特許第6139556号(P6139556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139556移動する石こうボード内に凹みを形成するための加圧装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139556
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】移動する石こうボード内に凹みを形成するための加圧装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/10 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B28B11/10
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-546505(P2014-546505)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-500752(P2015-500752A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012075380
(87)【国際公開番号】WO2013087766
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】11290582.3
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12290248.9
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514151409
【氏名又は名称】セン・ゴバン プラコ エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,レミ
(72)【発明者】
【氏名】モングローレ,ジャン ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ドラッグ,ダリウス
(72)【発明者】
【氏名】モーラット,リシャール
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/020146(WO,A1)
【文献】 米国特許第02238017(US,A)
【文献】 特開平05−193042(JP,A)
【文献】 特開昭60−253508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する湿り石こうボード内に凹みを形成するための加圧装置であって、
当該加圧装置は、ボードに接触するように構成された加圧面を具備する加圧ヘッドと、支持部材とを備えており、
前記加圧ヘッドは、ボード内に凹みを形成すべく、前記加圧面と前記支持部材との間でボードの一部を圧縮するように構成されており、
当該加圧装置は更に、移動するボードの方向にほぼ対応する第1の方向、及び、ボードの平面にほぼ直交する第2の方向に、前記加圧ヘッド及び前記支持部材を移動させるための駆動手段を備えており、
前記加圧面は、第1の表面部分と第2の表面部分とを備えており、前記第1及び第2の表面部分は、レリーフ部によって分割され、且つ、前記レリーフ部によってボードに及ぼされる圧縮力よりも大きな圧縮力で前記支持ヘッドに向けてボードを押圧するように構成されている、ことを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
前記レリーフ部は溝を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の加圧装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記加圧ヘッド及び前記支持部材を前記第1の方向に、前記移動するボードの速度とほぼ一致する速度に加速するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加圧装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記第1の方向における前記加圧ヘッド及び支持部材の速度を前記移動するボードの速度にほぼ一致させながら、前記加圧ヘッドを前記支持部材に向けて移動させて前記ボード内に凹みを形成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の加圧装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の表面部分は個別に一つの平面を備える、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加圧装置。
