特許第6139665号(P6139665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139665
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/82 20130101AFI20170522BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61F2/82
   A61F2/07
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-510523(P2015-510523)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公表番号】特表2015-515358(P2015-515358A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】US2013057063
(87)【国際公開番号】WO2014065941
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】61/718,288
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、クロード オー.
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ルート、ジョナサン
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−278993(JP,A)
【文献】 特表2011−500500(JP,A)
【文献】 特開2009−178544(JP,A)
【文献】 特表2012−507608(JP,A)
【文献】 特開2009−082701(JP,A)
【文献】 特表2009−505722(JP,A)
【文献】 特表2002−534165(JP,A)
【文献】 特表2009−529585(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/108129(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0167724(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0065552(US,A1)
【文献】 米国特許第06443980(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0200975(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07− 2/82
A61L 27/00−33/00
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側表面および外側表面を有するステントであって
ステント本体と、
前記ステント本体の少なくとも1つの表面に配置されているシリコーンカバーリングと、
粘着性のシリコーンを含んでなる粘着性の生体適合性コーティングであって、前記シリコーンカバーリングを覆って配置され、かつ、ステントの外側表面を画成している粘着性の生体適合性コーティングと、
を含んでなる、ステント。
【請求項2】
前記粘着性のシリコーンは湿気の存在によって損なわれない粘着力を有している、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記粘着性のシリコーンは感圧性である、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記粘着性のシリコーンはヒト組織への接着力を提供するように選択される、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記粘着性の生体適合性コーティングを覆って配置され、かつ、潤滑性の親水性ポリマー材料を含んでなる潤滑性コーティングを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記粘着性の生体適合性コーティングを覆って配置されている生分解性コーティングを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記粘着性のシリコーンはポリジメチルシロキサンを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記粘着性のシリコーンは、7.72N/m〜386.1N/m(1インチ当たり20〜1000グラム)の剥離接着強さを有する、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記粘着性のシリコーンは、7.72N/m〜38.61N/m(1インチ当たり20〜100グラム)の剥離接着強さを有する、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記生体適合性コーティングは生体適合性の色素を含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項11】
