【文献】
International Dairy Journal,2006年,Vol.16, No.11,p.1415-1420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記状態は、骨外傷および変性病状、転移性骨病変、下顎または上顎歯槽突起の萎縮、骨折、小窩齲食および髄質炎症から選択されることを特徴とする請求項5に記載の組合せ。
前記生体材料は、コラーゲン、ヒアルロン酸、マトリゲル、親水コロイド、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組合せ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組合せは以下の含有量により特徴付けられる:
サイトカイン:約50から約500pg/mg、好ましくは71.46から340.76、
成長因子:約1000から約7000pg/mg、好ましくは1321.80から6494.40、
走化性因子:約5から50pg/mg、好ましくは6から24、
幹細胞刺激因子:約100から1500pg/mg、好ましくは191から1105、
抗菌/抗ウイルス因子:約15から80μg/mg、好ましくは18から75、
補体C3a/C4aタンパク質:約1から5pg/mg、好ましくは1.10から2.70。
【0015】
本明細書以下でPMFと称される、本発明の組合せに存在するサイトカインは、表1に報告されている:
【0017】
本発明の組合せに存在する成長因子は表2に報告されている:
【0019】
本発明の組合せに存在する幹細胞刺激因子は表3に報告されている:
【0021】
本発明の組合せに存在する走化性因子は表4に報告されている:
【0023】
本発明の組合せに存在する抗菌/抗ウイルス因子は表5に報告されている。
【0025】
本発明の組合せに存在する補体C3a C4aタンパク質は表6に報告されている。
【0027】
表1〜6に報告されたデータは、ウシ分子に特異的な商業的に利用可能なサンドイッチELISA法およびフレキシブルBio−Plex(登録商標)システム(Bio−Rad Lab.、Hercules、CA、USA)により得られた。「約」という用語は、所与の値の±10%、好ましくは±5%の変動を意味する。
【0028】
組合せの成分の主な生理学的役割は以下に報告されている。
【0029】
補体タンパク質C3/C4:補体は、感染に対抗するのに役立つ炎症反応を誘導する、種々の細胞型の表面上に位置している生体膜および特異的受容体と相互作用できる循環タンパク質からなる。
【0030】
成長因子
TGF−β1−形質転換成長因子:粘膜における免疫防御に関与している、クラスA免疫グロブリンの産生を刺激する。細胞増殖を調節し、細胞外基質の沈着を刺激する。
EGF−上皮細胞成長因子:粘膜の発達を制御する。上皮細胞の形成を促進する。
IGF1−インスリン様成長因子:細胞増殖、付着および遊走を調節し、粘膜の成熟を誘導する。
VEGF−血管内皮細胞成長因子:血管産生を刺激する。細胞分裂活性および血管透過性の活性化を提示する。
FGF−b−線維芽細胞成長因子基礎:線維芽細胞、内皮細胞、星状膠細胞およびケラチノサイトなどの、間葉細胞起源の細胞の増殖を刺激する。それはまた、走化性因子としても作用する。
GH−成長ホルモン:全ての組織の全体的な成長因子。
GHRF−成長ホルモン放出因子:正常な生後の成長、骨成長、タンパク質、炭水化物および脂質代謝に対する調節作用に必要とされるGHの放出を刺激する。
NGF−神経成長因子:活性を刺激し、交換神経系の成長および分化を制御する。
PDGF−血小板由来成長因子:中胚葉起源の細胞の分化の成長。
BMP−2−骨形成タンパク質2:骨および軟骨の発達、心臓細胞分化。
【0031】
走化性因子
エオタキシン:炎症組織に対して好酸球を動員するためにケモカイン受容体に結合する。
MCP−1 単球走化性因子−1:炎症組織に対して単球の凝集を促進する。
【0032】
サイトカイン
IL−1Raは、インターロイキン1アルファおよびインターロイキン1−ベータの活性を阻害し、種々のIL1関連免疫および炎症反応を調節する。
IL−2はTリンパ球の増殖を誘導する。
IL−4は抗炎症活性を保有する。
