(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のセンサ、前記電子制御システム、および前記膝屈曲制御デバイスは、前記傾斜センサ信号が水平歩行および傾斜の上昇を示す場合に、前記膝屈曲制御デバイスの前記制動抵抗が、前記第1のレベルまたはそれと同等のレベルから前記第2のレベルまたはそれと同等のレベルへと実質的にただちに切り替えられるように構成された請求項1に記載の下肢義足。
前記期間は、前記膝屈曲角度が遊脚相において実現される最大膝屈曲角度の30パーセントと70パーセントとの間のしきい値まで増大した際に終了するように構成された請求項9に記載の下肢義足。
下方傾斜の検出により、前記電子制御システムが、傾斜路下降モードになされ、前記傾斜路下降モードにおいて、前記電子制御システムは、傾斜路下降抵抗プログラムに従って、前記第1のレベルから前記第3のレベルへの前記膝屈曲制御デバイスの切替え、および、前記第3のレベルから前記第2のレベルへの前記膝屈曲制御デバイスの切替えを制御するように構成された請求項3または4に記載の下肢義足。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多様な条件において肢機能の向上を図った電子制御義足を大腿切断患者に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、下肢義足が、装着セクションと、脛骨セクションと、足セクションと、装着セクションと脛骨セクションとを連結する膝関節と、脛骨セクションと足セクションとを連結する足関節とを備える。膝関節は、膝屈曲制御デバイスを備え、足関節は、足首屈曲制御デバイスを備える。さらに、この義足は、膝関節に関連付けられた少なくとも1つのセンサと、足関節に関連付けられた少なくとも1つのセンサとを備え、各センサは、活動もしくは移動、または歩行環境の少なくとも1つの動態パラメータおよび運動パラメータを示すセンサ信号を生成する。さらに、この義足は、センサ信号を受信するために前記センサと接続され、また、前記制御デバイスに制御信号を送ることによりセンサ信号に応じて膝関節および足関節の屈曲制御設定を動的にかつ自動的に修正するために屈曲制御デバイスに接続された電子制御システムを備える。センサ、制御デバイス、および電子制御システムの構成は、移動時に、膝関節の屈曲制御設定および足関節の屈曲制御設定がそれぞれ、膝関節に関連付けられたセンサからのセンサ信号および足関節に関連付けられたセンサからのセンサ信号によりそれぞれ決定されるような構成である。このようにすることで、大腿離断患者または膝離断患者用の下肢義足に、統合されたマイクロプロセッサ制御を与えることが可能となる。特に、肢は、膝におけるハイブリッド型油圧式降伏立脚/空気圧式遊脚制御デバイスのマイクロプロセッサ制御と、足関節の油圧制御および背屈制動(および好ましくは足底屈制動)とを共に組み合わせることによって、感知された各パラメータに従った義足内の最適な位置に配置されたセンサからの信号に基づいた膝レベルと足首レベルとの両方における協調的な調節に関して利点をもたらす。本明細書における「屈曲制御」とは、屈曲および/または伸展の制御を含む一般的な意味において(関節の曲げの増大の意味のみではなく)解釈されたい。
【0007】
膝レベルおよび足首レベルのセンサからの入力を利用して膝関節および足関節の制御機能を統合することにより、移動に関係づけられた動態パラメータおよび運動パラメータのより正確な測定が可能となる。例えば、足関節または足のレベルのセンサは、表面傾斜の変化の検出に最も適するが、膝関節に関連付けられたセンサは、いくつかの速度パラメータおよび期間パラメータの感知に最も適する。
【0008】
統合的制御は、多用な地形および種々の移動速度における機能を向上させる、例えば繊維強化複合材料板ばねおよび力学的エネルギーを吸収するための軸ばねなどを有する義足において実現され得る。
【0009】
本発明の一実施形態においては、義足は、脛骨または足首の曲げモーメントを示すセンサ信号を生成するために足関節に関連付けられたセンサを有し、センサ、制御デバイス、および電子制御システムの構成は、移動時に、膝関節の屈曲制御設定が、脛骨または足首の曲げモーメントに応じて調節されるような構成である。代替的には、または追加的には、義足は、例えば義肢の足セクション上などに取り付けられた加速度計の形態の、足関節に関連付けられたセンサを有してもよく、膝関節の屈曲制御設定は、加速度計からの信号に応じて調節される。
【0010】
この構成は、好ましくは、移動時に、膝関節の屈曲制御設定が、足首屈曲制御デバイスの設定に応じて決定されるような構成であり、この足首屈曲制御デバイスは、可変制動抵抗をもたらす制動デバイスである。例えばストライド長および/またはステップ速度を表す信号などの歩行速度を表す信号は、膝関節に関連付けられたセンサからのセンサ信号および足関節に関連付けられたセンサからのセンサ信号に応じて電子制御システムにおいて生成され得る。一般的には、この構成は、足関節の屈曲制御設定がかかる歩行速度信号に応じて決定されるような構成である。
【0011】
追加的には、好ましい義足において、膝関節の屈曲制御設定は、地面の傾斜を示すセンサ信号に応じて修正され、そのような信号は、足関節に関連付けられた加速度計から導出される。実際には、膝関節の屈曲制御設定は、地面の傾斜と足関節の屈曲制御設定との両方を表すセンサ信号の組合せに応じて修正されてもよい。立脚相と遊脚相との両方において膝の屈曲抵抗を制御するのに効果的な制御デバイス設定が、感知された歩行速度に応じて調節されることが好ましい。
【0012】
ジャイロスコープセンサが、例えば脛骨セクション上などに、すなわち膝関節軸と足関節軸との間の位置に取り付けられてもよい。代替的には、ジャイロスコープセンサは、ソケット上の矢状面内に、または膝関節軸の上方の膝の上に、または例えば足の上などの足関節軸の下方に取り付けられてもよい。このセンサは、角速度を測定する。
【0013】
義足の一部を形成する他のセンサには、例えば外部から印加される曲げモーメントおよび/または軸方向力などのリアルタイム荷重を測定する少なくとも1つのセンサが含まれてもよい。このようなセンサは、ひずみ計であってもよい。足構成要素に対するせん断力が、このようにして足のひずみ計を利用することにより測定されてもよい。脛骨のせん断力が、典型的には脛骨チューブに対して膝関節構成要素を連結する脛骨クレードルの上など、脛骨の上方部分において、例えば膝レベルのひずみ計などにより測定されてもよい。また、膝および足首/足レベルにおいて線形変位と角運動の両方を検出するためのセンサが含まれてもよい。速度、配向、または加速度の測定値が必要とされる場合には、加速度計およびジャイロスコープセンサが好ましい。このような測定値は、傾斜路および階段などの種々の環境を検出するために、ならびに移動速度の変化、ストライド長の変化、および事象(静止、着座、移動の開始および停止、回転、ならびに障害物を迂回する移動など)を予測するために、使用され得る。
【0014】
したがって、好ましい電子制御システムの構成により、階段上昇モードの定義が可能となる。センサには、足首角度センサおよび膝角度センサが含まれてもよく、さらに、システムは、足首角度センサおよび膝角度センサからの信号が、足関節が第1の背屈しきい値を超えて背屈されることと、膝関節が第1の膝屈曲しきい値を超えて屈曲されることを共に示す場合に、階段上昇モードが作動されるように構成される。
【0015】
他の活動モードには、高速歩行モードおよび低速歩行モード、ならびに階段下降モードがさらに含まれてもよい。
【0016】
センサ、制御デバイス、および電子制御システムの構成は、好ましくは、膝関節の屈曲制御設定が活動モードに対応するような構成である。同様に、足関節の屈曲制御設定は、活動モードに対応するものであってもよい。
【0017】
