(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症は、環境中(大気、水、土壌、動物など)に存在する病原体であるウイルスが、ヒトの体内に侵入することで引き起こされる感染性疾患であって、局地的な流行で終息することもあるが、動物(特にヒト)の移動によって世界的な規模で感染が拡大し、公衆衛生上の問題となることがある。
ウイルスは、一般に約0.02〜0.3μmの大きさからなる微小な寄生体であって、主にタンパク質の殻(カプシド)と、その殻内部にある核酸(RNA又はDNA)から構成されている。
ウイルスは、その複製については完全に細胞に依存しており、まず宿主細胞に吸着して細胞内に侵入する。そして、細胞内でDNAやRNAを放出(脱殻)して複製されるが、その過程では特異的酵素を必要とする。ウイルスに感染した宿主細胞は、正常に機能できなくなって通常は死滅し、その宿主細胞から新しいウイルスが放出されて他の宿主細胞へさらに感染する。
ウイルスは、ゲノムとしてDNAを有するDNAウイルスと、RNAを有するRNAウイルスとに大別され、RNAウイルスの中には、代表的なウイルスとして呼吸器疾患を引き起こすインフルエンザウイルスのほか、消化器疾患を引き起こすロタウイルス及びノロウイルスが知られている。
【0003】
ロタウイルスは、消化器疾患である感染性胃腸炎を引き起こすウイルスであって、一般に乳児下痢症や嘔吐下痢症の原因として知られている。特に、冬季に見られる乳児下痢症は、主に2歳以下の幼児に対して発熱、嘔吐、下痢及び脱水症状を引き起こす重症の下痢症疾患である。
わが国では、ロタウイルス胃腸炎による年間の患者数は約80万人、入院者数は約7〜8万人に及ぶと推計されており、毎年数名の死亡者が報告されている。ロタウイルスは感染力が非常に強く、衛生環境の整った先進国であっても、概ね5歳までにほぼ100%のヒトがロタウイルスに一度は感染すると考えられている。アメリカ合衆国では年間約50万人以上が主に下痢症状で受診し、特に小児は重篤な下痢を起こし易く、罹患患者の約10%は入院すると言われている。地域差があると考えられるが、全世界で毎年約70万人程度が亡くなっていると考えられている(非特許文献1参照)。
先進国の疫学調査によると、衛生状態の改善ではロタウイルスの有病率を減少させることはできないとされている。また、ロタウイルスに対するワクチンが一応開発されているものの、ワクチンの無効な型や組み替え体が存在するため、それらの対策が求められている。そこで、新規メカニズムのロタウイルス治療剤の開発が期待されている。
【0004】
また、ノロウイルスは、消化器疾患である感染性胃腸炎を引き起こすウイルスであって、カキなどの貝類の摂食による食中毒の原因になるほか、感染したヒトの糞便や吐瀉物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介して経口感染する。ノロウイルス属による集団感染は、世界各地の学校や乳幼児施設、高齢者施設などで散発的に発生しており、脱水症状から重症となって死亡する例もある。
ノロウイルス感染症は近年増加傾向にあり、ノロウイルスは変異を繰り返して、ヒトからヒトへ感染するよう変異することがあり、新型のノロウイルスに対する抗体をもたないために大流行することが多い。しかしながら、ノロウイルスに対するワクチンは、一部有効性が認められるものもあるがまだ開発途上にあって、ノロウイルスワクチンの開発や、新規メカニズムのノロウイルス治療剤の開発が期待されている。
【0005】
一方で、食糧、飼料、燃料等としての利用が有望視されている生物資源として、ユーグレナ(属名:Euglena,和名:ミドリムシ)が注目されている。
ユーグレナは、ビタミン,ミネラル,アミノ酸,不飽和脂肪酸など、人間が生きていくために必要な栄養素の大半に該当する59種類もの栄養素を備え、多種類の栄養素をバランスよく摂取するためのサプリメントとしての利用や、必要な栄養素を摂取できない貧困地域での食糧供給源としての利用の可能性が提案されている。
【0006】
ユーグレナは、食物連鎖の最底辺に位置し、捕食者により捕食されることや、光、温度条件、撹拌速度などの培養条件が他の微生物に比べて難しいなどの理由から、大量培養が難しいとされてきたが、近年、本発明者らの鋭意研究によって、大量培養技術が確立され、ユーグレナ及びユーグレナから抽出されるパラミロンの大量供給の途が開かれた。
ユーグレナは、鞭毛運動をする動物的性質をもちながら、同時に植物として葉緑体を持ち光合成を行うユニークな生物であり、ユーグレナ自体やユーグレナ由来の物質に、多くの機能性があることが期待されている。
