(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139628
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】一体化された電鋳金属部品
(51)【国際特許分類】
G04B 37/22 20060101AFI20170522BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20170522BHJP
G04B 1/14 20060101ALI20170522BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G04B37/22 F
G04B13/02
G04B1/14
C25D1/00 341
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-199175(P2015-199175)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-80699(P2016-80699A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】14189332.1
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デュボワ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・シャルボン
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−096009(JP,A)
【文献】
特開2014−010155(JP,A)
【文献】
特開2001−342591(JP,A)
【文献】
特開2004−204355(JP,A)
【文献】
特開2003−286561(JP,A)
【文献】
特開平04−122885(JP,A)
【文献】
特開2016−017205(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0105454(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0003203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/22
G04B 1/14
G04B 13/02
G04B 15/14
G04B 17/06
G04B 19/06
C25D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップされた水素を含む電鋳金属の本体を有する一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)であって、
前記本体の外表面(19)全体においては、当該一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)の耐摩耗性を改善するように、10未満の比透磁率(μR)及びはめ込みの対象となる性質を維持しつつ、所定の深さ(E1)までにのみ、前記本体の残りと比べてトラップされた水素が脱離しており、硬化をもたらしている
ことを特徴とする一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)。
【請求項2】
前記所定の深さ(E1)は、当該一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)の総厚み(ET)の0.1%〜10%である
ことを特徴とする請求項1に記載の一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)。
【請求項3】
前記金属は、アモルファス形態で電鋳され、前記外表面(19)は、前記電鋳された金属の少なくとも部分的に結晶性の相を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)。
【請求項4】
前記外表面(19)は、前記本体の残りの電鋳された金属よりも粒度が大きい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)。
【請求項5】
前記電鋳された金属は、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン又はニッケル−コバルト−リンの合金である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)を有する
ことを特徴とする計時器。
【請求項7】
前記一体の部品は、当該計時器の外側の一部を形成する
ことを特徴とする請求項6に記載の計時器。
【請求項8】
前記一体の部品は、当該計時器のムーブメントの一部を形成する
ことを特徴とする請求項6に記載の計時器。
【請求項9】
一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)を製造する方法であって、
a)導電性の基材(3)に型(1)を形成するステップと、
b)少なくとも1つの一体の金属部品を形成するように、電鋳することによって前記型(1)に充填していくステップと、
c)前記導電性の基材及び前記型から前記少なくとも1つの一体の金属部品を解放するステップと、及び
d)電鋳時に前記少なくとも1つの一体の金属部品においてトラップされた水素を脱離させて、前記本体の前記外表面(19)全体の所定の深さ(E1)までにわたってのみ前記本体の残りと比べて硬化させるステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記所定の深さ(E1)は、前記少なくとも1つの一体の部品(17、27、37、41、42、43、44、45、47)の総厚み(ET)の0.1%〜10%である
ことを特徴とする請求項9に記載の方法、
【請求項11】
