(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139560
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】水素品質監視装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20170522BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20170522BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20170522BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20170522BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/10
H01M8/06 G
C01B3/56 Z
C01B3/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-548189(P2014-548189)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-507326(P2015-507326A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】GB2012053189
(87)【国際公開番号】WO2013093461
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年10月27日
(31)【優先権主張番号】1122035.7
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504175659
【氏名又は名称】インテリジェント エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INTELLIGENT ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(72)【発明者】
【氏名】キルク,クリストファー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】フォスター, サイモン エドワード
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−039632(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/118612(WO,A1)
【文献】
特開2008−243430(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0005494(US,A1)
【文献】
特開2006−059745(JP,A)
【文献】
特開平11−219717(JP,A)
【文献】
特開2006−313701(JP,A)
【文献】
特開2003−197235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
C01B 3/00
C01B 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第1の燃料電池であって、第1の水素源から水素を受け取る第1の燃料入口を有するものと、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第2の燃料電池であって、第2の水素源から水素を受け取る第2の燃料入口を有するものと、
各燃料電池へと電気的負荷を与え、各燃料電池の電気出力を測定する制御システムであって、前記第1及び第2の燃料電池の電気出力を比較するためのコンパレータを含む制御システムと、
前記コンパレータの出力に基づき水素純度について指標を与える純度監視出力と、
を含む水素純度監視装置。
【請求項2】
既知の純度の水素源からなる第1の水素源をさらに含む請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項3】
前記既知の純度の水素源は、基準ガスを含む水素タンクである請求項2記載の水素純度監視装置。
【請求項4】
前記第1の燃料入口と前記第2の燃料入口の間に接続されて前記第2の水素源から水素を受け取る水素浄化装置をさらに含み、前記第1の水素源としての前記浄化装置を介して、前記第2の水素源から前記第1の燃料入口へと水素を供給する請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項5】
前記水素浄化装置は、触媒浄化装置を含む請求項4記載の水素純度監視装置。
【請求項6】
前記第1の燃料入口と前記第2の燃料入口の間に接続された水素浄化装置をさらに含み、前記水素浄化装置は、供給入口と、浸透分出口と、残余分出口とを有し、
