特許第6139562号(P6139562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イノメッド ソシエテ アノニムの特許一覧

特許6139562成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3A/C4A、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せ
<>
  • 特許6139562-成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3A/C4A、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せ 図000020
  • 特許6139562-成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3A/C4A、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せ 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139562
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3A/C4A、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61P 37/02 20060101AFI20170522BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 35/50 20150101ALI20170522BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20170522BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61P37/02
   A61K37/24
   A61K39/395 V
   A61K35/20
   A61K35/50
   A61K35/16
   A61L27/36 100
   A61P1/02
   A61P1/04
   A61P17/00
   A61P17/02
   A61P19/10
   A61P25/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-549467(P2014-549467)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-506932(P2015-506932A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2012076962
(87)【国際公開番号】WO2013098333
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002432
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002433
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002435
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002439
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002440
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002441
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002443
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002445
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2011A002446
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516038368
【氏名又は名称】イノメッド ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト バルトレッリ
(72)【発明者】
【氏名】マリア ローザ ゴッビ
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/064114(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/029518(WO,A1)
【文献】 Nutrition Research,2002年,Vol.22, No.6,p.755-767
【文献】 International Dairy Journal,2006年,Vol.16, No.11,p.1415-1420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 38/00−38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン、成長因子、走化性因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質、免疫グロブリン、および抗菌/抗ウイルス因子の組合せであって、以下の組成を有する組合せ。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【請求項2】
初乳の抽出により得られることを特徴とする請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
胎盤の抽出により得られることを特徴とする請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
分娩前5−15日前に採取した血清から血清の抽出により得られることを特徴とする請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
組織修復および再生を必要とする状態の処置に使用するためおよび幹細胞治療/移植体の代替のための請求項1〜4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項6】
