(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベータに設置されたマーカと関連付けられた、注意を喚起するための範囲として予め設定された注意喚起範囲、及び、注意を喚起するための条件である注意喚起条件を含む注意喚起データベースと、
前記マーカの情報であるマーカ情報と、作業員の情報である作業員情報とを危険マップに格納するマーカ確認部と、
前記マーカ情報に関連付けられた前記注意喚起範囲に基づいて設定した前記マーカの周囲の判定用注意喚起範囲に前記作業員情報が示す前記作業員がいるか否か、及び、前記エレベータの稼働状態が前記注意喚起条件を満たすか否かに基づいて、注意喚起するか否かを判定する危険箇所判定部と、
前記危険箇所判定部の判定結果に基づいて、注意喚起を通知させる注意喚起通知部と、
を備える注意喚起装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の例示的な実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が部分的に省略される。実施形態や変形例に含まれる部分は、他の実施形態や変形例の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態や変形例に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態や変形例と同様である。
【0010】
以下の実施形態は、マーカの周囲に設定された判定用注意喚起範囲内に作業員が入ると、作業員に注意喚起内容を通知することにより、作業員に容易に注意を喚起させる。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の注意喚起システム30を有するエレベータ10の全体構成図である。
図1に示すように、エレベータ10は、乗りかご12と、カウンターウェイト14と、メインロープ16と、巻上機18と、緩衝器20と、制御盤22と、注意喚起システム30とを備える。乗りかご12、カウンターウェイト14、メインロープ16、及び、緩衝器20は、乗りかご12が昇降するエレベータ10の昇降路24に設けられている。巻上機18、及び、制御盤22は、昇降路24の上方の機械室26に設けられている。
【0012】
乗りかご12は、利用者が乗降可能に中空状に構成されている。乗りかご12は、昇降路24内のガイドレールに沿って昇降する。
【0013】
カウンターウェイト14は、乗りかご12の昇降に連動して、昇降路24内を昇降する。カウンターウェイト14の重量は、乗りかご12が所定積載量(例えば、最大積載量の1/2程度)の場合に釣り合うように設定されている。
【0014】
メインロープ16の一端は、乗りかご12の上端部に連結されている。メインロープ16の他端は、カウンターウェイト14の上端部に連結されている。これにより、メインロープ16は、乗りかご12とカウンターウェイト14とを連結する。メインロープ16は、巻上機18に巻き掛けられている。メインロープ16は、乗りかご12とカウンターウェイト14とをトラクション式で昇降させる。
【0015】
巻上機18は、モータ等の電動機の駆動力が供給されることにより、回転する。巻上機18は、回転することにより、巻き掛けられたメインロープ16を巻き上げる。これにより、巻上機18は、乗りかご12とカウンターウェイト14とを昇降路24内で昇降させる。
【0016】
緩衝器20は、昇降路24のピットの底部に設置されている。緩衝器20は、非常時に落下する乗りかご12が昇降路24の底部に衝突した際の衝撃を緩和する。
【0017】
制御盤22は、機械室26の段差27上に設置されている。制御盤22は、エレベータ10の制御全般を司る。制御盤22は、利用者からの指示が入力されると、巻上機18を制御して、乗りかご12を昇降させる。
【0018】
注意喚起システム30は、保守の作業員WKがエレベータ10の点検作業中に危険箇所に接近すると、注意を喚起する。注意喚起システム30は、1または複数のマーカMKa、MKb、MKc、MKdと、注意喚起装置32とを有する。以下の説明において、マーカMKa、MKb、MKc、MKdを区別する必要がない場合、マーカMKと表記する。
