特許第6139782号(P6139782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139782置換ピラゾロピリミジン化合物、及びその薬学的に許容される塩、並びにこれらの溶媒和物、立体異性体、及び互変異性体、並びにこれらを含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139782
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】置換ピラゾロピリミジン化合物、及びその薬学的に許容される塩、並びにこれらの溶媒和物、立体異性体、及び互変異性体、並びにこれらを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20170522BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C07D487/04 143
   C07D487/04CSP
   A61K31/519
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-514265(P2016-514265)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-519148(P2016-519148A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】CN2014078007
(87)【国際公開番号】WO2014187319
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/855,669
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515324567
【氏名又は名称】チャンスー メドリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン、デイビッド
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/158764(WO,A1)
【文献】 特表2011−528376(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/003629(WO,A1)
【文献】 特表2010−504324(JP,A)
【文献】 特表2010−526768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iで示される化合物及び式IIで示される化合物からなる群より選択される化合物
【化1】

【化2】
II
しくは、その薬学的に許容される塩、又は、これらの溶媒和物、立体異性体、若しくは互変異性体。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、若しくは、その薬学的に許容される塩、又は、これらの溶媒和物、立体異性体、若しくは互変異性体を含む医薬組成物。
【請求項3】
学的に許容される担体をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬剤として使用するための請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
過剰増殖疾患の治療又は予防のための請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
キナーゼシグナル伝達を制御するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項7】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)媒介性疾患を治療又は予防するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項8】
ヒト上皮成長因子受容体(HER)キナーゼ媒介性疾患の治療又は予防するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項9】
新生物を治療するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項10】
慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、又は多発性骨髄腫から選択されるがん疾患を治療するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項11】
乳癌又は肺癌を治療するための請求項2又は3に記載の医薬組成物
【請求項12】
新生物を治療するための1種以上の抗がん剤と組み合わせた請求項2又は3に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼの阻害剤、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、及び代謝産物、その製造法、並びにがんなどのキナーゼ媒介疾病及び病状を治療するためのこれら化合物の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、対象タンパク質基質のリン酸化を触媒する酵素の大規模なファミリーである。リン酸化は、通常、ATPからタンパク質基質へのリン酸基の転位反応である。タンパク質基質へのリン酸基の共通結合部位としては、例えば、チロシン、セリン、又はスレオニン残基が挙げられる。数々の細胞過程での活性のため、プロテインキナーゼは重要な治療対象となってきている。
【0003】
上皮成長因子(EGF)は広く分布している成長因子であり、がんでは、がん細胞増殖を刺激し、アポトーシスを防ぎ、浸潤及び転移を活性化し、並びに、血管形成を刺激する(非特許文献1、非特許文献2)。EGF受容体(EGFR又はErbB)は、4種の関連受容体ファミリーの1つに属する、膜貫通型チロシンキナーゼ受容体である。ヒト上皮癌の大部分は成長因子及びこのファミリーの受容体の機能的活性化を特徴とするため(非特許文献3)、EGF及びEGFRはがん治療の天然標的である。ヒト上皮成長因子受容体(HER)チロシンキナーゼファミリーは、4種の構造的に関連した細胞受容体、上皮成長因子受容体(EGFR、HER1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、及びHER4から構成される。がん、血管形成疾患、及び炎症性疾患の治療のために役立つキナーゼ阻害剤類として、キナゾリンが知られている。このため、プロテインキナーゼ阻害剤として働く小分子の同定が試みられてきた。例えば、キナゾリン誘導体(特許文献1、特許文献2、特許文献3)には、HERキナーゼ阻害剤について記載されている。
