(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートバック、及び該シートバックに連結されたシートクッションを車体フロアに対して前傾方向に跳ね上げて、乗員が着座するための着座位置から、乗員がシート後方へ乗降するための跳ね上げ位置まで移動可能な車両用シートであって、
前記車体フロア側に取り付けられる取り付け部材と、
該取り付け部材に回動可能に連結され、前記シートバックを支持する支持ベースと、
前記取り付け部材に回動可能に連結され、前記シートクッションを回動可能に支持する支持リンクと、を備え、
前記支持ベースは、
該支持ベース前方部分に設けられ、シート幅方向において前記取り付け部材に軸支されるベース回動軸部を備え、
該ベース回動軸部を中心として前記取り付け部材に対して、前記シートバック及び前記シートクッションを前記跳ね上げ位置まで移動させるように回転可能であって、
前記ベース回動軸部は、前記着座位置及び前記跳ね上げ位置において、前記支持リンクのうち、前記シートクッションに連結された上端部よりも前方に配置されていることを特徴とする車両用シート。
前記支持リンクのうち、前記取り付け部材に連結された下端部は、前記着座位置において前記ベース係合部と略同一高さに配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような車両用シートでは、乗員が着座可能な着座位置から、シートバック及びシートクッションを前傾方向に跳ね上げて、乗員がシート後方へ乗降可能な跳ね上げ位置に移動でき、また、シートバック及びシートクッションを収納可能な収納位置に移動できる構成となっているものの、複雑なリンク構造を必要としていた。
そのため、シンプルな構造で着座位置から跳ね上げ位置又は収納位置に切り替え可能な車両用シートが望まれていた。
また、シートを前傾方向に跳ね上げてシート後方側に乗降スペースを形成する車両用シートでは、車両前後方向の乗降スペースを大きく確保できることが重要である。特許文献1のような車両用シートでは、シートを跳ね上げ、さらに跳ね上げたシートをシート前方側にスライド移動させて乗降スペースを確保しているものの、乗降スペースを一層大きく確保可能な車両用シートが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構造でシート着座位置からシート跳ね上げ位置又はシート収納位置に切り替え可能な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シート着座位置からシート跳ね上げ位置に切り替えたときにシート後方側の乗降スペースを大きく確保可能な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、シートバック、及び該シートバックに連結されたシートクッションを車体フロアに対して前傾方向に跳ね上げて、乗員が着座するための着座位置から、乗員がシート後方へ乗降するための跳ね上げ位置まで移動可能な車両用シートであって、前記車体フロア側に取り付けられる取り付け部材と、該取り付け部材に回動可能に連結され、前記シートバックを支持する支持ベースと、前記取り付け部材に回動可能に連結され、前記シートクッションを回動可能に支持する支持リンクと、を備え、前記支持ベースは、該支持ベース前方部分に設けられ、シート幅方向において前記取り付け部材に軸支されるベース回動軸部を備え、該ベース回動軸部を中心として前記取り付け部材に対して、前記シートバック及び前記シートクッションを前記跳ね上げ位置まで移動させるように回転可能であって、前記ベース回動軸部は、前記着座位置及び前記跳ね上げ位置において、前記支持リンクのうち、前記シートクッションに連結された上端部よりも前方に配置されていること、により解決される。
【0008】
このように、支持ベースが、ベース回動軸を中心としてシートバック及びシートクッションを着座位置と跳ね上げ位置の間で移動させるように回動し、ベース回動軸が支持リンク上端部よりも前方に配置されるため、支持リンクが、着座位置においてはシートクッションを下方から支持し、跳ね上げ位置においてはシートクッション及びシートバックを所定の前傾角度で保持する構造配置になる。
従って、車体フロア側に取り付けられた取り付け部材に、シートバックを支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持リンクとをそれぞれ回動可能に連結したシンプルな構造で、着座位置から跳ね上げ位置に切り替え可能な車両用シートを提供することができる。
