特許第6139627号(P6139627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139627
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】オープンシールド機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   E21D9/06 331
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-197311(P2015-197311)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-71891(P2017-71891A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 廣明
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−120130(JP,A)
【文献】 特許第3194190(JP,B2)
【文献】 特開昭62−133294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
函体設置部の上方に架構による函体吊下し設備を設けるオープンシールド機において、架構を形成する支柱下端はオープンシールド機にボルト止めするが、架構の支柱下端とオープンシールド機との間に先端に向かい暫時薄くなるテーパー板の斜角調整材を介在させたことを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
斜角調整材は端部に開口する切欠きスリットをボルト挿通孔として形成した請求項1記載のオープンシールド機。
【請求項3】
斜角調整材は先端薄い方の端縁にずれ止め用の拡径凸部を設ける請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項4】
支柱下端とオープンシールド機をボルト止めするボルト・ナットには斜角調整材と逆向きのテーパーの斜角調整ワッシャーを介在させる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のオープンシールド機。
【請求項5】
オープンシールド機には設置用のフランジを設け、一方、支柱の下端には接合用のフランジを設けて、これらフランジ相互に添わせて勾配調整用のボルトを設けた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のオープンシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、函体設置部の上方に門型架構による函体吊下し設備を設けるオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明者は先に、函体の吊り下ろしをスペースを取ることなく、簡単かつ迅速に行うことができるオープンシールド機について特許を取得した。
【特許文献1】特許第3194190号公報
【0003】
図8図9に示すように、オープンシールド機1は左右の側壁板1a,1aとこれら側壁板1a,1aと同程度の長さでその間を連結する底板1bとからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機で、機体の前後方向で隔壁4で仕切り、前部を主として掘削を行う掘削部2、後部をコンクリート函体吊降ろして設置する函体設置部3とし、函体設置部3はその前側に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0004】
オープンシールド機1の前記函体設置部3の上方に支柱15と梁材16からなる架構17にチェーンブロック等の巻上機18を前後動および左右動自在に設けてなるコンクリート函体吊降ろし用の門型クレーン19を立設した。
【0005】
巻上機18の前後動および左右動の機構としては種々考えられるが、巻上機18が自走車輪等で移動するレール部材20を架構17上にオープンシールド機1の幅方向に掛け渡し、このレール部材20を架構17上のオープンシールド機1の前後方向に設けた梁材16をレールとして自走車輪等で移動できるようにする。
【0006】
また、前記梁材16は前方および後方に延設してオープンシールド機1の前方に吊り上げ部25を突設し、また、後方にコンクリート函体吊り上げ部21を突設するようにした。これら吊り上げ部25およびコンクリート函体吊り上げ部21は巻上機18が前後方向に移動できる部分である。図中24はコンクリート函体8の吊り治具である。
【0007】
支柱15は4本であるが、その各々はオープンシールド機1からジャッキ22を介在して傾斜修正可能に立上げるようにする。
【0008】
このようにして掘削機7で掘削部2の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土してオープンシールド機1が前進するときは門型クレーン19もともに移動する。
【0009】
そして吊り降ろし用のコンクリート函体8は縦列の並ぶ既設のコンクリート函体8の上面を搬入路として台車23等でコンクリート函体吊り上げ部21に下まで運び込み、そのまま巻上機18で吊り込んでオープンシールド機1の後部の函体設置部3の上方まで移動させ、該函体設置部3内に吊り降す。
【0010】