IL−6は先天性および適応免疫を刺激する。
IL−9は造血細胞の調節因子であり、細胞増殖を刺激し、アポトーシスを防ぐ。
IL−17はNF−KBの活性を制御し、一酸化窒素(NO)産生を増加させる。
IL−10は免疫制御および炎症において多面発現効果を有する。B細胞生存、およびそれによる抗体産生を改善する。ノックアウトマウスで行われた研究により、このタンパク質は粘膜の免疫制御において必須であることが実証されている。IL−12はTおよびナチュラルキラー細胞を刺激する。
IL−15はTおよびナチュラルキラー細胞活性化および増殖を制御する。
インターフェロン−ガンマは、既知の抗ウイルス、抗腫瘍および免疫調節性活性を有する。それは強力なマクロファージ活性化因子であり、細菌およびウイルスに対して細胞媒介性活性を活性化する。
TNF−α−腫瘍壊死因子は感染部位への好中球および単球の遊走を刺激する。
【0033】
幹細胞刺激因子
GM−CSF−顆粒球コロニー刺激因子:骨髄由来の免疫前駆体の刺激および末梢部のディスミッション(peripheral dismission)に関与する。
LIF−白血病抑制因子:例えば、正常および骨髄性白血病細胞における造血分化の誘導、神経細胞分化の誘導、腎臓発達の間の上皮変換に対する間葉細胞の調節因子に関与するいくつかの異なる系において役割を有する多面的サイトカイン。
SCF−幹細胞因子:胚細胞および神経系細胞発達および造血において子宮内で作用する。
SDF−1−ストロマ細胞由来因子−1:CXCR4リガンドを発現する幹前駆体細胞の走化性因子として作用する。
【0034】
抗菌
トランスフェリン:鉄を赤血球に送達し、細菌およびウイルスが鉄に結合することを防ぐ。
ラクトフェリン:細菌およびウイルスの成長に必要とされる鉄をそれらから奪う。
リゾチーム:その酵素活性を考慮して、ならびにそのカチオン性および疎水性特性の結果として抗菌作用を有する。
ラクトペルオキシダーゼ:必須タンパク質SH基の酸化により細菌代謝を阻害する。
【0035】
本発明の組合せは、以下に詳述した方法に従って、分娩後の哺乳動物からの初乳、血清または胎盤の抽出により調製され得る。
【0036】
血清は出生前の最後の日に因子の最も高いピークを有し、初乳は出生後の最初の数時間で、かつ6時間以内である。
【0037】
分娩の12時間後、初乳における因子は著しく減少し、24時間でそれらの多くはもはや検出されない。
【0038】
これらの因子は異なる種において遺伝学的に高度に保存されるので、例えば、ウシ、ウマ、ラクダ、海洋哺乳動物などの他の哺乳動物種から単離された因子を使用することができる。
【0039】
因子は、種間交差反応が非常に高い場合でさえも、種に特異的であるELISAアッセイを用いてコントロールされる。なぜなら、因子は系統発生的に非常に保存されるので、異なる種(例えば、ヒト−ウシおよびその逆)のために使用されるELISAを用いても定性的に測定できるからである。
【0040】
哺乳動物血清からの抽出
妊娠したメスの哺乳動物の血清は、分娩または出産前の最後の数日、通常、最後の5〜15日において、本発明の組合せについて成分の最も高いピークを有する。
【0041】
本発明の組合せを調製するための典型的な手順は記載されている。
【0042】
動物、好ましくはウシまたはウマに対する損傷を防ぐように全部で4つの試料について1リットルの血液を4日目に採取する。
【0043】
血清を室温にて24時間、血液から分離し、次いで血餅を搾るために遠心分離する。
【0044】
血清を回収し(全体積の約30/40%)、フェノキシエタノール2.5%およびジアゾリジニル−尿素1%を消毒剤としてそれらに加える。このように処理した血清を次いで以下の工程に供する。
【0045】
限外濾過300,000Da:
哺乳動物血液から凝固および遠心分離により得た血清試料(−20℃で凍結した)を室温にて解凍し、2体積の脱塩水で希釈した。得られた溶液を、4℃にて冷却した部屋において0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中でMillipore Biomax Pellicon300,000Da平面接線フロー膜を通して限外濾過する。
【0046】