【0019】
マーカMKは、エレベータ10内の複数の箇所(例えば、危険箇所または危険箇所の近傍)に貼り付けられている。マーカMKは、マーカMKを識別するための第1識別情報としての記号SGを有する。記号SGは、貼り付けられた箇所の危険の種類、及び、危険の範囲を識別するための識別情報でもある。従って、同じ記号SGの複数のマーカMKが、エレベータ10内にあってもよい。例えば、マーカMKaは、制御盤22に貼り付けられている。マーカMKaは、感電の危険を識別する記号SGとして「!」を表示する。マーカMKbは、段差27等の転倒の危険がある箇所または当該箇所の周辺に貼り付けられている。マーカMKbは、転倒の危険を識別する記号SGとして「〜」を表示する。マーカMKcは、巻上機18等の巻き込まれる危険のある箇所または当該箇所の周辺に貼り付けられている。マーカMKcは、巻き込まれる危険を識別する記号SGとして「∞」を表示する。マーカMKdは、上部に乗った場合に転倒の危険がある緩衝器20等の箇所または当該箇所の周辺に貼り付けられている。マーカMKdは、不安定な足場による転倒の危険を識別する記号SGとして「◎」を表示する。
【0020】
注意喚起装置32は、例えば、保守の作業員WKが携帯するスマートフォン、スマートデバイスまたは携帯端末等のコンピュータである。
【0021】
図2は、注意喚起装置32の構成を説明するブロック図である。
図2に示すように、注意喚起装置32は、撮影部34と、方位計測部36と、移動量確認部38と、通知部40と、処理部42と、記憶部44とを有する。
【0022】
撮影部34は、例えば、カメラ等の撮影装置を含む。撮影部34は、作業員WKの操作指示によって、例えば、作業員WKの視線方向上または視線方向近傍の被写体を撮影して、静止画または動画等の撮影画像を生成する。撮影部34は、撮影画像を処理部42へ出力する。
【0023】
方位計測部36は、撮影部34が被写体を撮影した方位である撮影方位をマーカの方位であるマーカ方位として予め定められた時間間隔で計測する。方位計測部36は、例えば、撮影部34と同じハードウエア上に設けられている。方位計測部36は、計測したマーカ方位を処理部42へ出力する。
【0024】
移動量確認部38は、作業員WKの移動量を計測する。移動量確認部38は、例えば、加速度センサ、角速度センサまたはGPS(Global Positioning System)端末等を含む。移動量確認部38は、作業員WKの加速度、角速度または位置情報等に基づいて、作業員WKの移動量を予め定められた時間間隔で計測する。移動量確認部38は、計測した移動量を処理部42へ出力する。
【0025】
通知部40は、例えば、ウェアラブル端末及び眼鏡型の拡張現実投影スクリーン等を含む画像を表示する表示装置である。通知部40は、音声等を出力するスピーカを有していてもよい。通知部40は、処理部42からの画像情報または音声情報に基づいて、画像を表示または音声を出力する。
【0026】
処理部42の一例は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置である。処理部42は、エレベータ運転状態確認部50と、マーカ確認部52と、危険箇所判定部54と、注意喚起通知部56とを有する。処理部42は、記憶部44等に格納された注意喚起プログラムを読み込むことによって、エレベータ運転状態確認部50、マーカ確認部52、危険箇所判定部54、及び、注意喚起通知部56として機能する。エレベータ運転状態確認部50、マーカ確認部52、危険箇所判定部54、及び、注意喚起通知部56の一部または全ては、回路等のハードウエアによって構成されてもよい。
【0027】
エレベータ運転状態確認部50は、機械室26に設置された制御盤22と無線通信によって情報を送受信可能に接続されている。エレベータ運転状態確認部50は、エレベータ10に供給される電力電源状態及び運転モードを含む稼働状態に関する運転状態情報を、制御盤22から予め定められた時間間隔で取得する。エレベータ運転状態確認部50は、運転状態情報を危険箇所判定部54へ出力する。