【請求項6】
前記加圧面は、前記加圧ヘッドに着脱可能に連結された又は前記加圧ヘッドと一体形成されたダイ(型部)上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加圧装置。
【請求項7】
前記レリーフ部は、前記ボードの幅を横切って延びるように構成されており、開口または凹部を備えてなる、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加圧装置。
【請求項8】
移動する湿り石こうボード内に凹みを形成するための方法であって、
当該方法は、加圧装置を使用するものであり、
当該方法は、次の各工程、即ち、
石こうボードを提供する工程と、
前記ボードの搬送方向における前記加圧装置の速度を前記ボードの速度にほぼ一致させながら、それと同時的に、前記加圧装置を前記ボードに向けて移動させて、前記加圧装置を前記ボードの一部に接触させるように、前記加圧装置を前記ボードの搬送方向に移動させる工程と、
前記加圧装置に前記ボードを圧縮させ、ほぼ同時に、前記ボードの相対的非圧縮部の両側それぞれに凹みを形成する工程と、
を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記方法は更に、
前記ボードの搬送方向における前記加圧装置の速度と、前記移動するボードの速度とを比較する工程と、
両速度間の差に応じて、前記加圧装置の速度を調節する工程と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ボードの搬送方向における前記加圧装置の速度は、ホーキンスリンク機構(Hoekens linkage)によって前記ボードの速度に一致させられる、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ボードの搬送方向における前記加圧装置の速度は、内トロコイド運動(hypotrochoid motion)によって前記ボードの速度に一致させられる、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記加圧装置を前記ボードに接触させて圧縮する工程は、少なくとも10%の石こう水和が起きたときに実行される、ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加圧装置を前記ボードに接触させて圧縮する工程は、少なくとも40%の石こう水和が起きたときに、実行される、ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記石こうボードは、シリコーンオイルを含む、
ことを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シリコーンオイルは、100〜1200g/mの量で存在する、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボード内に凹みを形成するための加圧装置及び方法に関する。とりわけ(但し、それに限定するものではないが)、移動する湿った石こうベースのボード内に凹みを形成するための加圧装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石こうボードあるいは石こう壁ボードは、ライニングペーパーからなる二つの外層間に挟まれた石こう(硫酸カルシウム2水和物)の内層を備える。石こうボードは、スタッコ(stucco)としても知られている焼き石こう(半水和物)を、水および添加剤と共に連続ミキサーに送り込むことで製造される。生み出されたスラリーは、ライニングペーパーの連続層間に配置されると共に、それを所望の厚さに圧縮する押出しシステムを通過させられる。この連続した湿り石こうボードがコンベアラインに沿って移動するにつれ、硫酸カルシウム半水和物が、そのオリジナルの2水和物形態に再水和する。湿潤した石こうボードは最初、ソフトであるが、ボードのコア部分が迅速に固まって硬化する。ペーパーは、ボードのコア部分に化学的及び機械的に結合するようになる。その後、石こうボードは所定長さに切断され、過剰の水分を取り除くべく乾かされて硬い乾式壁を生み出す。