前記状態は、自己免疫疾患、神経因性疼痛、骨粗鬆症、創傷、熱傷、皮膚潰瘍、口腔病変、壊死性急性大腸炎、クローン病、胃食道逆流、AIDSにより誘導される腸炎、過敏性腸症候群、感染性大腸炎、痙攣性大腸炎、抗生物質により誘導される大腸炎、裂孔ヘルニア、短食道症候群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の組合せ。
【請求項7】
好適な担体および/または添加剤と混合して、活性成分として請求項1〜4のいずれか一項に記載の組合せを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
経口投与のための請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
局所投与のための請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3a/C4a、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せに言及する。本発明はまた、血清、胎盤または初乳からこの組合せを調製するためのプロセスならびに組織修復および再生を必要とする状態の処置に使用するため、および幹細胞治療の代替のためのこの組合せを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の科学文献によれば、幹細胞の治療効果は、2つの機構:幹細胞の常在細胞への分化および幹細胞による再生栄養素の放出に起因し得る。これら2つの機構それぞれの役割はまだ解明されていないが、幹細胞は損傷組織の成熟細胞に発達するのではなく、むしろそれらは不可欠な因子をこの組織に運搬し、この組織は次いで増殖および分化するように逆戻りすることができ、それ自体を再生することが示唆されている(非特許文献1参照)。
【0003】
幹細胞治療は、費用ならびに技術的および実務的な複雑さだけでなく、倫理的および宗教的な良心の呵責にも関連する多くの問題を有する。
【0004】
幹細胞治療は、注射のみにより、または一部の場合、局所的に実施可能であり、経口的には実施不可能である。培養した幹細胞の上清は、組織成長および/または修復に対する幹細胞治療の有益な効果に関与すると考えられている、成長因子、サイトカイン、走化性因子などを含有する。
【0005】
しかしながら、幹細胞の上清から単離できる不可欠な因子の使用は、幹細胞自体を使用する同じ倫理的問題を有するだけでなく、非常に高価な費用もかかる。
【0006】
一部の哺乳動物組織および生体液、すなわち血清、胎盤および初乳は、サイトカイン、成長因子、走化性因子、および通常、幹細胞培養物の上清にも見出される他の成分を含有していることが知られている。
【0007】
純粋な初乳についての、またはその抽出物もしくは画分の、ならびに胎盤抽出物についてのいくつかの治療適用が過去に開示されている。例えば、初乳の臨床用途の概説は、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4に報告されている。
【0008】
初乳またはその画分の治療的使用はまた、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10および特許文献11に報告されている。後者は、初乳からの成長および分化因子の抽出を開示しているが、開示されているプロセスは、純粋な初乳の重要な成分(例えば、サイトカイン、幹細胞刺激因子、走化性因子および抗菌/抗ウイルス因子)の損失を必ず含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第743060号明細書
【特許文献2】国際公開第98/51316号
【特許文献3】国際公開第94/16675号
【特許文献4】国際公開第98/36759号
【特許文献5】国際公開第95/00155号
【特許文献6】国際公開第2007/000648号
【特許文献7】仏国特許発明第2487676号明細書
【特許文献8】国際公開第98/14473号
【特許文献9】国際公開第99/64022号
【特許文献10】国際公開第2008/103023号
【特許文献11】国際公開第2006/029494号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】AI Caplan and JE Denni, Mesenchymal Stem Cells as Trophic Mediators. Bioch J. Cell 98: 1076−1084, 2006
【非特許文献2】Alternative Medicine Review 8(4), 2003, 378ページ
【非特許文献3】Int. J. Clin. Pharmacol and Therap., 46(5), 2008, 211−225
【非特許文献4】International Dairy Journal, 16, 2006, 1415−1420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の文献のいずれも、幹細胞治療の代替として、全部ではないが、幹細胞培養上清の成分のほとんどを含有する、容易に利用可能な哺乳動物源に由来する組成物を開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
成長因子、サイトカイン、抗菌/抗ウイルス因子、幹細胞刺激因子、補体タンパク質C3a/C4a、免疫グロブリンおよび走化性因子の組合せが、異なる生物学的標的におけるそれらの多機能活性に起因して多くの病状の処置に特に効果的であることが発見された。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象は、母ブタの下に維持した対照群のものと匹敵して規則的に成長した。規則的成長の初日の後、誕生から調乳のみを与えた子ブタは、2日目から虚弱、運動失調、自発的な栄養の中断、逆流および下痢を示した。さらに24〜48時間以内の急速な体重損失の後、動物は死んだ。死後に得た大腸の種々の部分の組織病理学検査により、電子顕微鏡法により確認された、致死性の急性壊死性大腸炎の診断が可能となった。
図1B】調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象は、母ブタの下に維持した対照群のものと匹敵して規則的に成長した。規則的成長の初日の後、誕生から調乳のみを与えた子ブタは、2日目から虚弱、運動失調、自発的な栄養の中断、逆流および下痢を示した。さらに24〜48時間以内の急速な体重損失の後、動物は死んだ。死後に得た大腸の種々の部分の組織病理学検査により、電子顕微鏡法により確認された、致死性の急性壊死性大腸炎の診断が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組合せは以下の含有量により特徴付けられる:
サイトカイン:約50から約300pg/mg、好ましくは47.81から264.56、
成長因子:約650から約1900pg/mg、好ましくは670.80から1869.40、
走化性因子:約2から20pg/mg、
幹細胞刺激因子:約100から1200pg/mg、好ましくは136から1120、
抗菌/抗ウイルス因子:約30から80μg/mg、好ましくは21.30から71.50、
補体C3a/C4aタンパク質:約1から5pg/mg、好ましくは1.10から2.70、
免疫グロブリン:約0.3から0.9mg/mg、好ましくは0.35から0.85。
【0015】
本明細書以下でPMF Abと称される、本発明の組合せに存在するサイトカインは、表1に報告されている:
【0016】
【表1】
【0017】
本発明の組合せに存在する成長因子は表2に報告されている:
【0018】
【表2】
【0019】
本発明の組合せに存在する幹細胞刺激因子は表3に報告されている:
【0020】
【表3】
【0021】
本発明の組合せに存在する走化性因子は表4に報告されている:
【0022】
【表4】
【0023】
本発明の組合せに存在する抗菌/抗ウイルス因子は表5に報告されている。
【0024】
【表5】
【0025】
本発明の組合せに存在する補体C3a C4aタンパク質は表6に報告されている。
【0026】
【表6】
【0027】
本発明の組合せに存在する免疫グロブリンは表7に報告されている。
【0028】
【表7】
【0029】
表1〜7に報告されたデータは、ウシ分子に特異的な商業的に利用可能なサンドイッチELISA法およびフレキシブルBio−Plex(登録商標)システム(Bio−Rad Lab.、Hercules、CA、USA)により得られた。「約」という用語は、所与の値の±10%、好ましくは±5%の変動を意味する。
【0030】
組合せの成分の主な生理学的役割は以下に報告されている。
【0031】
補体タンパク質C3/C4:補体は、感染に対抗するのに役立つ炎症反応を誘導する、種々の細胞型の表面上に位置している生体膜および特異的受容体と相互作用できる循環タンパク質からなる。
【0032】
成長因子
TGF−β1−形質転換成長因子:粘膜における免疫防御に関与している、クラスA免疫グロブリンの産生を刺激する。細胞増殖を調節し、細胞外基質の沈着を刺激する。
EGF−上皮細胞成長因子:粘膜の発達を制御する。上皮細胞の形成を促進する。
IGF1−インスリン様成長因子:細胞増殖、付着および遊走を調節し、粘膜の成熟を誘導する。
VEGF−血管内皮細胞成長因子:血管産生を刺激する。細胞分裂活性および血管透過性の活性化を提示する。
FGF−b−線維芽細胞成長因子基礎:線維芽細胞、内皮細胞、星状膠細胞およびケラチノサイトなどの、間葉細胞起源の細胞の増殖を刺激する。それはまた、走化性因子としても作用する。
GH−成長ホルモン:全ての組織の全体的な成長因子。
GHRF−成長ホルモン放出因子:正常な生後の成長、骨成長、タンパク質、炭水化物および脂質代謝に対する調節作用に必要とされるGHの放出を刺激する。
NGF−神経成長因子:活性を刺激し、交換神経系の成長および分化を制御する。
PDGF−血小板由来成長因子:中胚葉起源の細胞の成長/分化。
BMP−2−骨形成タンパク質2:骨および軟骨の発達、心臓細胞分化。
【0033】
走化性因子
エオタキシン:炎症組織に対して好酸球を動員するためにケモカイン受容体に結合する。
MCP−1 単球走化性因子−1:炎症組織に対して単球の凝集を促進する。
【0034】
サイトカイン
IL−1Raは、インターロイキン1アルファおよびインターロイキン1−ベータの活性を阻害し、種々のIL1関連免疫および炎症反応を調節する。
IL−2はTリンパ球の増殖を誘導する。
IL−4は抗炎症活性を保有する。
IL−6は先天性および適応免疫を刺激する。
IL−9は造血細胞の調節因子であり、細胞増殖を刺激し、アポトーシスを防ぐ。
IL−17はNF−KBの活性を制御し、一酸化窒素(NO)産生を増加させる。
IL−10は免疫制御および炎症において多面発現効果を有する。B細胞生存、およびそれによる抗体産生を改善する。ノックアウトマウスで行われた研究により、このタンパク質は粘膜の免疫制御において必須であることが実証されている。IL−12はTおよびナチュラルキラー細胞を刺激する。
IL−15はTおよびナチュラルキラー細胞活性化および増殖を制御する。
インターフェロン−ガンマは、既知の抗ウイルス、抗腫瘍および免疫調節性活性を有する。それは強力なマクロファージ活性化因子であり、細菌およびウイルスに対して細胞媒介性活性を活性化する。
TNF−α−腫瘍壊死因子は感染部位への好中球および単球の遊走を刺激する。
【0035】
幹細胞刺激因子
GM−CSF−顆粒球コロニー刺激因子:骨髄由来の免疫前駆体の刺激および末梢部のディスミッション(peripheral dismission)に関与する。
LIF−白血病抑制因子:例えば、正常および骨髄性白血病細胞における造血分化の誘導、神経細胞分化の誘導、腎臓発達の間の上皮変換に対する間葉細胞の調節因子に関与するいくつかの異なる系において役割を有する多面的サイトカイン。
SCF−幹細胞因子:胚細胞および神経系細胞発達および造血において子宮内で作用する。
SDF−1−ストロマ細胞由来因子−1:CXCR4リガンドを発現する幹前駆体細胞の走化性因子として作用する。
【0036】
抗菌
トランスフェリン:鉄を赤血球に送達し、細菌およびウイルスが鉄に結合することを防ぐ。
ラクトフェリン:細菌およびウイルスの成長に必要とされる鉄をそれらから奪う。
リゾチーム:その酵素活性を考慮して、ならびにそのカチオン性および疎水性特性の結果として抗菌作用を有する。
ラクトペルオキシダーゼ:必須タンパク質SH基の酸化により細菌代謝を阻害する。
【0037】
本発明の組合せは、以下に詳述した方法に従って、分娩後の哺乳動物からの初乳、血清または胎盤の抽出により調製され得る。
【0038】
血清は出生前の最後の日に因子の最も高いピークを有し、初乳は出生後の最初の数時間で、かつ6時間以内である。
【0039】
分娩の12時間後、初乳における因子は著しく減少し、24時間でそれらの多くはもはや検出されない。
【0040】
