【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の各目的は、2つの出発成分を貯蔵するための、およびペーストを生成するためにこれら出発成分を混合するための、およびペーストを塗布するための、ペースト塗布システムであって、
軸線方向にシフト可能な2つの供給プランジャを有する2成分カートリッジと、
2つの杵部が取り付けられた軸線方向に移動可能な第1のプランジャがその内部に位置する、開いた前面と少なくとも部分的に閉じた後面(closed front face)とを有する第1の中空円筒体であって、開いた前面が軸線方向に2成分カートリッジに接触するように適切に配置された、第1の中空円筒体と、
手動でシフト可能な第2のプランジャを収容する第2の中空円筒体と、
液体容器と、
を備え、
第2の中空円筒体は、第1の管路手段と第1の逆止弁とによって液体透過的に液体容器に接続され、または接続可能であり、第1の中空円筒体は、第2の管路手段と第2の逆止弁とによって液体透過的に第2の中空円筒体に接続され、または接続可能であり、
軸線方向に隣接して配置された2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体は、軸線方向に移動可能な2つの杵部と共に、圧力容器内に配置され、
液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって、液体用の中空空間がペースト塗布システム内に形成され、この液体用の中空空間内に液体が存在する、またはこの液体用の中空空間に液体を充填可能である、システム、によって達成される。
【0016】
この液体は、非圧縮性であり、気体を少なくとも殆ど含まないものとする。これは、液体による良好な圧力伝達を可能にするためであり、更には、推進の中断後の相当量の混合ペースト、特に骨セメント、の流動の継続を防止するためである。この流動は、手動で高めていた圧力が加えられなくなると、圧縮されていた含有気体が膨張することによって引き起こされる。原則として、23℃および常圧で流動可能なあらゆる液体を液体として使用可能である。この文脈においては、流動可能で体積は安定しているが、形状が安定しないゲルも使用可能である。水、含水ポリマーゲル、低分子ポリエチレングリコール、低分子ポリプロピレングリコール、パラフィン、およびシリコンオイルも液体として好適である。融点が−10℃未満の高分子増粘化水溶液が特に好適である。液体の融点を下げるために、グリセロール、1,2−エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールを添加剤として追加できる。また、融点が−10℃未満、特に好ましくは−20℃、更に好ましくは−30℃、の他の何れかの無毒性および非腐食性の液体または易流動性ゲルまたはゲル粒子懸濁液も液体として考えられる。
【0017】
逆止弁とは、流れが第1の方向であるときに開き、流れが反対の第2の方向であるときに閉じる何れかの形態の弁、例えば、逆流防止弁、またはばね仕掛けの逆流防止弁など、であると理解されるものとする。この文脈において特に好適なのは、円錐状の弁座またはボール座を有し、張力が掛けられた圧縮ばねによってボールが弁座に押し付けられる逆止ボール弁である。液体流および/または液圧によって圧縮ばねを更に圧縮可能であるので、十分な圧力の液体が逆止ボール弁に流れ込むと、ボールが弁座から外れて弁が開く。流れが逆になると、液圧および圧縮ばねによってボールが弁座に押し付けられて弁座の開口部を閉じるので、逆止ボール弁は閉じる。
【0018】
そこに通される液体の圧力に耐えられる液体管路であれば如何なるものも管路手段として使用可能である。したがって、この文脈においては、圧力に対して安定性のある液圧管路が特に好適である。
【0019】
2成分カートリッジは、ペーストの2つの出発成分のために、カートリッジの内部空間を少なくとも2つ備える。この2成分カートリッジは、2つの成分のために、または追加の第3の成分のために、カートリッジの内部空間を更に備えることができる。したがって、三成分カートリッジは、本発明の精神による2成分カートリッジを備えることになる。同様に、本発明による2成分カートリッジは、2より多い数の供給プランジャを収容できる。したがって、これら供給プランジャを駆動するために、本発明の範囲から逸脱せずに、2より多い数の杵部を第1のプランジャに取り付けることができる。当業者は、この根本原理を認識し、この根本原理を、本発明の基礎を成す概念から逸脱せずに、より多くの数のカートリッジ、供給プランジャ、中空円筒体、弁、管路、および杵部に容易に適用できる。