【0009】
このとき、前記支持リンクは、前方支持リンクであって、前記シートバックに回動可能に連結され、前記シートクッションを支持する後方支持リンクを備え、前記前方支持リンクは、前記跳ね上げ位置移動時に、前記後方支持リンクと連動して、前記取り付け部材に連結された下端部を中心として前記取り付け部材に対して、前記シートクッションを前方向に移動させるように回転可能であって、前記跳ね上げ位置における前記シートクッションと前記シートバックとがなす角度は、前記着座位置における該角度よりも大きいと良い。
このように、跳ね上げ位置におけるシートクッションとシートバックとがなす角度は、着座位置における角度よりも大きくなるため、シートを前傾方向に跳ね上げた跳ね上げ位置においてシート前後方向の長さを小さくすることができ、結果としてシート後方側の乗降スペースを大きく確保することができる。
また、跳ね上げ位置のシートクッションとシートバックとがなす角度が、着座位置の角度よりも大きく保持されるため、シート着座面側にチャイルドシート、特にISOFIX規格に基づくチャイルドシートを装着することができる。
【0010】
このとき、前記支持リンクの前記上端部は、シート前後方向において前記シートクッションの略中央に配置されていると良い。
このように構成されるため、支持リンクが、着座位置においてシートクッションに加わる下方荷重をシートクッションの重心に近い位置で受けることができ、支持剛性が高まる。
【0011】
このとき、前記ベース回動軸部を中心として前記取り付け部材に対して前記支持ベースを跳ね上げ可能に付勢する付勢部材を備え、該付勢部材は、前記支持リンクよりも前方に配置されていると良い。
このように構成されているため、支持リンク前方のスペースに付勢部材を配置することでシートのコンパクト化を図ることができ、シートの前後方向の長さを小さくできる。
【0012】
このとき、前記付勢部材は、シート前後方向において前記ベース回動軸部
と重なる位置に配置されていると良い。
このように構成されているため、
シート前後方向においてベース回動軸部
と重なる位置となるスペースに付勢部材を配置することでシートのコンパクト化を図ることができ、シートの前後方向の長さを小さくできる。
【0013】
このとき、前記支持ベースは、該支持ベース後方部分に設けられ、前記取り付け部材に対して係脱可能に連結されるベース係合部を備え、前記支持リンクのうち、前記取り付け部材に連結された下端部は、シート前後方向において前記ベース回動軸部と前記ベース係合部との間に配置されていると良い。
このように構成されているため、支持ベースは、ベース係合部の係合を解除した状態で、ベース回動軸部を中心としてシートクッション及びシートバックを跳ね上げ位置まで移動させるように回転し、支持リンクは、跳ね上げ位置においてシートクッションを所定の前傾角度で保持することができる。従って、支持ベースと支持リンクのシンプルな構造で所定の前傾角度で跳ね上げ位置を設定でき、シート前後方向の長さを調整できる。
【0014】
このとき、前記支持リンクのうち、前記取り付け部材に連結された下端部は、前記ベース回動軸部と略同一高さに配置されていると良い。
このように、取り付け部材に連結される支持リンク下端部と、支持ベースのベース回動軸部との高さ位置が略同一となるため、支持リンク及び支持ベースの構成配置がコンパクトになる。
【0015】
このとき、前記支持リンクのうち、前記取り付け部材に連結された下端部は、前記着座位置において前記ベース係合部と略同一高さに配置されていると良い。
このように、取り付け部材に連結される支持リンク下端部と、支持ベースのベース係合部との高さ位置が略同一となるため、シート着座時に加わる荷重を均等に分散させて受けることができる。
【0016】
このとき、前記支持リンクは、シート幅方向において前記支持ベースの内側に配置され、前記ベース回動軸部は、シート幅方向から見て、前記支持リンクのうち、前記取り付け部材に連結された下端部を中心とした前記上端部の回動軌跡上に配置されていると良い。
このように構成されているため、支持ベースと支持リンクの配置がコンパクトになる。
【0017】
このとき、前記車体フロアに固定されるロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパレールと、を有するレール装置を備え、前記取り付け部材は、前記アッパレール上面に取り付けられるレールブラケットであり、前記レール装置は、前記跳ね上げ位置移動時に前記支持ベースの回動と連動させて、前記ロアレールに対して前記アッパレールを前方向に相対移動させると良い。
