【文献】
N F LAZAREVA,(N-METHYL-N-ALKOXYMETHYLAMINOMETHYL)DIALKOXYSILANES 以下備考,RUSSIAN CHEMICAL BULLETIN,1995年 2月,V44 N2,P374-375,AND BIS[N-METHYL-N-(DIALKOXYSILYLMETHYL)AMINO]METHANES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子材料と、前記炭素系充填剤と、前記加水分解性シランとを共に好ましくは120〜200℃の温度で加熱することによって、前記高分子材料を架橋する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
加水分解性シランによる処理によって炭素系充填剤の表面を改質する本発明の方法は、加水分解性シランが次の式のシランであることを特徴とする。
【化1】
(式中、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、nは1〜3であり、Yは、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Xは、−O−又は−NH−を表し、mは0又は1であり、R
2は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表し、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
3は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表し、及びR
1は、上記のように定義された式R
3−Z−CH(R
2)−の基以外の1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。)
【0007】
本発明は、上記のように定義された式R
3−Z−CH(R
2)−N(R
1)−(CH
2−C(=O)−X)
m−Y−SiR
nR”
3−nの加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤を包含する。
【0008】
本発明はまた、上記のように定義された式:
【化2】
の加水分解性シランの使用であって、炭素系充填剤の表面を改質して当該充填剤の表面に反応性官能基を導入するための、使用を包含する。
【0009】
上記のように定義された式:
【化3】
の加水分解性シランは、炭素−炭素不飽和を含有する材料と強く結合する可能性がある。炭素繊維、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、フラーレン、グラフェン、膨張性グラフェン及び膨張性黒鉛などの炭素系充填剤は、一般にいくらかの炭素−炭素不飽和を含有する。上記のように定義された式:
【化4】
の加水分解性シランは、例えば充填剤入りポリマー組成物を製造するために用いられるプロセス条件においてかかる炭素系充填剤と結合する。ポリマー配合時に用いられる温度まで加熱すると、前記加水分解性シランのエーテルアミン部分又はトリエーテルアミン部分は、非常に反応性の高い種を形成し、それが炭素系充填剤中に含まれるC=Cと[2+3]環化付加によって反応すると考えられる。上記のように定義された式:
【化5】
の加水分解性シランはまた、シラン基の加水分解によってシロキサンポリマー、アルコキシシラン基を含有するポリマー及び水酸基を含有するポリマーと強く結合することで、かかるポリマー中で炭素系充填剤に有効な結合剤を形成する可能性がある。
【0010】
nが3である加水分解性シランは、最大数の加水分解性基を有するので好ましい場合がある。nが3である式R
nR’
3−nSi−Y−の基の例としては、トリエトキシシリルアルキル基若しくはトリメトキシシリルアルキル基などのトリアルコキシシリルアルキル基、又はトリアセトキシシリルアルキル基が挙げられる。しかしながら、nが2であるか又はnが1である加水分解性シランもまた有用なカップリング剤である。かかる加水分解性シランにおいて、基R’は、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。好ましい基R’としては、メチル若しくはエチルなどの1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が挙げられるが、R’は、ヘキシル若しくは2−エチルヘキシルのように更に多くの炭素原子を有するアルキル基でもあり得、又はフェニル等のアリール基でもあり得る。nが2である式R
nR’
3−nSi−Y−の基の例としては、ジエトキシメチルシリルアルキル基、ジエトキシエチルシリルアルキル基、ジメトキシメチルシリルアルキル基又はジアセトキシメチルシリルアルキル基が挙げられる。
【0011】
基Rがエトキシ基である加水分解性シランは、多くの場合、好ましい。シランが加水分解されるとアルコール又は酸RHが放出される場合があり、前記アルコール及び酸の中でも、エタノールが最も環境に優しい化合物である。
【0012】
式−Y−SiR
nR”
3−nの基において、Yは、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表す。好ましくは、Yは2〜20個の炭素原子を有する。Yは、好都合にはアルキレンン基、特に2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり得る。結合Yの好ましい例は、−(CH
2)
3−基、−(CH
2)
4−基、及び−CH
2CH(CH
3)CH
2−基である。式R
nR’
3−nSi−Yの基は、例えば、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、4−(トリエトキシシリル)ブチル基、2−メチル−3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基、3−トリアセトキシシリルプロピル基、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル基、3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル基又は3−(ジアセトキシメチルシリル)プロピル基であり得る。
【0013】
式:
【化6】
の加水分解性シランは、式:
R
1−NH−(CH
2−C(O)−X)
m−Y−SiR
nR”
