特許第6139697号(P6139697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139697
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/178 20060101AFI20170522BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20170522BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61M5/178 500
   A61M5/20 510
   A61M5/20 550
   A61M5/20 570
   A61M5/32 510K
【請求項の数】24
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-548351(P2015-548351)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公表番号】特表2016-500321(P2016-500321A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013075789
(87)【国際公開番号】WO2014095424
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】1251499-8
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/745,053
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513186729
【氏名又は名称】ケアベイ・ヨーロッパ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREBAY EUROPE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバティスタ,ルシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベンデック,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,セバスチャン
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/003516(WO,A2)
【文献】 米国特許第05658259(US,A)
【文献】 特表2003−505159(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/131013(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/153544(WO,A1)
【文献】 特表2010−527248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20− 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置であって、
近位端および遠位端を有するハウジング(10、114)と、
前記ハウジングに連結された送達部材と、
前記ハウジング内に動作可能に配置された薬剤容器(84)と、
一定量の薬剤を充填および排出するために、前記薬剤容器(84)に作用することができる駆動機構(102、108)とを備え、
前記装置は、作動機構をさらに備え、
前記作動機構は、前記駆動機構と相互作用することによって、前記薬剤容器を前記送達部材に向かって移動し、薬剤を前記容器に充填するように、前記作動機構と前記駆動機構との間に第1相互作用を引起し、その後、一定量の薬剤を前記送達部材を介して排出するように、前記作動機構と前記駆動機構との間に第2相互作用を引起すように構成されていることを特徴とする、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記作動機構は、前記第1相互作用が達成されるまで、前記第2相互作用が達成されることを防止するように構成されている、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記作動機構は、
前記ハウジング(10、114)の近位端に動作可能に配置されたコンタクタ(12)と、
前記ハウジング(10、114)内に動作可能に配置され、前記コンタクタ(12)および前記駆動機構(102、108)に動作可能に連結されたロテータ(82)と、
前記ハウジング(10、114)の遠位端に動作可能に配置され、前記ロテータに動作可能に連結された安全部材(128)とを備える、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記コンタクタは、前記送達部材が前記コンタクタにより覆われかつ保護されている延伸位置と、前記送達部材が露出されている後退位置との間に、前記ハウジングに対して軸方向に移動可能である、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記コンタクタと前記ロテータとは、相互作用するように配置され、前記ロテータは、前記第1相互作用が完了するまで、前記コンタクタが前記延伸位置から前記後退位置に移動されることを防止する、請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記第1相互作用は、前記安全部材と前記ロテータとの間の相互作用により引起した前記ロテータと前記駆動機構との相互作用であり、従って、前記安全部材(128)の除去が前記ロテータ(28)の回転を引起し、よって前記駆動機構が前記容器に作用し、前記容器を充填することができる、請求項5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記第2相互作用は、前記ロテータと前記駆動機構との間のさらなる相互作用を引起こす前記コンタクタと前記ロテータとの間のさらなる相互作用であり、従って、前記コンタクタの前記延伸位置から前記後退位置までの移動がロテータ(82)のさらなる回転を引起し、よって前記駆動機構が容器にさらに作用し、前記送達部材を介して一定量の薬剤を排出することができる、請求項6に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記駆動機構は、プランジャロッド(102)と、前記プランジャロッドに所定の荷重力を作用するように構成された押圧部材(108)とを備える、請求項2から7のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記プランジャロッド(102)は、複数の第1接触部材(104)を備え、