典型的には、膝関節の屈曲制御設定および足関節の屈曲制御設定は、脛骨曲げモーメント、膝屈曲角度、足首屈曲角度、および地面傾斜を示すセンサ信号に対応する。また、ストライド長および角速度を示す信号を利用してもよい。
【0018】
また、移動時に、足関節の屈曲制御設定が、所定の脛骨曲げモーメントプロファイルを実現するように、好ましくは歩容サイクルの立脚相において時間と曲げモーメントとの関係を示したグラフが段形状を有する脛骨曲げモーメントプロファイルを実現するように修正されるような構成であってもよい。2つ以上の好ましい曲げモーメントプロファイルが、例えば活動モード、歩行速度もしくはストライド長などの検出された歩容パラメータ、または地面の傾斜などに応じて使用され得る。曲げモーメントプロファイルの段形状は、曲げモーメントが第1の勾配によって上昇する第1の期間と、その後の、モーメントが第1の勾配を下回る第2の勾配によって上昇する第2の期間と、その後の、勾配が第1の期間の勾配と同等のレベルに戻る第3の期間とによって特徴付けられる。曲げモーメントプロファイルが前記段形状を示さない場合に、足首屈曲制御デバイスの立脚相足底屈抵抗が上昇する、および/または足首屈曲制御デバイスの立脚相背屈抵抗が低下するような構成である。典型的には、段状曲げモーメントプロファイル形状の第3の期間の持続時間は、第2の期間の持続時間の少なくとも半分、好ましくは少なくとも80パーセントである。制御設定は、例えば地面傾斜、ステップ速度、またはストライド長などを含む、種々の活動についての種々の曲げモーメントを実現するために調節されてもよい。
【0019】
足首屈曲角度センサを備える義足の例において、制御システムは、立脚相における時間に対する背屈曲線の下方のエリアが、対応する所定のエリアしきい値を超過する場合に、足首屈曲制御デバイスの立脚相足底屈抵抗が上昇する、および/または足首屈曲制御デバイスの立脚相背屈抵抗が低下するように構成されてもよい。
【0020】
この構成は、足首における足底屈抵抗および背屈抵抗が、移動時に、動的にかつ自動的に調節されることにより、脛骨曲げモーメントプロファイルが立脚相において段形状上昇を示すような、および/または立脚相において足首背屈振幅が減少するような構成であってもよい。
【0021】
足関節の屈曲抵抗の修正または調節は、典型的には、電子制御システムの較正モードにおいて実行され、それにより、後の移動時に移動または歩行環境の上述の動態パラメータまたは運動パラメータを表すセンサ出力信号に応じ、使用される屈曲抵抗設定が確立される。
【0022】
電子制御システムの構成に関して、単一のマイクロプロセッサコントローラが使用されてもよく、あるいは中央コントローラおよび1つまたは複数の補助コントローラがあってもよい。このようなコントローラの中の少なくとも1つが、センサから信号を受信し、測定された各パラメータは、制御出力値を含む多層行列に対する入力値として、水平歩行、傾斜路上昇歩行、傾斜路下降歩行、高速歩行、低速歩行、等々の活動モードを定義するために使用され、それにより、膝関節および足関節において機械制御デバイスを設定するための選択出力信号の基礎が形成される。このようなモードの組合せは、多層行列により可能となる。任意のある移動速度が、低ステップ速度および大ストライド長の組合せか、または高ステップ速度および小ストライド長の組合せによって実現され得ると仮定する場合には、活動モードは、ストライド長とステップ速度とを識別してもよい。したがって、活動モードには、低速短ステップ、高速短ステップ、低速長ステップ、高速長ステップが含まれ得る。また、開始ステップおよび停止ステップが、感知され考慮に入れられてもよい。特に、センサ信号の処理により検出される各活動モードは、そのモードに対して予め選択された足関節屈曲抵抗設定および膝関節屈曲抵抗設定を定義する対応する行列値を有する。好ましい義足において、設定は、立脚相および遊脚相のそれぞれにおいて屈曲抵抗を制御する、膝関節用の油圧制御デバイスおよび空気圧制御デバイスに関連し、また、足関節の足底屈および背屈に抵抗するための制御デバイスに関連するものである。このようなデバイスは、液体またはガスのいずれかに関わらず流体媒体を収容するチャンバ内において往復運動が可能である、線形ピストン、回転ピストン、線形翼、または回転翼を備えてもよい。弁またはモータにより、流体流のならびに従って各例におけるピストンおよび翼の運動の制御を行うことによって、制動を変化させることが可能となる。
【0023】
設定は、好ましくは、義肢装具士の制御下にあり得る教示モードもしくは較正モードの際に確立されるか、または自動較正プロセスに従って実行される。特許文献4および特許文献5は、遊脚相抵抗を自動的に設定するための技術を開示している。これらの公開済みの特許出願および均等物である2008年9月11日に出願された特許文献6の開示は、参照により本出願に明確に組み込まれる。
【0024】
較正モードにおいて、個々の移動特徴が検出され、例えば立脚降伏(屈曲抵抗)、遊脚相における踵上昇度、好ましい歩行速度および地形条件における足底屈抵抗度および背屈抵抗度などについての最適値が確立される。この較正データは、インターフェーススイッチを使用したまたは無線遠隔制御もしくは有線遠隔制御を介した電子制御システムに対して入力されるコマンドによる手動調節を介して、自動的にさらに改良することが可能である。
【0025】
好ましい義足において、制御システムは、活動モードに従って制御デバイス設定を調節することにより、荷重を受けつつある際の膝関節の安全な降伏制御と、最小限のユーザ労力により遊脚を開始させるための降伏の最適な解除と、切断患者の質量中心の自然な移動および前進を可能にするための足関節の正確な減速とを実現する。足底屈および背屈は共に、活動モードに従って制動されることにより、義足のエネルギー保存要素からの推進踏切力を最大限に引き出すことによって、エネルギー効率の高い、安全でかつ快適な移動をユーザにもたらす。初めに、設定は、好ましい歩行速度における水平歩行に対して確立される。ユーザによる補償および異常調節のレベルは、前方へと押されているまたは補助されているという知覚を与えるために、可能な限り最小限に抑えられ、それにより、肢は、義足が地面に接地する際に可能な限り自然な態様で、減速をまたは速度制御の補助を行う。好ましい歩行速度における水平歩行に対して確立された行列値は、次いで、傾斜面、種々の速度、および非歩行モードについての新たな行列値を求めるために調節される。好ましい義足において、センサおよび制御システムの他のものは、傾斜路の上昇および下降、傾斜路の傾斜度、階段の上昇および下降、上昇速度または下降速度、切断患者が歩行する際の最低から最高に及ぶ歩行速度、ならびに、着座、椅子から起立、および障害物を回避するための移動などの他のモードの検出および識別を行うことが可能である。行列は、複数の行列レベルを有し、少なくとも1つが、各活動モードについてのものである。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、装着セクションと、脛骨セクションと、足セクションと、装着セクションと脛骨セクションとを連結する膝関節と、脛骨セクションと足セクションとを連結する足関節と、を備える下肢義足が提供される。膝関節は、膝屈曲制御デバイスを備え、足関節は、足首屈曲制御デバイスを備える。さらに、この義足は、移動または歩行環境の少なくとも1つの動態パラメータまたは運動パラメータを示すセンサ信号を生成する複数のセンサを備える。さらに、この義足は、センサ信号を受信するように前記センサに接続され、また、前記制御デバイスに制御信号を送ることによりセンサ信号に応じて膝関節および足関節の屈曲制御設定を動的にかつ自動的に修正するために屈曲制御デバイスに接続された電子制御システムを備える。これらのセンサは、脛骨セクションに関連付けられたセンサを含み、このセンサは、電子制御システムとの組合せにおいて、脛骨セクション曲げモーメントを表す信号を生成するように、および脛骨セクション曲げモーメントを表す信号に応じて足首屈曲制御デバイスに制御信号を送るように構成される。