(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
Li(金属Li)や、Li−Al合金(LiとAlとの合金)は、炭素材料に比べてLi(Liイオン)の受け入れ性が低く、これを負極活物質に用いた非水電解液二次電池では、充放電を繰り返した際に、早期に容量が低下しやすい。こうしたことから、充放電を繰り返し行って使用することが想定されている非水電解液二次電池では、黒鉛などの炭素材料が負極活物質として汎用されている。
【0016】
その一方で、炭素材料を負極活物質に用いた非水電解液二次電池では、自己放電が起きやすく、充電状態で貯蔵すると容量低下が生じやすい。
【0017】
こうしたことから、車両緊急通報システムのように、実際に作動する機会が限られているものの、必要な際には確実に作動することが求められる装置の電源用の電池には、非水電解液二次電池よりも貯蔵特性が良好で、数年以上の長期にわたって貯蔵しても、容量低下がほとんどない非水電解液一次電池が適用されている。
【0018】
その一方で、こうした用途においても、メンテナンスの容易さなどの理由から、通常の二次電池のように充放電を多数繰り返すことは求めないまでも、数回〜数十回程度の回数で充電が可能な電池の適用要請がある。
【0019】
そこで、本発明の非水電解液電池では、特に車載用など高温環境下で使用される場合にあっても、高い貯蔵特性と高容量化とを実現することができ、また、ある程度の回数の充電が可能となるように、Li−Al合金を負極活物質として使用することにした。
【0020】
また、本発明の非水電解液電池では、その貯蔵特性を高めるために、以下のいずれかの態様とする。なお、いずれの態様においても、放電時に負極の形状を安定にし、次回の充電を可能にする目的で集電体を使用する。
【0021】
態様(1):
負極活物質にLi−Al合金を使用する電池では、Li箔(特に断らない限り、Li合金箔を含む。以下同じ。)とAl箔(特に断らない限り、Al合金箔を含む。以下同じ。)とを貼り合わせて電池内に導入し、非水電解液の共存下でLiとAlとを反応させてLi−Al合金を形成させることが行われている。ところが、更に集電体となる金属箔〔Cu(銅)箔やCu合金箔など〕を、Li箔とAl箔との積層体に単に重ねただけで電池内に挿入すると、貯蔵後(特に高温環境下での貯蔵後)に電池の内部抵抗が増大して、貯蔵特性が十分に向上しない。
【0022】
これは、電池内において、Li箔とAl箔との積層体でLi−Al合金が形成される際に体積変化が生じたり、Li−Al合金が形成されて微粉化が生じることで負極が非水電解液を吸収しやすくなって体積変化が生じたりして、Li−Al合金の層(Al箔)と集電体との密着性が確保できなくなるためであることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0023】
そこで、本発明者らは更に検討を重ねた結果、Li−Al合金を形成するためのAl金属層(Al箔など)と、集電体として作用するLiと合金化しない金属基材層(Cu箔など)とをあらかじめ接合して用い、更に、その金属層の表面にLi層(Li箔など)を積層させ、前記Li層のLiと前記Al金属層のAlとを反応させる方法、または前記Al金属層と前記金属基材層との接合体をそのまま電池の組み立てに用い、組み立て後の充電によって、前記Al金属層のAlを非水電解液中のLiイオンと電気化学的に反応させる方法などにより、前記Al金属層の少なくとも表面側をLi−Al合金とし、前記金属基材層の表面にAl活性層が接合された負極とすることで、貯蔵時の内部抵抗の増大を抑え得ることを見出した。
【0024】
一方、更に検討を進めた結果、前記金属基材層の両面にAl金属層を接合し、それぞれのAl金属層の少なくとも表面側に、Li−Al合金を形成する場合には、金属基材層の片面のみにAl金属層の接合およびLi−Al合金の形成を行う場合に比べて、負極の変形(湾曲など)や、それに伴う電池の特性劣化を更に抑制することが可能となることを見出し、かかる知見に基づいて、繰り返しの充放電が可能であり、かつ高温環境下での貯蔵特性が良好な非水電解液電池の態様(1)を完成するに至った。
【0025】
態様(2):
前記態様(1)の検討過程において、前記金属基材層が、Ni、TiおよびFeより選択される金属またはその合金で構成されている場合には、Li−Al合金が形成される際の体積変化による負極の変形を抑制する効果が高くなるため、金属基材層の両面にAl金属層を接合する場合だけでなく、金属基材層の片面のみにAl金属層の接合およびLi−Al合金の形成を行う場合であっても、電池の特性劣化を充分に抑制することが可能となることを見出し、非水電解液電池の態様(2)を完成するに至った。
【0026】
前記態様(1)および態様(2)のように、Li−Al合金を負極活物質とする電池では、放電容量がLi量に依存するため、電池の高容量化を図るには、Liの含有割合を高めることが望ましいと考えられる。しかしながら、Liの割合が多くなると、電池の貯蔵特性が低下することが本発明者らの検討により明らかとなった。これは、Li−Al合金を形成するために電池内に導入されるLiとAlとの比率に応じてLi−Al合金の結晶構造が変化し、Li量が多い場合には、電解液との反応性が高くなったり、貯蔵時の電池の電位が不安定になったりするためであると推測される。
【0027】
そこで、本発明の非水電解液電池システムでは、前記の通り、繰り返しの充電を可能にすることに加えて、充電状態の電池内の負極でのLiとAlとの比率を特定することで、優れた貯蔵特性を確保し、更には大きな容量と優れた重負荷放電特性も確保できるようにしている。