【0028】
マーカ確認部52は、撮影部34から撮影画像を取得する。マーカ確認部52は、撮影画像を解析して、撮影画像に含まれるマーカMKから抽出した記号SGの画像情報を、いずれのマーカMKかを識別するためのマーカ識別情報として生成するとともに、当該マーカMKと作業員WKとの距離であるマーカ距離を撮影画像から取得する。
【0029】
マーカ確認部52は、方位計測部36からマーカ方位を取得する。マーカ確認部52は、撮影画像内のマーカの位置、記号SGの画像及びマーカ方位を解析して、マーカMKの位置であるマーカ位置を算出してもよい。マーカ確認部52は、作業員WKの位置に対するマーカMKの相対位置をマーカ位置として算出してもよい。マーカ識別情報、マーカ方位及びマーカ位置は、マーカ情報の一例である。
【0030】
マーカ確認部52は、マーカ情報または撮影画像から作業員WKの位置である作業員位置を作業員情報として算出する。マーカ確認部52は、マーカMKに対する作業員WKの相対位置、または、作業員WKからマーカMKまでのマーカ距離を作業員位置としてもよい。
【0031】
マーカ確認部52は、マーカ情報及び作業員情報を記憶部44の危険マップ60に格納する。
【0032】
マーカ確認部52は、移動量確認部38から作業員WKの移動量を取得する。マーカ確認部52は、作業員WKの移動量が予め定められた更新用移動量に達する毎に、危険マップ60のマーカ情報、及び、作業員情報の少なくともいずれかを更新する。
【0033】
危険箇所判定部54は、マーカ確認部52が認識した危険マップ60のマーカ情報のマーカ識別情報と、当該マーカ識別情報のマーカMKに対応付けられた注意喚起データベース62の注意喚起範囲とを取得する。危険箇所判定部54は、注意喚起範囲に基づいて、マーカMKの周囲に判定用注意喚起範囲を設定する。具体的には、危険箇所判定部54は、マーカMKの位置を中心とする注意喚起範囲を、判定用注意喚起範囲として設定する。危険箇所判定部54は、判定用注意喚起範囲を危険マップ60に記憶する。
【0034】
危険箇所判定部54は、危険マップ60から取得した作業員情報が示す作業員位置が判定用注意喚起範囲内か否か、及び、エレベータ運転状態確認部50から取得した運転状態情報が示すエレベータ10の稼働状態が後述する注意喚起条件を満たすか否かに基づいて、作業員WKに注意喚起するか否かを判定する。例えば、危険箇所判定部54は、作業員位置が判定用注意喚起範囲内であり、かつ、エレベータ10の稼働状態が注意喚起条件を満たす場合、作業員WKに注意喚起すると判定する。この場合、危険箇所判定部54は、マーカMKに対応する注意喚起内容を注意喚起データベース62から取得して、注意喚起通知部56へ出力する。注意喚起内容は、作業員WKへ注意を喚起するための通知内容を示す。
【0035】
注意喚起通知部56は、危険箇所判定部54の判定結果に基づいて、注意の喚起を通知する。例えば、注意喚起通知部56は、危険箇所判定部54が注意喚起が必要と判定すると、危険箇所判定部54から注意喚起内容を取得して、通知情報を生成する。通知情報は、画像情報であってもよく、音声情報であってもよく、両方であってもよい。注意喚起通知部56は、通知部40を介して、作業員WKに注意を喚起するための通知情報を画像または音声で出力する。
【0036】
記憶部44は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及び、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置を有する。記憶部44は、注意喚起処理用のプログラムを記憶する。記憶部44は、注意喚起処理用のプログラムの実行に必要な危険マップ60、及び、注意喚起データベース62等を格納する。
【0037】
危険マップ60は、マーカ確認部52から取得したマーカ識別情報等のマーカ情報、作業員位置を含む作業員情報、及び、危険箇所判定部54から取得した判定用注意喚起範囲等を含む。
【0038】
注意喚起データベース62は、エレベータ10の危険箇所に関する情報として、注意喚起内容、注意喚起条件、及び、注意喚起範囲等を含む。