前記金属は、ステップb)においてアモルファス形態にて電鋳され、前記外表面は、前記電鋳された金属の少なくとも部分的に結晶性の相を有する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記外表面は、ステップb)において電鋳された前記金属よりも大きな粒度を有する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)において電鋳された前記金属は、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン又はニッケル−コバルト−リンの合金である
ことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ステップd)は、水素の分圧が低い制御された雰囲気において行われる
ことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記制御された雰囲気は、周囲気圧において95%の二窒素及び5%の二水素で形成される
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)は、真空で行われる
ことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップd)は、250℃〜450℃の温度で15〜240分行われる
ことを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体化された電鋳金属部品に関し、特に、耐摩耗性が改善された一体化された電鋳金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
LIGAプロセスを使用して一体の金属部品を形成することが知られている。LIGAプロセスとは、フォトリソグラフィーなどによる型の形成、及び電鋳を使用するこの型の充填とが組み合わされるプロセスである。
【0003】
しかし、これらの電鋳部品は、一般的には、柔らかすぎであって、耐摩耗性が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、10未満の比透磁率及びはめ込み又は圧着の対象となる性質を維持しつつ耐摩耗性が改善された一体化された電鋳部品と、及び表面の深さを容易に制御することができる表面硬化ステップを有する製造手法とを提案することによって、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、トラップされた水素を含む電鋳金属の本体を有する一体の部品に関し、前記本体の外表面においては、当該一体の部品の耐摩耗性を改善するように、10未満の比透磁率及びはめ込み又は圧入の対象となる性質を維持しつつ、所定の深さまでにのみ、前記本体の残りと比べてトラップされた水素が脱離しており、硬化をもたらしている。
【0006】
このようにして、驚くべきことに、このような電鋳金属体の表面硬化によって、本発明によると、好ましいことに、10未満の比透磁率及びはめ込み又は圧入の対象となる性質を維持しつつ、一体の部品の耐摩耗性を改善することが可能になる。
【0007】
本発明の他の好ましい変種によると、
− 前記所定の深さは、前記少なくとも1つの一体の部品の総厚みの0.1%〜10%である。
− 前記金属は、アモルファス形態で電鋳され、前記外表面は、前記電鋳された金属の少なくとも部分的に結晶性の相を有し、又は前記金属体の残りの電鋳された金属よりも粒度が大きい。
− 前記電鋳される金属は、ニッケル、金又は白金を含有し、例えば、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン又はニッケル−コバルト−リンの合金である。
【0008】
また、本発明は、前記変種のいずれかの部品を有する計時器に関し、この部品は、当該計時器の外側の一部又は当該計時器のムーブメントの一部を形成する。
【0009】
最後に、本発明は、一体の部品を製造する方法であって、
a)導電性の基材に型を形成するステップと、
b)少なくとも1つの一体の金属部品を形成するように、電鋳することによって前記型に充填していくステップと、
c)前記基材及び前記型から前記少なくとも1つの一体の金属部品を解放するステップと、及び
d)電鋳時に前記少なくとも1つの一体の金属部品においてトラップされた水素を脱離させて、前記本体の前記外表面の所定の深さまでにわたってのみ前記本体の残りと比べて硬化させることによって電鋳金属の別の形態を作るステップと
を有するものに関する。
【0010】
驚くべきことに、得られた一体の金属部品における水素脱離を制御することによって、得られた一体の金属部品の外表面を、容易に制御される深さまでにわたって、硬化することが可能になる。したがって、外表面から部品の中心への硬化前線を達成し制御することが容易であることがわかる。
【0011】
この驚くべき性質は、熱処理が常に均質であるという技術的な先入観に反するものである。すなわち、このような硬化は、部品の外表面とコア部の間で有効である。特に、厚みが200μmを超えることが稀であるような計時器の部品においてである。
【0012】
本発明の他の好ましい変種によると、
− 前記所定の深さは、前記少なくとも1つの一体の部品の総厚みの0.1%〜10%である。
− 前記金属は、ステップb)においてアモルファス形態にて電鋳され、前記外表面は、前記電鋳された金属の少なくとも部分的に結晶性の相を有し、又はステップb)において電鋳された前記金属よりも大きな粒度を有する。
− ステップb)において電鋳された金属は、ニッケル、金又は白金を含有する。例えば、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン又はニッケル−コバルト−リンの合金である。
− ステップd)は、水素の分圧が低い制御された雰囲気において行われる。この制御された雰囲気は、周囲気圧において95%の二窒素及び5%の二水素で形成される。
− ステップd)は、真空で行われる。
− ステップd)は、250℃〜450℃の温度で15〜240分行われる。
【0013】