前記シリコーンカバーリング前記ステント本体の部分的または全体的なカバーリングを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項12】
前記ステントは、食道ステント、膵臓ステント、十二指腸ステント、結腸ステント、胆管ステントおよび気道ステントで構成されている群から選択されたメンバーを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
内側表面および外側表面を有するステントであって
ステント本体と、
前記ステント本体の少なくとも1つの表面に配置されているシリコーンカバーリングと、
7.72N/m(20グラム/インチ)〜19.305N/m(50グラム/インチ)の剥離接着強さを有する粘着性ポリマー材料を含んでなる粘着性の生体適合性コーティングであって、該粘着性ポリマー材料は湿気の存在によって損なわれない粘着力を有しており、かつ、前記シリコーンカバーリングを覆って配置されているとともに、ステントの外側表面を画成している、粘着性の生体適合性コーティングと、
を含んでなる、ステント。
【請求項14】
前記粘着性ポリマー材料は粘着性シリコーンを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項15】
前記粘着性の生体適合性コーティングを覆って配置され、かつ、潤滑性の親水性ポリマー材料を含んでなる潤滑性コーティングを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【請求項16】
前記粘着性の生体適合性コーティングを覆って配置されている生分解性コーティングを含んでなる、請求項1に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、コーティングが施された医療用デバイス、特にカバー付きステントに関し、かつ、治療部位からのステントの位置移動を防止するために患者の体腔内で粘着性ポリマー材料を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステント、グラフト、ステントグラフト、大静脈フィルタおよび同様の移植式医療用デバイス(以降本明細書中ではステントと総称する)は、径方向に拡張可能または自己拡張型の内部人工器官であり、このような内部人工器官は、経皮的または内視鏡的に経腔移植可能な血管内インプラントまたは内視鏡インプラントである。ステントは、様々な体腔または脈管の中に、例えば血管系、尿管、胆管、胃腸管、気道などの内部に移植される。ステントは、身体の脈管を補強するために、また血管系における血管形成術後の再狭窄を防止するために使用される場合もある。ステントは、自己拡張型、機械式拡張型またはハイブリッド拡張型であってもよい。一般に、自己拡張型ステントは、2本のチューブで構成されている送達デバイスに取り付けられる。ステントは、外側チューブを摺動させてステントを解放することにより送達される。
【0003】
ステントは、典型的には、患者の体腔を通して送達するための直径が縮小された形態から、治療部位に展開配置された時点での拡張された形態へと径方向に拡張可能な、管状部材である。
【0004】
ステントは、様々な材料、例えばステンレス鋼、Elgiloy(登録商標)、ニッケル、チタン、ニチノール、ポリマー、形状記憶ポリマーなどから構築される。
典型的には、ステントは、管状部材であって、この管状部材のエッチングもしくはこの管状部材からの材料の切削によりパターンが形成された管状部材から形成されるか、または、編組(braiding)、編成(knitting)もしくは製織のような技法を使用してワイヤから作製される。
【0005】
よって望ましいステント特性には、送達の際に蛇行した体腔に合わせることができる十分な可撓性、それでもなお治療部位で展開配置されたときには位置移動に抵抗するのに十分な剛性、が挙げられる。
【0006】
いくつかのステントでは、ステント送達を支援する被圧縮性および可撓性は、初めに展開配置された位置から移動しやすい傾向を有するステントをもたらす可能性もある。ステントの位置移動は、食道ステント、十二指腸ステント、結腸ステント、膵臓ステント、胆管ステントおよび気道ステントを含む数多くの内視鏡ステントに影響を及ぼす。よって、展開配置に続いて生じる位置移動に抵抗するステント形態を提供することは望ましい。
【0007】
同一出願人による特許文献1(その全内容は参照により本願に組み込まれる)は、トリガ式の生体接着剤を備えた医療用デバイスを開示している。
さらに、完全にカバーされたステントは組織の内方成長を防止し、裸ステントまたは部分的にカバーされたステントよりも除去がより簡単である。しかしながら、これらのステントは位置移動をさらにより起こしやすい。
【0008】
よって、展開配置に続いて生じる位置移動に抵抗するステント形態を提供することは望ましい。
ステントの位置移動を防止するために、ステント自体への返し部およびフレア状部の付加、または脈管壁にステントを付着させるためのクリップもしくは縫合材の使用など、数多くの技法が開発されてきた。
