【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51は、
図1に示すように、
海流のある海域WEの海中に配置されるとともに、複数(例えば10台以上)の第1浮体(フロート)52により海中に浮かぶように支持され、かつ、錐体53と繋留ロープ54とからなるアンカー55を介して海底に繋留されて、海流を利用して発電する複数(例えば10台以上)の水車羽根型発電装置56と、前記海域WEの海面に浮かべ、例えば錐体53と繋留ロープ54とからなるアンカー57を介して海底に繋留される例えば1基の第2浮体(メガフロート)58と、第2浮体58上に配置した前記各水車羽根型発電装置56から電力ケーブル59を経て送電される発電電力を利用し、海水Wを取り込んで海水Wの電気分解を行い、水素ガスを生成する前記水車羽根型発電装置56と同数で一対一に対応する電界手段81(又は周波数の調整が不要となる数の電界手段81)を備える海水電気分解装置60と、生成した水素ガスを例えば−253℃の低温条件下で液体水素に変換する水素液化装置61と、液体水素を貯留する液体水素タンク62と、前記液体水素タンク62に貯留された液体水素を収容して陸地に向けて海上運搬する水素運搬船舶71と、前記水素運搬船舶71が接岸する陸地内部配置され、前記水素運搬船舶71から供給される液体水素を貯留する陸上液体水素タンク72と、前記陸上液体水素タンク72から供給される液体水素を収容する小型ボンベ73と、この小型ボンベ73を工場、一般家庭等の各種の需要者75宛に陸上運搬する水素運搬車両74と、を含む構成としている。
【0028】
本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51においては、前記第1浮体52、アンカー55、水車羽根型発電装置56を一組として、
図1に示すように、前記海域WEの海中に複数組(
図1には4組のみ示す)配置している。この場合の配置組数は、特に限定するものではない。
なお、
図1には水車羽根型発電装置56の数を4個図示しているが、実際には水車羽根型発電装置56の数を10個以上として実施し、各浮体の設置数もそれに応じて増加させることができる。
【0029】
例えば、海中で水車羽根型発電装置56が安定化するように存在する多数の第1浮体52により、水車羽根型発電装置56が上方に引っ張られ、海中に浮かぶように支持され、かつ、アンカー55を介して海底に繋留されて、第1浮体52とアンカー55により、水車羽根型発電装置(回転羽根と発電部)設置部が上下に引っ張られ安定化する状態で、例えば広範囲な1Kメートル四方の海域WEにN組(Nは正の整数)、例えば500組配置する例等を挙げることができる。
【0030】
また、前記第2浮体58には、例えば床面積(横)100M×(長さ)200Mの寸法を有する広面積に構成している。
前記海水電気分解装置60は、後述するように海水Wの取り込み口63と、電気分解処理後の海水Wの排水口64とを備えている。
【0031】
次に、前記水車羽根型発電装置56について、
図2乃至
図6を参照して説明する。
【0032】
前記水車羽根型発電装置56は、四角筒状の筐体1内に、外周が12面体に形成された回転体としてのドラム体2と、このドラム体2の両側面にそれぞれ固定されたドラム体2の一部を構成する側板3とを配置するとともに、前記筐体1上に発電機30を固定配置している。
【0033】
前記側板3の外径は、ドラム体2の外径より大きく形成されている。側板3は回転軸4に固定具5で固定されている。側板3のドラム体2より上方に突出した部分には12面体にそれぞれ対応して軸受6が固定されている。
【0034】
前記ドラム体2には、
図2、
図6(a)、(b)に示すような羽根10が取付けられている。羽根10は、短い長さのストッパ部11と、このストッパ部11より立ち上がった流体受け部12とからなり、支軸13に固定具14により固定されている。
【0035】
前記支軸13の両端部は、相対向して配設された前記軸受6に回転自在に支承されている。
【0036】
前記流体受け部12は、ストッパ部11がドラム体2に当接して起立した時は、流体を多く受けるように、流体受け面側はR形状に窪んだ形状となっている。
【0037】
また、前記流体受け部12は、
図2に示すように、羽根10が倒れた場合、倒れる側の羽根10のストッパ部11と流体受け部12の下方部を覆う長さとなっている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、前記羽根10が取付けられたドラム体2の回転軸4は、底板20の両側に固定された側板21に軸受22を介して回転自在に支承されている。
