(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、複層ガラスユニットの一つ以上の空洞を満たすことができる一方、使用するガス量及び充填時間を低減することができる、組立ラインによる、複層ガラスユニットの製造方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明は、少なくとも二枚のガラスシートを備えるガスが充填された複層ガラスユニットの製造方法であって、
少なくとも一つの空洞が形成され、各空洞が二枚の隣り合うガラスシートの間に位置するとともに、一
つの側部で完全に閉鎖され
、且つ各空洞(8、9)にガスを吹き込む吹き込み側部(19)を有するように、上記ガラスシートを互いに向かい合わせて配置し、上記ガラスシートのうちの少なくとも一つにスペーサを装備し、各ガラスシートを、隣り合うガラスシートに対して、角度(α、β)で、厳密には0°超10°以下の角度で傾斜させて配置する仮組段階と、
各空洞の
残りの側部(17、18)の少なくとも一
つを部分的に閉鎖する段階と、
上記空洞の吹き込み
側部を介してガスを吹き込むことにより、各空洞を満たす充填段階と、
複層ガラスユニットをシールするために、ガラスシートを互いに対して押圧する段階と、
を含む、複層ガラスユニットの製造方法を提供する。
【0009】
他の形態によれば、部分的に閉鎖された一つ以上の上記
側部を、その長さの3%以上90%以下の長さにわたって閉鎖する。
【0010】
他の形態によれば、部分的に閉鎖された一つ以上の上記
側部を、その一端から始まる部分にわたって閉鎖する。
【0011】
他の形態によれば、上記ガスを、各空洞の吹き込み
側部の長さの少なくとも一部分にわたって吹き込む。
【0012】
他の形態によれば、上記ガス吹き込み部分を、各空洞の吹き込み
側部の長さの10%以上100%以下とし、好ましくは上記長さの30%以上50%以下とし、さらに好ましくは上記長さの1/3とする。
【0013】
他の形態によれば、二つの
側部を部分的に閉鎖し、上記ガス吹き込み部分を各空洞の吹き込み
側部の中央に配置し、上記ガス吹き込み部分を、上記充填段階を通して一定に保持し、好適には各空洞の吹き込み
側部の長さの1/3とする。
【0014】
他の形態によれば、一
つの側部を部分的に閉鎖し、もうひとつの
側部を完全に閉鎖する。
【0015】
他の形態によれば、上記ガス吹き込み部分を、完全に閉鎖された上記
側部と吹き込み
側部との間に形成された角の付近に配置し、上記充填段階の間に上記ガス吹き込み部分を徐々に増大し、好適には各空洞の上記吹き込み
側部の長さの100%まで増大させる。
【0016】
他の形態によれば、充填段階中に、部分的に閉鎖された単数又は複数の上記
側部に配置されたセンサを用いて、各空洞のガス充填レベルを測定する段階をさらに含む。
【0017】
他の形態によれば、空洞に吹き込まれるガスの流量を、上記ガラスユニットの高さ及び上記空洞の厚さに比例させる。
【0018】
他の形態によれば、上記ガラスユニットが少なくとも三枚のガラスシートを備え、上記様々な空洞に、全て同時にガスを充填する。
【0019】
他の形態によれば、上記充填段階において、吹き込まれるガスを重質ガスとする。
【0020】
他の形態によれば、上記充填段階において、上記ガスを、ガラスシートを運ぶためのベルトに形成された穴を介して空洞に吹き込む。
【0021】
他の形態によれば、上記充填段階が、上記ガスが吹き込まれる前に上記空洞を空にする、前段階を含む。
【0022】
本発明の他の形態及び効果は、以下において、図面に関連して説明される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々な図における同一の参照符号は、同様の又は同一の構成要素を示す。
図5及び
図6aから6cは、
図3の実施形態の正面図を示すだけでなく、
図4の実施形態の正面図を示すものでもある。
【0025】
本明細書のあらゆる箇所において、表現「ガラスシート」は、「グレイジング機能を有する基板」であって、おそらく有機質の基板又は無機質の基板を意味するものと理解されよう。
【0026】
