特許第6139625号(P6139625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許61396252つの成分から成るペーストを混合するためのペースト塗布システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139625
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】2つの成分から成るペーストを混合するためのペースト塗布システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20170522BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20170522BHJP
   B05C 17/005 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61B17/58
   A61F2/28
   B05C17/005
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-185959(P2015-185959)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-101483(P2016-101483A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】10 2014 113 816.3
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グレイナー クレメンス
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−096821(JP,A)
【文献】 特表2009−506851(JP,A)
【文献】 特開2005−224606(JP,A)
【文献】 米国特許第05411180(US,A)
【文献】 米国特許第04676410(US,A)
【文献】 米国特許第06308868(US,B1)
【文献】 特開昭61−092673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61F 2/28
B05C 17/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの出発成分を貯蔵するための、およびペーストを生成するために前記2つの出発成分を混合するための、および前記ペーストを塗布するための、ペースト塗布システムであって、
軸線方向にシフト可能な2つの供給プランジャ(6)を有する2成分カートリッジ(1)と、
2つの杵部(14)が取り付けられた軸線方向に移動可能な第1のプランジャ(12)がその内部に配置された、開いた前面と少なくとも部分的に閉じた後面とを有する第1の中空円筒体(10)であって、前記開いた前面が軸線方向に前記2成分カートリッジ(1)に接触するように適切に配置された第1の中空円筒体(10)と、
手動でシフト可能な第2のプランジャ(26)を収容する第2の中空円筒体(24)と、
液体容器(34)と、
を備え、
前記第2の中空円筒体(24)は、第1の管路手段(32)によっておよび第1の逆止弁(30)によって、前記液体容器(34)に液体透過的に接続されるかまたは接続可能であり、前記第1の中空円筒体(10)は、第2の管路手段(20)によっておよび第2の逆止弁(22)によって、前記第2の中空円筒体(24)に液体透過的に接続されるかまたは接続可能であり、
軸線方向に隣接して配置された前記2成分カートリッジ(1)および前記第1の中空円筒体(10)は、軸線方向に移動可能な複数の前記杵部(14)と共に、圧力容器(16)内に配置され、
前記液体容器(34)と、前記第1の管路手段(32)と、前記第2の管路手段(20)と、前記第1の逆止弁(30)と、前記第2の逆止弁(22)と、前記第1のプランジャ(12)が界接する前記第1の中空円筒体(10)の内部空間と、前記第2のプランジャ(26)が界接する前記第2の中空円筒体(24)の内部空間とによって前記液体用の中空空間が前記ペースト塗布システム内に形成され、前記液体用の前記中空空間内に液体が存在するかまたは前記液体用の前記中空空間に液体を充填可能である、
ペースト塗布システム。
【請求項2】
前記ペースト塗布システムは、前記2成分カートリッジ(1)の前記供給プランジャ(6)とは反対側の端部に配置されるかまたは取り付け可能な、静的ミキサー(3)が組み込まれた吐出管(2)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のペースト塗布システム。
【請求項3】
前記圧力容器(16)は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のペースト塗布システム。
【請求項4】
前記液体容器(34)は、容量補償要素を備え、好ましくは軸線方向にシフト可能な第3のプランジャ(36)を容量補償要素(36)として備える、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項5】
前記液体容器(34)の前記容量補償要素(36)の前記液体用の領域とは反対側上に、特に前記第3のプランジャ(36)上に、張力が掛けられた圧縮ばね(38)が配置されて、前記容量補償要素(36)を前記液体容器(34)の方向に押し、特に前記第3のプランジャ(36)を前記液体容器(34)内で軸線方向に移動させ、液体を前記第1の管路手段(32)および前記第1の逆止弁(30)を通して前記第2の中空円筒体(24)に押し込む、ことを特徴とする請求項4に記載のペースト塗布システム。
【請求項6】
前記2成分カートリッジ(1)と前記軸線方向に移動可能な杵部(14)との間の空間が周囲雰囲気に気体透過的に接続されるように、前記第1の中空円筒体(10)の開口部(17)に気体透過的に接続される前記圧力容器(16)のジャケット面に前記開口部(17)が設けられる、ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項7】
前記液体容器(34)と、前記第1の管路手段(32)と、前記第2の管路手段(20)と、前記第1の逆止弁(30)と、前記第2の逆止弁(22)と、前記第1のプランジャ(12)が界接する前記第1の中空円筒体(10)の前記内部空間と、前記第2のプランジャ(26)が界接する前記第2の中空円筒体(24)の前記内部空間とによって形成された前記液体用の前記中空空間に接続される液体追加用の少なくとも1つの閉鎖可能な開口部(40)が設けられ、液体追加用の前記開口部(40)は、好ましくは前記液体容器(34)に配置される、ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項8】
前記液体容器(34)と、前記第1の管路手段(32)と、前記第2の管路手段(20)と、前記第1の逆止弁(30)と、前記第2の逆止弁(22)と、前記第1のプランジャ(12)が界接する前記第1の中空円筒体(10)の前記内部空間と、前記第2のプランジャ(26)が界接する前記第2の中空円筒体(24)の前記内部空間とによって形成された前記液体用の前記中空空間に接続される少なくとも1つの閉鎖可能な換気用開口部(18)が設けられる、ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項9】
前記第1の中空円筒体(10)の前記閉じた後面は湾曲し、前記閉鎖可能な換気用開口部(18)は前記湾曲部に配置される、ことを特徴とする請求項8に記載のペースト塗布システム。
【請求項10】
前記2成分カートリッジ(1)、前記第1の中空円筒体(10)、および前記第2の中空円筒体(24)は、ハウジング(42)内に配置され、前記第1の管路手段(32)、前記第1の逆止弁(30)、前記第2の管路手段(20)、および前記第2の逆止弁(22)も前記ハウジング(42)内に配置されることが好ましい、ことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項11】
前記液体は、視認可能な気泡なしに前記液体用の前記中空空間に存在しておよび/または、前記液体に含まれる気体体積は、5%未満、好ましくは1%未満である、ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項12】
前記圧力容器(16)と前記2成分カートリッジ(1)の外壁との間の距離、および前記圧力容器(16)と前記第1の中空円筒体(10)の外壁との間の距離は、100μm未満、好ましくは50μm未満である、ことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項13】
前記圧力容器(16)は、アルミニウム、アルミニウム合金、および高性能プラスチックから選択される材料、好ましくは熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンから選択される材料から成る、ことを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項14】