前記ロテータ(82)は、前記第1接触部材(104)と相互作用し、前記ロテータ(82)の回転角度位置に応じて、前記プランジャロッドを初期状態、中間状態および最終状態に保持するための複数の内側案内部材(100)を備える、請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記内側案内部材(100)の各々は、第1内側縦部(100)と、第1内側横円周部(100II)と、内側傾斜部(100III)と、第2内側縦部(100IV)と、第2内側横円周部(100)と、第3内側縦部(100VI)と、第3内側横円周部(100VII)とを備える、請求項9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記安全部材(128)を除去したことによって前記ロテータ(82)が回転されるまで、前記プランジャロッドは、前記プランジャロッドの各第1接触部材(104)と前記ロテータ(82)の内表面に設けられた前記内側案内部材(100)の各第1内側横円周部(100II)との間の相互作用によって、前記初期状態に保持されている、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記コンタクタ(12)は、複数の第3接触部材(30)を備え、
前記ロテータ(82)は、前記コンタクタ(12)の前記第3接触部材(30)と相互作用するように配置された第2外側案内部材(90)をさらに備える、請求項8から11のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項13】
前記第2外側案内部材(90)の各々は、第1外側縦部(90)と、第1外側横円周部(90II)と、第2外側縦部(90III)と、外側傾斜部(90IV)と、第3外側縦部(90)と、前記第1、第2および第3の外側縦部と平行な第4外側縦部(90VI)とを備える、請求項12に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記コンタクタ(12)の前記第3接触部材(30)の各々は、前記ロテータ(82)の外表面に設けられた前記第2外側案内部材(90)の前記第1外側横円周部(90II)の各々と相互作用するように構成され、前記安全部材(128)を除去したことによって前記ロテータ(82)が回転されるまで、前記コンタクタ(12)が移動しないようにロックされる、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記安全部材(128)は、前記ロテータ(82)上に設けられ第1外側案内部材(94)と協働するように構成された第2接触部材(134)を備え、
前記第2接触部材(134)は、前記安全部材(128)を除去したときに、前記容器を充填するように前記プランジャロッドを前記初期状態から前記中間状態に解放するように、一定の回転角度で前記ロテータ(82)を回転することができる、請求項9から14のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記プランジャロッド(102)は、前記プランジャロッドの各第1接触部材(104)と前記ロテータ(82)の内表面に設けられた前記内側案内部材(100)の各第2内側横円周部(100)との間の相互作用によって、前記中間状態に保持される、請求項15に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記安全部材が除去され、前記ロテータが回転された後、前記ロテータに設けられた前記第1外側案内部材(94)は、前記安全部材(128)の再連結を防止する、請求項15または16に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記第3接触部材(30)は、前記外側傾斜部(90IV)と相互作用するように構成され、この相互作用により前記コンタクタが前記延伸位置から前記後退位置に移動され、よって前記ロテータ(82)が一定の回転角度でさらに回転され、前記ランジャロッドを前記中間状態から前記最終状態に解放し、前記送達部材を介して一定量の薬剤を排出する、請求項16または17に記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記プランジャロッド(102)は、前記プランジャロッドの各第1接触部材(104)と前記ロテータ(82)の内表面に設けられた前記内側案内部材の各第3内側横円周部(100VII)との間の相互作用によって、前記最終状態に保持される、請求項18に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記ロテータ(82)は、第1ロック部材(92)を備え、
前記第1ロック部材(92)は、前記コンタクタ(12)の前記第3接触部材(30)と相互作用することによって、一定量の薬剤が前記送達部材を介して排出され、前記コンタクタが前記後退位置から前記延伸位置に移動された後、前記コンタクタ(12)を軸方向に移動しないようにロックするように構成されている、請求項12から19のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記送達部材(40)は、前記ハウジングに固定して連結された注射針組立体であり、
前記注射針組立体は、近位尖端(42)と遠位尖端(44)とを有する注射針が配置されるハブ(38)を備え、
前記遠位尖端(44)および前記近位尖端(42)は、それぞれの保護シース(48、46)に囲まれ、覆われている、請求項4から20のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項22】
前記遠位端(44)を覆っている前記保護シース(48)は、前記薬剤容器が移動する間に、穿刺されかつ圧縮される、請求項21に記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
前記近位端(42)を覆っている前記保護シース(46)は、前記コンタクタが前記延伸位置から前記後退位置に移動する間に、穿刺されかつ圧縮されことによって、前記注射針の前記近位尖端(42)を露出する、請求項22に記載の薬剤送達装置。
【請求項24】
前記装置は、薬剤容器保持部(56)をさらに備え、
前記薬剤容器保持部(56)は、前記ハウジング内に移動可能に配置され、前記薬剤容器(84)を収容するように構成されている、請求項1から23のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な安全性、信頼性および利便性を有する薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