これらの因子は異なる種において遺伝学的に高度に保存されるので、例えば、ウシ、ウマ、ラクダ、海洋哺乳動物などの他の哺乳動物種から単離された因子を使用することができる。
【0041】
因子は、種間交差反応が非常に高い場合でさえも、種に特異的であるELISAアッセイを用いてコントロールされる。なぜなら、因子は系統発生的に非常に保存されるので、異なる種(例えば、ヒト−ウシおよびその逆)のために使用されるELISAを用いても定性的に測定できるからである。
【0042】
抽出手順は、考慮されている使用のために認められている値(<1000c.f.u.)よりかなり低い、非常に低い細菌数(<40c.f.u.)を有する産物の調製を可能にするので、初乳、血清または胎盤に抗菌防腐剤を必ずしも加える必要はない。経口または局所投与のための発熱物質の存在は重要ではない。
【0043】
哺乳動物血清からの抽出
妊娠したメスの哺乳動物の血清は、分娩または出産前の最後の数日、通常、最後の5〜15日において、本発明の組合せについて成分の最も高いピークを有する。
【0044】
本発明の組合せを調製するための典型的な手順は記載されている。
【0045】
動物、好ましくはウシまたはウマに対する損傷を防ぐように全部で4つの試料について1リットルの血液を4日目に採取する。
【0046】
血清を室温にて24時間、血液から分離し、次いで血餅を搾るために遠心分離する。
【0047】
血清を回収し(全体積の約30/40%)、次いで以下のステップに供する。
【0048】
限外濾過300,000Da:
哺乳動物血液から凝固および遠心分離により得た血清試料(−20℃で凍結した)を室温にて解凍し、2体積の脱塩水で希釈した。得られた溶液を、4℃にて冷却した部屋において0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中でMillipore Biomax Pellicon300,000Da平面接線フロー膜を通して限外濾過する。
【0049】
透過物の約1:10に対応する残余分および画分を、再生セルロース中でSpectrum SpectraPor製の1000Da透析管に移し、脱塩水に対して透析する。
【0050】
限外濾過5,000Da:
残存している透過物を、5000Da膜を通して限外濾過する。300,000Da限外濾過からの透過物を、4℃にて冷却した部屋において0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中で5000Da平面接線フロー膜Millipore Biomax Pellicon上で濃縮する。
【0051】
残余分をSpectrum SpectraPor製の再生セルロース中で1,000Da透析管に移し、脱塩水に対して透析する。次いで産物をすぐに凍結乾燥する。
【0052】
胎盤からの抽出
ウシ、ウマまたはブタの胎盤が好ましくは使用される。
【0053】
均質化:
胎盤(−20℃で凍結した)を室温にて解凍し、小切片に切断し、多量の冷却した(4℃)生理食塩水(NaCl0.9%)で洗浄し、pH7.4にて以下の成分:Tris/HCl 50mM、EDTA 25mM、トリトンX−100 0.001%を有する溶解緩衝液中でSirammカッターを使用して均質化する。0.9%の濃度でNaClを得られた懸濁液に加える。上清を2時間、(マグネチックスターラーで)撹拌し、4℃にて冷却した部屋で終夜静置した。
【0054】
遠心分離
45分間4℃にて、Sorvall RC6およびローターSLA15000を用いて上清を13,000rpmにて遠心分離した。遠心分離からの上清を回収し、0.45μmから0.22μmのDicaliteおよび再生セルロールフィルター上で、真空前濾過する。
【0055】
限外濾過300,000Da
産物を、4℃にて冷却した部屋において、0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中の300.000da Millipore Biomax Pellicon平面接線フロー膜を通して濾過および限外濾過する。
【0056】
限外濾過5,000Da
300,000Da限外濾過からの透過物を、4℃にて冷却した部屋において、0.5から1バールのPiにてポリエーテルスルホン中の5000da Millipore Biomax Pellicon平面接線フロー膜上で濃縮する。残余分を再生セルロース中でSpectrum SpectraPor製の1,000Da析管に移し、脱塩水に対して透析し、次いですぐに凍結乾燥する。
【0057】
初乳からの抽出
特にホルスタイン(フリージアン)およびガーンジーウシからのウシ初乳が好ましい。これらのウシは、最も高い濃度の成長因子、免疫調節因子、走化性因子および抗菌/抗ウイルス因子を有する初乳を産生することが実証されている。ウシは好ましくは2回または3回分娩している。初乳は好ましくは分娩後5〜6時間以内に採取され、好ましくは初乳は分娩後1時間で採取される。なぜなら、最も高い濃度の活性物質がこの時間の間に見られるのに対して、6時間から先へ進むと、活性因子は急速に減少するからである(20%のみが分娩後24時間で存在する)。
【0058】
採取した初乳を、結核、細胞培養物における細胞毒性、マイコプラズマ、プリオンならびにヒトおよびウシウイルスについて試験する。
【0059】
乳房槽内の初乳は実質的に無菌であるが、一旦搾られると、高濃度の成長因子に起因して、あらゆる予防措置にも関わらず、凍結および解凍の間にその細菌数は非常に急速に上昇し、これは、最初の数時間における初乳の密度の高さを考慮するとかなり遅いプロセスである。
【0060】
次いで初乳を食塩水で希釈する:この希釈は、濾過孔を詰まらせずに良好な濾過を与えるだけでなく、上記の全てが脂肪およびカゼインに結合した活性因子の放出を可能にする。したがって、希釈した初乳は接線精密濾過(2から6μmの間のカットオフを有するセラミック膜、温度5/20℃、0.2から2バールの間の膜貫通圧力)に供され、カゼイン、脂肪基質および乳タンパク質を含まない乳白色溶液を得るために、これは繰り返されてもよい。全てのこれらの物質は初乳および牛乳のアレルギー性含有物の90%以上を構成する。次いで溶液を、全て200,000ダルトン未満の重量である、活性因子をさらに精製するために300,000ダルトンにてカットオフを有する膜に通すか、または代替として分子篩に通す。
【0061】
次いで溶液を、高圧にて限外濾過(カットオフ1000/2000ダルトン)により透析し、次いですぐに凍結乾燥する。この結果は、可能な最大濃度の活性因子を有する、防腐剤を含まない、非常に高い溶解度の非アレルギー性粉末であり(カゼインおよびラクトアルブミンは牛乳に対するアレルギーの95%以上を占める)、非常に少ない細菌数(<40CFU)により特徴付けられる。
