(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の積層板は、フェノール樹脂発泡板と、面材とを備える。面材は、前記フェノール樹脂発泡板の少なくとも一方の表面に設けられている。この面材は、接着層を介さず、フェノール樹脂発泡体が面材表面で熱硬化する際の固着力によってフェノール樹脂発泡板と貼り合わせられている。
前記フェノール樹脂発泡板は、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む。前記フェノール樹脂発泡板中には、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は相互に連通していない独立気泡になっている。気泡壁は、フェノール樹脂の硬化物から構成される。
ハロゲン化不飽和炭化水素は、発泡剤として用いられたものであり、ガスの状態で独立気泡中に保持されている。独立気泡中には、ハロゲン化不飽和炭化水素の他、ハロゲン化不飽和炭化水素以外の発泡剤に由来するガスが保持されていてもよい。
【0009】
<フェノール樹脂発泡板>
本発明のフェノール樹脂発泡板は、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む。前記フェノール樹脂発泡板は、例えば、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒と、界面活性剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させてなるものであることが好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒および界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
【0010】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。
フェノール化合物とアルデヒドとの割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
【0011】
(発泡剤)
発泡剤は、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む。
ハロゲン化不飽和炭化水素は、イソペンタン等のハロゲン化されていない炭化水素に比べて熱伝導率が低い。フェノール樹脂発泡板がハロゲン化不飽和炭化水素を含むことで、前記発泡板の熱伝導率が低くなって、断熱性が高められる。
また、ハロゲン化不飽和炭化水素は、オゾン破壊係数(ODP)や地球温暖化係数(GWP)が小さく、環境に与える影響が小さい。また、ハロゲン化不飽和炭化水素は不燃性であるため、フェノール樹脂発泡板の難燃性が高められる。
ハロゲン化不飽和炭化水素はフェノール樹脂との相溶性が高く、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む発泡剤を用いることで発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低下しやすい傾向がある。
【0012】
ハロゲン化不飽和炭化水素は、分子内に二重結合とハロゲン原子を有する。
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、典型的には、沸点−28〜80℃のものが挙げられる。
ハロゲン化不飽和炭化水素の熱伝導率は、0.013W/m・K以下が好ましく、0.011W/m・K以下がより好ましい。
ハロゲン化不飽和炭化水素の炭素数は、2〜6が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0013】
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化不飽和炭化水素は、水素の全てがハロゲンで置換されたものでもよいし、水素の一部がハロゲンで置換されたものでもよい。
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素等、フッ素原子を有するものが好ましい。
これらのハロゲン化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0014】
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素と二重結合とを有するヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」ともいう。)が挙げられる。HFOとしては、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)(EおよびZ異性体)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz)(EおよびZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−3−Z6)等の特表2009−513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
これらのフッ素化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0015】
塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン(EおよびZ異性体)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)(EおよびZ異性体)(HoneyWell社製、商品名:SOLSTICE LBA)、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd)(EおよびZ異性体)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zb)(EおよびZ異性体)、2−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xe)(EおよびZ異性体)、2−クロロ−2,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xc)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−7−09)、3−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233ye)(EおよびZ異性体)、3−クロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yc)、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)(EおよびZ異性体)、2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(EおよびZ異性体)、および2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン(EおよびZ異体)等が挙げられる。