透過物の約1:10に対応する残余分および画分を、再生セルロース中でSpectrum SpectraPor製の1000Da透析管に移し、脱塩水に対して透析する。
【0047】
限外濾過5,000Da:
残存している透過物を、5000Da膜を通して限外濾過する。300,000Da限外濾過からの透過物を、4℃にて冷却した部屋において0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中で5000Da平面接線フロー膜Millipore Biomax Pellicon上で濃縮する。
【0048】
残余分をSpectrum SpectraPor製の再生セルロース中で1,000Da透析管に移し、脱塩水に対して透析する(この透析はまた、防腐剤を除去する)。次いで産物をすぐに凍結乾燥する。
【0049】
胎盤からの抽出
ウシ、ウマまたはブタの胎盤が好ましくは使用される。
【0050】
均質化
胎盤(−20℃で凍結した)を室温にて解凍し、小切片に切断し、多量の冷却した(4℃)生理食塩水(NaCl0.9%)で洗浄し、pH7.4にて以下の成分:Tris/HCl 50mM、EDTA 25mM、トリトンX−100 0.001%を有する溶解緩衝液中でSirammカッターを使用して均質化する。0.9%の濃度でNaClを得られた懸濁液に加える。上清を2時間、(マグネチックスターラーで)撹拌し、4℃にて冷却した部屋で終夜静置した。
【0051】
遠心分離
45分間4℃にて、Sorvall RC6およびローターSLA15000を用いて上清を13,000rpmにて遠心分離した。遠心分離からの上清を回収し、0.45μmから0.22μmのDicaliteおよび再生セルロールフィルター上で、真空前濾過する。
【0052】
限外濾過300,000Da
産物を、4℃にて冷却した部屋において、0.5から1バールのPiにて300.000Da Millipore Biomax Pellicon平面接線フロー膜を通して濾過および限外濾過する。
【0053】
限外濾過5,000Da
300,000Da限外濾過からの透過物を、4℃にて冷却した部屋において、0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中の5000Da Millipore Biomax Pellicon平面接線フロー膜上で濃縮する。残余分を再生セルロース中でSpectrum SpectraPor製の1,000Da析管に移し、脱塩水に対して透析し、次いですぐに凍結乾燥する。
【0054】
初乳からの抽出
特にホルスタイン(フリージアン)およびガーンジーウシからのウシ初乳が好ましい。これらのウシは、最も高い濃度の成長因子、免疫調節因子、走化性因子および抗菌/抗ウイルス因子を有する初乳を産生することが実証されている。ウシは好ましくは2回または3回分娩している。初乳は好ましくは分娩後5〜6時間以内に採取され、好ましくは初乳は分娩後1時間で採取される。なぜなら、最も高い濃度の活性物質がこの時間の間に見られるのに対して、6時間から先へ進むと、活性因子は急速に減少するからである(20%のみが分娩後24時間で存在する)。
【0055】
採取した初乳を、結核、細胞培養物における細胞毒性、マイコプラズマ、プリオンならびにヒトおよびウシウイルスについて試験する。
【0056】
乳房槽内の初乳は実質的に無菌であるが、一旦搾られると、高濃度の成長因子に起因して、あらゆる予防措置にも関わらず、凍結および解凍の間にその細菌数は非常に急速に上昇し、これは、最初の数時間における初乳の密度の高さを考慮するとかなり遅いプロセスである。
【0057】
食事使用に許容される防腐剤の濃度ならびに非経口および/または静脈内使用に許容される防腐剤の濃度は、細菌数を押しとどめるのに十分ではない。γ線のみの使用は、10Kgyを超える放射線が使用される場合、無菌初乳を生じるが、これは大部分の活性因子を破壊し、いずれにしてもこの方法は発熱物質の形成を防がず、その静脈内および/または局所使用は血液およびリンパ節と接触する領域において禁止されている。したがって、革新的な回収システムが、防腐剤または発熱物質を用いずに、無菌のアレルゲンを含まない化合物を得るために考案されている。
【0058】