【0004】
EGFR阻害剤であるエルロチニブ及びゲフィチニブ、並びに、EGFR/HER2二重阻害剤であるラパチニブは、多発性充実性腫瘍癌に有効なFDA承認癌薬である。しかし、その有効性は治療後に頻発する薬剤耐性により制限されもする。バイパスシグナル伝達経路の上方制御に加えて、EGFRのキナーゼドメインでの点突然変異が、ゲフィチニブやエルロチニブで治療された対象で頻繁に観察される薬剤耐性機構である。獲得耐性の約50%は、EGFRキナーゼドメインでのゲートキーパー部位であるT790Mでの単一点突然変異で説明される。
【0005】
以上を鑑み、突然変異プロテインキナーゼ、例えば、EGFR−T790Mの活性を、効率を改善しつつ又は薬剤耐性を克服しつつ、阻害できる化合物が切に望まれている。
【0006】
ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)は、B細胞増殖の促進やB細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路への参加を介した生存に重要や役割を果たすので、有望な新規薬剤標的である。BCRシグナルを抑制する標的治療が、いくつかのB細胞悪性腫瘍の治療における有望な薬剤の形で、現れてきている。このため、Btk阻害剤として働く小分子の同定が試みられてきた。例えば、特許文献4は、Tecキナーゼファミリーを標的とする有用なキナーゼ阻害剤として4,6−ジ置換ピリミジン化合物を開示している。開示の化合物はBtk阻害剤を含んでいる。別種のBtk阻害剤が、特許文献5に開示されている。
【0007】
以上を鑑み、プロテインキナーゼ、例えば、ブルトン型プロテインキナーゼ(Btk)活性を、阻害できる化合物が切に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第00/177104号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0250761号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/069791号
【特許文献4】米国特許第7982036号明細書
【特許文献5】米国特許第8088781号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Citri等、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol.、7巻、505頁、2006年刊
【非特許文献2】Hynes等、Nat. Rev. Cancer、5巻、341頁、2005年刊
【非特許文献3】Ciardiello等、New Eng. J. Med.、358巻、1160頁、2008年刊
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、式Iの化合物
【化1】

又は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、若しくは代謝産物
(但し、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、F、Cl、CN、又はCFであり、
は、水素、−CHNR、又は−CH−N−ピペリジンであり、
及びRは、独立して、水素又はC−Cアルキルであり、
が水素又は−CHNRである場合、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素ではない)を提供する。
本発明は、さらに、上述の式Iの化合物と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明は、さらに、哺乳類対象に治療有効量の上述の式Iの化合物のいずれかを投与することを含む、キナーゼシグナル伝達の制御法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、式Iの化合物
【化2】

若しくは、その薬学的に許容される塩、又は、これらの溶媒和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、若しくは代謝産物
(但し、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、F、Cl、CN、又はCFであり、
は、水素、−CHNR、又は−CH−N−ピペリジンであり、
及びRは、独立して、水素又はC−Cアルキルであり、
が水素又は−CHNRである場合、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素ではない)を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、R及びRは独立して水素、F、又はClである。
【0013】
別の実施形態では、RはF又はClである。
【0014】
いくつかの実施形態では、R又はRはF又はClである。
【0015】
別の実施形態では、RはF又はClである。
【0016】
別の実施形態では、RはCFである。
【0017】
いくつかの実施形態では、R、R、R、R、及びRは独立して水素であり、R及びRは独立して水素、F、又はClであり、R及びRは共に水素とはならない。
【0018】
ある実施形態では、非限定的に以下からなる群より選択される化合物を提供する。
1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
など、又は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、若しくは代謝産物。いくつかの実施形態では、式Iの化合物と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。ある実施形態では、本組成物はプロテインキナーゼにより制御される疾病の治療のためのものである。ある実施形態では、本組成物は過剰増殖疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、さらに、抗新生物剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、又はこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、本医薬組成物は、経口、非経口、又は静脈内投与に適している。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳類対象に治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む、キナーゼシグナル伝達の制御法を提供する。