これらの塩素化フッ素化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0016】
発泡剤は、ハロゲン化不飽和炭化水素以外の他の発泡剤をさらに含んでもよい。
他の発泡剤としては、特に限定されず、例えば、炭化水素;ハロゲン化飽和炭化水素;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0017】
炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、沸点が−20〜50℃のものが好適に用いられる。
炭化水素としては、炭素数4〜6の環状分子構造又は炭素数4〜6の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えばイソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば130℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
ハロゲン化飽和炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、例えば塩素化飽和炭化水素、フッ素化飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化飽和炭化水素は、水素の全てがハロゲンで置換されたものでもよいし、水素の一部がハロゲンで置換されたものでもよい。
塩素化飽和炭化水素としては、炭素数が2〜5であるものが好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロライド、2−クロロプロパン(イソプロピルクロライド)、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)、および1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、2−クロロプロパンが好ましい。
【0019】
本発明においては、発泡剤が、炭化水素及び/又はハロゲン化飽和炭化水素をさらに含むことが好ましい。即ち、フェノール樹脂発泡板が、ハロゲン化不飽和炭化水素と、炭化水素及び/又はハロゲン化飽和炭化水素と、を含むことが好ましい。
【0020】
発泡剤が炭化水素を含むと、発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低くなりすぎるのを抑制でき、表面への滲み出しが抑制されやすくなる。
発泡剤が炭化水素を含む場合、ハロゲン化不飽和炭化水素と炭化水素との質量比は、ハロゲン化不飽和炭化水素:炭化水素=1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることがさらに好ましい。
ハロゲン化不飽和炭化水素の割合が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡板の断熱性をより高められる。ハロゲン化不飽和炭化水素の割合が上記上限値以下であれば、発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低くなりすぎず、表面への滲み出しの抑制性が高められやすくなる。また、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡性が良好で、発泡剤の量が少なくても十分に発泡できる。
【0021】
また、発泡剤がハロゲン化飽和炭化水素を含む場合、ハロゲン化不飽和炭化水素とハロゲン化飽和炭化水素との質量比は、ハロゲン化不飽和炭化水素:ハロゲン化飽和炭化水素=1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることがさらに好ましい。
ハロゲン化飽和炭化水素は、フェノール樹脂組成物との相溶性が高く、ハロゲン化飽和炭化水素を含む発泡性フェノール樹脂組成物は、粘度がより低下する傾向にあるため、使用する面材の目付を調整することで表面への滲み出しを抑制することができる。
【0022】
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜25質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、5〜12質量部がさらに好ましい。上記下限値未満では、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡の程度が不充分になって、フェノール樹脂発泡板の断熱性が低下するおそれがある。上記上限値超では、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡の程度が高まりすぎて、フェノール樹脂発泡板の強度が低下するおそれがある。
【0023】
フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む発泡剤とを混合して得られる発泡性フェノール樹脂組成物の10℃における粘度は、20000mPa・s以上100000mPa・s以下が好ましく、30000mPa・s以上80000mPa・s以下がより好ましい。
なお、ここでいう粘度は、回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、10℃で3分間安定させた後の測定値である。なお、酸触媒を添加するとフェノール樹脂が硬化し始めて粘度が測定できないため、発泡性フェノール樹脂組成物は酸触媒を混合する前の粘度とされる。
【0024】
発泡剤が2種類以上の発泡剤の混合物である場合において、発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる発泡剤の組成(質量比)は、発泡硬化されたフェノール樹脂発泡板に含まれる発泡剤の組成と略一致しており、フェノール樹脂発泡板に含まれる2種以上のハロゲン化炭化水素の組成は、たとえば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
【0025】
溶媒抽出法:
予めハロゲン化不飽和炭化水素の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡板のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。ハロゲン化不飽和炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他のハロゲン化炭化水素の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
GC/MS:株式会社島津製作所 GCMS−QP2010 Plus
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
【0026】
(酸触媒)
酸触媒は、フェノール樹脂の重合を開始させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0027】
発泡性フェノール樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、5〜30質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
【0028】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0029】
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド(以下、「EO」と略記する。)、プロピレンオキシド(以下、「PO」と略記する。)がより好ましく、EOがさらに好ましい。ひまし油に付加するアルキレンオキシドは1種でもよく2種以上でもよい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
【0030】
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ひまし油1モルに対し、20モル超60モル未満が好ましく、21〜40モルがより好ましい。かかるひまし油アルキレンオキシド付加物においては、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、所定付加モルのアルキレンオキシド(EO等)によって形成されたポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基等)を主体とする親水性基とが、分子内でバランス良く配置されて、良好な界面活性能が発揮される。このため、フェノール樹脂発泡板の気泡径が小さくなる。また、フェノール樹脂発泡板の気泡壁に柔軟性が付与されて、亀裂の発生が防止される。
【0031】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のオルガノポリシロキサン系化合物が挙げられる。中でも、より均一でより微細な気泡を得られる点で、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体の構造は、特に限定されず、例えば、シロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端のそれぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
【0032】
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、例えば、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は、2又は3が好ましい。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0033】
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、末端が−OR(式中、Rは、水素原子又はアルキル基である。)であるポリエーテル鎖を有するものが好ましく、熱伝導率をより低くできる点で、Rが水素原子であるものが特に好ましい。
【0034】
発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記下限値以上であれば、気泡径が均一かつ微細になりやすい。上記上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡板の吸水性が低くなり、また、製造コストも抑えられる。
【0035】
発泡性フェノール樹脂組成物中、(発泡剤):(界面活性剤)で表される質量比は、例えば、1:1〜6:1が好ましい。発泡剤と界面活性剤との質量比が上記範囲内であれば、発泡剤をフェノール樹脂中に均一に分散して、微細な気泡を形成できる。発泡剤の比率が上記下限値未満では、発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の含有量が少なくなりすぎて、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が不充分になるおそれがある。発泡剤の比率が上記上限値超では、界面活性剤の量が少なくなりすぎて、発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の分散性が低下するおそれがある。
【0036】
(他の成分)
発泡性フェノール樹脂組成物は、発泡性フェノール樹脂組成物の添加剤として公知のものを用いることができ、例えば、発泡核剤、グリコール系化合物、尿素、充填剤(充填材)、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
【0037】
発泡核剤としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、空気等の低沸点物質が挙げられる。発泡核剤を用いることで、フェノール樹脂発泡板中の気泡をより均一かつ微細にできる。
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡核剤の含有量は、発泡剤に対して、0.05〜5mol%が好ましい。
ただし、発泡核剤は、発泡剤に予め分散され、発泡性フェノール樹脂組成物に配合されるのが通常である。発泡核剤を発泡剤に分散するには、加圧条件下で発泡核剤を発泡剤に注入する必要があり、製造工程が煩雑となる。本発明では、発泡核剤を用いなくても均一かつ微細な気泡を形成できるため、発泡核剤を発泡剤に分散する設備や煩雑な工程等を必要とせず、フェノール樹脂発泡板を容易に製造できる。
【0038】
グリコール系化合物は、可塑剤として用いられる。グリコール系化合物を用いることで、後述する充填剤を発泡性フェノール樹脂組成物に均一に分散できる。