【0003】
石こうボードは、典型的には直線状の壁や天井に使用され、横並びの関係で壁や天井に固定される。ボード間のジョイントは、典型的にはメッシュテープで覆われ、ジョイントコンパウンド(結合用素材)がボード配列に適用(塗布)されて、ボード間のジョイントを覆うと共にスムーズな仕上げを提供する。このことは、ボード全体にしっくいを塗ることや大きなジョイントを使うことの必要性を未然に取り除く。しかしながら、仕上げの時間を短縮し、スムーズな仕上がりを得るために使われる仕上げ石こうの量を減らすため、石こうボードはまた、長手方向にテーパーなエッジ(縁部)を伴って形成され、その結果、メッシュテープはそのテーパーな領域に適用され、該テーパーな領域はジョイントを覆うべく満たされる。
【0004】
このテーパーを形成するためには、押圧デバイスで石こうを圧縮することが必要となるが、これは、ライニングが石こうから分離するのを防止し且つ部分的に固まった石こうが押圧後の形状を維持可能であることを確実にすべく、湿った石こう層が部分的に固まったらすぐに(圧縮が)なされなければならない。EP0482810は、圧縮時の石こうの横方向へのシフト(ずれ)を回避するために、圧力が成功裏に付与され得る前の最小点に石こうがセット(固化)されなければならないことを開示する。このセッティング(固化作用)は、石こうの塊が横方向にずれることなく圧縮を許容するに十分な程度の剛性をコア部分が獲得するポイント(点)まで達しなければならない。
【0005】
テーパーを作るための石こう層の再形成は一般に、石こう層をその底面から圧縮することによって実行され、これは典型的には、石こう層の水和サイクル(水和周期)中の特定の時間に対応するところの、生産ラインに沿った位置で実行される。水和サイクルの初期に層を再形成することは、石こうを圧縮する即ち高密度化するのに必要な力を小さくするという利点を有するが、しかし、水和サイクル初期における石こうの低粘度化、及び、層の底面におけるテーパーな凹みの形成は、圧縮後の形状を保持する圧縮石こうの能力を低下させる。特に、石こう層は、再形成操作後に垂れ下がる傾向にあり、その結果、石こう層の上面(即ち、圧縮力の適用領域の反対側)に凹みが形成される。それとは逆に、水和サイクルの後期に石こう層を再形成することは、当該層を圧縮する即ち高密度化するのに必要な力を増大させるが、圧縮された層が所望の形状を保持することを可能ならしめる。EP0482810は、再形成が水和サイクルの後期に最善実施されることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0482810
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様から見られるような本発明に従い、移動する湿り石こうボード内に凹みを形成するための加圧装置が提供される。この加圧装置は、ボードに接触するようにアレンジ(構成)された加圧面を具備する加圧ヘッドと、支持部材とを備えており、前記加圧ヘッドは、ボード内に凹みを形成すべく、前記加圧面と前記支持部材との間でボードの一部を圧縮するようにアレンジ(構成)されている。
当該加圧装置は更に、移動するボードの方向にほぼ対応する第1の方向、及び、ボードの平面にほぼ直交する第2の方向に、前記加圧ヘッド及び前記支持部材を移動させるための駆動手段を備えており、
前記加圧面は、第1の表面部分と第2の表面部分とを備えており、前記第1及び第2の表面部分は、レリーフ部(relief portion)によって分割され、且つ、前記レリーフ部によってボードに及ぼされる圧縮力よりも大きな圧縮力で前記支持ヘッド(支持部材)に向けてボードを押圧するようにアレンジ(構成)されている。
【0008】
好ましくは、前記加圧面は、前記レリーフ部がボード上にいかなる圧縮力も及ぼさないようにアレンジ(構成)されている。一般に、レリーフ部は、溝または谷(trough)を備えている。典型的には、その溝または谷は、加圧面を横切って延びている。
【0009】
有利には、加圧装置は、ボードに対し最小の相対速度で動かしながらボードを圧縮することで、石こうコアに対するライニング材料の横方向シフト(横ズレ)を最小限度に抑える。加えて、ボードに沿ったのとは対照的に、ボードの平面にほぼ直交した(方向への)加圧ヘッドの移動は、凹みの周囲におけるうね(ridge)や盛り上がった部分の発達(生成)を最小化するのに役立つ。
【0010】