【0039】
図3は、注意喚起データベース62の一例を示す図である。
図3に示すように、注意喚起データベース62は、マーカMKの記号SGの基準画像62aと、注意喚起内容62bと、注意喚起条件62cと、注意喚起範囲62dとを関連付けている。
【0040】
記号SGの基準画像62aは、危険箇所判定部54が、危険マップ60に格納された記号SGの画像情報であるマーカ識別情報と類似するか否かによって、撮像画像に含まれるマーカMKがいずれのマーカMKかを判定するための画像情報である。
【0041】
注意喚起内容62bは、「感電注意!」、「段差注意!」、「巻込注意!」、及び、「緩衝器に乗るな!」等である。注意喚起通知部56は、危険箇所判定部54から取得した注意喚起内容62bを画像または音声にして通知する。
【0042】
注意喚起条件62cは、注意を喚起するためにマーカMK(厳密には、マーカMKの基準画像62a)と関連付けられて予め定められた条件である。尚、注意喚起条件62cは、全てのマーカMKに設定されていなくてもよい。注意喚起範囲62dは、注意を喚起するためにマーカMK(厳密には、マーカMKの基準画像62a)と関連付けられて予め定められた範囲である。
【0043】
例えば、危険箇所判定部54は、記号「!」のマーカMKaにおいては、注意喚起条件62cである「メインブレーカON時」、かつ、マーカMKaを中心として注意喚起範囲62dの「半径500mm」に設定された判定用注意喚起範囲内に作業員WKが存在する場合に、注意喚起が必要と判定する。危険箇所判定部54は、記号「∞」のマーカMKcにおいては、注意喚起条件62cである「ブレーキ開放時」、かつ、マーカMKcを中心として注意喚起範囲62dの「半径500mm」に設定された判定用注意喚起範囲内に作業員WKが存在する場合に、注意喚起が必要と判定する。一方、危険箇所判定部54は、記号「〜」のマーカMKb及び記号「◎」のマーカMKdにおいては、マーカMKb、MKdを中心として注意喚起範囲62dの「半径1000mm」に設定された判定用注意喚起範囲内に作業員WKが存在する場合に、注意喚起が必要と判定する。
【0044】
図4は、処理部42が実行する注意喚起処理のフローチャートである。処理部42は、注意喚起プログラムを読み込むことによって、注意喚起処理を実行する。
【0045】
図4に示すように、マーカ確認部52は、例えば、機械室26に入室した保守の作業員WKが保持している注意喚起装置32の撮影部34から撮影画像を取得して、当該撮影画像内にマーカMKを認識できたか否かを判定する(S102)。マーカ確認部52は、撮影画像内にマーカMKを認識するまで、ステップS102を繰り返す(S102:No)。
【0046】
マーカ確認部52は、撮影画像内にマーカMKを認識すると(S102:Yes)、撮影部34から取得した撮影画像及び方位計測部36から取得した方位情報等に基づいて、作業員情報及びマーカ情報を算出する。マーカ確認部52は、作業員情報及びマーカ情報を含む危険マップ60を記憶部44に格納する(S104)。
【0047】
マーカ確認部52は、移動量確認部38から取得した作業員WKの移動量に合わせて、危険マップ60の作業員情報の作業員位置を生成または更新する(S106)。
【0048】
危険箇所判定部54は、危険マップ60に含まれるマーカ識別情報に基づいて、認識したマーカMKに対応付けられた注意喚起範囲62dを記憶部44の注意喚起データベース62から取得する。危険箇所判定部54は、記憶部44の危険マップ60から作業員情報及びマーカ情報を取得する。危険箇所判定部54は、マーカ情報、作業員情報及び注意喚起範囲62dに基づいて、判定用注意喚起範囲を設定する。危険箇所判定部54は、設定した判定用注意喚起範囲を記憶部44の危険マップ60に格納する(S108)。
【0049】
図5は、危険マップ60の判定用注意喚起範囲JAを説明する平面図である。例えば、マーカ確認部52がマーカMKa、MKbを認識した場合、
図5に示すように、危険箇所判定部54は、マーカMKa、MKbを中心とする注意喚起範囲62dに示す半径の円を判定用注意喚起範囲JAa、JAbとして設定する。