グリコール系化合物としては、アルキレングリコールエーテルが好ましい。アルキレングリコールエーテルとしては、アルキレングリコールアルキルエーテル、例えばエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0039】
尿素は、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡成形して発泡板を製造する際、ホルムアルデヒドを捕捉するホルムアルデヒドキャッチャー剤として用いられる。
【0040】
充填剤としては、熱伝導率及び酸性度が低く、かつ防火性が高められたフェノール樹脂発泡板を得られる点で、無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。ただし、酸触媒として強酸を使用する場合、金属粉末、炭酸塩は、ポットライフの調整に影響がない範囲で添加する必要がある。これらの無機フィラーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0041】
なお、充填剤は、フッ化水素を捕捉する保護剤としても機能する。発泡剤として使用するハロゲン化不飽和炭化水素は、分解によってフッ化水素を発生したり、その製造原料として使用されたフッ化水素を不純物として含んでいることが知られている(特表2014−511930号公報)。このフッ化水素は、シリコーン系界面活性剤の疎水部を構成するシロキサン結合と反応して界面活性作用を低下させる。そこで、上記充填剤は、保護剤として発泡性フェノール樹脂組成物に添加されてもよい。
【0042】
(フェノール樹脂発泡板の特性)
本発明のフェノール樹脂発泡板の独立気泡率は、通常85%以上であり、90%以上であることがより好ましい。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
【0043】
本発明のフェノール樹脂発泡板における平均気泡径は、150μm以下であることが好ましく、40〜120μmがより好ましく、50〜100μmがさらに好ましい。平均気泡径が上記上限値以下であれば、気泡内での対流や輻射が抑制され、フェノール樹脂発泡板の熱伝導率が低く、断熱性がより優れる。
【0044】
フェノール樹脂発泡板の平均気泡径は、発泡剤の種類および組成、レゾール型フェノール樹脂を合成する際のフェノールとホルムアルデヒドとの比、酸触媒の量(硬化速度、架橋度、架橋後の伸長粘度)、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。
【0045】
本発明のフェノール樹脂発泡板の熱伝導率は、0.020W/m・K以下であることが好ましく、0.019W/m・K以下がより好ましい。熱伝導率が上記上限値であれば、断熱性に優れる。
【0046】
フェノール樹脂発泡板の熱伝導率には、平均気泡径、独立気泡率が大きく寄与する。前記熱伝導率は、発泡剤の種類および組成、レゾール型フェノール樹脂を合成する際のフェノールとホルムアルデヒドとの比、酸触媒の量、界面活性剤の種類等により調整できる。例えば、上記のとおり、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡板の熱伝導率が低い傾向がある。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
【0047】
本発明のフェノール樹脂発泡板は、制限酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」ともいう。)が28%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましい。
LOIは、規定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23℃±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度%(体積分率)であり、燃焼性の指標である。LOIが大きいほど燃焼性が低いことを示し、一般に、LOIが26%以上であれば難燃性を有すると判断されている。
【0048】
フェノール樹脂発泡板のLOIは、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類および組成とその量等により調整できる。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(ハロゲン化炭化水素の含有量が多い)ほど、LOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、LOIが高い傾向がある。さらに、リン系難燃剤等を添加することでLOIを高くすることができる。
【0049】
本発明のフェノール樹脂発泡板の密度(JIS A 9511:2009)は、10kg/m
3以上であることが好ましく、20〜100kg/m
3がより好ましい。
本発明のフェノール樹脂発泡板の脆性(JIS A 9511:2006)は、20%以下であることが好ましく、10〜18%がより好ましい。
【0050】
<面材>
フェノール樹脂発泡板の片面または両面には、面材が設けられている。面材が両面に設けられる場合、各面材は、同じでもよいし、異なってもよい。
面材としては、不織布が用いられる。不織布としては、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布などが挙げられるが、好ましくは工業的に流通量が多いため入手しやすく、製造上のエンボス加熱ロールにより繊維間の熱融着点パターンを変えることで不織布表層の風合いや毛羽立ちをコントロールすることも可能な、取り回しがし易いスパンボンド不織布が挙げられる。また、構成する材質はポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維などの合成樹脂繊維や、ガラス繊維などの鉱物繊維、綿、麻などの天然繊維が挙げられるが、加湿時、吸水時の寸法安定性や経済性、ハンドリング性の観点から好ましくは合成樹脂繊維が挙げられる。面材として合成繊維不織布が用いられることで、発泡性フェノール樹脂組成物中の水分や、フェノール樹脂の縮合の際に生じる水によって、面材が収縮等して面材にシワが発生するのを抑制できる。
【0051】
なお、面材としてはセルロース繊維を含まないことが好ましい。面材がセルロース繊維などの吸湿性の繊維を含んでいると、フェノール樹脂中の水分や硬化反応時の縮合水により面材が収縮する可能性がある。