また、掘削時での使用も可能であり、オープンシールド機1の前方に突設した吊り上げ部25まで巻上機18を移動させ、この巻上機18にバケット等(図示せず)を吊り下げて、掘削部2に近付けてバックホー等の掘削機で掘削した土砂をバケット等に受け、そのまま後方に移動させ、ダンプ等に積み替えることなどができる。
【0011】
なお、オープンシールド機1によるオープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、その一例を図10図13について説明すると、発進坑6と到達坑13との間で施工される。発進坑6内で前記オープンシールド機1を組立て、発進坑6の前の地盤を地上に設置したバックホー等のシャベル系の掘削機7で掘削部2の前方または内部を掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して発進坑6内の反力壁9に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体8を上方から函体設置部3内に吊り降す。なお、図示は省略するが、反力壁9とシールドジャッキ5との間の間隔が大きい場合にはストラット10を配設する。
【0012】
また、発進坑6はシートパイル等の矢板による土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進坑6の前方部分に地盤改良11を施しておくこともある。
【0013】
次いで、同様に掘削機7で掘削部2の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8を函体設置部3内に吊り降す。以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上にダンプで埋戻し14を施し、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。
【0014】
前記オープンシールド機1は、左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能として中折れ部を形成し、テール部後半を函体設置部とし、函体設置部の前側に後方へ向けてシールドジャッキを左右に寄せて、また、上下複数段に配設したものでもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
オープンシールド機1は方向およびピッチング、ローリングに対して修正しながら進行するが、このようなコンクリート函体8の吊り降ろしを行う時にオープンシールド機1が傾いている場合には門型クレーン19も傾いているが、前記特許文献1では4個のジャッキ22を適宜伸縮して傾斜計を見ながら門型クレーン19が水平になるようにしてから作業を行う。
【0016】
このようにオープンシールド機1のピッチング、ローリングに対して門型クレーン19の傾きを対処するのに4個のジャッキ22を適宜伸縮して傾斜計を見ながら門型クレーン19が水平になるようにしているが、その修正はかなり困難を伴うものであった。
【0017】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、函体設置部の上方に架構による函体吊下し設備を設けるオープンシールド機において、オープンシールド機のピッチング、ローリングに対してジャッキを用いることなく架構の傾き修正を簡単・かつ確実に行うことができるオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、函体設置部の上方に架構による函体吊下し設備を設けるオープンシールド機において、架構を形成する支柱下端はオープンシールド機にボルト止めするが、架構の支柱下端とオープンシールド機との間に先端に向かい暫時薄くなるテーパー板の斜角調整材を介在させたことを要旨とするものである。
【0019】
請求項1記載の本発明によれば、架構を形成する支柱下端はオープンシールド機にボルト止めするもので、簡単に架構をしっかりと設置でき、その時にテーパー板の斜角調整材を横から差し込み配置してオープンシールド機の傾きに対応して支柱を直立させることができる。
【0020】
請求項2記載の本発明は、斜角調整材は端部に開口する切欠きスリットをボルト挿通孔として形成したことを要旨とするものである。
【0021】
請求項2記載の本発明によれば、斜角調整材は切欠きスリットによりボルト挿通させながら配設することができ、1枚の板で斜角調整を行うことができる。
【0022】
請求項3記載の本発明は、斜角調整材は先端薄い方の端縁にずれ止め用の拡径凸部を設けることを要旨とするものである。
【0023】
請求項3記載の本発明によれば、斜角調整材を間にしてボルトで締めつけた場合に拡径凸部が接合の外に位置して斜角調整材が差し込み方向に逆戻りするようなずれを防止することができる。
【0024】
請求項4記載の本発明は、支柱下端とオープンシールド機をボルト止めするボルト・ナットには斜角調整材と逆向きのテーパーの斜角調整ワッシャーを介在させることを要旨とするものである。
【0025】
請求項4記載の本発明によれば、オープンシールド機の傾きが大きくなると支柱下端とオープンシールド機を止めるボルト・ナットも傾きが生じ、ボルトの締め付けが十分にできなくなるおそれがあるが、テーパーの斜角調整ワッシャーを介在させることで締め付けを確保することができる。
【0026】
請求項5記載の本発明は、オープンシールド機には設置用のフランジを設け、一方、支柱の下端には接合用のフランジを設けて、これらフランジ相互に添わせて勾配調整用のボルトを設けたことを要旨とするものである。