【0020】
別の実施形態では、哺乳類対象に治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)媒介疾患の治療又は予防法が提供される。
【0021】
さらに別の態様では、哺乳類対象に治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む、ヒト上皮成長因子受容体(HER)キナーゼの阻害法が提供される。
【0022】
別の実施形態では、治療の必要な哺乳類対象に治療有効量の式Iの化合物を投与することを含む新生物の治療法が提供される。ある実施形態では、新生物は、B細胞悪性腫瘍、肝臓癌、皮膚癌、白血病、結腸カルシノーマ、腎臓細胞カルシノーマ、胃腸間質癌、充実性腫瘍癌、骨髄腫、乳癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、肝細胞カルシノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、及び前立腺癌から選ばれる。ある実施形態では、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、及び多発性骨髄腫、乳癌、又は肺癌である。
【0023】
(定義)
『アルキル』という用語は、炭素−炭素単結合のみを含み、非置換でも又は任意に1つ以上の官能基で置換されていてもよい、直鎖、分岐、及び環状の炭化水素基を含むことを意図している。代表例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、及びシクロヘキシルが挙げられ、また、これらはすべて任意で置換されていてもよい。アルキル基の好ましい鎖長は1−6炭素原子である。C−Cアルキルは、C、C、C、C、C、及びCアルキル基を含むことを意図している。アルキルは置換されていても非置換でもよい。典型的な置換基としては、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、シリル、アミノ及び−NR、(但し、R及びRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、アセチル、スルホニル、トリフルオロメタンスルホニル及び、合計で5又は6員のヘテロ脂環式環からなる群より選ばれる)が挙げられる。置換アルキル基を例示すると、限定されるものではないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル(hydoxymethyl)、メトキシメチル、2−フルオロエチル、2−メトキシエチルなどが挙げられる。
【0024】
『アルコキシ』という用語は、−O−(アルキル)基又は−O−(非置換シクロアルキル)基の両方を指す。C−Cアルコキシは、C−Cアルキル基(但し、C−Cアルキルは上で定義した通り)を含むことを意図している。代表例としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0025】
本発明は、本発明に係る化合物を同位体標識した(1つ以上の原子が、同じ原子数を有し且つ天然で通常みられる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子に置換されている)ものも含む。本発明に係る化合物に含めるのに適した同位体の例としては、重水素などの水素の同位体及び13Cなどの炭素の同位体が挙げられる。本発明に係る同位体標識化合物のあるもの、例えば、放射性同位体を取り込んだものなどは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究に役立つ。重水素などの重い同位体による置換は、代謝安定性がより高いことから、例えば、生体内での半減期の増加や、服用要求量の減少などの、ある種の治療上の有益性をもたらし得るため、好ましい場合もあり得る。本発明に係る同位体標識は、通常、当業者にとって周知の従来技術により、又は、本明細書に記載の処理と同様の処理により、普通用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて、作ることができる。
【0026】
『含む(comprising)』という用語は、開放的であることを意味し、示した成分を包含するものの他の要素を排除しない。
【0027】
『薬学的に許容される』という用語は、式Iの化合物を指して用いられる場合、対象への投与に安全な化合物の形態を指すことを意図している。例えば、経口摂取又は任意の投与経路を介した哺乳類での使用が、アメリカ食品医薬品局(FDA)などの行政当局又は監督機関により認可されている、遊離塩基、塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、又は誘導体の形態の式I−IIの化合物が、薬学的に許容されるものである。
【0028】
式Iの化合物中には、遊離塩基化合物の薬学的に許容される塩の形態が含まれる。『薬学的に許容される塩』という用語は、監督機関により認可されており、アルカリ金属塩の形成、及び、遊離酸又は遊離塩基の付加塩の形成に一般的に用いられる塩を包含する。塩は、イオン会合、電荷間相互作用、共有結合、錯化、配位(coodination)などにより形成される。塩の性質は、薬学的に許容されるものである限り、重要ではない。
【0029】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、該化合物を医薬組成物として投与することで対象を治療するために用いられる。このため、一実施形態では、本化合物は、以下でより詳細に説明する適切な組成物を形成するために、担体、希釈剤、又は補助剤をはじめとする1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わされる。
【0030】
『賦形剤』という用語は、本明細書では、任意の、薬学的に許容される、添加剤、担体、補助剤、又は医薬有効成分(API)を除く他の適切な成分を示し、通常、製剤化及び/又は投与を目的として配合されている。『希釈剤』及び『補助剤』の定義は後述する。
【0031】
『治療する』、『治療する(こと)』、『治療』、及び『療法』という用語は、本明細書では、限定されるものではないものの、治癒的療法及び予防的療法をはじめとする療法を指す。予防治療は、一般的に、個体の疾患の開始を完全に防ぐこと、又は、疾患の前臨床病期(pre−clinically evident stage)の開始を遅らせることのいずれかからなる。
【0032】