【0028】
本発明の非水電解液電池に係る負極の形成には、第1の方法として、Liと合金化しない金属基材層(以下、単に「基材層」という)とAl金属層(以下、単に「Al層」という)とを接合して形成した積層金属箔の、Al層の表面に、Li箔を貼り合わせるなどの方法によりLi層が形成された積層体を使用する。
【0029】
前記基材層は、Cu、Ni、Ti、Feなどの金属、またはそれら元素と他の元素との合金(ただし、ステンレス鋼などの、Liと反応しない合金)により構成することができるが、基材層の厚みを薄くしても充電時の負極の膨張を充分に抑制するためには、基材層を、ニッケル、チタンおよび鉄より選択される金属またはその合金のように、引っ張り強さが高い材料で構成すればよく、室温での引っ張り強さが400N/mm
2以上の材料で構成することが好ましい。
【0030】
すなわち、電極の面積が比較的小さいコイン形電池などでは、Cu(引っ張り強さ:220N/mm
2)のように引っ張り強さが低い材料により基材層を構成しても、負極の膨張による影響が小さいため、例えば、基材層を封口板に抵抗溶接することにより、所定の特性の電池を構成することができるが、電極の面積が大きくなった場合、または複数の負極が積層された場合などでは、負極の膨張による特性低下が大きくなってしまう。一方、Ni(490N/mm
2)、Ti(410N/mm
2)、SUS304(600N/mm
2)など、Ni、TiおよびFeより選択される金属か、またはその合金で基材層を構成することにより、厚みが薄くても優れた膨張抑制の効果を得ることができ、特に、Al活性層の面積(複数ある場合は、総面積)が、10cm
2以上となる場合には、前記材料とすることによる効果がより顕著となる。なお、非水電解液電池の態様(2)では、前記基材層を、Ni、TiおよびFeより選択される金属またはその合金で構成する。
【0031】
一方、負極のインピーダンスを低くするためには、室温での体積固有抵抗が低い材料で基材層を構成するのがよく、体積固有抵抗が80×10
−6Ω・cm以下の材料であることが好ましく、体積固有抵抗が30×10
−6Ω・cm以下の材料であることがより好ましく、体積固有抵抗が15×10
−6Ω・cm以下の材料であることが特に好ましい。
【0032】
前記材料の体積固有抵抗は、それぞれNi:6.8×10
−6Ω・cm、Ti:55×10
−6Ω・cm、SUS304:72×10
−6Ω・cmであり、体積固有抵抗の点からは、Niまたはその合金によって基材層を構成することが特に好ましい。
【0033】
前記基材層は、具体的には、前記金属または合金の箔や蒸着膜、めっき膜などにより構成される。
【0034】
前記Al層は、純Al、または、強度の向上などを目的とする添加元素を有するAl合金により構成することができ、具体的には、それらの箔や蒸着膜、めっき膜などにより構成される。
【0035】
前記Li層の形成には、前記Al層の表面にLi箔を貼り合わせる方法や、蒸着膜を形成する方法などを用いることができる。
【0036】
図1に、本発明の非水電解液電池に使用される負極を形成するための積層体(負極前駆体)の一例を模式的に表す断面図を示している。
図1の負極前駆体100は、基材層101aの両面にAl層101b、101bを接合して構成した積層金属箔101の、Al層101b、101bの表面に、Li箔102、102が貼り合わされて形成された積層体である。
【0037】
前記の負極前駆体を用いて負極を形成する非水電解液電池では、非水電解液の共存下でLi箔のLiとAl層のAlとが反応して、Al層のLi箔が貼り合わされた側(セパレータ側)の表面にLi−Al合金が形成され、Al活性層に変化する。すなわち、前記負極のAl活性層の少なくとも表面側(Li箔側)には、非水電解液電池内で形成されたLi−Al合金が存在する。
【0038】
負極前駆体では、基材層とAl層とを接合して形成した積層金属箔において、基材層の片面にAl層を接合していてもよく、また、
図1に示すように基材層の両面にAl層を接合していてもよい。ただし、非水電解液電池の態様(1)に使用する負極前駆体では、基材層とAl層とを接合して形成した積層金属箔において、
図1に示すように基材層の両面にAl層を接合する。
【0039】
そして、基材層とAl層とを接合して形成した積層金属箔と、Li箔とが貼り合わされて形成された積層体においては、基材層の両面のAl層の表面(基材層と接合していない面)にLi箔を貼り合わせる。
【0040】
以下では、基材層がCu(Cu箔)である場合、および基材層がNi(Ni箔)である場合を例示して説明するが、基材層がCuやNi以外の材料である場合も同様である。
【0041】
Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔としては、Cu箔とAl箔とのクラッド材、Cu箔上にAlを蒸着してAl層を形成した積層膜などが挙げられる。
【0042】
Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔に係るCu層としては、Cu(および不可避不純物)からなる層や、合金成分としてZr、Cr、Zn、Ni、Si、Pなどを含み、残部がCuおよび不可避不純物であるCu合金(前記合金成分の含有量は、例えば、合計で10質量%以下、好ましくは1質量%以下)からなる層などが挙げられる。
【0043】
また、Ni層とAl層とを接合して形成した積層金属箔としては、Ni箔とAl箔とのクラッド材、Ni箔上にAlを蒸着してAl層を形成した積層膜などが挙げられる。
