特許第6139651号(P6139651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139651エレベータの点検作業支援システム、およびこれに利用する点検作業支援装置、点検作業支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6139651
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】エレベータの点検作業支援システム、およびこれに利用する点検作業支援装置、点検作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20170522BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-255994(P2015-255994)
(22)【出願日】2015年12月28日
【審査請求日】2015年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 卓
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−153581(JP,A)
【文献】 特開平06−245378(JP,A)
【文献】 特開2012−063842(JP,A)
【文献】 特開2015−044667(JP,A)
【文献】 特開2014−065554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 3/00−3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されたエレベータ内の点検用品の識別情報を有し、対応する点検用品またはその近辺に貼付されたマーカと、作業員に所持される点検作業支援装置とを備え、
前記点検作業支援装置は、
予め設定された、前記エレベータ内の点検用品ごとの点検項目と、前記点検項目ごとの点検作業を実施するための前記エレベータの稼動状態の条件である実施可能条件とを格納した点検項目データベースと、
前記マーカから点検用品の識別情報を取得するマーカ情報解析部と、
前記マーカ情報解析部で取得された点検用品の識別情報に対応する点検項目と、当該点検項目の実施可能条件とを前記点検項目データベースから抽出するとともに、前記エレベータの現在の稼動状態を取得し、抽出した点検項目ごとに、前記エレベータの現在の稼動状態が、該当する実施可能条件を満たすか否かを判定する稼動状態判定部と、
前記稼動状態判定部で判定された結果を出力する点検情報出力部と
を備えることを特徴とするエレベータの点検作業支援システム。
【請求項2】
前記マーカは、対応する点検用品の識別情報を示した表示物で構成され、
前記点検作業支援装置は、前記マーカを撮影する撮像部をさらに有し、
前記マーカ情報解析部は、前記撮像部で撮影されたマーカの撮像情報を解析して、当該マーカで示される点検用品の識別情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項3】
前記マーカは、対応する点検用品の設置場所を示す情報を有し、
前記点検作業支援装置のマーカ情報解析部は、前記撮像部で撮影されたマーカの撮像情報を解析して、当該マーカで示される点検用品の識別情報および設置場所の情報を取得し、
前記点検情報出力部は、前記マーカ情報解析部で取得された識別情報に対応する点検用品と同じ設置場所の他の点検用品で点検が完了していない点検項目を表示する
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項4】
前記点検情報出力部は、前記稼動状態判定部で抽出された点検項目を、実施可能条件を満たす点検項目と実施可能条件を満たさない点検項目とで区別し、実施可能条件を満たさない点検項目に対する実施可能条件の情報を付加した表示情報を出力する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項5】
前記点検作業支援装置は、
前記作業員が発した音声内容を認識する音声認識部と、
前記音声認識部で認識された音声内容が、前記稼動状態判定部で抽出された点検項目のいずれかに対応しているときには、当該音声内容に該当する点検項目を、前記点検情報出力部の出力対象から削除する情報更新部とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項6】
前記点検作業支援装置は、
前記作業員が、作業を終了した点検用品を指さす動作を行ったときに、当該動作を認識する動作認識部をさらに有し、
前記情報更新部は、前記音声認識部で認識された音声内容が、前記稼動状態判定部で抽出された点検項目のいずれかに対応し、且つ、前記動作認識部で前記作業員により当該点検項目に対応する点検用品を指さす動作が行われたことが認識されると、該当する点検項目を、前記点検情報出力部の出力対象から削除する