本発明は、組立ラインによる、少なくとも二枚のガラスシートを備えるガスが充填された複層ガラスユニットの製造方法に関するものである。この方法は、ガラスシートが互いに向かい合って配置され、少なくとも一つのガラスシートにはスペーサが装備され、各ガラスシートが隣り合うガラスシートに対して厳密に0°超かつ10°以下の角度で傾斜して配置されることにより、少なくとも一つの空洞が形成される、仮組立段階を含む。各空洞は、二枚の隣り合ったガラスシート間に位置し、
その側部の一つで完全に閉鎖されている。
【0027】
この方法は、各空洞の少なくとも
一つの側部を部分的に閉鎖する段階も含む。
【0028】
この方法は、空洞の吹き込み
側部を介してガスを吹き込むことにより、各空洞を満たす段階も含む。
【0029】
この方法は、複層ガラスユニットを密閉するために、ガラスシートを互いに押し付ける段階も含む。
【0030】
従って、各空洞の少なくとも
一つの側部を部分的に閉鎖することにより、空洞から空気を一旦押し出した吹き込みガスは、空洞内に良好に収容され、これによりガスの損失が減り、従って使用されるガスの量と充填時間が抑制される。
【0031】
本発明に係る方法によれば、複層ガラスユニット(二層ガラスユニット、三層ガラスユニット、四重のガラスユニット等)を得ることができる。複層のガラスユニットのガラスシートの様々な面に(1)から始まる番号を付けることが慣習であるが、番号(1)は構造物の外側に向かって曲がっていることが意図されているガラスシートの外面を意味する。このため、二層ガラスユニット(
図1)に関し、構造物の外側に向かって曲がっていることが意図されているガラスシート1の外面に、番号(1)が付けられ、構造物の外側に向かって曲がっていることが意図されているガラスシート1の内面に、番号(2)が付けられ、構造物の内側に向かって曲がっていることが意図されているガラスシート2の外面に、番号(3)が付けられ、そして構造物の内側に向かって曲がっていることが意図されているガラスシート2の内面に、番号(4)が付けられている。同様に、三層ガラスユニット(
図2)に関し、構造物の外側に向かって曲がっていることが意図されている外側ガラスシート1の外面に、番号(1)が付けられ、構造物の外側に向かって曲がっていることが意図されている外側ガラスシート1の内面に、番号(2)が付けられ、外側ガラスシート1に向かって曲がっている内側ガラスシート2の面に、番号(3)が付けられ、外側ガラスシート3に向かって曲がっている内側ガラスシート2の面に、番号(4)が付けられ、構造物の内側に向かって曲がっていることが意図されている外側ガラスシート3の内面に、番号(5)が付けられ、そして構造物の内側に向かって曲がっていることが意図されている外側ガラスシート3の外面に、番号(6)が付けられている。
【0032】
図1は、本発明に係る方法を用いて得られる二層ガラスユニットの断面図である。
【0033】
二層ガラスユニットは、平行でかつ互いに対向する二枚のガラスシート1、2を備える。
【0034】
二枚のガラスシートは、厚さを異ならせることができる。寸法(ガラスシートの面積、厚さ)は、二層ガラスユニットの所望の用途に依存して選択される。
【0035】
二層ガラスユニットは、骨組み形状をなすとともにガラスシート同士が互いに離間するように用いられるスペーサ4も備え、これによりガスを含む空洞8又はガスギャップが形成されている。このガスが充填された空洞8によって、二層ガラスユニットに良好な断熱性能及び防音性能が付与される。スペーサ4は、二枚のガラスシート、換言すれば二枚のガラスシート1、2の互いに向かい合って配置された二つの面(2)と面(3)の間であってこれらガラスシートの端部近傍に位置する。
【0036】
二層ガラスユニットは、良好に密封するために、スペーサ4の外面と、ガラスシート1、2の端部との間にマスチックのビード6を備える。
【0037】
図2は、本発明に係る方法を用いて得られる、三層ガラスユニットの断面図である。
【0038】
三層ガラスユニットは、平行でかつ互いに対向する三枚のガラスシート1、2、3を備える。ガラスシートのうちの一つである内側ガラスシート2は、他の二枚のガラスシートであるガラスシート1、3間に配置されている。
【0039】
三枚のガラスシートは、