【0050】
危険箇所判定部54は、記憶部44に格納された危険マップ60の作業員情報及び判定用注意喚起範囲JAを取得する。危険箇所判定部54は、作業員情報が示す作業員位置及び判定用注意喚起範囲JAに基づいて、作業員WKが判定用注意喚起範囲JA内か否かを判定する(S110)。危険箇所判定部54が作業員WKが判定用注意喚起範囲JA内でないと判定すると(S110:No)、マーカ確認部52はステップS106以降を繰り返す。
【0051】
危険箇所判定部54は、
図5に示すように作業員WKが判定用注意喚起範囲JAbに存在する場合、作業員WKが判定用注意喚起範囲JA内と判定して(S110:Yes)、エレベータ運転状態確認部50からエレベータ10の稼働状態を示す運転状態情報を取得するとともに、危険マップ60のマーカ識別情報が示すマーカMKの注意喚起条件62cを注意喚起データベース62から取得する。危険箇所判定部54は、運転状態情報が示す稼働状態が注意喚起条件62cを満たすか否かを判定する(S112)。
【0052】
危険箇所判定部54は、稼働状態が注意喚起条件62cを満たさないと判定すると(S112:No)、マーカ確認部52はステップS106以降を繰り返す。
【0053】
一方、危険箇所判定部54は、稼働状態が危険マップ60のマーカ識別情報が示すマーカMKの注意喚起条件を満たすと判定すると(S112:Yes)、注意喚起データベース62から注意喚起内容62bを取得して、注意喚起通知部56へ出力する。
【0054】
注意喚起通知部56は、取得した注意喚起内容62bを通知部40を介して、作業員WKに通知する(S114)。
【0055】
図6は、注意喚起通知部56が通知する注意喚起内容62bの一例を示す図である。
図6は、機械室26の制御盤22の方向を見ている作業員WKの視界を示す。この場合、作業員WKは段差27の近傍のマーカMKbの判定用注意喚起範囲JAb内にいるので、注意喚起通知部56は、注意喚起内容62bである「段差注意!」のテキスト情報を、眼鏡型の拡張現実投影スクリーン等に画像で表示する。
【0056】
図7は、注意喚起通知部56が通知する注意喚起内容62bの別の例を示す図である。作業員WKが複数のマーカMK(例えば、マーカMKa、MKb)の判定用注意喚起範囲JAa、JAb内、即ち、複数の判定用注意喚起範囲JAa、JAbの重複領域にいる場合、注意喚起通知部56は、それぞれのマーカMKa、MKbの注意喚起内容62bである「感電注意!」及び「段差注意!」のテキスト情報を画像で表示する。
【0057】
注意喚起通知部56が注意喚起内容62bを作業員WKに通知した後、注意喚起装置32は、ステップS102から繰り返す。
【0058】
注意喚起装置32では、危険箇所判定部54が注意喚起データベース62の注意喚起範囲62dに基づいてマーカMKの周囲に設定した判定用注意喚起範囲JAに作業員位置が含まれると判定すると、注意喚起通知部56が作業員WKに注意喚起内容62bを通知する。これにより、注意喚起装置32は、エレベータ10の点検作業中の作業員WKに容易に注意を喚起させて、安全に点検作業をさせることができる。
【0059】
注意喚起装置32では、危険箇所判定部54が、判定用注意喚起範囲JAと合わせて、注意喚起条件62cに基づいて、注意を喚起するか否かを判定している。これにより、注意喚起装置32は、不要な注意喚起を低減して、より適切に注意喚起することができる。
【0060】
注意喚起装置32では、マーカ確認部52が、撮影部34によって撮影された記号SGを有するマーカMKの撮影画像を解析するので、巻上機18、制御盤22、段差27及び緩衝器20等の撮影画像を解析する場合に比べて、より精度の高い画像解析を迅速に実行することができる。これにより、注意喚起装置32は、作業員WKの危険に対応した注意喚起内容62bを通知することができる。
【0061】
注意喚起装置32では、マーカ確認部52が、認識したマーカ情報を危険マップ60に格納して、予め定められた時間間隔で危険マップ60のマーカ情報を更新するので、撮影部34が撮影した撮影画像にマーカMKが含まれなくなった場合でも、危険箇所判定部54は、危険マップ60に格納されたマーカ情報に基づいて判定用注意喚起範囲JAを設定して、作業員WKに注意喚起すべきか否かを判定できる。