レリーフ部は更に、より高密度な二つの領域の間に配置されるところのボードのより低密度な領域を提供する。相対的に低密度の領域は、その両側で第1及び第2の表面部分によって形成されるテーパーにとってのサポート(支持部)としての役割を果たし、再成形されたボードが元の形に戻るのを最小限度に抑える。特に、レリーフ部は、再成形操作後におけるボードのたるみ(sagging)を回避するのに役立ち得る。つまり、加圧装置がボードに接触した領域と反対側で、ボードの表面に凹みが遅れて形成されるのを防止するのに役立つ。従って、本発明の加圧装置は、水和サイクル(水和周期)の初期にボードが圧縮されるのを可能にし、必要な圧縮力の低減を容易にする。
【0011】
加えて、次のことが判明している。即ち、相対的に低密度の部分は、相対的に高密度の領域に比べてボードのカッティング(切断)をずっと容易なものにし、カット刃の寿命を延ばし、更に、切断操作時にカット刃の刃こぼれ(snagging)を最小化する。
【0012】
好ましくは、駆動手段は、加圧ヘッド及び支持部材を前記第1の方向に、移動するボードの速度とほぼ一致する速度に加速するようにアレンジ(構成)されている。好ましくは、駆動手段は、前記第1の方向における加圧ヘッド及び支持部材の速度を前記移動するボードの速度にほぼ一致させて、加圧ヘッドを支持部材に向けて移動させて前記ボード内に凹みを形成するようにアレンジ(構成)されている。
【0013】
好ましくは、前記加圧面は、凹みがボードを横切って延びるように、ボードの幅に沿って延びるようにアレンジ(構成)されている。
【0014】
好ましくは、レリーフ部は、長尺な形状を有する。典型的には、レリーフ部は、加圧面の外周の一領域から加圧面の外周の他方の領域まで延びている。好ましくは、加圧面は、当該加圧面が石こうボードに対し押圧されたときに、レリーフ部の配向(向き)がボードの横方向と対応するようにアレンジ(構成)されている。
【0015】
好ましくは、第1及び第2の表面部分は、それぞれがレリーフ部に近づくにつれ、加圧ヘッドの外向き方向に延びている。それ故、効果的に、第1及び第2の表面部分は、加圧面に概して凸形の形状を提供する。
【0016】
好ましくは、第1及び第2の表面部分の各々は、一つの平面を備える。
【0017】
好ましくは、加圧面は、加圧ヘッドに着脱可能に連結された又は加圧ヘッドと一体形成されたダイ(型部)上に配置されている。レリーフ部は、好ましくは、ボードの幅を横切って延びるようにアレンジ(構成)されており、好ましくは、ダイ(型部)内に配置された開口、又は、ダイに形成された凹部を備える。
【0018】
第2の態様から見られるような本発明に従い、移動する湿り石こうボード内に凹みを形成するための方法が提供される。当該方法は、加圧装置を使用するものであり、当該方法は、次の各工程を備える。即ち、
石こうボードを提供する工程と、
ボードの搬送方向における加圧装置の速度を前記ボードの速度にほぼ一致させながら、それと同時的に、加圧装置をボードに向けて移動させて、加圧装置をボードの一部に接触させるように、加圧装置をボードの搬送方向に移動させる工程と、
加圧ヘッド(加圧装置)にボードを圧縮させ、ほぼ同時に第1の凹み及び第2の凹みを形成する工程であって、第1及び第2の凹みは、ボードの相対的非圧縮部の両側に配置されている、工程と、を備える。
【0019】
この方法は、典型的には更に、加圧装置をボードの速度に加速させる予備工程を備えている。典型的には、この方法は更に、加圧ヘッドにボードを圧縮させる工程の後に、加圧装置を減速する工程を備える。
【0020】
典型的には、加圧装置は、最初の静止位置から最後の静止位置まで移動する。一般に、加圧装置は、最後の静止位置に到達した後に最初の静止位置に復帰するようにアレンジ(構成)されている。
【0021】
好ましくは、この方法は更に、ボードの搬送方向における加圧装置の速度と、移動するボードの速度とを比較し、両速度間の差に応じて加圧装置の速度を調節することを備えている。
【0022】
典型的には、前記ボードの搬送方向における加圧装置の速度は、ホーキンスリンク機構(Hoekens linkage)によって、あるいは内トロコイド運動(hypotrochoid motion)によってボードの速度に一致させられる。
(訳注:「ホーキンスリンク機構」とは、回転運動をほぼ一定速度の略直線運動に変換する四節リンク機構をいう。Wikipedia, “Hoekens linkage”の項より)
【0023】