好ましくは、足首制動抵抗は、感知した曲げモーメントに応じて、より好ましくは膝制動抵抗にも応じて変更される。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、装着セクションと、脛骨セクションと、足セクションと、装着セクションと脛骨セクションとを枢動可能に連結する膝関節と、脛骨セクションと足セクションとを枢動可能に連結する足関節と、を備える下肢義足が提供される。膝関節は、膝屈曲を制動するための動的に調節可能な膝屈曲制御デバイスを備える。さらに、この義足は、足関節または足セクションに関連付けられ、地面傾斜を示す傾斜センサ信号を生成する傾斜センサと、傾斜センサおよび膝屈曲制御デバイスに接続された電子制御システムとを備える。センサ、電子制御システム、および膝屈曲制御デバイスの構成は、膝屈曲制御デバイスの制動抵抗が傾斜センサ信号に応じて可変となるような構成である。膝における制動抵抗は、足関節制動抵抗のための電子制御システムにより生成される値によっても部分的に制御されてもよい。本発明のある特定の実施形態において、制御システムは、傾斜センサ信号が下り勾配を示す場合に、この例においては膝の曲げである屈曲に対する立脚相抵抗が立脚相時に低下するように構成される。したがって、立脚相の初期部分において、屈曲に対する抵抗は、膝が立脚するときに安定性を与えるためにほぼロックされ得るように高いが、立脚相の後の部分において、抵抗は、切断患者の体重により課される荷重下におけるより大きな降伏をもたらして遊脚相に備えるために低減される。抵抗の低下は、段階的なものであってもまたは漸進的なものであってもよい。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、装着セクションと、脛骨セクションと、足セクションと、装着セクションと脛骨セクションとを連結する膝関節と、脛骨セクションと足セクションとを連結する足関節と、を備える下肢義足が提供される。膝関節は、膝屈曲制御デバイスを備え、足関節は、足首屈曲制御デバイスを備える。さらに、この義足は、膝関節に関連付けられたセンサを備え、このセンサは、電子制御システムに接続され、電子制御システムとの組合せにおいて移動速度を示す信号を生成する。足首屈曲制御デバイスは、足関節屈曲を可変的に制動することが可能であり、電子制御システムとの組合せにおいて、移動速度を示す信号に応じて足首屈曲制動に対する抵抗を変更するデバイスである。
【0029】
本発明の第5の態様によれば、装着セクションと、脛骨セクションと、足セクションと、装着セクションと脛骨セクションとを枢動可能に連結する膝関節と、脛骨セクションと足セクションとを枢動可能に連結する足関節と、を備える下肢義足が提供される。膝関節は、膝屈曲を制動するための動的に調節可能な膝屈曲制御デバイスを備える。さらに、この義足は、移動または歩行環境の少なくとも1つの動態パラメータまたは運動パラメータを示すセンサ信号を生成する複数のセンサと、前記複数のセンサのうち地面の傾斜を示す傾斜センサ信号を生成するセンサからの信号を含む、前記複数のセンサからの信号に応じ、膝関節の屈曲制御設定を動的にかつ自動的に修正するために、前記複数のセンサおよび膝屈曲制御デバイスに接続された電子制御システムとを備える。複数のセンサ、電子制御システム、および膝屈曲制御デバイスの構成は、傾斜センサ信号が下降傾斜の下り勾配を示す場合に、膝屈曲制御デバイスの制動抵抗が歩容周期の立脚相の大部分においては第1のレベルに設定され、また、歩容周期の遊脚相の大部分においてはより低い第2のレベルに設定され、立脚相の後期部分を含む期間において、膝屈曲制御デバイスは、膝屈曲に対する制動抵抗が第1のレベルと第2のレベルとの間になるように調節される。
【0030】
対照的に、好ましい実施形態は、水平歩行モードまたは傾斜路上昇モードにおいて、膝屈曲制御デバイスの制動抵抗が第1のレベルまたはそれと同等のレベルから第2のレベルまたはそれと同等のレベルへと実質的にただちに切り替えられるような構成である。換言すれば、膝屈曲制御抵抗の第2のレベルへの切替えは、傾斜路下降モードにおいては、1つまたは複数の中間抵抗レベルへと膝屈曲制御デバイスを調節することにより、水平歩行モードにおける切替えに比べて遅滞する。これにより、制御的に遊脚相を開始させることを妨げることなく、立脚相の終了時において幾分かの追加的な支持を与えることが可能となる。
【0031】
膝屈曲制御デバイスに対して送られる信号により、
制動抵抗は、前記期間の開始時に、第1のレベルと第2のレベルとの間の第3の所定の中間レベルへと段階的に低減され、前記期間の終了時には、第2のレベルへと段階的にさらに低減されることが好ましい。代替的には、前記期間中に膝屈曲制御デバイスに対して送られる信号により、膝屈曲制動抵抗は、第1のレベルから第2のレベルへと漸進的に低減される。
【0032】
典型的には、前記期間の持続時間は、立脚相の持続時間の少なくとも10パーセントである(立脚相は、足尖離地時に、すなわち足セクションが地面から離れる時点で終了する)。より好ましくは、この期間は、立脚相持続時間の少なくとも15パーセントであり、20パーセントを超過してもよい。また、この期間は、脛骨曲げモーメントの最大値においてまたはその直後に始まり、膝屈曲角度が歩容周期の遊脚相において上昇しつつある際に終了する、足尖離地をまたぐことも好ましい。この好ましい実施形態においては、この期間は、膝屈曲角度が、遊脚相において実現される最大膝屈曲角度の30パーセントと70パーセントとの間の所定のしきい値まで増大した際に終了する。
【0033】
傾斜路下降モードにおいては、電子制御システムは、好ましくは、傾斜路下降抵抗プログラムに従って、第1のレベルから第3のレベルへおよび第3のレベルから第2のレベルへの膝屈曲制御デバイスの切替えを制御する。第1のレベルから第3のレベルへ
の制動抵抗の切替えは、例えばモーメントまたは力など、好ましくは脛骨曲げモーメントである、測定された動態パラメータに応じて実行されてもよい。この期間の終了時における第2のレベルへ
の制動抵抗の切替えは、好ましくは、例えばある肢セグメントの別の肢セグメントに対する相対線形変位もしくは相対角度変位などの、測定された運動パラメータか、または例えば速度もしくは加速度などの関連派生値に応じて実行される。好ましい実施形態においては、運動パラメータは、測定された膝角度またはその均等物である。
【0034】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aを参照すると、本発明による下肢義足は、例えば断端ソケット(図示せず)などに対して義足を装着するための装着セクション10と、脛骨セクション12と、足セクション14とを有している。脛骨セクション12は、膝関節16により装着セクション10に対して連結されるが、この例において、膝関節16は、脛骨セクション12が装着される膝クレードル20内に収容された屈曲制御デバイス18を組み込んだ単軸膝関節である。脛骨セクション12に対して足セクション14を連結しているのは、以降で説明することとなる足首屈曲制御デバイスを組み込んだ足関節22である。
【0037】
図1Bに、膝関節16がより詳細に示される。
図1Bを参照すると、膝関節は、膝シャシ25を有し、膝シャシ25には、装着セクション10が剛体的に取り付けられ、膝軸28を画定するピボット27を担持する。脛骨クレードル20は、ピボット27により膝シャシ25に装着されるため、膝関節が屈曲する場合には、脛骨クレードル20は、膝軸28を中心として装着セクション10に対して枢動する。
【0038】
