(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドア周辺のエリアは、前記乗りかごのドアの戸閉方向に対して当該ドアの開口幅より短い距離を有し、当該戸閉方向に対して当該ドアの厚みより長い距離を有していることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
前記第1動き検出手段によって検出された動きありのブロックの中から前記乗りかごのドアに最も近いブロックを前記各第1画像毎に抽出し、当該ブロックにおける当該ドアの中心から前記乗場方向の座標位置を人物の位置として推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段によって推定された人物の位置の時系列変化に基づいて、当該人物の乗車意思の有無を推定する乗車意思推定手段と
をさらに具備し、
前記信号出力手段は、
前記乗車意思推定手段によって乗車意思が有ると推定された人物が前記乗場にいる場合、または前記第2動き検出手段によって動きありのブロックが検出された場合に、前記戸開指示信号を前記かご制御装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る画像処理装置を含むエレベータの利用者検出システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0011】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を乗場15側に向けて設置されている。カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続撮影可能である。乗りかご11が各階に到着して戸開したときに、乗場15の状態を乗りかご11内のかごドア13付近の状態を含めて撮影する。
【0012】
このときの撮影範囲はL1+L2に設定されている(L1≫L2)。L1は乗場15側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて例えば3mである。L2は乗りかご11側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて例えば50cmである。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0013】
なお、各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0014】
カメラ12によって撮影された各画像(映像)は、画像前処理装置20によって前処理が施された後に、画像処理装置30によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に、画像前処理装置20と画像処理装置30とを乗りかご11から取り出して示しているが、実際には画像前処理装置20と画像処理装置30とはカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。また、
図1では、画像前処理装置20と画像処理装置30とを別々のものとして示しているが、画像前処理装置20の機能が画像処理装置30に搭載されていても良い。
【0015】
画像前処理装置20には、解像度低下処理部21及びドア周辺画像抽出部22が備えられている。解像度低下処理部21は、カメラ12によって撮影された各画像(撮影画像)の解像度を低下させ、低解像度の画像を生成する。撮影画像の解像度を低下させる方法としては、例えば、撮影画像を構成する画素を間引く方法がある。生成された低解像度の画像は画像処理装置30に送られる。このように画像の解像度を低下させることで、画像サイズ(画像の容量)を小さくすることができ、画像処理装置30での解析処理を高速(リアルタイム)に実行することができるようになる。
【0016】
ドア周辺画像生成部22は、かごドア13の戸閉を開始すると、カメラ12によって撮影された各画像からドア周辺エリアを抽出し、当該抽出されたドア周辺エリアだけが映された画像(以下、ドア周辺画像と表記する)を解像度を低下させずに生成する。生成されたドア周辺画像は画像処理装置30に送られる。
【0017】
ドア周辺エリアE0とは、
図2に示すように、かごドア13の両先端部付近の所定のエリアを指す。詳しくは、ドア周辺エリアE0は、かごドア13の両先端部からかごドア13の戸閉方向に対して任意の距離M1(但し、距離M1はかごドア13の開口幅よりも短い距離であるものとする)を有し、例えば100mmに設定されている。また、ドア周辺エリアE0の奥行き方向(かごドア13の戸閉方向と直交する方向)の距離M2は、例えば、かごドア13の乗りかご11側のドア面から乗場ドア14の乗場15側のドア面までの距離(ドアの厚み)より大きな値に設定される。