また、セルロース繊維を含む面材を積層した発泡体の表面に凹凸を形成した場合には、凹凸形成により面材表面積が大きくなっている。このため、製造後の周囲の湿気の吸収・放出による面材の伸縮が、凹凸を形成していない場合に比べてより大きく、両面の面材の吸湿の差によって面材の伸縮に差が生じ、発泡体が反ってしまう。よって、凹凸を形成する場合には特に、面材にはセルロース繊維を含まないことがより好ましい。
【0052】
面材の目付は、20g/m
2以上である。本発明の発泡性フェノール樹脂組成物は、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む発泡剤を含有することで粘度が低くなる。前記組成物の粘度が低くなることで、面材に対して前記組成物が滲み込みやすくなり、積層板の表面に前記組成物が滲み出しやすくなる。面材の目付が20g/m
2以上であることで、前記組成物が表面に滲み出すのを抑制できる。
面材の目付は、50g/m
2以上が好ましく、80g/m
2以上がより好ましい。
特に、発泡剤として、ハロゲン化不飽和炭化水素と2−クロロプロパン等のハロゲン化飽和炭化水素が併用された場合、発泡性フェノール樹脂組成物の粘度がより低くなる傾向にある。面材の目付が前記下限値以上であると、発泡剤として、ハロゲン化不飽和炭化水素とハロゲン化飽和炭化水素が併用された場合であっても、積層板の表面への滲み出しを抑制しやすくなる。
また、面材の目付は、150g/m
2以下であり、100g/m
2以下が好ましい。面材の目付が前記上限値以下であると、面材とフェノール樹脂発泡板との接着性が高められ、積層板の表面から面材が剥がれるのを抑制でき、表面の美麗性が高められる。
また、後述するスラット型ダブルコンベアの搬送面に設けられた凹凸形状へ追従させやすく、フェノール樹脂発泡板の生産性や面材の取り扱い性が良好になる。
【0053】
面材とフェノール樹脂発泡板とは、接着層を介さずにフェノール樹脂発泡体が面材表面で熱硬化する際の固着力によって貼り合わせられており、面材を剥離すると硬化したフェノール樹脂が面材に付着するため、発泡体から剥離された面材の目付は面材自体の目付よりも大きくなっている。
発泡体から剥離した面材の目付と、使用した面材の目付との差は、2g/m
2以上12g/m
2以下が好ましく、4g/m
2以上10g/m
2以下がより好ましく、6g/m
2以上10g/m
2以下が最も好ましい。
発泡体から剥離した面材の目付と、使用した面材の目付との差が2g/m
2未満であると、面材の繊維とフェノール樹脂発泡板表面との接合が弱いことを意味しており、面材が剥離しやすい。一方、発泡体から剥離した面材の目付と、使用した面材の目付との差が12g/m
2を超えると、面材へのフェノール樹脂の滲み出しが多く、製造装置のコンベアの搬送面が滲み出したフェノール樹脂で汚染される可能性が高い。
なお、剥離した面材の目付は、面材接着強度の測定・評価で用いた剥離方法と同じ方法により剥離した面材の目付とする。
【0054】
合成繊維不織布の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。合成繊維不織布の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。
これらの合成樹脂は、1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
また、合成繊維不織布の合成繊維の繊維径は、0.5〜4.0デニールが好ましく、1.5〜3.0デニールがより好ましい。
合成繊維の繊維径が前記上限値以下であると、積層板の表面への滲み出しが抑制しやすくなる。
合成繊維の繊維径が前記下限値以上であると、合成繊維の取り扱い性が高められ不織布を製造しやすくなる。
【0055】
面材の厚さは、特に限定されないが、0.06〜1.00mmが好ましく、0.10〜0.50mmがより好ましい。面材の厚さが前記下限値以上であると、積層板の表面への滲み出しが抑制されやすくなる。面材の厚さが前記上限値以下であると、面材の取り扱い性が高められやすくなる。
【0056】
面材には、凹凸形状のいわゆるエンボスが形成されることが好ましい。エンボスが形成された面材を用いることで、面材と発泡性フェノール樹脂組成物の接着性がより高められる。
エンボスのパターン(柄)としては、特に限定されないが、例えば、マイナス柄、ポイント柄、折り目柄等が挙げられる。エンボスによる凹凸形状が大きく、フェノール樹脂発泡板との接着性がより高められる点から折り目柄が好ましい。
合成繊維不織布にエンボス加工を施すには、例えば、公知のスパンボンド法で、紡口直下の冷却条件により発現させた捲縮長繊維ウェブを熱エンボスロールで部分熱圧着させることにより、または潜在捲縮長繊維ウェブを熱処理により捲縮させて熱エンボスロールで部分熱圧着させることにより製造される。
【0057】
なお、上記熱圧着部分の1箇所当たりの面積は0.05〜5.0mm
2であることが好ましく、0.07〜3.0mm
2であることがより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、熱圧着部分によりフェノール樹脂の滲み出しを抑えつつ、フェノール樹脂発泡板との接着性を向上させることができる。上記面積が0.05mm
2未満である場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低くフェノール樹脂が滲み出しやすい傾向があり、5.0mm
2を超える場合、熱圧着部分の面積が多く、風合いが硬く、フェノール樹脂と面材の繊維との接着性が悪い傾向がある。また熱圧着部分の最小間隔は0.05〜5mmであることが好ましく、0.08〜2mmであることがより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、フェノール樹脂の滲み出しを抑えつつ、フェノール樹脂発泡板との接着性を向上させることができる。上記最小間隔が0.05mm未満である場合、熱圧着部分が多く風合いが硬く、フェノール樹脂と面材の繊維との接着性が悪い傾向があり、5mmを超える場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低く、フェノール樹脂が滲み出しやすい傾向がある。また熱圧着部分は、不織布表面の全面に均等に分布させることが好ましい。
また、熱圧着部分密度は30〜250個/cm
2であることが好ましく、80〜150個/cm
2がより好ましい。熱圧着部分密度は単位面積あたりの熱圧着部分の個数を意味しており、次式で表される。
熱圧着部分密度(個/cm
2)=熱圧着部分の数(個)/面材の表面積(cm
2)
熱圧着部分密度が上記範囲であることで、熱圧着部分によりフェノール樹脂の滲み出しを抑えつつ、フェノール樹脂発泡板との接着性を向上させることができる。