ことを特徴とする請求項5に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項7】
前記点検作業支援装置は、
前記作業員が作業対象としている点検用品と同じ設置場所のすべての点検用品の点検が完了したと判断されると、点検作業の実施状況を所定形式のテキスト情報で示す点検作業報告書情報を作成する報告書作成部をさらに有する
請求項1〜6いずれか1項に記載のエレベータの点検作業支援システム。
【請求項8】
建物に設置されたエレベータ内の点検用品ごとの点検項目と、前記点検項目ごとの点検作業を実施するための前記エレベータの稼動状態の条件である実施可能条件とを予め格納した点検項目データベースと、
前記エレベータ内の点検用品の識別情報を有し、対応する点検用品またはその近辺に貼付されたマーカから、点検用品の識別情報を取得するマーカ情報解析部と、
前記マーカ情報解析部で取得された点検用品の識別情報に対応する点検項目と、当該点検項目の実施可能条件とを前記点検項目データベースから抽出するとともに、前記エレベータの現在の稼動状態を取得し、抽出した点検項目ごとに、前記エレベータの現在の稼動状態が、該当する実施可能条件を満たすか否かを判定する稼動状態判定部と、
前記稼動状態判定部で判定された結果を出力する点検情報出力部と
を備えることを特徴とするエレベータの点検作業支援装置。
【請求項9】
エレベータの点検作業支援装置が、
建物に設置されたエレベータ内の点検用品ごとの点検項目と、前記点検項目ごとの点検作業を実施するための前記エレベータの稼動状態の条件である実施可能条件とを点検項目データベースに格納する点検情報格納ステップと、
前記エレベータ内の点検用品の識別情報を有し、対応する点検用品またはその近辺に貼付されたマーカから、点検用品の識別情報を取得するマーカ情報解析ステップと、
前記マーカ情報解析ステップで取得された点検用品の識別情報に対応する点検項目と、当該点検項目の実施可能条件とを前記点検項目データベースから抽出するとともに、前記エレベータの現在の稼動状態を取得し、抽出した点検項目ごとに、前記エレベータの現在の稼動状態が、該当する実施可能条件を満たすか否かを判定する稼動状態判定ステップと、
前記稼動状態判定ステップで判定された結果を出力する点検情報出力ステップと
を有することを特徴とするエレベータの点検作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの点検作業支援システム、およびこれに利用する点検作業支援装置、点検作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータを構成する設備は、乗りかご、乗場、昇降路、ピット、機械室などの様々な場所に設置されており、点検の際には、これらの場所の各設備内の多数の箇所を短時間で効率良く回って作業することが求められる。そのため、予め点検作業の実施項目をまとめたチェックシートやスマートデバイスへの出力情報を作成しておき、これらを用いてチェックをしながら点検作業を行うことで点検漏れを防止するよう、対策がとられている。
【0003】
しかし、点検作業中は工具を用いたり不安定な体勢を手で支えたりすることがあり、チェックシートへの記入やスマートデバイスの操作等を行うことができない場合が少なくない。
【0004】
そこで、予め点検場所にカメラ装置を設置し、当該カメラ装置により撮影された撮像情報を用いて点検作業を確認するシステムがある。このようなシステムを用いることにより、作業員が都度チェックシートへの記入やスマートデバイスの操作を手で行うことなく、点検漏れの有無をチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−148570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したようなシステムを用いるためには各点検場所にカメラ装置を設置しなければならず、コストがかかるとともに構築のために煩雑な作業が必要になるという問題があった。
【0007】
また、カメラ装置、GPS(Global Positioning System)、および加速度センサ等の機能が搭載された携帯端末を作業員が所持し、これらの機能により得られた情報を用いて点検個所や作業の実施内容を特定するとともに、点検作業の実施状況を確認するシステムがある。
【0008】
