(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6139758
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】分別収集、自己完結処理型便器および屎尿処理方法
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20170522BHJP
A47K 11/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
A47K11/04
A47K11/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-130977(P2016-130977)
(22)【出願日】2016年6月14日
【審査請求日】2016年7月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516197470
【氏名又は名称】湯 紅
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】湯 紅
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−218166(JP,A)
【文献】
実開平06−014283(JP,U)
【文献】
特開平05−301088(JP,A)
【文献】
特開2003−285029(JP,A)
【文献】
特開2015−223561(JP,A)
【文献】
特開平08−206481(JP,A)
【文献】
特開昭50−041352(JP,A)
【文献】
特開2009−220106(JP,A)
【文献】
特表2008−504861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00−11/12
E03D 1/00− 7/00
E03D 11/00−13/00
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を有し、前記本体の上部に排泄口が設けられた便座板及び蓋板を有し、特徴としては、本体内部の前側に尿収集部、後側に屎収集部を有し、前記尿収集部は屎収集部と完全に隔離され、且つ、前記尿収集部には尿を処理するフィルタと尿貯蔵部が設けられており、前記屎収集部は屎を処理する電子レンジ加熱炉と排臭排気装置を有し、前記フィルタとは前記尿収集部内部に横向きに設置された濾過網であり、前記濾過網の下側に設けられ、重曹が投入された尿貯蔵部を有し、前記尿収集部の底に設けられた排尿口の外側に排尿弁を有し、前記排尿弁の外側に排尿ホースを設けることが可能なことを特徴とする分別収集、自己完結処理型便器。
【請求項2】
請求項1に記載の分別収集、自己完結処理型便器であって、前記屎収集部内部には屎を処理する電子レンジ加熱炉が設けられ、前記電子レンジ加熱炉は、屎加熱箱、電気箱、回転モーター、回転台、屎収集箱及び屎収集袋で構成されており、前記回転台中央の下側に前記回転モーターを接続し、また回転台の上に前記屎収集箱を有し、屎収集箱内部に前記屎収集袋を有することを特徴とする分別収集、自己完結処理型便器。
【請求項3】
請求項2に記載の分別収集、自己完結処理型便器であって、前記電気箱にマイクロ波発生照射装置、温度感知装置、及び自動制御装置を有することを特徴とする分別収集、自己完結処理型便器。
【請求項4】
請求項1に記載の分別収集、自己完結処理型便器であって、前記排臭排気装置は前記屎収集部の側壁に設けられた排臭排気口、及び排気ファンで形成され、前記排臭排気口の外側に排臭排気ホースを設けることが可能なことを特徴とする分別収集、自己完結処理型便器。
【請求項5】
下記の手順および特徴を有する分別収集、自己完結処理型便器の屎尿処理方法。
(一)屎と尿を分別収集し、両者が接触しないように確保する。
(二)尿は濾過処理された後に、尿貯蔵部に貯蔵され、予め尿貯蔵部に投入された重曹が尿貯蔵部を消毒すると同時に、貯蔵された尿を中和させ、一般生活排水として排出する。