『有効量』という言葉は、代替的治療に通常関連する有害副作用を避けつつ各剤単特での治療によって疾患の重篤性や発症頻度を改善するという目的を達成する各剤の量を定量化したものを意図している。一実施形態では、有効量は、単回服用又は複数回服用の形態で投与される。
【0033】
保護基による官能基の保護、保護基自身、及び(一般的に『脱保護』と呼ばれる)その脱離反応については、例えば、J.F.W. McOmie著『Protective Groups in Organic Chemistry』(Plenum Press、ロンドン及びニューヨーク、1973年刊)、T.W. Greene及びP.G.M. Wuts著『Protective Groups in Organic Synthesis』(Wiley、第3版、John Wiley and Sons、1999年刊)、E. Gross及びJ. Meienhofer著『The Peptides』(第3巻、Academic Press、ロンドン及びニューヨーク、1981年刊)などの標準的な参考研究に記載されている。
【0034】
本発明は、さらに、最終的に望まれる化合物を得る前に、単離されているか否かを問わず、記載した合成手順から産生される構造を含む『中間体』化合物を包含する。一時的な出発材料から工程を実施することにより得られる構造、記載した方法の任意の段階から分岐して得られる構造、及び反応条件下で出発材料を形成する構造の全てが、本発明に含まれる『中間体』である。さらに、反応性誘導体又は塩の形態の出発材料を用いて製造した又は本発明に係る方法で入手可能な化合物により製造した構造及び本発明に係る化合物のその場での(in situ)処理により得られる構造もまた本発明の範囲内にある。
【0035】
本発明の出発材料は、周知の市販のもの、又は、本技術分野で周知の方法若しくは類似の方法で合成可能なもののいずれかである。多くの出発材料は周知の処理により製造してもよく、具体的には、実施例に記載の処理を用いることで製造可能である。出発材料を合成する際、いくつかの場合、必要であれば官能基は適切な保護基により保護される。保護基やその導入及び脱離については、上述した通りである。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明に係る化合物は複数の互変異性体の形態でも表される。本発明は本明細書に記載の化合物の全ての互変異性体を含むことをここに明記する。
【0037】
一実施形態における化合物は、シス若しくはトランス又はE若しくはZ二重結合立体異性体の形態でも生じる。これら化合物のこうした立体異性体の形態の全てが本発明に含まれることをここに明記する。
【0038】
(適応症)
本発明は、限定されるものではないものの、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)又は/及びEGFR−T790Mキナーゼを含む、1つ以上のシグナル伝達経路を調節可能な化合物を提供する。『調節』という用語は、ある経路(又はその構成要素)の機能活性を当該化合物非存在下の通常の活性と比べて変化させることを意味する。その影響としては、増加、アゴナイズ、増強、強化、促進、刺激、漸減、遮断、阻害、減少、縮小、アンタゴナイズなどの任意の質又は程度の調節が挙げられる。
【0039】
また、本発明に係る化合物は、限定されるものではないものの、細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、腫瘍細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、腫瘍退縮、上皮細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、血管形成(血管成長)、リンパ管形成(リンパ管成長)、及び/又は血液生成(例えば、T及びB細胞成熟、樹状細胞成熟など)といった過程の1つ以上を調節するものであってもよい。
【0040】
如何なる理論や作用機序にも拘束されることを望むものではないものの、本発明に係る化合物はキナーゼ活性を調節する能力を有することが分かった。しかし、本発明に係る方法は、如何なる特定の機序にも又は化合物が如何にしてその治療効果を成し遂げるのかにも限定されるものではない。『キナーゼ活性』という言葉は、アデノシン三リン酸(ATP)のγリン酸をタンパク質基質のアミノ酸残基(例えば、セリン、スレオニン、又はチロシン)に転移させる酵素活性を意味している。化合物は、例えば、キナーゼのATP結合ポケットに向かうATPと直接競合すること、活性に影響する酵素の構造の立体構造変化をなすこと(例えば、生物学的活性を有する三次元構造を乱すこと)、キナーゼに結合しキナーゼを不活性型構造に固定すること等により、キナーゼ活性を阻害する等して、キナーゼ活性を調節し得る。
【0041】
(投与経路)
適切な投与経路としては、限定されるものではないものの、経口、静脈内、直腸、エアロゾル、非経口、眼、経肺、経粘膜、経皮、膣、耳、鼻、及び局所投与が挙げられる。さらに、あくまで例示ではあるが、非経口送達は、筋肉内、皮下、静脈内、髄内への注射、並びに、髄腔内、直接心室内、腹腔内、リンパ内、及び鼻腔内への投与を含む。
【0042】
本発明に係る化合物は経口投与されてもよい。経口投与は化合物が消化管に進入する嚥下を含んでもよいし、また、化合物が口中から直接血流に進入する頬内又は舌下投与を採用してもよい。経口投与に適した製剤としては、錠剤などの固体製剤、顆粒、液体、又は粉末を含むカプセル、トローチ(液体充填されたものを含む)、チューズ、多重及びナノ顆粒、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム(粘液付着性のものを含む)、胚珠、スプレー、並びに液体製剤が挙げられる。
【0043】
液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられる。こうした製剤は、軟又は硬カプセル内で充填剤として用いてもよく、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適切な油など、並びに1種以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。液体製剤は、例えば小袋などの固体から再構成して製造されるものでもよい。
【0044】
本発明に係る化合物は、『Expert Opinion in Therapeutic Patents』11巻6号、981−986頁、Liang及びChen著、2001年刊に記載されているような、速溶性、速崩性の服用形態で用いてもよい。当該文献の内容を参照により本明細書で援用する。
【0045】
(組み合わせ)
本発明に係る化合物は単独の活性医薬剤として服用又は投与できるものの、それを1種以上の本発明に係る化合物と組み合わせて又は他の剤と併用して用いることもできる。組み合わせて投与する場合、医薬剤は、同時に投与される又は異時に順次投与される個別の組成物として製剤化でき、また、医薬剤は単一の組成物として与えることもできる。