しかし、このシステムでは高度な画像処理技術を用いるため、処理時間が長くなり、タイムリーに作業の確認情報を通知することが困難になるという問題があった。また、エレベータ内の点検作業は建物内を上下方向に移動しながら実施することがほとんどであり、GPS機能を用いた作業位置の特定が困難であり、実用性に欠けるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、エレベータ内の各設備の点検作業を支援することが可能なエレベータの点検作業支援システム、およびこれに利用する点検作業支援装置、点検作業支援方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための実施形態によれば点検作業支援装置は、点検項目データベースとマーカ情報解析部と稼動状態判定部と点検情報出力部とを備える。点検項目データベースは、点検用品ごとの点検項目と実施可能条件とを格納する。マーカ情報解析部は、エレベータ内の点検用品の識別情報を有して対応する点検用品またはその近辺に貼付されたマーカから、点検用品の識別情報を取得する。稼動状態判定部は、解析により取得された点検用品の識別情報に対応する点検項目と実施可能条件とを抽出し、点検項目ごとに、エレベータの現在の稼動状態が該当する実施可能条件を満たすか否かを判定する。点検情報出力部は、判定された結果を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1〜第5実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成を示す全体図。
図2】第1実施形態による点検作業支援装置の構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態による点検作業支援装置の点検項目データベースに格納された情報の一例を示す表。
図4】第1実施形態による点検作業支援装置の動作を示すフローチャート。
図5】第1実施形態による点検作業支援装置により表示情報が表示された状態を示す説明図。
図6】第1実施形態による点検作業支援装置により表示された表示情報の表示例を示す画面構成図。
図7】第2および第3実施形態による点検作業支援装置の構成を示すブロック図。
図8】第2実施形態による点検作業支援装置の動作を示すフローチャート。
図9】第3実施形態による点検作業支援装置の動作を示すフローチャート。
図10】第4実施形態による点検作業支援装置の構成を示すブロック図。
図11】第4実施形態による点検作業支援装置の動作を示すフローチャート。
図12】第5実施形態による点検作業支援装置の構成を示すブロック図。
図13】第5実施形態による点検作業支援装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態による点検作業支援システム1Aは、エレベータ10の点検作業を支援するシステムであり、エレベータ10内の複数の点検用品またはその近辺に貼付されたマーカ2−1〜2−4と、エレベータ情報送信装置3と、点検作業支援装置4Aとを備える。エレベータ10は、昇降路11の上部の機械室12に設置された巻上げ機13と、巻上げ機13に掛け渡されたロープの一端に吊り下げられた乗りかご14と、乗りかご14上に設置されたドアモータ15と、機械室12に設置されて乗りかご14にテールコードで接続された制御盤16と、昇降路11の下部のピット17に設置された緩衝器18とを備える。
【0013】
マーカ2−1は、点検用品である制御盤16を識別する記号「C」が、当該制御盤16の設置場所である機械室12を識別する図形「□」の中に示された表示物であり、制御盤16またはその近辺に貼付されている。またマーカ2−2は、点検用品である巻上げ機13を識別する記号「M」が、当該巻上げ機13の設置場所である機械室12を識別する図形「□」の中に示された表示物であり、巻上げ機13またはその周辺に貼付されている。また、マーカ2−3は、点検用品であるドアモータ15を識別する記号「DM」が、当該ドアモータ15の設置場所である乗りかご14上を識別する図形「○」の中に示された表示物であり、ドアモータ15またはその近辺に貼付されている。マーカ2−4は、点検用品である緩衝器18を識別する記号「B」が、当該緩衝器18の設置場所であるピット17を識別する図形「△」の中に示された表示物であり、緩衝器18またはその近辺に貼付されている。
【0014】
エレベータ情報送信装置3は機械室12に設置され、制御盤16からエレベータ10に供給される電力の電源状態や運転モードを含む稼働状態に関する情報を所定時間間隔で取得し、無線LANや赤外線通信により点検作業支援装置4Aに送信する。
【0015】
点検作業支援装置4Aは作業員により所持されるスマートデバイス等で構成され、図2に示すように、点検項目データベース41と、撮像部42と、マーカ情報解析部43と、稼動状態判定部44と、点検情報出力部45とを有する。
【0016】
点検項目データベース41は、エレベータ10の点検に関する情報、例えば点検用品の設置場所や、点検用品ごとの点検項目、および当該点検項目を実施するためのエレベータの稼動状態の条件である実施可能条件等を格納する。撮像部42は、作業員の操作により静止画または動画による撮影処理を行う。マーカ情報解析部43は、撮像部42でマーカ2−1〜2−4のいずれかが撮影されると、得られた撮像情報を解析して、当該マーカで示される点検用品の設置場所の情報および点検用品の識別情報を取得する。稼動状態判定部44は、マーカ情報解析部43で取得された点検用品の設置場所の情報および点検用品の識別情報に基づいて、作業員が作業対象としている点検用品の点検項目および当該点検項目の実施可能条件を点検項目データベース41から取得するとともに、エレベータ10の現在の稼動状態を取得する。そして、取得した点検項目ごとに、エレベータ10の現在の稼動状態が実施可能条件を満たすか否かを判定する。点検情報出力部45は、稼動状態判定部44で判定された結果を示す表示情報を生成し、作業員に報知するために出力する。