このように、レール装置は、跳ね上げ位置移動時に、ロアレールに対してアッパレールを前方向に相対移動させるため、シート跳ね上げ位置においてシート後方側の乗降スペースを大きく確保できる。
【0018】
このとき、前記支持ベースに対して前記シートバックを回動可能に連結するリクライニング装置を備え、前記支持リンクは、前記リクライニング装置によって前記シートバックを前記シートクッション側に折り畳んだ状態で、前記取り付け部材に連結された下端部を中心として前記取り付け部材に対して、前記シートクッションを前記車体フロア側の収納位置に移動させるように回転可能であると良い。
このように構成されるため、シートバックを支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持リンクとのシンプルな構造で、着座位置から収納位置に切り替え可能な車両用シートを提供できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、支持ベースが、ベース回動軸を中心としてシートバック及びシートクッションを着座位置と跳ね上げ位置の間で移動させるように回動し、ベース回動軸が支持リンク上端部よりも前方に配置されるため、支持リンクが、着座位置においてはシートクッションを下方から支持し、跳ね上げ位置においてはシートクッション及びシートバックを所定の前傾角度で保持する構造配置になる。
従って、車体フロア側に取り付けられた取り付け部材に、シートバックを支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持リンクとをそれぞれ回動可能に連結したシンプルな構造で、着座位置から跳ね上げ位置に切り替え可能な車両用シートを提供することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、跳ね上げ位置におけるシートクッションとシートバックとがなす角度は、着座位置における角度よりも大きくなるため、シートを前傾方向に跳ね上げた跳ね上げ位置においてシート前後方向の長さを小さくすることができ、結果としてシート後方側の乗降スペースを大きく確保することができる。
また、跳ね上げ位置のシートクッションとシートバックとがなす角度が着座位置の角度よりも大きく保持されるため、シート着座面側にチャイルドシート、特にISOFIX規格に基づくチャイルドシートを装着することができる。
請求項3の発明によれば、支持リンクが、着座位置においてシートクッションに加わる下方荷重をシートクッションの重心に近い位置で受けることができ、支持剛性が高まる。
【0021】
請求項4の発明によれば、支持リンク前方のスペースに付勢部材を配置することでシートのコンパクト化を図ることができ、シートの前後方向の長さを小さくできる。
請求項5の発明によれば、
シート前後方向においてベース回動軸部
と重なる位置のスペースに付勢部材を配置することでシートのコンパクト化を図ることができ、シートの前後長さを小さくできる。
請求項6の発明によれば、支持ベースは、ベース係合部の係合を解除した状態で、ベース回動軸部を中心としてシートクッション及びシートバックを跳ね上げ位置まで移動させるように回転し、支持リンクは、跳ね上げ位置においてシートクッションを所定の前傾角度で保持することができる。従って、支持ベースと支持リンクのシンプルな構造で所定の前傾角度で跳ね上げ位置を設定でき、シート前後方向の長さを調整できる。
【0022】
請求項7の発明によれば、取り付け部材に連結される支持リンク下端部と、支持ベースのベース回動軸部との高さ位置が略同一となるため、支持リンク及び支持ベースの構成配置がコンパクトになる。
請求項8の発明によれば、取り付け部材に連結される支持リンク下端部と、支持ベースのベース係合部との高さ位置が略同一となるため、シート着座時に加わる荷重を均等に分散させて受けることができる。
請求項9の発明によれば、支持ベースと支持リンクの配置がコンパクトになる。
【0023】
請求項10の発明によれば、レール装置は、跳ね上げ位置移動時に、ロアレールに対してアッパレールを前方向に相対移動させるため、シート跳ね上げ位置においてシート後方側の乗降スペースを大きく確保できる。