無菌で発熱物質を含まないことを保証するのに十分な量の消毒剤が、無菌タンク(これは25Kgyにて空の状態で滅菌されている)に回収された初乳に加えられる。各々、12.5%の濃度(通常使用される濃度、すなわち0.2%より非常に高い濃度)にてソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウム、または代替として、2.5%の濃度にてフェノキシエタノールもしくは1%の濃度にてジアゾリジニル尿素が好ましくは使用される。
【0059】
このように処理された初乳は活性因子抽出プロセスの前に凍結保存されることを必要とせず、これにより費用の明らかな節約となる。
【0060】
次いで初乳を食塩水で希釈する:この希釈は、濾過孔を詰まらせずに良好な濾過を与えるだけでなく、上記の全てが脂肪およびカゼインに結合した活性因子の放出を可能にする。したがって、希釈した初乳は接線精密濾過(2から6μmの間のカットオフを有するセラミック膜、温度5/20℃、0.2から2バールの間の膜貫通圧力)に供され、カゼイン、脂肪基質および乳タンパク質を含まない乳白色溶液を得るために、これは繰り返されてもよい。全てのこれらの物質は初乳および牛乳のアレルギー性含有物の90%以上を構成する。次いで溶液を、全て200,000ダルトン未満の重量である、活性因子をさらに精製するために300,000ダルトン(Da)にてカットオフを有する膜に通すか、または代替として分子篩に通す。
【0061】
次いで溶液を、高圧にて限外濾過(カットオフ1000/2000ダルトン)により透析し、次いですぐに凍結乾燥する。この結果は、可能な最大濃度の活性因子を有する、無菌で、防腐剤を含まない、非常に高い溶解度の非アレルギー性粉末(カゼインおよびラクトアルブミンは牛乳に対するアレルギーの95%以上を占める)である。
【0062】
免疫グロブリンの喪失
免疫グロブリンIgG、IgAおよびIgMは、以下の工程からなる方法によって、以前に開示された抽出物により得られた画分から定量的に喪失させる:1)アフィニティクロマトグラフィーによるIgG枯渇、2)接線フロー濾過による、および100kDaのカットオフを有する膜を使用するIgAおよびIgM枯渇、3)3kDaのカットオフを有する膜を使用する透析濾過による脱塩および濃縮、4)凍結乾燥。
【0063】
アフィニティクロマトグラフィーによるIgG喪失
今までのところ、抗体精製に採用されている最も一般的な技術は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAおよび連鎖球菌(Streptococci)由来のプロテインGなどの細菌表面から単離された非常に特異的な免疫グロブリン結合タンパク質(IBP)を使用するアフィニティクロマトグラフィーに基づく。このようなタンパク質は、通常、分取クロマトグラフィーカラムにおいて固定され、高い程度の純度で免疫グロブリンを捕捉し、1工程のみで回収する。IgGに対する最も高い親和性により特徴付けられる、最も好適なウシIBPが選択され、セファロース上で固定された5mlのプロテインAまたはGを含有するHiTrapカラムを試験した。電気泳動およびELISAの両方によりIgG喪失を測定することによって、本発明者らは、プロテインGが、ウシIgGについての最も好適なIBPであり、95%より高い喪失に至ることを発見した。ほぼ1gの全量に対して23mgのIgG/mlを結合できる臭化シアン(CNBr)によりセファロース上で固定された組換えプロテインGからなる400mlのプロテインGセファロース4高速流(GE Healthcare)を含有する、HiScale(商標)50カラムIの使用が好ましい。移動相はFPLCシステム(AKT Aprime plus、GE Health care)により溶出され、280nmにてUV検出器、導電率計(0.001〜999.9mS/cm)およびpHメータによりモニターされる。アフィニティクロマトグラフィー法は以下の工程からなる:1)結合、2)溶出、3)カラム再生。結合工程は、20ml/分の流速にて、0.1MPaの背圧を超えずに、5体積の結合緩衝液(リン酸緩衝液、20mM pH7)でカラムを平衡化することからなる。次いで抽出物の試料をカラム上に負荷し、次いで結合緩衝液で溶出する。この段階の間、免疫グロブリンは固定相に結合するのに対して、他のタンパク質はカラムから溶出される。IgGから喪失させた溶出タンパク質の回収は溶出液のUVをモニターすることにより自動的に誘導される。次の工程は、20ml/分の流速に設定したpH2.5にて酸性移動相(グリシン−HCl)を使用することにより免疫グロブリンを溶出することからなる。溶出工程の後、その正確な再生および保存のためにエタノール(20%)をカラム内にフラッシュすることが必要である。