【0017】
〈第1実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータの点検作業支援システム1Aで実行される処理について説明する。本実施形態による点検作業支援システム1Aの点検作業支援装置4Aの点検項目データベース41の一例を、図3に示す。図3に示す点検項目データベース41には、予め設定された第1の点検項目「機械室12に設置された制御盤16の制御回路の電圧測定」と、第2の点検項目「機械室12に設置された制御盤16のプリント基板汚れの有無」と、第3の点検項目「機械室12に設置された制御盤16の端子緩みの有無」と、第4の点検項目「機械室12に設置された巻上げ機13のロープグリス固着の有無」と、第5の点検項目「かご上に設置されたドアモータ15の減速機のギアオイルの補充」と、第6の点検項目「ピット17の緩衝器18のスプリング又はプランジャのさびの有無」とに関する情報が格納されており、これらの点検項目のうち第3の点検項目および第4の点検項目は、メインブレーカーが遮断されているときに実施可能であり、第5の点検項目および第6の点検項目は、点検運転モードで運転しているときに実施可能であることが示されている。また、点検用品の設置場所である機械室12に対応するマーカの枠形状が四角であり、かご上に対応するマーカの枠形状が丸であり、ピット17に対応するマーカの枠形状が三角であることを示す情報が格納されている。さらに、点検用品である制御盤16に対応する記号が「C」であり、巻上げ機13に対応する記号が「M」であり、ドアモータ15に対応する記号が「DM」であり、緩衝器18に対応する記号が「B」であることを示す情報が格納されている。
【0018】
また本実施形態による点検作業支援システム1Aの稼働中は、エレベータ情報送信装置3において制御盤16から所定時間間隔でエレベータ10の稼動状態に関する情報が取得され、点検作業支援装置4Aに無線送信されている。
【0019】
このように点検項目データベース41に情報が格納され、点検作業支援装置4Aにエレベータ10の稼動状態に関する情報が送信されている状態で、作業員がエレベータ10の機械室12内の制御盤16に関する点検を行うときに点検作業支援システム1Aで実行される処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
まず、作業員が点検作業支援装置4Aを所持して機械室12に入り、点検作業支援装置4Aの撮像部42により制御盤16に貼付されたマーカ2−1(図形「□」の中に記号「C」が示された表示物)を撮影する。撮影された撮像情報はマーカ情報解析部43で解析され、被写体がマーカであることが認識されると(S1の「YES」)、当該マーカ2−1で示される点検用品の設置場所の情報である図形「□」および点検用品の識別情報である記号「C」が取得される。
【0021】
次に、稼動状態判定部44において点検項目データベース41が参照され、マーカ情報解析部43で取得された図形「□」に対応する点検用品の設置場所が機械室12として特定される。そして、機械室12に設置された点検用品として、制御盤16および巻上げ機13が抽出される。さらに、抽出された制御盤16および巻上げ機13のうち、マーカ情報解析部43で取得された記号「C」に対応する制御盤16が、点検対象として特定される。そして、特定された制御盤16に関する点検項目が、「制御回路の電圧測定」、「プリント基板の汚れの有無」、「端子緩みの有無」であり、これらのうち点検項目「端子緩みの有無」に関する実施可能条件が「メインブレーカー遮断」であることを示す情報が、点検項目データベース41から抽出される(S2)。
【0022】
次に稼動状態判定部44では、ステップS2で抽出された制御盤16に関する点検項目および実施可能条件と、エレベータ情報送信装置3から送信されたエレベータ10の現在の稼動状態に関する情報とに基づいて、取得した点検項目ごとに、エレベータ10の現在の稼動状態が実施可能条件を満たすか否かが判定される(S3)。ここでは、点検項目「端子緩みの有無」に関して設定されている実施可能条件に基づいて、メインブレーカーが遮断されているか否かが判定される。判定の結果、エレベータ10のメインブレーカーがオフ状態であり、制御盤16に関するすべての点検項目の実施可能条件が満たされているとき(S3の「YES」)には、抽出された点検項目を示す表示情報が生成されて出力される(S4)。
【0023】