液透過性の第3の管路手段および手で可逆的に閉じることができる第3の弁は、前記第1の中空円筒体(10)を前記液体容器(34)に接続する、ことを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項15】
前記第1のプランジャ(12)の前記前面と前記第2のプランジャ(26)の前記前面との面積比は、少なくとも10対1、好ましくは少なくとも20対1、特に好ましくは少なくとも30対1である、ことを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項16】
前記2成分カートリッジ(1)は、前記カートリッジの内部空間を2つ備え、前記2つの供給プランジャ(6)は、前記カートリッジの前記2つの内部空間内で軸線方向に移動可能であり、好ましくは、前記カートリッジの第1の内部空間は、前記カートリッジの第2の内部空間を同軸に包囲する、ことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【請求項17】
前記カートリッジの前記2つの内部空間は、前記供給プランジャ(6)とは反対側で、手で脱着可能な閉止栓(4)によって隔離されるかまたは隔離可能であり、前記閉止栓(4)は、好ましくは前記2成分カートリッジ(1)の前記前面の雌ねじ部(46)にねじ込まれるかまたはねじ込み可能である、ことを特徴とする請求項16に記載のペースト塗布システム。
【請求項18】
前記圧力容器(16)は、少なくとも1つの開口部を前面および後面の各々に備え、好ましくは、気体放出用の少なくとも1つの弁(18)が前記2つの開口部の一方に配置される、ことを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載のペースト塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの出発成分を貯蔵するための、およびペーストを生成するためにこれら出発成分を混合するための、およびこのペーストを塗布するための、ペースト塗布システムに関する。
【0002】
本発明は、ペーストを混合および吐出するための方法に更に関する。
【0003】
したがって、本発明の目的は、ペースト状の塊、特にペースト状のポリメチルメタクリレートセメント生地(PMMAセメント生地)、の吐出用に設計された手動操作式装置(ペースト塗布システム)である。このペースト塗布システムおよび方法は、ペースト状の2成分セメントの貯蔵、混合、および吐出を更に目的とする。
【背景技術】
【0004】
第1の出発成分としてのセメント粉末と、第2の出発成分としての液体モノマー成分との混合後、未硬化のペースト状態の所謂セメント生地としてポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)の塗布が可能になる。混合システムが粉末−液体セメントに用いられる場合、セメント生地は、カートリッジ内に収容される。供給プランジャの動きによって、セメント生地は、前記カートリッジから絞り出される。この供給プランジャの動きは、機械的吐出装置によって引き起こされる。
【0005】
ペースト状の2成分骨セメントの場合、ペースト状の両成分は、2つの個別供給プランジャを有する2つの個別カートリッジに貯蔵される。塗布中、各供給プランジャの移動によって、両ペーストは、カートリッジの各内部空間から静的ミキサーに押し込まれ、混合が完了すると、吐出管を通して吐出される。
【0006】
ペースト状の接着剤および封止材の塗布も、ペースト塗布システムを用いて基本的に同じ方法で行われる。
【0007】
現在では、高粘度の塊を押し出すために、手動で、または空気圧で、または電気的に、駆動可能なペースト塗布システムが用いられている。これまでの機械式ペースト塗布システムは、押し出すために、特に、手動操作式傾動レバーによって駆動されるクランプロッドを利用している。
【0008】
空気圧式ペースト塗布システムは、圧縮空気に接続する必要がある。これには、圧縮空気用ホースが必要であり、このホースは、ユーザの可動性およびペースト塗布システムの使用を妨げ得る。あるいは、圧縮気体の供給に圧縮気体カートリッジの使用も可能である。この文脈における例示として、特許文献1および特許文献2が引用される。
【0009】
電気駆動式押し出し装置の駆動は、充電式電池および/または電池によって行うことも、定置型電源によって行うこともできる。これらの電気駆動式押し出し装置は、場合によっては、力が極めて大きいので、特に高粘度のペースト状の塊を押し出すことができる。ただし、電動モータの使用に伴う1つの欠点は、電動モータが高価であり、非鉄金属を含有することである。更に、強力なモータとそのエネルギー貯蔵器は、通常、重くて取り扱い難い。
【0010】
特許文献3〜特許文献6は、椎体形成術および亀背形成術のための骨セメントの吐出用の、すなわち破砕した椎体をポリメチルメタクリレート骨セメントで増強するための、液圧式装置を開示している。破砕した脊椎骨への充填に必要な骨セメントの量は、数立方センチメートルに過ぎない。この理由により、これら文献に記載されている装置は、少量のセメントの吐出用にのみ設計されている。公知の液圧式装置においては、セメントの塗布の前に、粉末状成分と液体モノマー成分との混合が液圧式装置の外側で行われ、こうして生成された骨セメント生地がその後に塗布装置に充填される。椎体形成術および亀背形成術は、どちらも連続的な放射線監視の下で実施される。放射線への担当医の不要な暴露を防止するために、担当医による圧力の上昇は、セメントの吐出から空間的に隔離されて進められる。この目的のために、ポンププランジャ付きのハンドルが可撓管によって塗布器に接続される。これにより、担当医は、X線ビームの外側で放射線に暴露されずに塗布器を操作できる。このシステムの構成には、事前に混合された骨セメントが必要である。更に、このシステムでは、より多量の骨セメントを使用できない。極めて高粘度のペースト状混合物の場合、公知のペースト塗布システムは役に立たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第2,818,999(A)号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1118313(A1)号
【特許文献3】米国特許第6,582,446(B1)号
【特許文献4】米国特許第8,579,908(B2)号
【特許文献5】国際公開第2007/028253(A2)号
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0160737(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。具体的には、極めて高粘度の塊でも貯蔵、混合、および吐出を単純なデザインで可能にするペーストの混合および吐出用のペースト塗布システムおよび方法を見出すことである。この文脈において、ペースト塗布システムは、単回使用(使い捨て)を可能にするほど十分に安価であるものとする。既存の衛生要件が厳格であることから、使い捨て品は、手術現場において好都合である。
【0013】
更に、本発明の1つの目的は、圧縮空気または電流などの外部定置型エネルギー源を用いずに駆動できて粘性ペースト状の塊を押し出すことができるペースト塗布システムおよび方法を提供することである。更に、本装置は、充電式電池、電池、または圧縮気体カートリッジなどの内部エネルギー源を一切含まないものとする。また、吐出装置は、銅および銅合金を一切含まないものとする。ユーザは、どこからでも手動で吐出装置を駆動できるものとする。吐出装置の設計は、できる限り単純である必要がある。その目的は、単回使用のみを意図した安価な吐出装置の提供を可能にすることである。更に、本発明の別の目的は、開発される吐出装置によって、ペースト状の塊を吐出する方法を開発することである。
【0014】
本発明の目的は、静的ミキサーの手動駆動によって静的ミキサーによる粘性セメントペーストの混合を可能にする、コンパクトなペースト塗布システムを開発することとも見なされ得る。更に、セメントの塗布前、2つのセメントペーストを別々にペースト塗布システムに貯蔵できるものとする。本システムは、混合後の少なくとも40gから75gのセメントペーストを手動で吐出可能とする必要がある。更に、本ペースト塗布システムの表面をエチレンオキシドで滅菌可能にする必要がある。重要なことは、塗布中に必要とされる高圧によってセメントの望ましくない漏出を引き起こさないことである。セメントの漏出は、医療ユーザおよび手術現場(OR室)の汚染を招き得る。本ペースト塗布システムの手動操作は、できる限り小さな力で行えるようにするべきである。塗布に関して別の重要な点は、セメントの吐出が中断されているときに、相当量のセメント生地および/またはペーストが流出され続けないことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の各目的は、2つの出発成分を貯蔵するための、およびペーストを生成するためにこれら出発成分を混合するための、およびペーストを塗布するための、ペースト塗布システムであって、
軸線方向にシフト可能な2つの供給プランジャを有する2成分カートリッジと、