(三)屎は、マイクロ波にて殺菌できる高温になるまで照射され、規定高温に達したと感知された時に、マイクロ波の照射を中止し、排臭排気を開始させ、屎に含んでいた水分及び細菌の悪臭を迅速に除去し、乾燥無臭無菌の残留物が得られる。
(四)乾燥無臭無菌の残留物を屎収集袋にて包み、一般燃えるゴミとして処分する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屎尿を分別収集、自己完結的に処理する便器および屎尿処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭または公衆施設に使用される便器は、専用下水道と連接する。専用下水道が完備されていない場所では、屎尿貯蔵施設を整備するか、または貯蔵タンクに屎尿を一時的に貯蔵させ、汲取る必要がある。そのため管理煩雑、処理コスト大、衛生確保難などの問題が生じ、公衆トイレ或いは住宅用トイレの設置に困難をもたらす。高齢化社会の到来により、在宅介護の老人が益々増えており、要介護者に便利で介護者の負担を減らす、要介護者の身辺に設置できる管理簡単、屎尿処理コストが安く、衛生快適な専用下水道及び汲取り不要の便器が必要になる。
【0003】
非特許文献1に提供されたし尿分離型トイレは、専用下水道が不要になり、屎尿分離方法の採用により、屎の処理量が大幅に減らされた特徴があるが、欠陥も存在する。
【0004】
まず1回の排泄ごとに屎を処理する場合は、衛生確保する上で、屎中の細菌を増殖させないために、屎を速く乾燥させる必要があり、大量な殺菌用薬剤および乾燥材を屎に混ぜて、屎と一緒に包んでから処分する必要がある。そのため処理コストが高く、処理時の悪臭を我慢する必要があり、処理手間がかかるなどの欠陥が残る。また、幾度か排泄を重ねてから屎を処理する場合は、基本的に屎が自然乾燥される方法を採用するため、乾燥時間が長く、屎中の細菌から発する悪臭が利用者に不快感を与えるなどの欠陥が残る。また、重ねられた屎の最終処分で1回の排泄ごとに屎を処理する方法を採用する場合は、ほぼ前記同様の欠陥が残る。また汲取り業者に依頼し、汲取ってもらう場合は、煩雑な管理、高額の汲取り費用が必要になるなどの欠陥が残る。これらの欠陥を解決する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「株式会社テスコ ホームページ」、株式会社テスコのホームページに掲載された「し尿分離型トイレ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上に述べたそれぞれの欠陥を解決し、要介護者の身辺に設置でき、管理簡単で屎尿処理コストが安く、衛生快適、専用下水道または汲取りが不要となる自己完結処理の便器及び屎尿処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明考案の分別収集、自己完結処理型便器
は本体を有し、前記本体の上部に排泄口が設けられた便座板及び蓋板を有する。前記本体内部の前側に尿収集部、後側に屎収集部を有し、前記尿収集部は屎収集部と完全に隔離され、且つ、前記尿
収集部には尿を処理するフィルタと尿貯蔵部が設けられており、前記屎
収集部は屎を処理する電子レンジ加熱炉と排臭排気装置を有する。
【0008】
前記フィルタとは、前記尿収集部内部に横向きに設置された濾過網であり、前記濾過網の下側は尿貯蔵部となっている。前記尿貯蔵部に予め重曹を投入し、前記尿収集部の底に設けられた排尿口の外側に排尿弁を有し、前記排尿弁の外側に排尿ホースを設けることが可能。
【0009】
前記屎収集部内部に屎を処理する電子レンジ加熱炉が設けられている。前記電子レンジ加熱炉は、屎加熱箱、電気箱(電気箱に、マイクロ波発生照射装置、温度感知装置、及び自動制御装置を有する)、回転モーター、回転台、屎収集箱及び屎収集袋で構成されており、前記回転台中央の下側に前記回転モーターを接続する。また回転台の上に前記屎収集箱を有し、屎収集箱内部に前記屎収集袋を有する。
【0010】
前記電気箱にマイクロ波発生照射装置、温度感知装置、及び自動制御装置を有する。
【0011】