添付図面を参照する以下の説明(例としてのみ示している)によって、他の特徴及び利点を明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る方法のステップa)で形成される型を表す斜視図である。
【
図2】本発明に係る方法のステップc)によって解放された部品を表す斜視図である。
【
図3】本発明に係る方法のステップc)によって解放された部品を表す断面図である。
【
図4】本発明に係る方法のステップd)で形成される複合部品を表す断面図である。
【
図5】本発明に係る方法の脱離ステップにおける因子についての変化の結果について説明するためのグラフである。
【
図6】計時器の外側部品に対して本発明を適用した図である。
【
図7】計時器用ムーブメントに対して本発明を適用した図である。
【
図8】計時器用ムーブメントに対して本発明を適用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上で説明したように、電鋳部品は、LIGAプロセスによって得られる場合は特に、寸法については非常に満足を与えるものである。しかし、一般的には、柔らかすぎ、したがって、耐摩耗性が不十分である。
【0016】
下で説明する最近の進展に続いて、驚くべきことに、容易に制御できる深さまでにわたって、電鋳部品の外表面を硬化できることがわかった。
【0017】
この驚くべき性質は、熱処理が常に均質であるという技術的な先入観に反するものである。言い換えると、前記のような硬化が、部品の外表面とコア部の間で有効であることがわかった。特に、厚みが200μmを超えることが稀である計時器の部品においてである。
【0018】
本発明によって、好ましいことに、電鋳された本体で形成された一体の部品は、外表面を有し、これは、所定の深さまでにわたってのみ、電鋳金属体においてトラップされた水素が脱離する。これによって、本体の残りと比べて硬化をもたらす。
【0019】
実際に、用いられる材料に依存して、磁場に感受性がない金属部品を電鋳することができる。しかし、このようにして当初は均質な手法で電鋳された金属を表面的に転換する硬化を行うと、磁場に対する感受性が高いことがある一方、はめ込みや圧入が可能となるように可塑性の範囲を非常に限られたものとするような、異なる形態となる。
【0020】
結果的に、電鋳金属体の驚くべき表面硬化を使用することによって、本発明によると、10未満の比透磁率及びはめ込みや圧入の対象となる性質を維持しつつ、一体の部品の耐摩耗性を改善することができる。
【0021】
本発明に係る製造方法は、
図1に示すように、導電性基材3上に型1を形成するように意図した第1のステップa)を有する。基材3は、鋼又はドープされたケイ素のように本来的に導電性であったり、又はガラス、セラミックス又は金及び/又はクロム被覆ケイ素のような導電層で被覆されていたりすることができる。
【0022】
図1に示す例において、型1は、中央の部分2と周辺部分4をフォトリソグラフィー形成することによって得られる樹脂で形成される。これらの中央の部分2と周辺部分4の間の間隙が、将来的な一体の部品のネガパターン5を正確に形成するために使用される。もちろん、このような型の利点は、単一のパターン5に制限されないということである。したがって、好ましいことに、同じ基材上でいくつかのパターン5を設けることができ、そのいくつかのパターンどうしは同一であっても同一でなくてもよい。
【0023】
本方法は、少なくとも1つの一体の金属部品を形成するために、電鋳によって型1に充填していくことを意図した第2のステップb)に続く。この電鋳は、ネガパターン5の底を形成する基材3の導電性の面を接続することによって行われる。好ましくは、ステップb)において電鋳される金属は、ニッケル、金又は白金を含有する。
【0024】
さらに好ましくは、計時器の外側部品又は計時器用ムーブメントの部品のような計時器の部品を形成するためには、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン又はニッケル−コバルト−リンの合金が、特に有利であることがわかった。
図1に示す例において、ネガパターン5は車の形である。
【0025】
本方法は、
図2に示すように、基材3及び型1から前記少なくとも1つの一体の金属部品7を解放するように意図した第3のステップc)を有する。この図において、前記一体の金属部品7が貫通穴6及び歯8を有し、これによって、歯車を形成することがわかる。ステップc)は、用いられる基材3の種類及び用いられる型1の種類に依存する。得られた前記少なくとも1つの一体の金属部品7の損傷がないように維持するために、一般的には、選択的化学的エッチングが用いられる。
【0026】
本発明によると、好ましいことに、本方法は、さらに、ステップb)における電鋳時に前記少なくとも1つの一体の金属部品内にトラップされた水素を脱離させることを意図した最後のステップd)を有する。実際に、最近の展開に続いて、電鋳するステップ時に水素がトラップされることを発見した。
【0027】
したがって、驚くべきことに、得られる前記少なくとも1つの一体の金属部品7における水素脱離を制御することによって、得られた前記少なくとも1つの一体の金属部品7の外表面を、容易に制御することができる深さまでにわたって、硬化することが可能になる。したがって、外表面から部品の中心への硬化前線を達成し制御することは容易であることがわかる。
【0028】
図4に示すように、部品7に由来する複合部品17を得られることがわかる。このようにして、外表面19は、所定の深さE
1までのみ、ステップb)において元々電鋳された本体20の残りと比べての硬化がもたらされる電鋳金属の別の形態を有する。部品17は、好ましいことに、その原形状、すなわち、歯18と貫通穴16を維持する。
【0029】
したがって、所定の深さE
1が一体の部品17の総厚みE
Tの0.1%〜10%であるような場合、すなわち、2・E
1=(0.1%〜10%)・E
Tの場合、驚くべきことに、比透磁率μ
Rを10未満に維持しはめ込み又は圧入の対象となる性質を維持しつつ、耐摩耗性が30%増加した部品を作ることができることを試験によってわかった。
【0030】