2つの杵部が取り付けられた軸線方向に移動可能な第1のプランジャがその内部に位置する、開いた前面と少なくとも部分的に閉じた後面(closed front face)とを有する第1の中空円筒体であって、開いた前面が軸線方向に2成分カートリッジに接触するように適切に配置された、第1の中空円筒体と、
手動でシフト可能な第2のプランジャを収容する第2の中空円筒体と、
液体容器と、
を備え、
第2の中空円筒体は、第1の管路手段と第1の逆止弁とによって液体透過的に液体容器に接続され、または接続可能であり、第1の中空円筒体は、第2の管路手段と第2の逆止弁とによって液体透過的に第2の中空円筒体に接続され、または接続可能であり、
軸線方向に隣接して配置された2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体は、軸線方向に移動可能な2つの杵部と共に、圧力容器内に配置され、
液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって、液体用の中空空間がペースト塗布システム内に形成され、この液体用の中空空間内に液体が存在する、またはこの液体用の中空空間に液体を充填可能である、システム、によって達成される。
【0016】
この液体は、非圧縮性であり、気体を少なくとも殆ど含まないものとする。これは、液体による良好な圧力伝達を可能にするためであり、更には、推進の中断後の相当量の混合ペースト、特に骨セメント、の流動の継続を防止するためである。この流動は、手動で高めていた圧力が加えられなくなると、圧縮されていた含有気体が膨張することによって引き起こされる。原則として、23℃および常圧で流動可能なあらゆる液体を液体として使用可能である。この文脈においては、流動可能で体積は安定しているが、形状が安定しないゲルも使用可能である。水、含水ポリマーゲル、低分子ポリエチレングリコール、低分子ポリプロピレングリコール、パラフィン、およびシリコンオイルも液体として好適である。融点が−10℃未満の高分子増粘化水溶液が特に好適である。液体の融点を下げるために、グリセロール、1,2−エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールを添加剤として追加できる。また、融点が−10℃未満、特に好ましくは−20℃、更に好ましくは−30℃、の他の何れかの無毒性および非腐食性の液体または易流動性ゲルまたはゲル粒子懸濁液も液体として考えられる。
【0017】
逆止弁とは、流れが第1の方向であるときに開き、流れが反対の第2の方向であるときに閉じる何れかの形態の弁、例えば、逆流防止弁、またはばね仕掛けの逆流防止弁など、であると理解されるものとする。この文脈において特に好適なのは、円錐状の弁座またはボール座を有し、張力が掛けられた圧縮ばねによってボールが弁座に押し付けられる逆止ボール弁である。液体流および/または液圧によって圧縮ばねを更に圧縮可能であるので、十分な圧力の液体が逆止ボール弁に流れ込むと、ボールが弁座から外れて弁が開く。流れが逆になると、液圧および圧縮ばねによってボールが弁座に押し付けられて弁座の開口部を閉じるので、逆止ボール弁は閉じる。
【0018】
そこに通される液体の圧力に耐えられる液体管路であれば如何なるものも管路手段として使用可能である。したがって、この文脈においては、圧力に対して安定性のある液圧管路が特に好適である。
【0019】
2成分カートリッジは、ペーストの2つの出発成分のために、カートリッジの内部空間を少なくとも2つ備える。この2成分カートリッジは、2つの成分のために、または追加の第3の成分のために、カートリッジの内部空間を更に備えることができる。したがって、三成分カートリッジは、本発明の精神による2成分カートリッジを備えることになる。同様に、本発明による2成分カートリッジは、2より多い数の供給プランジャを収容できる。したがって、これら供給プランジャを駆動するために、本発明の範囲から逸脱せずに、2より多い数の杵部を第1のプランジャに取り付けることができる。当業者は、この根本原理を認識し、この根本原理を、本発明の基礎を成す概念から逸脱せずに、より多くの数のカートリッジ、供給プランジャ、中空円筒体、弁、管路、および杵部に容易に適用できる。
【0020】
ペースト塗布システムが保管状態にあるとき、液体容器、第1の管路手段、第2の管路手段、第2の中空円筒体、および第1の中空円筒体の未拡張の第2の中空空間には、液体が必ずしも充填されていない。液体は、ペースト塗布システムの使用前に追加可能である。ただし、このペースト塗布システム内に液体を事前に存在させておくことも可能である。
【0021】
本発明によるペースト塗布システムは、ポリメチルメタクリレート骨セメント、接着剤、および封止材の吐出用に意図されており、かつ極めて適しており、ペースト状の如何なる塊の吐出にも使用可能である。
【0022】
好ましくは、第1の中空円筒体および第2の中空円筒体は、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、またはこれらポリマーのガラス繊維強化複合材料から成る。また、第1の中空円筒体および第2の中空円筒体をアルミニウム製またはアルミニウム合金製とすることも可能である。特定の用途によっては、2成分カートリッジの内壁は、適切であれば、出発成分とカートリッジの材料との化学反応を防止する特殊プラスチック材料によって被膜されるものとする。第1および第2の管路手段は、繊維強化エラストマー製またはアルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることもできる。吐出装置の残りの構成要素は、圧力容器を除き、好ましくは一般的なプラスチック材料製である。
【0023】
液体容器は、好ましくは、第1の中空円筒体より大きな容積を有する。
【0024】
圧力容器は、作用力を十分に引き受けるために、好ましくは円筒形である。好ましくは、圧力容器の内部空間は、円筒形領域を備える。圧力容器の形状、少なくともその複数の領域の形状は、作用力を十分に引き受けるために、2成分カートリッジの外形および第1の中空円筒体の外形に適合化される必要がある。
【0025】
本発明によるペースト塗布システムにおいて、本発明では、ペースト塗布システムは、2成分カートリッジの供給プランジャとは反対側の端部に配置された、または取り付け可能な、静的ミキサーが組み込まれた吐出管を備えることもできる。
【0026】
好ましくは、2つの出発成分を互いに隔離する閉止栓の代わりに、吐出管を2成分カートリッジの前端にねじ込む、および/または取り付けることができる。この目的のために、閉止栓は、好ましくは、カートリッジの各内部空間の壁の一部を形成し、閉止栓が取り外されると、および/または除去されると、カートリッジの2つの内部空間の中身を互いに混合できるようになっている。
【0027】
更に、本発明では、圧力容器は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を有する。
【0028】
その結果、圧力容器は、粘性PMMA骨セメントの押し出しおよび混合に必要な圧力を引き受けることができ、破壊されることはない。
【0029】
ペースト塗布システムの更なる発展態様では、液体容器に容量補償要素を設ける、好ましくは軸線方向にシフト可能な第3のプランジャを容量補償要素として設ける、ことが提案される。
【0030】
その結果、液体が液体容器から第1の中空円筒体に圧送されるときに、負圧は、液体容器内に生じない。圧送動作は更なる仕事をする必要があるので、液体容器内の負圧は、不都合な影響を及ぼすことになる。
【0031】
この文脈において、本発明では、液体容器の容量補償要素の、特に第3のプランジャの、液体用領域とは反対側に、張力が掛けられた圧縮ばねを配置でき、この圧縮ばねによって容量補償要素を液体容器の方向に押すことによって、特に第3のプランジャを液体容器内で軸線方向に動かすことによって、液体を第1の管路手段と第1の逆止弁とを通して第2の中空円筒体に押し込むことができる。
【0032】
その結果、液体を液体容器から第2および第1の中空円筒体に輸送するために追加の力を必要としない。
【0033】
本発明の一改善態様では、2成分カートリッジと軸線方向に移動可能な2つの杵部との間の空間が周囲雰囲気に気体透過的に接続されるように、第1の中空円筒体の開口部に気体透過的に接続される開口部を圧力容器のジャケット面に設けることが更に提案される。
【0034】
これにより、2つの杵部と第1のプランジャとが第1の中空円筒体内で前方に推進されるときに、過剰圧力の形成が防止されるため、これら杵部および/または第1のプランジャの推進が妨げられない。
【0035】
ペースト塗布システムの好適な一実施形態によると、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって形成される液体用の中空空間に、液体追加用の閉鎖可能な開口部を少なくとも1つ更に接続でき、この液体追加用の開口部は、好ましくは液体容器に配置される。
【0036】
これにより、液圧系全体に液体を容易に充填できる。
【0037】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって形成される液体用の中空空間に、少なくとも1つの閉鎖可能な換気用開口部を更に接続することができる。