【0046】
いくつかの実施形態では、がんをはじめとする増殖疾患などのアンドロゲン受容体依存性又はアンドロゲン受容体媒介性病状又は疾病の治療法は、哺乳類に、式Iの化合物を、あくまで例示ではあるが、アレムツズマブ、三酸化二ヒ素、アスパラギナーゼ(ペギレート化されたもの又はされていないもの)、ベバシズマブ、セツキシマブ、シスプラチンなどの白金系化合物、クラドリビン、ダウノルビシン/ドキソルビシン/イダルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、ゲムツズマブ、メトトレキサート、タキソール、テモゾロミド、チオグアニン、ホルモン含有薬剤類(抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、ゴナドトロピン放出ホルモン類似剤)、インターフェロン(αインターフェロンなど)、ニトロゲンマスタード(ブスルファン、メルファラン、メクロレタミンなど)、レチノイド(トレチノインなど)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン、トポテカンなど)、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィニチニブ(gefinitinib)、イマチニブなど)、これらの治療により誘導される兆候又は症状を治療するための剤(アロプリノール、フィルグラスチム、グラニセトロン/オンダンセトロン/パロノセトロン、ドロナビノール)から選択される少なくとも1種の追加剤と組み合わせて投与することを含む。
【0047】
特に、いくつかの実施形態で、本発明に係る化合物の投与は、がんの予防又は治療の分野で当業者に周知な追加の治療と併用して行う。上述の記載はあくまで本発明の例示に過ぎず、本発明を本明細書に開示した化合物、組成物、及び方法に限定することを意図するものではない。
【0048】
(化合物の合成)
式Iの化合物は、当業者に示す以下のスキームに記載した手順で合成される(但し、置換基は特記のない限り上述の式Iで定義したものである)。以下に記載の合成法はあくまで例示であり、本発明に係る化合物は当業者であれば理解できるような代替的な経路で合成してもよい。化合物1は市販されており、また、化合物2は市販、文献公知であり、あるいは、これらは以下の同様の文献公知の手順により容易に製造できる。化合物1と化合物2とのパラジウム触媒クロスカップリング反応は化合物3の合成につながった。光延反応を介した化合物3と化合物4との間の反応とそれに続くBoc基の脱保護により化合物5が得られた。化合物5を化合物6でアシル化することにより式Iに記載の化合物7が生成された(スキーム1)。
(スキーム1)
【化3】
化合物3の代替的な製造法をスキーム2に記載する。化合物1とボロン酸エステル8とのパラジウム触媒クロスカップリング反応により化合物3が得られた。
(スキーム2)
【化4】
【0049】
化合物12の製造法をスキーム3に記載する。化合物1Aと化合物9とのパラジウム触媒反応により化合物10が得られた。光延反応を介した化合物10と化合物4との間のカップリング反応により化合物11が得られた。化合物11のBoc基の脱保護とそれに続く塩化アクリロイルによるアシル化により化合物12が得られた。
(スキーム3)
【化5】
【0050】
化合物16の合成(スキーム4)は、スキーム3に記載の化合物12を合成するために用いた手順と同様の手順によって行った。
(スキーム4)
【化6】
【0051】
(実施形態)
以下の詳細な記載は、例示を目的に提示するに過ぎず、発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0052】
(プロトンNMRスペクトル)
特記のない限り、全HNMRスペクトルはVarianシリーズのMercury300、400MHz機又はBrukerシリーズ400MHz機で測定した。解析後、観察した全プロトンを適切な溶媒中でのテトラメチルシラン(TMS)又は他の内部基準からの低磁場シフト(百万分の一、ppm)として示した。
【0053】
(略語)
DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
DCMはジクロロメタンを意味する。
EtNはトリエチルアミンを意味する。
THFはテトラヒドロフランを意味する。
NIはN−ヨードスクシンイミドを意味する。
EAはエチルアセテートを意味する。
DEADはジエチルアゾジカルボキシレートを意味する。
RTは室温を意味する。
【0054】
(実施例1:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物17)の合成)
【化7】
1)DMF(50mL)中に溶かした1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(5.0g、37mmol、1.00eq)を0℃まで冷やした。この溶液に、NIS(6.1g、38.9mmol、1.05eq)を少しずつ加えた。60℃で24時間加熱し、その後、飽和重炭酸ナトリウム溶液を加えた。さらに30分間撹拌し、ろ過し、真空下で乾燥するまで濃縮して、5.8gの黄色固体として3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを得た。
【0055】
2)DCM(80mL)中に溶かした4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノール(8.0g、36.3mmol、1.0eq)の溶液に、4−フルオロフェニルボロン酸(12.7g、90.7mmol、2.5eq)、 Cu(OAc)(10.5g、58.08mmol、1.6eq)及びEtN(22g、217.8mmol、6.0eq)を加えた。こうしてできた溶液をRTで一晩撹拌した。固形物をろ過し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮し、エチルアセテート/ヘキサン(1:100)でのフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、6.3gの2−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを得た。
【0056】