過去数十年に、多くの自己注射用薬剤送達装置が開発されてきた。これらの装置の多くは、患者の皮膚を穿刺して薬剤を送達する注射針を利用する。
【0003】
一部の装置は、穿刺およびその後薬剤を注射するための自動機構を備えている。これにより、ある程度の自動化、より少ない程度の手作業が患者に提供されるが、一部の患者は、たとえば穿刺および/または注射を完全に制御することができないため、このような装置を使用し難いと感じている。
【0004】
数年間に、多くの装置は、薬剤容器としてシリンジを使用している。注射針は、容器に一体化された一部である。注射針の遠位端は、常に薬剤と接触している。注射針は、管状であり、すなわち、針の内部に細い流路がある。
【0005】
このような構成は、空気が注射針の流路を入り、薬剤に不利な影響を与える可能性があるため、一部の種類の薬剤または一部の用途に対して不適切である。さらに、注射針および/または薬剤は、注射針の金属と薬剤の化学物質との接触により、不利に影響される可能性がある。
【0006】
薬剤カートリッジと呼ばれている他の種類の一般的な薬剤容器は、容器の一端にネック部または連結部を有する。ネック部には、しばしば貫通可能な壁、すなわち隔膜が配置されている。適切な注射針がこのネック部に連結される。一部の例として、連結手段は、ねじ山、バヨネット固定およびルアーロックを含むことができる。薬剤容器または薬剤カートリッジの利点は、注射針が装着されかつ隔膜が穿刺されるまで、その内部およびその内容物が環境から封止されていることである。
【0007】
この解決策の欠点は、使用者または患者が注射針をカートリッジに取付けるために組立工程を実行しなければならず、手先の器用さなどが低下した一部の患者に対して困難である。また、患者または使用者がすぐに薬を必要とする緊急事態に、組立工程は、大きな不安を引起し、ストレスになる。さらに、薬剤送達装置の外部で組立が遥かに容易であるため、ほとんどの場合、注射針をカートリッジに取付けた後、組立済みの針/カートリッジを薬剤送達装置に配置する必要がある。したがって、この装置が薬剤を送達できるまで、さらなる取扱いが必要とされている。
【0008】
このような欠点を対処するために、注射針とカートリッジ式の薬剤容器とが作動中に連結されるように構成されたいくつかの装置が開発された。
【0009】
たとえば、文献WO2012/022810は、一種の装置を開示している。装置の内部には、近位尖端と遠位尖端とを有する注射針が配置されている。装置が使用される場合に、薬剤カートリッジが移動され、注射針の遠位尖端と接触する。未使用時に、注射針の両端は、保護シースによって無菌に保たれる。装置の使用時に、これらの保護シースは、穿刺され、圧縮される。
【0010】
この装置の欠点は、取扱い順序が最適でないことである。WO2012/022810の記載によれば、注射針の遠位端がカートリッジの隔膜を穿刺する前に、注射針の近位端を用いて穿刺工程が行われる。穿刺工程の間に、コンタクタが遠位方向に押えられ、注射針を露出する。穿刺は、まず隔膜の穿刺をトリガし、その後、一定量の薬剤を排出するためにプランジャロッドの解放をトリガする必要がある。したがって、注射前に、薬剤容器の充填ができなく、穿刺の後、注射を与えるために、いくつかの操作を実行する必要がある。さらに、装置の使用が用意できるため、カバーのみを除去すればよいので、安全性が極めて低い。使用されるまでに、コンタクタをロックするためのさらなる機構がないため、誰かが誤ってコンタクタを遠位方向に押すことによって刺される危険性が存在する。
【0011】
別の文献WO2012/025639は、上述した欠点の対処法を記載している。この文献は、遠位端および近位端の両方を有する注射針を備える装置に係る多数の実施形態を開示されている。装置が使用される場合に限り、薬剤容器が穿刺される。しかしながら、この文献は、安全性の強化を言及せず、一部の実施形態は、使用前または後に注射針を隠すまたは保護するための手段を備えていない。
【0012】
安全性に関しては、文献US7794432は、安全機構を備えた薬剤送達装置を開示している。この安全機構は、装置の遠位端に配置された安全ピンの形を有する。この安全ピンは、電源装置のコレットと係合するように設計され、コレットの末端が圧縮されないように防止し、従って装置の作動を防止する。装置を使用する場合、安全ピンが除去され、装置が作動できる状態になる。
【0013】
US7794432の安全ピンは、単純な阻止部材であり、コレットの圧縮を防止する以外に他の機能を有しない。安全ピンが除去されると、装置の乱暴な取扱いによってコレットが圧縮される可能性があり、意図しない薬剤の早期送達が生じる。さらに、US7794432の装置が従来の薬剤容器を備えたため、上記の問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の簡単な説明
本願において、用語「遠位」が使用される場合、薬剤送達部位から離れる方向を指す。用語「遠位部/遠位端」が使用される場合、薬剤送達装置の使用中に、薬剤送達部位から離れて一番遠くに配置されている送達装置の一部/端部または薬剤送達装置にある部材の一部/端部を指す。同様に、用語「近位」が使用される場合、薬剤送達部位に向かう方向を指す。用語「近位部/近位端」が使用される場合、薬剤送達装置の使用中に、薬剤送達部位に一番近くに配置されている送達装置の一部/端部または薬剤送達装置にある部材の一部/端部を指す。
【0015】
また、用語「縦方向」または「縦軸方向」は、装置または構成部品の最も長い延伸部の方向に沿って装置または構成部品を通る方向または軸を意味する。同様に、用語「横方向」または「横軸方向」は、長手方向に略垂直な方向に沿って装置または構成部品を通る方向または軸を意味する。さらに、特に指定しない場合、装置の機械的な構造およびその構成要素の機械的な相互連結を記載する以下の説明において、装置は、起動されていないまたは作動されていない初期状態にある。
【0016】
本発明の目的は、従来技術の薬剤送達装置の欠点を改善することである。この目的は、独立特許請求項の特徴に係る装置によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主体を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の主な特徴によれば、本発明は、近位端および遠位端を有し、薬剤容器を収容するように構成されたハウジングを含む薬物送達装置に関する。好ましくは、駆動機構が、一定量の薬剤を充填および排出するために、薬剤容器に作用することができるように装置内に配置されている。装置は、作動機構をさらに備える。作動機構は、駆動機構と相互作用することによって、薬剤容器を送達部材に向かって移動させ、薬剤を容器に充填するように、作動機構と駆動機構との間に第1相互作用を引起し、その後、一定量の薬剤を送達部材を介して排出するように、作動機構と駆動機構との間に第2相互作用を引起すように構成されている。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、作動機構は、第1相互作用が達成されるまで、第2相互作用が達成されることを防止するように構成されている。