図2に示すように同じ面積としてもよいし、面積を異ならせることもでき、例えば、内側ガラスシート2の面積を外側ガラスシート1、3の面積よりも小さくすることができる。三枚のガラスシート1、2、3は、厚さを異ならせることもできる。寸法(ガラスシートの面積、厚さ)は、三層ガラスユニットの所望の用途に依存して選択される。
【0040】
三層ガラスユニットは、骨組み形状をなすとともにガラスシート同士が互いに離間するように用いられるスペーサ4、5も備え、これによりガスを含む空洞8、9又はガスギャップが形成されている。これらのガスが充填された空洞8、9によって、三層ガラスユニットに良好な断熱性能及び防音性能が付与される。二つの空洞8、9は、三層ガラスユニットの所望の用途に依存して、同じ厚さとすることができ、或いは、異なる厚さとすることもできる。各スペーサ4、5は、二枚の隣り合うガラスシートの互いに向かい合って配置された二つの面の間であってこれらガラスシートの端部近傍に位置する。このため、各スペーサ4、5は、一方では、面(2)と面(3)との間に位置し、他方では面(4)と面(5)との間に位置し、換言すれば、内側ガラスシート2と、外側ガラスシート1、3のうちの一つと、の間に位置する。
【0041】
(図示しないが)変形例として、内側ガラスシートは外側ガラスシートよりも小さくすることができる。その場合、三層ガラスユニットは、二枚の外側ガラスシート間に配置された単一のスペーサを備えることが好ましく、このスペーサはその内面に溝を有し、この溝の中に内側ガラスシートの端部が挿入される。
【0042】
三層ガラスユニットは、良好に密封するために、スペーサ4、5の外面と、ガラスシート1、2、3の端部と、の間に、マスチックのビード6、7も備える。
【0043】
本発明に係るガスが充填された複層ガラスユニットを製造する方法は、四つの主な段階、即ち、仮組立段階、空洞を部分的に閉鎖する段階、ガスを吹き込むことによって空洞を満たすとともに簡単に押圧する段階と、押圧する段階と、を含む。
【0044】
処理能力の理由から、仮組立段階は、一つ第1のワークステーション(又は二つの第1のワークステーション)で実施され、空洞を部分的に閉鎖する段階と、ガスを吹き込むことによって空洞を満たすとともに簡単に押圧する段階とは、第2のワークステーションで実施され、押圧する段階は、第3のワークステーションで実施される。製造段階が複数のステーション間で分けられていることから、複層のガラスユニットは、そのいくつかを、同時に製造することができる。複層ガラスユニットが、少なくとも三枚のガラスシートを備える場合には、三層ガラスユニットを製造するためにこれらのシートは同時に加工され、これにより、二層ガラスユニットがまず加工され次いで二層ガラスユニットから三層ガラスユニットが製造される等の方法と比較して時間が大幅に節約される。
【0045】
仮組立段階では、ガラスシートは扇状に並べられる。
図3及び
図4は、コンベアベルト10上で扇状に一旦並べられているガラスシート1、2及びガラスシート1、2、3をそれぞれ示す。ガラスシート1、2及びガラスシート1、2、3は、それぞれ、次々に運ばれて、好ましくは第1のワークステーションによって、コンベアベルト10上に互いに隣り合って配置される。本方法の様々な段階が異なるワークステーションで実施されるとき、コンベアベルト10によって、ガラスシートを第1のワークステーションから第2のワークステーションに、次いで第3のワークステーションに運ぶことができる。
【0046】
各ガラスシート1、2及び各ガラスシート1、2、3は、それぞれ、角度α及び角度α、βで、正確には、隣り合うガラスシートに対して0°超10°以下に傾斜して配置される。ガラスシートは、この構成においては「扇状に並べられている」といえる。ガラスシートの少なくとも一つは、スペーサ4、5を含む。各空洞8、9は、スペーサ4、5によって及び隣り合うガラスシート1、2及びガラスシート1、2又はガラスシート2、3によって、それぞれ規定されている。二枚の隣り合うガラスシートの間の傾斜角は0°ではないから、複層のガラスユニットは扇形配置においてその四
つの側部のうち完全閉鎖
側部と呼ばれる一
つの側部16で完全に閉鎖することができる(
図5)。一つ以上の空洞8、9の他の三
つの側部17、18、19(