前記浸透分出口は、前記第1の水素源として働くように前記第1の燃料入口に接続され、
前記残余分出口は、前記第2の水素源として働くように前記第2の燃料入口に接続されている請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項7】
前記水素浄化装置は、パラジウム膜を含む請求項4又は請求項6記載の水素純度監視装置。
【請求項8】
前記コンパレータは、一定時間にわたって前記第1及び第2の燃料電池のそれぞれについて電圧及び/又は電流の変化率を測定するものである請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項9】
前記第2の水素源は、水蒸気改質装置である請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項10】
前記第1の燃料電池は、スタック内に直列接続された複数の燃料電池を含む、及び/又は、前記第2の燃料電池は、スタック内に直列接続された複数の燃料電池を含む請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項11】
前記第1の燃料電池及び前記第2の燃料電池は、単一のセルスタックの一部を成す請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項12】
前記第1の燃料電池及び前記第2の燃料電池はそれぞれ、プロトン交換膜型である請求項1記載の水素純度監視装置。
【請求項13】
より大きな主セルスタックと一体化された請求項11記載の水素純度監視装置。
【請求項14】
前記水素浄化装置の前記供給入口は、共通の水素源に接続されている請求項6記載の水素純度監視装置。
【請求項15】
水素純度の監視方法であって、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第1の燃料電池へと第1の水素源から水素燃料を供給し、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第2の燃料電池へと第2の水素源から水素燃料を供給し、
各燃料電池へと電気的負荷を与え、各燃料電池の電気出力を測定し、
前記第1及び第2の燃料電池の電気出力を比較し、
コンパレータの出力に基づき前記第1及び第2の水素源のうちの1つの水素純度について指標を与えることを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給水素の品質を監視するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池における発電用燃料としての水素の利用は、重要性が増大しつつある。供給水素の純度は、最適な発電にとって、及びその水素を利用する燃料電池を最適な状態に維持するために重要である。
【0003】
現在、燃料電池システムで用いられる水素は、大抵、天然メタンガスの水蒸気改質によって合成されている。最高品質の手法が用いられている場合であっても、水素燃料には燃料電池の動作に有害な多くの不純物が存在しうる。この害は、普通は可逆性であるが、最悪の場合、汚染度が高くなり、燃料電池に非可逆性の害をなしうるいくつかの化合物を含むことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、限定するものではないが、とりわけ、燃料電池への供給燃料を監視するのに適した、便利な水素品質監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一形態によると、本発明は、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第1の燃料電池であって、第1の水素源から水素を受け取る第1の燃料入口を有するものと、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第2の燃料電池であって、第2の水素源から水素を受け取る第2の燃料入口を有するものと、
各燃料電池へと電気的負荷を与え、各燃料電池の電気出力を測定する制御システムであって、前記第1及び第2の燃料電池の電気出力を比較するためのコンパレータを含む制御システムと、
前記コンパレータの出力に基づき水素純度について指標を与える純度監視出力と、を含む水素純度監視装置を提供する。
【0006】