前記排臭排気装置は前記屎収集部の側壁に設けられた排臭排気口、及び排気ファンで形成され、前記排臭排気口の外側に排臭排気ホースを設けることが可能。
【0012】
また、本発明は、前記分別収集、自己完結処理型便器を運用する屎尿処理方法を提供する。その手順および特徴は下記の通りである。
(一)屎と尿を分別収集し、両者が接触しないように確保する。
(二)尿は濾過処理された後に、前記尿貯蔵部に貯蔵され、予め尿貯蔵部に投入された重曹が尿貯蔵部を消毒すると同時に、貯蔵された尿を中和させ、一般生活排水として排出する。
(三)屎は、マイクロ波にて殺菌できる高温になるまで照射される。規定高温に達したと感知された時に、マイクロ波の照射を中止し、排臭排気を開始する。屎に含んでいた水分及び細菌の悪臭を迅速に除去し、乾燥無臭無菌の残留物が得られる。
(四)乾燥無臭無菌の残留物を屎収集袋にて包み、一般燃えるゴミとして処分する。
【0013】
特徴としては、上記(二)に、予め投入された重曹が尿貯蔵部を消毒すると同時に、濾過された尿を中和させ、尿液が無菌、中性の液体になること。
【0014】
特徴としては、上記(三)に、マイクロ波が屎を殺菌できる高温になるまで照射し、屎内部の水分だけが一斉に万遍無く高温に加熱され、殺菌効果が発揮できると同時に、加熱効率がよく、高温になるまでにかかる加熱の所要時間が短く、消費電力が少ないこと。
【発明の効果】
【0015】
上述したように本発明の分別収集、自己完結処理型便器は、屎尿を自己完結的に処理できるため、専用下水道が完備されていない公衆トイレ、または要介護者の身辺などの場所に、設置できるようになる。屎は排泄直後に、マイクロ波にて殺菌できる高温まで加熱され、高温殺菌効果で屎中の細菌を完全に殺し、衛生確保ができる。また、高温の屎が前記排臭排気装置によって悪臭を排出すると同時に、迅速に脱水することで乾燥し、容積が減り、屎処理回数を減らすことができる。マイクロ波にて加熱するため、加熱効率がよく、高温になるまでにかかる加熱の所要時間が短く、消費電力が少なくて済む。また、排泄中の悪臭が排臭排気装置によって排出されるため、快適に排泄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0018】
図においては、
図2〜
図5は本発明の実施例であり、便器本体3の上部に排泄口が設けられた便座板5及び蓋板1を有する。前記便器本体3内部の前側に尿収集部、後側に屎収集部を有し、前記尿収集部は屎収集部と完全に隔離され、且つ、前記尿
収集部には尿を処理するフィルタと尿貯蔵部が設けられており、前記屎
収集部は屎を処理する電子レンジ加熱炉と排臭排気装置を有する。
【0019】
本実施例の処理対象は人体から排泄された尿液と屎である。
【0020】
尿液成分は、水98%;尿素2%;微量塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン酸等のイオン、クレアチニン、ホルモンを含む。pH値は一般的に6〜7の間にあり、うち尿素は細菌により分解され、アンモニアが発生する。
【0021】
屎成分は、水75%;固形物25%、うち細胞細菌55%、カルシウムとリン中心の無機質15%、脂肪とその誘導体5%、タンパク質2〜3%、食物繊維(残渣)20%など。うち細菌は有毒な悪臭を放つ。
【0022】
尿液と屎の成分の特徴には前記と差異があるため、本実施例は分別収集、処理を採用する。即ち、無細菌、無悪臭の尿液と細菌、悪臭持つ屎を互いに接触しないままに分別収集、処理をする。そうすれば、屎処理量は屎尿混合体の量より大幅に減少し、処理時間およびコストが大幅に減らされることになる。
【0023】
図1および
図2〜
図5にて説明すると、まず蓋板1を開け、利用者が
図1の姿勢で便座板5に座り、尿液を前記尿収集部に、屎を前記屎収集部に排泄し、両者が接触しない状態を確保する。排泄完了後に、蓋板1を閉め、自動処理に入る。
【0024】
図3のように、前記フィルタとは前記尿収集部内部に、横向きに設置された濾過網6であり