図5)は、仮組立段階の終わりには完全に開放されている。上記図において、各空洞8、9の完全閉鎖
側部16は水平であり、ガラスユニットの頂部に位置し、ガスは、水平であってガラスユニットの底部に位置する吹き込み
側部19を介して吹き込まれる。他の二つの側部17、18は、図面上は鉛直ある。これは、限定事項として理解すべきではない。特に、完全閉鎖
側部は、コンベアベルトに対して90°の角度とすることもあり得るし、或いはコンベアバルトと等しい角度とすることもあり得る。
【0047】
仮組立段階は、本明細書において詳細に後述される記載による。
【0048】
仮組立段階の後、ガラスシート1、2及びガラスシート1、2、3は、それぞれ、コンベアベルト10の位置に置かれ、単数又は複数の空洞を部分的に閉鎖する段階に入る。この段階が第2のワークステーションで実施される場合には、第2のワークステーションの位置まで扇状のガラスシートを移動するために、コンベアベルト10が起動する。
【0049】
図5及び
図6aから6cは、二つの実施形態に係る充填段階を示す正面図である。これらの図において、符号16から19は各空洞8、9の
側部を示す。具体的には、符号16は仮組立段階中に完全に閉鎖される
側部を示し、これらの図において、
側部16はガラスユニットの頂部である。符号19はそこからガスが吹き込まれる
側部を示す。この
側部を吹き込み
側部19と称する。これらの図において、吹き込み
側部19はガラスユニットの底部であり、コンベアベルト10の近くに位置する。
側部17、18は、完全閉鎖
側部16と吹き込み
側部19とを連結している。仮組立段階の後、
側部16だけが完全に閉鎖され、
側部17から19は完全に開放されている。変形例として、吹き込み
側部19は完全閉鎖
側部16と近接させることができる。
【0050】
単数又は複数の空洞を部分的に閉鎖する段階中、各空洞8、9の
側部17、18のうちの少なくとも一
つの側部は、取り外し可能な閉鎖手段20、21、22によって部分的に閉鎖される。このため、好適には、これらの
側部のうちの一
つの側部は取り外し可能な閉鎖手段によって部分的に閉鎖され、もうひとつの
側部は取り外し可能な閉鎖手段によって部分的に又は完全に閉鎖され、一
つの側部は単数又は複数のスペーサに装着されたガラスシートによって完全に閉鎖され、一
つの側部はガスの吹き込みに用いられる。ガス吹き込み
側部は、例えば、ガスが吹き込まれる穴を備えるストリップによって、部分的に閉鎖してもよい。このようにして、充填段階中にその後吹き込まれるガスは、空洞8、9の内側に含まれる空気をガラスユニットから押し出し、吹き込みガスはこの部分的な閉鎖により、単数又は複数の空洞により容易に収容される。特に、ガスが空洞内に流れ込むようにする、少なくとも一つの
側部の閉鎖は、完全に閉鎖されていない三
つの側部、完全に閉鎖されていない二
つの側部、又は完全に閉鎖されていない単一
の側部により空洞内で行われる閉鎖とは異なる。このガスの流れは、空洞内において空気を取り除き、ガスを保持することを容易とし、これにより、ガスの使用量を抑制することができる。これらの図において、部分的な又は完全な閉鎖
側部17、18は、空洞の完全閉鎖
側部16に近接している。
【0051】
好適には、ガスの使用量を減じるとともに充填時間を短くするために、部分的な閉鎖面17、18は、その長さの少なくとも3%超を、また、その長さの最大でも90%を閉鎖し、さらに性能を高めるためにはその長さの7%以上50%以下を閉鎖し、ガス充填速度とガス損失とを最良に両立するためには、その長さの14%を閉鎖する。ガラスユニットの寸法がいかようであっても、部分的な閉鎖が使用されるガス量とガス充填時間とに影響を与えるためには、閉鎖される長さは少なくとも5cmであることが好ましい。
【0052】
部分的に閉鎖された
側部17、18は、その一端から始まる部分にわたって閉鎖されることが好ましい。上記図においては、部分的に閉鎖された
側部17、18は完全に閉鎖された
側部16とにより形成された角から始まる部分にわたって閉鎖されると、ガス充填速度が最適化される。変形例では、部分的に閉鎖された
側部17、18は、吹き込み
側部19とにより形成された角から始まる部分にわたって閉鎖され、或いは、角から始まらずに幾分二つの角の間に位置する部分にわたって閉鎖される。