熱圧着部分の凹部(すなわち熱エンボスロール加工等による熱圧着によって形成される窪み)の深さは0.01〜1.0mmであることが好ましい。上記深さが0.01mm未満である場合、熱圧着部分の結合が少ない傾向があり、1.0mmを超える場合、エンボスロール等による加工が難しい傾向がある。
【0058】
発泡性フェノール樹脂組成物と面材の好ましい組合せとしては、ハロゲン化不飽和炭化水素と炭化水素を含む発泡剤を含有する発泡性フェノール樹脂組成物と、ポリエステル、ポリプロピレン又はナイロンのいずれかの合成繊維の不織布からなる面材の組合せが好ましい。前記面材の目付は20〜80g/m
2が好ましい。前記合成繊維の繊維径は1.0〜3.0デニールが好ましい。
【0059】
また、ハロゲン化不飽和炭化水素とハロゲン化飽和炭化水素を含む発泡剤を含有する発泡性フェノール樹脂組成物と、ポリエステル、ポリプロピレン又はナイロンのいずれかの合成繊維の不織布からなる面材との組み合わせが好ましい。前記面材の目付は50〜120g/m
2が好ましい。前記合成繊維の繊維径は1.0〜3.0デニールが好ましい。前記面材の厚さは0.1〜1mmが好ましい。
前記発泡性フェノール樹脂組成物と、前記面材との組合せであれば、積層板を製造した際に積層板の表面への滲み出しを抑制しやすくなる。
【0060】
合成繊維不織布としては、公知の製法で得られたものを用いることができ、例えば、湿式法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、メルトブロー法、スパンボンド法等により得られた不織布が用いられる。これらの中でも生産性、強度に優れる点などから、スパンボンド法による不織布が好ましい。
【0061】
[発泡性フェノール樹脂組成物の製造方法]
発泡性フェノール樹脂組成物は、例えば、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒及び必要に応じて任意成分をミキサー等に供給して混合することにより調製される。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂に必要に応じて任意成分を加え混合し、得られた混合物に、発泡剤、酸触媒を添加する順序とされる。
【0062】
[積層板の製造方法]
本発明の積層板は、面材上で、上記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることにより製造できる。
本発明の積層板の製造は、公知の発泡成形法を利用して行うことができる。以下に一例を挙げる。
【0063】
この例では、吐出装置と、吐出装置の下流側に配置された発泡成形装置と、発泡成形装置の下流側に配置された切断装置とを備える製造システムを用いる。
吐出装置は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部と、混合された原料(発泡性フェノール樹脂組成物)を吐出するための、流れ方向と直交する方向に沿って配置された複数のノズルとを備える。
発泡成形装置は、フレーム部および加熱手段を備える。フレーム部は、フェノール樹脂発泡板の断面形状に対応した空間が形成されるように上下左右に配置されたコンベア(下部コンベア、上部コンベア、左側コンベア、右側コンベア)を備える。下部コンベアおよび上部コンベアによって、上下方向の発泡が規制され、左側コンベアおよび右側コンベアによって、左右方向の発泡が規制される。加熱手段によって、フレーム部を通過する発泡性フェノール樹脂組成物が加熱され、発泡、硬化される。かかる発泡成形装置としては、例えば、特開2000−218635号公報に記載のものが挙げられる。
【0064】
この製造システムにおいて、まず、吐出装置と発泡成形装置との間に第一の面材を連続的に供給する。吐出装置にて、発泡性フェノール樹脂組成物を複数のノズルから第一の面材上に吐出する。その上に第二の面材を載せ発泡成形装置のフレーム部に導入し、30〜95℃で加熱する。これにより、第一の面材と第二の面材との間で発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化して、積層板が形成される。この積層板を発泡成形装置から導出し、切断装置で任意の長さに切断する。これにより、一方の面に第一の面材が設けられ、他方の面に第二の面材が設けられた積層板が得られる。
【0065】
積層板には、面材が設けられた面に、凹凸が形成されてもよい。凹凸が形成されることで、フェノール樹脂発泡板と面材との接着性がより高められ、積層板の一体性がより向上する。また、面材の目付を上げると、フェノール樹脂の滲み出しを抑制する一方、面材とフェノール樹脂発泡板との接着性も低下するが、積層板表面に凹凸を設けることで、面材の目付を上げても面材とフェノール樹脂発泡板との接着性が低下せず、フェノール樹脂の滲み出しを抑制することができる。さらに、スラット型ダブルコンベアのスラット同士の段差に起因する、いわゆるスラット痕を目立たなくすることができる。
【0066】
積層板に凹凸を形成する方法としては、例えば、発泡成形装置として特許第3837226号公報、特開2000−218635号公報に記載のスラット型ダブルコンベアを備えた装置を用い、前記スラット型ダブルコンベアの搬送面に凹凸を設け、この凹凸面により積層板の表面に凹凸を形成する方法が挙げられる。また、発泡成形装置から排出された直後の固まりきっていない積層板の表面に、凹凸を有する板を押し付ける方法(例えば、特許第3837226号公報に記載の第2ダブルコンベアの搬送面に凹凸を設け、この凹凸面により積層板の表面に凹凸を形成する方法)が挙げられる。また、例えば特開2015−151484号公報に記載の発泡硬化工程と後硬化工程とを備える製造方法において、後硬化工程の積層板同士を離間させるスペーサーの表面に凹凸を設け、この凹凸面により積層板の表面に凹凸を形成してもよい。
さらに、あらかじめ凹凸のつけられた面材をフェノール樹脂発泡板の表面に積層する方法であってもよい。
【0067】
前記凹凸の大きさとしては、特に限定されないが、例えば凹部の底面から凸部の頂点までの高さが0.01〜3mm、凸部の幅が1〜20mmであることが好ましい。凸部の高さは面材の厚さよりも大きいことが好ましい。
凸部の平面視の形状(凸部の立上り部(外縁)で囲まれた領域の平面視の形状)としては、特に限定されないが、四角形や六角形などの多角形状、真円形状、楕円形状、長円形状などの円形状とすることができる。ここで、凸部の平面視の形状とは、積層板の面材が積層された面に対して視線が垂直になるように見た場合のことをいう。また、凸部の立上り部とは、凹部の底面から凸部の頂点へ向かう稜線が実質的に凹部底面からかい離した点の集合をいう。このような点は、隣接する3つの凸部の頂点を通る様に厚さ方向に切断した際に、中央の凸部の稜線(積層板の表面が成す線)と、この中央の凸部の左右に存在する凹部の底面(面材とフェノール樹脂発泡板との界面が成す面)とが接触する点である。なお、凹部の底面は面材の繊維や熱圧着部に由来する凹凸があるため、使用する面材の厚さより低い凹凸は無視するものとする。