3)窒素下で、DMF(20mL)及び水(10mL)中に溶かした2−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(6.3g、20mmol、2.15eq)、3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(2.1g、9.3mmol、1.0eq)、KCO(4.5g、32.6mmol、3.5eq)の溶液に、Pd(dppf)Cl420mgを加えた。この混合物を窒素バブルで2分間パージした後、100℃で一晩加熱した。RTまで冷やし、水(100mL)に注ぎ、エチルアセテート(6×50mL)で抽出し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、1.1gの3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを得た。
【0057】
4)0℃のTHF(10mL)に溶かしたトリフェニルホスフィン(4.2g、16mmol、5.0eq)の溶液に、DEAD(2.6g、13mmol、4.0eq)及び3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1.0g、3.2mmol、1.0eq)を加えた。30分間撹拌した後、(S)−tert−ブチル3−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート(1.19g、5.92mmol、2.0eq)を加えた。こうしてできた明るいオレンジ色の溶液をRTで一晩撹拌した。溶媒を除去し、粗生成物をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、油状で100mgの(R)−tert−ブチル3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0058】
5)ジオキサン(3mL)に溶かした(R)−tert−ブチル3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(100mg)の溶液に、飽和塩酸ジオキサン溶液(6mL)を加えた。反応混合物をRTで4時間撹拌した後、飽和重炭酸ナトリウムでpH10に調整した。この水溶液をエチルアセテート(3×50mL)で抽出して、有機層をまとめてブラインで洗い、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、60mgの(R)−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを得た。
【0059】
6)DCM(5mL)中に溶かした(R)−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(60mg、0.15mmol、1.0eq)及びEtN(45mg、0.5mmol、3.0eq)の溶液に、ゆっくりと撹拌しながら塩化アクリロイル(15mg、0.16mmol、1.1eq)を加えた。反応混合物をRTで30分間撹拌した後、水(60mL)を加えた。この水溶液をエチルアセテート(3×30mL)で抽出した。有機層をまとめてブラインで洗い、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、30mgの(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オンを得た。H−NMR(DMSO−d,400MHz):δ9.10(s,1H),8.63(s,1H),8.15(s,1H),7.72−7.36(m,3H),7.36−7.32(m,2H),7.25(s,1H),7.12−7.00(m,6H),6.26−6.21(m,1H),4.05(s,3H),3.19(m,2H),2.31(s,6H);LCMS:469[M+1]。
【0060】
(実施例2:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物18)の合成)
【化8】
1)DMF(250mL)中に溶かした4−ブロモ−2−クロロフェノール(30g、144.6mmol、1.0eq)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(44g、173.5mmol、1.2eq)及び酢酸カリウム(49.6g、506.1mmol、3.5eq)を加えた。反応混合物を窒素でパージして、ジクロロビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)(2g、2.85mmol、0.02eq)を加えた。80℃で24時間加熱し、RTまで冷やし、セライトでろ過し、エチルアセテートで洗った。固形物をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色の油として30gの2−クロロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノールを得た。
【0061】
2)DCM(160mL)に溶かした2−クロロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノール(20g、78.6mmol、1.0eq)の溶液に、フェニルボロン酸(24g、196.5mmol、2.5eq)、Cu(OAc)(22.8g、125.7mmol、1.6eq)、EtN(47.6g、471.6mmol、6.0eq)を加えた。こうしてできた溶液をRTで一晩撹拌した。固形物をろ過し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。エチルアセテート/n−ヘキサン(1:100)を用いてシリカゲルカラムで精製して、9gの2−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを得た。
【0062】
3)窒素下で、DMF(30mL)及び水(15mL)中に溶かした2−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.06g、15.3mmol、2.0eq)、3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(2g、7.66mmol、1.0eq)、及びKCO(3.7g、26.8mmol、3.5eq)の溶液に、Pd(dppf)Cl300mgを加えた。反応混合物を窒素バブルで2分間パージした後、100℃で一晩加熱した。RTまで冷やし、水(100mL)に注ぎ、エチルアセテート(6×50mL)で抽出し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.0gの3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを得た。
【0063】