請求項11の発明によれば、シートバックを支持する支持ベースと、シートクッションを支持する支持リンクとのシンプルな構造で、着座位置から収納位置に切り替え可能な車両用シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態は、着座位置から、跳ね上げ位置又は収納位置に切り替え可能な車両用シートであって、車体フロア側に固定されたレールブラケットの左右外側面に支持ベースが取り付けられ、また左右内側面に前方支持リンクが取り付けられ、支持ベースが、その前方部分のベース回動軸部を中心としてシート本体を前傾方向に跳ね上げ回転させると共に、ベース回動軸部の後方に配置された前方支持リンクが、シート本体の前傾角度を保持する構成からなることを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0026】
本実施形態の車両用シートSは、例えば車両前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のシートとして配置されるものである。
車両用シートSは、
図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、シート本体を前後方向に移動可能な状態で車体フロアに取り付けるための左右のレール装置4と、シート本体とレール装置4の間にそれぞれ取り付けられ、シートクッション1を連結支持する左右の前方支持リンク30と、シートバック2を連結支持する左右の支持ベース50と、シートクッション1とシートバック2の間に取り付けられる左右の後方支持リンク40と、から主に構成されている。
【0027】
シートクッション1は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となるクッションフレーム10に、不図示のクッションパッドを載置して、クッションパッドの上から不図示の表皮によって被覆されて構成されている。
シートバック2は、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となるバックフレーム20に、クッションパッド2aを載置して、表皮2bで被覆されて構成されている。
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーにクッションパッド3aを載置して、表皮3bで被覆されて構成されている。
【0028】
レール装置4は、上下方向においてシート本体側と車体フロアとの間に配設されており、
図1に示すように、車体フロアに固定される左右のロアレール4aと、ロアレール4aに対して相対移動可能に支持される左右のアッパレール4bと、ロアレール4a及びアッパレール4bの後方部分に固定された左右のストライカ4cと、アッパレール4b上面の前方部分に固定された左右のレールブラケット60と、から主に構成されている。
レールブラケット60は、特許請求の範囲の取り付け部材に相当する。
なお、レール装置4には、アッパレール4bを移動不能にロックする不図示のロック部材と、ロック部材のロック状態を解除する不図示の操作レバーが取り付けられている。
【0029】
クッションフレーム10は、シートクッション1の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図1に示すように、左右側方に配設されたクッションサイドフレーム11と、各クッションサイドフレーム11の上面に架設された板状フレームとしてのパンフレーム12と、を主に備えている。
なお、各クッションサイドフレーム11の後方側の左右内側面を連結する不図示の弾性部材や、不図示のフレーム連結パイプを別途備えていても良い。
クッションサイドフレーム11は、前後方向に延出する板金部材からなり、各クッションサイドフレーム11は、左右方向に離間している。
パンフレーム12は、乗員の腿を支持する金属製フレームからなり、上面が略平坦な略矩形状に形成されている。パンフレーム12は、前端部及び左右両端部に折れ曲がり部12aを有しており、折れ曲がり部12aが各クッションサイドフレーム11上面に掛け止めされている。
【0030】
クッションサイドフレーム11の左右外側面には、その中央部分において前方支持リンク30上端部が回動可能に連結されており、その後方部分において後方支持リンク40前端部が連結されて構成されている。