【0038】
この換気用開口部によって、杵部ひいてはペーストの推進を妨げる、液体内の残留空気をできる限り減らすことができる。
【0039】
この文脈において、本発明では、第1の中空円筒体の閉じた後面(closed front face)を湾曲させ、閉鎖可能な換気用開口部をこの湾曲部に配置できる。
【0040】
含有空気はこの湾曲部に蓄積されるので、含有空気をこの場所で特に容易に除去できるようになっている。
【0041】
本発明では、2成分カートリッジ、第1の中空円筒体、および第2の中空円筒体は、ハウジング内に配置される。好ましくは、第1の管路手段、第1の逆止弁、第2の管路手段、および第2の逆止弁も、このハウジング内に配置される。
【0042】
その結果、ペースト塗布システム全体を1つのユニットとして片手で操作および保持できる。これにより、各可動部品の動きが未故意に阻止されないように、何れの可動部品も外部から遮断される。
【0043】
好適なペースト塗布システムは、視認可能な気泡なしに液体が液体用の中空空間に存在すること、および/または液体に含まれる気体の体積が5%未満、好ましくは1%未満、であることを特徴とすることができる。
【0044】
これにより、圧縮可能な気泡または含有空気がこの液体中に存在しないことを保証できる。圧縮可能な気泡または含有空気は、一方では、力を不要に吸収するので、その力が利用されず、他方では、力が作用しなくなると気泡または含有空気が膨張するので、ペースト塗布システムに力が手動で加えられていなくても、および更なる吐出が必要とされていなくても、ペーストを流し続けることになる。
【0045】
発生する力を引き受けるために、本発明では、圧力容器と2成分カートリッジの外壁との間の距離、および圧力容器と第1の中空円筒体の外壁との間の距離、を100μm未満、好ましくは50μm未満、にすることができる。これらの距離は、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体のそれぞれの性質によっては、それぞれの表面積全体にわたって指定する必要はなく、これらの距離をそれぞれの領域にわたって指定すれば十分な場合もある。
【0046】
これにより、圧力容器は、第1の中空円筒体および2成分カートリッジに接触して、またはほぼ接触して、せん断力およびねじり力を全て引き受けることができるので、極めて高い液圧によって第1の中空円筒体および2成分カートリッジが強く変形され得ないことが保証される。この対策がない場合、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体を単純なプラスチック材料で、および/または薄い肉厚で、製造することはできない。
【0047】
好適なペースト塗布システムでは、アルミニウム、アルミニウム合金、および高性能プラスチックから選択された材料で圧力容器を製造できる。特に好適なペースト塗布システムでは、熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−CO−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンから選択された材料で圧力容器を製造できる。後者の各プラスチックは、高性能プラスチックと見なされる。
【0048】
その結果、材料の選択によって、圧力容器の十分な安定性が達成される。
【0049】
本発明によるペースト塗布システムの再利用可能な一改善態様では、液透過性の第3の管路手段と手で可逆的に閉鎖可能な第3の弁とによって、第1の中空円筒体を液体容器に接続できる。好ましくは、第1のプランジャと第1の中空円筒体の後壁との間の中空空間は、第3の管路手段と第3の弁とによって、液体容器に接続される。
【0050】
その結果、ペースト塗布システムの使用後、杵部を第1のプランジャと共に第1の中空円筒体に押し戻すことによって、液体を第1の中空円筒体から液体容器内に押し戻すことができる。したがって、この設計は、ペースト塗布システムの再使用を可能にする。この目的のために、空の2成分カートリッジをペースト塗布システムから、および/またはペースト塗布システムの圧力容器から、簡単に取り出せるので、充填された2成分カートリッジに交換することができる。
【0051】
本発明では、第1のプランジャの前面と第2のプランジャの前面との面積比を少なくとも10対1、好ましくは少なくとも20対1、特に好ましくは少なくとも30対1、にすることもできる。
【0052】
このような動力伝達比は、強い力の伝達を可能にするので、極めて高粘度のペーストでもペースト塗布システムから押し出すことができ、および/または両成分および/またはペーストを極めて強力なミキサーに通すことができる。
【0053】
更に、本発明では、2成分カートリッジは、カートリッジの内部空間を2つ備えることができ、カートリッジのこれら内部空間内で2つの供給プランジャは、軸線方向に移動可能であり、好ましくは、カートリッジの第1の内部空間は、カートリッジの第2の内部空間を同軸に包囲する。
【0054】
その結果、2つの成分は、カートリッジの2つの互いに隔離された内部空間に貯蔵される。その同軸配置は、発生する圧力に対して特に安定性のある構成である。同軸配置の代わりに、並列配置のカートリッジも使用可能である。この目的のために、圧力容器の形状を2成分カートリッジの形状に適合させる必要がある。
【0055】
本発明では、カートリッジの2つの内部空間は、供給プランジャとは反対側で、手動で着脱可能な閉止栓によって互いに隔離される、または隔離可能である。この閉止栓は、好ましくは、2成分カートリッジの前面の雌ねじ部にねじ込まれる、またはねじ込み可能である。
【0056】
これにより、ペースト塗布システムは、PMMA骨セメントの2つの出発成分の貯蔵にも極めて有用である。その理由は、PMMA骨セメントの2つの出発成分は互いに厳重に隔離して貯蔵する必要があり、そうしないと、セメントの時期尚早な硬化を招き、ペースト塗布システムが使いものにならなくなるからである。
【0057】
本発明では、圧力容器の前面および後面(front faces)に少なくとも1つの開口部を備えることが更に提案される。好ましくは、これら開口部の一方に気体放出用の弁が少なくとも1つ設けられる。
【0058】
第1の開口部は、ペーストの吐出用に設計され、反対側の後面(opposite front face)に設けられた他の少なくとも1つの開口部は、液体からの空気の放出用に、および/または液体の案内用に、設計される。
【0059】
本発明の根拠となっている各目的は、ペーストの混合および吐出のための方法によっても解決される。本方法は、
液体を液体容器から第1の逆止弁と第1の管路手段とを通して第2の中空円筒体の内部に案内するステップと、
その後に第2の中空円筒体内の第2のプランジャに手の圧力を加えることによって、液体を第2の中空円筒体から第2の逆止弁と第2の管路手段とを通して第1の中空円筒体に押し込むステップと、を含み、
第1の中空円筒体に押し込まれた液体は、この液体に面する表面が第2のプランジャより大きい第1のプランジャを2成分カートリッジの方向に押し、この第1のプランジャによって、または第1のプランジャに取り付けられた杵部によって、2成分カートリッジ内で軸線方向にシフト可能な少なくとも2つの供給プランジャが2成分カートリッジの少なくとも2つの内部空間内で推進され、2成分カートリッジから中身が押し出され、その後混合され、混合後に塗布される。
【0060】
好ましくは、本方法を出発成分の貯蔵に極めて適するようにすることもできる。この目的のために、本発明では、出発成分が貯蔵されているときは、閉止栓を2成分カートリッジに挿入して少なくとも2つの出発成分を閉止栓によって互いに隔離しておき、ペースト塗布システムの使用前に閉止栓を取り外すことができる。好ましくは、ペーストを塗布するための吐出管が、閉止栓の代わりに、2成分カートリッジに挿入される。
【0061】
本発明では、本方法を実施するために、本発明によるペースト塗布システムを使用できる。
【0062】
本発明では、液体が第1の中空円筒体に押し込まれるときに、および第1のプランジャおよび各供給プランジャが2成分カートリッジ内で推進されるときに、生じる力を、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体を包囲する、好ましくは2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体に接触する、圧力容器によって引き受けることもできる。圧力容器は、基本的に円筒形であることが好ましい。圧力容器は、好ましくは、内部空間を備え、その複数の領域は、円筒形である。
【0063】
更に、本発明では、第2のプランジャを復帰させることによって、液体容器からの液体を第2の中空円筒体に繰り返し充填可能である。この第2のプランジャの復帰は、好ましくは、第2のプランジャが押し込まれるときに張力が掛けられた圧縮ばねによって、または他の何れかの復帰要素によって、引き起こされる。
【0064】
本発明では、液体が液体容器から第2の中空円筒体に案内されるときに第1の逆止弁を開き、第2の逆止弁を閉じ、液体が第2の中空円筒体から第1の中空円筒体に押し込まれるときに第1の逆止弁を閉じ、第2の逆止弁を開くこともできる。