【0018】
ドア周辺エリアE0は、上記したように、かごドア13の両先端部からかごドア13の戸閉方向に対して任意の距離M1を有しているので、かごドア13の戸閉と共に変化する。具体的には、ドア周辺エリアE0は
図3(a)乃至
図3(d)に示すように変化する。まず、かごドア13の戸閉が開始されると、ドア周辺エリアE0は、
図3(a)に示すように、かごドア13の両先端部付近にそれぞれ設定される。その後、かごドア13の戸閉が進むにつれて、2つのドア周辺エリアE0は
図3(b)に示すように互いに近づいていき、さらにかごドア13の戸閉が進むと、これらドア周辺エリアE0は
図3(c)に示すように重畳する(つまり、ドア周辺エリアE0は徐々に小さくなる)。最終的に、かごドア13が戸閉し終わると、ドア周辺エリアE0は
図3(d)に示すように無くなる。
【0019】
なお、ここでは、ドア周辺エリアE0が、
図2に示すように、かごドア13の戸閉方向にM1の距離を有し、奥行き方向にM2の距離を有する矩形のエリアである場合を想定しているが、これに限定されず、ドア周辺エリアE0には、乗りかご11内の一部がさらに含まれていても良い。具体的には、ドア周辺エリアE0は
図4に示すようにL字型であっても良い。このようにドア周辺エリアE0をL字型にすることで、後述する紐状物体検出部33において実行される検出処理での検出範囲を広げることができると共に、実空間における高さを考慮した検出処理を実行することができるようになる。但し、低解像度でない画像を利用した紐状物体検出部33での検出処理は処理負荷が大きいため、ドア周辺エリアE0に含める乗りかご11内の一部は、当該検出処理の処理速度に影響を及ぼさない程度の大きさであるものとする。
【0020】
また、ドア周辺エリアE0には、カメラ12近傍に設けられる光源から光が照射されても良い。これによれば、後述する紐状物体検出部33において実行される検出処理の精度(紐状の物体を検出する精度)を高めることができる。
【0021】
画像処理装置30には、記憶部31、利用者検出部32及び紐状物体検出部33が備えられている。記憶部31は、画像前処理装置20から送られた低解像度の各画像と、各ドア周辺画像とを逐次記憶すると共に、利用者検出部32及び紐状物体検出部33の処理に必要なデータを一時的に保持しておくためのバッファエリアを有する。
【0022】
利用者検出部32は、画像前処理装置20から送られてくる低解像度の各画像の中でかごドア13に最も近い人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検出(判定)する。この利用者検出部32を機能的に分けると、動き検出部32a、位置推定部32b、乗車意思推定部32cで構成される。
【0023】
動き検出部32aは、低解像度の各画像の輝度をブロック単位で比較して人・物の動きを検出する。ここで言う「人・物の動き」とは、乗場15の人物や車椅子などの移動体の動きのことである。なお、本実施形態においては、画像の輝度に着目して人・物の動きを検出するが、人・物の動きを検出する方法はこれに限定されず、例えば、画像の明度や彩度を利用して、人・物の動きが検出されても良い。
【0024】
位置推定部32bは、動き検出部32aによって低解像度の各画像毎に検出された動きありのブロックの中からかごドア13に最も近いブロックを抽出し、当該ブロックにおけるかごドア13の中心(ドア間口の中心)から乗場方向の座標位置を利用者の位置(足元位置)として推定する。
【0025】
乗車意思推定部32cは、位置推定部32bによって推定された位置の時系列変化に基づいて当該利用者の乗車意思の有無を判定する。
【0026】
紐状物体検出部33は、画像前処理装置20から送られてくる各ドア周辺画像の中の細かな物の動きに着目して、かごドア13に挟まれる可能性がある物体(例えばペットを繋ぐ紐などの紐状の物体)の有無を検出(判定)する。ここで言う「細かな物の動き」とは、かごドア13に挟まれる可能性のある紐状の物体の揺れ(動き)のことである。
【0027】
かご制御装置40は、図示しないエレベータ制御装置に接続され、このエレベータ制御装置との間で乗場呼び・かご呼びなどの各種信号を送受信する。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場15に設置された図示しない乗場呼び釦の操作によって登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、乗りかご11のかご室内に設けられた図示しない行先呼び釦の操作によって登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0028】