【0039】
また、両方の側板21上には天板23が固定されている。すなわち、底板20、側板21及び天板23で装置の筐体1を構成している。
【0040】
前記天板23の前端部には、内側に傾斜して流体ガイド板24が固定されている。
【0041】
ここで、流体ガイド板24は、流れ方向Aの海流を回転軸4より下方の羽根10に導くように傾斜した長さとなっている。
【0042】
前記天板23上には、発電機30の入力軸31が前記回転軸4と平行になるように発電機30が固定されている。
【0043】
前記回転軸4の一端部及び入力軸31には、それぞれ歯車32、33が固定されており、歯車32、33にはチェーン34が掛け渡されて、動力伝達部を構成している。
【0044】
また、入力軸31の途中に、ギヤを用いた増速機35を配置し、ドラム体2の回転を増速して入力軸31に伝達し、発電機30のロータ(図示せず)を回転駆動するように構成している。
【0045】
すなわち、ドラム体2の回転よりも発電機30のロータの回転が高速となるように構成している。
【0046】
具体的数値例について考察すると、海流Wの流速を約2m/秒、ドラム体2の直径を5mとすると、ドラム体2の回転数は、(2m×60)/(ドラム体2の直径×3.14)=7.6(rpm)となる。
【0047】
このため、増速機35の増速率を約7倍程度として、発電機30のロータの回転数を50(rpm)、発電電力10Vとなるような仕様とすることが好適となる。
【0048】
この結果、3.2%〜3.8%の塩分濃度の海水Wを電気分解する際の電力利用効率を高めることが可能となる。
【0049】
なお、前記水車羽根型発電装置56において、前記ストッパ部11から流体受け部12の直線部の角度は102.27度、流体ガイド板24は、天板23に対する角度θは30度〜45度、好ましくは35度である。
【0050】
次に、本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51における前記水車羽根型発電装置56の海流を利用した発電時の作用及び効果について説明する。
【0051】
前記流体ガイド板24が海水Wの流れ方向Aに向くように、前記筐体1を第1浮体52により支持して海中に配置する。
【0052】
前記流体ガイド板24に導かれた海水W及び流体ガイド板24の下方を流れる海水Wは、回転軸4より下方の各羽根10の流体受け部12に当たり、ドラム体2及び回転軸4は矢印B方向に回転駆動される。
【0053】
前記回転軸4の回転は、歯車32、33及びチェーン34を経て前記増速機35、入力軸31に伝達され、発電機30のロータが回転し、これにより、発電機30による発電電力が前記電力ケーブル59を経て海水電気分解装置60に送電され、海水Wの電気分解の電源として利用される。
【0054】
また、前記流体受け部12は、ストッパ部11より長くて重いので、回転軸4より上方の各羽根10は自重により自然に倒れる。
【0055】
すなわち、前記各羽根10が倒れると、これらの羽根10の流体を受ける流体受け面積が著しく小さくなるので、復動側では抵抗が軽減する。
【0056】
また、前記羽根10が倒れた場合、流体受け部12が次の羽根10のストッパ部11と流体受け部12の下方部を覆うので、流体受け部12がストッパ部11に当接する。この点からも復動側では羽根10の海水Wに対する抵抗は軽減される。
【0057】
前記水車羽根型発電装置56によれば、上記効果の他に、流体ガイド板24によって海水Wがドラム体2の下方側に流れるので、羽根10を含むドラム体2の中に海水W中の泥、砂、ゴミ等が溜まらないという効果も得られる。
【0058】
また、ドラム体2は、単純な形状よりなり、更にストッパ部11及び流体受け部12は同一部材で製作できるので、装置の大幅なコストダウンを図ることができる。
【0059】
次に、前記海水電気分解装置60について
図7乃至
図13を参照して説明する。
【0060】
前記海水電気分解装置60は、
図7に示すように、液体活性化装置101と、電解質溶液である海水Wを電気分解する既述したように複数の電解手段81とを具備している。
【0061】
前記液体活性化装置101について、
図10乃至
図13を参照して詳述する。
【0062】
前記液体活性化装置101は、
図10、