クッションフレーム10を骨格とするシートクッション1は、前方支持リンク30及び後方支持リンク40の回動によって、乗員が着座する着座位置と、シート本体を収納する収納位置との間で移動することができる。詳しく言うと、シートクッション1は、前方支持リンク30下端部を中心として移動可能であって、収納位置に移動するときには車体フロア側に対して前方斜め下方向に移動する。
【0031】
バックフレーム20は、シートバック2の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図1に示すように、左右側方に配設された左右のバックサイドフレーム21と、バックサイドフレーム21の左右外側面であって下方部分に取り付けられた取り付けブラケット22と、を構成品として備えている。
なお、各バックサイドフレーム21の内側面には下部フレーム23が架設されている。
バックサイドフレーム21の左右外側面の下方部分には、後方支持リンク40後端部が回動可能に連結され、後方支持リンク40は、左右方向においてバックサイドフレーム21と取り付けブラケット22の間に挟まれて配置されている。
【0032】
取り付けブラケット22は、略L字形状からなり、左右方向においてバックサイドフレーム21と所定の間隔をおいて離間配置されており、取り付けブラケット22の左右外側面には、支持ベース50に対してバックフレーム20を回動可能に連結するリクライニング装置24が取り付けられている。
【0033】
リクライニング装置24は、公知の装置からなり、
図2に示すように、リクライニング装置24の回動軸25と、バックフレーム20を起立状態に付勢する渦巻きバネ26と、バックサイドフレーム21側に取り付けられ、渦巻きバネ26の一端部を係止するバネ係止ブラケット27と、支持ベース50側に設けられ、渦巻きバネ26の他端部を係止するバネ係止部28と、から主に構成されている。
リクライニング装置24は、シートバック2を起立状態にロックし、不図示の操作レバーを操作することでロック解除され、支持ベース50に対してシートバック2を前方側に回転させてシートクッション1側に折り畳むことができる。
【0034】
前方支持リンク30は、
図2又は
図3に示すように、上下方向に延出する板金部材からなり、シートクッション1を下方から回動可能に支持する部材である。
前方支持リンク30は、シート側面側から見て略弓形状に形成され、前後方向においてクッションフレーム10の略中央部分に連結された上端部31と、レールブラケット60の略後方部分に連結された下端部32と、上端部31及び下端部32よりも前方側に張り出したリンク本体部33と、から構成されている。
また、前方支持リンク30は、
図3に示すように、シート正面側から見て略クランク形状に形成され、左右方向において上端部31からリンク本体部33にかけて左右外側に折り曲げられ、リンク本体部33から下端部32にかけて左右内側に折り曲げられている。そのため、前方支持リンク30は、後述するバネ部材55との干渉を避けてコンパクトに配置され、かつ、前方支持リンク30の剛性を向上させている。
【0035】
上端部31は、
図2に示すように、シート左右方向に貫通する不図示の貫通穴を備え、クッションフレーム10の左右外側面にこの貫通穴を介して不図示の回動ボルトを締結することで、シートクッション1が上端部31に対して回動可能に連結される。
下端部32は、同様に不図示の貫通穴を備え、レールブラケットの左右内側面にこの貫通穴を介して不図示の回動ボルトを締結することで、前方支持リンク30がレールブラケット60に対して回動可能に連結される。
リンク本体部33は、
図3に示すように、左右外側に下方傾斜した形状からなり、左右のリンク本体部33は、シート正面側から見て略ハの字形状となっている。
【0036】
前方支持リンク30には、
図2に示すように、その外縁全体にわたって左右外側に折り曲げられたフランジ部34と、下端部32からリンク本体部33にわたって左右外側面から内側に窪ませたビード部35とが形成されている。
ビード部35は、下端部32に形成された不図示の貫通穴の周縁部から連続してリンク本体部33の前後方向の中央部分を延びるように形成されている。
そのため、乗員の着座時にシートクッション1に加わる荷重に対して前方支持リンク30の支持剛性が向上する。
【0037】
前方支持リンク30の左右内側には、左右の前方支持リンク30同士を連結するリンク連結部材36が設けられている。
リンク連結部材36は、縦断面略コ字形状からなり、左右方向に長尺な板金部材である。
リンク連結部材36の左右両端部は、
図3に示すように、左右外側に下方傾斜した形状からなり、シート正面側から見て略台形形状となっている。