【0044】
Ni層とAl層とを接合して形成した積層金属箔に係るNi層としては、Ni(および不可避不純物)からなる層や、合金成分としてZr、Cr、Zn、Cu、Fe、Si、Pなどを含み、残部がNiおよび不可避不純物であるNi合金(前記合金成分の含有量は、例えば、合計で20質量%以下)からなる層などが挙げられる。
【0045】
更に、Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔やNi層とAl層とを接合して形成した積層金属箔に係るAl層としては、Al(および不可避不純物)からなる層や、合金成分としてFe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、Zr、Nb、Moなどを含み、残部がAlおよび不可避不純物であるAl合金(前記合金成分の含有量は、例えば、合計で50質量%以下)からなる層などが挙げられる。
【0046】
Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔やNi層とAl層とを接合して形成した積層金属箔においては、負極活物質となるLi−Al合金の割合を一定以上とするために、基材層であるCu層やNi層の厚みを100としたときに、Al層の厚み(ただし、基材層であるCu層やNi層の両面にAl層を接合させた場合には、片面あたりの厚み。以下同じ。)は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましく、70以上であることが特に好ましい。また、集電効果を高め、Li−Al合金を十分に保持するためには、Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔やNi層とAl層とを接合して形成した積層金属箔において、基材層であるCu層やNi層の厚みを100としたときに、Al層の厚みは、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましく、200以下であることが最も好ましい。
【0047】
なお、基材層であるCu層やNi層の厚みは、10〜50μmであることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。また、Al層の厚み(ただし、基材層であるCu層やNi層の両面にAl層を接合させた場合には、片面あたりの厚み)は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、また、150μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
【0048】
Cu層とAl層とを接合して形成した積層金属箔やNi層とAl層とを接合して形成した積層金属箔の厚みは、負極の容量を一定以上とするために、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、また、正極活物質との容量比を適切な範囲とするために、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが特に好ましい。
【0049】
負極前駆体に使用するLi箔としては、Ll(および不可避不純物)からなる箔や、合金成分としてFe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、Zr、Nb、Moなどを合計で40質量%以下の量で含み、残部がLiおよび不可避不純物であるLi合金からなる箔などが挙げられる。
【0050】
また、積層金属箔の表面にLi箔が貼り合わされて形成された前記の積層体を負極前駆体として用いて負極のAl活性層を形成する方法以外に、第2の方法として、前記積層金属箔をそのまま負極前駆体として使用して電池を組み立て、組み立て後の電池を充電する方法によっても、負極を構成するAl活性層を形成することができる。
【0051】
すなわち、前記積層金属箔のAl金属層の少なくとも表面側のAlを、電池の充電によって非水電解液中のLiイオンと電気化学的に反応させることにより、少なくとも表面側にLi−Al合金が形成されたAl活性層とすることも可能である。
【0052】
Li箔が貼り合わされていない前記積層金属箔を負極前駆体として用いる第2の方法によれば、電池の製造工程を簡略化することができる。ただし、負極前駆体を用いてAl活性層を形成することにより、Li−Al合金の不可逆容量を、負極前駆体のLi層のLiが相殺することになることから、高容量化のためには、第1の方法で負極を形成(負極のAl活性層を形成)することが好ましく、また、第1の方法に係る負極前駆体を用いて電池を組み立て、更に充電を行って負極を形成(負極のAl活性層を形成)してもよい。
【0053】
本発明の非水電解液電池のように、Liと合金化しない金属基材層と、前記金属基材層に接合されたAl活性層とを含有する積層体を負極として有する電池においては、負極活物質として作用する物質の結晶構造を良好に保って負極の電位を安定化させて、より優れた貯蔵特性を確保する観点から、第1の方法および第2の方法のいずれの方法によって負極のAl活性層を形成する場合であっても、負極のAl活性層におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量が、48原子%以下である範囲において電池を使用することが好ましい。すなわち、電池の充電時に、Al活性層のLiの含有量が48原子%を超えない範囲で充電を終止することが好ましく、Liの含有量が、40原子%以下である範囲において充電を終止することがより好ましく、35原子%以下である範囲において充電を終止することが特に好ましい。