【0062】
注意喚起システム30では、エレベータ10にマーカMKを設置することにより、注意喚起装置32が作業員WKに注意喚起内容62bを通知することができるので、既設のエレベータ10に対しても、特殊な工事をすることなく、容易にマーカMKを取り付けてシステムを構築することができる。
【0063】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の注意喚起データベース162の一例を示す図である。
図8に示すように、注意喚起データベース162は、複数の方向の範囲を注意喚起範囲162e、162f、162g、162hとして有してもよい。例えば、第2実施形態の注意喚起データベース162は、東方向の注意喚起範囲162e、西方向の注意喚起範囲162f、南方向の注意喚起範囲162g、及び、北方向の注意喚起範囲162hを有する。これにより、危険箇所判定部54は、マーカMKの位置を中心とする円形状の判定用注意喚起範囲JAのみならず、東西南北の各方向に異なる長さの判定用注意喚起範囲JAを設定することができる。この結果、危険箇所判定部54は、判定用注意喚起範囲JAをより細かく正確に設定することができるので、更に的確に注意喚起内容62bを作業員WKに事前に通知できる。
【0064】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態の注意喚起装置232を有する注意喚起システム230の構成図である。
図10は、第3実施形態のマーカMKの一例を示す図である。
図11は、第3実施形態の注意喚起データベース262の一例を示す図である。
図9に示すように、第3実施形態の注意喚起システム230の注意喚起装置232の処理部242は、番号確認部270と、危険マップ自動生成部272とを更に備える。
【0065】
番号確認部270は、
図10に示すマーカMKを含む撮影画像を撮影部34から取得して解析する。番号確認部270は、解析によって、撮影画像に含まれるマーカMKに付与されたマーカ番号MNを識別する。
【0066】
図10に示すように、第3実施形態のマーカMKは、記号SG(例えば、「!」)と、第2識別情報の一例であるマーカ番号MNとを有する。マーカ番号MNは、マーカMK毎に異なる。即ち、同じ記号SGの複数のマーカMKに対しても、異なるマーカ番号MNが付与される。番号確認部270は、撮影部34が撮影したマーカ番号MNを有するマーカMKの撮影画像を取得する。番号確認部270は、マーカMKに付与されたマーカ番号MNを識別して、マーカ確認部52に出力する。マーカ確認部52は、マーカ番号MNを危険マップ60へ格納する。
【0067】
図11に示すように、第3実施形態の注意喚起データベース262は、マーカMKの記号SGの基準画像62a、注意喚起内容62b、注意喚起条件62c、及び、注意喚起範囲62dに加えて、マーカ番号MNと、マーカX座標262eと、マーカY座標262fと、マーカZ座標262gとを関連付けている。マーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gは、マーカMKの座標情報の一例である。
【0068】
危険マップ自動生成部272は、危険マップ60から取得したマーカ番号MNに基づいて、
図11に示す注意喚起データベース262が有する同じエレベータ10の全てのマーカMKのマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gを取得する。危険マップ自動生成部272は、取得した全てのマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gで示すマーカ位置をマーカ情報として危険マップ60に追加する。危険箇所判定部54は、危険マップ60に追加されたマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gで示される全てのマーカ位置に対して、判定用注意喚起範囲JAを設定する。