【0009】
位置移動に抵抗力のある改良されたステントが当分野において依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0098176号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
1つの実施形態では、本発明は、内側表面および外側表面を有するステントであって、該ステントの外側表面の少なくとも一部分は粘着性のシリコーンを含んでなる粘着性の生体適合性コーティングを備えている、ステントに関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、ステントであって、内側表面および外側表面を有し、該ステントの外側表面の少なくとも一部分は、約7.72N/m〜約19.305N/m(1インチ当たり約20〜約50グラム)の剥離接着強さを有する粘着性ポリマー材料を含んでなる粘着性の生体適合性コーティングを備え、該粘着性ポリマーは湿気の存在によって損なわれない粘着力を有している、ステントに関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、体腔にステントを送達する方法であって、体腔内の治療部位に粘着性の生体適合性ポリマー材料を沈着させるステップと、該治療部位にステントを送達するステップと、該治療部位でステントを展開配置するステップとを含み、粘着性の生体適合性ポリマー材料はステントが治療部位から移動するのを阻止する、方法に関する。
【0015】
本開示の上記およびその他の態様、実施形態および利点は、以降の詳細な説明および特許請求の範囲を検討すれば当業者には直ちに明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるステントの実施形態を示す側面図。
図2】本発明によるステント上の粘着性ポリマーコーティングを例証する、図1の区画2における断面図。
図3】粘着性ポリマーコーティングと、該粘着性ポリマーコーティングの上に配置された親水性コーティングまたは生分解性コーティングと、を有する、図1に示されたステントに類似したステントの代替実施形態を示す断面図。
図4】本発明によるカバー付きステントの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は数多くの形をとりうるが、本明細書中で詳細に説明されているのは本開示の特定の実施形態である。この説明は本開示の原理の例示であり、本開示を本明細書中に例証された特定の実施形態に限定するように意図するものではない。
【0018】
本発明は、移植式医療用デバイスであって、例えばステントの位置移動を防止するために該ステント上に粘着性コーティングを有しているステントのような移植式医療用デバイスに関し、かつ、治療部位からのステントの位置移動を防止するために患者の体腔内で粘着性ポリマー材料を使用する方法に関する。
【0019】
「粘着性(の)(tacky)」という用語は、接着剤の分野では良く知られた用語である。本明細書中で使用されるように、用語「粘着性(の)」は、触ると粘質またはわずかに粘質な感じを保持する材料を指すものとする。これらの材料は感圧性ポリマー材料と呼ぶこともできる。本明細書中で使用される粘着性材料は、ASTM D3330の感圧テープの剥離接着強さに関する標準試験方法(ASTM D3330 Standard Test Method for Peel Adhesion of Pressure−Sensitive Tape)による測定で、約7.72N/m(約20グラム/インチ)〜約386.1N/m(約1000グラム/インチ)、適切には約7.72N/m(約20グラム/インチ)〜約193.05N/m(約500グラム/インチ)、およびより適切には約7.72N/m(約20グラム/インチ)〜約38.61N/m(約100グラム/インチ)の剥離強度を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中で使用される粘着性材料は、約7.72N/m(約20グラム/インチ)〜約19.305N/m(約50グラム/インチ)の低い剥離強度を有している。
【0020】
本明細書中で使用される粘着性ポリマー材料は、ヒトの組織に穏やかに接着するように選択される。しかしながら、このような接着は恒久的ではなく、前記材料は所望時には容易に除去可能である。
【0021】
さらに、粘着性ポリマー材料の粘着力または接着力が、患者体内への挿入時がそうであるように湿気への曝露時に、損なわれないことも望ましい。
ここで図面を参照すると、図1は本発明によるコーティングが使用されるステントの1つの実施形態を示す側面図である。この実施形態では、ステント10は、シリコーンカバーリングを有するニチノールのような形状記憶合金から形成された自己拡張型ステントである。このステントは編組ワイヤ構造を有している。この実施形態では、ステント10はシリコーンカバーリング12を有することが示されている。ステント10はシリコーンカバーリング12の上に配置され、このカバーリングの中に部分的に埋め込まれている。図2は、図1の区画2におけるステントの部分断面図である。この種のステントは、同一出願人の米国特許出願公開第2006/0276887号および同第2008/0009934号明細書に記載されており、前記特許文献はそれぞれ全体が参照により本願に組み込まれる。