【0054】
前記積層金属箔のAl層は、全体がLiと合金化して活物質として作用してもよいが、Al層のうちの基材層側をLiと合金化させず、Al活性層を、表面側のLi−Al合金層と基材側に残存するAl層との積層構造とすることがより好ましい。
【0055】
すなわち、前記の状態で充電を終止することにより、前記Al層のセパレータ側(正極側)を、Liと反応させてLi−Al合金(α相とβ相との混合相またはβ相)とし、一方、前記基材層との接合部付近のAl層は、実質的にLiと反応させずに元のAl層のまま残存するか、またはセパレータ側よりもLiの含有量が低くなると推測され、元のAl層と基材層との優れた密着性を維持することができ、セパレータ側に形成されたLi−Al合金を基材層上に保持しやすくなると考えられる。特に、前記Al層のセパレータ側に形成されるLi−Al合金に、α相が混在した状態で充電を終止することがより好ましい。
【0056】
なお、本明細書では、「実質的にLiと合金化していないAl」は、Al層がLiを含有していない状態のほか、Liを数at%以下の範囲で固溶したα相の状態のものも対象とし、「実質的にLiと反応させない」とは、Liを数at%以下の範囲で固溶した状態も含め、Alがα相の状態のままで維持されることを指すものとする。
【0057】
また、本発明の非水電解液電池においては、容量および重負荷放電特性をより高める観点から、LiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量が、15原子%以上となる範囲まで電池を充電することが好ましく、20原子%以上となる範囲まで電池を充電することがより好ましい。
【0058】
更に、本発明の非水電解液電池に係る負極は、Al金属相(α相)とLi−Al合金相(β相)とが共存する状態で放電を終了することが望ましく、これにより、充放電時の負極の体積変化を抑制し、充放電サイクルでの容量劣化を抑制することができる。負極にLi−Al合金のβ相を残存させるためには、放電終了時の、負極におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量を、およそ3原子%以上とすればよく、5原子%以上とすることが好ましい。一方、放電容量を大きくするためには、放電終了時のLi含有量は、12原子%以下であることが好ましく、10原子%以下であることがより好ましい。
【0059】
前記のような電池の使用状況を実現しやすくするために、本発明の非水電解液電池において、第1の方法により負極を形成する場合に使用する負極前駆体においては、電池組み立て時における、Al層の厚みを100としたときの前記Al層に貼り合せるLi層の厚みを、10以上とすることが好ましく、20以上とすることがより好ましく、30以上とすることが更に好ましく、また、80以下とすることが好ましく、70以下とすることがより好ましい。
【0060】
具体的なLi箔の厚み(前記積層体が両面にLi箔を有している場合は、片面あたりの厚み。)は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、また、80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。
【0061】
Li箔とAl層(Al層を構成するためのAl箔、または負極集電体を構成する金属層とAl層とが接合して構成された箔に係るAl層)との貼り合わせは、圧着などの常法により行うことができる。
【0062】
第1の方法で負極を形成する場合に用いる負極前駆体として使用する前記積層体は、Cu層とAl層とを接合した箔やNi層とAl層とを接合した箔のAl層の表面に、Li箔を貼り合わせる方法で製造することができる。
【0063】
負極を形成する第1の方法および第2の方法で用いる負極前駆体として使用する前記積層体におけるCu層やNi層には、常法に従って負極リード体を設けることができる。
【0064】
本発明の非水電解液電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。正極活物質には、リチウム含有複合酸化物(Liイオンを吸蔵および放出可能なリチウム含有複合酸化物)や、リチウム含有複合酸化物以外の正極活物質を使用することができる。ただし、第2の方法で負極を形成する場合には、正極活物質にはリチウム含有複合酸化物などのリチウムを放出可能な化合物を使用する。
【0065】
正極活物質として使用されるリチウム含有複合酸化物としては、Li
1+xM
1O
2(−0.1<x<0.1、M
1:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有複合酸化物、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiM
2PO
4(M
2:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有複合酸化物としては、LiCoO
2などのコバルト酸リチウムやLiNi
1−aCo
a−bAl
bO
2(0.1≦a≦0.3、0.01≦b≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2、LiNi
3/5Mn
1/5Co
1/5O
2など)などを例示することができる。
【0066】