上方制御デバイスピボット30により膝シャシ25の後方部に枢動的に接続されるとともに、下方制御デバイスピボット32により脛骨クレードル20の下方部に枢動的に接続された膝屈曲制御デバイス18は、膝関節の屈曲と伸展との両方を制御するためのハイブリッド型空気圧/油圧ピストンおよびシリンダアセンブリの形態をとる。ハイブリッド型制御デバイスであることにより、膝屈曲制御デバイス18は、2つのシリンダおよび2つのピストンを有するハウジングを備え、2つのピストンは共に、共有ピストンロッド18R上に取り付けられる。
図1Bを
図1Cと組み合わせて参照すると、以降においては「空気圧ピストン」という第1のピストン18Aが、第1の空気圧ピストンチャンバ18B内において往復運動可能であり、以降においては「油圧ピストン」という第2のピストン18Cが、第2の油圧チャンバ18D内において往復運動可能である。屈曲制御デバイスの油圧ピストン18Aおよび関連部分の構成および機能は、特許文献7において開示されたピストンおよびシリンダアセンブリのものとほぼ同様である。空気圧ピストン18Aは、逆止め弁を備える迂回通路18Eを含み、この逆止め弁は、空気圧ピストン18Aが、膝関節の伸展時よりも屈曲時において、ピストンロッド18Rの移動に対してはるかにより大きく抵抗するように配向される。実際に、この領域においては、伸展に対する抵抗は、無視し得る程度のものである。膝関節の屈曲に対する制御デバイス18の空気圧部分の抵抗は、ニードル弁18Nにより制御され、ニードル弁18Nは、第1の電気ステッピングモータ34と、ニードル弁のニードル部材に接続された付随のねじ山付きシャフト34Aとによって調節可能である。ニードル弁18Nは、制御デバイス18の下方ハウジング部18F内の通路18P内に位置し、この通路は、空気圧ピストン18Aの両側に位置する空気圧チャンバ18Bの上方部分と下方部分とを相互に接続し、空気圧チャンバ18Bの頂部のポート(図示せず)において外部へと出る。モータ34の動作により、シャフト34Aが軸方向に移動することによって、ニードル部材は、通路18Pの一部を形成する路程の内外へと移動することにより、オリフィス面積を変化させる。
【0039】
通路18Pは、空気圧ピストン18Aの両側のチャンバ空間を相互に接続する第2の迂回通路を構成する。この場合には、ピストン18A間における差圧により生成される屈曲抵抗は、モータ34によるニードル弁18Nの設定によってもたらされる制約に大きく左右される点が理解されよう。
【0040】
第1の油圧迂回通路18Lは、逆止め弁18Mを収容し、逆止め弁18Mは、膝伸展移動時に通路を閉鎖するように配向される。また、通路18Lは、膝屈曲制御デバイス18のハウジング18Fの側部上に取り付けられた第2の電気モータ50に歯車機構を介して接続された調節自在回転弁18Oを収容する。可変弁18Oは、弁18Oの角度位置に応じて変化する度合いにおいて迂回通路18Lのボアと連通する貫通通路を有し、この通路の断面は、弁の回転自在部がモータ50により駆動される際に、オリフィス面積を漸進的に変化させるように形状設定される。
【0041】
逆止め弁18Mのこの配向により、第1の油圧迂回通路18Lおよびそれに付随する調節自在弁18Oは、モータ50を制御する電気信号に応じた制御デバイス18の油圧部分によって膝屈曲抵抗レベルを制御する。
【0042】
制御デバイス18の油圧部分の第2の油圧迂回通路18Qは、第1の迂回通路18Lの逆止め弁に対して対向方向に配向された逆止め弁18Sを有し、これにより、通路18Qを通過する油圧流体流を制限する第2の回転弁18Tが、作動時に膝伸展に対する抵抗を制御する。本発明のこの実施形態においては、第2の回転弁18Tは、手動により事前設定可能である。
【0043】
第2の油圧迂回通路18NQは、それぞれ異なる位置において油圧チャンバ18
C内に開口する2つの通路18QA,18QBへと分岐するため、一方の分枝18QAは、膝関節が完全伸展に近接すると、ピストン18Cにより覆われる。他方の分枝18QBは、実質的な完全伸展に対して覆われない状態に留まる。第2の分枝18QBは、制限部18Uを有し、第1の分枝18QAは、開状態であるため、ピストン18Cが、完全伸展位置に近接すると、制限部18Uは、ピストン自体が通路18QBを通過する流体流を制限することにより、ピストンストロークの最終部分に対して効力を発揮して、漸進的な終端衝撃制動を実現する。伸展に対するベース抵抗は、手動調節可能な第2の回転弁18Tの設定により決定される。
【0044】
油圧弁18Oの作動は、少なくとも歩行歩容周期の立脚相においては、膝屈曲制御デバイスが主に油圧制御される屈曲および伸展を実現する一方で、遊脚相においては、制御が主に空気圧によるものとなるように、以下に説明されるように電子制御システムにより制御される。
【0045】
電子制御システムの一部として、脛骨クレードル20は、2つのひずみ計52,53を担持する。一方のひずみ計は、クレードル20の前方壁部上に取り付けられ、他方は、対向側の後方壁部上に取り付けられる。これらのセンサは、義足が荷重を受けた場合の脛骨曲げモーメントを測定するために使用される。また、膝関節は、膝制御デバイスハウジング18Fの側に取り付けられた磁気抵抗トランスデューサ54Aおよびピストン18A上の磁石54Bの形態をした膝角度センサを担持する。
【0046】
脛骨クレードルの上方前方部分には、電子制御システムを駆動するための電池56用の空間が設けられる。
【0047】
次に
図1Dを参照すると、好ましい義足は、剛性キャリア62Aを備える足竜骨62を有する。剛性キャリア62Aに対して、つま先ばね62Bおよび踵ばね62Cが、個別に接続される。竜骨62は、主に炭素繊維複合材料から形成され、発泡材化粧カバー(図示せず)により囲まれ得る。
【0048】
実質的に円筒状の形状を有し、脛骨セクション12と同軸である足関節22(
図1Aを参照)が足竜骨62に接続され、この足関節は、長手方向脛骨連結軸66を画定するピラミッド形脛骨連結接合部64の形態をした上方位置合わせ接合部64を担持する。足関節22は、足60の足竜骨62Aに脛骨セクション12を接続し、足竜骨62Aに対するこの取付けは、足首屈曲軸70Aを画定する足首屈曲ピボット70によるものである。
【0049】
足関節22は、上方ピストンロッド74Aおよび下方ピストンロッド74Bを備えたピストン74を有する、足関節ピストンおよびシリンダアセンブリを形成する足関節本体22Bを有し、下方ピストンロッドは、第2の枢動連結部76において足竜骨62に対して枢動可能に連結され、この第2の枢動連結により、この例においては屈曲軸70Aから後方に離間された第2の内外方向軸が画定される。足関節本体22Bが、屈曲軸70Aを中心として枢動する際に、ピストン74が、その本体により形成されたシリンダ内において実質的に線形方向に移動することが理解されよう。
【0050】
このシリンダは、上方チャンバ78Aと下方チャンバ78Bとに区分される。これらのチャンバは、足関節本体22B内の2つの迂回通路80によって連結され、それらの迂回通路80の一方が、
図1Dにおいて視認可能である。他方の通路80は、断面の前に位置するため、
図1Dにおいては視認できない。しかし、通路80の構成は、ほぼ同一である。これらの2つの迂回通路80はそれぞれ、2つの弁を介してシリンダの上方チャンバ78Aと下方チャンバ78Bとの両方と連通する。各迂回通路80は、サーボモータ84の形態をした付随のアクチュエータを有する各制動抵抗制御弁82を収容する。サーボモータ84の動作により、弁82の弁部材が漸進的に回転され、弁82のオリフィス面積を増減させる。また、各迂回通路80が、各逆止め弁86を収容する。この可調節面積オリフィス弁82および逆止め弁86は、上方シリンダチャンバ78Aと下方シリンダチャンバ78Bとの間において、迂回通路80内で直列に配置される。
【0051】