【0064】
接線フロー濾過によるIgAおよびIgM喪失。IgMおよびIgAサブクラスの分離は、得られた画分のプロテオームに対するそれらの高分子量に基づく。特に、ウシ初乳由来のウシ分泌IgA(SIgA)(分子量約410,000)は、4つのアルファ鎖(分子量61,000)、4つの軽鎖(分子量約23,000)および1つの糖タンパク質−aの分子(分子量70,000〜86,000)からなる。複数の免疫グロブリンが、大部分は五量体としてであるが、六量体としてもジスルフィド結合と一緒に共有結合される場合、IgMはポリマーを形成するので、IgMは、(その五量体形態において)少なくとも970kDaの分子量により特徴付けられる。Igのこれら2つのクラスの喪失は、100KDaのカットオフを有する多孔質膜の使用に基づいた接線濾過システムにより実施される。特に、このシステムは、供給口、残余分口、および2つの透過口ならびに生体液の穏やかな再循環のための蠕動ポンプを備える中空繊維クロスフロー濾過カートリッジに基づく。
【0065】
透析濾過による脱塩および濃縮ならびに4)凍結乾燥。免疫グロブリンから喪失させたプロテオームを次いで、脱塩および濃縮するための3〜5kDaのカットオフを有する膜を通して透析濾過する。得られた溶液を次いで、無菌状態において0.2ミクロンの膜を通して濾過し、最後に凍結乾燥する。
【0066】
凍結乾燥:
5000Daからの限外濾過残余分を、0.2μmから再生されたセルロースから作製されたMilliporeフィルタ上で、真空下で濾過し、−20℃にて凍結し、凍結乾燥する。
【0067】
血清、胎盤または初乳から得られる産物は別々に使用されてもよく、またはそれらは一
緒にプールされてもよい。産物はいかなる場合も表1〜6に指定した定量的範囲を満たす。
【0068】
本発明の組合せは、幹細胞治療の代替のための組織修復および再生を必要とする状態の処置において、非経口または局所的のいずれかで有益に使用される。特に、場合により、例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、マトリゲル、親水コロイド、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンなどの生体材料と組合せて、皮膚科および形成外科ならびに美容外科に使用するための充填剤として、幹細胞培養物の上清の同じ成分を含有する、本発明の組合せが、骨外傷および変性病状の処置に有用である。投与される本発明の組合せの量は0.1から10gで変化してもよい。本発明の組合せはまた、転移性骨病変、下顎または上顎歯槽突起萎縮の処置のため、および骨折の硬化のために有用である、1から10%の範囲の濃度において本発明の組合せを含有する材料を与えるために、骨格、ブラケット、インプラントまたはプロテーゼを含浸するために使用されてもよい。濃度はPMF含有材料により処置される病変の期間および種類に明らかに依存する。
【0069】
非経口処置に関して、本発明の組合せは、無菌溶液などの好適な投与量で好適な担体および添加剤と共に製剤化される。
【0070】
組合せはまた、小窩齲食および髄質炎症の治療のための空洞のための回復材料として使用されてもよい。この目的のために、組合せは、骨格、セメント、支持体、再吸収可能または再吸収不可能なインプラントの形態で製剤化される。
【0071】
組合せの1日投与量は、処置される状態の種類および重症度ならびに患者の状態、年齢および性別に依存する。それは一般に、1または複数回の投与、典型的に2から3回の投与において1日に1から10gの範囲である。
【0072】