また、リチウム含有複合酸化物以外の正極活物質としては、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物などの金属酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどの金属硫化物を例示することができる。
【0067】
正極活物質には、前記例示の化合物のうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、高容量で貯蔵安定性に優れていることから、リチウム含有複合酸化物を使用することが好ましく、コバルト酸リチウムを使用することがより好ましい。
【0068】
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
【0069】
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
【0070】
正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤を、溶剤(NMPなどの有機溶剤や水)に分散させて正極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を調製し、この正極合剤含有組成物を集電体の片面または両面などに塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0071】
また、前記正極合剤を用いて成形体を形成し、この成形体の片面の一部または全部を正極集電体と貼り合わせて正極としてもよい。正極合剤成形体と正極集電体との貼り合わせは、プレス処理などにより行うことができる。
【0072】
正極の集電体としては、AlやAl合金などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、Al箔が好適に用いられる。正極集電体の厚みは、10〜30μmであることが好ましい。
【0073】
正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質を80.0〜99.8質量%とし、導電助剤を0.1〜10質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。また、正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、50〜300μmであることが好ましい。
【0074】
正極の集電体には、常法に従って正極リード体を設けることができる。
【0075】
前記負極と組み合わせる正極の容量比は、充電終了時の負極におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量が15〜48原子%となるように設定すればよく、更に、放電終了時に、負極にLi−Al合金のβ相が残存するように正極の容量比を設定することが望ましい。
【0076】
本発明の非水電解液電池において、正極と負極とは、例えば、セパレータを介して重ねて構成した電極体、前記電極体を更に渦巻状に巻回して形成された巻回電極体、または複数の正極と複数の負極とを交互に積層した積層電極体の形態で使用される。
【0077】
セパレータは、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常の非水電解液二次電池などで使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。セパレータの厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましい。
【0078】
本発明の非水電解液電池は、例えば、積層電極体を外装体内に装填し、更に外装体内に非水電解液を注入して非水電解液中に電極体を浸漬させた後、外装体の開口部を封止することで製造される。外装体には、スチール製やアルミニウム製、アルミニウム合金製の外装缶や、金属を蒸着したラミネートフィルムで構成される外装体などを用いることができる。
【0079】
非水電解液には、下記の非水系溶媒中に、リチウム塩を溶解させることで調製した溶液が使用できる。
【0080】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
【0081】
非水電解液に係るリチウム塩としては、例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO3(n≧2)、LiN(RfOSO
2)
2[ここでRfはフルオロアルキル基]などから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
【0082】
また、これらの非水電解液に電池の各種特性を更に向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0083】
更に、非水電解液は、公知のポリマーなどのゲル化剤を用いてゲル状(ゲル状電解質)としてもよい。
【0084】
なお、本発明の非水電解液電池は、正極容量規制で構成されるため、充電電気量の制御や、充電電圧の制御などにより、充電終了時期を検出することができることから、あらかじめ充電回路側に充電終了条件を設定しておくことが可能である。
【0085】
よって、前記態様のいずれかの非水電解液電池と、充電回路とを有する非水電解液電池システムにおいて、前記Al活性層におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量が、充電終了時に、15〜48原子%となるような充電終了条件を設定しておくことで、非水電解液電池の貯蔵特性を良好に発揮させることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0087】