【0062】
血清、胎盤または初乳から得られる産物は別々に使用されてもよく、またはそれらは一緒にプールされてもよい。産物はいかなる場合も表1〜7に指定した定量的範囲を満たす。
【0063】
本発明の組合せは、幹細胞治療の代替のための組織修復および再生を必要とする状態の処置において、経口または局所的のいずれかで有益に使用される。特に、幹細胞培養物の上清の同じ成分を含有する、本発明の組合せは以下の経口処置に有用である:
− 自己免疫疾患、特にI型糖尿病、多発性硬化症、関節炎、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎;
− 神経因性疼痛;
− 胃腸疾患、例えば、壊死性急性大腸炎、クローン病、胃食道逆流、AIDSにより誘導される腸炎、過敏性腸症候群、感染大腸炎、痙攣性大腸炎、抗生物質により誘導される大腸炎、裂孔ヘルニア、短食道症候群など;
− 骨粗鬆症;
本発明の組合せはまた、以下の局所処置に有用である:
− 異なる形態の脱毛症;
− 角膜病変;
− 創傷、熱傷、皮膚潰瘍;
− 口腔粘膜の病変。
【0064】
経口処置に関して、本発明の組合せは、カプセル剤、錠剤、粉剤、顆粒剤、懸濁剤、機能性食品および栄養補助食品の分野で従来から使用されている同様の形態などの適切な剤形で適切な担体および添加剤を用いて製剤化される。
【0065】
組合せの1日投与量は、処置される状態の種類および重症度ならびに患者の状態、年齢および性別に依存する。それは一般に、1または複数回の投与、典型的に3から4回の投与において1日に10から30gの範囲である。
【0066】
局所処置に関して、適切な投与形態としては、典型的に10から20重量%の本発明の組合せを含む、クリーム、軟膏、ゲル、粉剤、ローション、口内洗浄液、パッチが挙げられる。所望の場合、初乳、血清または胎盤から得た本発明の組合せは、例えば制御放出形態において、好ましくはミクロスフェア内で、特定の用途のために被覆されてもよい。
【0067】
製剤は特定の使用に有用である他の成分を含有してもよい。例えば、創傷および潰瘍の処置のために、酸化亜鉛およびアルニカ(Arnica montana)抽出物が適切に加えられてもよい。
【0068】
本発明は、実施例により与えられる、以下の実験部分により詳細に記載されている。
【0069】
[実施例1]
自己免疫疾患
PMF Abの予防的経口投与の効果を、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、I型糖尿病、TNBSにより誘導される潰瘍性大腸炎、ConAにより誘導される肝炎ならびにアジュバントおよびコラーゲンにより誘導される関節炎などの自己免疫疾患の異なるモデルで評価した。
【0070】
[実施例1a]
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)
EAEは、J.St.Louisらに開示されているように6〜7週齢の雌性SJLマウスにおいて誘導させた。1:1のエマルションを得るために0.6mg/mlの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37RA(Difco、Detroit、MI、USA)を含有するCFA中で乳化した、75μgのプロテオリピドタンパク質 PLP(139〜151)(Genemed synthesis、San Francisco CA)でマウスを免疫化した。腋窩部および鼠径リンパ節に近接する4つの部位に200μlのエマルションをscで各マウスに与えた。2μg/mlの濃度にて水に溶解した、共アジュバントとして使用した百日咳毒素(Calbiochem、Nottingham、UK)を、免疫化の0日および2日後に100μlの体積においてipで投与した。臨床評価を以下のスコアに従って実施した:0=疾患の兆候なし、1=弛緩した尾、2=中等度の不全対まひ、3=重度の不全対まひ、4=瀕死、5=死亡。
【0071】
0日から開始して0.1g/マウスの用量にてPMF Abおよびその媒体(水)のそれぞれを、各々マウス6〜10匹の2つの群に経口投与した。
【0072】
PMF Abを0.1mg/mlの濃度にて水に溶解し、0.25mlの最終体積にて投与した。
【0073】
結果
PLP(プロテオリピドタンパク質)および百日咳毒素により誘導されるEAEの発生に対するP.M.F.Abの効果。
【0074】
P.M.F.Ab(25マイクログラム)による処置の42日後、疾患は、媒体で処置したマウスの群において10匹のマウス中の9匹(90%)と比較して6匹のマウス中の2匹のみ(33.3%)で発生した。さらに、P.M.F Abで処置したマウスは、媒体で処置したマウスより、低い平均累積スコアを有する軽度の病気の過程および短期間の疾患を発生した(表8)。
【0075】
【表8】
【0076】
[実施例1b]
I型糖尿病
1型糖尿病(1型DM)は、ランゲルハンスの膵臓ベータ細胞に対する自己反応性Tリンパ球およびマクロファージの免疫反応の結果として内因性インスリン産生の機能不全により引き起こされる多因子症候群である。
【0077】
40mg/kgのストレプトゾトシン(STZ)を7〜8週齢の雄性C57B16Jマウスに5日連続でip投与した。
【0078】
マウス7〜8匹の2つの群を、0日から21日まで1週間に6回、0.2g/マウスの用量にてPMF Abにより、または媒体により経口処置した。PMF Abを0.4mg/mlの濃度にて水に溶解し、0.5mlの最終体積にて投与した。
【0079】
血糖を測定することで、マウスを1週間に1回、検査した。血糖が11,8mmol/Lを超える場合、糖尿病と診断した。
【0080】
結果
予想通り、媒体で処置した対照群に属するマウスは、最後のSTZ注射の2週間後に高血糖症を発生し、3週間以内に100%の発生率に到達した。
【0081】
対照的に、P.M.F.Abによる予防的処置はSTZ誘導性高血糖症からマウスを完全に保護した。
【0082】
0.2g/マウスの用量にて21日間のP.M.F.Abによる処置は、良好な耐容性を示した。
【0083】
[実施例1c]
TNBSにより誘導される潰瘍性大腸炎
この臓器特異的な自己免疫病理に対するP.M.F.Abの起こり得る効果を研究するために、TNBSにより誘導されるIBDの実験モデルを使用した。
【0084】
そのモデルにおいて、TNBSの単回投与は、4日以内に、クローン病および潰瘍性大腸炎などのヒト炎症性腸疾患に見出されるものと非常に類似した臨床免疫組織学的特徴を有する疾患の出現に関与する。