【0019】
本発明のさらに別の特徴によれば、作動機構は、ハウジングの近位端に動作可能に配置されたコンタクタと、ハウジング内に動作可能に配置され、コンタクタおよび駆動機構に動作可能に連結されたロテータと、ハウジングの遠位端に動作可能に配置され、ロテータに動作可能に連結された安全部材とを備える。好ましくは、作動機構は、ハウジングの近位端に摺動可能に配置されたコンタクタと、コンタクタおよび駆動機構に動作可能に連結されたロテータと、ハウジングの遠位端に動作可能に配置され、ロテータに動作可能に連結された安全部材とを備える。より好ましくは、作動機構は、ハウジングの近位端に摺動可能にロックされかつ回転可能に配置されたコンタクタと、ハウジング内に回転可能にロックされかつ動作可能に配置され、コンタクタおよび駆動機構に動作可能に連結されたロテータと、ハウジングの遠位端に回転可能にロックされかつ解放可能に配置され、ロテータに動作可能に連結された安全部材とを備える。
【0020】
コンタクタは、薬剤薬剤送達プロセス中に、患者または使用者の薬剤送達部位と接触するように構成されている。したがって、ロテータは、多くの機能を実行するために、ハウジングなどの内部で回転することができる概ね管状または樽状本体を備えるように構成されている。異なる機能の実行を容易にするために、ロテータは、ロテータの移動および/またはロテータと相互作用する他の構成要素および他の機構の移動を制御することができる複数の内側および外側のレッジ、隆起および案内部材などを有するように構成されている。レッジのほかに、突起、舌片、楔形隆起および類似する構成部品を設けても良い。また、薬剤送達装置を使用できる状態にするように構成された安全部材の除去は、ロテータの回転を引起し、よって、コンタクタが駆動機構を作動するためのロテータを回転させることができる。
【0021】
本発明のさらなる特徴によれば、コンタクタは、送達部材がコンタクタにより覆われかつ保護されている延伸位置と、送達部材が露出されている後退位置との間に、ハウジングに対して軸方向に移動可能である。好ましくは、コンタクタは、ハウジングに対して、長手方向に移動することができるが、回転することができない。
【0022】
本発明のさらなる別の特徴によれば、安全部材とコンタクタとの間には、ロテータを介した相互作用が存在している。具体的に、コンタクタとロテータとは、相互作用するように配置され、ロテータは、安全部材がロテータを強制的に回転されるまで、すなわち、安全部材が除去されるまで、コンタクタが延伸位置から後退位置に移動されることを防止する。これにより、装置が充填されるまで作動されないことは保証される。安全部材が装置の所定の位置にあるとき、装置がまだ使用されていないことを示す。この局面では、装置は、除去された安全部材を再連結できよいように構成されている。
【0023】
好ましくは、第1相互作用は、安全部材とロテータとの間の相互作用により引起したロテータと駆動機構との相互作用であり、従って、安全部材の除去がロテータの回転を引起し、よって駆動機構が容器に作用し、容器を充填することができる。
【0024】
好ましくは、第2相互作用は、ロテータと駆動機構との間のさらなる相互作用を引起こすコンタクタとロテータとの間のさらなる相互作用であり、従って、コンタクタの延伸位置から後退位置までの移動がロテータのさらなる回転を引起し、よって駆動機構が容器にさらに作用し、送達部材を介して一定量の薬剤を排出することができる。
【0025】
好ましくは、駆動機構は、プランジャロッドと、プランジャロッドに所定の荷重力を作用するように構成された押圧部材108とを備えてもよい。プランジャロッドは、ロテータに動作可能に連結され、従って、ロテータが安全部材により回転され、プランジャロッドを解放する。換言すれば、押圧部材は、予め引張され、プランジャロッドに配置されている。この局面では、押圧部材は、プランジャロッドを移動することができる任意の適切な部材であってもよい。一部の例として、押圧部材は、圧縮渦巻ばね、ガスばね、弾性材料部材、またはクロックばねであってもよい。
【0026】
好ましくは、プランジャロッドは、複数の第1接触部材を備えてもよく、ロテータは、第1接触部材と相互作用し、ロテータの回転角度位置に応じて、プランジャロッドを初期状態、中間状態および最終状態に保持するための複数の内側案内部材を備えてもよい。
【0027】
好ましくは、内側案内部材の各々は、第1内側縦部と、第1内側横円周部(と、内側傾斜部と、第2内側縦部と、第2内側横円周部と、第3内側縦部と、第3内側横円周部とを備えてもよい。これらの特徴を有すれば、非常に少ない数の構成要素によって、いくつかの異なる機能を含むことができ、実行することができる。特に、中間停止位置で一定量の薬剤を充填するステップと排出するステップとの合併は、ロテータによって容易に達成される。
【0028】
好ましくは、安全部材を除去することによってロテータが回転されるまで、プランジャロッドは、プランジャロッドの各第1接触部材とロテータの内表面に設けられた内側案内部材の各第1内側横円周部との間の相互作用によって、初期状態に保持されている。
【0029】
好ましくは、コンタクタは、ロテータを回転するようにロテータに動作可能に連結されている。よって、コンタクタは、好ましくは、複数の第3接触部材を備える。ロテータは、好ましくは、コンタクタの第3接触部材と相互作用するように配置された第2外側案内部材をさらに備える。
【0030】
好ましくは、第2外側案内部材の各々は、第1外側縦部と、第1外側横円周部と、第2外側縦部と、外側傾斜部と、第3外側縦部と、第1、第2および第3の外側縦部と平行な第4外側縦部とを備える。
【0031】
好ましくは、コンタクタの第3接触部材の各々は、ロテータの外表面に設けられた第2外側案内部材の第1外側横円周部の各々と相互作用するように構成され、安全部材を除去することによってロテータが回転されるまで、コンタクタが移動しないようにロックされる。この特徴は、装置が使用可能になるまで、送達部材、すなわち注射針が接触されないことを保証する。
【0032】