また、かご制御装置40は、戸開閉制御部41を備える。戸開閉制御部41は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部41は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。但し、かごドア13の戸開閉中に画像処理装置30の利用者検出部32によって乗車意思のある人物が検出された場合、または、かごドア13の戸閉中に画像処理装置30の紐状物体検出部33によって紐状の物体が検出された場合には、戸開閉制御部41は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する、または、戸閉途中のかごドア13を再度戸開(リオープン)する。
【0029】
図5は、カメラ12によって撮影された画像の一例を示す図である。図中のE1は位置推定領域、y
nは利用者の足元位置が検出されたY座標を示している。
図6は、記憶部31に記憶される画像(低解像度の画像、ドア周辺画像)をブロック単位で区切った状態を示す図である。なお、画像を一辺W
blockの格子状に区切ったものを「ブロック」と呼ぶ。但し、1ブロックに含まれる画素数は一定であるものとする。つまり、低解像度の画像よりも解像度が高いドア周辺画像を格子状に区切ることによって得られるブロックの一辺W
blockは、低解像度の画像を格子状に区切ることによって得られるブロックの一辺W
blockよりも短くなる。
【0030】
利用者検出部32では、
図6に示すように、記憶部31に記憶される低解像度の画像を所定サイズのブロックに区切り、人・物の動きがあるブロックを検出し、その動きありのブロックを追うことで乗車意思のある利用者か否かを判断している。同様に、紐状物体検出部33においても、
図6に示すように、記憶部31に記憶されるドア周辺画像を所定サイズのブロックに区切り、細かな物の動きがあるブロックを検出し、かごドア13に挟まれる可能性のある物体の有無を判断している。
【0031】
なお、
図6の例では、ブロックの縦横の長さが同じであるが、縦と横の長さが異なっていても良い。また、画像全域にわたってブロックを均一な大きさとしても良いし、例えば画像上部ほど縦(Y方向)の長さを短くするなどの不均一な大きさにしても良い。これらにより、後に推定する足元位置をより高い分解能或いは実空間での均一な分解能で求めることができる(画像上で均一に区切ると、実空間ではかごドア13から遠い方ほど疎な分解能となる)。
【0032】
図7は実空間での検出エリアを説明するための図であって、
図8は実空間での座標系を説明するための図である。
【0033】
低解像度の画像から乗車意思のある利用者の動きを検出するため、まず、ブロック毎に動き検出エリアを設定しておく。具体的には、
図7に示すように、少なくとも位置推定エリアE1と乗車意思推定エリアE2を設定しておく。位置推定エリアE1は、乗場15からかごドア13に向かってくる利用者の身体の一部、具体的には利用者の足元位置を推定するエリアである。乗車意思推定エリアE2は、位置推定エリアE1で検知された利用者に乗車意思があるか否かを推定するエリアである。なお、乗車意思推定エリアE2は、上記位置推定エリアE1に含まれ、利用者の足元位置を推定するエリアでもある。すなわち、乗車意思推定エリアE2では、利用者の足元位置を推定すると共に当該利用者の乗車意思を推定する。
【0034】
実空間において、位置推定エリアE1はかごドア13の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有し、例えば2mに設定されている(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。位置推定エリアE1の横幅W1は、かごドア13の横幅W0以上の距離に設定されている。乗車意思推定エリアE2はかごドア13の中心から乗場方向に向かってL4の距離を有し、例えば1mに設定されている(L4≦L3)。乗車意思推定エリアE2の横幅W2は、かごドア13の横幅W0と略同じ距離に設定されている。
【0035】
なお、乗車意思推定エリアE2の横幅W2はW0よりも横幅が大きくても良い。また、乗車意思推定エリアE2は実空間で長方形ではなく、三方枠の死角を除く台形であっても良い。
【0036】