【0085】
大腸炎を、0日にて、0.1mLの50%エタノール中の4mg硫酸トリニトロベンゼン(TNBS)溶液の結腸内単回投与によって体重20〜25gの20匹の雄性Balb/Cマウスにおいて誘導させた。
【0086】
誘導から開始して連続して4日間(0、1、2および3日)、毎日、10匹の動物を0.2g/マウスの用量にてPMF Abにより経口処置し、10匹の動物(対照)を対応する媒体(水)で処置した。
【0087】
動物を4日目に屠殺し、粘膜障害(ADM)を7cmの遠位結腸セグメント上で評価した。マクロ的障害のスコア(SDM)の評価を以下の基準に従って評価した:0=障害なし;1=局所的充血および/または浮腫;2=結腸幅の半分より小さい線状潰瘍;3=結腸幅の半分より大きい線状潰瘍;4=1cmより小さい円状潰瘍;5=1から2cmの円状潰瘍;6=2cmより大きい円状潰瘍。
【0088】
結果
予想通り、対照群において、0日から屠殺の日の間に体重の有意な減少(−18%)、結腸の重量の増加(0.47±0.16g)および結腸粘膜の顕著な障害(平均ADM=68±57mm、表9)が存在した。
【0089】
0.1g/マウスの用量におけるPMF Abによる処置は、壊死領域の有意な減少および結腸重量の減少に対する陽性の傾向を示した。
【0090】
【表9】
【0091】
[実施例1d]
自己免疫肝炎
NMRIマウスにおけるConA誘導性肝炎の実験モデルを使用した。
【0092】
このモデルにおいて、ConAの単回注射は、血漿中のグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)レベルにより評価される、免疫介在性肝臓損傷を発生させるのに十分である。
【0093】
20匹の雄性アルビノNMRIマウス、6〜7週齢に、無菌PBS中の20mg/kgのConA(Sigma Chemical、St.Louis、MO)をivで接種した。
【0094】
ConA接種の24時間前および1時間前に、10匹の動物を0.2g/マウスの用量にてPMF Abにより経口処置し、10匹の動物(対照)を対応する媒体(水)により処置した。
【0095】
ConA注射の8時間後に動物を屠殺し、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼを血漿中で測定した。
【0096】
結果
屠殺後、実際の肝臓障害の兆候を、ConAを注射し、水で処置した対照群の全てのマウスにおいて見出した。これらの動物は、実際に、血漿GPTの顕著な増加があり、1556±869U/Iの平均に到達した(表10)。0.2g/マウスの用量でのPMF Abによる処置は血漿中のGPTレベルを有意に減少させた(スチューデントt検定によりp.01)。
【0097】
【表10】
【0098】
[実施例1e]
マウスDB/1j(CIA)におけるII型コラーゲンにより誘導される関節炎
完全フロイントアジュバント中で乳化した同種または異種のII型コラーゲンの皮内注射により疾患をマウスおよびラットにおいて誘導できる。
【0099】
PMF Abの効果を0.2g/マウスの用量にてPMF Abを試験することにより評価した。有意な臨床パラメータを評価するために一日おきに動物を観察した。
【0100】
40匹の雄性DBA/jlマウス、8〜9週齢を使用した。100μlのフロイント完全アジュバント(CFA)(Sigma、Milano、Italia)中で乳化した100μgのII型ウシコラーゲンエマルションの皮内接種によって疾患を誘導させた。全体積100μlのフロイント不完全アジュバント中の、100μgのII型コラーゲンの皮内接種によって免疫化後の21日目に動物に2回目の追加免疫を与えた。
【0101】
各々動物10匹の4つの群をそれぞれ、接種日から開始して誘導後30日目まで、毎日、PMF Ab(0.2g/マウス)、対応する媒体(無菌PBS)およびデキサメタゾン(0.3mg/kg)により経口処置した。10匹の健康なマウスのさらなる群を加えた(シャム)。関節炎の臨床的指標を、各動物の足(厚さ、膨張/浮腫、1、2またはそれ以上の関節の関与)をスコア付けすることにより評価した。
【0102】
結果
対照群の動物は誘導後29日以内に関節炎関連臨床兆候を発生し、疾患の臨床的スコアおよび足の厚さの両方において漸増を示し、40日で最大値に到達した。処置群および対照群における体重の増加の間に相違は見られなかった。
【0103】
0.2g/マウスの用量でのPMF Abは、誘導後30日から33日まで疾患の臨床的スコアを有意に減少させ(t検定によりp<0.05対媒体)、34日から研究の終わりまで陽性の傾向を有した。
【0104】
同様の結果をアジュバント誘導性関節炎のモデルのLewisラットにおいて得た。
【0105】
[実施例2]
神経因性疼痛
【0106】
[実施例2a]
動物実験
慢性収縮損傷(CCI、BennettおよびXie、1988)のモデルを使用した。なぜならそれは強力なウォラー変性および炎症を生じるからである。さらに、一部の線維は損傷を免れるので、疼痛症状を評価するために行動試験を行うための可能性が依然として存在する。
【0107】
体重20〜25gの9週齢の雄性C57BL/6Jマウスにおいてニューロパシーを誘導させた。バルビツール酸麻酔下で、解剖顕微鏡を用いて、坐骨神経を、右足の中央にて露出させ、3つに分かれた、3つの緩い結紮糸をその周囲に作製する前に、神経鞘循環を注意深く保護した。
【0108】
偽処置した動物(結紮せずに神経を露出させた)を対照として与えた。
【0109】
道具を用いた足底試験を使用して、ラットのために改変したHargreavesの手順に従って温熱性痛覚過敏を評価した。手短に言えば、マウスをプレキシガラスの小さなケージに入れ、一定強度の放射熱源を後足の中心部分の方へ向ける。源の起動から足を引っ込めるまでの時間(秒)を記録した。
【0110】
3週間にわたって損傷の時点から毎日、0.4g/マウスの用量にてPMF Abを経口投与した。
【0111】
結果
結果を以下の表11に報告する。
【0112】
【表11】
【0113】
PMF Abによる処置は、処置の28日目において正常な動物の同じレベルに到達するように既に21日目から希釈剤で処置したニューロパシー動物のものより有意に高い無痛覚の閾値の上昇を導いた。
【0114】
[実施例2b]
ヒトにおける臨床実験
2から3年のヘルペス後のヘルペス後疼痛を患っている、4人の男性および2人の女性の6人の対象を、PMF Abにより経口(10g/日)で30日間、毎日処置した。