図1Dにおいて迂回通路80は、下方チャンバ78Bから上方チャンバ78Aへの油圧流体の流れが可能となるように配向された逆止め弁86を有する。他方の迂回通路(図示せず)は、逆方向に配向された逆止め弁を有する。したがって、通路80の一方は背屈時に動作し、他方は足底屈時に動作する。屈曲軸70Aを中心として足関節本体22Bに対して連続的に発生する足構成要素14の動きは、ピストン74がピストン74を収容するシリンダの下方壁部および上方壁部のそれぞれと当接することにより画定される背屈限界と足底屈限界との間において可能となる。背屈および足底屈についての制動レベルは、以下において説明される電子制御システムにより調節可能な面積を有する各オリフィスによって、個別におよび自動的に事前設定され得る。
【0052】
電子制御システムは、足竜骨62Aの上に取り付けられた加速度計の形態をしたセンサ85と、足関節本体22Bおよび足竜骨62Aの上に相互に位置合わせされた状態で取り付けられた2部構成の足首屈曲角度センサ87A,87Bとを有する。足関節ケーシング22Cは、可調節制動抵抗制御弁82用の2つのサーボモータ84を収容するだけではなく、さらに、プロセッサボード90および第2の電池92のための空間を提供する。電線94は、プロセッサボード90に対して足首屈曲角度センサ87A,87Bを接続する。他の電線(図示せず)は、プロセッサボード90に膝関節の他のセンサ、電池、およびモータを接続する。
【0053】
次に
図2を参照すると、好ましい電子制御システムは、3つの8ビットマイクロプロセッサコントローラを有する(16ビットコントローラを代替として使用し得る)、プロセッサセクション100を備える。コントローラは、膝コントローラ104および足首コントローラ106である2つのスレーブコントローラに接続されたメインコントローラ102を備える。メインコントローラ102の入力ポート102Aには、
図2において入力ポート108Aとして示される複数の入力を有するアナログデジタル変換器108が接続される。これらの複数の入力は、義足の様々な部分に配置された上述のセンサからセンサ信号を受信するためのアナログ入力を含む。したがって、コントローラ102により受信されたデータは、種々の活動モードにおける肢の使用に関連付けられる複数の動態パラメータおよび運動パラメータを示す。水平歩行、斜面歩行、立脚および着座等々の活動モードは、事前設定されたルールに従って、以下に説明されるように、メインコントローラ102によりパラメータに基づき検出される。
【0054】
メインコントローラ102に記憶されたさらなるルールに従って、命令が、メインコントローラ102から膝コントローラ104および足首コントローラ106に送られ、膝コントローラ104および足首コントローラ106は、膝ドライバ110および足首ドライバ112に対する制御信号を生成する。
図1Bを参照して上述した膝関節に関連付けられたモータ34,50は、ドライバ110の第1のものとの接続部114を介してプロセッサセクション100と信号を交換する。これらの信号には、接続部114を経由するフィードバック信号により確認される所要位置へと膝モータを駆動するためのドライバ信号が含まれる。上述したように、膝モータ34,50は、上述した弁に、膝制御デバイス18の各部分18P,18
L(
図1B参照)内の空気圧ピストンおよび油圧ピストンの移動を制御させる。
【0055】
同様に、足首モータ84(
図1Dを参照して上述した)は、第2のドライバ112に対する接続部116を介してプロセッサセクション100と信号を交換する。これらの信号には、駆動信号およびフィードバック信号が含まれ、それにより、足首モータ84は、上述した弁に、
図1Dを参照して上述したように足関節22内に収容された足関節制御デバイス22H内の油圧ピストンの移動を制御させる。
【0056】
プロセッサセクション100に接続されたユーザインターフェース120は、PCまたはタブレットコンピューティングデバイスと無線信号を交換するための無線通信セクションを備える。また、プログラミングが、例えばプログラミングのステータスを示す2つのボタン、LED、およびビープ音発生器などを使用する規定のHMI(オペレータインターフェース)によってなされ得る。
【0057】
この制御システムは、ハードウェアとソフトウェアとの両方の観点においてオープンアーキテクチャを使用するため、左右切断患者における他の電子制御システム、例えば第2の下肢義足からの信号を一例とする代替的または追加的な入力信号および出力信号などを各部分に追加させたり、各部分が許容したりすることが可能となる。このオープンアーキテクチャは、要件に応じて変更可能なプラグインモジュールを技術プラットフォームに与える。例えば、左右切断患者の例においては、第2の肢に関する情報が提供される。他のセンサからのセンサデータが、提供されてもよい。しかし、この左右オプションは、二大腿(膝上)切断患者用の通信能力を含むだけでなく、例えば、大腿義足と下腿(膝下)義足との間における通信も含むことになり、これにより、プロセッサ制御される足/足関節間の通信が事実上可能となり、これは、全体的な歩容性能および協調にとって有利となる。様々な組合せおよび構成における種々の関節および/または構成要素の間の情報共有全体が、オープンアーキテクチャアプローチにより可能となる。
【0058】
メインコントローラ102は、移動の動態パラメータまたは運動パラメータをセンサ信号のデジタル表現から導出することにより、関連パラメータのステップ速度およびストライド長に関する情報を含む速度、歩容相、ならびにかかる特徴におけるステップ間変動性などの歩容特徴を測定し、膝コントローラ104および足首コントローラ106から制御信号を生成して膝関節制御デバイスおよび足関節制御デバイスの設定を修正することにより、切断患者の歩容を最適化するようにプログラミングされる。
【0059】
メインコントローラ102のプログラミングには、上述の特許文献4および特許文献5に記載されているような、特定の切断患者に関する制御特徴の好都合かつ直接的な修正のための自己較正ルーチンが含まれる。速度、すなわち移動速度、特に歩行速度または歩容周期頻度と、歩容相とが、好ましくは、膝角度センサ54Aと曲げモーメントひずみ計52,53との出力から計算されるが、いくつかの状況においては、これらのパラメータは、例えば脛骨セクションなどの上に取り付けられたジャイロスコープ88および足レベルに取り付けられた加速度計85の出力から導出されてもよい。好ましくは、グローバル基準座標系における足の歩行表面および速度の変化(運動変化)が、加速度計85および足首角度センサ87からの信号を利用して測定されることにより、上述の特許文献2に記載されるような、足関節22(
図1D)の制御デバイスの設定の修正が推進される。
【0060】
メインコントローラ102が、膝関節と足関節との両方に関連付けられたセンサの出力から、すなわち義足の種々の領域から導出されたデータを収集することにより、義足の種々の領域に関する表示データの組合せに基づく、膝関節制御デバイスおよび足関節制御デバイスの制御の向上と、歩容およびモードの解析の高度化とが可能になる。メインコントローラ102は、膝コントローラ104および足首コントローラ106に対して、直接命令および追加の歩容関連情報を送信し、膝コントローラ104および足首コントローラ106は、階層的な分散制御システムにおいてスレーブコントローラとして有効に機能する。しかし、膝コントローラ104および足首コントローラ106は、例えば有効な信号がメインコントローラ102から得られない場合には、安全性に関する何らかの自律性を有する。
【0061】
メインコントローラ102は、センサ信号と、屈曲制御デバイス18A,18C,74に対する制御信号を決定するためにメインコントローラおよびスレーブコントローラ104,106により使用される出力データとから導出された、肢制御行列関連入力条件の値を記憶するための不揮発性メモリを有する。行列値は、ユーザインターフェース120を介して外部記憶および通信のためにダウンロードされ得ると共に、外部デバイスからリロードされ得る。代替的には、制御行列値は、スレーブコントローラ104,106の不揮発性メモリ内にローカルで記憶され、メインコントローラ102が、これらの値にアクセスしてこれらの値を変更できるようにしてもよい。