ここで、
図8に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。このカメラ12によって撮影された各画像(低解像度の画像、ドア周辺画像)において、
図7に示した位置推定エリアE1及び乗車意思推定エリアE2の部分をブロック単位で比較することで、かごドア13の中心から乗場15の方向、つまりY軸方向に移動中の利用者の足元位置の動きを検出する。
【0037】
この様子を
図9及び
図10に示す。
図9及び
図10は画像比較による動き検出を説明するための図である。
図9は時間tで撮影された画像の一部、
図10は時間t+1で撮影された画像の一部を模式的に示している。
【0038】
図中のP1,P2は撮影画像上で動きありとして検出された利用者の画像部分であり、実際には画像比較により動きありとして検出されたブロックの集合体である。画像部分P1,P2の中でかごドア13に最も近い動きありのブロックBxを抽出し、そのブロックBxのY座標を追うことで乗車意思の有無を判定する。この場合、Y軸方向に点線で示すような等距離線(かごドア13と平行な等間隔の水平線)を引けば、ブロックBxとかごドア13とのY軸方向の距離が分かる。
【0039】
図9及び
図10の例では、かごドア13に最も近い動きありのブロックBxの検出位置がy
n→y
n−1に変化しており、利用者がかごドア13に近づいてくることがわかる。
【0040】
次に、
図11のフローチャートを参照して、利用者検出部32で実行される利用者検出処理の手順について詳しく説明する。
乗りかご11のかごドア13が全戸開の状態から所定の時間が経過すると(または、乗りかご11内に設けられた図示しない戸閉釦が押下されると)、戸開閉制御部41によって戸閉動作が開始される(ステップS1)。このとき、カメラ12の撮影動作はかごドア13の戸開時から継続的に行われている。画像前処理装置20の解像度低下処理部21は、このカメラ12によって連続的に撮影された画像を取得し、これら画像に対して解像度を低下させる処理を実行する。これにより、カメラ12によって撮影された画像よりも解像度の低い画像が生成される(ステップS2)。画像処理装置30は、画像前処理装置20によって生成された低解像度の画像を取得し、これら画像を記憶部31に逐次記憶しながら(ステップS3)、利用者検出処理をリアルタイムで実行する(ステップS4)。
【0041】
利用者検出処理は、画像処理装置30に備えられた利用者検出部32によって実行される。この利用者検出処理は、動き検出処理(ステップS4a)、位置推定処理(ステップS4b)、乗車意思推定処理(ステップS4c)に分けられる。
【0042】
(a)動き検出処理
図12は上記ステップS4aの動き検出処理の手順を示すフローチャートである。この動き検出処理は、利用者検出部32の構成要素の1つである動き検出部32aで実行される。ここでは、人・物の動きを検出するために、画像の輝度が利用される場合を想定して説明する。
【0043】
動き検出部32aは、記憶部31に記憶された低解像度の各画像を1枚ずつ読み出し、各画像を格子状に区切り、これにより得られるブロック毎の平均輝度値を算出する(ステップA1)。その際、動き検出部32aは、初期値として、時系列的に最初の画像から算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部31内の図示しないバッファエリアに保持しておくものとする(ステップA2)。
【0044】
2枚目以降の低解像度の画像が読み出されると、動き検出部32aは、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と、バッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する(ステップA3)。その結果、現在の画像の中で予め設定された値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、動き検出部32aは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する(ステップA4)。
【0045】
現在の画像に対する動きの有無を判定すると、動き検出部32aは、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記バッファエリアに保持する(ステップA5)。
【0046】
以降同様にして、動き検出部32aは、記憶部31に記憶された低解像度の画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。