リンク連結部材36の左右外側面に相当する傾斜部分が、前方支持リンク30のうち、リンク本体部33の左右内側面に相当する傾斜部分と当接して接合される。
また、リンク連結部材36の縦断面形状は、着座位置において上下方向に長尺な形状として形成されている。
【0038】
リンク連結部材36には、その外縁全体にわたって後方側に折り曲げられたフランジ部37と、正面側から後方側に略H字形状に窪ませたビード部38と、その左右両端部に対して中央部分を正面側から後方側に凹ませたフランジ段差部39と、が形成されている。
ビード部38は、左右方向に長尺なビード形状からなり、ビード部38の左右延出端部は、リンク連結部材36の左右両端部の形状に沿わせて左右外側に下方傾斜している。
そのため、乗員の着座時にシートクッション1に加わる荷重に対して前方支持リンク30の支持剛性が向上する。
【0039】
さらに詳しく言うと、リンク連結部材36の外側面が、前方支持リンク30のうち、リンク本体部33の内側面であって、かつ、フランジ部34とビード部35の間に挟まれた部分と当接して接合されている。
従って、シートクッション1に加わる荷重に対して前方支持リンク30の支持剛性が一層向上する。
【0040】
後方支持リンク40は、
図1又は
図2に示すように、前後方向に延出する略L字形状の板金部材からなり、シートクッション1を後方から支持する部材である。
後方支持リンク40は、クッションフレーム10の左右外側面であって後方部分に接合された前端部41と、バックサイドフレーム21の左右外側面であって下方部分に連結された後端部42と、を備えている。
後端部42は、シート左右方向に貫通する不図示の貫通穴を備え、バックサイドフレーム21の左右外側面にこの貫通穴を介して不図示の回動ボルトを締結することで、後方支持リンク40がシートバック2に対して回動可能に連結される。
詳しく言うと、後方支持リンク40は、バックサイドフレーム21と取り付けブラケット22の間に挟まれており、取り付けブラケット22の左右外側面から回動ボルトを締結する構成となっている。そのため、後方支持リンク40の組み付け性が向上する。
【0041】
支持ベース50は、
図2に示すように、前後方向に延出する板金部材からなり、シートバック2を下方から支持する部材である。
支持ベース50は、略クランク形状に形成され、左右方向においてその後方部分から前方部分にかけて左右外側に折り曲げられており、前方支持リンク30との干渉を避けてコンパクトに配置されている。
なお、支持ベース50の上端部及び下端部には、左右外側に屈曲された不図示のフランジ部が形成されており、支持ベース50の支持剛性を高めている。
【0042】
支持ベース50は、その前方部分に配置されたベース回動軸部51と、ベース回動軸部51の後方側に配置されたベース係合部52と、を備えている。
支持ベース50の後方部分であって上端部には、リクライニング装置24が配置され、バックサイドフレーム21下端部と連結されている。
支持ベース50の左右内側には、左右の支持ベース50同士を連結する中央ベース連結部材53と、後方ベース連結部材54とが設けられている。
【0043】
ベース回動軸部51は、左右方向において不図示の回動ボルトによってレールブラケット60の前方部分に軸支された部分であり、支持ベース50は、ベース回動軸部51を中心としてレールブラケット60に対して回動可能に連結される。
ベース係合部52は、レール装置4のストライカ4cに対して係脱可能に連結される部分であり、着座位置及び収納位置においてはベース係合部52とストライカ4cが係合している。
ベース回動軸部51の左右内側面側には、
図2又は
図3に示すように、付勢部材としてのバネ部材55が配置されている。バネ部材55は、公知な渦巻きバネからなり、ベース回動軸部51を中心としてレールブラケット60に対して支持ベース50を上方に跳ね上げ可能に付勢する。
【0044】
ベース回動軸部51は、
図2に示すように、前方支持リンク30の下端部32よりも前方側に配置され、また、着座位置及び収納位置において、ベース回動軸部51とベース係合部52の前後方向の略中央部分に下端部32が配置されている。
ベース回動軸部51は、前方支持リンク30の下端部32と略同一高さに配置され、また、着座位置及び収納位置において、ベース回動軸部51、ベース係合部52、及び下端部32が略同一高さに配置されている。
【0045】