凸部の頂点は、積層板を水平な常盤上に載置してレーザー変位計にて高さを測定した際に、高い部分を頂点とすることができる。または、積層板表面を光学顕微鏡で観察後に深度解析し、観察部分において最も高い部分を頂点とすることができる。
切断する刃物としてはカミソリや、断熱材カッター(神沢鉄工株式会社製、K−470、刃厚0.8mm)などの鋭利なものを使用することが好ましい。
凸部の幅とは、凸部の平面視の形状と2点で交わる直線の2点間の距離のうち、最も長い部分をいい、例えば、真円形状の場合には直径をいい、正四角形の場合には対角線のことをいう。凸部の平面視の形状が平面視で真円形状の場合、直径は、1mm以上10mm以下が好ましく、5mm以上8mm以下が更に好ましい。
このように、凸部は、例えば、凹部(凸部の立上り部から隣接する凸部の立上り部までの間の部分)の底面から凸部の頂点までの高さ0.05mm〜1mm、直径5mmの円柱状とすることができる。
また、隣接する凸部の間に形成される凹部の幅(凸部の立上り部から隣接する凸部の立上り部までの距離)は、0.01〜4.00mmとすることが好ましい。隣接する凸部の間の距離を小さくすることで、隣接する凸部間の凹部に面材が食い込み、面材とフェノール樹脂発泡板の接着性をより向上させることができる。
【0068】
発泡体表面における凸部面積割合は15%以上80%以下とされている。
ここで、凸部面積割合とは、少なくとも一つの表面に面材が積層された板状の発泡体において、面材を有する面の総面積に対する凸部の総面積の比率であり、次式で表される。なお、凸部の面積とは、凸部の立上り部で囲まれた領域の平面視の面積を意味する。なお、式中の単位面積として、積層板の任意の位置から長さ5cm×幅5cmに切り出した積層板の面積25cm
2とし、この単位面積当たりの凸部面積割合を積層板全体の凸部面積割合とする。
凸部面積割合(%) = {(単位面積当たりに存在する複数の凸部の面積)/(単位面積)} × 100[%]
隣接する凸部間の距離を小さくして面材の接着性を向上させるため、凸部面積割合は好ましくは20%以上、更に好ましくは25%、特に好ましくは30%以上である。一方、凸部間の距離があまりにも小さい場合には面材の接着性が低下するため、好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下、特に好ましくは60%以下である。
また、凸部間に面材を食い込ませるため、凸部は不連続であることが好ましく、凸部1つ当たりの面積は0.5mm
2以上80mm
2以下が好ましく、10mm
2以上65mm
2以下が更に好ましく、15mm
2以上50mm
2以下が特に好ましい。
【0069】
面材は巻き芯と呼ばれる円筒状の芯に対してロール状に巻かれた状態から引き出して使用され、巻き取る際に巻取りテンションをかけて巻かれている。そのため、引き出して使用する際に面材にかかる引き出しテンションが大きすぎると不織布ロールの巻締りにより不織布のエンボス模様や凹凸模様を損ねたり、熱圧着部分の剥離や繊維が引きちぎれたりする恐れがある。一方、引き出しテンションが小さすぎると、スラット型ダブルコンベアの場合にはスラット間に面材が挟まってしわになったり、面材が蛇行して折り目が付いたりする。
そのため、面材の引き出しテンションとしては0.5〜80N/mであることが好ましく、1〜60N/mがより好ましい。
なお、面材の引き出しテンションの調整は、不織布ロールから張力調整用のローラを介して面材を引き出し、この張力調整用ローラの位置を移動させたり、この張力調整用ローラにモータまたはパウダ式クラッチ等を設け、テンションコントローラによりローラ回転を制御することで引き出しテンションを所望の値に調整することができ、これらの調整時に生じるトルク自体や、モータやクラッチの制御に必要な電圧をトルクに変換することで引き出しテンションを測定できる。
【0070】
上述の通り、本実施形態の積層板は、特定の発泡剤を含むフェノール樹脂発泡板と、特定の目付の面材を備えることで、軽量であり、断熱性、難燃性により優れる。加えて表面への滲み出しが抑制され、表面の美麗性がより高められる。このため、本実施形態の積層板は、集合住宅、戸建住宅、倉庫等、高い断熱性を求められる建造物用の断熱材として特に有用である。
【実施例】
【0071】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例13〜16は参考例である。
【0072】
<測定方法>
後述の実施例及び比較例で用いた測定方法を以下に示す。
【0073】
(熱伝導率)
JIS A 9511:2009に準拠してフェノール樹脂発泡板の熱伝導率を測定した。同じ試料について2回測定し、その平均値を求めた。
【0074】
(制限酸素指数(LOI))
JIS K 7201−2:2007に準拠してフェノール樹脂発泡板の制限酸素指数(LOI)を測定した。
【0075】
(面材の目付)
JIS L 1906 “一般長繊維不織布試験方法”の“単位面積当たりの質量”に準じて測定した。
【0076】
(面材の繊維径)
弾性繊維並びにマルチフィラメント繊維のデニールを測定する手段のうちマルチフィラメント繊維についてはJIS−L−1013に従う。また、弾性繊維については標準状態の雰囲気中で無荷重の状態で弾性繊維をぶら下げてその糸長(L:単位m)を測り、その重量(W:単位g)を測定することでデニール(D)をD=(W/L)×9000から算出でき、これを30回行ってその平均値をデニールとする。
なお、弾性繊維のデニール測定の際、糸長Lの長さは特に限定されないが精度良く数値を求めるためには弾性繊維の自重効果による伸びが影響されない程度の長さが好ましく、例えば20デニール〜40デニール程度のものは糸長Lは1m前後の長さが好ましい。
【0077】
<表面への滲み出しの抑制性の評価方法>
積層板表面への滲み出しの抑制性の評価は、後述の実施例及び比較例で製造した厚さ45mm、幅1000mm、長さ910mmの積層板20枚について、積層板の表面を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
○:20枚中20枚の積層板について、積層板表面への滲み出しが観察されなかった。
△:20枚中の少なくとも1枚の積層板について、積層板表面への滲み出しが観察された。
×:発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しが甚だしく、コンベアの搬送面に滲み出たフェノール樹脂が貼り付くトラブルが発生した。
【0078】
<面材接着強度の測定・評価>