【0069】
図12は、第3実施形態の処理部242が実行する注意喚起処理のフローチャートである。
図12に示すように、第3実施形態の注意喚起処理では、ステップS120が、ステップS104とステップS106との間に追加されている。危険マップ自動生成部272は、番号確認部270が認識してマーカ確認部52が危険マップ60に追加したマーカ番号MNに基づいて、注意喚起データベース262から全てのマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gを取得する。危険マップ自動生成部272は、取得したマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gを危険マップ60に追加する(S120)。この後、処理部242は、ステップS106以降を実行する。
【0070】
危険箇所判定部54は、危険マップ60に追加された全てのマーカX座標262e、マーカY座標262f、及び、マーカZ座標262gで規定されるマーカ位置に対して、判定用注意喚起範囲JAを設定して(S108)、作業員WKが判定用注意喚起範囲JA内にいるか否かを判定する(S110)。
【0071】
図13は、第3実施形態における危険マップ60の判定用注意喚起範囲JAを説明する平面図である。第3実施形態の危険箇所判定部54は、作業員WKの視界または撮影画像に含まれるマーカMKa、MKbの判定用注意喚起範囲JAa、JAbとともに、撮影画像に含まれないマーカMKcに対しても判定用注意喚起範囲JAcを設定する。この場合、危険箇所判定部54は、設定した判定用注意喚起範囲JAa、JAb、JAcのいずれかに作業員WKがいる場合、注意喚起内容62bを通知させる。従って、第3実施形態では、作業員WKの視界にない、または、撮影画像に含まれないマーカMKに対しても、作業員WKに注意を喚起させることができる。例えば、
図13に示す例では、危険箇所判定部54は、作業員WKが判定用注意喚起範囲JAb、及び、作業員WKの視界にないマーカMKcの判定用注意喚起範囲JAcの両範囲にいると判定する。
【0072】
図14は、
図13の状況において、注意喚起通知部56が通知する注意喚起内容62bの別の例を示す図である。危険箇所判定部54は、
図13の状況において、「段差注意!」及び「巻込注意!」の注意喚起内容62bを注意喚起通知部56に出力する。これにより、注意喚起通知部56は、通知部40を介して、「段差注意!」及び「巻込注意!」のテキスト情報を、
図14に示すように画像にして通知する。
【0073】
第3実施形態の注意喚起装置232では、危険マップ60にマーカ位置がある場合、危険マップ自動生成部272が、注意喚起データベース262から全てのマーカ位置を取得して危険マップ60に追加する。危険箇所判定部54は、当該全てのマーカMKに対して判定用注意喚起範囲JAを設定する。これにより、注意喚起装置232は、建物内のエレベータ10毎に注意喚起データベース262を生成することにより、撮影画像に含まれないマーカMKに対しても判定用注意喚起範囲JAを設定して、作業員WKに事前に注意喚起内容62bを通知できる。
【0074】
<第4実施形態>
図15は、第4実施形態の注意喚起装置332を有する注意喚起システム330の構成図である。
図15に示すように、第4実施形態の注意喚起システム330の注意喚起装置332の処理部342は、危険マップ初期化部374を更に備える。危険マップ初期化部374は、移動量確認部38から作業員WKの移動量を取得する。危険マップ初期化部374は、移動量が予め定められた移動量閾値より大きい場合、危険マップ60のマーカ情報(例えば、マーカ位置)及び作業員情報(例えば、作業員位置)を初期化(または削除)するとともに、注意喚起通知部56に初期化した旨を示す初期化情報を出力する。これにより、注意喚起通知部56は、通知部40を介して、初期化した旨を作業員WKに通知する。
【0075】
図16は、第4実施形態の処理部342が実行する注意喚起処理のフローチャートである。