【0020】
ペースト塗布システムが保管状態にあるとき、液体容器、第1の管路手段、第2の管路手段、第2の中空円筒体、および第1の中空円筒体の未拡張の第2の中空空間には、液体が必ずしも充填されていない。液体は、ペースト塗布システムの使用前に追加可能である。ただし、このペースト塗布システム内に液体を事前に存在させておくことも可能である。
【0021】
本発明によるペースト塗布システムは、ポリメチルメタクリレート骨セメント、接着剤、および封止材の吐出用に意図されており、かつ極めて適しており、ペースト状の如何なる塊の吐出にも使用可能である。
【0022】
好ましくは、第1の中空円筒体および第2の中空円筒体は、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、またはこれらポリマーのガラス繊維強化複合材料から成る。また、第1の中空円筒体および第2の中空円筒体をアルミニウム製またはアルミニウム合金製とすることも可能である。特定の用途によっては、2成分カートリッジの内壁は、適切であれば、出発成分とカートリッジの材料との化学反応を防止する特殊プラスチック材料によって被膜されるものとする。第1および第2の管路手段は、繊維強化エラストマー製またはアルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることもできる。吐出装置の残りの構成要素は、圧力容器を除き、好ましくは一般的なプラスチック材料製である。
【0023】
液体容器は、好ましくは、第1の中空円筒体より大きな容積を有する。
【0024】
圧力容器は、作用力を十分に引き受けるために、好ましくは円筒形である。好ましくは、圧力容器の内部空間は、円筒形領域を備える。圧力容器の形状、少なくともその複数の領域の形状は、作用力を十分に引き受けるために、2成分カートリッジの外形および第1の中空円筒体の外形に適合化される必要がある。
【0025】
本発明によるペースト塗布システムにおいて、本発明では、ペースト塗布システムは、2成分カートリッジの供給プランジャとは反対側の端部に配置された、または取り付け可能な、静的ミキサーが組み込まれた吐出管を備えることもできる。
【0026】
好ましくは、2つの出発成分を互いに隔離する閉止栓の代わりに、吐出管を2成分カートリッジの前端にねじ込む、および/または取り付けることができる。この目的のために、閉止栓は、好ましくは、カートリッジの各内部空間の壁の一部を形成し、閉止栓が取り外されると、および/または除去されると、カートリッジの2つの内部空間の中身を互いに混合できるようになっている。
【0027】
更に、本発明では、圧力容器は、EN ISO 527による1,500MPaを超える引張弾性率を有する。
【0028】
その結果、圧力容器は、粘性PMMA骨セメントの押し出しおよび混合に必要な圧力を引き受けることができ、破壊されることはない。
【0029】
ペースト塗布システムの更なる発展態様では、液体容器に容量補償要素を設ける、好ましくは軸線方向にシフト可能な第3のプランジャを容量補償要素として設ける、ことが提案される。
【0030】
その結果、液体が液体容器から第1の中空円筒体に圧送されるときに、負圧は、液体容器内に生じない。圧送動作は更なる仕事をする必要があるので、液体容器内の負圧は、不都合な影響を及ぼすことになる。
【0031】
この文脈において、本発明では、液体容器の容量補償要素の、特に第3のプランジャの、液体用領域とは反対側に、張力が掛けられた圧縮ばねを配置でき、この圧縮ばねによって容量補償要素を液体容器の方向に押すことによって、特に第3のプランジャを液体容器内で軸線方向に動かすことによって、液体を第1の管路手段と第1の逆止弁とを通して第2の中空円筒体に押し込むことができる。
【0032】
その結果、液体を液体容器から第2および第1の中空円筒体に輸送するために追加の力を必要としない。
【0033】