好ましくは、安全部材は、ロテータ上に設けられ第1外側案内部材と協働するように構成された第2接触部材を備え、第2接触部材は、安全部材を除去したときに、容器を充填するようにプランジャロッドを初期状態から中間状態に解放するように、一定の回転角度でロテータを回転することができる。好ましくは、プランジャロッドは、プランジャロッドの各第1接触部材とロテータの内表面に設けられた内側案内部材の各第2内側横円周部との間の相互作用によって、中間状態に保持される。
【0033】
好ましくは、安全部材が除去され、ロテータが回転された後、ロテータに設けられた第1外側案内部材は、安全部材の再連結を防止する。このことは、装置が既に充填されたことを示す。
【0034】
また、好ましくは、第3接触部材は、外側傾斜部と相互作用するように構成され、この相互作用によりコンタクタが延伸位置から後退位置に移動され、よってロテータが一定の回転角度でさらに回転され、ランジャーロッドを中間状態から最終状態に解放し、送達部材を介して一定量の薬剤を排出する。
【0035】
好ましくは、プランジャロッドは、プランジャロッドの各第1接触部材とロテータの内表面に設けられた内側案内部材の各第3内側横円周部との間の相互作用によって、最終状態に保持される。
【0036】
また、好ましくは、ロテータは、第1ロック部材を備えてもよい。第1ロック部材は、コンタクタの第3接触部材と相互作用することによって、一定量の薬剤が送達部材を介して排出され、コンタクタが後退位置から延伸位置に移動された後、コンタクタを軸方向に移動しないようにロックするように構成されている。このことは、送達部材すなわち注射針がコンタクタにより覆われ、接触されないことを保証する。したがって、送達部材によって引起された非意図的な刺しまたは他の傷害を避けることができる。
【0037】
好ましい実施形態では、送達部材は、ハウジングに固定して連結された注射針組立体であり、注射針組立体は、近位尖端と遠位尖端とを有する注射針が配置されるハブを備え、遠位尖端および近位尖端は、それぞれの保護シースに囲まれ、覆われている。これにより、注射針は、使用前に、汚染から保護され、無菌に保たれる。
【0038】
また、遠位端を覆っている保護シースは、薬剤容器が移動する間に、穿刺されかつ圧縮されるように構成されている。近位端を覆っている保護シースは、コンタクタが延伸位置から後退位置に移動する間に、穿刺されかつ圧縮されことによって、注射針の近位尖端を露出するように構成されている。
【0039】
装置のさらに有利な実施形態によれば、装置は、薬剤容器保持部をさらに備えてもよい。好ましくは、駆動機構は、薬剤容器保持部に動作可能に連結され、作動されると、薬剤容器保持部を注射針と接触しない位置から、注射針が薬剤容器への流路を作成する位置に移動するように構成されてもよい。この解決策は、注射針が一定量の薬剤を送達するまで、薬剤容器内の薬剤と接触しないという利点を有する。このことは、重要である。そうでない場合、薬剤が注射針の材料により影響され、または注射針の材料が薬剤により影響され、薬剤および注射針の両方に不利な影響を与える可能性がある。
【0040】
本発明のこれらの局面および他の局面ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る薬剤送達装置の例示的な実施形態を示す斜視図である。
図2図1の装置の分解図である。
図3図1の装置の断面図である。
図4図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図5図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図6図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図7図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図8図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図9図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図10図1の装置に含まれる異なる構成要素の詳細図である。
図11図1の装置の異なる機能的位置の断面図である。
図12図1の装置の異なる機能的位置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
以下、添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0043】
図面に示された例示的な薬剤送達装置は、近位端および遠位端を有する概ね細長いハウジングと、ハウジングに連結された送達部材40と、ハウジング内に動作可能に配置された薬剤容器84と、一定量の薬剤を充填および排出するために、薬剤容器に作用することができる駆動機構とを備える。装置は、作動機構をさらに備え、作動機構は、駆動機構と相互作用することによって、薬剤容器を送達部材に向かって移動し、薬剤を容器に充填するように、作動機構と駆動機構との間に第1相互作用を引起し、その後、一定量の薬剤を送達部材を介して排出するように、作動機構と駆動機構との間に第2相互作用を引起すように構成されている。
【0044】
さらに、以下で説明するように、作動機構は、第1相互作用が達成されるまで、第2相互作用が達成されることを防止するように構成されている。
【0045】
ハウジングは、図1に示すように、両端が開放している筒状の第1ハウジング部10と、第1ハウジング部の遠位端に取付けられた第2ハウジング部114とを備える。これらの2つのハウジング部は、1つの構成要素として見なすことができる。
【0046】
作動機構は、ハウジングの近位端に動作可能に配置されたコンタクタ12と、ハウジング内に動作可能に配置され、コンタクタ12および駆動機構に動作可能に連結されたロテータ82と、ハウジングの遠位端に動作可能に配置され、ロテータに動作可能に連結された安全部材128とを備える。また、コンタクタは、送達部材がコンタクタにより覆われかつ保護されている延伸位置と、送達部材が露出されている後退位置との間に、ハウジングに対して軸方向に移動可能である。コンタクタとロテータとは、相互作用するように配置され、ロテータは、第1相互作用が完了するまで、コンタクタが延伸位置から後退位置に移動されることを防止する。
【0047】
第1相互作用は、安全部材とロテータとの間の相互作用により引起したロテータと駆動機構との相互作用であり、従って、安全部材128の除去がロテータ28の回転を引起し、よって駆動機構が容器に作用し、容器を充填することができる。以下、この相互作用を詳細に説明する。
【0048】