【0022】
図1および2に示される実施形態では、ステントはニチノールから形成されているが、ステントは、任意の適切なステント材料、例えば、限定するものではないが、ステンレス鋼、Elgiloy(登録商標)、ニッケル、チタン、ニチノール、形状記憶ポリマー、その他のポリマー材料などで構築されてもよい。
【0023】
いかなるステントもカバーリングを有することが可能であり、よってカバーリングはニチノールステントには限定されていない。さらに、ステントはカバーを付けられる必要は全くないし、部分的にカバーされてもよいし、完全にカバーされてもよい。
【0024】
その他の適切なカバーリング材料も同様に使用可能である。他の適切なカバーリング材料の例としては、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ナフタレン、ジカルボン酸誘導体、例えばポリエチレンナフタラート、ポリブチレンナフタラート、ポリトリメチレンナフタラートおよびトリメチレンジオールナフタラート、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアルデヒド、ポリエーテルエーテルケトン、天然ゴム、ポリエステルコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリエーテル、例えば完全または部分的にハロゲン化されたポリエーテル、ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられる。例えば、同一出願人の米国特許第8,114,147号明細書(その全内容は参照により本願に組み込まれる)を参照されたい。
【0025】
ステント10は、図3の断面図に示されるような粘着性コーティングをさらに有している。この実施形態では、粘着性コーティング14は粘着性シリコーンを含んでなる。
粘着性または感圧性シリコーン材料は、例えば米国カリフォルニア州サンタバーバラにあるヌシル(Nusil)から入手可能な熱硬化シリコーン材料であるMED 6300シリーズ、およびMED 6381湿気硬化性シリコーンのように、様々な供給元から市販されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、粘着性シリコーンは湿気硬化性シリコーンである。
いくつかの実施形態では、粘着性シリコーンゲルはポリジメチルシロキサンである。
粘着性シリコーンが本明細書中で使用される1つの望ましい粘着性ポリマー材料である一方、他の粘着性ポリマー材料、例えば、限定されるものではないが、スチレン系ブロックコポリマー、例えばスチレン‐イソブチレン‐スチレン(SIBS)、スチレン‐エチレン/ブチレン‐スチレン(SEBS)、スチレン‐エチレン/プロピレン‐スチレン(SEPS)およびスチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS)、アクリル樹脂、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、エチレンのコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)なども同様に使用される。
【0027】
シリコーンゲルはヒドロゲルの感触と同様の感触を有している。しかしながら、ヒドロゲルの粘着力または接着力は湿気が存在する状態では損なわれる。ヒドロゲルは湿ったときに「滑りやすく」なり、その結果として、潤滑であることが望ましい患者の体腔内での医療用デバイスの送達に関してこのヒドロゲルが理想的に適している、ということが知られている。
【0028】
いくつかの実施形態では、生体適合性の色素が粘着性ポリマー材料に添加されて、その材料を医師が容易に視認できるようになっている。
粘着性ポリマー材料は、ステントの外側表面全体に適用されてもよいし、ステントの一部分に、例えばステントの先端側部分、基端側部分および中央部分に適用されてもよい。
【0029】
粘着性ポリマー材料がステントに適用される場合、バルーン拡張型ステントについて患者の体腔を通した送達を容易にするために、または、自己拡張型ステントについて送達デバイスの外側チューブとステントとの間の摩擦力を減少させるために、粘着性ポリマー材料を覆って親水性または生分解性のコーティングを配置することが望ましいことがある。図4は、カバーリング12、粘着性ポリマーコーティング14、および粘着性ポリマーコーティング14の上に配置された親水性または生分解性コーティング16、を備えたステント10の断面図である。ステントが治療部位に位置付けられて展開配置されてしまえば、生分解性または親水性コーティングは腐食して、下層の粘着性ポリマーコーティングを露出させ、今度はこのポリマーコーティングが患者の脈管壁とステントとの間に位置付けられて、ステントの位置移動を阻止する。
【0030】