本発明の一改善態様では、2成分カートリッジと軸線方向に移動可能な2つの杵部との間の空間が周囲雰囲気に気体透過的に接続されるように、第1の中空円筒体の開口部に気体透過的に接続される開口部を圧力容器のジャケット面に設けることが更に提案される。
【0034】
これにより、2つの杵部と第1のプランジャとが第1の中空円筒体内で前方に推進されるときに、過剰圧力の形成が防止されるため、これら杵部および/または第1のプランジャの推進が妨げられない。
【0035】
ペースト塗布システムの好適な一実施形態によると、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって形成される液体用の中空空間に、液体追加用の閉鎖可能な開口部を少なくとも1つ更に接続でき、この液体追加用の開口部は、好ましくは液体容器に配置される。
【0036】
これにより、液圧系全体に液体を容易に充填できる。
【0037】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第2の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の逆止弁と、第1のプランジャが界接する第1の中空円筒体の内部空間と、第2のプランジャが界接する第2の中空円筒体の内部空間とによって形成される液体用の中空空間に、少なくとも1つの閉鎖可能な換気用開口部を更に接続することができる。
【0038】
この換気用開口部によって、杵部ひいてはペーストの推進を妨げる、液体内の残留空気をできる限り減らすことができる。
【0039】
この文脈において、本発明では、第1の中空円筒体の閉じた後面(closed front face)を湾曲させ、閉鎖可能な換気用開口部をこの湾曲部に配置できる。
【0040】
含有空気はこの湾曲部に蓄積されるので、含有空気をこの場所で特に容易に除去できるようになっている。
【0041】
本発明では、2成分カートリッジ、第1の中空円筒体、および第2の中空円筒体は、ハウジング内に配置される。好ましくは、第1の管路手段、第1の逆止弁、第2の管路手段、および第2の逆止弁も、このハウジング内に配置される。
【0042】
その結果、ペースト塗布システム全体を1つのユニットとして片手で操作および保持できる。これにより、各可動部品の動きが未故意に阻止されないように、何れの可動部品も外部から遮断される。
【0043】
好適なペースト塗布システムは、視認可能な気泡なしに液体が液体用の中空空間に存在すること、および/または液体に含まれる気体の体積が5%未満、好ましくは1%未満、であることを特徴とすることができる。
【0044】
これにより、圧縮可能な気泡または含有空気がこの液体中に存在しないことを保証できる。圧縮可能な気泡または含有空気は、一方では、力を不要に吸収するので、その力が利用されず、他方では、力が作用しなくなると気泡または含有空気が膨張するので、ペースト塗布システムに力が手動で加えられていなくても、および更なる吐出が必要とされていなくても、ペーストを流し続けることになる。
【0045】
発生する力を引き受けるために、本発明では、圧力容器と2成分カートリッジの外壁との間の距離、および圧力容器と第1の中空円筒体の外壁との間の距離、を100μm未満、好ましくは50μm未満、にすることができる。これらの距離は、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体のそれぞれの性質によっては、それぞれの表面積全体にわたって指定する必要はなく、これらの距離をそれぞれの領域にわたって指定すれば十分な場合もある。
【0046】
これにより、圧力容器は、第1の中空円筒体および2成分カートリッジに接触して、またはほぼ接触して、せん断力およびねじり力を全て引き受けることができるので、極めて高い液圧によって第1の中空円筒体および2成分カートリッジが強く変形され得ないことが保証される。この対策がない場合、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体を単純なプラスチック材料で、および/または薄い肉厚で、製造することはできない。
【0047】