この実施形態において、コンタクタ12は、送達部材のカバーとして示されている。コンタクタ12は、横方向の近位端壁16(図2)を有するほぼ管状の近位部14を備える。2つの長手方向に延在するアーム18(図4)は、管状部14から遠位端に向かって延在している。延在アーム18の各々は、第1ハウジング部10の内表面に概ね対応する曲率を有する外表面を有する。したがって、コンタクタは、第1ハウジング部に対して長手方向に沿って摺動可能である。アーム18の外表面には、案内リブ20(図4)が配置されている。案内リブ20は、第1ハウジング部10の内表面に設けられた長手方向に延在する溝22(図4)に適合するように構成されている。したがって、コンタクタ12は、第1ハウジング部10に対して長手方向に沿って摺動する間に案内され、ハウジングに対してコンタクタの回転が防止される。コンタクタは、管状部14がハウジングの近位端から突出するように、ハウジング内に配置されている。
【0049】
コンタクタ12は、概ね径方向に屈曲する2つの舌片24(図4)を備える。各舌片は、各アーム上に配置され、その自由端がコンタクタ12の近位端に面している。舌片24は、引張されていない自由状態において、若干内側へ一定の傾きを有するように配置されている。コンタクタの横方向端壁16は、さらに、中央に位置する流路26(図2)を備えている。以下に説明するように、装置が使用される場合に、注射針のような送達部材は、この流路を通ることができる。また、コンタクタは、複数の第3接触部材30を備える。コンタクタ12のアーム18の各々は、第3接触部材30を備える。図4に示すように、第3接触部材30は、アーム先端部の内表面に配置された突起であってもよい。
【0050】
送達部材40は、近位尖端42と遠位尖端44とを有する注射針が配置されるハブ38を備える注射針組立体である。遠位尖端44および近位尖端42は、それぞれの保護シース48、46に囲まれ、覆われている(図5)。ハブ38は、近位方向に指向するレッジと遠位方向に指向するレッジとを有する。シース46および48は、ゴムまたはシリコーンのような適切な可撓性材料からなり、針を保護するためおよび使用前に注射針を無菌状態に保つために、圧力によってハブ38のレッジに嵌合されている。注射針組立体は、ハウジングに固定するように連結されている。
【0051】
コンタクタ押圧部材31は、圧縮渦巻ばねであってもよい。コンタクタ押圧部材31は、予め引張され、コンタクタ12を近位方向に付勢するために、その近位端が横方向端壁16の遠位側に向けられた表面と接触するように配置されている。コンタクタ押圧部材31の遠位端は、第1ハウジング部10の内部に配置された送達部材保持部32(図5)と接触している。送達部材保持部32は、概ね管状の形状を有し、遠位端開口および近位開口部を有する第1部分34を備える。近位開口部には、円周レッジ36が配置されている。ハブ38は、第1部分34の内側に配置されてもよい。ハブ38は、第1部分34に適合するように、好ましくはいくつかの摩擦をもって第1部分34に適合するように成形される。送達部材保持部32は、第1ハウジング部に固定するように取付けられている。代替的には、第1ハウジング部と送達部材保持部32とは、一体である。
【0052】
送達部材保持部32の第2部分50も概ね管状であり、注射針40の遠位尖端44が第2部分50の内部に突出するように構成されている。図6に示すように、第2部分50の直径は、薬剤容器保持部56の近位部分54のネック部52がその内部に適合できるように選択される。薬剤容器保持部の近位部分54は、2つの遠位方向に延在する舌部60を有する円形端壁58を備える。舌片60は、径方向に可撓性を有するように構成されている。図7に示すように、舌片の自由端には、径方向に沿って外側に延在するレッジ62が設けられている。レッジ62は、楔形状を有する。
【0053】
図6に示すように、舌片60のレッジ62は、薬剤容器保持部56の細長い第2部分66の近位領域に設けられた凹部64と適合し、この2つの部分を互いに連結するように構成されている。第2部分66には、ネック部から延在しており、第1ハウジング部10の内表面と概ね対応する寸法および曲率を有する2つの第1壁部68が設けられている。この2つの第1壁部68は、直径の正反対に位置している。第1壁部68は、コンタクタ12のアーム18を収容できるような寸法を有し、直径の正反対に位置する第2壁部70に取付けられている。第1壁部および第2壁部の遠位端は、端壁72に取付けられている。端壁72には、中央流路74が設けられている。端壁72には、互いに直径の正反対に位置し、概ね内側に指向する突起76が配置されている。図6に示すように、薬剤容器保持部は、ネック部86を有する薬剤容器84を収容するように構成されている。このネック部86は、薬剤容器保持部56のネック部52に嵌合し、可撓性膜または隔膜によって封止されている。薬剤容器の遠位端は、移動可能なストッパ88によって封止されている。
【0054】
また、薬剤容器保持部の第2部分66の端壁72には、遠位方向に指向する2つのループ78が設けられている。各ループは、径方向内側に延在する突起またはリッジを備える。径方向内側に延在する突起またはリッジの各々は、ロテータ82(図7)の外表面に設けられた径方向外側に延在する突起80と相互連結することができるように配置されている。よって、薬剤容器保持部56は、初期位置に保持される。図3のように、初期位置において、薬剤容器保持部56は、薬剤容器とともに、注射針40の遠位尖端44と薬剤容器のネック部との間に距離があるように配置される。
【0055】
図3に示すように、コンタクタ押圧部材31によってコンタクタ12をハウジングから近位方向に沿って押し出されないために、コンタクタ12は、送達部材保持部32の遠端環状面に接触するコンタクタのアームの舌片24によって所定の位置に保持されている。
【0056】
第2相互作用は、ロテータと駆動機構との間のさらなる相互作用を引起こすコンタクタとロテータとの間のさらなる相互作用であり、従って、コンタクタの延伸位置から後退位置までの移動がロテータ82のさらなる回転を引起し、よって駆動機構が容器にさらに作用し、送達部材を介して一定量の薬剤を排出することができる。以下、この第2相互作用を詳細に説明する。
【0057】
ロテータ82は、外表面と内表面とを有する筒状部材である。ロテータ82の外表面には、異なる機能を有する複数の外側案内部材が設けられている。ロテータ82の外表面には、第1外側案内部材94が設けられされている。図7に示すように、第1外側案内部材94は、ロテータ82の遠位端に位置する横円周レッジであり、直径の正反対位置に設けられた2つの切欠き96を備える。切欠き96は、一定の幅を有する。第1外側案内部材94および切欠き96の機能は、以下に説明される。
【0058】