4)0℃のTHF(10mL)に溶かしたトリフェニルホスフィン(3.88g、14.8mmol、5eq)の溶液に、DEAD(2.4g、11.84mmol、4eq)及び3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1g、2.96mmol、1.0eq)を加えた。30分間撹拌した後、(S)−tert−ブチル3−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート(1.19g、5.92mmol、2.0eq)を加えた。こうしてできた明るいオレンジ色の溶液をRTで一晩撹拌し、溶媒を除去し、粗生成物をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、300mgの(R)−tert−ブチル3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレートを得た。
【0064】
5)ジオキサン(3mL)に溶かした(R)−tert−ブチル3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(300mg)の溶液に、飽和塩酸ジオキサン溶液を加えた。反応混合物をRTで4時間撹拌した後、飽和重炭酸ナトリウムでpH10に調整した。この水溶液をエチルアセテート(3×50mL)で抽出して、有機層をまとめてブラインで洗い、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、200mgの(R)−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを得た。
【0065】
6)DCM(5mL)中に溶かした(R)−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(200mg、0.48mmol、1.0eq)及びEtN(145mg、1.44mmol、3.0eq)の溶液に、ゆっくりと塩化アクリロイル(48mg、0.53mmol、1.1eq)を加えた。反応混合物をRTで30分間撹拌した後、水(60mL)を加えた。この水溶液をエチルアセテート(3×30mL)で抽出して、有機層をまとめてブラインで洗い、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮した。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、100mgの(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オンを得た。HNMR及びLCMSH−NMR(DMSO−d,400MHz):δ9.10(s,1H),8.63(s,1H),8.15(s,1H),7.72−7.36(m,3H),7.36−7.32(m,2H),7.25(s,1H),7.12−7.00(m,6H),6.26−6.21(m,1H),4.05(s,3H),3.19(m,2H),2.31(s,6H);LCMS:469[M−1]。
【0066】
(実施例3:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物19)の合成)
【化9】
本化合物は実施例1に記載の手順と同様の手順より合成する。出発材料として3−フルオロフェノールを用いる。LCMS:459[M+1]。
【0067】
(実施例4:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物20)の合成)
【化10】
本化合物は実施例1に記載の手順と同様の手順より合成する。出発材料として2−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを用いる。LCMS:459[M+1]。
【0068】
(実施例5:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物21)の合成)
【化11】
本化合物は実施例1に記載の手順と同様の手順より合成する。出発材料として4−クロロフェノールを用いる。LCMS:475[M+1]。
【0069】
(実施例6:(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(化合物22)の合成)
【化12】
本化合物は実施例1に記載の手順と同様の手順より合成する。出発材料として2−(3−フルオロ−4−(4−メトキシフェノキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを用いる。LCMS:489[M+1]。
【0070】
(生物学的分析)
本明細書で前述したように、本発明に規定される化合物は抗増殖活性を有する。この特性は、例えば、下記の手順の1つ以上を用いて評価できる。
【0071】
被験化合物がEGFR(L858R)、EGFR(L858R、T790M)及びBTKキナーゼを阻害する能力を求めるインビトロアッセイ。
【0072】
キナーゼ標識T7ファージ株を、BL21株由来の大腸菌宿主を用いて製造した。大腸菌を対数増殖期まで増やし、T7ファージを感染させ、振盪しながら溶菌するまで32℃でインキュベートした。溶解物を遠心し、細胞残渣を除去するためろ過した。残ったキナーゼをHEK−293細胞で生産し、次に、qPCR検出のためのDNAで標識した。ストレプトアビジンで覆った電磁ビーズをビオチン化小分子リガンドで30分間室温で処理し、キナーゼアッセイのための親和性樹脂を作った。未結合のリガンドを除去し、非特異的結合を減らすため、リガンドを付加したビーズを過剰量のビオチンでブロックし、ブロック緩衝液(SeaBlock(Pierce)、1% BSA、0.05% Tween20、1mM DTT)で洗った。キナーゼ、リガンドを付加した親和性ビーズ、および被験化合物を1×結合緩衝液(20% SeaBlock、0.17×PBS、0.05% Tween20、6mM DTT)中で合わせることにより、結合反応を組み立てた。全ての反応はポリスチレン製の96ウェルプレートで最終的な体積を0.135mlとして行った。アッセイプレートを室温で浸透しながら1時間インキュベートし、親和性ビーズを洗浄緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20)で洗った。次に、ビーズを溶出緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20、0.5μM 非ビオチン化親和性リガンド)に再懸濁して、室温で浸透しながら30分間インキュベートした。溶出液中のキナーゼ濃度をqPCRで測定した。
【0073】