図11に示すように、複数種類の金属酸化物の粉体を高温で焼結させた黒体放射焼結体121と、複数個の磁石123をN極とS極を互いに交互配置に積層し、これらの積層された磁石123を貫通する電磁波通過穴125を形成して、前記黒体放射焼結体121より放射される電磁波を一定の波長に収束させつつ通過させる電磁波収束体124と、を具備する液体活性体120と、前記黒体放射焼結体121を外側、電磁波収束体124を内側とし、電磁波収束体124の内側に前記電磁波による液体の活性化領域Eを形成するように一体化させた組立体122A、122Bと、を備え、前記取り込み口63から取り込んだ海水Wを活性化領域E内に配置したパイプP内を流通させ、海水(電解質溶液)Wの液体部分を活性化し、後段の電解手段81に送るように構成している。
【0063】
前記液体活性化装置101について更に詳述する。
【0064】
前記液体活性化装置101は、パイプPの外周に2個一対の組立体122A、122Bを配設している。
【0065】
前記組立体122A、122B内には、ステンレス製のカバー130内に固定された複数個の液体活性体120を配置している。
【0066】
前記カバー130は、円弧状の外壁部131と、この外壁部131の両側端よりパイプP側に伸びた側壁部132と、この側壁部132よりパイプPより外側に直角に伸びた固定部133とから形成されている。液体活性体120は、エポキシ樹脂140でカバー130に一体的に固定されている。
【0067】
このような構成よりなる組立体122A、122Bは、パイプPの外周に配設され、固定部133にボルト141、142を通し、ナット143、144で締め付けることによりパイプPに対して一体的に配置される。
【0068】
前記液体活性体120は、電磁波を放射する黒体放射焼結体121と、この黒体放射焼結体121より発生した電磁波を特定の波長に収束させる電磁波収束体124とからなっている。
【0069】
前記黒体放射焼結体121は、複種類の金属酸化物を粉体化し、1000〜1400℃で焼結処理して形成されている。
【0070】
前記金属酸化物の原料としては、次の7種の原料であるコバルト(Cobalt)、ニッケル(Nickel)、マンガン(Manganese)、銅(Copper)、鉄(Iron)、ボロン(Boron)、アルミニウム(Aluminium)を主成分としている。そして、これらに次のネオジウム(Neodymium)、プラセオジウム(Praseodymium)、イットリウム(Yttrium)、ランサニウム(Lanthanum)、セリウム(Cerium)、サマリウム(Samarium)、ユウロピウム(Europium)、ガドリニウム(Gadolinium)、テルビウム(Terbium)、ディスプロシウム(Dysprosium)、ホルミウム(Holmium)、エルビウム(Erbium)、ツリウム(Thulium)、イッテルビウム(Ytterbium)、ルテチウム(Lutetium)、クロミウム(Chromium)の内の5種の金属酸化物を混合、すなわち計12種の金属酸化物を混合して形成する。
【0071】
前記電磁波収束体124は、
図12、
図13に示すように、リング状の磁石123を2つに分割した分割磁石123a、123bとなっており、この分割磁石123a、123bを多層(本実施例では8層)に積層して形成されている。
【0072】
前記磁石123は、N極とS極を互いに交互に配置し、各磁石123は非磁性体被覆126で一体的に結合されている。
【0073】
これにより、電磁波収束体124の中央には、直径1mm以下の微細な電磁波通過穴125が形成されるように構成している。
【0074】
前記黒体放射焼結体121から放射される電磁波を電磁波通過穴125通過させて収束しつつ前記液体の活性化領域Eに導くようになっている。
【0075】
前記電磁波収束体124としては、上述した場合の他、図示しないが、平板磁石をN極とS極が互いに交互になるように配置した多層(例えば8層)に積層し、非磁性体被覆を用いて一体化するとともに、直径1mm以下微細な電磁波通過穴を多数貫通配置に設けた構成とすることもできる。
【0076】
次に、前記電解手段81について説明する。
まず、一台の電解手段81について説明すると、前記電解手段81は、
図7に示すように、マイナス電極83としてチタン電極又は白金電極を、プラス電極84として白金電極を使用し、上述した液体活性化装置101から送られてくる液体部分が活性化された海水Wを入れる電解用容器82と、可変直流電圧(例えば直流0V〜500V)を前記マイナス電極83、プラス電極84に印加する可変電圧直流電圧源85と、電界電流を測定する電流計86と、を備えている。
