0.5mmの厚さを有するLiFウエハを用いて、必要な構造的完全性を提供することができる。かかる光学素子は、例えば、図6に示す装着状態の構造体200において、中エネルギー光学素子(205)および高エネルギー光学素子(207)として用いることができる。
【0060】
改良された分析器システム
本発明に従い、例示的なSDD検出器、改善された線源、低エネルギー光学素子、中エネルギー光学素子および高エネルギー光学素子を用いて構成された、サンプル玩具を測定する例示的なME EDXRF分析器が図11に示されている。
【0061】
コンプトン/レイリー(C/R)モデリングとともに単色システム用の基本的パラメータ(fundamental parameter;FP)技術を用い、上述した光学素子および/または線管によって生成された複数の単色ビームで刺激したサンプルから検出された蛍光X線データを処理することができる。FP技術は、単一のエネルギー励起ビームに基づいており、均一なバルク測定のために好適である。複数の単色ビームを用い、スペクトルの異なる部分を感知し、毒素とペイント層とを別々に基材においてデコンボリュート(de-convolute)することができる。
【0062】
複数の単色ビーム励起に基づくエネルギー分散型蛍光X線(ED XRF)スペクトルをフィッティングするために、スペクトルプロセッサ(SP)を使用することができる。入力に対しては、カウント数対エネルギースペクトルの検出器からの生のスペクトルデータを使用することができる。スペクトルにおける様々な構成要素を把握するために、ピークフィッティングに対するガウスモデリングなどの多くの技術を利用することができる。システムおよび検出器からのノイズも考えられる。
【0063】
基本的パラメータ(FP)に基づく技術はまた、コーティング層の定量的分析に有用である。この技術では、吸収、蛍光および散乱は、測定された多数の要因に基づいてモデル化される。単色ビームの使用によって、多色励起に用いられるFP法に比べ、計算を簡略化することができる。
【0064】
層状モードのFPは、ペイント/基材サンプルの各別の組成物に分解するために、基材とペイントとの組み合わせからの、続いて基材のみからのスペクトルを必要とし得る。一つの技術的課題は、ペイント中の低原子番号元素(C,H,O)が検出できないことに起因して、単位面積当たりのペイントの質量が未知となっていることである。被覆についての単位面積当たりの質量はρt(密度×厚さ)と称され、毒素の質量分率を計算するために決定されるべきものである。2以上の単色ビームを用いて、ペイント中の、および独立して基材中の、そしてサンプル中の毒素濃度を判定することができる。
【0065】
また、本発明によれば、図12に示されるように、より小型の「ハンドヘルド」X線分析器を本発明の原理に従って実現することができる。ハンドヘルドX線分析器は、それらの可搬性と使いやすさの故に、ここ数年人気を得ている。また、図12に示したものはヒューマン・インターフェース・モジュールであり、ユーザインターフェース、FPプロセッサおよび/またはハンドヘルド分析器用の電源を含んでいてもよい。かかるインターフェースはまた、分析器と一体であってもよい。
【0066】
図13は、これらのシステムのいずれかのためのグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)の例を示している。この例示的なGUIは、ユーザによるサンプルタイプの選択、10元素の濃度および関連するスペクトルの表示を可能にするものである。GUIはまた、サンプルポジショニングを支援するために、試料のライブ画像を表示するものでもよい。図13にはGUIのスナップショットが示されている。
【0067】
好ましい実施形態を図示および説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更、追加、置換などを行うことができることは当業者には明らかであり、従ってこれらは特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内にあると見なされるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13