局所処置に関して、適切な投与形態としては、典型的に10から20重量%の本発明の組合せを含む、クリーム、軟膏、ゲル、粉剤、ローション、口内洗浄液、パッチが挙げられる。所望の場合、初乳、血清または胎盤から得た本発明の組合せは、例えば制御放出形態において、好ましくはミクロスフェア内で、特定の用途のために被覆されてもよい。
【0073】
製剤は特定の使用に有用である他の成分を含有してもよい。
【0074】
本発明は、実施例により与えられる、以下の実験部分により詳細に記載されている。
【実施例1】
【0075】
骨疾患の処置
インビトロ試験
最初の(Ex novo)骨形成
骨形成に対するP.M.F.の効果を、ヒトおよびマウスの骨形成間葉系幹細胞、および骨の前駆体の増殖および分化アッセイによりインビトロにおいて評価した。インビボで、PMFの骨形成活性を、PMFおよびヒドロキシアパタイトを含有するマトリゲル、無定形基質の皮下注射のモデルにおいて評価した。
【0076】
増殖
骨芽前駆体(ヒト脂肪組織由来の幹細胞、hASC)のモデルとして、ヒト骨芽(Saos−2およびMG−63)細胞およびヒト間葉系幹細胞を使用して、細胞増殖に対するP.M.F.の効果を評価した。
【0077】
6人のボランティアドナーからASCを単離し(非特許文献5参照)、対照培地(ピルビン酸ナトリウム、10%FCS、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシンおよび250ng/mlアンホテリシンBを補足したDMEM)中に維持した。骨芽細胞Saos−2(ATCC番号:HTB−85)およびMG−63(ATCC番号:CRL−1427)はATCCから購入した。Saos−2およびMG−63をそれぞれ、15%FBSを有するMcCoy’5A(Gibco、Life Technologies)中、および10%FCSを有するDMEM中に維持した。
【0078】
細胞を96ウェルプレート中に播種し、1、3、5および7日目にMTT試験に供し、37℃にて5%CO2の湿気にある環境中に維持した。PMFは、研究した株の全てに対して有効な用量依存的増殖効果を示し、5mg/mlの濃度で最大に達した。
【0079】
遊走
間葉前駆体(ASC)およびヒト骨芽細胞(MG−63およびSAOS)を動員するPMFの能力を、細胞運動性を誘導する能力を研究するための重要な試験として認識されている、創傷治癒アッセイにより評価した。示した濃度(5mg/ml)におけるPMFは、ASCおよびMG−63について陽性対照(10%FBS)の条件と匹敵するように、ならびにSaosについて常に統計的に有意であるが、より少ない程度で細胞運動性を促進する。
【0080】
PMFによるチタン表面の機能化
歯科インプラントの表面をインビトロで試験するために一般に使用されている、平滑なチタンのシリンダを、PMFの機能化を可能にするためにポリアクリレート薄膜で被覆した。表面上のカルボキシル基の導入により、実際に、PMFに含まれる成長因子のアミノ酸残基に存在するアミノ基との共有結合の形成が可能となる。Saos−2ヒト骨芽細胞を試料上に播種し、3および6時間後に固定し、免疫細胞化学的分析のために調製した。ちょうど3時間後、処理していない表面と比べて、処理した表面上の細胞のより広い拡散に気づくことができ、一方、播種の6時間後において、拡散は2つの条件において同様であるが、細胞の数は機能化した表面について著しく多い。
【0081】
インビボ試験
マトリゲルにおける骨形成のインビボモデル
PMFの骨形成活性を、100マイクログラム/mlのPMFの存在または非存在下でBalb−C内にマトリゲルを皮下に接種することによって評価した。PMFを含有する基質の検査は、接種の10〜15日後、炎症細胞の動員を示した。
【0082】
その後の研究は、PMFを含有しているまたは含有していないマトリゲルに加えられる、ヒドロキシアパタイトの存在下で行った。接種の10日後、マクロファージおよび反応性巨細胞がヒドロキシアパタイト結晶周囲にPMFの存在下で動員した。免疫組織化学的分析もまた、オステオカルシンの沈着を示した。60日目に、Von Kossa染色にてカルシウム沈着について陽性である、反応性ストロマに囲まれた石灰化領域が明らかになった。
【0083】