【0053】
図5の実施形態においては、二つの
側部17、18が取り外し可能な閉鎖手段20、21によって部分的に閉鎖される。これらの取り外し可能な閉鎖手段20、21は、両
方の側部17、18で同じ高さを閉鎖することが好ましい。変形例では、取り外し可能な閉鎖手段は、両
方の側部17、18で異なる高さを閉鎖する。
【0054】
図6aから
図6cに示す実施形態においては、
側部18が取り外し可能な閉鎖手段21によって部分的に閉鎖される。
側部17は取り外し可能な閉鎖手段22によって完全に閉鎖される。
【0055】
上記図の全てにおいて、取り外し可能な閉鎖手段20、21、22は、例えばシャッタ又はシールである。
【0056】
取り外し可能な閉鎖手段20、21、22が空洞8、9の端部の位置に配置されて固定されると、単数又は複数の空洞にガス充填する段階が実施される。
【0057】
ガスを充填する段階においては、例えばノズルを用い、空洞8、9の吹き込み
側部19を介してガスを吹き込むことによって、各空洞8、9にガスを充填する。変形例としては、ガスは多孔質の機器を用いて吹き込むことができる。明細書の他の箇所においては、記載を容易にするために、ノズルを言及するものとするが、ノズルは本発明を限定するものとして解してはならない。上記図において、開放ノズルは複数の上向き小矢印20によって示されているが、密閉ノズルは示されていない。上記図において、ガスは複層ガラスユニットの下方から到達する。具体的には、コンベアベルト10が、ノズルを介して空洞8、9にガスを導入する複数の貫通穴を備えることが好ましい。上記図において、吹き込み
側部19は完全閉鎖
側部16と反対側にある。
【0058】
ガス充填時間を最適化するために、ガスは、二枚の隣り合うガラスシート間に位置する両方の空洞8、9に同時に吹き込まれることが好ましい。空洞8、9は空気以外のガスの充填レベルが少なくとも80%となるまで充填され、充填レベルが85%となることが好ましく、90%となることがさらに好ましい。各空洞の少なくとも一つの部分的に閉鎖された
側部17、18は、各空洞のガス充填レベルを測定することができるセンサを備えることが好ましい。このセンサは、例えば、ガラスシートの一つの端部に固定され、或いはスペーサに固定される。
【0059】
複数の異なる寸法のガラスユニット、即ち異なる厚さのガラスシート及び/又はガス充填空洞、に適合させることができるように、ノズルはガラスシートに対して垂直に移動できることが好ましい。加えて、
図3及び
図4に示すように、ノズル列は空洞と同じ数だけある。
【0060】
吹き込まれるガスは、空気よりも優れた断熱性をもたらすアルゴン、クリプトン、キセノンのような重質ガスであることが好ましい。アルゴンは低廉であるため好ましい。
【0061】
ガスは各空洞の吹き込み
側部19の長さの少なくとも一部分にわたって吹き込まれることが好ましい。ガス充填段階の少なくとも一時期において、いくつかのノズルは密閉されている。このため、空気は部分的に閉鎖される
側部17、18を介して容易に流出することができ、これにより空気をより迅速に放出することができる。
【0062】
ガスは、各空洞の吹き込み
側部19の長さの10%以上100%以下の長さにわたって吹き込まれ、各空洞の吹き込み
側部19の長さの30%以上50%以下の長さにわたって吹き込まれることが好ましく、各空洞の吹き込み
側部19の長さの約1/3の長さにわたって吹き込まれることがより好ましい。ガスの吹き込み長さは吹き込み
側部19の二つの端部間のいずれの箇所においてとることもできる。
【0063】
図5に示す実施形態において、ガスが吹き込まれる吹き込み
側部19の上記部分は、充填段階中、一定のままである。この部分は、
側部19の中央に位置することが好ましく、特に、閉鎖手段20、21が対称である場合が好ましい。ガス吹き込み部分は、各空洞の吹き込み
側部19の長さの30%以上50%以下の長さであることが好ましく、各空洞の吹き込み
側部19の長さの約1/3の長さであることがさらに好ましい。このため、空気は部分的に閉鎖された
側部17、18の開放部分を介して流出する。
【0064】
充填段階の初期、中期及び終期をそれぞれ示す
図6aから