3−n(式中、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、nは1〜3であり、Yは、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合基を表し、Xは、−O−又は−NH−を表し、mは0又は1であり、R
1は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。)の二級アミノアルキルシランを、式R
2−CHO(式中、R
2は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表す。)のアルデヒド及び式R
3ZH(式中、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
3は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。)のアルコール又はチオールと反応させることによって調製することができる。
【0014】
アルデヒド及びアルコール又はチオールと反応する二級アミノアルキルシランにおいて、基R
1は、例えば、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表すことができる。例えば、基R
1は、H(CH
2)
1〜8などのアルキル基、例えばメチル又はエチル基であり得る。あるいは、基R
1は、アリール又はアラルキル基、例えばフェニル基又はベンジル基であり得る。mが0のとき、二級アミノアルキルシランは、例えば、CH
3−NH−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であり得る。あるいは、mが1のとき、二級アミノアルキルシランは、例えば、CH
3−NH−CH
2−C(O)O−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であり得る。
【0015】
二級アミノアルキルシラン及びアルコール又はチオールと反応するアルデヒドは、式R
2−CHOで表され、式中、R
2は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表す。好ましいアルデヒドはホルムアルデヒドであり、この場合、R
2は水素を表す。ホルムアルデヒドは、例えば、パラホルムアルデヒドの形態で反応物に添加することができる。代替のアルデヒドとしては、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドが挙げられる。
【0016】
式:
【化7】
の、好ましい一連の加水分解性シランにおいて、Zは、酸素原子を表し、R
3は、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す。かかるシランは、式R
3OHのアルコールと二級アミノアルキルシラン及びアルデヒドとの反応により形成することができる。好適なアルコールの例としては、エタノール、メタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール及び2−エチルヘキサノールが挙げられる。アルコールは、二級アミノアルキルシラン及びアルデヒドとの反応において、溶媒及び試薬の両方の役割を果たす可能性がある。
【0017】
最も好ましいアルコールはエタノールであり、すなわち、R
3は好ましくはエチルである。本発明の加水分解性シランが炭素系充填剤中に含まれるC=C結合と[2+3]環化付加によって反応すると、R
3OHのアルコールが発生する場合がある。エタノールは、最も環境に優しいアルコールなので、好ましい。
【0018】
このタイプの加水分解性シランの例としては、
・C
2H
5−O−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3
・C2H5−O−CH2−N(C6H5)−(CH2)3−Si(OC2H5)3
・C2H5−O−CH2−N(CH3)−CH2−C(O)O−(CH2)3−Si(OC2H5)3
並びに、
・C2H5−O−CH2−N(CH2C6H5)−(CH2)3−Si(OC2H5)3
が挙げられ、いずれも、溶媒及び試薬としてのエタノールの存在下における好適な二級アミノアルキルシランとパラホルムアルデヒドとの反応によって形成される。
【0019】
あるいは、次の式の加水分解性シランにおける基R
1は、
【化8】
式−Y
*−SiR
qR”
3−qの基を表す可能性があり、前記式中、Y
*は、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、qは1〜3である。結合Y
*は、Yと同一であっても又は異なっていてもよく、qは、nと同一であっても又は異なっていてもよい。通常、基−Y
*−SIR
qR”
3−qは、基−Y−SiR
nR”
3−nと同一であり、すなわち、アルデヒド及びアルコール又はチオールと反応する二級アミノアルキルシランは、式HN(−Y−SiR
nR”
3−n)
2で表される。二級アミノアルキルシランは、例えば、HN(−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3)
2であり得る。かかる二級アミノアルキルシランとホルムアルデヒド及びアルコールとから形成される加水分解性シランは、次の式で表される。
R
3−O−CH
2−N(−Y−SiR
nR”
3−n)
2
【0020】
かかる加水分解性シランには、シリカなどの充填剤と結合する加水分解性基Rが多数あるという利点がある。本発明の加水分解性シランは、例えば、C
2H
5−O−CH
2−N[(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3]−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であり得る。
【0021】
あるいは、二級アミノアルキルシランは、例えば、式
R
nR”
3−nSi−Y−(X−C(O)−CH2)m−NH−(CH
2)
d−NH−(CH
2−C(O)−X”)
m”−Y
**−SiR
rR”
3−rのビス(二級アミノアルキルシラン)であり得る。(式中、R、R”、n、Y、X及びmは上記のように定義された通りであり、dが1〜8のとき、R
8は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表し、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