前記水素純度監視装置は、既知の純度の水素源からなる第1の水素源を含むことができる。前記既知の純度の水素源は、基準ガスを含む水素タンクでよい。前記水素純度監視装置は、前記第1の燃料入口と前記第2の燃料入口の間に接続されて前記第2の水素源から水素を受け取る水素浄化装置を含み、前記第1の水素源としての前記浄化装置を介して、前記第2の水素源から前記第1の燃料入口へと水素を供給するでよい。前記水素浄化装置は、触媒浄化装置を含むことができる。前記水素浄化装置は、パラジウム膜を含むことができる。前記コンパレータは、一定時間にわたって前記第1及び第2の燃料電池のそれぞれについて電圧及び/又は電流の変化率を測定するものでよい。前記第2の水素源は、水蒸気改質装置でよい。前記第1の燃料電池は、スタック内に直列接続された複数の燃料電池を含むことができ、及び/又は、前記第2の燃料電池は、スタック内に直列接続された複数の燃料電池を含むことができる。前記第1の燃料電池及び前記第2の燃料電池は、単一のセルスタックの一部を成すものでよい。前記第1の燃料電池及び前記第2の燃料電池はそれぞれ、プロトン交換膜型でよい。前記水素純度監視装置は、より大きな主セルスタックと一体化することができる。
【0007】
他の形態によると、本発明は、水素純度の監視方法を提供するもので、この方法は、水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第1の燃料電池へと第1の水素源から水素燃料を供給し、
水素と酸化剤の電気化学反応から電流を生じる第2の燃料電池へと第2の水素源から水素燃料を供給し、
各燃料電池へと電気的負荷を与え、各燃料電池の電気出力を測定し、
前記第1及び第2の燃料電池の電気出力を比較し、
コンパレータの出力に基づき前記第1及び第2の水素源のうちの1つの水素純度について指標を与えることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を、一例として、添付の図面を参照して説明する。
【
図1】燃料電池に基づく水素品質監視装置の模式図を示す。
【
図2】別の燃料電池に基づく水素品質監視装置の模式図を示す。
【
図3】他の燃料電池に基づく水素品質監視装置の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここに述べる便利な水素純度監視システムは、水素品質を監視するために燃料電池技術を用いる。純度監視システムは不純物の検知を行うもので、顧客に供給される前に燃料の純度を見極めるため、水素燃料ステーションで利用することができる。純度監視システムは、また、例えば建物や自動車用の電源として用いられている運用燃料電池(以下、主燃料電池と呼ぶ)へと与えられる供給水素を監視するのに利用することもできる。純度監視システムは、定期検査システムとして、又は「インライン(in-line)」な連続作動式燃料
監視装置としても利用可能である。
【0010】
純度監視システムは、水素純度を監視するために、任意の形態の少なくとも2つの燃料電池を利用する。水素純度の監視を行うのに燃料電池を用いる利点は、既存の元素分析装置及び方法と比べてそれが比較的安価だということである。燃料電池に基づく純度監視システムの他の利点は、純度の監視を行う燃料電池が、まさにその性質により、純度監視装置を関連づけることが可能な主セルスタックの作動に有害な、全く同じ不純物に対して敏感なものとして、容易に構成できることである。
【0011】
図1は、第1の形態の水素純度監視装置10の動作原理を説明する模式図を示す。純度監視装置10は、第1の燃料電池11及び第2の燃料電池12を含む。第1の燃料電池11は、基準燃料電池であり、基準セルスタック1として、直列接続配置された多数の別個の燃料電池をさらに含むことができる。第2の燃料電池12は検査燃料電池であり、検査セルスタック2として、直列接続配置された多数の別個の燃料電池をさらに含むことができる。基準燃料電池11は燃料入口13を有し、検査燃料電池12は燃料入口14を有する。この構成では、燃料入口13、14は共に共通の水素源5から供給を受けている。水素源5は任意の形態の水素源とでき、任意の形態の貯蔵タンク又は容器、パイプを介した連続的供給、又は水蒸気改質システムなどの水素発生器を含むが、これに限定されるものではない。燃料入口13は、浄化装置16を経由して水素源5に接続されている。浄化装置16は、基準燃料電池11及び検査燃料電池12の電気性能を低下させる不純物を除去可能な任意の形態のフィルタとできる。例えば、任意の形態の触媒活性化(catalyst-activated)浄化装置を利用可能である。好ましい浄化装置は、パラジウム膜である。浄化装置は好ましくは、入口13と入口14及び水素源5との間に配置される。任意の好適な浄化装置又はインラインガス浄化方法が利用可能であり、多孔質媒体を用いた吸着方法又は圧力スイング吸着法に基づいたものなどがある。利用可能なさまざまな水素浄化装置が市販されており、サエス・ピュアガス社製のマイクロトール(登録商標)シリーズなどがある。
【0012】
水素源5は、また、燃料入口14へ供給されるものと共通になっている出力6を含むことができ、出力6は発電用主セルスタック電源(図示せず)に接続されている。
【0013】