加圧装置をボードに接触させて圧縮する工程は、典型的には、少なくとも10%の石こう水和が起きたときに、好ましくは、少なくとも40%の石こう水和が起きたときに、より好ましくは、少なくとも60%の石こう水和が起きたときに、実行される。
【0024】
典型的には、石こうボードは、シリコーンオイルを含む。好ましくは、そのシリコーンオイルは、100g/m以上、より好ましくは200g/m以上の量で存在する。好ましくは、そのシリコーンオイルは、6000g/m以下、より好ましくは800g/m以下、最も好ましくは400g/m以下の量で存在する。
【0025】
参考までに言うと、ボードの重量は全体として、典型的には960kg/m以下であり、概して480〜720kg/mの範囲にある。
【0026】
シリコーンオイルの存在は、本発明の方法を通じて生み出された第1及び第2の凹みの深さを増大させるのに役立つことが観察された。加えて、シリコーンオイルの存在は、石こうコアと、石こうボードの表面に設けられたライナーとの間におけるブリスター(blister、水膨れ、気泡の類)の形成を防止するのに役立つ。これらの効果は、シリコーンオイルの存在から生じた、石こうの変形性(能)の増大によるものと考えられる。
【0027】
(従来、)シリコーンオイルは、石こうボードにおける撥水剤としての用途が知られているものである。しかしながら驚いたことに、撥水効果をもたらすために必要とされる水準(レベル)よりもずっと少ない水準(レベル)のシリコーンオイルを使うことで、凹みの深さを増大させること、及び/又は、ブリスターの発生率を減らすことを達成できることが判明した。
【0028】
つまり、撥水性のボードを提供するためには、シリコーンは概して1440g/m以上、より一般的には2400〜4800g/mの範囲で存在しなければならない。これとは対照的に、ずっと少量のシリコーンオイルが、凹みの深さの増大及び/又はブリスター発生の低減のために要求される。例えば、これらの効果は、ちょうど320g/mの量の、あるいはそれよりもずっと少ない量のシリコーンオイルを用いて達成され得る。
【0029】
第2の態様に従う本方法の更に好ましい特徴は、第1の態様に従う加圧装置の特徴の一つ以上を備えてもよいものである。
【0030】
本発明は、添付の図面を参照しつつ実施態様によって以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、石こうボード製造ライン内に配置された、本発明の一実施形態に従う加圧装置の側面図である。
図2図2は、図1に示された加圧装置の平面図である。
図3図3は、図1に示された加圧装置の正面図である。
図4図4は、加圧ヘッド上に配置されるダイ(型部)の拡大図である。
図5図5は、連続ボードの斜視図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に従う加圧装置によって作られる凹みを横断するところの、図5のA−A線での拡大された縦方向断面図である。
図7図7は、ボードシートの斜視図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に従うところの、移動する湿り石こうボード内に凹みを形成する方法に関連したステップ(工程)のフローチャートである。
図9図9は、本発明の第2実施形態に従う、加圧ヘッド上に配置されるダイ(型部)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜4を参照すると、石こうボード100が製造ラインに沿って移動するときに、図5,6に示すような湿り石こうボード100内に凹み105を形成するための、本発明の一実施形態に従う加圧装置10が示されている。連続したボード100は、第1及び第2のライナー素材102,103間に配置された湿り石こう101の層を備える。ライナー102,103は、長手方向のサイドエッジ(側縁)に沿って互いの上に折りたたまれて、ボード100の長手方向のサイドエッジ104a,104bを形成すると共に、石こう101がライナー102,103間から外に出るのを防止する。加圧装置10は製造ライン内に配置され、ボード100は、装置10の両側に配置されたローラー群のベッド(図示略)上に支持されている。ボード100は、装置10を介して、ボード100の長手方向サイドエッジ104a,104bにほぼ平行な方向に、ローラー台(roller platform)11によるほぼ一定のスピードで駆動される。ローラー台11は、複数のローラー13を有するほぼ長方形状のローラーフレーム12を備え、ローラー13は、対向する長手方向ローラーフレーム部材12a間においてフレーム12を横切って延びており、且つ、複数のフレーム脚14によって前記ローラー群のベッド(図示略)とほぼ同じレベル(高さ)でほぼ水平な配置で保持されている。