適切なヒドロゲルの例には、限定するものではないが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸のコポリマー、ポリアクリラート、キトサン、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/デキストランアルデヒド、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテルなどが挙げられる。高分子量のデンプンおよび炭水化物も使用される。
【0031】
ヒドロゲル材料は、同一出願人によるブシェーミ(Buscemi)らの米国特許第5,693,034号明細書に開示されており、前記特許文献の全内容は参照により本願に組み込まれる。
【0032】
接着層を形成しない任意の適切な生分解性材料が本明細書中で使用可能である。これらの生分解性材料は、in vivoで分解してその完全性を喪失する。適切な生分解性ポリマーの例には、限定するものではないが、ポリ(アミド)、例えばポリ(アミノ酸)およびポリ(ペプチド)、ポリ(エステル)、例えばポリラクチド、例えばポリ(DL‐ラクチド)およびポリグリコリド、ならびにこれらのコポリマー、例えばポリラクチド‐コ‐グリコリド、例えばポリ(DL‐ラクチド‐コ‐グリコリド)、ポリ(L‐ラクチド‐コ‐グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)およびポリラクチド‐コ‐カプロラクトン、例えばポリ(DL‐ラクチド‐コ‐カプロラクトン)およびポリ(L‐ラクチド‐コ‐カプロラクトン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、例えばチロシン誘導型ポリカーボネート、ポリヒドロキシバレラート、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシブチラート‐コ‐バレラート、ならびにこれらの化学的誘導体(置換、化学基の付加、例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって日常的になされるその他の修飾)、これらのコポリマーおよび混合物、が挙げられる。
【0033】
粘着性ポリマー材料、親水性もしくは生分解性コーティング層、または両方に、治療薬が組み込まれてもよい。
治療がなされる病状に応じて本明細書中で様々な治療薬が使用される。本明細書中で使用されるように、用語「治療薬」、「薬物」、「薬学的活性作用薬」、「薬学的活性物質」、「有用な作用薬」、「生物活性作用薬」、およびその他の関連用語は、本明細書中で互換的に使用可能であり、かつ、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬および細胞を含みうる。薬物は単独で使用されてもよいし、他の薬物と組み合わせて使用されてもよい。薬物には、遺伝物質、非遺伝物質、および細胞が含まれる。
【0034】
治療薬は、薬物または他の医薬製品、例えば非遺伝子治療薬、遺伝子治療薬、細胞物質などであってよい。適切な非遺伝子治療薬のいくつかの例としては、限定するものではないが、抗血栓形成剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、血管細胞成長促進物質、成長因子阻害剤などが挙げられる。作用薬が遺伝子治療薬を含む場合、そのような遺伝子作用薬には、限定するものではないが、DNA、RNAならびにこれらそれぞれの誘導体および構成成分のうち少なくともいずれか;ヘッジホッグタンパク質などが挙げられる。治療薬が細胞物質を含む場合、該細胞物質には、限定するものではないが、ヒト起源および非ヒト起源のうち少なくともいずれかの細胞のほかに、該細胞それぞれの構成成分およびそれらの誘導体のうち少なくともいずれかが挙げられる。
【0035】
その他の活性作用薬には、限定するものではないが、抗新生物性物質、抗増殖性物質、抗有糸分裂性物質、抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝血性物質、抗フィブリン物質、抗増殖性物質、抗生物質、抗酸化剤、および抗アレルギー性物質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
抗新生物性/抗増殖性/抗有糸分裂性作用薬の例には、限定するものではないが、パクリタキセル(例えば米国コネチカット州スタンフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブ・カンパニー(Bristol−Myers Squibb Co.)によるTAXOL(登録商標))、オリムス(olimus)系の薬物、例えばシロリムス(ラパマイシン)、バイオリムス(シロリムスの誘導体)、エベロリムス(シロリムスの誘導体)、ゾタロリムス(シロリムスの誘導体)およびタクロリムス、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、5‐フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩、マイトマイシン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチンならびにチミジンキナーゼ阻害剤が挙げられる。