9は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表し、X”は、−O−又は−NH−を表し、m”は0又は1であり、Y
**は、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、rは1〜3である。)かかる二級アミノアルキルシランと式R
2−CHOのアルデヒド及び式R
3OHのアルコールとの反応は、次の式で表される本発明の加水分解性シランを形成する。
【化9】
ここで、R
1は、次の式の基を表す。
【化10】
【0022】
二級アミノアルキルシランは、例えば、式:
(C
2H
5O)
3Si−(CH
2)
3−NH−(CH
2)
d−NH−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であって、ホルムアルデヒド及びエタノールとの反応によって式:
【化11】
で表される本発明の加水分解性シランを形成するものであり得る。
【0023】
あるいは、次の式の加水分解性シラン中の基R
1は、
【化12】
式−(CH
2)
e−C(O)OR
10(式中、eは1〜8であり、R
10は、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、例えば、エチルカルボキシメチル基又はメチル3−カルボキシプロピル基を表す。)のカルボキシアルキルエステル基であり得る。二級アミノアルキルシランは、例えば、式C
2H
5−C(O)O−CH
2−NH−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であって、ホルムアルデヒド及びエタノールとの反応によって式:
【化13】
で表される本発明の加水分解性シランを形成するものであり得る。
【0024】
あるいは、二級アミノアルキルシラン及びアルデヒドと反応する式R
3OHのアルコールは、式HO−((CH2)
aO)
b−R
4(式中、aは1〜3であり、bは1〜6であり、R
4は、水素又は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表す。)の基であり得る。この場合、アルコールR
3OHは、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどのジオール、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、エトキシエタノール又はメトキシエタノールなどのエーテルアルコール、又はエトキシエトキシエタノールなどのポリオキシアルキレングリコールモノエーテルである。
【0025】
アルコールR
3OHがエーテルアルコール又はポリオキシアルキレングリコールモノエーテルのとき、式R
1−NH−(CH
2−C−X)
m−Y−SiR
nR”
3−nの二級アミノアルキルシラン及び式R
2−CHOのアルデヒドとの反応により、次の式の加水分解性シランが形成される。
【化14】
(式中、R
3は、アルコキシアルキル基又はポリ(アルコキシ)アルキル基を表す。)かかる加水分解性シランの例は、エトキシエタノールとN−メチル−3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン及びホルムアルデヒドとの反応によって形成される、C
2H
5−O−CH
2CH
2−O−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3である。
【0026】
アルコールR
3OHがジオール又はポリオキシアルキレングリコールのとき、二級アミノアルキルシラン及びアルデヒドとの反応により、ジオール又はポリオキシアルキレングリコールが化学量論上、過剰に用いられた場合、ジオール又はポリオキシアルキレングルコールの両方のアルコール基と反応することでビス(シリルアルキルアミノアルキル)エーテルが形成されることもある。HO−((CH2)
aO)
b−R
4(式中、aは1〜3であり、bは1〜6であり、R
4は水素を表す。)のジオール又はポリオキシアルキレングリコールと、式R
1−N−(CH
2−C−X)
m−Y−SiR
nR”
3−nの二級アミノアルキルシラン及び式R
2−CHOのアルデヒドとの反応により、次の式のビス(シリルアルキルアミノアルキル)エーテルが形成される可能性もある。
【化15】
ビス(シリルアルキルアミノアルキル)エーテルの例は、
(C
2H
5O)
3Si−(CH
2)
3−N(CH
3)−CH
2−O−CH
2CH
2−O−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であって、エチレングリコールとN−メチル−3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン及びホルムアルデヒドとの反応によって形成されるものである。
【0027】
ジオール又はポリオキシアルキレングリコールと式R
1−N−(CH
2−C−X)
m−Y−SiR
nR”
3−nの二級アミノアルキルシラン及び式R
2−CHOのアルデヒドとの反応生成物は、次の式のビス(シリルアルキルアミノアルキル)エーテル:
【化16】
と次の式の加水分解性シラン:
【化17】
との混合物であってよく、前記式中、R
3は、次の式のヒドロキシアルキル基又はポリ(アルコキシ)アルキル基を表す。
−((CH2)
aO)
b−H
【0028】
Zが硫黄のとき、すなわち、試薬R
3ZHがチオールのとき、チオールは好ましくは単なるアルキルチオールではない。というのも、ポリマーの配合時に用いられる温度まで加熱すると、炭素系充填剤中に含まれるC=C結合との反応中に悪臭を放つアルキルチオールが生じ得るためである。チオールR
3SH中の基R
3は、好ましくは固定基を含有するので、発生したチオールはいずれもエラストマー組成物中で化学結合したままとなる。最も好ましくは、基R
3は加水分解性シラン基を含有する。というのも、加水分解性シラン基は、シラン基の加水分解によってシロキサンポリマー及びヒドロキシ官能性ポリマーと強く結合し得るためである。R
3は、例えば、式−Y”−SiR
pR”
3−p(式中、Y”は、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、pは1〜3である。)の基であり得る。チオールは、例えば、HS−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であり得る。