【0115】
VAS(視覚的アナログ尺度)を使用して疼痛を主観的に、ならびに疾患に罹患した領域およびその周囲領域のvon Freyフィラメントでの刺激により表される痛覚過敏の試験を使用して客観的に評価した。
【0116】
研究は「オープン」であり、ベースライン(処置開始)から疼痛および痛覚過敏のレベルを評価した。
【0117】
PMF Abで処置した対象は、処置の15日後に6.0から2.0のVASの変化を伴う、主観的な痛覚の改善を受けた。処置の終わり(30日)まで後者の値を維持した。von Freyフィラメントによる刺激(0.05から140gの一連の圧力)の結果、VAS/適用した力の有意に異なる曲線が得られ、処置の20日目から終わりまで痛覚過敏の進行性の改善を示した。
【0118】
[実施例3]
食欲不振の処置
その年齢および身体構造で正常とみなされている人の15から30%の体重を損失している神経性食欲不振症を患っている、年齢が16歳から30歳の間である20人の女性の患者を、経口経路により40gのPMF Abで毎日処置した。深刻な栄養上の問題があるにも関わらず、全ての患者が製品を摂取することを同意したことを示したことは興味深い。なぜなら、これらの患者は、製品自体が、心臓血管、呼吸器および神経学的パラメータに最終的に影響を与える、筋肉質量だけでなく、体脂肪も増加させないことを確認したからである。
【0119】
アジュバント治療の3か月後、50%は体重の30%超を回復し、身体および精神能力の有意な改善をもたらした。血液化学パラメータは正規化した。
【0120】
驚くべきことに、これらの患者の25%はさらに、正常な食事を再開し、体重が完全に回復した。残りの25%は反応しなかった。
【0121】
[実施例4]
骨粗鬆症
P.M.F.Abの効果を、骨形成間葉系幹細胞、骨の前駆体、および骨芽細胞の増殖および分化についてインビトロおよびインビボアッセイにおいて評価した。
【0122】
[実施例4a]
インビトロ試験
増殖
骨芽前駆体モデル(ヒト脂肪組織由来の幹細胞、hASC)として、ヒト骨芽(Saos−2およびMG−63)細胞およびヒト間葉系幹細胞を使用して、細胞増殖に対するP.M.F.Abの効果を評価した。
【0123】
6人のドナーボランティアからASCを単離し(Zuk PAら、2001)、対照培地(ピルビン酸ナトリウム、10%FCS、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシンおよび250ng/mlアンホテリシンBを補足したDMEM)中に維持した。骨芽細胞株Saos−2(ATCC番号:HTB−85)およびMG−63(ATCC番号:CRL−1427)はATCCから購入した。Saos−2およびMG−63をそれぞれ、15%FBSを有するMcCoy’5A(Gibco、Life Technologies)中、および10%FCSを有するDMEM中に維持した。
【0124】
細胞を96ウェルプレート中に播種し、1、3、5および7日目にMTT試験に供し、37℃にて空気中の5%CO2の湿気にある環境中に維持した。PMF Abは、研究した株の全てに対して有効な用量依存的増殖効果を示し、5mg/mlの濃度で上限に達する。
【0125】
[実施例4b]
雌性卵巣摘出ラットにおけるインビボ試験
骨量に対するPMF Abの効果を、ヒト閉経後骨粗鬆症に匹敵する成熟ラットにおける骨減少症の動物モデル(外科的卵巣摘出)において調査した。
【0126】
外科的両側卵巣摘出術に供した5ヶ月齢のSprague−Dawleyラットを使用した。骨量に対するPMF Abの効果を、コンピューター化された骨塩密度(DXA)および骨コンピューター断層撮影法(pQCT)によって平面および容積大腿骨塩密度(BMD)(遠位骨幹端および内側骨幹)の両方を測定することにより評価した。インターロイキン8、RANKL因子およびオステプロテジン(osteprotegine)ペプチドについてのmRNAを骨代謝回転の生化学的マーカーとして評価した。5日/週の間、PMF Abにより経口的(2〜4〜8g/kg)にラットを卵巣摘出術の時間から60日間処置した。BMDおよび骨代謝回転の生化学的マーカーの両方を、処置の前(T0)、間(T30)および終わり(T60)で両方とも評価した。
【0127】
その処置は骨減少症からの用量依存的回復および関連する生化学パラメータの正常化を誘導した。
【0128】
[実施例5]
急性壊死性大腸炎(NEC)の処置
ヒトにおける肉眼的および顕微鏡的病理学的効果と同一である、ブタにおけるNECのモデルを使用した。
【0129】
1.調乳+PMF Abを与えた対象と、調乳のみを与えた対象との比較
調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象は、母ブタの下に維持した対照群のものと匹敵して規則的に成長した。規則的成長の初日の後、誕生から調乳のみを与えた子ブタは、2日目から虚弱、運動失調、自発的な栄養の中断、逆流および下痢を示した。さらに24〜48時間以内の急速な体重損失の後、動物は死んだ。死後に得た大腸の種々の部分の組織病理学検査により、電子顕微鏡法により確認された、致死性の急性壊死性大腸炎の診断が可能となった(図1Aおよび1B)。
【0130】
2.増加させた用量のPMF Abを与えた群の比較
調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象:母ブタの下に維持した対象群のものと完全に匹敵する規則的成長。
【0131】
調乳+1g/日のPMF Abを与えた対象:対象は急速に痩せ、さらに24〜48時間以内に全ての群は死んだ。
【0132】
調乳+5g/日のPMF Abを与えた対象の群:実際の悪液質の状態が起こり、数日以内に全ての群は死んだ。1g/日および5g/日のPMF Abをそれぞれ与えた対象の群から得た大腸のいくつかの部分の組織病理学検査により、この場合もまた、致死性の急性壊死性大腸炎の診断が可能となる。
【0133】
調乳+10g/日のPMF Abを与えた対象の群:下痢が全ての対象において起こる。13日〜14日目に、病理学的症状が突然悪化し、動物は急性壊死性大腸炎の数時間以内に死ぬ。
【0134】
調乳+15g/日のPMF Abを与えた対象の群:あらゆる種類の病理学的症状を観察しない規則的成長だが、成長の能力は、調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象の群からのものよりわずかに低い。
【0135】
調乳+20g/日のPMF Abを与えた対象の群(15日まで維持した):母ブタの下に維持した対象群のものと完全に匹敵する規則的成長。