図16に示すように、ステップS108を実行した後、危険マップ初期化部374は、移動量確認部38から取得した作業員WKの移動量が移動量閾値より大きいか否かを判定する(S140)。危険マップ初期化部374は、移動量が移動量閾値よりも大きくないと判定すると(S140:No)、ステップS110以降を繰り返す。危険マップ初期化部374は、移動量が移動量閾値よりも大きいと判定すると(S140:Yes)、危険マップ60を初期化して、注意喚起通知部56は、通知部40を介して、注意喚起内容62bを通知することなく、初期化した旨を作業員WKに通知する(S142)。
【0076】
第4実施形態の注意喚起装置332では、移動量確認部38が計測した移動量が移動量閾値よりも大きい場合、危険マップ初期化部374が危険マップ60を初期化して、注意喚起通知部56は注意喚起内容62bを通知しない。これにより、注意喚起装置332は、移動量確認部38が加速度センサまたは角速度センサ等によって移動量を計測して計測誤差が積み重なった場合において、誤った注意喚起をすることを抑制して、より適切な状況での注意喚起内容62bを通知することができる。
【0077】
<第5実施形態>
図17は、第5実施形態の注意喚起装置432を有する注意喚起システム430の構成図である。第5実施形態の注意喚起システム430の注意喚起装置432の処理部442は、作業員位置修正部476を更に備える。
【0078】
マーカ確認部52は、異なる時刻の複数の作業員位置を、危険マップ60の作業員情報に含めて格納する。作業員位置修正部476は、危険マップ60の複数の作業員位置の差から作業員WKの比較用移動量を算出する。作業員位置修正部476は、移動量確認部38が計測した移動量をマーカ確認部52から取得する。作業員位置修正部476は、比較用移動量と移動量との差に基づいて、危険マップ60の作業員情報の作業員位置を修正する。
【0079】
図18は、第5実施形態の処理部442が実行する注意喚起処理のフローチャートである。
図18に示すように、ステップS106を実行した後、マーカ確認部52がマーカMKを認識できない場合(S150:No)、ステップS108以降を実行する。ステップS106を実行した後、マーカ確認部52がマーカMKを認識できた場合(S150:Yes)、作業員位置修正部476は、異なる時刻の作業員WKの位置の差から比較用移動量を算出する(S152)。作業員位置修正部476は、比較用移動量と移動量確認部38の移動量とを比較して、例えば、比較用移動量と移動量との差が予め定められた比較用閾値よりも大きい場合、危険マップ60の作業員情報の作業員位置を修正して更新する(S154)。この後、ステップS108以降を実行する。
【0080】
第5実施形態の注意喚起装置432では、移動量確認部38が計測した移動量と比較用移動量との差が大きい場合、作業員位置修正部476が危険マップ60の作業員位置を修正する。このように、注意喚起装置432は、マーカMKを確認できている状況において、作業員WKの2つの移動量によって、作業員位置をより精度よく確認することができるので、誤った注意喚起をすることを抑制して、より適切な状況での注意喚起内容62bを通知することができる。
【0081】
上述の各実施形態の構成の機能、接続関係、個数等は適宜変更してよい。また、上述の各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】注意喚起装置は注意喚起データベース、マーカ確認部、危険箇所判定部及び注意喚起通知部を備える。注意喚起データベースはエレベータに設置されたマーカと関連付けられた、注意を喚起するための範囲として予め設定された注意喚起範囲及び注意を喚起するための条件である注意喚起条件を含む。マーカ確認部は前記マーカの情報であるマーカ情報と、作業員の情報である作業員情報とを危険マップに格納する。危険箇所判定部は前記マーカ情報に関連付けられた前記注意喚起範囲に基づいて設定した前記マーカの周囲の判定用注意喚起範囲に前記作業員情報が示す前記作業員がいるか否か及び前記エレベータの稼働状態が前記注意喚起条件を満たすか否かに基づいて、注意喚起するか否かを判定する。注意喚起通知部は前記危険箇所判定部の判定結果に基づいて注意喚起を通知させる。