接着強度の測定は以下の手順によった。まず、幅60cm、長さ120cmの積層板の端部中央部分において、幅方向に3cm、長手方向に30cmの短冊状の切れ込みを6個設け、短冊の端部を約3cm剥離し、ペーパークリップにて把持し、それをフォースゲージに接続しておよそ1cm/秒の速度にて面材と芯材(フェノール樹脂発泡板)の剥離角度を90度に保ちつつ剥離せしめる。そのときの最高値を記録し、積層板の表、裏合計12ケ所の測定値のうち、最低の値と最高の値を除いた10カ所の測定値の平均値を以て、該積層板の面材と芯材との接着強度(g/3cm幅)とする。フォースゲージは、最大荷重500g、最小目盛り0.1gのものを使用し、小数点以下を四捨五入したものを測定値とした。接着強度の値には、積層板5枚の測定値の平均を求めて、1の位を四捨五入したものを採用し、下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
○:接着強度に優れる(120g/3cm幅以上)
△:接着強度が中程度(80g/3cm幅以上120g/3cm幅未満)
×:接着強度が劣る(80g/3cm幅未満)
【0079】
<剥離後の面材の目付>
上記の面材接着強度の測定・評価で剥離した面材の目付を測定した。
【0080】
<面材外観>
積層板表面から見た面材外観の評価は、後述の実施例及び比較例で製造した厚さ45mm、幅1000mm、長さ910mmの積層板20枚について、積層板の表面の面材を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
○:滲み出し汚れ、しわ、折り目のいずれも無い
×:滲み出し汚れ、しわ、折り目のいずれかが有る
【0081】
[実施例1]
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部と、界面活性剤(シリコーン系界面活性剤、東レ・ダウコーニング社製「品番SH193」、ポリエーテル鎖の末端:−OH)4質量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤(尿素)4質量部とを混合した後、20℃で8時間放置した。
得られた混合物108質量部と、発泡剤(HCFO−1233zd−E:イソペンタン=40:60(質量比)の混合物)15質量部と、酸触媒(パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物)15.0質量部とを混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を、TD方向に16本配置されたノズル(吐出口の直径:縦10mm、横30mm)から、連続的に走行させている第一の面材(材質:ポリエステル、目付:30g/m
2、繊維径:2.0デニール、熱圧着部分密度:100個/cm
2)上に吐出させ、その上に第一の面材と同じ材質の第二の面材を重ねて、第一、第二の面材で挟み込むようにスラット型ダブルコンベアで厚さ45mm、幅1000mmとなるように抑え、これを70℃で300秒間加熱して発泡成形した。このとき、第一、第二の面材にかかるテンションは4N/mとなるように第一、第二の面材を面材ロールから引き出した。
なお、スラットコンベアの上下のコンベアのうちフェノール樹脂発泡板と接する搬送面には半球形状に切削加工された凹凸が設けられており、この凹凸により、フェノール樹脂発泡板の表面に直径5mmの円径で、中央部の高さが0.5mm盛り上がった凸部を千鳥配置になるよう設け、凸部面積率が40%となるよう凸部と凸部の間隔(凹部)を調整した。
得られたシートを長さ910mmに切断し実施例1の積層板を作製した。
【0082】
[実施例2〜6]
発泡剤を表1の組成に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6の積層板を作製した。
【0083】
[実施例7〜12、比較例1〜3]
発泡剤を表1の組成に変更し、面材を表1の目付に変更し、凸部の直径を4mmとし、凸部面積率が表1となるように表面の凸部を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7〜12、比較例1〜3の積層板を作製した。
【0084】
[比較例4、5]
面材の熱圧着部分密度を表1のように変更したこと以外は、実施例5と同様にして比較例4、5の積層板を作成した。
【0085】
[実施例13、14]
発泡剤を表1の組成に、面材を表1の目付に変更し、スラットコンベアの上下の搬送面に凹凸がついていないものを使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例13、14の積層板を作成した。
【0086】
[実施例15、16]
発泡剤を表1の組成とし、第一、第二の面材として予め表1に記載の凸部を有する面材(材質:ポリエステル、目付:50g/m
2、繊維径:2.0デニール、熱圧着部分密度:100個/cm
2)を使用し、スラットコンベアの上下の搬送面に凹凸がついていないものを使用し、第一、第二の面材にかかるテンションが2N/mとなるように第一、第二の面材を面材ロールから引き出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例15、16の積層板を作成した。
【0087】
[比較例6、7]
第一、第二の面材にかかるテンションを表1の様に変更したこと以外は、実施例15と同様にして、比較例6、7の積層板を作成した。
【0088】
各例の積層板のフェノール樹脂発泡板について、熱伝導率、LOIを測定した。表1に熱伝導率、LOI、使用した面材の目付等の測定結果を示す。
また、積層板の表面への滲み出しの抑制性、面材の接着強度、面材の外観について評価した。評価結果を表1に示す。
表中、発泡剤中の各成分の含有量は、発泡剤の総質量に対する割合(質量%)を意味する。
【0089】
【表1】
【0090】
上記結果に示すとおり、本発明を適用した実施例1〜16の積層板は、熱伝導率が充分に低く、断熱性に優れ、かつ、表面への滲み出し、面材の剥がれが抑制され表面の美麗性に優れていた。
これに対して、比較例1、3、4の積層板は、表面への発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しが甚だしく、また、製造中にコンベアの搬送面に滲み出たフェノール樹脂が貼り付くトラブルが発生した。比較例2、5、7の積層板は、面材とフェノール樹脂発泡板との接着強度が不充分であり、積層板の端部で面材の剥がれが生じた。比較例6の積層板は、表面の面材にしわ及び折り目が生じ、表面の美麗性が劣っていた。
これらの結果から、本発明を適用することで、断熱性に優れ、かつ、表面の美麗性に優れる積層板を得られることが確認できた。