【0047】
(b)位置推定処理
図13は上記ステップS4bの位置推定処理の手順を示すフローチャートである。この位置推定処理は、利用者検出部32の構成要素の1つである位置推定部32bで実行される。
【0048】
位置推定部32bは、動き検出部32aの検出結果に基づいて現在の画像の中で動きありのブロックをチェックする(ステップB1)。その結果、
図7に示した位置推定エリアE1内に動きありのブロックが存在した場合、利用者検出部32は、その動きありのブロックのうち、かごドア13に最も近いブロックを抽出する(ステップB2)。
【0049】
ここで、
図1に示したように、カメラ12は乗りかご11の出入口上部に乗場15に向けて設置されている。したがって、利用者が乗場15からかごドア13に向かっていた場合には、その利用者の右または左の足元の部分が撮影画像の一番手前、つまりかごドア13側のブロックに映っている可能性が高い。そこで、位置推定部32bは、かごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標(かごドア13の中心から乗場15方向の座標)を利用者の足元位置のデータとして求め、記憶部31内の図示しないバッファエリアに保持する(ステップB3)。
【0050】
以降同様にして、位置推定部32bは、各画像毎にかごドア13に最も近い動きありのブロックのY座標を利用者の足元位置のデータとして求め、上記バッファエリアに保持していく。なお、このような足元位置の推定処理は、位置推定エリアE1内だけでなく、乗車意思推定エリアE2内でも同様に行われている。
【0051】
(c)乗車意思推定処理
図14は上記ステップS4cの乗車意思推定処理を示すフローチャートである。この乗車意思推定処理は、利用者検出部32の構成要素の1つである乗車意思推定部32cで実行される。
【0052】
乗車意思推定部32cは、記憶部31内の図示しないバッファエリアに保持された各画像の利用者の足元位置のデータを平滑化する(ステップC1)。なお、平滑化の方法としては、例えば平均値フィルタやカルマンフィルタなどの一般的に知られている方法を用いるものとし、ここではその詳しい説明を省略する。
【0053】
足元位置のデータを平滑化したとき、変化量が所定値以上のデータが存在した場合(ステップC2のYES)、乗車意思推定部32cは、そのデータを外れ値として除外する(ステップC3)。なお、上記所定値は、利用者の標準的な歩行速度と撮影画像のフレームレートによって決められている。また、足元位置のデータを平滑化する前に外れ値を見つけて除外しておいても良い。
【0054】
図15に足元位置の変化状態を示す。横軸が時間、縦軸が位置(Y座標値)を示している。利用者が乗場15からかごドア13に向かって歩いてくる場合、時間経過に伴い、利用者の足元位置のY座標値が徐々に小さくなる。
【0055】
なお、例えば車椅子などの移動体であれば点線で示すような直線的なデータ変化になるが、利用者の場合には左右の足元が交互に検出されるので、実線のように湾曲したデータ変化になる。また、検出結果に何らかのノイズが入り込むと、瞬間的な足元位置の変化量が大きくなる。このような変化量の大きい足元位置のデータは外れ値として除外しておく。
【0056】
ここで、乗車意思推定部32cは、
図7に示した乗車意思推定エリアE2内の足元位置の動き(データ変化)を確認する(ステップC4)。その結果、乗車意思推定エリアE2内でY軸方向へかごドア13に向かっている利用者の足元位置の動き(データ変化)を確認できた場合には(ステップC5のYES)、乗車意思推定部32cは、当該利用者に乗車意思ありと判断する(ステップC6)。
【0057】
一方、乗車意思推定エリアE2内でY軸方向にかごドア13に向かっている利用者の足元位置の動きを確認できなかった場合には(ステップC5のNO)、乗車意思推定部32cは、当該利用者に乗車意思なしと判断する(ステップC7)。
【0058】
このように、かごドア13に最も近い動きありのブロックを利用者の足元位置とみなし、その足元位置のY軸方向の時間的な変化を追跡することで利用者の乗車意思の有無を推定することができる。
【0059】
図11に戻って、乗車意思ありの利用者が検出されると(ステップS5のYES)、画像処理装置30からかご制御装置40に対して戸開指示信号が出力される。かご制御装置40の戸開閉制御部41は、戸閉中に戸開指示信号を受信すると、かごドア13の戸閉動作を中断して再度戸開動作(リオープン)を行う(ステップS6)。
【0060】
以降は、戸開閉制御部41によって再度戸閉動作が開始される度に、上記ステップS1の処理に戻って、同様の処理が繰り返し実行される。