上記の結果から、その可溶性骨誘導因子が培養培地またはインビボでヒドロキシアパタイト骨格に供給される場合、PMFが骨形成を増強するのにどのように役割を果たしているのかが明らかになる。したがって、PMFは、整形外科および歯科に使用される代用骨材料に都合良く利用され得る。さらに、PMFは試験細胞上で正の走化性の能力を有し、インプラント表面の機能化のために使用され得る。骨および骨芽細胞の前駆体増殖および遊走に対する効果は、種々のケモカインおよび成長因子がPMFに存在することに起因する。
【0084】
イヌにおける骨折
癒着不能または遷延治癒の高いリスクがある長い骨を骨折している5匹のイヌにおいて、3から15gのPMFを含有する骨格を骨折とプラークとの間に置いた。
【0085】
未処置の対照イヌと比べて骨量の増加が観察された。特に、PMFに含有される特異的成長因子により刺激される生理学的骨芽細胞の作用に起因する新たな骨梁の形成が観察された。骨折のより迅速な硬化および仮骨のミネラル化が、考慮される骨折の種類に通常必要とされる期間の半分で観察された。骨折硬化の平均期間は、未処置の動物について30週からPMF処置した動物について16週まで減少した。
【0086】
得られた結果は、PMFが骨再生を活性化できることを示す。この結果は、硬化の高いリスクがある骨折の存在下で使用するために臨床的および生理学的観点から非常に有望である。
【実施例2】
【0087】
歯における穿通性齲蝕および髄質炎症の治療
インビボでの歯髄損傷
10匹のSprague−Dawleyラット、3ヶ月齢を、歯冠に対する傷害のモデルのために使用し、続いて、非特許文献6のプロトコルに従って充填した。ゼロ日目に、穴を臼歯の右近心面上に開け、水酸化カルシウムまたは200マイクログラムのPMFによる充填を空洞内に適用した。2つの歯は髄質炎症の陽性対照として開けたままにした。
【0088】
結果
陽性対照は顕著な炎症性浸潤を示した(
図1A)のに対して、水酸化カルシウムで処理した歯は充血および浮腫を有する歯髄炎を示した(
図1B)。PMFを含有する充填は正常な歯髄の特徴を維持した(
図1C)。
【実施例3】
【0089】
皮膚再生
インビトロ試験
PMFは、対照(10%FBS)と比較してヒト脂肪組織(hASC)に由来する間葉系幹細胞の増殖能力をかなり増加させた(>100%)。培養培地中で、2つの異なる濃度(5mg/mlおよび1mg/ml)で使用したPMFは、用量およびインキュベーション時間に依存した効果を有した。
【0090】
インビボ試験
PMF(100γ)を、1mlの架橋していないヒアルロン酸と混合した。ヒアルロン酸またはマトリゲルなどの他の媒体は、長期の真皮およびコラーゲンの再生を可能にするように15〜20日の期間でPMFを放出するように設計する。
【0091】
インビボでの細胞増殖
PMF、マトリゲルまたはヒアルロン酸の混合物をマウスに皮下に注射する。7日後、支持体非晶質の周囲において血管細胞増殖が観察される。20日後、非晶質支持体には、細胞が完全にコロニー形成している。さらに30日後、コラーゲンの著しい形成が観察される。
【0092】
ブタの尾に対する機械的損傷:皮内治療
ブタの尾の結紮は尾の下流の壊死を生じる。実験モデルは、1)生理的、2)生理食塩水+PMF、3)ヒアルロン酸+PMFの上流の注射を含む。
【0093】
生理食塩水の注射後、病変の上流で、尾は24時間で落ちる。注射から15日後、生理的+PMFの病変の上流で、尾は落ちないが、最適条件未満の下で成長し始め、特に病変に対する末梢部において、壊死病変を見ることができ、毛の成長は起こらない。ヒアルロン酸+PMFの注射から15日後、病変の上流で、尾は完全に正常である。
【0094】
組織学的検査は、神経および筋肉の変化が処置した動物において観察されず、その皮膚および血管系は生理学的状態に戻ることを示す。未処置の動物の尾部分は、処置した動物のもののおおよそ半分の直径を有すること以外に、神経−筋肉、血管および皮膚成分の全ての萎縮を有する、広範な硬化を示す。動脈は内膜プラークにより完全に遮断される。
【実施例4】
【0095】
心筋の修復
注射針による心筋の障害は、針自体からマトリゲル+100マイクログラムのPMFを放出することにより防がれた。筋細胞による病変のコロニー形成が最初に起こり、続いて完全な修復が起こる。