【0033】
加圧装置10は、ボード100が該加圧装置10を通過するときに、ボードの長さに沿った周期的間隔でボード100内に凹み(depression)105を形成すべく構成されている。凹み105は、ボード100の長手方向(縦方向)サイドエッジ104に対してほぼ横断する方向にボード100をほぼ横切って延びるようにアレンジされている。ただし、読者(当業者)は、凹み105が長手方向サイドエッジ104に対して別の角度でボードを横切るように形成されてもよいことを悟るであろう。連続したボード100は、凹み105内でボード100を横切ってカットされ、図7に示すようなボードシート200を形成する。各ボードシート200の長手方向サイドエッジは、ボードシートの表面に対して直交する第1の部分201a,201b、及び、ボードシートの表面に対して傾斜した角度で配向された第2の部分203a,203bを有している。横方向のサイドエッジは、長手方向(縦方向)サイドエッジ201a,201bをほぼ横断するように延びており、同様に、ボードシートの表面に対して直交する第1の部分202a,202b、及び、ボードシートの表面に対して傾斜した角度で配向された第2の部分106,107を有している。このようにボードシート200は、その外周部全体に展開するテーパーなエッジを有している。
【0034】
図1〜3を参照すると、装置10は、加圧ヘッド16及び支持部材17を支持するための支持フレーム15を備える。支持フレーム15は形状がほぼ長方形状であり、対向する縦方向サイド部材15a及び横方向サイド部材15bを備え、それらのうちの後者は、ローラー台11、ひいてはボード100の平面に対してほぼ直交して延びるように構成されている。これとは対照的に、支持フレームの縦方向サイド部材15aは、ローラー台にほぼ平行な平面内において、長手方向ローラーフレーム部材12aに対してほぼ横断する方向に延びるように構成されている。加圧ヘッド16及び支持部材17は、横方向サイド部材15b間で支持フレーム15の幅を横切って延びるように構成されており、ボード100の平面に対してほぼ平行に配向している。
【0035】
加圧ヘッド16は、その長手方向の各端部に配置された第1の駆動ユニット18を備え、それらは、フレーム15内で横方向サイド部材15bに沿ってヘッド16を駆動するように構成されている。支持部材17は、その長手方向の各端部に配置された第2の駆動ユニット19を備えており、それらは、フレーム15内で横方向サイド部材15bに沿って部材17を駆動するように構成されている。第1及び第2の駆動ユニット18,19は、加圧ヘッド16と支持部材17の分離(離間動作)を可能にし、かくして、それら(16,17)の間を通過するようにアレンジされたボード100からのそれらの分離(離間長)が変更されるのを可能にする。
【0036】
支持フレーム15それ自体は、駆動装置20によって、ボードに対してローラー台11上の固定した方向に保持されている。駆動装置20は、ボード100の移送方向にほぼ平行に該ボード100に沿って支持フレーム15を駆動するように構成されている。駆動装置20は、二本の支持棒21を備え、該支持棒の一方は、支持フレーム15の各横方向サイド部材15bを通過して延びており、その各端部において一対のフレーム脚14に対し個別に連結している。駆動装置20は更に、各横方向サイド部材15b上に配置された、支持フレーム15を支持棒21に沿って前後に駆動するための第3の駆動ユニット22を備える。この点で、支持棒21は、加圧ヘッド16及び支持部材17がボード100の移送方向にほぼ平行な、ボード100にほぼ沿った第1の方向に動くことを可能にし、その一方で、横方向サイド部材15bは、加圧ヘッド16及び支持部材17がボード100の平面にほぼ直交する第2の方向に動くことを可能にする。
【0037】
装置10は更に、ボード100の移送速度を感知するための、それと関連付けられた一つ以上のセンサー(図示略)を備えている。加圧ヘッド16及び支持部材17が支持フレーム15及び支持棒21に沿って駆動されるスピードに影響を及ぼすべく、これらのセンサーは、前記第1、第2及び第3の駆動ユニット18,19,22に入力される信号を出力するよう構成されている。
【0038】