【0077】
更に、前記電解手段81は、前記マイナス電極83であるチタン電極に紫外線を照射し、チタン電極の外面に酸化チタン層83aを形成する紫外線照射源87を備えている。
【0078】
そして、前記マイナス電極83に紫外線照射源87から紫外線を照射しつつ電解用容器82内で液体部分が活性化された海水Wの電気分解を行うように構成している。
【0079】
前記マイナス電極83としてチタン電極を用いる場合、チタン電極をガスバーナー等で加熱酸化すると、表面に酸化チタン層83aが形成されて、この酸化チタン層83aに紫外線照射源87から紫外線を照射すると、この紫外線のエネルギー分が酸化チタン層83aの表面において海水Wの電気分解を促進し、その分、電気分解量が増加されるものである。
【0080】
電気分解時の電気エネルギー消費量(消費電力)は、(電圧)×(電流)で表されるので、海水Wの電気分解の開始電圧が紫外線を照射しない場合に比べ低下すると考えられる。
【0081】
このようにして、電解手段81により海水Wの電気分解を行うことにより、電解用容器82内のマイナス電極83側でマイナス電極反応として水素ガス(H
2ガス)が生成する。
【0082】
生成した水素ガスは、集気筒86を経て後段の水素液化装置61に送られ、ここで低温で液化されて液体水素に変換され、更に後段の液体水素タンク72に送られて貯留されていく。
【0083】
また、電解手段81による電気分解処理が終了した海水Wは、前記排水口64から海中に放水される。
【0084】
本実施例においては、上述した構成の海水電気分解装置60における電解手段81を、前記水車羽根型発電装置56と同数N(Nは正の整数)で一対一に対応する数(又は各水車羽根型発電装置56による発電電力の周波数の調整が不要となる数)備えている。例えば、前記水車羽根型発電装置56が500台であれば、電解手段81も500台、前記水車羽根型発電装置56が100台であれば、電解手段81も100台備えている。なお、
図7には3台のみを図示する。
【0085】
そして、一台の液体活性化装置101から複数の電解手段81に活性化した海水Wを送る構成としている。
【0086】
次に、
図8、
図9を参照して海水電気分解装置60における上述した電解手段81とは別構成の電解手段81Aについて概説する。
【0087】
図8、
図9に示す電解手段81Aは、N台の小型電気分解槽91をユニット化したものであり、各水車羽根型発電装置56の発電電圧を各々直流電圧に変換し、各小型電気分解槽91内の海水W中に配置した各マイナス電極83、各プラス電極84に印加して、各小型電気分解槽91内で海水Wの電気分解を実施し、各マイナス電極83側でマイナス電極反応として水素ガス(H
2ガス)を生成させ、この水素ガスを各小型電気分解槽91に配置した各集気筒92により収集し、これらをまとめて後段の水素液化装置61に送り、ここで低温で液化して液体水素に変換し、更に後段の液体水素タンク72に送って貯留するように構成したものである。
【0088】
なお、
図8には小型電気分解槽91のみの配置形態を示す。また、
図8、
図9においては紫外線照射源87に関しては図示省略する。
【0089】
このような複数の水車羽根型発電装置56と同数の小型電気分解槽91を備える電解手段81Aを採用することで、個々に異なる水車羽根型発電装置56の発電電力の周波数の違いを調整する必要も無く、送電損失の問題もなく、更に、複数の水車羽根型発電装置56のうちのいずれかが故障しても1基分の小型電気分解槽91を停止するだけで済むのでその影響を最小限に抑えることができる。
【0090】
図14は、本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム1の水素エネルギー供給処理の全体の流れを示すものである。
【0091】
すなわち、本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム1は、海流を利用して各水車羽根型発電装置56により発電し、また、各水車羽根型発電装置56と繋がっている各海水電気分解装置60に海水Wを取り込んで、液体活性化装置101により既述したように活性化し、各電解手段81に送る。
【0092】
そして、各水車羽根型発電装置56からの発電電力を各々利用して、各電解手段81によって、前記液体活性化装置101により活性化した海水Wを電気分解し、マイナス電極反応で水素ガスを生成する。