ここで出力される表示情報は例えば、保守員が装着するウェアラブル端末の表示画面や、作業員が装着するメガネ型の拡張現実投影スクリーンに表示される。拡張現実投影スクリーンに表示情報が表示された状態の例を、図5に示す。図5では、機械室で制御盤16の方向を見ている作業員が、装着したメガネ型の拡張現実投影スクリーンに表示された表示情報450を見ているときの視界を示す。ここで表示情報450には、図6(a)に示すように、制御盤16に関する点検項目である「制御回路の電圧測定」、「プリント基板の汚れの有無」、および「端子緩みの有無」のテキスト情報が並べて表示されている。
【0024】
またステップS3の判定処理において、制御盤16に関して実施可能条件が満たされていない点検項目があると判定され(S3の「NO」)、且つ、取得されたエレベータ10が点検運転モードで稼動していると判定されたとき(S5の「YES」)には、実施可能条件が満たされており点検の実施が可能な項目と、実施可能条件が満たされておらず点検の実施が不可能な項目とを区別し、点検不可能な項目に対する実施可能条件の情報を付加した表示情報が生成されて出力される(S6)。
【0025】
ここで出力される表示情報では、例えば図6(b)に示すように、点検の実施が可能な項目「制御回路の電圧測定」および「プリント基板汚れの有無」が通常フォントのテキスト情報で表示されるとともに、点検の実施が不可能な項目「端子緩みの有無」が太字や所定の色調の強調されたテキスト情報で表示され、さらに点検の実施が不可能な項目「端子緩みの有無」に対し、実施可能条件を示す「メインブレーカーカット!」のテキスト情報が併せて表示される。
【0026】
またステップS3の判定処理において、制御盤16に関して実施可能条件が満たされていない点検項目があると判定され(S3の「NO」)、且つ、取得されたエレベータ10が点検運転モードで稼動していない(通常運転モードで稼動している)と判定されたとき(S5の「NO」)には、点検運転モードへの移行を指示するための表示情報が生成されて出力される(S7)。
【0027】
ここで出力される表示情報では、例えば図6(c)に示すように、「現在通常運転中。点検の際は点検運転モードへ移行すること。」のテキスト情報が表示される。
【0028】
以上の第1実施形態の点検作業支援システムによれば、点検作業を行う作業員が点検する直前にエレベータの稼動状態に応じて点検項目とその実施可否、および実施不可能な点検項目の点検可能条件を確認することができ、点検作業を効率よく実施するための支援を行うことができる。また、この点検作業支援システムは、点検場所や点検用品を、図形や記号を用いたマーカを撮影した撮像情報を解析して認識するため、点検場所や点検用品を撮影した撮像情報を解析してこれらを認識するよりも認識時間を短縮するとともに認識精度を向上させて処理を行うことができる。またこのマーカは既設のエレベータ用品に対して簡易に取り付け可能であるため、特別な工事などが不要であり、容易にシステムを構築することが可能である。
【0029】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータの点検作業支援システム1Bは、図7に示すように、点検作業支援装置4Bが音声認識部46、項目確認部47、および情報更新部48を有する他は、第1実施形態で説明した点検作業支援システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施形態において点検作業支援装置4Bの音声認識部46は、作業員が発した音声をマイク装置等から入力してその内容を示す情報を認識する。項目確認部47は、音声認識部46で認識された音声内容が、稼動状態判定部44で抽出された点検項目のいずれかに対応しているか否を確認する。情報更新部48は、稼動状態判定部44で抽出された点検項目に対応した内容の音声が入力されたと判断すると、点検情報出力部45で出力していた表示情報から、該当する点検項目の表示を削除する。
【0031】
〈第2実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの動作〉
本実施形態による点検作業支援装置4Bを用いて作業員が点検作業を行う際に実行される処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8において、ステップS1〜S7で実行される処理は、第1実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
ステップS4またはS6により表示情報が表示された後、作業員は、表示情報を視認して点検作業を開始し、いずれかの項目の作業が終了すると、当該終了した作業の項目を読み上げる。作業員が読み上げたときの音声内容は音声認識部46で認識され、認識された音声内容が、稼動状態判定部44で抽出された点検項目に対応しているか否かが項目確認部47により確認される(S8)。
【0033】
作業員により発せられた音声内容が、抽出された点検項目に対応している場合(S8の「YES」)には、点検情報出力部45で出力していた表示情報から該当する点検項目の表示を削除するように、情報更新部48により表示情報が更新される(S9)。
【0034】