(非水電解液電池の評価)
実施例1
厚さ30μmのCu箔(引っ張り強さ:220N/mm
2、体積固有抵抗:2×10
−6Ω・cm)の両面に、それぞれ、厚さ30μmのAl箔を積層した25mm×40mmの大きさのクラッド材(積層金属箔)を負極前駆体として用いた。前記クラッド材の端部に、集電用のCu箔を超音波溶接し、更にそのCu箔の端部に、電池外部との導電接続のためのNiタブを超音波溶接したものを電池の組み立てに用いた。
【0088】
一方、正極は、以下のようにして作製した。コバルト酸リチウム:97質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部と、バインダであるPVDF:1.5質量部とを、NMPに分散させたスラリーを調製し、これを厚さ12μmのAl箔の片面に塗布し、乾燥し、プレス処理を行うことにより、Al箔集電体の片面におよそ23mg/cm
2の質量の正極合剤層を形成した。なお、スラリーの塗布面の一部には正極合剤層を形成せず、Al箔が露出する箇所を設けた。次いで、前記Al箔集電体を20mm×45mmの大きさに切断し、前記Al箔が露出する箇所に、電池外部との導電接続のためのAlタブを超音波溶接することにより、集電体の片面に20mm×30mmの大きさの正極合剤層を有する正極を作製した。
【0089】
前記Niタブを溶接した負極前駆体の両側に、厚さ16μmのPE製の微多孔フィルムよりなるセパレータを介して前記正極をそれぞれ積層し、一組の電極体を作製した。また、プロピレンカーボネート(PC)とメチルエチルカーボネート(MEC)との体積比1:2の混合溶媒に、LiBF
4を1mol/lの濃度で溶解することにより、非水電解液を調製した。前記電極体を真空中60℃で15時間乾燥させた後、前記非水電解液とともにラミネートフィルム外装体の中に封入することにより、定格容量が30mAhで、
図2に示す外観を有し、
図3に示す断面構造の非水電解液電池を作製した。
【0090】
ここで、
図2および
図3について説明すると、
図2は非水電解液電池を模式的に表す平面図であり、
図3は、
図2のI−I線断面図である。非水電解液電池1は、2枚のラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体700内に、正極200と負極100とをセパレータ300を介して積層して構成した積層電極体と、非水電解液(図示しない)とを収容しており、ラミネートフィルム外装体700は、その外周部において、上下のラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、
図3では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体700を構成している各層、並びに正極200および負極100の各層を区別して示していない。
【0091】
正極200は、電池1内でリード体を介して正極外部端子204と接続しており、また、図示していないが、負極100も、電池1内でリード体を介して負極外部端子104と接続している。そして、正極外部端子204および負極外部端子104は、外部の機器などと接続可能なように、片端側がラミネートフィルム外装体700の外側に引き出されている。
【0092】
実施例2
厚さ30μmのNi箔(引っ張り強さ:490N/mm
2、体積固有抵抗:6.8×10
−6Ω・cm)の両面に、それぞれ、厚さ30μmのAl箔を積層した25mm×40mmの大きさのクラッド材(積層金属箔)を負極前駆体として用いた以外は、実施例1と同様にして、定格容量30mAhの非水電解液電池を作製した。
【0093】
比較例1
厚さ30μmのCu箔の片面に、厚さ30μmのAl箔を積層した25mm×40mmの大きさのクラッド材(積層金属箔)を負極前駆体として用いた。前記クラッド材の端部に、集電用のCu箔を超音波溶接し、更にそのCu箔の端部に、電池外部との導電接続のためのNiタブを超音波溶接したものを電池の組み立てに用いた。
【0094】
一方、正極は、以下のようにして作製した。実施例1と同様のスラリーを厚さ12μmのAl箔の両面にそれぞれ塗布し、乾燥し、プレス処理を行うことにより、Al箔集電体の両面それぞれに、およそ23mg/cm
2の質量の正極合剤層を形成した。なお、Al箔の一部には、両面とも正極合剤層を形成せず、Al箔が露出する箇所を設けた。次いで、前記Al箔集電体を20mm×45mmの大きさに切断し、前記Al箔が露出する箇所に、電池外部との導電接続のためのAlタブを超音波溶接することにより、集電体の両面にそれぞれ20mm×30mmの大きさの正極合剤層を有する正極を作製した。
【0095】
前記正極の両側に、厚さ16μmのPE製の微多孔フィルムよりなるセパレータを介して前記負極をそれぞれ積層し、一組の電極体を作製した。以下、実施例1と同様にして、定格容量30mAhの非水電解液電池を作製した。
【0096】
実施例1、2および比較例1の各電池について、組み立てから24時間放置した後、以下の項目について評価を行った。
【0097】
<負極の平坦性>
実施例1、2および比較例1の各電池について、定電流(6mA)−定電圧(4.0V)充電を行い、充電電流が0.3mAまで低下した時点で充電を終止し、電池を満充電状態とした。次いで、それぞれの電池をアルゴンガス雰囲気中で分解して負極を取り出し、その変形の程度を目視で確認した。なお、いずれの負極についても、クラッド材を構成するAl箔の正極合剤層と対向する部分にLi−Al合金が形成されており、周縁部の正極合剤層と対向していない部分は、Liと反応せずAlのままの状態で存在していた。