先の治療物質または治療作用薬の予防性および治療特性は当業者に良く知られているが、該物質または作用薬は例として提示されており、限定的であるようには意図されていない。その他の治療物質は、開示された方法および組成物を用いた用途に等しく適用可能である。同一出願人の米国特許出願第2010/0087783号、同第2010/0069838号、同第2008/0071358号および同第2008/0071350号明細書(それぞれ参照により本願に組み込まれる)を参照されたい。同じく同一出願人の米国特許出願第2004/0215169号および同第2009/0098176号明細書、ならびに米国特許第6,805,898号明細書(それぞれ参照により本願に組み込まれる)も参照されたい。
【0037】
上述の化合物のうち多数の、治療薬として使用される誘導体も存在し、かつ、当然ながら治療薬の混合物も使用される。
適用するために、治療薬は、生体接着性または生分解性のポリマー材料と共に溶媒または共溶媒混成物中に溶解せしめることが可能である。
【0038】
適切な溶媒には、限定するものではないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸ブチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0039】
他の実施形態では、粘着性ポリマー材料は、例えば、注入するには粘性が高すぎるのでない限りは、食道などの場合、シリンジを用いた注入によって、カテーテルを伴う適用範囲の隅々に、または該範囲に沿って、ステントの送達および展開配置に先立って治療部位へと送達される。
【0040】
いくつかの実施形態では、粘着性ポリマー材料は湿気硬化性ポリジメチルシロキサンであって、治療部位に送達されるとすぐに、湿気が存在する状態で硬化する。
硬化するとすぐに、ステントが送達されて治療部位に展開配置される。粘着性シリコーン材料はステントの位置移動を阻止する。ステントは、粘着性ポリマーが完全に硬化せしめられる前に送達されることも可能である。
【0041】
ステントが除去可能なステントである場合、湿気硬化性ポリジメチルシロキサンはその後、例えば鉗子を用いて、皮膚パッチの除去と同様に除去可能である。
粘着性ポリマー材料の粘性が高すぎる場合、そのような材料はパッチとして送達され、かつ、適用範囲内で送達されることが可能である。適切には、パッチは直径約1cmであるか、または、送達にはステントに沿った数箇所の位置、例えばステントの先端側、中央および基端側の位置と一致する2以上の位置に数個のより小さなパッチを使用することを伴うことができる。
【0042】
パッチが使用される場合、患者の体腔を通した送達を促進するために粘着性ポリマー材料の上に親水性または生分解性のコーティングを配置することが望ましい。
親水性コーティングが使用される場合、親水性コーティングの溶解/除去を容易にするために体腔内に水を注入することができる。
【0043】
別例の送達技法は、治療部位へ粘着性ポリマー材料を送達するために(to delivery the tacky polymeric material)バルーンを使用することである。粘着性ポリマー材料のパッチまたは管状部材のいずれもこの方式で送達される。所望の場合には複数の管状部材が単一のバルーンで送達されることも可能である。
【0044】
バルーン送達については、患者の体腔を通した送達を容易にするために、粘着性ポリマー材料の上に親水性ポリマー材料を配置することも望ましい。親水性ポリマーは、バルーンへの接着を防止するために粘着性ポリマー材料の内側表面にも適用される。親水性材料の溶解/除去は、体腔に水を注入することにより容易にすることができる。
【0045】
これらの技法は、胃腸管内で使用されるステントとともに最も適切に使用されるが、該技法はそのように限定されるものではない。
本明細書中に提示された説明は、ある種の実施形態の個々の態様の一つの例証として意図されている記載された特定の実施形態による範囲内に、限定されるべきものではない。本明細書中に記載された方法、組成物およびデバイスは、本明細書中に記載された任意の特徴を、単独で、または本明細書中に記載された任意の他の特徴と組み合わせて、含んでなることができる。実際に、本明細書中に示されかつ説明されたものに加えて様々な改変形態が、先述の説明および添付図面から、日常的な実験作業のみの使用で当業者には明白となろう。そのような改変形態および等価物は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるように意図される。
【0046】
この明細書中で言及された出版物、特許および特許出願はすべて、個々の出版物、特許または特許出願がそれぞれ参照により本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同程度に、ここで参照により該文献全体が本明細書中に組み込まれる。本明細書中における参照文献の引用または議論は、そのような参照文献が先行技術であると認めるものとして解釈されるものではない。
図1
図2
図3
図4