【0061】
次に、
図16のフローチャートを参照して、紐状物体検出部33で実行される紐状物体検出処理の手順について詳しく説明する。この紐状物体検出処理は、
図11に示す利用者検出処理と並行して実行される。また、上述した動き検出処理と同様に、本処理においても、かごドア13に挟まれる可能性のある物体を検出するために、画像の輝度が利用される場合を想定して説明する。
【0062】
乗りかご11のかごドア13が全戸開の状態から所定の時間が経過すると(または、乗りかご11内に設けられた図示しない戸閉釦が押下されると)、戸開閉制御部41によって戸閉動作が開始される(ステップS11)。このとき、カメラ12の撮影動作はかごドア13の戸開時から継続的に行われている。画像前処理装置20のドア周辺画像生成部22は、このカメラ12によって連続的に撮影された画像を取得し、これら画像からドア周辺エリアE0を抽出する。これにより、ドア周辺エリアE0だけが映された(高解像度の)ドア周辺画像が生成される(ステップS12)。画像処理装置30は、画像前処理装置20によって生成された(高解像度の)ドア周辺画像を取得し、これら画像を記憶部31に逐次記憶しながら(ステップS13)、紐状物体検出処理をリアルタイムで実行する。
【0063】
画像処理装置30内の紐状物体検出部33は、記憶部31に記憶されたドア周辺画像を1枚ずつ読み出し、各ドア周辺画像を格子状に区切り、これにより得られるブロック毎の平均輝度値を算出する(ステップS14)。その際、紐状物体検出部33は、初期値として、時系列的に最初の画像から算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部31内の図示しないバッファエリアに保持しておくものとする(ステップS15)。
【0064】
2枚目以降のドア周辺画像が読み出されると、紐状物体検出部33は、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と、上記バッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較することで、かごドア13に挟まれる可能性のある物体が存在するか否かを判定する(ステップS16)。詳しくは、比較の結果、現在の画像の中で予め設定された値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、紐状物体検出部33は、当該ブロックを動きありのブロックとして判定し、かごドア13に挟まれる可能性のある物体が存在すると判定する。つまり、かごドア13に挟まれる可能性のある物体が検出される。
【0065】
かごドア13に挟まれる可能性のある物体が検出されると(ステップS16のYES)、画像処理装置30からかご制御装置40に対して戸開指示信号が出力される。かご制御装置40の戸開閉制御部41は、戸閉中に戸開指示信号を受信すると、かごドア13の戸閉動作を中断して再度戸開動作(リオープン)を行う(ステップS17)。
【0066】
以降は、戸開閉制御部41によって再度戸閉動作が開始される度に、上記ステップS11の処理に戻って、同様の処理が繰り返し実行される。
【0067】
以上説明した一実施形態によれば、画像処理装置30は、低解像度の画像を用いて乗場15にいる人物を検出するための利用者検出処理を実行する一方で、解像度を低下させずにドア周辺エリアE0だけが映されたドア周辺画像を用いてかごドア13に挟まれる可能性のある物体を検出するための紐状物体検出処理を実行する構成を備えている。この構成によれば、エリアをドア周辺エリアE0に限定した上で、紐状の物体を検出可能な高解像度の画像を利用しているので、処理負荷が軽く、人物だけでなく、細い紐状の物体もリアルタイムで検出することができる。
【0068】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】一実施形態に係る画像処理装置は、第1画像取得手段、第1動き検出手段、第2画像取得手段、第2動き検出手段及び信号出力手段を備えている。第2画像取得手段は、カメラによって連続的に撮影された複数枚の画像に関し、ドア周辺のエリアだけが映された複数枚の第2画像を取得する。第2動き検出手段は、取得された複数枚の第2画像をブロック単位で比較して、ドア周辺のエリア内の物体の動きを検出する。信号出力手段は、第1動き検出手段及び第2動き検出手段のうちの少なくとも一方によって動きありのブロックが検出された場合に、乗りかごのドアを戸開させるための戸開指示信号を、乗りかごのドアの戸開閉を制御するかご制御装置に出力する。