ステップS8およびS9の処理は、表示情報により表示されているすべての点検項目の点検作業が終了するまで繰り返され(S10の「NO」)、すべての点検項目の作業が終了して表示が消えると(S10の「YES」)、ステップS1に戻って、次の点検用品の点検作業を開始するためにマーカが認識されたか監視される。
【0035】
以上の第2実施形態によれば、点検作業中の点検用品について、未実施の点検項目が明確に表示されるため、当該用品について点検漏れが発生することを回避することができ、効率よく点検作業を行うことができる。
【0036】
《第3実施形態》
〈第3実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成〉
本発明の第3実施形態によるエレベータの点検作業支援システム1Cの構成は、図7の示す第2実施形態による点検作業支援システム1Bの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態において点検作業支援装置4Cの点検情報出力部45は、作業対象の点検用品と同じ設置場所の他の点検用品で点検が完了していない点検項目がある場合には、当該点検項目を、作業対象の点検用品の点検項目とともに表示する。
【0038】
〈第3実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの動作〉
本実施形態による点検作業支援装置4Cを用いて作業員が点検作業を行う際に実行される処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。図9において、第1実施形態と同様に、作業員が作業対象としている点検用品の点検項目および当該点検項目の実施可能条件を点検項目データベース41から取得すると、未実施の点検項目がある場合に(S11の「YES」)、ステップS3〜S7を実行して表示情報を表示させる。
【0039】
そして、ステップS4またはS6により、作業員が作業対象としている点検用品の点検項目、および当該点検項目に関し現在満たされていない実施可能条件が表示されたときに、同じ設置場所の他の点検用品で点検が完了していない点検項目がある場合には、当該点検項目も表示される(S12)。これらが表示された後に実行されるS8〜S10の処理は、第2実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
以上の第3実施形態によれば、作業対象の点検用品に関する未実施の点検項目だけでなく、作業中の点検場所における他の点検用品に関する未実施の点検項目も表示することにより、さらに効率よく、点検漏れを防いで点検作業を実施させることができる。
【0041】
《第4実施形態》
〈第4実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成〉
本発明の第4実施形態によるエレベータの点検作業支援システム1Dは、図10に示すように点検作業支援装置4Dが動作認識部49を有する他は、第2実施形態で説明した点検作業支援システム1Bの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態において点検作業支援装置4Dの動作認識部49は、撮像部42で作業員を撮影した撮像情報に基づいて、作業員が、点検作業を終了した点検用品を指さす動作を行ったときにこれを認識する。情報更新部48は、稼動状態判定部44で抽出された点検項目のいずれかに対応した内容の音声が入力されたと判断し、且つ、動作認識部49で作業員により当該点検項目に対応する点検用品を指さす動作が行われたことが認識されると、点検情報出力部45で出力していた表示情報から、該当する点検項目の表示を削除する。
【0043】
〈第4実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの動作〉
本実施形態による点検作業支援装置4Dを用いて作業員が点検作業を行う際に実行される処理について、図11フローチャートを参照して説明する。図11において、ステップS1〜S7で実行される処理は、第1実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0044】
ステップS4またはS6により表示情報が表示された後、作業員により発せられた音声内容が、稼動状態判定部44で抽出された点検項目に対応しており(S8の「YES」)、且つ、動作認識部49で作業員により当該点検項目に対応する点検用品を指さす動作が行われたことが認識されると(S13の「YES」)、点検情報出力部45で出力していた表示情報から該当する点検項目の表示を削除するように、情報更新部48により表示情報が更新される(S9)。
【0045】
ステップS8、S13、およびS9の処理は、表示情報により表示されているすべての点検項目の点検作業が終了するまで繰り返され(S10の「NO」)、すべての点検項目の作業が終了して表示が消えると(S10の「YES」)、ステップS1に戻って、次の点検用品の点検作業を開始するためにマーカが認識されたか監視される。