【0065】
本発明は、本発明による設計では、液圧用に十分であり、コンパクトかつ安価な設計を有し、更に、セメントの複数の成分の貯蔵に極めて適した、手動駆動式ペースト塗布システムを提供可能であるという驚くべき知見に基づく。
【0066】
人工膝関節および股関節のインプラントには、通常、40gから75gの骨セメントが必要とされる。独自の複数の実験では、セメント生地を内径9mmの吐出管内に生成するために、各60gの2つのセメントペーストを静的ミキサーによって混合した。これらの実験により、この2つのセメントペーストを静的ミキサーに通すには、25バールから45バールという極めて高い圧力が必要であることが証明された。複数のプラスチック製カートリッジと、これらカートリッジ内で軸線方向に移動可能な複数のプランジャとを用いた独自の実験の結果は、これらプラスチック製カートリッジは、25バールを超える圧力にさらされると、明らかな変形の徴候を示すことを実証した。このような変形は、弾性密封リングの使用にも拘らず、カートリッジの内面と各供給プランジャとの間からの漏出を招く。その結果、ペースト状の材料が漏出し得る。この理由により、本発明の範囲によると、2成分カートリッジと第1の中空円筒体とを包囲する、機械的荷重を引き受けることができる、好ましくは円筒形の、圧力容器が提案される。
【0067】
更なる複数の実験においては、セメントペーストの吐出中、複数の杵部による複数の供給プランジャの推進中に、20バールを超える内圧での変形または捻れによってセメントカートリッジが両杵部から離れないように、セメントカートリッジを適切に保持(store)することは極めて困難であることが見出された。独自の複数の実験では、アルミニウム合金製の複数のセメントカートリッジは、ポリメチルメタクリレートを含有するセメントペーストには適さないことが更に証明された。その理由は、セメントペーストがこれらセメントカートリッジ内に貯蔵されている間に、合金およびそこに含まれる銅およびマンガンなどの合金成分は、望ましくないラジカル重合を引き起こすからである。ポリメチルメタクリレートを含有するセメントペーストは、ポリ−アクリロニトリル−コ−メチルメタクリラートおよびポリブチレンテレフタラートなどの適したプラスチック材料で製造されたセメントカートリッジに貯蔵された場合にのみ、長期安定性がある。
【0068】
以下においては、本発明の一般的な例示的実施形態を説明する。
【0069】
一例示的ペースト塗布システムは、軸線方向にシフト可能な2つのプランジャを有する2成分カートリッジと、静的ミキサーが組み込まれた吐出管と、開いた前面と閉じた後面(closed front side)とを有する第1の中空円筒体であって、2つの杵部が取り付けられた軸線方向に移動可能な第1のプランジャがその内部に配置された第1の中空円筒体と、手動でシフト可能な第2のプランジャを収容する第2の中空円筒体と、軸線方向にシフト可能な第3の(feed)プランジャを有する液体容器とによって構成され、液体容器は、第1の管路手段と第1の逆止弁とによって液透過式に第2の中空円筒体に接続され、第2の中空円筒体は、第2の管路手段と第2の逆止弁とによって液透過式に第1の中空円筒体に接続される。
【0070】
この文脈において、2成分カートリッジと、2成分カートリッジの軸線方向上流(down stream)に配置された、軸線方向に移動可能な杵部を有する中空円筒体とは、ISO 527による引張弾性率が1,500MPaを超える円筒形の圧力容器内に配置される。この圧力容器は、前面および後面(front faces)の各々に少なくとも1つの開口部を有する。2成分カートリッジと軸線方向に移動可能な杵部との間の中空空間が周囲雰囲気に気体透過的に接続されるように、1つの開口部は、圧力容器のジャケット面に適切に配置される。
【0071】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に液体追加用の閉鎖可能な開口部が少なくとも1つ接続される。
【0072】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に接続される少なくとも1つの閉鎖可能な換気用開口部を配置可能である。
【0073】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に、視認可能な気泡なしに、液体を配置できる。
【0074】
更に、本発明では、2成分カートリッジと、第1のプランジャと複数の杵部とを有する第1の中空円筒体と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャと、第2の管路手段と、第2の逆止弁とをハウジング内に配置できる。
【0075】
この例示的ペースト塗布システムでは、圧力容器と2成分カートリッジの外壁との間の距離、および圧力容器と第1の中空円筒体の外壁との間の距離は、100μm未満である。
【0076】
この文脈において、圧力容器は、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製または高性能プラスチック製とすることができ、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンが特に好適である。充填工程後に液体中に存在し得る含有空気を容易に放出できるように、第1の中空円筒体の閉じた後面(closed front face)は湾曲し、この湾曲部に閉鎖可能な換気用開口部が配置される。液体の充填のために、液体追加用の開口部が、好ましくは、液体容器に配置される。
【0077】
液体容器のプランジャの背後に張力が掛けられたばねが配置される。このばねは、プランジャを液体容器内で軸線方向に移動させ、液体を第1の管路手段と第1の逆止弁とを通して第2の中空円筒体に押し込む。第1のプランジャを用いて液体を第1の中空円筒体から液体容器に押し戻すために、ひいてはペースト塗布システムの再使用を可能にするために、および/または次回使用に備えるために、液透過性の第3の管路手段と可逆的に閉鎖可能な第3の弁とによって、第1の中空円筒体内の中空空間を液体容器に接続できる。この場合、充填された新しい2成分カートリッジを挿入するだけでよい。
【0078】
押し出しに必要な圧力を得るために、本発明では、第1のプランジャの前面面積と第2のプランジャの前面面積との面積比は、少なくとも20対1であり、好ましくは30対1を超える。
【0079】
以下に、本発明の更なる例示的実施形態を7つの概略図に基づき説明するが、この説明は、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明によるペースト塗布システムの概略断面図を示す。
図2】本発明による第2のペースト塗布システムの概略断面図を示す。
図3】閉止栓がねじ込まれた、図2によるペースト塗布システムの一部の概略断面図を示す。
図4】ハウジングが開かれた、図2および図3によるペースト塗布システムの概略斜視部分断面図を示す。
図5】閉止栓がねじ込まれた、図2図4によるペースト塗布システムの概略斜視図を示す。
図6】吐出管がねじ込まれた、図2図5によるペースト塗布システムの概略斜視図を示す。
図7】本発明による第3のペースト塗布システムの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
これらの図において、同一または同様の構成要素は、複数の異なるペースト塗布システムに関する場合でも、或る程度まで、同じ参照符号によって識別される。
【0082】
図1は、本発明によるペースト塗布システムの概略断面図を示す。本ペースト塗布システムは、ポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)を生成するための2つのペースト状出発成分(図示せず)を2つの内部空間に収容する2成分カートリッジ1を有する。これら内部空間は、互いに同軸に互いに隔離されて配置される。静的ミキサー3が内部に配置された吐出管2は、2成分カートリッジ1の前面に取り付けられる。ペースト塗布システムの保管状態では、閉止栓4が、吐出管2の代わりに、2成分カートリッジ1の前端(図1の上部)に挿入されている。
【0083】
2成分カートリッジ1の2つの内部空間を互いに隔離するために、隔離壁5としての円筒管は、カートリッジの2つの内部空間の間に設けられる。この結果、円筒形の隔離壁5によって、カートリッジの外側の内部空間は、カートリッジの内側の内部空間から隔離される。2成分カートリッジ1の後端(図1の下部)には、2つの供給プランジャ6がカートリッジの2つの内部空間に配置される。これら供給プランジャ6は、カートリッジの2つの内部空間で軸線方向に移動可能であるように配置され、密封リングによってカートリッジ1の2つの内部空間の隔離壁5に対して封着される。カートリッジの2つの内部空間が吐出管2側で互いに結合されるように、カートリッジの2つの内部空間は、前面(図1の上部)の開口部7によって互い接続される。2成分カートリッジ1、吐出管2、および隔離壁5は、カートリッジの中身に対して化学的耐性のあるプラスチック材料製とすることができる。
【0084】
2成分カートリッジ1の後面は、プラスチック材料製のフィルム8によって閉じられる。閉止栓4が2成分カートリッジ1に挿入されて開口部7を閉じているとき、フィルム8は、2成分カートリッジ1を気密に閉じる。