好適なペースト塗布システムでは、アルミニウム、アルミニウム合金、および高性能プラスチックから選択された材料で圧力容器を製造できる。特に好適なペースト塗布システムでは、熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアミド−CO−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンから選択された材料で圧力容器を製造できる。後者の各プラスチックは、高性能プラスチックと見なされる。
【0048】
その結果、材料の選択によって、圧力容器の十分な安定性が達成される。
【0049】
本発明によるペースト塗布システムの再利用可能な一改善態様では、液透過性の第3の管路手段と手で可逆的に閉鎖可能な第3の弁とによって、第1の中空円筒体を液体容器に接続できる。好ましくは、第1のプランジャと第1の中空円筒体の後壁との間の中空空間は、第3の管路手段と第3の弁とによって、液体容器に接続される。
【0050】
その結果、ペースト塗布システムの使用後、杵部を第1のプランジャと共に第1の中空円筒体に押し戻すことによって、液体を第1の中空円筒体から液体容器内に押し戻すことができる。したがって、この設計は、ペースト塗布システムの再使用を可能にする。この目的のために、空の2成分カートリッジをペースト塗布システムから、および/またはペースト塗布システムの圧力容器から、簡単に取り出せるので、充填された2成分カートリッジに交換することができる。
【0051】
本発明では、第1のプランジャの前面と第2のプランジャの前面との面積比を少なくとも10対1、好ましくは少なくとも20対1、特に好ましくは少なくとも30対1、にすることもできる。
【0052】
このような動力伝達比は、強い力の伝達を可能にするので、極めて高粘度のペーストでもペースト塗布システムから押し出すことができ、および/または両成分および/またはペーストを極めて強力なミキサーに通すことができる。
【0053】
更に、本発明では、2成分カートリッジは、カートリッジの内部空間を2つ備えることができ、カートリッジのこれら内部空間内で2つの供給プランジャは、軸線方向に移動可能であり、好ましくは、カートリッジの第1の内部空間は、カートリッジの第2の内部空間を同軸に包囲する。
【0054】
その結果、2つの成分は、カートリッジの2つの互いに隔離された内部空間に貯蔵される。その同軸配置は、発生する圧力に対して特に安定性のある構成である。同軸配置の代わりに、並列配置のカートリッジも使用可能である。この目的のために、圧力容器の形状を2成分カートリッジの形状に適合させる必要がある。
【0055】
本発明では、カートリッジの2つの内部空間は、供給プランジャとは反対側で、手動で着脱可能な閉止栓によって互いに隔離される、または隔離可能である。この閉止栓は、好ましくは、2成分カートリッジの前面の雌ねじ部にねじ込まれる、またはねじ込み可能である。
【0056】
これにより、ペースト塗布システムは、PMMA骨セメントの2つの出発成分の貯蔵にも極めて有用である。その理由は、PMMA骨セメントの2つの出発成分は互いに厳重に隔離して貯蔵する必要があり、そうしないと、セメントの時期尚早な硬化を招き、ペースト塗布システムが使いものにならなくなるからである。
【0057】
本発明では、圧力容器の前面および後面(front faces)に少なくとも1つの開口部を備えることが更に提案される。好ましくは、これら開口部の一方に気体放出用の弁が少なくとも1つ設けられる。
【0058】
第1の開口部は、ペーストの吐出用に設計され、反対側の後面(opposite front face)に設けられた他の少なくとも1つの開口部は、液体からの空気の放出用に、および/または液体の案内用に、設計される。
【0059】
本発明の根拠となっている各目的は、ペーストの混合および吐出のための方法によっても解決される。本方法は、
液体を液体容器から第1の逆止弁と第1の管路手段とを通して第2の中空円筒体の内部に案内するステップと、
その後に第2の中空円筒体内の第2のプランジャに手の圧力を加えることによって、液体を第2の中空円筒体から第2の逆止弁と第2の管路手段とを通して第1の中空円筒体に押し込むステップと、を含み、
第1の中空円筒体に押し込まれた液体は、この液体に面する表面が第2のプランジャより大きい第1のプランジャを2成分カートリッジの方向に押し、この第1のプランジャによって、または第1のプランジャに取り付けられた杵部によって、2成分カートリッジ内で軸線方向にシフト可能な少なくとも2つの供給プランジャが2成分カートリッジの少なくとも2つの内部空間内で推進され、2成分カートリッジから中身が押し出され、その後混合され、混合後に塗布される。