【0029】
式HS−Y”−SiR
pR”
3−pのチオールは、R
1−NH−(CH
2−C−X)
m−Y−SiR
nR”
3−nの二級アミノアルキルシラン及び式R
2−CHOのアルデヒドと反応して次の式の加水分解性シランを形成する可能性がある。
【化18】
【0030】
かかる加水分解性シランの例としては、
【化19】
であって、HS−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3をC
2H
5−C(O)O−CH
2−NH−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3及びホルムアルデヒドとの反応によって形成されるもの、(C
2H
5O)
3Si−(CH
2)
3−S−CH
2−N(CH
3)−CH
2C(O)O−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であって、
HS−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3とCH
3−NH−CH
2−C(O)O−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3及びホルムアルデヒドとの反応によって形成されるもの、
【化20】
であって、HS−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3とHN(−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3)
2及びホルムアルデヒドとの反応によって形成されるもの、及び(C
2H
5O)
3Si−(CH
2)
3−S−CH
2−N(CH
3)−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3であって、HS−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3とCH
3−NH−(CH
2)
3−Si(OC
2H
5)
3及びアルデヒドとの反応によって形成されるものが挙げられる。
【0031】
不飽和シランは、部分的に加水分解され、シロキサン結合を含有するオリゴマーへと縮合され得る。大抵のエンドユーザにおいて、かかるオリゴマーはなお、炭素系充填剤とシロキサンポリマー及びヒドロキシ官能性ポリマーとの結合を増強するように、不飽和シランモノマー単位1個に付きSiと結合される加水分解性基を少なくとも1個含有することが好ましい。
【0032】
上記のように定義された次の式の加水分解性シラン:
【化21】
によって処理される炭素系充填剤は、例えば、炭素繊維、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、フラーレン、グラフェン、膨張性グラフェン及び膨張性黒鉛であり得る。
【0033】
加水分解性シランは、一般に、液状のときに炭素系充填剤と接触する。炭素系充填剤は、好ましくは、加水分解性シランにより、110℃〜190℃までの範囲の温度で処理される。上記のように定義された次の式の加水分解性シラン
【化22】
は大抵、好ましい処理温度において液体である。これら液状の加水分解性シランは、希釈せずに又は溶液若しくはエマルションの形態で適用することができる。処理温度において固体の加水分解性シランは、溶液若しくはエマルションの形態で適用される。
【0034】
したがって、本発明の一方法では、高分子材料と炭素系充填剤と加水分解性シランとを共に好ましくは120〜200℃の温度で加熱することによって高分子材料を架橋する。かかるインサイチュー(in-situ)プロセスによれば、改質された充填剤とポリマーマトリックスを含有する複合材料を一工程で形成することが可能である。
【0035】
炭素系充填剤を加水分解性シランで処理するために様々なタイプの装置を用いることができる。好適なタイプは、炭素系充填剤の形態によって決まる。カーボンブラックなどの粒子状充填剤には、バンバリーミキサー、Brabender Plastograph(商標)350Sミキサー、ピンミキサー、二重反転パドルミキサーなどのパドルミキサー、Glatt造粒機、Lodige製充填剤処理装置、プロシェアミキサー、又は回転式円筒型容器内に高せん断力混合アームを備えた強力ミキサーなどのミキサーを使用することができる。炭素繊維などの繊維状充填剤は、綱、紡ぎ糸、タイヤコード、カット繊維又は織物の形態で、繊維産業において既知の好適なプロセスを用いて処理することができ、例えば綱、紡ぎ糸又は織物は、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、リックローラーなどのローラーコーティング、2ロールミル、ディップコーティング若しくはナイフオーバーローラー・コーティング、ナイフオーバーエアー・コーティング、パディングあるいはスクリーン印刷によって処理することができる。
【0036】
加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤は、様々なポリマー組成物に使用できる。この充填剤処理により、充填剤とビニル基を含有するポリマーマトリックスの間にカップリング剤が生成される。熱可塑性樹脂の例としては、例えばポリエチレン若しくはポリプロピレンなどの炭化水素ポリマー、テフロン(Teflon)などのフッ化炭化水素ポリマー、シラン変性炭化水素ポリマー、無水マレイン酸変性炭化水素ポリマー、ビニルポリマー、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタンなどの有機ポリマーが挙げられる。
【0037】
充填剤入り熱硬化性樹脂組成物を製造するとき、改質された炭素系充填剤を一般には熱硬化性樹脂に配合してから、樹脂を硬化する。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、硬化剤としてアミノシランを包含してよい。
【0038】