【0085】
中空円筒体10は、2成分カートリッジ1の後面に接して載置され、プランジャ12によって後面(図1の下部)で圧密に閉じられる。プランジャ12は、密封体によって中空円筒体10の壁に対して封着され、中空円筒体10内で軸線方向に移動可能である。プランジャ12は、複数の杵部14の形態で延在する。これら杵部14は、凹部または空洞領域を少なくとも1つの領域に備える。この凹部は、これら杵部14をカートリッジの2つの内部空間内に推進するために、すなわち隔離壁5を受け入れるために、必要とされる。
【0086】
前方に駆動されると、これら杵部14は、フィルム8を切断し、2つの供給プランジャ6を吐出管2の方向に駆動し、2成分カートリッジの中身をカートリッジの2つの内部空間から押し出してミキサー3に押し込む。そこで、2つの出発成分は、互いに混合され、混合されたペーストは、吐出管2の先端部によって塗布可能になる。
【0087】
この目的のために、プランジャ12を高圧で前方に(図1の上方に)駆動する必要がある。その理由は、2つの出発成分および混合されたペーストの粘度が高く、また静的ミキサー3によって抵抗が加えられるからである。中空円筒体10もプラスチック材料製であるので、中空円筒体10および2成分カートリッジ1は、必要とされる極めて強い力から保護される必要がある。この目的のために、2成分カートリッジ1および中空円筒体10は、金属製の、または極めて強靭なプラスチック材料製の、例えば熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンなどで製造された、圧力容器16で包囲される。圧力容器16は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を引き受けることができる。圧力容器16は、2つの部分で構成されるべく設計され、圧力容器16の2つの部分は、例えばねじ部によって、互いに接続される。圧力容器16は、内側が円筒形であり、2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面に接して、または2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面から最大100μmの至近距離に、配置される。これにより、プランジャ12の推進中に、2成分カートリッジ1および中空円筒体10は、全く変形しないか、変形したとしても最小限であることが保証されるため、可動部品、すなわちプランジャ12、杵部14、および供給プランジャ6、が引っ掛かって詰まることはなく、吐出管2から以外はペーストが漏出しない。
【0088】
プランジャ12および/または杵部14とフィルム8との間の中空円筒体10の間隙から空気を逃がすことができる複数の開口部17は、中空円筒体10および圧力容器16の一側面に設けられる。これにより、閉じ込められた気体によってプランジャ12の動きは妨げられない。中空円筒体10の閉じた後壁とプランジャ12との間の空間から気体を放出させることができる手動操作弁18は、中空円筒体10および圧力容器16の後面に設けられる。これにより、作動液体から気体を放出させることができる。この目的のために、弁18用の開口部を湾曲部(図示せず)に配置することが好ましい。これにより、吐出管2を下に向けてペースト塗布システムを保持すると、空気または他の含有気体は、湾曲部に集まるので、弁18から放出させることができる。
【0089】
更に、液圧管路20は、中空円筒体10の後面に結合される。逆止弁22は、液圧管路20に配置される。逆止弁22は、圧縮ばねによって嵌め込まれるボールを含むべく設計される。このボールは、逆止弁22を閉じるために、嵌合するボール座に圧縮ばねによって押し付けられる。液圧管路20に収容された液体が十分な圧力で中空円筒体10の方向に流れると、逆止弁22は開く。
【0090】
液圧管路20は、中空円筒体24に結合される。中空円筒体24の内部には、軸線方向に移動可能に支持されたプランジャ26が配置される。プランジャ26は、密封リングによって、中空円筒体24の内壁に対して封着される。プランジャ26は、ハンドル28に終端する。ハンドル28によって、中空円筒体24へのプランジャ26の押し込みおよび引き出しを手で行うことができる。プランジャ26が中空円筒体24に押し込まれると、中空円筒体24内の液体は、液圧管路20と逆止弁22とを通って中空円筒体10に押し込まれる。プランジャ26の前面面積は、プランジャ12の対応する前面面積よりきわめて小さいため(プランジャ26の前面面積は、プランジャ12の前面面積の10分の1または20分の1)、動力伝達比が生じる。これにより、プランジャ26を押すことによって加えられる力が小さくても、供給プランジャ6を駆動するプランジャ12に大きな圧力を加えることができるので、極めて高粘度の両ペーストを押し出して混合できる。
【0091】
中空円筒体24は、その前面で、管路32にも結合される。管路32には、逆止弁30が配置される。逆止弁30は、液圧管路20内の逆止弁22と同様に設計される。逆止弁30は、液体が中空円筒体24の方向にのみ流れるようにする。管路20、32および逆止弁22、30、およびコネクタは、動作中に発生する高い圧力を、漏れを発生させずに、引き受ける必要がある。
【0092】
他方、管路32は、第2の中空円筒体24より大きい容積を有する円筒形の液体容器34に結合される。液体容器34は、軸線方向に移動可能なプランジャ36によって一方の側で閉じられて封止される。液体容器34から管路32および中空円筒体24への液体の押し出しおよび/または引き込みをプランジャ36によって容易に行えるように、プランジャ36は、圧縮ばね38によって張力が掛けられる。プランジャ26を後退させると、中空円筒体24内に負圧が生じるので、逆止弁30が開き、液体が液体容器34から中空円筒体24に流入できるようになる。
【0093】
したがって、中空円筒体24内でプランジャ26を前後に複数回動かすことによって、および/または押し引きを複数回行うことによって、プランジャ12は、中空円筒体10内で段階的に前方に推進される。
【0094】
プランジャ36とキャップとの間に負圧が生じてプランジャ36の推進を妨げないように、後面(図1の下部)には、開口部が液体容器34のキャップに設けられる。液体容器34への液体の充填に使用できる逆止弁40は、液体容器34の前面に設けられる。
【0095】
中空円筒体10、24、液体容器34、2成分カートリッジ1、管路20、32、および逆止弁22、30は、プラスチック材料製のハウジング42内に配置される。ハウジング42は、ペースト塗布システムの保持を可能にするピストル型ハンドル44を形成する。ハンドル28、弁18、および弁14は、ハウジング42から突出する、および/またはハウジング42の外側からアクセス可能である。
【0096】
閉止栓4は、嵌合面の形態の密封体52を複数備える。これら密封体52は、開口部7を流体密に閉じ、ひいてはカートリッジの2つの内部空間の中身を互いに確実に隔離する。
閉止栓4は、ペースト塗布システムの使用直前に2成分カートリッジ1の前面から取り外され、吐出管2が、閉止栓4の代わりに、閉止栓4を取り付けるために用いられていたマウントに取り付けられる。好ましくは、2成分カートリッジ1上のマウントは、閉止栓4に設けられた相手側ねじ部、または吐出管2に設けられた相手側ねじ部、に係合するねじ部である。2成分カートリッジ1の各開口部7への閉止栓52の力係止式装着は、ねじ部によって達成可能である。
【0097】
図2図6は、設計が多少異なる、本発明による第2のペースト塗布システムのさまざまな概略図を示す。このペースト塗布システムは、2成分カートリッジ1を有する。2成分カートリッジ1は、互いに同軸に配置されて互いに隔離されたカートリッジの2つの内部空間に、PMMA骨セメントを生成するための2つのペースト状出発成分(図示せず)を収容する。静的ミキサー3が内部に配置された吐出管2は、図2図4、および図6の2成分カートリッジ1の前面に取り付けられる。図3および図5に示されている保管状態のペースト塗布システムでは、閉止栓4は、吐出管2の代わりに、2成分カートリッジ1の(図1の上部に示されているように)前端に挿入されている。
【0098】
2成分カートリッジ1の2つの内部空間を互いに隔離するために、隔離壁5としての円筒管は、カートリッジの2つの内部空間の間に設けられる。結果として、カートリッジの外側の内部空間は、カートリッジの内側の内部空間から円筒形の隔離壁5によって隔離される。2成分カートリッジ1(図2図6の下部)の後端には、2つの供給プランジャ6がカートリッジの各内部空間にそれぞれ配置されている。これら供給プランジャ6は、カートリッジの各内部空間内で軸線方向に移動可能であるように配置され、密封リングによってカートリッジ1の2つの内部空間の隔離壁5に対して封着される。カートリッジの2つの内部空間が吐出管2側で互いに結合されるように、カートリッジの2つの内部空間は、前面(図2の上部)の開口部7によって互いに接続される。2成分カートリッジ1、吐出管2、および隔離壁5は、カートリッジの中身に対して化学的耐性のあるプラスチック材料製とすることができる。
【0099】