選択される材料に依存して、外表面は、本体の残りと比べて粒度が大きくなっていたり、又は本体の残りと比べて相変化していたりする。例えば、アモルファス相から少なくとも部分的に結晶性の相への変化である。
【0031】
本発明によれば、ステップd)は、トラップされた水素が部品7から出ていくように、水素の分圧が低い制御された雰囲気又は真空にて行うことができる。例として(これに制限されない)、1つの可能性のある制御された雰囲気は、周囲気圧で95%の二窒素及び5%の二水素で作られた流体からなることができる。最後に、用いられる材料に応じて、ステップd)は、250℃〜450℃の温度で15〜240分続くことができる。
【0032】
好ましいことに、本発明によると、外表面から部品の中心への硬化前線を制御するのは容易である。実際に、
図7は、下側歯24、上側歯28及び貫通穴26を有するニッケル−リンで作られた共軸の一体化された車27に対して本発明を適用した例を示している。
【0033】
図5に示すように、ステップd)のパラメーターは、一体の部品27に対する影響を示すグラフとなるように変更されている。横軸は、周囲気圧で95%の二窒素及び5%の二水素で作られた制御された雰囲気において300℃で行われるステップd)の継続時間を時間(H)で示している。縦軸は、左側にビッカース硬さ(HV)、右側に比透磁率(μ
R)を示している。
【0034】
三角印(△)のある線は、負荷が10g(HV 0.01)のビッカース硬さを表す。丸印(○)のある線は、負荷が500g(HV 0.5)のビッカース硬さを表し、また、正方形印(□)のある線は、負荷が10gの試験と負荷が500gの試験との間の硬度の相違を表している。×印がある線は、比透磁率μ
Rの進展を表している。
【0035】
三角印(△)のある曲線を観察すると、300℃における脱離の最初の1時間に部品27の外側の硬度が急に増加し、次に、1000HV近くの漸近線の方に近づいていることがわかる。比較すると、約3μmの深さにおける硬度を表す丸印(○)のある曲線は、300℃における1時間の脱離までは事実上安定している。このように、正方形印(□)のある曲線でわかるように、非常に漸進的な転換前線が達成される。また、この正方形印(□)のある曲線からは、約300HVの相違を表す箇所において、75分間の加熱で極値に達している。
【0036】
上で説明したように、本発明は、10未満の比透磁率μ
Rを維持し、部品がはめ込み又は圧入の対象になる性質を維持しつつ、耐摩耗性を向上させることを目的とする。破線を境界とする面を
図5に示しており、これは、これらの条件が観察される範囲を表している。300℃におけるステップd)の継続時間の範囲は、一体化されたニッケル−リン部品27のための好ましい妥協案を提供しており、これは、15〜90分間続くことがわかる。しかし、用いられる用途と材料に依存して、この範囲は、明らかに、15〜240分間続くことがある。
【0037】
試験を踏まえると、一体化されたニッケル−リン部品27について300℃におけるステップd)の継続時間は、1時間であることが最適であると思われる。なぜなら、外表面の硬さが、水素が出ていくに従って部品の内部の方に徐々に伝搬する樹枝状の相転移の前線によって形成され、約850HVであり、一方で、約3μmの深さの硬度が、アモルファス相で形成されて、約600HVで変わらない点からである。また、比透磁率は、引き続き1.5に制限され、これによって、一体の部品が磁場に対して非感受性となる。最後に、試験の後に、計時器用車セットを形成するための通常の方法を使用して、依然として一体の部品27をアーバーにはめ込み又は圧入の対象になることができることがわかった。
【0038】
本発明に係るステップd)は、内部応力を緩めるために約200℃で一般に行われる金属の通常の熱処理とは異なるものである。例えば、ニッケル−リンの場合、上記の現象は、250℃より相当に高い温度でのみ発生するものである。
【0039】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が思いつく種々の変種や改変を行うことができる。具体的には、製造する部品の最適なパラメーターを決定するために、用途、温度、用いられる材料及びステップd)の継続時間に応じて、同じ試験を行われなければならない。
【0040】
図8に示す例において、メインばね37のような計時器用ばねは、車セットのようにはめ込み又は圧入の対象となる必要がなく、その目36によってバレルアーバー(図示せず)のコア部のフックに連結されるだけである。よって、これは、計時器のパワーリザーブを長くするために、もちろん、より長い、例えば、90〜240分の、ステップd)を経るようにすることができる。また、メインばね37が電鋳されるので、メインばね37を下げる時に実質的に一定の弾性トルクを与え、及び/又は細長片34と一体化されたブライドル38を有するように意図された可変の断面を細長片34が有することができる。
【0041】
同様に、
図6に示すように、本発明の適用の対象は、計時器用ムーブメントの部品に制限されず、本発明は、計時器の外側部品にも有利に適用することができる。実際に、計時器の裏蓋41及びベゼル43は、一般的には、はめ込み又は圧入の対象となるが、ケース中間部45、腕輪47、押しボタン42又はクラウン44の場合では必ずしもそうではない。
【0042】
したがって、腕輪47のケース中間部45又はリンク46が、耐摩耗性を改善して計時器が着用の際に傷つくことが少なくなるように、より長いステップd)を経るようにすることができる(これに制限されない)。すなわち、例えば、90〜240分を伴うことができる。
【0043】
また、本方法は、本発明の範囲から逸脱せずに適合することができる。したがって、ステップd)の前に穴6内に犠牲体積を堆積させることを考えられる。これによって、穴16、26の壁における硬化前線の進展を制限することができるようになり、そのために、その後で、一体の部品17、27をはめ込みしたり圧入したりすることをさらに容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 型
3 基材
19 外表面
17、27、37、41、42、43、44、45、47 一体の部品