改質された炭素充填剤はまた、シリコーンポリマーに又はシリル基を含有するポリマーにも使用できる。例えば、改質された炭素充填剤は、シリコーンエラストマー、シリコーンゴム、樹脂、シーラント、接着剤、コーティング、ビニル官能化PDMS(末端及び/又はペンダントSi−ビニル基を有するもの)、シラノール官能性PDMS(末端及び/又はペンダントシラノール基を有するもの)、並びにシリル−アルコキシ官能性PDMS(末端及び/又はペンダントシリル基を有するもの)に用いることができる。かかるシリコーン系材料の広範な用途は、例えば、電子工学において、例えば熱伝導性及び導電性などの熱的特性及び電気特性の管理に認められる。更に、例えばシリコーンポリエーテルなどのシリコーン−有機コポリマー又は末端若しくはペンダントシリル基を有するシリル変性有機ポリマーにも使用できる。これには、ポリエーテル、ポリウレタン、アクリレート、ポリイソブチレン、グラフト化ポリオレフィンなどのようなあらゆるタイプのシリル末端ポリマーが包含される。例えば、シリコーンエラストマーは、改質された炭素ナノチューブを含有することで、金属上に、熱的特性が改善された複合コーティングを形成することができる。
【0039】
改質された炭素系充填剤は、ジエンエラストマーなどのエラストマー、すなわち、室温、混合温度又は利用温度において弾性的性質を有するポリマーであって、ジエンモノマーから重合できるものに分散することができる。典型的に、ジエンエラストマーは、すくなとも1個のエン(炭素炭素二重結合、C=C)を含有するポリマーであって、C=C結合と隣接するα炭素上に水素原子を有するものである。ジエンエラストマーは、天然ゴムなどの天然ポリマーであり得、又は少なくとも部分的にジエンに由来する合成ポリマーであり得る。ジエンエラストマーは、例えば、次のものであり得る。
(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合することで得られるいずれかのホモポリマー、
(b)1種以上の共役ジエンと共に又は1種以上の共役ジエンと、8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と、の共重合によって得られるいずれかのコポリマー、
(c)エチレン、すなわち3〜6個の炭素原子を有する[α]オレフィンと、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる三元共重合体であって、例えば、エチレンやプロピレンと前記のタイプの非共役ジエンモノマー、具体的には1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエンから得られるエラストマー、
(d)イソブテン及びイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、並びに更に、この種のコポリマーのハロゲン化形態、具体的には塩素化若しくは臭素化形態。
【0040】
好適な共役ジエンは、具体的には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジ(C
1〜C
5アルキル)−1,3−ブタジエン、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンなどである。好適なビニル−芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト−、メタ−及びパラ−メチルスチレン、市販混合物「ビニルトルエン」、パラ−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン並びにビニルナフタレンである。
【0041】
例えば、熱可塑性樹脂と熱硬化樹脂又はエラストマーとを含む充填剤入りポリマー組成物は、炭素系充填剤が加水分解性シランによる処理によって改質されると、高分子材料に対して改善された炭素系充填剤の付着性/結合を現す。このことは、炭素系充填剤と当該充填剤が分散されたポリマーマトリックスとの間に密なネットワークの形成を確実にする可能性がある。充填剤とポリマーマトリックスとの間のより良好なカップリングによって、更に優れた強化特性が生じ、また、更に優れた熱伝導性及び導電性が生じる可能性もある。
【0042】
例えば、有機ケイ素ポリマーと改質された炭素系充填剤とを含む充填剤入りのポリマー組成物は、加水分解性シランが充填剤と有機ケイ素ポリマーマトリックスとの間で相溶化剤として働くという利点を有する。有機ケイ素ポリマーは、ポリジオルガノシロキサンなどのオルガノポリシロキサンであり得る。ポリジメチルシロキサンなどのポリジオルガノシロキサンは、多くの場合、Si結合OH末端基又はSi結合アルコキシ末端基を有し、本発明の加水分解性シランは、かかる有機ケイ素ポリマーと特に強く結合する。加水分解性シランは、このように炭素系充填剤及び有機ケイ素ポリマー用のカップリング剤として働いて、物理的性質が改善された充填剤入りポリマー組成物を形成する。改善可能な物理的性質の例としては、熱伝導性ひいては熱放射、難燃性、強化によってもたらされる引張強さなどの機械的特性、ポリマー/充填剤界面における亀裂破損の軽減、導電性、並びに熱安定性が挙げられる。例えば、導電性の改善は、電子デバイスや太陽電池に用いられるポリマー組成物に役立つ。
【0043】
同様の利点は、加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤を、アルコキシシランでグラフト化されたポリマー、例えばビニルアルコキシシランでグラフト化されたポリエチレン又はアクリルオキシシラン若しくはソルビルオキシシランでグラフト化されたポリプロピレン、或いはポリアミドを含むポリマー組成物に混入したときにも得られる。熱安定性の向上が大いに役立つ用途の例は、グラフト化ポリプロピレン製ホースの製造であり、その場合、高い熱たわみ温度が達成される。シランで改質されたポリマー組成物は、例えば、国際特許出願公開WO2010/000477、同WO2010/000478及び同WO2010/000479に記載されている。
【0044】
同様の利点は、加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤を、シランで変性されたゴム組成物、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、IIR(ブチルゴム)に混入したときにも得られる。シランで変性されたゴムは、例えば、国際特許出願公開WO 2010/125124及び同WO2010125123に記載されている。
【0045】