2成分カートリッジ1は、閉止栓4が2成分カートリッジ1に挿入されて開口部7を閉じているときに2成分カートリッジ1を気密に閉じる金属被膜付きプラスチック製フィルム8によって、その後面で閉じられる。
【0100】
中空円筒体10は、2成分カートリッジ1の後面に接して載置される。中空円筒体10は、その後面(図2図6の下部)で、プランジャ12によって圧密に閉じられる。プランジャ12は、密封体によって中空円筒体10の壁に対して封着され、中空円筒体10内で軸線方向に移動可能である。プランジャ12は、複数の杵部14の形態で延在する。これら杵部14は、凹部または空洞領域を少なくとも1つの領域に備える。この凹部または空洞領域は、杵部14をカートリッジの内部空間内に推進するために、すなわち隔離壁5を受け入れるために、必要である。
【0101】
推進された杵部14は、フィルム8を切断し、供給プランジャ6を吐出管2の方向に駆動して、2成分カートリッジの中身をカートリッジの2つの内部空間から押し出してミキサー3に押し込む。2つの出発成分は、ミキサー3内で互いに混合され、混合されたペーストは、吐出管2の先端部によって塗布可能になる。
【0102】
この目的のために、プランジャ12は、高圧で前方に(図2図6の上方に)駆動される必要がある。その理由は、出発成分および混合されたペーストの粘度が高く、更には静的ミキサー3によって抵抗が加えられるからである。中空円筒体10もプラスチック材料製であるので、中空円筒体10および2成分カートリッジ1は、必要とされる極めて強い力から保護される必要がある。この目的のために、2成分カートリッジ1および中空円筒体10は、金属製の、または極めて強靭なプラスチック材料製の、例えば熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルホン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンなどで製造された、圧力容器16で包囲される。圧力容器16は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を引き受けることができる。圧力容器16は、2つの部分で構成されるべく設計される。この2つの部分は、例えばねじ部によって、互いに接続される。圧力容器16の内側は、円筒形であり、2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面に接して、または2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面から最大100μmの至近距離に、配置される。これにより、プランジャ12の推進中に2成分カートリッジ1および中空円筒体10は全く変形しないか、変形したとして最小限であることが保証されるので、可動部品、すなわちプランジャ12、杵部14、および供給プランジャ6、が引っ掛かって詰まることはなく、吐出管2から以外はペーストが漏出しない。
【0103】
プランジャ12および/または杵部14とフィルム8との間の中空円筒体10の間隙から空気を逃がすことができる開口部(図示せず)を中空円筒体10および圧力容器16の一側面に設けることも随意である。これにより、適切であれば、閉じ込められた気体によってプランジャ12の動きが妨げられない。
【0104】
中空円筒体10の閉じた後壁とプランジャ12との間の空間から気体を放出させることができる手動操作弁18は、中空円筒体10および圧力容器16の後面に設けられる。これにより、作動液体から気体を放出できる。この目的のために、弁18用の開口部を湾曲部(図示せず)に配置することが好ましい。これにより、吐出管2を下に向けてペースト塗布システムを保持すると、空気または他の含有気体は、湾曲部に集まるので、弁18によって放出させることができる。
【0105】
更に、液圧管路20は、中空円筒体10の後面に結合される。逆止弁22は、液圧管路20内に配置される。逆止弁22は、圧縮ばねによって嵌め込まれるボールを含むべく設計される。このボールは、逆止弁22を閉じるために、嵌合するボール座に圧縮ばねによって押し付けられる。液圧管路20に収容された液体が十分な圧力で中空円筒体10の方向に流れると、逆止弁22は開く。
【0106】
液圧管路20は、湾曲した(弧状)中空円筒体24に結合される。軸線方向に移動可能であるように支持された、同様に湾曲したプランジャ26は、中空円筒体24の内部に配置される。プランジャ26は、密封リングによって、湾曲した中空円筒体24の内壁に対して封着される。プランジャ26は、引金45に終端する。引金45によって、湾曲した中空円筒体24へのプランジャ26の押し込みおよび引き出しを手で行える。この目的のために、引金45は、軸線60を中心に回転できるように、および/またはペースト塗布システムのハウジング42に対して傾動するように、支持される。湾曲した中空円筒体24にプランジャ26が押し込まれると、中空円筒体24の内部に存在する液体は、液圧管路20と逆止弁22とを通って中空円筒体10に押し込まれる。プランジャ26の前面面積は、プランジャ12の対応する前面面積より極めて小さいので、動力伝達比が生じる。これにより、プランジャ26を押すことによって加えられる力が小さくても、供給プランジャ6を駆動するプランジャ12に大きな圧力を加えることができるので、極めて高粘度のペーストを押し出して混合できる。湾曲した中空円筒体24の内部には、圧縮ばね27が配置される。引金45ひいてはプランジャ26が押し込まれると、圧縮ばね27は、引金45およびプランジャ26を復帰させる。
【0107】
湾曲した中空円筒体24は、その前面で、管路32にも結合される。管路32の内部には、逆止弁30が配置される。逆止弁30は、他の液圧管路20内の他の逆止弁22と同様に設計される。逆止弁30は、液体が中空円筒体24の方向にのみ流れるようにする。管路20、32および逆止弁22、30は、作動中に発生する高い圧力を、漏れを発生させずに、引き受ける必要がある。
【0108】
他方、管路32は、第2の中空円筒体24より大きい容積を有する円筒形の液体容器34に結合される。液体容器34は、軸線方向に移動可能な、封着されたプランジャ36によって一方の側で閉じられる。圧縮バネ27によってプランジャ26が復帰すると、中空円筒体24内に負圧が発生するので、逆止弁30が開き、液体は、液体容器34から中空円筒体24に流入できるようになる。
【0109】
したがって、引金45を複数回作動させることによって、ひいては湾曲した中空円筒体24内でプランジャ26を複数回作動させることによって、プランジャ12は、中空円筒体10内で段階的に前方に推進される。
【0110】
プランジャ36と液体容器34のキャップ54との間に負圧が発生してプランジャ36の推進を妨げないように、後面(図1の下部)には、開口部56がキャップ54に設けられる。液体容器34に液体を充填するために使用できる入口弁(図示せず)は、液体容器34の前面に設けられる。
【0111】
中空円筒体10、24、液体容器34、2成分カートリッジ1、管路20、32、および逆止弁22、30は、プラスチック製のハウジング42内に配置される。ハウジング42は、ペースト塗布システムの保持を可能にするピストル型ハンドル44を形成する。引金45および入口弁は、ハウジング42から突出する、および/またはハウジング42の外側からアクセス可能である。
【0112】
図3は、本発明による第2のペースト塗布システムの一部の概略断面図を示す。この文脈において、ペースト塗布システムおよび/または2成分カートリッジ1は、その前面で、カートリッジの2つの内部空間を互いに隔離する閉止栓4によって、閉じられる。この目的のために、2成分カートリッジ1には、その前面に、閉止栓4の雄ねじ部48がねじ込まれる雌ねじ部46が取り付けられる。閉止栓4は、蝶ナットのような翼部50によってねじのように回転させることができる。弾性プラスチック材料製の封止面52は、開口部7(図3には図示せず)を封止し、ひいてはカートリッジの2つの内部空間を互いに隔離する。これにより、2つの出発成分の不測の時期尚早な反応は、防止される。
【0113】
液体容器34の一方の側は、開口部56が設けられたキャップ54によって閉じられる。開口部56の目的は、液体容器34の内部へのプランジャ36の更なる移動を妨げる負圧がキャップ54と容量補償要素としてのプランジャ36との間に形成されないことを保証することである。好都合なことに、液体容器34の内部へのプランジャ36の移動を支援するために、張力が掛けられた圧縮ばね(図示せず)をキャップ54とプランジャ36との間に配置できる。
【0114】
図7は、最初の2つのペースト塗布システムとは多少異なる本発明による第3のペースト塗布システムの概略断面図を示す。第3のペースト塗布システムも2成分カートリッジ1を有する。この2成分カートリッジ1は、PMMA骨セメントを生成するための2つのペースト状出発成分(図示せず)を互いに同軸に配置されて互いに隔離されたカートリッジの2つの内部空間に収容する。静的ミキサー3が内部に配置された吐出管2は、2成分カートリッジ1の前面に取り付けられる。ペースト塗布システムの保管状態では、閉止栓4が、吐出管2の代わりに、2成分カートリッジ1の前端(図7の上部)に挿入される。
【0115】