、前記濾過網6の下側は尿貯蔵部となっている。前記濾過網6は尿液を濾過すると同時に、雑物の尿貯蔵部への流入を防ぐ。前記尿貯蔵部に予め重曹を投入し、重曹が前記尿貯蔵部を消毒しながら、濾過された尿液を中和させる。前記尿貯蔵部の底に設けられた排尿口4の外側に排尿弁7を有し、前記排尿弁7の外側に排尿ホースを設けることが可能。重曹にて中和された尿液が前記尿貯蔵部に貯蔵され、規定の量に達した時点で、排尿弁7を開け、前記尿貯蔵部に溜った中和された尿液を田圃、川または一般生活排水溝に排出する。
【0025】
図4のように、前記屎収集部内部に屎を処理する電子レンジ加熱炉が設けられている。前記電子レンジ加熱炉は、屎加熱箱10、電気箱9、回転モーター12、回転台11、屎収集箱13及び屎収集袋14で構成されており、前記回転台11中央の下側に前記回転モーター12を接続する。また回転台11の上に前記屎収集箱13を有し、屎収集箱13内部に前記屎収集袋14を有する。前記排臭排気装置は前記屎収集部の側壁に設けられた排臭排気口2、及び排気ファン8で形成され、前記排臭排気口2の外側に排臭排気ホースを設けることが可能。
【0026】
図5のように、前記電気箱9にマイクロ波発生照射装置16、温度感知装置15、及び自動制御装置17を有する。
【0027】
排泄時は、屎が直接前記屎収集袋14に排泄される。排泄後、前記蓋板1を閉め(電子レンジ加熱炉のドアを閉めることになる)、前記電気箱9にある前記マイクロ波発生照射装置16および前記温度感知装置15を稼働し、前記回転モーター12が前記回転台11、前記屎収集箱13および前記屎収集袋14を回転させる。前記マイクロ波発生照射装置16が回転中の前記屎収集袋14中の屎に向けてマイクロ波を照射する。前記温度感知装置15が屎の温度を計測する。屎中水分の温度がマイクロ波の照射により上昇する。前記温度感知装置15は屎の温度が規定温度に達したと感知した時点で、前記マイクロ波発生照射装置16および前記温度感知装置15の稼働を中止すると同時に前記排臭排気装置を稼働する。屎に含んでいた水分及び細菌放つ有毒悪臭が迅速に除去し、乾燥無臭無菌の残留物が得られる。
【0028】
屎がマイクロ波の照射によって高温となり、高温殺菌効果で衛生を確保する。高温殺菌、排気乾燥後の屎が細菌と毒性悪臭持つ屎から、普通の食物残飯と同じ性質の残留物に変わり、量も減らされる。幾度か排泄後に、前記屎収集袋14中の高温殺菌、排気乾燥後の残留物の量が規定量に達した時点で直接前記屎収集袋14にて残留物を包み、一般燃えるゴミとして処分する。前記処分完了後、新たな屎収集袋14を屎収集箱13内部にセットすれば、継続使用が可能になるため、管理が非常に簡単である。
【0029】
本発明は、屎尿を自己完結的に処理できるため、専用下水道が完備されていない公衆トイレ、または要介護者の身辺などの場所に、設置できるようになり、要介護者に便利で介護者の負担を減らす効果がある。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を
図1〜
図5に基づいて説明した。実施例の構造は本発明に対する制限にならない。本業界の専門技術者が必要に応じて調整する可能性がある。本特許の請求範囲内のすべての変更、修正が本特許の保護範囲内である。
【符号の説明】
【0031】
1 蓋板
2 排臭排気口
3 本体
4 排尿口
5 便座板
6 濾過網
7 排尿弁
8 排気ファン
9 電気箱
10 屎加熱箱
11 回転台
12 回転モーター
13 屎収集箱
14 屎収集袋
15 温度感知装置
16 マイクロ波発生照射装置
17 自動制御装置
【要約】
【課題】要介護者の身辺に便器を設置し、排泄物処理を簡単にかつ、屎尿処理コストを安く、衛生面を保つ難題を解決する必要がある。
【解決手段】本発明は性質違う屎と尿を分別収集し、尿は便器本体内部の前側の尿収集部にて、収集、濾過、消毒及び中和を経て、田圃、川或いは生活排水溝に排出する。屎は本体内部の後側の屎収集部にて、電子レンジ加熱炉で殺菌温度まで加熱し、高温殺菌、排気にて屎中水分を迅速に脱水させ、屎を無菌、無臭、乾燥の残留物に変身させ、一般燃えるゴミとして処分する。本発明の便器および屎尿処理方法が屎と尿を自己完結的に処理でき、専用下水道不要の管理簡単、屎尿処理コストを安く、衛生快適な便器を実現。要介護者の身辺に設置し、介護者の負担減に役立つ。
【選択図】
図1