加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤が使用できる別のタイプのポリマー組成物は、有機ポリマーと有機ケイ素基を含有する架橋剤とを含む組成物である。かかる組成物の例は、アミノ官能性アルコキシシラン架橋剤を含有するエポキシ樹脂組成物である。加水分解性シランは、こうして炭素系充填剤とアミノ官能性アルコキシシランとの間でカップリング剤として働き、また、アミノ官能性アルコキシシランがエポキシ樹脂を架橋すると、加水分解性シランは、炭素系充填剤とエポキシ樹脂マトリックスとの間でカップリング剤として働くことで、物理的性質が改善された充填剤入りエポキシ組成物が形成される。
【0046】
さらに、加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤を用いて、より軽量で同等の物理的性質を有する、充填剤入りポリマー組成物を得ることも可能である。炭素系充填剤は一般に、有機ケイ素ポリマー組成物に用いられるシリカ充填剤よりも30%軽く、グラフェン又は炭素ナノチューブもまた、より低い体積分率で同様の強化をもたらす。加水分解性シランによる処理によって改質された同様の炭素繊維は、ガラス繊維と置き換えた場合、同等の物理的性質を有する更に軽量の組成物を形成することが可能である。
【0047】
加水分解性シランは更に、加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤と別の充填剤とを共に充填剤入りポリマー組成物中で用いたとき、カーボンブラックなどの炭素系充填剤と、ガラス繊維充填剤、でんぷん、セルロースナノウィスカを包含するセルロースなどのバイオフィラー、麻繊維、木材、タルクなどの別の充填剤との間の相溶性及び付着力も改善する。その結果、組成物、例えば風力タービン翼を形成するための組成物の物理的性質も改善される。
【0048】
加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤は、充填剤入りポリマー組成物中で別の充填剤と併用することができる。かかる別の充填剤は、任意の別のタイプの合成又は天然の充填剤又は繊維であり得、例えば、ガラス繊維、木質繊維又はシリカ、或いはでんぷんやセルロースナノウィスカを包含するセルロースなどのバイオフィラー、麻繊維、タルク、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどを挙げることができる。充填剤の混合物は、上述のような熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー中で用いることもできる。加水分解性シランによる処理によって改質された炭素系充填剤とガラス繊維充填剤との混合物は、例えば、風力タービン翼を形成するための充填剤入りポリマー組成物中で用いることも可能である。本発明は、加水分解性シランによる処理によって炭素系充填剤の表面を改質する方法であって、加水分解性シランが、式:
【化23】
式中、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、nは1〜3であり、Yは、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Xは−O−又は−NH−を表し、mは0又は1であり、R
2は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表し、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
3は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表し、R
1は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。)のシランである、方法を提供する。好ましくは、R
1は、上記のように定義された式R
3−Z−CH(R
2)−の基以外の、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。
【0049】
本発明は、Zが酸素原子を表し、R3が1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す、方法を提供する。
【0050】
本発明は、Zが酸素原子を表し、R3が、式−((CH2)aO)b−R4(式中、aが1〜3であり、bが1〜6であり、R4が、水素又は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表す。)の基を表す、方法を提供する。
【0051】
本発明は、Zが硫黄原子を表し、R3が、式−Y”−SiRpR”3−p(式中、Y”が、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rがそれぞれ加水分解性基を表し、R”がそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、pは1〜3である。)の基を表す、方法を提供する。
【0052】
本発明は、R1が、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す、方法を提供する。
【0053】
本発明は、R1が、式−Y
*−SiRqR”3−q(式中、Y
*は、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、qは1〜3である。)の基を表す、方法を提供する。
【0054】
本発明は、R1が式:
【化24】
(式中、dは1〜8であり、R
8は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表し、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
9は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表し、X”は、−O−又は−NH−を表し、m”は0又は1であり、Y
**は、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、rは1〜3である。)の基を表す、方法を提供する。
【0055】
本発明は、R1が式−(CH2)e−C(O)OR10(式中、eが1〜8であり、R10が1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す。)の基を表す、方法を提供する。
【0056】
本発明は、R2が水素を表す、方法を提供する。
【0057】
本発明は、基Rがそれぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基である、方法を提供する。