【0062】
プロセッサセクション100は、有限状態制御基礎に基づいて動作する。
図3Aを参照すると、メインコントローラ102(
図2)の状態は、一連の活動モードに従って定義される。これらの活動モードは、水平歩行に対応するモード124、傾斜路モード125、立脚モード126、階段モード127、ならびに、障害物モード、特殊モード、およびエラーモードなどの他のモード128としてグループ化される。ベン図の共通部分は、あるモードから別のモードにかけてなされ得る遷移を示す。また、傾斜路下降から傾斜路上昇への直接的な移行などの他の遷移も可能である。
図3Bには、好ましい有限状態制御能力がさらに明瞭に示される。この例においては、モードには、図に示すような、平常歩行モード130、傾斜路上昇モード132、および傾斜路下降モード134等々が含まれる。この図中のモードのリストは、包括的なものではない。平常歩行モードは、この図の中心点として構成される。種々のモード間の共通部分により示されるように、メインコントローラは、アナログデジタル変換器(ADC)108(
図2)からのセンサデータとして受信したセンサ入力に従って、あるモードから別のモードへと切り替わるかまたは遷移する。次いで、メインコントローラ102中にプログラミングされたルールにより、膝モータ34,50および足首モータ84(
図2)が、モードの変化およびセンサから取得されるデータの他の変化に応じてどのように駆動されるかが決定される。
【0063】
したがって、例えば、
図3Cに示すように、水平歩行期間後の傾斜下降歩行の開始は、以下のステップにより検出および応答され得る。
足センサ(加速度計85および足首屈曲角度センサ87(
図1D、
図2))が、地面の傾斜の変化を示すセンサ信号を生成する(ステップ140)。
メインコントローラ102および/または足首コントローラ106が、これらのセンサ信号のデジタル化バージョンを解析し、表面が下方傾斜路へと変化したことを判定する(ステップ142)。
一方においては活動モードと動態パラメータ値または運動パラメータ値との間の、他方においては各屈曲制御抵抗間の、関係についての記憶された行列に基づき、モードの変化が、膝モータおよび足首モータについての新たな設定へと翻訳される(ステップ144)。
モータドライバ110,112により、膝モータ34,50および足首モータ84(
図2)はそれぞれ新たな設定とされ、これは、この例においては、水平歩行(平常歩行)モードにおけるのと同様に、膝関節制御デバイス18の油圧部分が傾斜路下降モードにおいて中程度の降伏をもたらすように設定され、制御デバイス18の空気圧部分が歩行速度に応じた設定とされる、新たな設定へとサーボモータ50を推進することを伴う(ステップ146)。同時に、足首モータの設定が、足関節制御デバイスにより生成される背屈抵抗を上昇させ、足底屈抵抗を低下させるように変更される(ステップ148)。
【0064】
同様の基本シーケンスが、
図3Bに示す他のモード遷移に適用され、使用されるセンサおよび実行される作動は、感知されたモードに応じて制御される。この実施形態においては、アクチュエータがなされる設定は、
図4Aに示すような6×5主要行列と、
図4B、
図4C、および
図4Dに示すような3つのN×5のより低レベルの行列とによって制御される。行列の行は、各活動モード(各例において左側の列中に列記)に相当し、行列の列は、4つの上述の屈曲抵抗制御デバイスの各部分の設定を示しており、膝制御デバイスの油圧部分の設定は、遊脚相および立脚相に関して個別に示される。5つの主要な抵抗設定が、個別の切断患者に応じて適用される。
図4の行列の足関節(足)の足底屈抵抗および背屈抵抗についての平常設定は、
図4Dに示すように、平常な中速度の水平歩行についての中抵抗設定である。膝関節の平常設定は、
図4Aの「水平速度」モードに示される設定であり、立脚時の高油圧抵抗および遊脚時の低油圧抵抗と、歩行速度に応じた空気圧屈曲抵抗の変化とによって特徴付けられる。
【0065】
実際には、各モードおよび事象に関する行列は、
図4A〜
図4Dの表の列中に示すように、5つの主要値から構成される。いくつかの例においては、値の帯が、事前にプログラミングされて、各例において切断患者に適合するように特定の値を選択するための値域が与えられる。
【0066】
主要モードは、
図4Aの左側の列中に示されるものであり、すなわち、傾斜路上昇、傾斜路下降、水平速度(水平歩行)、階段下降、弛緩立脚、および着座である。
図4Aにおいては、アスタリスク(*)は、サブモードが存在することを示しており、これらは、
図4B、
図4C、および
図4Dのそれぞれにおいて示される。各行列の本体部分内の値は、各関節の屈曲(または伸展)が受ける抵抗のレベルを表す。したがって、「VL」は非常に低い抵抗を意味し、「L」は低抵抗を意味し、「M」は中抵抗を意味し、「H」は高抵抗を意味し、「VH」は非常に高い抵抗を意味する。「M/H」は、中抵抗と高抵抗との間の抵抗レベルを意味し、「H−」は、高抵抗を若干下回る抵抗となり、「H+」は、高抵抗を若干上回る抵抗を意味する。「VL−」、「L−」、「L+」、および「VH+」もまた、これらと同様に解釈されたい。
【0067】
膝油圧設定に関して、各列の上部に位置するドル記号$は、膝制御デバイス抵抗値が、明確には(すなわち信号値により)示されない場合に、抵抗が、2つのレベルの間で、すなわち(a)典型的にはHもしくはH−とMとの間で切り替えられることを意味し、または(b)つま先が荷重を受けてより低い値を選択するようにおよび肢が伸展されてより高い値が選択されるように切り替えられることを意味する。膝制御デバイスの空気圧部分の設定に関して、各列の上部に位置するナンバー記号#は、抵抗値が明確には示されない場合に、制御デバイスの空気圧部分が、表面条件または他の条件に関わらず、歩行速度に対して自動的に適合化されることを示す。
【0068】
したがって、「水平速度」モードにおいては、水平歩行について、膝制御デバイスの空気圧部分による抵抗は、
図4Dに示すように、歩行速度に応じて低から高へと変化する。実際に、空気圧抵抗は、非常に高速レベルの歩行については、VHへと上昇し得る。
図4Dに示すように、速度に応じた、速度/水平歩行モードにおける足首の足底屈および背屈に対する抵抗。
【0069】
図4Aの主要行列に戻ると、傾斜路上昇および傾斜路下降についての抵抗値は、いくつかの点において、速度水平歩行モードの抵抗値とは異なることが分かる。したがって、例えば、足首における足底屈に対する抵抗は、傾斜路下降時には、水平歩行時よりも一般的により低く、傾斜路上昇時にはより高い。足首における背屈抵抗は、傾斜路下降時にはより高く、上昇時にはより低くなる傾向がある。しかし、同時に、
図4Bおよび
図4Cのサブ行列において示されるように、これらの値は、速度および傾斜路の勾配に応じ、ならびにモード間における遷移時に変化する。
【0070】
図4Cを参照すると、傾斜路下降モードの立脚相と遊脚相との両方において、中程度の油圧抵抗レベル(M)が示されている。このレベルは、膝屈曲制御デバイスにより、立脚相の最終部分および遊脚相の初期部分を含む期間において発生するように設定される。したがって、傾斜路下降モードにおける各歩容周期中に、立脚から遊脚への遷移は、高(HまたはH−)レベルから低(L)レベルへの段階的低下によって特徴付けられ、この期間は、中(M)レベルが、立脚相の終了時の足尖離地点をまたいで印加される期間となる。立脚相の終了に向かっての膝関節のこの降伏低下は、下降を補助する。傾斜路下降モードにおけるその主要な利点は、各屈曲抵抗の高低間での変化(他のモードにおいては平常プロファイルとなる)が、減少する(立脚相の終了部分においては高から中へ、および次いで低へ)点である。これにより、第1に、切断患者が立脚終了時に幾分かの抵抗の追加を受けることによって、幾分かの追加支持が発生する。この場合に、健常者は、自身の筋肉を使用して減速して傾斜路をゆっくりと下降することによって、加速しないかまたは制御下においてのみ加速する傾向を有する。切断患者は、義肢を用いてもこの能力を有していない。第2に、足および足首は、傾斜路下降を予め減速させるが、立脚相の終了時の膝における追加的な抵抗は、切断患者に対して追加的な安心感およびグリップ感覚を与え、切断患者を減速させることが可能であるため有利である。