ロテータは、ハウジングに動作可能に連結されている。ロテータは、好ましくはハウジングに回転可能かつ摺動可能にロックされ、より好ましくは第2ハウジング部に回転可能かつ摺動可能にロックされる。よって、ロテータは、さらに、外表面に設けられた保持部材93、好ましくは外表面に設けられた径方向外側に突出する突起またはリッジを有する。これらの保持部材93は、第2ハウジング部の内表面に設けられた対応の保持部材、好ましくは第2ハウジング部の内表面に設けられた径方向内側に突出する突起またはリッジ115と相互作用するように構成されている。したがって、ロテータは、ハウジングに対して回転することができるが、長手方向に沿って移動することができない。
【0059】
ロテータ82の外表面には、第2外側案内部材90がさらに設けられている。各第2外側案内部材90は、第1外側縦部90と、第1外側横円周部90IIと、第2外側縦部90IIIと、外側傾斜部90IVと、第3外側縦部90と、第1、第2および第3の外側縦部と平行な第4外側縦部90VIとを備える。第1外側縦部90は、第1外側横円周部90IIに連結される。そして、第1外側横円周部90IIは、第2外側縦部90IIIに連結される。第2外側縦部90IIIは、さらに外側傾斜部90IVに連結され、その後第3外側縦部90に連結される。第4外側縦部90VIは、第1、第2および第3の外側縦部と平行である。第4外側縦部に隣接して、第1ロック部材92が設けられている。第1ロック部材92は、近位方向に指向する自由端を有するほぼ径方向に屈曲する舌片である。図7の側面図に示すように、舌片92の形状は、概ね楔状である。
【0060】
ロテータ82の内表面には、複数の内側案内部材100が設けられている。図8に示すように、複数の内側案内部材100は、二組のレッジであってもよい。各内側案内部材100は、第1内側縦部100と、第1内側横円周部100IIと、内側傾斜部100IIIと、第2内側縦部100IVと、第2内側横円周部100と、第3内側縦部100VIと、第3内側横円周部100VIIとを備える。第1内側縦部100は、第1内側横円周部100IIに連結される。その後、第1内側横円周部100IIは、縦方向に対して傾斜された内側傾斜部100IIIに連結される。内側傾斜部100IIIは、第2内側縦部100IVに連結される。その後、第2内側縦部100IVは、第2内側横円周部100に連結される。第2内側横円周部100は、その後、第3内側縦部100VIに連結され、最後に、第3内側縦部100VIは、第3内側横円周部100VIIに連結される。近位方向に延在する長い内側縦部100VIIIは、第3内側横円周部100VIIに連結される。この2つのリッジ部は、直径方向に対向するようにロテータの内側面に配置されている。
【0061】
図9に示すように、駆動機構に含まれる概ね細長い管状のプランジャロッド102は、ロテータ82内に同軸に配置されている。初期状態では、プランジャロッド102は、プランジャロッド102の近位端が薬剤容器84のストッパ88と接触するように配置される。プランジャロッド102は、複数の第1接触部材104を含む。第1接触部材104は、概ね径方向外側に延在する2つの突起であってもよい。これらの第1接触部材104は、ロテータ82の内側面に設けられた内側案内部材100と相互作用するように構成されている。プランジャロッド102は、長手方向に延在する2つの溝106をさらに備える。これらの溝106は、薬剤容器保持部56の第2部分66の中央流路74の突起76と相互作用することによって、両者の間に相対的な長手方向の移動を可能にしながら、両者の間の回転がロックされるように構成されている。プランジャロッドは中空であり、プランジャロッド102の内側に押圧部材108が配置されている。図2および3に示すように、この押圧部材108も駆動機構に含まれている。本実施形態において、押圧部材108は、プランジャロッドの近位端に位置する端壁110と接触する近位端を有する圧縮螺旋ばねとして示されている。図4に示すように、押圧部材108の遠位端は、第2ハウジング部114の壁部112に当接している。押圧部材108は、予め引張され、プランジャロッドに作用するように構成された所定の荷重力を有する。したがって、プランジャロッド102の第1接触部材104は、ロテータ82の内側案内部材100と相互作用するように構成され、ロテータ82の回転位置に応じて、プランジャロッドを初期状態、中間状態および最終状態に保持する。
【0062】
図示の実施形態では、第2ハウジング部114は、第1ハウジング部の遠位端に連結され、近位方向に指向する2つのアーム116を有するように構成されている。各アームは、概ね径方向に沿って可撓性を有しかつ遠位方向に自由端を有する舌片118を備える。舌片118には、外側向きのレッジが設けられている。これらのレッジは、第1ハウジング部10の遠位領域に位置する切欠き120に嵌合するように構成され、2つのハウジング部を一体に固定する。第2ハウジング部114の端壁112には、案内押圧部材108を案内しかつ支持するように構成された近位方向に指向するばね案内ロッド122が設けられている。第2ハウジング部114の端壁112は、複数の流路124をさらに備える。本実施形態において、複数の流路124は、直径方向に対向する2つの流路として示されている。第2ハウジング部の外側表面は、直径方向に対向する2つの凹部126をさらに備える。
【0063】
図示の実施形態では、安全部材128は、第2ハウジング部に解放自在に取付けられている。安全部材128は、端壁130を備える。端壁130には、2つの近位方向に指向するグリップパネル132が設けられている。グリップパネル132は、第2ハウジング部の凹部126に嵌合するように構成されている。安全部材128は、第2接触部材134をさらに備える。第2接触部材134は、端壁130に取付けられ、近位方向に指向する2つのアームである。これらの第2接触部材134は、第2ハウジング部114の流路124内およびロテータ82の第1外側案内部材94の切欠き96に嵌合するように構成されている。第2接触部材134は、図4に示された湾曲形状を有する側縁136を備える。これらの側縁136は、側方向に指向する突起を形成する。以下、第2接触部材の形状の作用について説明する。
【0064】
装置は、以下のように機能するように構成されている。好ましくは、装置は、使用者の手元に届くときに、既に組立済み、使用できる状態にある。具体的に、送達部材40、本実施形態において注射針は、既に第1ハウジング部10の保持部32に嵌合されており、薬剤容器84は、既に薬剤容器保持部56内に配置されている。図3に示すように、初期位置では、薬剤容器保持部56は、薬剤容器とともに、注射針40の遠位尖端44と薬剤容器のネック部との間に距離が存在するように配置されている。
【0065】