支持ベース50は、ベース係合部52とストライカ4cの係合が解除された後、バネ部材55に付勢されて、ベース回動軸部51を中心としてシートバック2及びシートクッション1を前傾方向に跳ね上げるように回転する。
支持ベース50が、シートバック2及びシートクッション1を所定の前傾角度に設定した跳ね上げ位置まで跳ね上げるように回転したとき、前方支持リンク30が、シートクッション1及びシートバック2をこの跳ね上げ位置で保持することができる。
【0046】
レールブラケット60は、
図3に示すように、前後方向に延出する略L字形状の板金部材からなり、前方支持リンク30及び支持ベース50を支持する部材である。
レールブラケット60は、アッパレール4b上面に固定された底壁部61と、底壁部61の左右外側端部から上方へ屈曲された外側壁部62と、外側壁部62の前後両端部から左右内側へ屈曲された前方壁部63、後方壁部64とを備えている。
底壁部61の上面には、左右のレールブラケット60同士を連結するレール連結部材65が固定されている。
【0047】
外側壁部62は、その前方部分の外側面において支持ベース50の
図2に示すベース回動軸部51と回動可能に連結されており、その中央部分の内側面において前方支持リンク30の下端部32と回動可能に連結されている。
また、外側壁部62の前方部分の内側には、バネ部材55が取り付けられており、バネ部材55は、左右方向においてベース回動軸部51と対向配置されている。
前方壁部63の前面には取り付けブラケット66が固定されており、レールブラケット60のうち、外側壁部62と取り付けブラケット66が、左右方向において支持ベース50を挟み込むように配置されている。
レール連結部材65には、左右方向に長尺なビードが形成されており、レールブラケット60の支持剛性を向上させている。
【0048】
次に、
図4(a)、(b)に基づいて車両用シートSを着座位置から跳ね上げ位置まで移動させる動作を説明する。
車両用シートSが、
図4(a)に示す着座位置にあるとき、ベース係合部52とストライカ4cが係合状態にあり、かつ、ロアレール4aに対してアッパレール4bが移動不能なロック状態にある。着座位置において、シートクッション1は前方支持リンク30に支持され、シートバック2は支持ベース50に支持されて構成される。
【0049】
車両用シートSを着座位置から跳ね上げ位置に移動させるときには、例えばシートバック2上面に設けられた不図示の操作レバーを操作する。
乗員が操作レバーを操作することによって、ベース係合部52とストライカ4cの係合状態が解除され、さらにアッパレール4bが移動可能なロック解除状態に切り替わる。
なお、操作レバーと、ベース係合部52及びレール装置4との間には、それぞれ不図示の公知なケーブルが連結されており、操作レバーの操作によってケーブルが引っ張られ、それぞれロック状態を解除する構成となっている。
【0050】
ベース係合部52とストライカ4cの係合が解除された後、支持ベース50は、バネ部材55に付勢されて、ベース回動軸部51を中心としてシートバック2及びシートクッション1を前傾方向に跳ね上げるように回転する。
このとき、前方支持リンク30が、
図4(b)に示すように、シートクッション1及びシートバック2の跳ね上がりを規制するため、跳ね上がったシートクッション1及びシートバック2が、所定の前傾角度において保持される。
なお、所定の前傾角度は、例えばバネ部材55の付勢力によって調整可能である。
【0051】
また、前方支持リンク30は、バネ部材55の付勢力によって、後方支持リンク40と連動して、下端部32を中心としてレールブラケット60に対してシートクッション1を前方向に移動させるように回転する。
そのため、
図4(b)に示すように、シートクッション1とシートバック2とがなす角度αは、着座位置における角度αよりも大きくなるように構成されている。
なお、角度αの大きさは、例えばバネ部材55の付勢力によって調整可能である。
【0052】
一方、アッパレール4bが移動可能なロック解除状態に切り替わった後、アッパレール4bは、不図示のバネ部材に付勢されて、ロアレール4aに対して前方側に相対移動する。なお、アッパレール4bの移動距離は適宜調整可能である。
上記一連の動作によって、車両用シートSが
図4(b)に示す跳ね上げ位置に移動する。
【0053】
次に、
図5(a)、(b)に基づいて車両用シートSを着座位置から収納位置まで移動させる動作を説明する。
車両用シートSを
図5(a)に示す着座位置から収納位置に移動させるときには、例えばシートクッション1の左外側面に設けられた不図示の操作レバーを操作する。