【0060】
好ましくは、本方法を出発成分の貯蔵に極めて適するようにすることもできる。この目的のために、本発明では、出発成分が貯蔵されているときは、閉止栓を2成分カートリッジに挿入して少なくとも2つの出発成分を閉止栓によって互いに隔離しておき、ペースト塗布システムの使用前に閉止栓を取り外すことができる。好ましくは、ペーストを塗布するための吐出管が、閉止栓の代わりに、2成分カートリッジに挿入される。
【0061】
本発明では、本方法を実施するために、本発明によるペースト塗布システムを使用できる。
【0062】
本発明では、液体が第1の中空円筒体に押し込まれるときに、および第1のプランジャおよび各供給プランジャが2成分カートリッジ内で推進されるときに、生じる力を、2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体を包囲する、好ましくは2成分カートリッジおよび第1の中空円筒体に接触する、圧力容器によって引き受けることもできる。圧力容器は、基本的に円筒形であることが好ましい。圧力容器は、好ましくは、内部空間を備え、その複数の領域は、円筒形である。
【0063】
更に、本発明では、第2のプランジャを復帰させることによって、液体容器からの液体を第2の中空円筒体に繰り返し充填可能である。この第2のプランジャの復帰は、好ましくは、第2のプランジャが押し込まれるときに張力が掛けられた圧縮ばねによって、または他の何れかの復帰要素によって、引き起こされる。
【0064】
本発明では、液体が液体容器から第2の中空円筒体に案内されるときに第1の逆止弁を開き、第2の逆止弁を閉じ、液体が第2の中空円筒体から第1の中空円筒体に押し込まれるときに第1の逆止弁を閉じ、第2の逆止弁を開くこともできる。
【0065】
本発明は、本発明による設計では、液圧用に十分であり、コンパクトかつ安価な設計を有し、更に、セメントの複数の成分の貯蔵に極めて適した、手動駆動式ペースト塗布システムを提供可能であるという驚くべき知見に基づく。
【0066】
人工膝関節および股関節のインプラントには、通常、40gから75gの骨セメントが必要とされる。独自の複数の実験では、セメント生地を内径9mmの吐出管内に生成するために、各60gの2つのセメントペーストを静的ミキサーによって混合した。これらの実験により、この2つのセメントペーストを静的ミキサーに通すには、25バールから45バールという極めて高い圧力が必要であることが証明された。複数のプラスチック製カートリッジと、これらカートリッジ内で軸線方向に移動可能な複数のプランジャとを用いた独自の実験の結果は、これらプラスチック製カートリッジは、25バールを超える圧力にさらされると、明らかな変形の徴候を示すことを実証した。このような変形は、弾性密封リングの使用にも拘らず、カートリッジの内面と各供給プランジャとの間からの漏出を招く。その結果、ペースト状の材料が漏出し得る。この理由により、本発明の範囲によると、2成分カートリッジと第1の中空円筒体とを包囲する、機械的荷重を引き受けることができる、好ましくは円筒形の、圧力容器が提案される。
【0067】
更なる複数の実験においては、セメントペーストの吐出中、複数の杵部による複数の供給プランジャの推進中に、20バールを超える内圧での変形または捻れによってセメントカートリッジが両杵部から離れないように、セメントカートリッジを適切に保持(store)することは極めて困難であることが見出された。独自の複数の実験では、アルミニウム合金製の複数のセメントカートリッジは、ポリメチルメタクリレートを含有するセメントペーストには適さないことが更に証明された。その理由は、セメントペーストがこれらセメントカートリッジ内に貯蔵されている間に、合金およびそこに含まれる銅およびマンガンなどの合金成分は、望ましくないラジカル重合を引き起こすからである。ポリメチルメタクリレートを含有するセメントペーストは、ポリ−アクリロニトリル−コ−メチルメタクリラートおよびポリブチレンテレフタラートなどの適したプラスチック材料で製造されたセメントカートリッジに貯蔵された場合にのみ、長期安定性がある。
【0068】
以下においては、本発明の一般的な例示的実施形態を説明する。
【0069】