図6cの実施形態において、ガスが吹き込まれる吹き込み
側部19の上記部分は、充填段階中、徐々に増加し、本段階の初期における吹き込み
側部19の長さの10%から、本段階の終期における吹き込み
側部19の長さの100%まで、徐々に増加することが好ましい。ガス吹き込み部分は、本段階の初期における吹き込み
側部19の長さの50%と、本段階の終期における吹き込み
側部19の長さの100%と、の間において、変化させることもできる。このため、空気は、部分的に閉鎖される
側部18の開放部分を介して流出する。
【0065】
いかなる実施形態においても、吹き込みガスの流量は、ガラスユニットの高さと空洞の厚さとに比例し、よって空洞の容積に比例する。従って、空洞毎に吹き込まれるガスの流量は、例えば100リットル/分と1500リットル/分との間である。変形例においては、吹き込みガスの流量を、空洞にガスを充填する段階中、一定ではなく、変化させる:このため、上記流量は、乱流を制限するために吹き込みの初期では低くするとともに、残っている気泡を取り除くために吹き込みの終期においては高くすることができる。
【0066】
ガスの吹き込み前に、空洞にガスを充填する段階は、空洞8、9を空にする段階を含むことができる。空洞を一旦空にすると、追加の段階を必要とするが、空洞8、9をより迅速に満たすことができる。これにより、過剰な吹き込みガスを回収こともできる。
【0067】
空洞8、9が、一旦、少なくとも80%に、空気以外のガスで満たされると、ワークステーション(ガス充填が実施されるのと同じステーション、故に例えば第2のワークステーション)は、ガラスシート1、2、3を一時的に互いに押し付け合わせて、空洞8、9を閉鎖し、空気以外のガスが空洞8、9に残らないようにする。
【0068】
空洞にガスを充填する段階の後、加圧段階に入る。この段階が第3のワークステーションで実施される場合には、ガラスシートを第3のワークステーションに移動するため、コンベアベルト10を起動させることができる。加圧段階では、外側ガラスシート1、3に圧力を加えることにより、ワークステーションがガラスシート1、2、3を加圧し、好適には複数のガラスユニットをシールするためにガラスユニットに対して垂直に加圧する。
【0069】
加圧段階では、ガラスシート1、2、3は例えば全て鉛直に配置される。変形例としては、ガラスシート1、2、3は、全て、鉛直線に対して3°以上10°以下の角度で傾斜する平面上に配置される。
【0070】
仮組段階は、以下で、より詳細に説明される。
【0071】
仮組段階では、ガラスシート1、2、3は吸引管を用いて扇状とされる。
図3から
図6に示す実施形態では、ガラスシート1は、例えば、コンベアベルト10によって移動することのできるフレームに寄りかかっている。他のガラスシート、即ちガラスシート2、3はこのガラスシート1に対して傾斜しているので、シート2、3はシート1上に載っており、他のいかなる支持体も必要ない。フレーム以外の適当な位置にシートを保持するための手段は必要ない。しかしながら、それでもなお本方法のユーザーによって所望であれば、シートを適当な位置に保持する他の手段を設けることができる。これらの他の保持手段は、フレームを用いて行わない位置決めに有益であることが判明している。ガラスシートの一つは、例えば、ガラスシートの両面をその端部付近で止め具によって把持すること、或いは、ガラスシートの端面をその様々な点で留め具によって把持すること、により鉛直に保持することができる。シートを適切な位置に保持することのできる他の手段は、例えば、ガラスを適切な位置に保持するためにV字型に整列した吸引管又はローラーである。
【0072】
これらの他の保持手段は、例えば、三層ガラスユニットに関して、内側のガラスシートを鉛直に保持するために用いることができ、その際二枚の外側のガラスシートは内側のガラスシートの各面に対して傾いている。
【0073】
さらに、コンベアベルト10は水平に示した。しかしながら、コンベアベルト10は3°以上10°以下の角度で僅かに傾斜させてもよい。
【0074】
例えば二層ガラスユニットをまず製造し、次いでこの二層ガラスユニットから三層ガラスユニットを製造する時に、加圧段階において複層ガラスユニットの全てのガラスシートを2段階においてではなく同時に加圧することが可能であるという事実により:
一方では、二枚のガラスシートに加えるべき応力をより少なくすることができる。これは、二層ガラスユニットから三層ガラスユニットを製造する場合には、二層ガラスユニットの二枚のガラスシートが、二層ガラスユニットをシールするために二層ガラスユニットの製造の最後に加圧され、次いで三層ガラスユニットをシールするために三層ガラスユニットの製造の最後に加圧される、からである。このため、二枚のガラスシートは、2度加圧される。これは、本発明に係る方法では、回避される;そして、
他方では、二つの空洞内の圧力を等しくすることができる。二層ガラスユニットから製造された三層ガラスユニットの場合には、三層ガラスユニットが加圧されると、空洞の一つを二重に加圧すること起因して、二つの空洞が非対称となり得る。これにより、二つの空洞の間でガスレベルに差異が生ずるおそれがある。
【0075】
このため、複層ガラスユニットは本発明に係る方法のお蔭で、より良好なシールを有する。
【0076】
加圧段階の後、マスチック6、7を、スペーサ4、5に沿って、三層ガラスユニットの外側に向
いているスペーサの面とガラスシート1、2、3の縁部との間に、注入する。マスチックによって、複層ガラスユニットをシールし、その結果、水蒸気やほこりが内部に入りこむことはない。
【0077】
本発明に係る方法においては、仮組段階の前に、当該方法がスペーサ4、5をガラスシート1、2、3に固定する段階を含む。この段階は、例えばブチルビードによって接着することにより行うことが好ましい。スペーサ4、5は、複層ガラスユニットの内側のいかなる水分をも吸収することができる乾燥剤を含むことが好ましい。また、スペーサ4、5は、断熱性である(「ウォームエッジ」である)ことが好ましい。
【0078】
従って、
図1の実施形態に係る二層ガラスユニットについて、スペーサ4は、ガラスシート1の面(2)に、或いはガラスシート2の面(3)に固定することができる。スペーサ4は、加圧段階中にガラスシートの一つに固定するための、第1のブチルビードを含み、続いて第2のガラスシートに固定するための、第2のブチルビードを含む。同様に、
図2に示す実施形態に係る三層ガラスユニットについて、スペーサ4は、外側ガラスシート1の面(2)に、或いは内側ガラスシート2の面(3)に固定することができる。同様に、スペーサ5は、外側ガラスシート3の面(5)に、或いは内側ガラスシート2の面(4)に固定することができる。各スペーサ4、5は、加圧段階中にガラスシートの一つに固定するための、第1のブチルビードを含み、続いて第2のガラスシートに固定するための、第2のブチルビードを含む。
【0079】
後続の固定を容易にするとともに、製造方法を遅らせる中間の固定段階を回避するために、スペーサ4、5をガラスシートの様々な表面に固定するために必要なブチルビードは、全て、仮組段階前に堆積させる。
【0080】
本製造方法は、スペーサをガラスシートに固定する前に、ガラスシート1、2、3を洗浄する段階も含む。これは、二層ガラスユニットの面(2)、(3)又は三層ガラスユニットの面(2)から(5)は、複層ガラスユニットが製造された後にはガラスユニットの内側にあるので、もはや洗浄できないからである。ガラスシートを洗浄することにより、複層ガラスユニットのユーザーに、より良好な視界がもたらされる。
【0081】
さらに、ガラスシート1、2、3には、低放射率のフィルム(例えば、三層ガラスユニットの面(2)、(5)に)、反射防止フィルム(例えば、三層ガラスユニットの面(3)、(4)に)、エレクトロクロミックスタック、自浄作用を有するフィルム、非凝縮性フィルム、及び日射調整フィルム等の、機能性のフィルムを装備することができる。多数の機能性のフィルムは複層ガラスユニットの所定の面に配置することができる。
【0082】
本願に係る方法は、四つの
側部を有するガラスユニットについて説明したが、異なる数の
側部を有するガラスユニット、例えば三角形のガラスユニッ
ト(扇状に配置されたこれらユニットの角の一つで完全に閉鎖されている)、或いは湾曲した上側縁部を有するガラスユニット(扇状に配置されたこれらユニットの湾曲した縁部の少なくとも一点で
部分的に閉鎖されている)にさえも適用される。