さらに、安全部材128は、第2ハウジング部114に取付けられている。コンタクタ12は、コンタクタ押圧部材31によって延伸位置に付勢される。また、図10に示すように、コンタクタ12は、第1ハウジング部に対して延伸位置から後退位置に移動されないように、コンタクタ12の第3接触部材30とロテータ82の外表面に設けられた第2外側案内部材90の第1外側横円周部90IIとの間の相互作用によりロックされている。このとき、第1外側横円周部90IIは、阻止部材として機能する。安全部材128を除去したことによってロテータ82が回転されるまで、プランジャロッド102は、プランジャロッド102の各第1接触部材104と図8に示された位置Iにあるロテータ82の内表面に設けられた内側案内部材100の各第1内側横円周部100IIとの間の相互作用によって、初期状態に保持される。
【0066】
装置を使用する場合、使用者は、グリップパネル132を把持し、長手方向に沿って安全部材128を遠位方向に引張ることによって、装置から安全部材128を除去する。これにより、第2接触部材134も長手方向に沿って遠位方向に移動し、図10に示すように、第1外側案内部材94の端面に接触している湾曲側面136は、ロテータ82を一定の回転角度で回転するように押圧する。同時に、安全部材128を除去することにより生じたロテータ82の回転は、プランジャロッド102の第1接触部材104を初期状態から解放させまたは移動させる。したがって、第1接触部材104は、ロテータ82の内表面に設けられた内側案内部材100の各第1内側横円周部100IIと接触しなくなり、図8に示された位置IIにある内側傾斜部100IIIと接触する。その後、プランジャロッド102は、押圧部材108によって押圧され、近位方向に移動する。内側傾斜部100IIIとの接触により、ロテータ82がさらなる角度に回転させられ、よって、ループ78の径方向内側に延在する突起またはレッジが、ロテータ82の外表面に設けられた径方向外側に延在する突起80から解放される。
【0067】
プランジャロッド102が初期状態から中間状態に移動する間に、プランジャロッドは、薬剤容器84と薬剤容器保持部56とが1つのユニットとして近位方向に移動するように、薬剤容器84のストッパ88に力を作用する。図示の実施形態では、この移動によって、図11に示すように、注射針40の遠位尖端44は、注射針の遠位端を取囲む保護シース48を圧縮するとともに、保護シース48を穿刺し、その後薬剤容器84のネック部に位置する隔膜を穿刺する。
【0068】
隔膜が針の遠位端44により穿刺されると、注射針40により容器からの流路が開設され、圧力が解放され、薬剤容器84は、充填される。その後、空気、場合によっては少量の薬剤は、注射針40の近位端を取囲む保護シース46の内部に排出される。
【0069】
第1接触部材104が図8に示された位置IIIにある第2内側横円周部100Vに接触すると、プランジャロッド102の移動が停止する。この時、プランジャロッド102は、初期状態から中間状態に移動されている。プランジャロッド102は、プランジャロッド102の各第1接触部材104とロテータ82の内表面に設けられた内側案内部材100の各第2内側横円周部100との間の相互作用によって、中間状態に保持される。
【0070】
さらに、ロテータ82の回転によって、第1外側の案内部材94は、第2ハウジング部の流路124の前方位置に移動される。これにより、安全部材128の第2接触部材134を第2ハウジング部114の流路124内に再導入する試みは、すべて防止される。このように、ロテータの第1外側案内部材94は、安全部材が除去されロテータが回転した後、安全部材128の再連結を防止する。
【0071】
上述したロテータ82の回転により、第1外側横円周部90IIは、図7の位置IIに移動され、コンタクタ12の第3接触部材30と接触しなくなる。よって、コンタクタ12は、延伸位置から遠位方向に沿って後退位置に自由に移動することができる。
【0072】
次のステップでは、コンタクタが送達部材に対して移動して注射針の近位尖端42を露出するように、手動による穿刺または半穿刺を実行する。コンタクタの横方向端壁16が送達部位、すなわち注射部位に位置されかつコンタクタ12が送達部位に押圧されているため、コンタクタ12は、ハウジングに対して遠位方向に沿って延伸位置から後退位置に移動される。よって、コンタクタ押圧部材31は、圧縮される。図示の実施形態では、注射針の近位端は、その後、図12に示すように、近位端の保護シース46を穿刺し、コンタクタの横方向端壁16に設けられた流路26を通って、使用者の組織内に穿刺する。コンタクタ12が延伸位置から後退位置に移動されると、コンタクタ12の第3接触部材30の各々は、各第2外側縦部90IIIに沿って移動し、図7に示された位置IIIにある各外側傾斜部90IVと接触する。
【0073】
コンタクタ12の第3接触部材30とロテータ82の外側傾斜部90IVとの間の相互作用は、ロテータ82をさらに一定の角度で回す/回転するように押圧する。このさらなる回転によって、プランジャロッドが中間状態から最終状態に移動することができるようになる。中間状態において、プランジャロッドは、プランジャロッド102の各第1接触部材104とロテータ82の内表面に設けられた内側案内部材100の各第2内側横円周部100との間の相互作用によって、保持される。最終状態において、プランジャロッドは、プランジャロッド102の各第1接触部材104とロテータ82の内表面に設けられた内側案内部材100の各第3内側横円周部100VIIとの間の相互作用によって、保持される。この中間状態から最終状態への移動によって、薬剤容器84のストッパ88が近位方向に沿って位置IVから位置Vに移動され、これにより、一定量の薬剤が送達部材40を介して送達部位に排出される。上述のように、プランジャロッド102の第1接触部材104が図8に示された位置Vにある第3内側横円周部100VIIと接触するように移動されると、薬剤の送達が停止される。
【0074】
その後、送達部位から装置を除去することができる。よって、コンタクタ押圧部材31は、コンタクタ12を押して、ハウジングに対して近位方向に沿って後退位置から延伸位置に移動する。同時に、コンタクタの第3接触部材30は、図7に示された位置Vにあるロテータの第1ロック部材92を通過するまで、ロテータに沿って軸方向に移動する。第3接触部材が位置IVから位置Vに進むと、ロック部材92が径方向内側に屈曲する。その後、ロック部材が可撓性により元に戻り、その楔形状がコンタクタ12を遠位方向に沿って後退位置に延伸位置から再び移動することを防止する。したがって、送達部材40、すなわち注射針は、コンタクタに覆われ、保護される。よって、あらゆる針刺し事故が防止される。この時の装置は、廃棄されてもよい。
【0075】
理解すべきことは、上記に説明したおよび図面に記載した実施形態は、本発明の非限定的な例のみとして見なされるべきであり、特許請求の範囲においてさまざまな方法で変更することができることである。
図1
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図12