【0071】
屈曲制動抵抗の低下は、
図4Cにおいて急傾斜路サブモードにより示されるように、急傾斜路の下降時には膝において全く発生しない点に留意されたい。このサブモードにおいて、切断患者は、急傾斜路を下降するために膝降伏を使用するため、つま先には荷重は殆どまたは全くない。
【0072】
図3Aおよび
図3Bならびに
図4A〜
図4Dを参照して上述した各基本モードは、
図3Dおよび
図3Eのより詳細な有限状態図によって示されるように、対応する遷移状態を有する。さらに、この実施形態において、基本モードは、さらなるサブモードへと区分される。したがって、
図3Dおよび
図3Eから例を示すと、平常歩行モード130は、3つのサブモード、すなわち平常ステップ130A、小ステップ130B、および大ステップ130Cを有する。これらのサブステップ間にはそれぞれ、遷移130Tが存在する。同様に、他の基本モードも遷移状態を含む。例えば、
図3Eおよび
図4Cを参照すると、傾斜路下降モード134は、サブモードである傾斜路下降134Aと急傾斜路下降134Bとに分けられることに加えて、遷移状態である遷移傾斜路下降134Cを有し、これにより、屈曲制御デバイスの中間設定の定義を与えることによって、傾斜路下降モード134から平常歩行モード130へのおよびその逆へのより平滑な遷移を可能にする。遷移は、通常は、各例における開始モードの値と終了モードの値との間の補間によって設定される対応する値を有する。低速歩行速度および高速歩行速度には、さらなる傾斜路下降サブモードがある。
【0073】
同様のサブモードが、傾斜路上昇モードに存在する(
図3Eを参照)。
【0074】
追加的な遷移状態と、対応するアクチュエータ設定(すなわち制御デバイス設定)とは、
図4Aの表により代表される行列のさらなる階層(図示せず)内において相関する。例えば、
図3Dの有限状態図において着座起立モード状態155により示されるような椅子からの起立は、行列のある階層からの出力設定セットを使用し、次いで弛緩立脚モード157へ進むと、別の行列階層からの出力設定セットを使用するか、または、低速歩行モード(速度モード160のサブモード160A(事実上の平常歩行以外の歩行))へ進むことは、遷移状態である遷移着座155A、起立155B、および遷移歩行(弛緩立脚モード157のサブモード157C)を必要とする。これらの遷移により、急激な変化の補償または許容の必要性が回避され、切断患者が、ある活動モードから他の活動モードへと移行する際に、肢動作が、ほぼ可能な限りシームレスかつ平滑なものとなる。各行列は、モード、事象、および遷移を、実装のための種々の制御設定にリアルタイムに関連付けるおよび結びつける関連性セットを有する。
【0075】
制御システムのオープンアーキテクチャにより、例えば追加的な事象または活動に対応する制御機能の定義のためなどの追加の行列のプログラミングと、追加のデータストリームの組込みとが可能となる。
【0076】
一般的には、制御システムが、ある特定の活動モードを示すように動作している場合、制御システムは、異なるモードへの遷移を示すものとして解釈されるセンサ信号を受信するまでは、このモードを示し続ける。
【0077】
図4A〜
図4Dを参照として上述した行列中に格納された設定と、行列の他の行列レベル(図示せず)の設定とが、較正プログラムモード時に各切断患者に適合するように調節される。行列設定を確立するための典型的な較正ルーチンは以下を含む。
1.種々の速度による水平歩行
2.水平歩行−開始および停止
3.種々の速度および種々の勾配における傾斜路の上昇歩行および下降歩行
4.階段の上昇歩行および下降歩行
5.種々の擾乱を伴う水平歩行
6.歩行および立脚からのまたは歩行および立脚への着座および起立
7.他の活動モード
【0078】
このシステムにより、上記の試験1.、2.、および好ましくは3.のみに基づいた較正が可能となり、水平歩行値に従って調節される値の帯についての初期設定値は、例えば設備不足により実施されてこなかった試験に対応する活動に対して設定される。
【0079】
較正は、義肢装具士が、ユーザインターフェース120(
図2)を使用して義足に対して設定を付与することにより実行され得る。代替として、または追加として、当該の活動モードに応じて、自己調節較正フェーズ、自己プログラミングフェーズ、または自動較正フェーズが含まれてもよく、これにより、制御システムは、特定の活動モードに対して一連の試験的設定を与える。
【0080】
好ましい実施形態の較正プログラムモードにおいて使用される特定の技術は、ひずみ計52,53(
図1B)により感知されるような脛骨セクション曲げモーメントの変化を活用することにより、足首屈曲制御デバイスの足底屈抵抗および背屈抵抗を設定する。特に、足関節の一方または両方の屈曲制御設定が、所定の脛骨曲げモーメントプロファイルを実現するために、すなわち歩行歩容周期の各立脚相時の時間との間における感知された脛骨曲げモーメントの変化を実現するために修正される。同様に、足関節の足底屈抵抗および/または背屈抵抗は、所定の足角度プロファイルを実現するために、すなわち歩行歩容周期の立脚相時の足角度の変化を実現するために、足関節において角度センサ87A,87B(
図1C)により感知されるような足角度に応じて変更されてもよい。いくつかの状況においては、感知された膝角度および足加速度もまた利用され得る。
【0081】
図5A〜
図5Dは、歩容周期中の膝角度、足角度、脛骨セクション曲げモーメント、およびグローバル足加速度についての典型的なプロファイルを示す。各グラフ中の水平軸は、プロファイルが、踵接地から始まり、立脚相を経由して踏切まで進行し(約0.6にて)、次いで遊脚相が続き、1において踵接地に戻るように、値1に対して割り当てられた歩容周期内の時間である。各グラフは、足底屈(PF)抵抗設定および背屈(DF)抵抗設定の種々の組合せに関する4つのプロットを有し、これらのプロットについてより高い番号が割り当てられたものは、より高い屈曲抵抗を表し、より低い番号は、より低い屈曲抵抗を表す。本出願人らは、足底屈抵抗についての設定がより高いほど、足角度プロファイルはより急勾配かつよりピークが高いものとなることを見出した(
図5Cを参照)。さらに、足底屈抵抗が高い場合には、足角度プロファイルプロットの下方のエリアはより小さくなる。背屈抵抗がより高い場合には、足角度曲線の下方のエリアはより丸くより大きくなる。また、足底屈抵抗対背屈抵抗の比は、平常値からピークまでのおよび再び平常値に戻るまでの曲線のおよびその下方の積分の対称性に対して影響を及ぼす。本出願人らは、切断患者の快適性および労力の観点から好ましい足底屈抵抗設定および背屈抵抗設定の組合せが、PF6、DF6、およびPF8、DF4であり、これらが、
図5Cにおいて分かるように、ピーク背屈と、立脚相における角度プロファイルの各部分の下方のエリアとの両観点において、より低い足首背屈振幅プロファイルをもたらすものであることを見出した。
【0082】
図2を参照して上述した電子制御システムは、
図3Bを参照して上述したプロセスと同様のプロセスにおいてピーク足角度と背屈積分との両方を測定し、感知された足角度プロファイルを活用することによって、足関節制御デバイスの屈曲抵抗を調節することにより好ましい足角度プロファイルを実現する。したがって、立脚相における足関節のピーク背屈が、所定のしきい値を超過する場合には、または立脚相時の時間に対する背屈曲線の下方のエリア(積分に相当)が、所定のエリアしきい値を超過する場合には、足首屈曲制御デバイスの足底屈抵抗は増加し、立脚相背屈抵抗は低減する。同様に、これらのピーク値およびエリア値が、過剰に低い場合には、足底屈抵抗および背屈抵抗は、逆の各方向へとなされる。