一例示的ペースト塗布システムは、軸線方向にシフト可能な2つのプランジャを有する2成分カートリッジと、静的ミキサーが組み込まれた吐出管と、開いた前面と閉じた後面(closed front side)とを有する第1の中空円筒体であって、2つの杵部が取り付けられた軸線方向に移動可能な第1のプランジャがその内部に配置された第1の中空円筒体と、手動でシフト可能な第2のプランジャを収容する第2の中空円筒体と、軸線方向にシフト可能な第3の(feed)プランジャを有する液体容器とによって構成され、液体容器は、第1の管路手段と第1の逆止弁とによって液透過式に第2の中空円筒体に接続され、第2の中空円筒体は、第2の管路手段と第2の逆止弁とによって液透過式に第1の中空円筒体に接続される。
【0070】
この文脈において、2成分カートリッジと、2成分カートリッジの軸線方向上流(down stream)に配置された、軸線方向に移動可能な杵部を有する中空円筒体とは、ISO 527による引張弾性率が1,500MPaを超える円筒形の圧力容器内に配置される。この圧力容器は、前面および後面(front faces)の各々に少なくとも1つの開口部を有する。2成分カートリッジと軸線方向に移動可能な杵部との間の中空空間が周囲雰囲気に気体透過的に接続されるように、1つの開口部は、圧力容器のジャケット面に適切に配置される。
【0071】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に液体追加用の閉鎖可能な開口部が少なくとも1つ接続される。
【0072】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に接続される少なくとも1つの閉鎖可能な換気用開口部を配置可能である。
【0073】
更に、本発明では、液体容器と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第1のプランジャを有する第1の中空円筒体と、第2の管路手段と、第2の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャとによって形成された中空空間に、視認可能な気泡なしに、液体を配置できる。
【0074】
更に、本発明では、2成分カートリッジと、第1のプランジャと複数の杵部とを有する第1の中空円筒体と、第1の管路手段と、第1の逆止弁と、第2の中空円筒体と、第2のプランジャと、第2の管路手段と、第2の逆止弁とをハウジング内に配置できる。
【0075】
この例示的ペースト塗布システムでは、圧力容器と2成分カートリッジの外壁との間の距離、および圧力容器と第1の中空円筒体の外壁との間の距離は、100μm未満である。
【0076】
この文脈において、圧力容器は、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製または高性能プラスチック製とすることができ、ポリアミド、ポリアミド−コ−イミド、ポリスルフォン、ポリケトン、およびポリエーテルケトンが特に好適である。充填工程後に液体中に存在し得る含有空気を容易に放出できるように、第1の中空円筒体の閉じた後面(closed front face)は湾曲し、この湾曲部に閉鎖可能な換気用開口部が配置される。液体の充填のために、液体追加用の開口部が、好ましくは、液体容器に配置される。
【0077】
液体容器のプランジャの背後に張力が掛けられたばねが配置される。このばねは、プランジャを液体容器内で軸線方向に移動させ、液体を第1の管路手段と第1の逆止弁とを通して第2の中空円筒体に押し込む。第1のプランジャを用いて液体を第1の中空円筒体から液体容器に押し戻すために、ひいてはペースト塗布システムの再使用を可能にするために、および/または次回使用に備えるために、液透過性の第3の管路手段と可逆的に閉鎖可能な第3の弁とによって、第1の中空円筒体内の中空空間を液体容器に接続できる。この場合、充填された新しい2成分カートリッジを挿入するだけでよい。
【0078】
押し出しに必要な圧力を得るために、本発明では、第1のプランジャの前面面積と第2のプランジャの前面面積との面積比は、少なくとも20対1であり、好ましくは30対1を超える。
【0079】
以下に、本発明の更なる例示的実施形態を7つの概略図に基づき説明するが、この説明は、本発明の範囲を限定するものではない。