各試験化合物について100%DMSOを用いて100×の最終試験濃度で3倍の希釈系列を11点調製し、1×まで希釈してアッセイに用いた(最終DMSO濃度は1%)。Kdを10000nMの化合物頂点濃度を用いて求めた。最初に求めたKdが0.5nM(下限試験濃度)未満であれば、より低い頂点濃度から希釈系列を始めて計測を繰り返した。40000nMのKd値が報告されている場合、求めたKdが30000nM超であったことを示している。
【0074】
結合定数(Kd)は、ヒルの式(反応=バックグラウンド+(シグナル−バックグランド)/(1+(Kdヒル勾配/用量ヒル勾配)))を用いて標準的な用量反応曲線から計算した。ヒル勾配は−1とした。曲線は非線形最小二乗法を用いてレーベンバーグ・マーカートアルゴリズムであてはめた。
【0075】
以下の表1は、本発明の代表的な化合物と、EGFR(L858R)、EGFR(L858R、T790M)、及びBTKに対するその阻害活性を示している。
【表1】
【0076】
細胞増殖アッセイを用いてNCI−H1975がん細胞株に対して代表的な数種の化合物をアッセイした。
1.96ウェルプレートに、ウェル毎に5×10の細胞を含む5%FBS含有培地100μlをまいた。
2.24時間後、様々な濃度で化合物を含みFBSを含まない100μlの新鮮な培地を各ウェルに加えた。
3.細胞を化合物で72時間処理した後、20μlのMTT(5mg/ml)を各ウェルに加え、その後、アッセイプレートを37℃でさらに4時間インキュベートした。
4.アッセイプレートを800gで10分遠心した。培地を吸引し、150μlのDMSOを各ウェルに加えた。プレートを10分間ゆるやかに振盪した。
5.プレートリーダーで570nmの吸光度を測定した。
6.IR%=(WC−WT)/WC×100%
【0077】
以下の表2は、本発明の代表的な化合物と、NCI−H1975細胞増殖アッセイでのその活性を示している。
【0078】
【表2】
【0079】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年5月21日に出願された米国仮出願第61/855,669号の優先権の利益を主張する。当該仮出願の内容を参照により本明細書で援用する。
[付記]
[付記1]
以下の式I
【化13】

に基づく化合物、若しくは、その薬学的に許容される塩、又は、これらの溶媒和物、プロドラッグ、立体異性体、互変異性体、若しくは代謝産物
(但し、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、F、Cl、CN、又はCFであり、
は、水素、−CHNR、又は−CH−N−ピペリジンであり、
及びRは、独立して、水素又はC−Cアルキルであり、
が水素又は−CHNRである場合、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素ではない)。
[付記2]
及びRは独立して、水素、F、又はClである、付記1に記載の化合物。
[付記3]
はF又はClである、付記1に記載の化合物。
[付記4]
又はRはF又はClである、付記1に記載の化合物。
[付記5]
はF又はClである、付記1に記載の化合物。
[付記6]
はCFである、付記1に記載の化合物。
[付記7]
、R、R、R、及びRは独立して水素であり、R及びRは独立して水素、F、又はClであり、R及びRは共に水素とはならない、付記1に記載の化合物。
[付記8]
1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3、4−ジクロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)−3−メチルフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−フルオロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(3−クロロ−4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(3−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、
(E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
(R,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、及び
(S,E)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−(4−フルオロフェノキシ)フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピペリジン−1−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エン−1−オン、
からなる群より選択される化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物。
[付記9]
付記1から8のいずれか1つに記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[付記10]
薬剤として使用するための、付記1から8のいずれか1つに記載の化合物、又は、付記9に記載の医薬組成物。
[付記11]
過剰増殖疾患の治療又は予防のための、付記1から8のいずれか1つに記載の化合物、又は、付記9に記載の医薬組成物の使用。
[付記12]
キナーゼシグナル伝達を制御するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記13]
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)媒介性疾患を治療又は予防するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記14]
ヒト上皮成長因子受容体(HER)キナーゼ媒介性疾患の治療又は予防するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記15]
新生物を治療するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記16]
慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、又は多発性骨髄腫から選択されるがん疾患を治療するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記17]
乳癌又は肺癌を治療するための付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。
[付記18]
新生物を治療するための1種以上の抗がん剤と組み合わせた付記1から8のいずれか1つに記載の化合物の使用。