【0046】
以上の第4実施形態によれば、点検作業中の点検用品について点検項目を表示させた後、実施済みの点検項目を削除するように表示情報を更新する処理を、さらに確実に精度よく実行することができる。
【0047】
《第5実施形態》
〈第5実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの構成〉
本発明の第5実施形態によるエレベータの点検作業支援システム1Eは、図12に示すように、点検作業支援装置4Eが報告書作成部50を有する他は、第3実施形態で説明した点検作業支援システム1Cの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態において点検作業支援装置4Eの情報更新部48は、稼動状態判定部44で抽出された点検項目に対応する内容の音声が入力されたと判断されると、当該音声内容に該当する点検項目の点検作業が終了したことを示す情報を生成して点検項目データベース41に記憶させる。また報告書作成部50は、点検情報出力部45において、作業員が作業対象としている点検用品と同じ設置場所のすべての点検用品の点検が完了したと判断されると、点検項目データベース41に記憶された情報に基づいて、点検作業の実施状況を所定形式のテキスト情報で示す点検作業報告書情報を作成する。
【0049】
〈第5実施形態によるエレベータの点検作業支援システムの動作〉
本実施形態による点検作業支援装置4Eを用いて作業員が点検作業を行う際に実行される処理について、図13のフローチャートを参照して説明する。図13において、ステップS1〜S8、S11、S12で実行される処理は、第3実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態において、作業対象の点検用品の点検項目等が表示されているときに、作業員が作業項目を読み上げた内容の音声が入力されると(S8の「YES」)、情報更新部48により、表示情報が更新されるとともに、当該音声内容に該当する点検項目の点検作業が終了したことを示す情報が生成され、点検項目データベース41に記憶される(S14)。
【0051】
そして、表示されている点検項目の点検作業が終了するまでステップS12、S8、およびS14の処理が繰り返され(S10の「NO」)、すべての作業対象の点検が終了し、表示情報が更新されてすべての点検項目の表示が消えるとステップS1に戻る。その後、ステップS11において、作業員が作業対象としている点検用品と同じ設置場所のすべての点検用品の点検が完了したと判断されると(S11の「NO」)、点検項目データベース41に記憶された情報が用いられて、報告書作成部50により、点検作業の実施状況を所定形式のテキスト情報で示す点検作業報告書情報が作成される(S15)。
【0052】
以上の第5実施形態によれば、所定の設置場所に関するすべての点検用品の点検項目に関する作業が終了したときに、終了した点検作業に関する報告書情報が作成されるため、作業員がビルオーナーやビル管理会社に提出するための点検報告書の作成作業を軽減させることができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C,1D,1E…点検作業支援システム、2−1,2−2,2−3,2−4…マーカ、3…エレベータ情報送信装置、4A,4B,4C,4D,4E…点検作業支援装置、10…エレベータ、11…昇降路、12…機械室、13…巻上げ機、14…乗りかご、15…ドアモータ、16…制御盤、17…ピット、18…緩衝器、41…点検項目データベース、42…撮像部、43…マーカ情報解析部、44…稼動状態判定部、45…点検情報出力部、46…音声認識部、47…項目確認部、48…情報更新部、49…動作認識部、50…報告書作成部、450…表示情報
【要約】
【課題】 簡易な構成で、エレベータ内の各設備の点検作業を支援することが可能なエレベータの点検作業支援システム、およびこれに利用する点検作業支援装置、点検作業支援方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば点検作業支援装置は、点検項目データベースとマーカ情報解析部と稼動状態判定部と点検情報出力部とを備える。点検項目データベースは、点検用品ごとの点検項目と実施可能条件とを格納する。マーカ情報解析部は、エレベータ内の点検用品の識別情報を有して対応する点検用品またはその近辺に貼付されたマーカから、点検用品の識別情報を取得する。稼動状態判定部は、解析により取得された点検用品の識別情報に対応する点検項目と実施可能条件とを抽出し、点検項目ごとに、エレベータの現在の稼動状態が該当する実施可能条件を満たすか否かを判定する。点検情報出力部は、判定された結果を出力する。
【選択図】図1
図1
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図10
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図13