基準燃料電池11は電気出力17を有し、検査燃料電池12は電気出力18を有する。電気出力17、18は、共に、コントローラ20に接続されている。コントローラ20は、燃料電池11、12のそれぞれに電気的負荷(図示せず)を与え、燃料電池11、12の電気出力17、18を監視するものである。コントローラ20は、また、燃料電池11、12の電気出力17、18を比較するコンパレータ(図示せず)を含む。コントローラ20は、また、コンパレータの出力に基づき水素源5の水素純度について指標を与える純度監視出力22を提供する。
【0014】
使用時、水素源5は、浄化装置16を介して基準燃料電池11へと水素燃料を供給するが、検査燃料電池12へは浄化なしで直接、水素燃料を供給する。基準燃料電池11及び検査燃料電池12からの性能メトリクス(性能測定基準)を比較することで、検査燃料電池へ供給された水素中の、燃料電池の作動にとりわけ有害で検査燃料電池の電気性能を低下させる不純物の存在を検査することが可能である。
【0015】
コントローラ20は、連続的に、周期的に、又は断続的に性能メトリクスを実行することができる。性能メトリクスは、基準燃料電池及び検査燃料電池のそれぞれについて、一定出力電流での燃料電池電圧及び/又は一定電圧での出力電流の測定を含むことができる。挿入した出力グラフ24、25に示すように、基準燃料電池11と比べた検査燃料電池12での電圧損失率26は、水素源燃料における不純物の量及びタイプに関係している。基準燃料電池11との比較は、温度、湿度、空気汚染、及び燃料電池の性能に影響を及ぼす他の要因などの環境変化に対して、測定結果の正規化をもたらす。
【0016】
基準及び検査燃料電池11、12の相対性能の監視及び比較のために、任意の好適なアルゴリズムを用いることができる。ある代表的なアルゴリズムは、基準及び検査燃料電池のそれぞれについて電圧出力の変化率を測定し、それぞれの変化率の差に基づき純度レベルを測定する。ある代表的なアルゴリズムは、基準及び検査燃料電池の電圧出力の絶対差に基づき純度レベルを測定する。コントローラは、一時的に、あるいは所定時間にわたって確定した差が所定の最大値を超えたときに、アラーム状態を引き起こす構成とすることができる。電圧出力の変化率は、供給水素の汚染のひどさについて指標を与えうる。
【0017】
さまざまな不純物の区別は、さまざまな浄化装置又は不純物フィルタを経由してそれぞれ水素源5から水素が供給される追加の基準燃料電池を設けることで行うことができ、各フィルタは特定の不純物を除去可能とされている。
【0018】
あるいは、又はさらに、さまざまな触媒、薄膜、あるいはさまざまな特定の不純物に敏感な他の機構を有するセルを備えたさらなる基準及び検査燃料電池を設けることで、さまざまな不純物の区別が行える。
【0019】
図2に示す他の構成では、主たる水素源5からの浄化供給の代わりに、水素純度監視装置10aに別体の高純度水素源27が設けられている。この構成では、高純度水素源27は、既知の高純度水素基準ガスの小型貯蔵容器又はタンクとでき、例えば、高信頼性容器に、少なくとも既知の純度レベルの水素が入っている。他の点では、純度監視装置10aは
図1の純度監視装置10と同様に作動する。
【0020】
水素純度監視装置10、10aの燃料電池は、好ましくはプロトン交換膜型であるが、水素と酸素の電気化学反応から電流を生じることが可能な他のタイプの燃料電池も使用可能である。
【0021】
基準及び検査燃料電池11、12は、1つ又は複数のセルスタックの一部を成していてもよい。ある構成では、1つ又は複数の直列接続された基準燃料電池が、単一のセルスタック内で、1つ又は複数の直列接続された検査燃料電池に接続される。関連する燃料電池又は燃料電池群から、適切な電圧監視端子を公知の方法でスタックに備え、必須な出力17、18を設けることができる。スタックには、基準燃料電池又は燃料電池群に必要な基準燃料、及び、検査燃料電池又は燃料電池群に必要な検査燃料が独立して供給される。基準及び検査燃料電池を同一スタックに統合することは、基準及び検査燃料電池の作動に関する周囲条件(例えば、温度、圧力、湿度等)がより厳密に一致し、よって周囲条件の差から生じる燃料電池間の電気出力変化を減らすという利点をもたらす。
【0022】
浄化装置16もまた、例えば、基準燃料電池又は燃料電池群に隣接するプレートに触媒表面を設け、浄化装置及び基準燃料電池又は燃料電池群が流体的に直列となるように適切な水素供給用流体流動ポートを設けることで、基準燃料電池として同一のセルスタックに統合可能である。
【0023】
他の構成では、水素純度監視装置10又は10aが、例えば自動車の電力ユニットなどの、外部負荷に電力を供給する主セルスタックに統合可能である。基準及び検査燃料電池とされたセルから、適切な電圧監視端子を公知の方法で主スタックに備え、必須な出力17、18を設けることができる。主スタックには、基準燃料電池又は燃料電池群に必要な基準燃料が独立して供給される。主スタック電源及び検査燃料電池として機能するスタックの残りの部分には、源5から燃料が供給される。
【0024】