加圧ヘッド16は図面には、ボード100ひいては支持部材17のほぼ下に配置されるとして描かれているけれども、読者(当業者)は、この配置が逆にされて、加圧ヘッド16がボード100ひいては支持部材17の上に配置されてもよいことを認識するであろう。図4を参照すると、ボード100に隣接配置される加圧ヘッド16のサイドは、それに対して着脱可能に結合されてもよい、あるいは、それと一体的に形成されてもよいダイ(型部)23を備えている。そのダイ(型部)23は、加圧ヘッド16の対向する長手方向端部間に展開し、ボード100の幅を横切って延びるように構成されている。
【0039】
ダイ(型部)23は、第1及び第2の縦方向サイドエッジ24a,24bを備え、これらのエッジはボードを横切って延びるように構成されており、且つ、それらからは第1及び第2のほぼ平面的な加圧面25,26がそれぞれ延びている。第1の面25は、ボード100の移送方向に対して上り勾配に傾斜し、第2の面26は、ボード100の移送方向に対して下り勾配に傾斜しており、その結果、第1及び第2の加圧面25,26は、加圧ヘッド16並びにダイ23の各縦方向サイドエッジ24a,24bから離れる方向で、ダイ23のほぼ中央に配置されたレリーフ部(relief portion)27に向かって収束している。
この点で、第1及び第2の表面部分25,26は、石こうボード100内に対面するテーパー106,107を作り出すように構成されている。レリーフ部27は、ダイ23の長さに沿って延びるように構成され、その中に配置された開口部(図示略)あるいは図4に示したような凹部28を備えてもよい。
【0040】
図面の図8を参照すると、本発明の一実施形態に従う方法300が描かれている。使用時、ボード100は、ローラー台11上に配置されたローラー13によって、加圧ヘッド16と支持部材17との間を一定速度で装置10を介して駆動される。支持部材17及び加圧ヘッド16は、引き続いてステップ310において、支持棒21に沿った第3の駆動ユニット22による第1の方向に沿って、第1の静止位置(stationary position)から、装置10によるボード100の速度とほぼ一致する速度に加速される。この速度は、センサー(図示略)を用いて決定されるような、ボード100と、加圧ヘッド16及び支持部材17との間の相対速度を比較することによってモニター(監視)される。加圧ヘッド16及び支持部材17は、ステップ310において、支持フレーム15の横方向サイド部材15bに沿って、第1及び第2の駆動ユニット18,19によって、それぞれボード100の上面及び下面に隣接する位置に同時に駆動される。
【0041】
第1の方向における加圧ヘッド16及び支持部材17の速度がボード100の速度にほぼ一致するとき、つまり、相対速度がボード速度のほぼ+/−0.1%以内にあるとき、第1及び第2の駆動ユニット18,19は、ステップ320で、支持部材17及び加圧ヘッド16をお互いに向けて駆動し、それらの幅(方向)に沿ってボード100を圧縮し、湿り石こう内に凹み105を形成するようにアレンジ(構成)されている。支持部材17は、加圧ヘッド16からの上向きの力に抵抗するように構成されており、ボード100の上面に凹み(図示略)を形成することを回避すべく、ダイ(型部)23の面に比べて十分にスムーズで大きな表面を提示している。
【0042】
加圧ヘッド16上に配置された第1の駆動ユニット18は、加圧ヘッド16がボード100に対して入出方向に駆動される速度を制御するようにアレンジ(構成)されており、制御された着実な同期的押圧操作、短く一定したプレス(押圧)および退避(離脱)を許容する。更に、ボード100と加圧ヘッド16との間の相対速度を最小に維持しながらボード100を圧縮することは、もしそうしなければ乾燥後のボードにおいて好ましくない隆起や突起を提示することになるであろう、凹み105の両側における湿り石こうの堆積(蓄積)を最小化する(最小限度にとどめる)。
【0043】
ボード100が圧縮されるにつれ、ライナー102,103間に配置された湿り石こう101は、ダイ23及び支持部材17の加圧表面間で圧縮される。第1及び第2の加圧面25,26は、凹部28がボード上にいかなる圧縮力をも及ぼさないようにアレンジされている。かくして、図面の図6に示すようなボード100の結果的に得られた軸方向(縦方向)断面形状は、第1及び第2の対向するテーパーな領域106,107を備え、それらの領域は、ボードの内の方に、非圧縮の盛り上がった支持段部108に向かって延びている。それ故、盛り上がった段部108内に配置された石こう部分は、その両側に配置されたボードの部分106a,107aよりも低度に圧縮(つまり低密化)されている。