【0093】
次に、生成した水素ガスを集めて水素液化装置61により液化し、液体水素タンク62に貯留する。
【0094】
更に、前記液体水素タンク62に貯留した液体水素を、水素運搬船舶71に収容して海上運搬を行い陸地に配置した陸上液体水素タンク72に貯留する。
【0095】
次に、前記陸上液体水素タンク72から供給される液体水素を小型ボンベ73に収容して、水素運搬車両74にて陸上運搬し需要者75宛に届ける。
【0096】
前記需要者75としては、各種工場、店舗、一般家庭等の例を挙げることができ、届けられた液体水素は、需要者75における例えば燃料電池による発電用水素エネルギー源や燃料電池自動車用の水素エネルギー源等として有効に利用される。
【0097】
なお、前記電解手段81による海水Wの電気分解時に同時に発生する塩素ガスも有効に利用することが可能である。
【0098】
図15は、
図1に示す本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51の変形例である水素エネルギー供給システム51Aを示すものである。
【0099】
図15に示す変形例の水素エネルギー供給システム51Aにおいて、
図1に示す水素エネルギー供給システム51の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0100】
図15に示す変形例の水素エネルギー供給システム51Aは、海域WEに前記第2浮体58と同様に構成した単一の浮体151を浮かべ、水車羽根型発電装置56を吊り下げロープ152を用いて前記浮体151により吊り下げ支持する構成とし、かつ、
図1に示す実施例と同様、複数の第1浮体52により海中に浮かぶように支持され、かつ、錐体53と繋留ロープ54とからなるアンカー55を介して海底に繋留されて、海流を利用して発電する複数の水車羽根型発電装置56を付加したことが特徴である。
【0101】
なお、
図15には4台水車羽根型発電装置56を付加した構成を示すが、その設置個数は100台、500台等種々に変更でき、特に限定するものではない。
また、
図15には水車羽根型発電装置56の数を5個図示しているが、実際には水車羽根型発電装置56の数を10個以上として実施し、各浮体の設置数もそれに応じて増加させることができる。
【0102】
この他の構成は
図1に示す実施例に係る水素エネルギー供給システム51の場合と同様である。
【0103】
変形例の水素エネルギー供給システム51Aの場合も、1台の水車羽根型発電装置56を吊り下げロープ152を用いて浮体151により吊り下げ支持する構成を採用して、実施例に係る水素エネルギー供給システム51の場合と同様な作用、効果を発揮させることができる。
【0104】
図16は、
図1に示す本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51の各要素を、前記海域WEに複数箇所(
図16には3箇所のみ示す)分散配置した例を示すものである。
なお、
図16には、夫々の水素エネルギー供給システム51の各水車羽根型発電装置56の数を4個ずつ図示しているが、実際には水車羽根型発電装置56の数を10個以上として実施し、各浮体の設置数もそれに応じて増加させることができる。
【0105】
本発明に係る分散配置する水素エネルギー供給システム51の設置箇所は、特に限定されるものではなく、10箇所、50箇所、100箇所、500箇所、1000箇所等、設置規模に応じて任意箇所とすることで、システム構成の拡張を図ることができる。
【0106】
このように前記水素エネルギー供給システム51を多数分散配置することで、大量の水素エネルギーである液体水素を得て数多くの需要者75に届け、有効に活用することが可能となる。
【0107】
変形例の水素エネルギー供給システム51Aを
図16に示す場合と同様に前記海域WEに複数台分散配置することによっても、上述した場合と同様、システム構成の拡張、大量の水素エネルギーの供給を実現できることはいうまでもない。
【0108】
以上説明した本実施例の海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51(又は水素エネルギー供給システム51A)によれば、海流を利用して簡略構成の水車羽根型発電装置56で発電した電気エネルギーを利用して海水Wを効率よく水素エネルギーに変換し、更に、液体水素として需要者75に供給することによって、発電電力の周波数変換や、送電損失の問題もなく、全体として経済性に極めて優れるという優れた効果を発揮させることができる。