他の構成では、基準及び/又は検査燃料電池及びパラジウム膜が一定期間後又は汚染現象後のいずれかに日常的に取り替え可能なように、水素純度監視システムをモジュール化することができる。
【0025】
純度監視装置は、主燃料貯蔵タンク5への燃料供給後、所定時間にわたり作動するものとしてもよい。あるいは、供給燃料における不純物の希釈を避けるため、タンク5を満たす前に任意の検体量の供給燃料を取り出すことができる。検査及び基準燃料電池間での電力低下の差が所定値より大きい場合には、システムは、供給ステーション及び/又はタンクで作動する主燃料電池でシャットダウンを引き起こす、あるいは燃料源のより詳細な分析のためにアラーム状態を引き起こすようにすることができる。
【0026】
汚染現象後、検査燃料電池は浄化水素で浄化可能であるが、これは不純物のタイプについて指標を与えうる。例えば、
(i)検査燃料電池の電気出力の即時改善は、汚染現象が、燃料電池触媒に直接影響は与
えないが水素濃度に低下を生じる不純物による濃度汚染(希釈)に対応していたことを示す。
(ii)検査燃料電池の電気出力の経時的改善は、汚染現象が、例えばCOによる可逆的触媒汚染に対応していたことを示す。
(iii)検査燃料電池の電気出力が経時的に全く、あるいは、ほとんど改善しないことは
、汚染現象が、例えば硫黄化合物による不可逆的触媒汚染に対応していたことを示す。
【0027】
水素純度監視装置の水素汚染に対する感度は、必要に応じて高めることができる。水素内の不純物レベルは、例えば
図1の装置を用いて適当な時間尺度内で検知するには小さすぎ場合がある。例えば、硫黄含有化学種は検査燃料電池12に累積的影響を及ぼしうるもので、大まかに言えば、1ppmの不純物に100時間晒した場合の検査燃料電池への影響は、100ppmに1時間の場合と同様である。そういうわけで、検査燃料電池12へと水素を供給する前に水素内の不純物が濃縮されていると便利である。これは、浄化装置16でクロスフローろ過方式の技術を用い、
図3による装置を再構成することで達成可能である。
【0028】
クロスフローろ過装置では、供給流がフィルタに入力され、この流れの一部が、
浸透分フローと呼ばれるろ過又は浄化出力を形成するようにフィルタ膜を通過可能である。入力流の残りはフィルタ膜の上流側表面に沿って流れ、効果的に膜を洗浄し、
残留分と呼ばれる第2の出力に渡される。クロスフローろ過は、クロスフローに頼ってフィルタ媒体の上流側表面を連続的にクリーニングすることで、フィルタの詰まりを減らすのにしばしば用いられるが、
図3で説明される装置の場合、さらなる利点も有している。実際、浄化
された浸透分フローと
残留分フローの間の不純物濃度の差は増大し、入力流の不純物が
残留分フローへと濃縮されている。
【0029】
図3を参照すると、水素純度監視装置30は、入力供給流ライン32が水素源5に接続された浄化装置31と、上流側34と下流側35を有する薄膜33と、薄膜33の下流側35と連通した
浸透分フローライン36と、薄膜33の上流側34と連通した
残留分フローライン37とを含む。
【0030】
浸透分フローライン36は基準燃料電池11に接続され、浄化水素をそこへ供給する。
残余分フローライン37は検査燃料電池12に接続され、濃縮不純物を含む水素をそこへ供給する。よって電気出力17及び18の差は、
浸透分フロー及び
残余分フローで見出される不純物の比に従って増幅される。
【0031】
好ましい例では、浄化装置31が、パラジウム(Pd)膜、シート又はフィルム(ここでは大まかに「薄膜」と呼ばれる)を含む。水素はパラジウムの薄いフィルムを透過可能である。そういうわけで、Pd膜の一方の側が水素を含むガス混合物に晒されると、水素はPd膜を透過できるが、残りの化学種は透過しない。水素は薄膜を通して拡散するために原子に解離し、その後、反対側で分子に再結合する。このプロセスは、薄膜を隔てた圧力差を高く維持することで促進又は強化可能である。薄膜を透過した水素が
浸透分フローであり、反対側に保持された水素プラス不純物ガスが
残余分フローである。薄膜を通る水素の流動を維持するために、高圧の供給側は非透過性化学種で満たされないことが好ましく、
残余分フローがこれを補助する。高分子膜を備えたものなど、他のタイプの浄化装置31も可能である。
【0032】
薄膜33の高圧側で好適な
残余分フロー量を選択することで、入力供給流の低レベル不純物(例えば0.1ppmの一酸化炭素)が、汚染された燃料流から
浸透分フローへの水素の除去により、
残余分フローでは1ppmあるいは10ppmにまで濃縮可能である。クロスフロー浄化装置31により行われた不純物濃縮の量を定量化し、これにより基準燃料電池11及び検査燃料電池12の電気出力に基づいて供給流における有効不純物レベルを較正するために、較正技術が利用可能である。
【0033】
他の実施の形態も、意図的に、添付の請求項の範囲内にある。
【符号の説明】
【0034】
5 水素源
6 主スタック
20 コントローラ
27 基準水素