【0098】
また、電池の充電完了時において、負極のAl活性層におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量は、31原子%であった。
【0099】
実施例1および比較例1の非水電解液電池について、取り出した負極の写真を
図4および
図5にそれぞれ示す。実施例1の電池では、Al活性層103におけるLi−Al合金の形成により若干の湾曲を生じていたものの、
図4から明らかなように負極はほぼ平坦性を維持しており、実施例1の電池に比べて負極の基材層の強度を高くした実施例2の電池では、図示はしないが、更に優れた平坦性を維持していた。一方、比較例1の電池では、
図5にあるように、Al活性層103におけるLi−Al合金の形成により負極が大きく湾曲している様子が認められた。
【0100】
<高温貯蔵特性>
実施例1、2および比較例1の各電池について、定電流(6mA)−定電圧(4.0V)充電を行い、充電電流が0.3mAまで低下した時点で充電を終止した。次いで、6mAの定電流で放電(放電終止電圧:2V)させて放電容量(初期放電容量)を測定し、更に、前記充電条件で充電を行って電池を満充電状態とした。いずれの電池も初期放電容量は30mAhであった。
【0101】
満充電状態とした各電池を、85℃で10日間貯蔵した後、室温まで冷却してから、30mAの定電流で放電(放電終止電圧:2V)させた。更に、前記充電条件での充電と、30mAでの放電(放電終止電圧:2V)を行い、高温貯蔵後の放電容量(回復容量)を測定した。初期放電容量に対する回復容量の割合により、各電池の高温貯蔵特性を評価した。
【0102】
<充放電サイクル特性>
実施例1、2および比較例1の各電池について、定電流(15mA)−定電圧(4.0V)充電(ただし、充電電流が1.5mAまで低下した時点で充電を終止)、および、30mAの電流値で24分間の放電(放電容量:12mAh)による充放電サイクルを繰り返した。放電終了時の電池電圧が2Vより低くなるまでのサイクル数により、各電池の充放電サイクル特性を評価した。
【0103】
各電池の評価結果を表1に示す。表1において、「負極の平坦性」では、負極の変形はほとんど認められず平坦性が維持されていた場合を「◎」で示し、若干の変形が生じているもののほぼ平坦性が維持されていた場合を「○」で示し、負極が大きく湾曲していて平坦性が維持されていなかった場合を「×」で示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示す通り、Liと合金化しない金属基材層と、その両面のそれぞれに接合されたAl活性層(表面側にLi−Al合金が形成されたAl活性層)とを含有する積層体で構成された負極を有する実施例1、2の非水電解液電池は、充電を行っても負極の平坦性が良好に維持されており、また、高温貯蔵後の回復容量の割合が高く優れた高温貯蔵特性を有しており、更に、充放電サイクル特性評価時のサイクル数が比較的多く繰り返しの充電も可能であった。前記実施例の電池では、Al活性層の面積(総面積)が約20cm
2と大きいため、金属基材層の強度が電池の特性に及ぼす影響が大きくなり、実施例1の電池よりも実施例2の電池の方が高温貯蔵特性および充放電サイクル特性が優れる結果となった。
【0106】
これに対し、金属基材層の片面にのみAl活性層が接合されている積層体で構成された負極を有する比較例1の電池は、充電後の負極の平坦性が維持されておらず、高温貯蔵特性が劣っており、充放電サイクル特性評価時のサイクル数も少なかった。
【0107】
比較例2
厚さ30μmのCu箔の片面に、厚さ100μmのAl箔を積層したクラッド材(積層金属箔)のAl層の表面に、厚さ50μmのLi箔を重ね、これを円形に打ち抜いて負極用の積層体とした。
【0108】
一方、正極は、コバルト酸リチウム:97質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部と、バインダであるPVDF:1.5質量部とを、NMPに分散させたスラリーを調製し、これを厚さ30μmのAl箔の片面に塗布し、乾燥し、プレス処理を行った後、これを円形に打ち抜くことにより作製した。得られた正極の正極合剤層の厚みは130μmであった。
【0109】
前記負極用積層体と前記正極とをセパレータ(PE製の微多孔膜で、厚みが16μm)を介して積層し、非水電解液(PCとDMCとを体積比1:2で含む混合溶媒に、LiBF
4を1.0mol/lの濃度で溶解させた溶液)と共に電池容器内に封入して、
図6に示す構造の2016コイン形セル(非水電解液電池)を作製した。
【0110】
ここで、
図6について説明すると、
図6は、比較例2の非水電解液電池(コイン形セル)を模式的に表す縦断面図である。非水電解液電池1においては、正極200が正極缶400の内側に収容され、その上にセパレータ300を介して負極前駆体(負極用積層体)100が配置されている。また、負極前駆体100は負極缶500の内面と接触している。なお、
図6では、負極前駆体(負極用積層体)100の各層や、正極200の各層(正極合剤層および集電体)は区別して示していない。更に、電池1の内部には非水電解液(図示しない)が注入されている。
【0111】