【0083】
本実施形態においては、足角度曲線の積分(すなわち足首の背屈角度)は、以下のように計算される。
第1の足角度値からピークまでの第1の積分である積分1
ピークから第1の足角度値線と再び交差するまでの第2の積分である積分2
種々の足底屈抵抗および背屈抵抗に関して求められる積分1対積分2の比およびこれら2つの積分の和は、典型的には表1に示されるようなものとなる。
【0085】
足関節制御デバイスの抵抗は、両設定が均等範囲内にある場合に、積分1対積分2の比が約1となるように、すなわち足底屈抵抗が背屈抵抗よりも大きい場合には1よりも大きく、背屈抵抗が足底屈抵抗よりも大きい場合には1よりも小さくなるようになされる。両積分の和がより大きい場合には、より大きい方が背屈抵抗の和であり、より小さい方が足底屈抵抗となる。足底屈抵抗と背屈抵抗との両方がほぼ等しい場合には、設定がより低く、和がより大きくなる。
【0086】
したがって、このシステムは、背屈角度が増加しつつある場合、および背屈角度が減少しつつある場合のそれぞれにおいて、背屈抵抗および足底屈抵抗を設定するための入力変数として、足角度プロファイルの下方の種々のエリアの比も利用する。
【0087】
図5Bに示す脛骨曲げモーメントプロファイルは、足関節における足底屈抵抗設定および背屈抵抗設定に著しく影響される。適度に低い足底屈抵抗および適度に高い背屈抵抗(PF3 DF8)の場合、モーメントは、立脚相の初期部分の間に急激に低下し、次いで立脚相中期に向かって、勾配が比較的小さくなることにより、ピークモーメントは、立脚相において比較的遅れる。対照的に、例えば比較的高い足底屈抵抗および幾分かより低い背屈抵抗(PF6 DF6)の場合には、立脚相初期における勾配は、それほど急ではなく、立脚相中期に向かう領域において段状部が存在し、その後、曲げモーメントピークまでモーメントが急激に上昇する別の期間が続く。立脚相における曲げモーメント曲線の下方のエリアは、第4の組合せであるPF6 DF6についての曲線エリアに対する、
図5Bに示す第1の抵抗、第2の抵抗、および第3の抵抗の組合せについての曲線エリアの比をまとめた以下の表2に示すように、これらの種々のプロファイルによる影響を受ける。(完全を期すために、同様の比が、足角度と、足角度と脛骨曲げモーメントとの間の比とについて、表2にまとめられている。)
【0089】
図2の電子制御システムは、ひずみ計52,53(
図1B)からの信号を使用して脛骨曲げモーメントエリアを計算することにより、足底屈抵抗および背屈抵抗を設定するための入力を生成する。
【0090】
好ましい電子制御システムにおける1つのオプションは、ピーク前に感知された脛骨曲げモーメントプロファイルを3つの期間に分けることである。したがって、好ましいプロファイルは、モーメントが第1の勾配を有して上昇する第1の期間と、その後モーメントが第1の勾配を大幅に下回る第2の勾配を有して上昇する第2の期間と、その後勾配が第1の期間の勾配と同様のレベルに戻る第3の期間とを有する。これは、本出願人らが、典型的な切断患者にとって最も快適であることを見出したプロファイルである。立脚相の足底屈抵抗および背屈抵抗の反復的な調節が、好ましいプロファイルを実現するために実行される。また、好ましいプロファイルは、第3の期間が、持続時間の観点において第2の期間の少なくとも80パーセントであることにより特徴付けられる。
【0091】
感知された足角度により示される設定が、感知された曲げモーメントにより示される設定と異なる場合である本実施形態においては、曲げモーメントにより示される設定が優先される。本発明の変形例においては、感知された足角度を制御入力として除外することが可能である。
【0092】
上述の制御デバイスの設定における調節は、較正プログラムモード時に実行され、それにより、その後の移動時に、足底屈抵抗および背屈抵抗は、活動モードに応じて自動的にかつ動的に設定される。
【0093】
図5A〜
図5Dを参照として上述した制御機能は、水平歩行時に実行されるものである。これらの機能は、傾斜面の上昇歩行時および傾斜面の下降歩行時にも同様に実行されるが、これらの条件下においては、
図5A〜
図5Dに示すパラメータの値が異なる。
【0094】
上述したものは、傾斜路下降モードにおける膝屈曲制動抵抗の段階的な低下である。
図6を参照すると、傾斜路下降モードにおける膝の制動抵抗の変化は、膝角度曲線、脛骨曲げモーメント曲線、足角度曲線、および足加速度曲線との組合せにおいて示される。図示するように、屈曲抵抗200は、立脚相の大部分においては高い。矢印Mにより示される脛骨曲げモーメントの最大時、またはその直後において、膝屈曲抵抗は、中レベルまで、または矢印Nにより示される立脚相の終了時にもしくは終了後間もなく終了する期間へと低下し、その際には、膝屈曲抵抗のさらなる低下が、実現されて、
図4Cに示される低(L)レベルまで抵抗レベルが低下する。屈曲抵抗は、後の遊脚において高レベルに戻ることにより、矢印によって示される踵接地時の立脚相の開始の準備をする。抵抗の第1の段階的低下の作動は、脛骨セクション上に取り付けられたひずみ計から導出した負勾配曲げモーメントの検出に応じて実行される。屈曲抵抗の第2の段階的低下は、膝角度が、例えばピストン/センサなどにより感知されるような遊脚相の初期部分における所定の膝角度しきい値に到達したことに応じて作動される。典型的には、膝屈曲抵抗の第2の段階的低下が、遊脚相において実現される最大膝角度の50パーセントの膝角度のしきい値となる。膝屈曲抵抗のこのプログラミングされた段階的低下は、水平速度モードまたは傾斜路上昇モードにおいては実行されない。それらのモードにおいては、立脚相の終了に向かって、高抵抗設定と低抵抗設定との間で切替えが即時に実行される。屈曲抵抗が傾斜路下降モードにおいて中レベルにある期間の持続時間は、典型的には、立脚相の持続時間の25パーセントである。
【0095】
上述の好ましい実施形態において、電子制御システムは、マスターマイクロプロセッサコントローラと、2つのスレーブマイクロプロセッサコントローラとを有し、2つのスレーブマイクロプロセッサコントローラの一方は、膝関節用であり、もう一方は足関節用である。代替的な構成が可能である。実際に、全ての制御機能が、好ましくは膝レベルに取り付けられた単一のマイクロプロセッサコントローラにより実行されてもよく、この単一のコントローラは、好ましい実施形態におけるように、両関節に関連付けられたセンサから、すなわち義足の種々のエリアからデータを収集する。この単一のコントローラは、義足の2か所以上のエリアからのセンサ信号に基づき、歩容および環境(すなわち地面の傾斜を含む環境)の高度な解析を実行する。さらに、単一のコントローラが、膝調節モータおよび足首調節モータからのフィードバック信号をモニタリングし、スレーブコントローラではこのような機能を実行させないようにしてもよい。
【0096】
上述の義足の一変形例において、電子制御システムは、左右モードを有することにより、左右切断患者用の2つの義肢間の相互通信を可能にする。この例においては、ユーザインターフェース120(
図2)は、第2の義足と通信するためのUARTポートを組み込んだ配線接続相互接続部を組み込む。無線通信ポートが、代わりに使用されてもよい。
図4A〜
図4Dの行列は、両義足が同期することによりいずれの例においても膝および足首において正確な制動レベルを実現するように、左右モードに対して拡張される。立脚制御解除のための高降伏抵抗は、他方の義足における高降伏抵抗の開始と同期するようにタイミング設定される。また、同様に、空気圧遊脚制御は、左右の肢の異なる速度に対しても調節される。足首の足底屈制動は、他方の肢の背屈制動と同期されることにより、自然な前進および最適な機能を実現する。