乗員が操作レバーを操作することで、シートバック2を起立状態に保持するリクライニング装置24のロックが解除され、さらにアッパレール4bが移動可能なロック解除状態に切り替わる。
なお、操作レバーと、リクライニング装置24及びレール装置4との間には、それぞれ不図示の公知なケーブルが連結されており、操作レバーの操作によってケーブルが引っ張られ、それぞれロック状態を解除する構成となっている。
【0054】
リクライニング装置24のロックが解除された後、シートバック2が、リクライニング装置24の回動軸25を中心としてシートクッション1側に折り畳まれる。
このとき、前方支持リンク30及び後方支持リンク40は、シートバック2の折り畳み動作と連動して、車体フロアに対してシートクッション1を前方斜め下方向に移動させるように回転する。言い換えると、前方支持リンク30は、後方支持リンク40と共に、下端部32を中心としてレールブラケット60に対して前方向に回転する。
【0055】
一方、アッパレール4bが移動可能なロック解除状態に切り替わった後、アッパレール4bは、不図示のバネ部材に付勢されて、ロアレール4aに対して後方側に相対移動する。なお、アッパレール4bの相対移動距離は適宜調整可能である。
上記一連の動作によって、車両用シートSが
図5(b)に示す収納位置に移動する。
【0056】
上記の収納動作において、前方支持リンク30が、下端部32を中心としてレールブラケット60に対して回動するとき、
図5(a)、(b)に示すように、上端部31の回動軌跡上に、支持ベース50のベース回動軸部51が位置する構成となっている。つまり、車両用シートSが収納位置にあるとき、前方支持リンク30の上端部31と、ベース回動軸部51とが、シート側面側から見て重なる位置に配置されることになる。
【0057】
また、上記の収納動作において、前方支持リンク30が、下端部32を中心としてレールブラケット60に対して前方向に回転するとき、
図2に示すリンク連結部材36は、
図2に示すレール連結部材65との干渉を避けるように回転する。その後、収納位置において、リンク連結部材36は、レール連結部材65の前方側に配置されることになる。
【0058】
上記実施形態のほか、車両用シートSが跳ね上げ位置にあるとき、ベース回動軸部51がシート本体の重心位置に対して前方に配置され、前方支持リンク30がシート本体の重心位置に対して後方に配置されていると良い。
このように配置されることで、前方支持リンク30がベース回動軸部51を中心として前傾方向に跳ね上がったシート本体を支持する際に、前方支持リンク30の支持剛性を高めることができる。
【0059】
上記実施形態のほか、車両用シートSが跳ね上げ位置にあるとき、ベース回動軸部51が、シート本体の重心位置に相当するヘッドレスト3前端部に対して前方に配置され、前方支持リンク30の上端部31又は下端部32がヘッドレスト3前端部に対して後方に配置されていると良い。
このように配置されることで、前方支持リンク30のシート本体に対する支持剛性が高まるため、ベース回動軸部51を中心として前傾方向に跳ね上がったシート本体を着座位置に戻す作業性が向上する。
【0060】
上記実施形態のほか、車両用シートSが着座位置から跳ね上げ位置に移動するとき、前方支持リンク30の上端部31及び下端部32のうち、少なくとも一方が、シート側面側から見て外部に露出していると良い。
このように配置されることで、前方支持リンク30の組み付け性が向上する。
【0061】
上記実施形態のほか、車両用シートSが跳ね上げ位置から着座位置に移動する途中で、シートバック2が車体フロアに対して鉛直方向に起立状態となったときに、前方支持リンク30がシート本体の重心位置に対して前方に配置されていると良い。
このように配置されることで、前方支持リンク30のシート本体に対する支持剛性が高まるため、シート本体を着座位置に戻す作業性が向上する。
【0062】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗物用シートとしても利用することができる。
【0063】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、前方支持リンク30、後方支持リンク40、支持ベース50、及びレールブラケット60の配置や構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。