【0136】
3.調乳+PMF Abを与えた対象と、PMF Ab+糖溶液のみを自由に与えた対象との比較
調合を付加していない、糖溶液+20g/日のPMF Abを自由に与えた子ブタは、あらゆる種類の疾患を有さないが、着実に体重を損失し、調乳の代わりに糖溶液が与えられる栄養物の不十分な供給の兆候がある。これらの個体は最終的に死ぬが、組織病理学検査において結腸は驚くべきことに、急性壊死性大腸炎のあらゆる兆候を有さずに完全に正常である。
【0137】
[実施例6]
皮膚潰瘍の局所処置
全身性疾患に関連しているので処置することが特に困難であることが知られている、足の糖尿病性潰瘍に罹患している10人の患者(6人の男性−4人の女性)を、PMF Abの5%水溶液の局所投与により1日に2回処置した。完全な回復は、2.5から24.5cmの範囲の表面を有する糖尿病性潰瘍を有する7人の患者において4〜6週後に起こり、3人の症例において、初期病変が60%から85%までの程度まで改善した。
【0138】
[実施例7]
口腔病変の処置
遊離形態またはミクロスフェアに組み込まれた形態のいずれかのPMF Abの有効性を臨床試験において試験し、再発性口内炎以外の病的状態を有さない、50人の患者(年齢が18から43歳の間の男性、平均年齢28.73歳)を、研究のI群(PMF Abの5%水溶液の局所適用、1日に3回)(25番)および対照のII群(2分間、1日に3回、塩酸ベンジダミンでリンスする)に登録した。
【0139】
潰瘍のサイズ、疼痛(VASスコアを用いた)および処置の達成の程度を評価した。PMF Abの局所投与の結果、I群において2〜4日以内に8人の患者、10人の患者において4〜7日以内、残りの7人の患者において7〜10日以内に完全な潰瘍の解消が生じた。対照のII群において、2〜4日以内に3人の患者、9人の患者において4〜7日、残りの10人の患者において7〜10日以内にアフタ性潰瘍が完全に治癒し、3人の患者は依然として疾患を患っていた。2つの群における潰瘍の平均サイズは、対象群(II)と比較して研究群(I)について4日目から著しく減少した。
【0140】
[実施例8]
イヌにおける角膜病変の治療
羞明、流涙、眼瞼痙攣を有した5匹のイヌで研究を実施した。イヌは、遺伝子型外傷(異物、ネコひっかきなどによる損傷)に起因して角膜病変を有した。
【0141】
5%PMF Abを含有する点眼薬を、8〜10日間、結膜点眼により1日に2回投与した。
【0142】
結果
2つの表在性潰瘍、1つの再発性無痛潰瘍および2つの深部潰瘍を、試験下の5匹のイヌにおいて検出した。
【0143】
角膜損傷の治癒が全ての対象において起こった。治癒は、病変の完全な治癒およびフルオレセイン試験の陰性化(negativisation)、ならびに臨床実験において報告されている症状(目瞼痙攣、羞明、流涙)の消失を意味する。全ての症例において、他の処置(例えば局所コルチコステロイド)または任意の他の治療剤を使用していないにも関わらず、動物の視力も保護することができ、永続的な瘢痕性白斑を観察しなかった。
【0144】
回復期間の平均は6日であった。潰瘍の治癒に加えて、恐らく角膜縁幹細胞のものと同様の効果に起因して、PMF Abはまた、二次感染の発生を防ぐ、抗菌剤として、および残存瘢痕を有さずに完全な創傷治癒をもたらす、抗炎症剤としても作用していることは留意すべきである。
【0145】
[実施例9]
脱毛症の処置
脱毛症は、好ましくは、退行期において毛球に作用する第1の局所組成物および毛髪再成長の成長期を刺激する第2の局所組成物を連続して投与することによって、PMF Abにより効果的に防がれ、処置され得る。
【0146】
第1の局所製剤は、従来の添加剤に加えて、活性成分として油性樹脂トウガラシ、ビタミンPPおよびカフェインを含む。第1の組成物の投与から15から30分後、頭皮に投与される第2の組成物は、部分的に遊離形態で、特にミクロスフェアに封入されているPMF Abならびにセリシン、アロエベラ抽出物、カフェイン、メラトニンおよびパンテノールから選択される他の成分を含む。適切な製剤の例は以下に報告されている:
1 前処置
油性樹脂トウガラシ0.05%
ビタミンPP0.20%
カフェイン0.01%
添加剤qs
2 処置
P.M.F.Ab 10.00%
マイクロカプセル化したP.M.F.Ab 2.5%
セリシン1.00%
アロエ1.00%
パンテノール0.20%
メラトニン0.005%
カフェイン0.01%
添加剤qs
特に春および秋において、再発性脱毛(休止期)の30の症例で製剤を臨床的に試験した。脱毛は男性の88%および女性の75%において防がれた。
【0147】
化学治療を受けていた20人の患者(乳癌を有する女性)において、患者の12%のみが脱毛し、20%は髪が薄くなったが、抜けず、全ての症例において、副作用を有さなかった。
【0148】
製剤をまた、急激な脱毛を有する10人の患者、慢性脱毛を有する10人の患者、円形脱毛症を有する5人の患者、アンドロゲン性脱毛症を有する40人の患者および瘢痕性脱毛症を有する7人の患者において試験した。
【0149】
急激な脱毛において、8人の女性患者および2人の男性患者の治療に対する反応は変化した。
【0150】
1日に1回の製品の投与から2カ月後、脱毛の明確な減少が、8人の患者(7人の女性−1人の男性)において検出され、治療の3ヶ月目に1人の症例(男性)のみにおいて中等度の回復を有し、一方、残りの2人の症例(それぞれ男性および女性)において、状況は変化しなかった。
【0151】
慢性脱毛において、治療した10人の症例(9人の女性および1人の男性)中、8人の患者が処置の2カ月後に軽減した。2人の患者は治療に反応しなかった。
【0152】
円形脱毛症において、処置した対象(5人の患者、3人の女性および2人の男性)全てが治療の2ヶ月後にほとんどまたは全く反応しなかった。
【0153】
アンドロゲン性脱毛症に罹患していた40人の対象(30人の男性および10人の女性)を処置した。治療の2ヶ月後、処置した30人の症例において、脱毛の減少および毛髪の出現の改善が、より大きな直径の容量、より多い体積およびより高い艶の毛髪により定量化できる。
【0154】
他の10人の症例において、臨床状態は変化していないままであった。
【0155】
瘢痕性脱毛症の7人の症例(4人の女性および3人の男性)において、強い感覚のかゆみを有する皮膚の炎症反応も存在し、反応は治療の1ヶ月後に驚くべきことであった。
【0156】
かゆみの低減およびさらに消失、皮膚刺激形態の減衰および脱毛症の安定化が生じた。
図1A
図1B