【0109】
次に、
図17を参照して本実施例に係る海流発電を利用した水素エネルギー供給システム51の更に別の変形例である水素エネルギー供給システム51Bについて説明する。
【0110】
図17に示す別の例の水素エネルギー供給システム51Bにおいて、
図1に示す水素エネルギー供給システム51の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0111】
図17に示す別の変形例の水素エネルギー供給システム51Bは、
海流のある海域WEの海中に配置されるとともに、複数(例えば10台以上)の第1浮体(フロート)52により海中に浮かぶように支持され、かつ、錐体53と繋留ロープ54とからなるアンカー55を介して海底に繋留されて、海流を利用して発電する直流発電機を備える複数(例えば10台以上)の水車羽根型発電装置56と、前記海域WEの海面に浮かべ、例えば錐体53と繋留ロープ54とからなるアンカー57を介して海底に繋留される例えば1基の第2浮体(メガフロート)58と、第2浮体58上に配置した前記各水車羽根型発電装置56の各直流発電機が並列接続された電力ケーブル161を経て送電される発電電力を利用し、海水Wを取り込んで海水Wの電気分解を行い、水素ガスを生成する電界手段81(又は周波数の調整が不要となる数の電界手段81)を備える海水電気分解装置60と、生成した水素ガスを例えば−253℃の低温条件下で液体水素に変換する水素液化装置61と、液体水素を貯留する液体水素タンク62と、を有している。
【0112】
図17に示す別の変形例では、直流発電機を備える複数の水車羽根型発電装置56を一方側5台、他方側5台にグループ分けし、一方側の5台の水車羽根型発電装置56の各直流発電機を一本目の電力ケーブル161に対して並列接続して、この電力ケーブル161により第2浮体58に送電し、同様に、他方側の5台の水車羽根型発電装置56の各直流発電機を二本目の電力ケーブル161に対して並列接続して、この電力ケーブル161により第2浮体58に送電する構成を示している。
【0113】
更に、前記第2浮体58には、二本の電力ケーブル161からの送電電力を基に水素ガスを生成する二台の海水電気分解装置60、60を配置し、これら二台の海水電気分解装置60、60が生成する水素ガスを各々前記水素液化装置61に送るように構成している。
【0114】
なお、複数の水車羽根型発電装置56のグループ分けは、上述した例に限定されるものでないことはもちろんである。
【0115】
図17に示す変形例の水素エネルギー供給システム51Bは、更に、
図1に示す場合と同様、前記液体水素タンク62に貯留された液体水素を収容して陸地に向けて海上運搬する水素運搬船舶71と、前記水素運搬船舶71が接岸する陸地内部配置され、前記水素運搬船舶71から供給される液体水素を貯留する陸上液体水素タンク72と、前記陸上液体水素タンク72から供給される液体水素を収容する小型ボンベ73と、この小型ボンベ73を工場、一般家庭等の各種の需要者75宛に陸上運搬する水素運搬車両74と、を含む構成としている。
【0116】
次に、
図17に示す別の変形例の水素エネルギー供給システム51Bの作用、効果について説明する。
【0117】
前記水素エネルギー供給システム51Bによれば、既述した実施例の水素エネルギー供給システム51の場合と同様な効果を奏する。
【0118】
加えて、前記水素エネルギー供給システム51Bによれば、各グループの各水車羽根型発電装置56において、各々直流発電機を含む構成とし、各直流発電機を電力ケーブル161に対して並列接続しているので、海中における送電系統の簡略化を図れるとともに、グループ中の一台又は二台等の水車羽根型発電装置56が故障したり、メンテナンスのため停止したりしたような場合でも、残余の水車羽根型発電装置56により発電電力を支障なく第2浮体58に送電することができ水素エネルギーの生成に支障をきたすことはなく、前記水素エネルギー供給システム51Bの円滑運用に寄与することができる。
【0119】
また、各水車羽根型発電装置56を統合して電力ケーブル161により発電出力を纏めて第2浮体58に送電する構成を採用しているので、第2浮体58上の海水電気分解装置60の数を水車羽根型発電装置56の数に比較し大幅に少なくすることができ、前記水素エネルギー供給システム51Bのシステム構成を大幅に簡略化することが可能となる。