【0058】
本発明は、基Rがそれぞれエトキシ基である、方法を提供する。
【0059】
本発明は、aが3である、方法を提供する。
【0060】
本発明は、炭素系充填剤が炭素繊維及び/又はカーボンブラックを含む、方法を提供する。
【0061】
炭素系充填剤は、好ましくは、炭素ナノチューブ、フラーレン、グラフェン及び膨張性グラフェンから選択される。
【0062】
本発明は、高分子材料と、炭素系充填剤と、加水分解性シランとを共に好ましくは120〜200℃の温度で加熱することによって、高分子材料を架橋する、方法を提供する。
【0063】
本発明は、上記のように定義された式:
【化25】
の加水分解性シランによる処理によって改質される炭素系充填剤を提供する。
【0064】
本発明は、有機ケイ素ポリマーと、上記のように定義された改質された炭素系充填剤とを含む、充填剤入りポリマー組成物を提供する。
【0065】
本発明は、有機ポリマーと、有機ケイ素基を含有する架橋剤と、上記のように定義された改質された炭素系充填剤と、を含む、充填剤入りポリマー組成物を提供する。
【0066】
本発明は、ポリマーマトリックスと、上記のように定義された改質された炭素系充填剤と、任意の別のタイプの充填剤又は繊維と、を含む、充填剤入りポリマー組成物を提供する。
【0067】
本発明は、上記のように定義された式:
【化26】
(式中、Rはそれぞれ加水分解性基を表し、R”はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、nは1〜3であり、Yは、1〜20個の炭素原子を有する二価の有機スペーサ結合を表し、Xは、−O−又は−NH−を表し、mは0又は1であり、R
2は、水素又は1〜8個の炭素原子を有するヒドロカルビル若しくは置換ヒドロカルビル基を表し、Zは、酸素又は硫黄原子を表し、R
3は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表し、R
1は、式R
3−Z−CH(R
2)−の基以外の1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基を表す。)の加水分解性シランの使用であって、炭素系充填剤の表面を改質して充填剤の表面に反応性官能基を導入するための、使用を提供する。
【0069】
N−(エトキシメチル)−N−(メチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの詳細な合成。冷却器、窒素掃引及びマグネチックスターラを装備した250mLの2つ口丸底フラスコに、44.03gのN−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6.84gのパラホルムアルデヒド、及び36.89gのエタノールを入れた。懸濁液を激しく撹拌し、窒素の不活性雰囲気下で80℃まで加熱した。反応混合物中の固体粒子が完全に消失するまでエタノールの還流を1時間未満続けて、その後、エタノールを真空下で除去した。エトキシメチルアミン構造の形成は、核磁気共鳴によって確認した。
【0071】
N−(メトキシメチル)−N−フェニル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンの詳細な合成。冷却器、窒素掃引及びマグネチックスターラを装備した250mLの2つ口丸底フラスコに、44.1gのN−フェニル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、5.2gのパラホルムアルデヒド、及び35mLのメタノールを入れた。懸濁液を激しく撹拌し、窒素の不活性雰囲気下で65℃まで加熱した。反応混合物中の固体粒子が完全に消失するまでメタノールの還流を1時間未満続けて、その後、メタノールを真空下で除去した。メトキシメチルアミン構造の形成とトリメトキシシラン部分の保存はいずれも、核磁気共鳴によって確認した。
【0073】
N−(メトキシメチル)−N−フェニル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンの詳細な合成。冷却器、窒素掃引及びマグネチックスターラを装備した250mLの2つ口丸底フラスコに、39.03gのビス−(トリエトキシシリルプロピル)−アミン、9.73gのベンズアルデヒド、及び21.33gのエタノールを入れた。懸濁液を激しく撹拌し、窒素の不活性雰囲気下で65℃まで加熱した。反応混合物中の固体粒子が完全に消失するまでエタノールの還流を1時間未満続けて、その後、メタノールを真空下で除去した。エトキシメチルアミン構造の形成とトリエトキシシラン部分の保存はいずれも、核磁気共鳴によって確認した。
【0075】
N−(エトキシメチル)−N,N−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンの詳細な合成。冷却器、窒素掃引及びマグネチックスターラを装備した1Lの2つ口丸底フラスコに、343.1gのN,N−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、24.2gのパラホルムアルデヒド、及び200mLのエタノールを入れた。懸濁液を激しく撹拌し、窒素の不活性雰囲気下で80℃まで加熱した。反応混合物中の固体粒子が完全に消失するまでエタノールの還流を5分未満続けて、その後、エタノールを真空下で除去した。最終生成物は、純度99+%及び収率95%で単離した。エトキシメチルアミン構造の形成とトリエトキシシラン部分の保存はいずれも、核磁気共鳴によって確認した。
【実施例】
【0076】
(実施例1〜4)
実施例1〜4及び比較例1〜4では、次の材料を用いた。
・シラン1−N−メトキシメチル−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン
・シラン2−N−メトキシメチル−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン
・シラン3−N−α−エトキシベンジルアミノ−ビス(プロピルトリエトキシシラン)
・シラン4−N,N−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−N−1−(エトキシベンジル)アミン
・シラン5−N−メチル−アミノプロピルトリメトキシシラン
・p−H2CO−Sigma Aldrich製パラ−ホルムアルデヒド
・CNT−Nanocyl company製多層炭素ナノチューブ−Nanocyl(商標)NC 7000