非水電解液電池1において、正極缶400は正極端子を兼ねており、負極缶500は負極端子を兼ねている。そして、正極缶400の開口部は、正極缶400の開口端部の内方への締め付けにより、負極缶500の周縁部に配設した樹脂製で環状のパッキング600を押圧して負極缶500の周縁部と正極缶400の開口端部の内周面とに圧接させて封口されている。すなわち、非水電解液電池1は、正極端子(正極缶400)と負極端子(負極缶500)との間に樹脂製のパッキング600が介在しており、このパッキング600によって封止されている。
【0112】
なお、比較例2のコイン形非水電解液電池は、金属基材層の片面にのみAl金属層を有するクラッド材を使用し、そのAl金属層の表面にLi箔を積層して構成した積層体を用いて形成した負極を有する例であり、また、負極に係る金属基材層を、引っ張り強度が低い材料で構成した例であるが、負極に係る金属基材層を、引っ張り強度が高い材料(Ni、TiおよびFeより選択される金属またはその合金)で構成した非水電解液電池の態様(2)においても、
図2に示す構造とすることができる。
【0113】
比較例3
厚さ100μmのAl箔の片面に、厚さ50μmのLi箔を重ね、これを円形に打ち抜き、更に厚さ30μmの円形のCu箔と重ね合わせて負極用の積層体とした以外は比較例2と同様にして、2016コイン形セルを作製した。
【0114】
比較例2および比較例3のコイン形セルについて、定電流(0.36mA)−定電圧(3.9V)充電により、充電電流が0.036mAに低下するまで充電し、初回充電効率を求めた。
【0115】
また、比較例2および比較例3のコイン形セルについて、前記条件で充電した後、−40℃の環境下で電池を静置し、電池の温度が低下してから10mAの放電電流で放電を行い、−40℃での放電特性を評価した。
【0116】
更に、比較例2および比較例3のコイン形セルについて、前記条件で充電した後、85℃の環境下で電池を40日間貯蔵し、貯蔵後の電池の内部抵抗を測定して高温貯蔵特性を評価した。
【0117】
前記の各評価結果を表2および
図7に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示す通り、Al箔およびLi箔由来のAl活性層と、Cu箔からなる金属基材層とが接合している負極を有する比較例2のコイン形セルは、Al活性層と金属基材層とが接合していない負極を有する比較例3のコイン形セルに比べて、初回充電効率が高く可逆性に優れ、また高温貯蔵後の内部抵抗が低く、優れた貯蔵特性を有していた。
【0120】
更に、
図7に示す通り、比較例2のコイン形セルは、比較例3のコイン形セルに比べて−40℃での放電時の電圧が高く、放電時間も長時間となり、低温でも優れた動作特性を有する非水電解液電池であった。
【0121】
比較例2のコイン形セルは、負極のAl活性層の面積が小さいため、比較的強度の低い金属基材層(Cu箔)の片面にのみAl金属層を有するクラッド材を用いたにもかかわらず、ある程度良好な特性を有する電池となった。
【0122】
(非水電解液電池システムの評価)
実施例3
実施例1の非水電解液電池と充放電装置とを組み合わせることにより、非水電解液電池システムを構成した。
【0123】
比較例4
実施例1のクラッド材について、Al箔の厚さを10μmとした以外は、実施例と同様にして電極体を作製し、更に、この電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解液電池を作製した。
【0124】
前記非水電解液電池と充放電装置とを組み合わせることにより、非水電解液電池システムを構成した。
【0125】
比較例5
実施例1のクラッド材について、Al箔の厚さを100μmとした以外は、実施例1と同様にして電極体を作製し、更に、この電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解液電池を作製した。
【0126】
前記非水電解液電池と充放電装置とを組み合わせることにより、非水電解液電池システムを構成した。
【0127】
実施例3および比較例4、5の非水電解液電池システムを構成する電池について、それぞれ定電流(6mA)−定電圧(4.0V)充電を行い、充電電流が0.3mAまで低下した時点で充電を終止し、次いで、6mAの定電流で放電(放電終止電圧:2.0V)を行う充放電サイクルを3サイクル行い、充電後のLi含有量と放電容量とを測定した。これらの結果を表3に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
表3における「充電終了時のLiの含有量」は、LiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量を意味しており、1サイクル目の充電での値を示している。
【0130】
実施例3の非水電解液電池システムでは、2サイクル目以降も、充電後の負極におけるLiとAlとの合計を100原子%としたときのLiの含有量は、1サイクル目とほぼ同じ値となり、15〜48原子%の範囲であったため、放電容量がほぼ一定で安定しており、ある程度の回数の充放電サイクルが可能な電池システムを構成することができた。
【0131】
一方、比較例4の非水電解液電池システムでは、1サイクル目の充電後の負極におけるLiの含有量が、48原子%を超えていたため、サイクルと共に大幅な容量低下を生じた。また、比較例5の非水電解液電池システムでは、充電後の負極におけるLiの含有量が、2サイクル目以降も15原子%未満となったため、実施例3に比べて放電容量が低い値となった。
【0132】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。