【0027】
請求項5記載の本発明によれば、オープンシールド機に対して架構を形成する支柱の傾きは勾配調整用のボルトをもってネジジャッキとして簡単に調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように本発明のオープンシールド機は、函体設置部の上方に架構による函体吊下し設備を設けるオープンシールド機において、オープンシールド機1のピッチング、ローリングに対してジャッキを用いることなく架構の傾き修正を簡単・かつ確実に行うことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す要部の説明図、図2は同上第2実施形態を示す要部の説明図である。
【0030】
図3に示すようにオープンシールド機1は函体設置部の上方に架構による函体吊下し設備を設けるもので、架構17は支柱15と梁材16とで構成する。
【0031】
オープンシールド機1には設置用のフランジ26を設け、一方、支柱15の下端には接合用のフランジ27を設けて、これらフランジ26とフランジ27とをボルト29とナット30で締結する。
【0032】
図中28は間隔調整材である。
【0033】
オープンシールド機1のピッチング、ローリングが起こると図示のようにテーパー状の隙間が生じる。
【0034】
本発明は構の支柱15下端とオープンシールド機1との間、すなわちフランジ26とフランジ27とに、先端に向かい暫時薄くなるテーパー板の斜角調整材31を横から差し込み配置して、この先端に向かい暫時薄くなるテーパー板の斜角調整材31を介在させた。
【0035】
図4図5にこの斜角調整材31を示すが全体が矩形の板体であり、暫時薄くなるテーパーの向きとは直交する向きに、端部に開口する切欠きスリット33をボルト挿通孔として形成した。
【0036】
また、斜角調整材31は先端薄い方の端縁にずれ止め用の拡径凸部32を設ける。この拡径凸部32には極短い鋼棒が利用できる。
【0037】
図中34はボルト29とナット30にスプリングワッシャー35とともに介在させる斜角調整ワッシャーであり、前記斜角調整材31と逆向きのテーパーのものである。
【0038】
このようにして、フランジ26とフランジ27の間に斜角調整材31を横方から差し入れてボルト29とナット30での締結を行う。
【0039】
斜角調整材31は図4に示すようにテーパー角の大小により複数あるもので、適宜選択して前記テーパー状の隙間を補完することで、オープンシールド機1が傾いていても支柱15を直立させることができる。
【0040】
図1は間隔調整材28を用いない場合、図2は用いる場合である。
【0041】
なお、オープンシールド機に設けた設置用のフランジ26と支柱15の下端に設けた接合用のフランジ27とに跨るように勾配調整用のボルト36を設け、この勾配調整用のボルト36で支柱15の傾きを調整できるようにする。
【0042】
勾配調整用のボルト36はいわゆるネジジャッキを構成するもので、フランジ27側に突設する支承板37に設けたナット38を貫通し、先端がフランジ26側に突設する受圧板39に当接する。
【0043】
このようにしてナット38からのボルト36の突きだし長さを調整することで、フランジ26とフランジ27の離間距離(支柱15の傾き)を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す要部の説明図である。
図2】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す要部の説明図である。
図3】オープンシールド機と函体吊下し設備を設ける架構との説明図である。
図4】斜角調整材の側面図である。
図5】斜角調整材の平面図である。
図6】斜角調整ワッシャーの説明図である。
図7】勾配調整用のボルトを設けたオープンシールド機と函体吊下し設備を設ける架構との説明図である。
図8】従来例を示す側面図である。
図9】従来例を示す正面図である。
図10】オープンシールド工法の概要を示す第1工程の縦断側面図である。
図11】オープンシールド工法の概要を示す第2工程の縦断側面図である。
図12】オープンシールド工法の概要を示す第3工程の縦断側面図である。
図13】オープンシールド工法の概要を示す第4工程の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…オープンシールド機 1a…側壁板
1b…底板 2…掘削部
3…函体設置部 4…隔壁
5…シールドジャッキ 6…発進坑
7…掘削機 8…コンクリート函体
9…反力壁 10…ストラット
11…地盤改良 12…トラッククレーン
13…到達坑 14…埋戻し
15…支柱 16…梁材
17…架構 18…巻上機
19…門型クレーン 20…レール部材
21…コンクリート函体吊り上げ部
22…ジャッキ 23…台車
24…吊り治具 25…吊り上げ部
26…フランジ 27…フランジ
28…間隔調整材 29…ボルト
30…ナット 31…斜角調整材
32…拡径凸部 33…切欠きスリット
34…斜角調整ワッシャー 35…スプリングワッシャー
36…勾配調整用のボルト 37…支承板
38…ナット 39…受圧板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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