【0077】
いずれの実施例も、次の処理手順を用いて作製した。シランと非シラン分子とをCNTの表面上に良好に付着させるように、エタノール分散液を調製した−CNT 1gに対して無水エタノール40mLを使用した。CNTを分散させた後、シラン及び必要に応じてp−H2COを加えた。この溶液を室温で2時間攪拌した。撹拌後、ロータリーエバポレータ(rotavapor)を用いて50℃の温度においてエタノールを真空下で除去した。表面上の、乾燥CNTとシラン、そして含まれる場合はp−H2CO沈着物を、210℃の温風乾燥機内で2時間又は6時間加熱して、CNT表面上の沈着物を最適化した。処理されたCNTを、次いで、エタノールを用いて洗浄して(処理されたCNT 5gに対してエタノール70mL)未反応物質を洗い流した。洗浄し加熱処理されたCNTを、次いで、ロータリーエバポレータを用いて50℃の温度において真空下で乾燥させて、エタノールの痕跡を除去した。その後、得られたサンプルをTGAで解析することで、表面上の残留物質を検出し、グラフト化された材料を定量化した。
【0078】
TGA結果:
装置:TGA851/SDTA(Mettler−Toledo)、アルミナパン150μl、窒素及び空気流(100mL/分)。グラフ上の方法を参照のこと。空のアルミナパンのバックグランドを同様の条件で記録して、各サンプルのTGAから差し引いた(ベースライン補正)。
【0079】
TGA手順:
・N2中、25℃において2分
・N2中、25℃から650℃まで10℃/分で昇温
・N2中、550℃まで冷却
・空気に入れ替えて、550℃で2分
・空気中、1000℃まで10℃/分で昇温
【0080】
シランについての沈着生成物の定量化は、手順の最後における残渣を基準とした。この残渣は、シランの劣化と更には炭素ナノチューブから得た残渣の劣化とによるシリカのチャー形成に相当した。補正残渣重量は、サンプルで測定された残渣から純粋なCNTで得た残渣を差し引いたものに相当し、そうすることでシランのみから得られた残渣を定量化した。
【0081】
生成物のモル量は、次の式を用いて求めた。
解析後のグラフト化CNT 100gに対して、CNT表面上で反応した生成物のモル量=補正残渣(%)/(60×官能価)
ここで、60はシリカの分子量であり、官能価は、各シラン分子におけるSi原子の数である。モノシラン(シラン1及び2)は官能価が1であり、ビスシラン(シラン3及び4)は官能価が2である。
・実施例1〜4はそれぞれシラン1〜4及びCNTを用いて作製した。
・比較例C1は、シラン5、p−H2CO及びCNTを用いて作製した。
・比較例C2は、純粋なCNT標準生成物であった。
・比較例C3は、CNT上での処理手順の影響を理解するために次の全処理手順に従って作製したCNTであった。
・比較例C4は、シラン、特にアミノシランが表面欠陥によってCNTの表面にグラフト化できるという文献に報告されている通りにして、p−H2COを用いず、シラン5とCNTを用いて行った。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
比較例C4に比べると、シランはいずれもCNT上でグラフト化する可能性がより高いことが分かった。
【0085】
比較例C1に比べると実施例1、2及び3は、上記表の結果に基づき、グラフト化する可能性がより高いことがはっきりと分かった。
【0086】
比較例C1は、シラン中に含まれるパラホルムアルデヒドの存在と関連のある比較例C4よりもグラフト化する可能性が高く、シランの存在下では、それによって処理相中にエタノールが放出され、アルコキシ−メチル−アミン同等物を形成した後、CNT構造とグラフト化する可能性があることが分かる。実施例1に比べると、グラフト化度は、2工程のグラフト化プロセス、すなわち、アルコキシ−メチルアミンの形成と、その後のCNTとの反応に起因してかなり低い。
【0087】
ラマンスペクトルからは、2dバンドの変化を示すことによるMWCNT由来のC=C上でのアルコキシ−メチル−アミンシランのグラフト化が確認されなかった。その時点のラマンからは、グラフト化量が確認できなった。
【0088】
熱処理前のサンプルについてのDSC測定からは更に、アルコキシ−メチル−アミンシランを用いると180℃ちょうどの温度において強い発熱の存在も確認された。DSCからは、窒素原子に対してα位にある炭素上でのアルコキシ基の損失に相当する、最初の小さな吸熱も示された。
【0089】
DSC測定からは、いくつかのシラン、例えばシラン4などは更に高温又は長い接触時間を要するといえる。この接触時間又は高温によって、より有効なグラフト化を可能にし、また、リンス中に材料を損失することなく、CNT表面上でのシランのグラフト化を軽減すると考えられる。
【0090】
CNTは、例えば、カーボンブラック、長い炭素繊維、炭素繊維マット又はグラフェンなどのあらゆるタイプの炭素充填剤に効果的なモデルであるといわれている。前記シランを使用することで、の表面上でシラン又はシロキサンの共有結合的なグラフト化が可能となる。
【0091】
これらシランは、炭素充填剤の表面上に新たな化学的性質を導入させるために第2のシランと共に使用される可能性がある。この新たな官能性は、任意のポリマーマトリックスに対する炭素充填剤の反応性を更に高めることで、マトリックスと充填剤とを結合させて機械的性能を向上させると考えられる。シランの例としては次のものが考えられる。
・プリント回路基板若しくは巻鉄芯翼のラミネート用のエポキシマトリックス又は自動車用途用の無水マレイン酸−g−ポリプロピレンのためのアミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシ−プロピル−トリメトキシシラン、
・プリント回路基板若しくは巻鉄芯翼のラミネート用のメタクリルオキシプロピル又はビス−(トリトキシシリルプロピル)−フマレート、
・ポリエステル樹脂用のビニルシラン、
・ジエンエラストマー及びタイヤ又は工業用ゴム製品用途用のビス−(トレエトキシシリルプロピル(trethoxysilylpropyl))−フマレート又はメルカプトプロピルトリエトキシシラン又はビス−(トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン又はジスルファン、
・純粋なポリプロピレン用のソルビルオキシプロピルトリメトキシシラン。
・あらゆるタイプのポリマーマトリックスとグラフト化又は反応することが当該技術分野において知られている任意のシランを使用することも可能である。