2成分カートリッジ1の2つの内部空間を互いに隔離するために、隔離壁5としての円筒管は、カートリッジの2つの内部空間の間に設けられる。これにより、カートリッジの外側の内部空間は、カートリッジの内側の内部空間から円筒形の隔離壁5によって隔離される。2成分カートリッジ1の後端(図7の下部)には、2つの供給プランジャ6がカートリッジの2つの内部空間にそれぞれ配置される。これら供給プランジャ6は、カートリッジの2つの内部空間内で軸線方向に移動可能であるように配置され、密封リングによってカートリッジ1の内部空間の隔離壁5に対して封着される。カートリッジの2つの内部空間が吐出管2側で互いに結合されるように、カートリッジの2つの内部空間は、前面(図7の上部)の開口部7によって互いに接続される。2成分カートリッジ1、吐出管2、および隔離壁5は、カートリッジの中身に対して化学的耐性のあるプラスチック材料製とすることができる。
【0116】
2成分カートリッジ1は、その後面において、プラスチック製フィルム8によって閉じられる。閉止栓4が2成分カートリッジ1に挿入されて開口部7を閉じているとき、フィルム8は、2成分カートリッジ1を気密に閉じる。
【0117】
中空円筒体10は、2成分カートリッジ1の後面に接して載置され、後面(図7の下部)でプランジャ12によって圧密に閉じられる。プランジャ12は、密封体によって中空円筒体10の壁に対して封着され、中空円筒体10内で軸線方向に移動可能である。プランジャ12は、複数の杵部14の形態で延在する。これら杵部14は、凹部または空洞領域を少なくとも1つの領域に備える。この凹部または空洞領域は、杵部14をカートリッジの内部空間内に推進するために、すなわち隔離壁5を受け入れるために、必要である。
【0118】
前進させた杵部14は、フィルム8を切断し、各供給プランジャ6を吐出管2の方向に駆動する。各供給プランジャ6は、2成分カートリッジの中身をカートリッジの2つの内部空間から追い出してミキサー3に押し込む。そこで、2つの出発成分は、互いに混合され、混合されたペーストは、吐出管2の先端部によって塗布可能になる。
【0119】
この目的のために、プランジャ12は、高圧で前方に(図1の上側)駆動される必要がある。その理由は、出発成分および混合されたペーストの粘度が高く、静的ミキサー3によって抵抗が加えられるからである。中空円筒体10もプラスチック材料製であるので、中空円筒体10および2成分カートリッジ1は、この文脈で発生する極めて強い力から保護される必要がある。この目的のために、2成分カートリッジ1および中空円筒体10は、金属製の、または極めて強靭なプラスチック材料製の、例えば熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンなどで製造された、圧力容器16で包囲される。圧力容器16は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を引き受けることができる。圧力容器16は、2つの部分から成るべく設計される。この2つの部分は、例えばねじ部によって、またはフランジ留め具を有するフランジによって、互いに接続される。圧力容器16は、内側が円筒形であり、2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面に接して、または2成分カートリッジ1および中空円筒体10の外面から最大100μmの至近距離に、配置される。これにより、プランジャ12の推進中に、2成分カートリッジ1および中空円筒体10は、全く変形しないか、変形したとしても最小限であることが保証されるので、可動部品、すなわちプランジャ12、杵部14、および供給プランジャ6、が引っ掛かって詰まることはなく、吐出管2から以外はペーストが漏出しない。
【0120】
プランジャ12および/または杵部14とフィルム8との間の中空円筒体10の間隙から空気を逃がすことができる開口部17は、中空円筒体10および圧力容器16の一側面に設けられる。これにより、閉じ込められた気体によってプランジャ12の動きが妨げられない。中空円筒体10の閉じた後壁とプランジャ12との間の空間から気体を放出させることができる手動操作弁18は、中空円筒体10および圧力容器16の後面に設けられる。これにより、作動液体から気体を放出させることができる。この目的のために、弁18用の開口部は、好ましくは、湾曲部(図示せず)に配置される。これにより、吐出管2を下に向けてペースト塗布システムを保持すると、空気または他の含有気体は、この湾曲部に集まるので、弁18によって放出させることができる。弁18は、圧力が過大になると開く安全弁としても使用可能である。
【0121】
更に、中空円筒体10の後面に液圧管路20が結合される。この液圧管路20に逆止弁22が配置される。逆止弁22は、圧縮ばねによって嵌め込まれるボールを含むべく設計される。このボールは、逆止弁22を閉じるために、嵌合するボール座に圧縮ばねによって押し付けられる。液圧管路20に収容された液体が十分な圧力で中空円筒体10の方向に流れると、逆止弁22は開く。
【0122】
液圧管路20は、中空円筒体24に結合される。中空円筒体24の内部には、軸線方向に移動可能に支持されたプランジャ26が配置される。プランジャ26は、密封リングによって、中空円筒体24の内壁に対して封着される。プランジャ26は、引金45に終端する。引金45によって、中空円筒体24へのプランジャ26の押し込みおよび引き出しを手で行える。この目的のために、引金45は、軸線60を中心に回転できるように、および/またはペースト塗布システムのハウジング42に対して傾動するように、支持される。プランジャ26が中空円筒体24に押し込まれると、中空円筒体24内の液体は、液圧管路20と逆止弁22とを通って中空円筒体10に押し込まれる。プランジャ26の前面面積は、プランジャ12の対応する前面面積より極めて小さいので(プランジャ26の前面面積は、プランジャ12の前面面積の10分の1または少なくとも20分の1)、動力伝達比が生じる。これにより、プランジャ26を押すことによって加えられる力が小さくても、供給プランジャ6を駆動するプランジャ12に大きな圧力を加えることができるので、極めて高粘度のペーストを追い出して混合できる。プランジャ26は、圧縮ばね27によって中空円筒体24に対して支持されている。引金45、ひいてはプランジャ26が押し込まれると、圧縮ばね27は、引金45およびプランジャ26を復帰させる。
【0123】
中空円筒体24は、その前面で、管路32にも結合される。管路32には、逆止弁30が配置される。逆止弁30は、もう一方の液圧管路20内の逆止弁22と同様に設計される。逆止弁30は、液体が中空円筒体24の方向にのみ流れるようにする。管路20、32および逆止弁22、30は、動作中に発生する高い圧力を、漏れを発生させずに、引き受ける必要がある。
【0124】
他方、管路32は、円筒形の液体容器34に結合される。液体容器34は、第2の中空円筒体24より大きい容積を有し、軸線方向に移動可能な封着されたプランジャ36によって一方の側で閉じられる。プランジャ36によって液体が液体容器34から管路32および中空円筒体24に容易に押し出される、および/または引き込まれる、ように、プランジャ36は、圧縮ばね38によって張力が掛けられる。圧縮バネ27によってプランジャ26が復帰すると、中空円筒体24内に負圧が発生するので、逆止弁30が開き、液体は、液体容器34から中空円筒体24に流入できるようになる。
【0125】
したがって、中空円筒体24内でプランジャ26を複数回前後させることによって、および/または押し引きを複数回行うことによって、プランジャ12は、中空円筒体10内で段階的に前方に推進される。
【0126】
プランジャ36とキャップとの間に負圧が生じてプランジャ36の推進を妨げないように、後面(図7の下部)には、開口部が液体容器34のキャップに設けられる。液体容器34に液体を充填できる逆止弁40は、液体容器34の前面に設けられる。
【0127】
中空円筒体10、24、液体容器34、2成分カートリッジ1、管路20、32、および逆止弁22、30は、プラスチック製ハウジング42内に配置される。ハウジング42は、ペースト塗布システムの保持を可能にするピストル型ハンドル44を形成する。ハンドル28、弁18、および弁40は、ハウジング42から突出する、および/またはハウジング42の外側からアクセス可能である。
【0128】
以上の説明、請求の範囲、図面、および例示的実施形態に開示されている本発明の特徴は、本発明のさまざまな実施形態を個別に、および任意に組み合わせて、本発明を具現化する上で不可欠なものである。
【符号の説明】
【0129】
1…2成分カートリッジ
2…吐出管
3…静的ミキサー
4…閉止栓
5…隔離壁
6…供給プランジャ
7…2成分カートリッジの開口部
8…フィルム
10…中空円筒体
12…プランジャ
14…杵部
16…圧力容器
17…開口部
18…弁
20…液圧管路
22…逆止弁
24…中空円筒体
26…プランジャ
27…ばね
28…ハンドル
30…逆止弁
32…管路
34…液体容器
36…プランジャ
38…ばね
40…逆止弁
42…ハウジング
44…ピストル型ハンドル
45…引金
46…雌ねじ部
48…雄ねじ部
50…翼部
52…密封体
54…キャップ
56…開口部
58…密封体
60…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7