【0044】
ダイ23がボード100内に押すようにアレンジされた深さは、例えば、力センサー(図示略)を用いてボード100にかけられる力をモニターすることにより、あるいは例えば、装置10上の参照位置(基準位置)に対する加圧ヘッド16上の固定位置(決まった位置)をモニターすることにより、変更されてもよい。支持段部108の両側に対向テーパー106,107を形成すべくボード100が圧縮されると、ステップ330において、加圧ヘッド16と支持部材17の分離が増大され、加圧ヘッド16及び支持部材17が第2の静止位置へ第1の方向に減速される。それからステップ340において、加圧ヘッド16及び支持部材17は、ボード100の引き続く押圧操作のために、第2の位置から第1の位置へ支持棒21に沿って戻るよう第2の方向に駆動される。第1位置から第2位置へ行き(再び)第1位置へ戻るという加圧ヘッド16及び支持部材17の循環運動は、凹み105がボード100上の等間隔位置に、つまり+/−2mm以内に形成されるのを確実にするように制御される。このことは、凹み105の中央部に沿ってカットされることで形成されるところの結果的に得られるボード(シート)200がほぼ同じ長さを備えること、を確実にする。
【0045】
ボード200(の各々)は、凹み内にあるボードの低度に圧縮された部位に沿ってカット刃(図示略)を用いてボード100をカットすることで形成される。低度に圧縮された部位は、連続ボード100が圧縮(高密度化)された部位に沿ってカットされる場合よりも、連続ボード100をもっと容易にカットすることを可能にし、カット刃(図示略)の寿命を延ばすと共に、ボード100のライナー102,103を裂く可能性のあるボード100上でのカット刃(図示略)の刃こぼれ(snagging)を最小化する(最小限度にとどめる)。
【0046】
図9は、本発明の第2実施形態に従う、加圧ヘッド上に配置されるダイの代替構成を示す。図4とは対照的に、第1の加圧面25a,25b並びに第2の加圧面26a,26bはそれぞれ、二つの部分に分割されている。第1及び第2の加圧面の外側部分25b,26bは共平面(co-planar)をなし、その一方で、内側部分25a,26aは互いに対しても且つ外側部分25b,26bに対しても傾斜しており、その結果、内側部分25a,26aは加圧面から突出している。
【0047】
加えて、図9は、ダイ(型部)のオプション的な特徴、つまり、凹部のベース(底面)30が第1及び第2の加圧面の外側部分25b,26bによって定義される平面よりも内側(下側)に配置されること、を示す。
【0048】
次の実施例が説明だけで提示される。
【実施例】
【0049】
[実施例1]EXAMPLE 1
二つの石こうボードが提供された。そのうち、ボードAは320g/mのシリコーンオイルを含有し、ボードBはシリコーンオイルを含有しない。
【0050】
ボードA及びボードBは、図8で述べられた方法に従って押圧された。そして、加圧ヘッド16及び支持部材17がお互いに向かって駆動されるところの前記ステップ320の間、両ボードとも同じ負荷をかけられた。
【0051】
ボードAについて達成された最大テーパー深さは、1.5mmであったのに対し、ボードBについて達成された最大テーパー深さは、1.0mmであった(最大テーパー深さは、圧縮力の除去後で且つボードの乾燥後に測定された)。
【0052】
[実施例2]EXAMPLE 2
二つの石こうボードが提供された。そのうち、ボードCは480g/mのシリコーンオイルを含有し、ボードDはシリコーンオイルを含有しない。
【0053】
これらのボードは、図8で述べられた方法に従って押圧された。
【0054】
各ボードのライナーと、その下に位置する石こうとの間にブリスター形成(blistering、水疱形成)が起きたか否かを観察すべく、ボードが視覚的に確かめられた。その結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【符号の説明】
【0056】
10 加圧装置
16 加圧ヘッド
17 支持部材
18 第1の駆動ユニット(駆動手段)
19 第2の駆動ユニット(駆動手段)
22 第3の駆動ユニット(駆動手段)
23 ダイ(型部)
25,26 第1及び第2の表面部分(加圧面)
27 レリーフ部
100 石こうボード
105 凹み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9