そのため、大量供給可能となったユーグレナ及びパラミロン等のユーグレナ由来物質の機能や、機能性発現のメカニズムの解明、ひいては、これらの物質の利用法等の開発が望まれている。
【0007】
例えば、特許文献1では、ユーグレナ由来物質を有効成分とし、インフルエンザウイルス感染症の予防又は治療に用いられる抗ウイルス剤が挙げられている。
具体的には、ユーグレナ又はパラミロンを経口摂取させたマウスでは、コントロールのマウスと比較して、インフルエンザウイルス感染後の生存率が有意に高く、ウイルス力価が低下したことが明らかとなっている。
また特許文献2では、ユーグレナ由来のパラミロンを硫酸化して得られる硫酸化パラミロンを有効成分とするレトロウイルス感染症の治療剤が挙げられている。
こうしたユーグレナ由来物質の抗ウイルス活性については未だ一部しか明らかになっておらず、上述した機能以外の機能の解明、これら物質の利用法等の開発が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
本実施形態は、ユーグレナ由来物質を有効成分とし、ヒトに投与することでヒト体内のウイルスの増殖を阻害して、ウイルス感染症の予防又は治療に用いられることを特徴とする抗ウイルス剤の発明に関するものである。
詳しく言うと、ウイルス増殖を阻害するためにウイルスの宿主細胞への吸着時期、また複製・放出時期において抗ウイルス活性を発揮することを特徴とする抗ウイルス剤の発明に関するものである。
【0019】
<ウイルスの概要>
ウイルスは、ゲノムがDNAであるかRNAであるかによって、DNAウイルスとRNAウイルスに大別される。
またDNAウイルスは、DNAが一本鎖であるか二本鎖であるかによって、主に2つに分類することができる。
具体的には、一本鎖のDNAウイルス(エンベロープを有しないもの)として、パルボウイルス科などが存在し、また、二本鎖のDNAウイルスのうち、エンベロープを有するものとしてヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科及びヘパドナウイルス科などが存在し、エンベロープを有しないものとしてアデノウイルス科及びパピローマウイルス科などのウイルスが存在する。
一本鎖のDNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、ヒトパルボB19(伝染性紅班)などが挙げられ、また、二本鎖のDNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、単純ヘルペス(歯肉口内炎、唇ヘルペス、性器ヘルペスウイルス感染症)、水痘・帯状疱疹、痘瘡、B型肝炎、アデノ(咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎)、ヒトパピローマなどが挙げられる。
【0020】
RNAウイルスは、RNAが一本鎖であるか二本鎖であるか、一本鎖RNAウイルスの場合にはゲノムのセンスがプラス鎖(+鎖)であるかマイナス鎖(−鎖)であるかによって、主に3つに分類することができる。
具体的には、まず一本鎖の−鎖RNAウイルス(エンベロープを有するもの)として、オルトミクソウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、ブニヤウイルス科及びアレナウイルス科などのウイルスが存在する。なお、インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属している。
これら一本鎖の−鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、狂犬病、麻疹、ムンプス(流行性耳下腺炎)、RS(呼吸器感染症)、エボラ(出血熱)、マールブルグ(出血熱)、クリミア・コンゴ出血熱、SFTS、ラッサ(出血熱)、フニン/サビア/ガナリト/マチュポ(出血熱)などが挙げられる。
【0021】
次に、一本鎖の+鎖RNAウイルスのうち、エンベロープを有するものとしてフラビウイルス科、コロナウイルス科、トガウイルス科及びレトロウイルス科などが存在し、エンベロープを有しないものとしてカリシウイルス科及びピコルナウイルス科などのウイルスが存在する。なお、ノロウイルスは、カリシウイルス科に属している。
これら一本鎖の+鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、デング、ウエストナイル、日本脳炎、C型肝炎、黄熱、SARSコロナ、MERSコロナ、風疹、ヒト免疫不全(AIDS)、ヒトTリンパ好性(成人T細胞白血病)、E型肝炎、ノロ(感染性胃腸炎)、ポリオ(急性灰白髄炎)、A型肝炎、コクサッキー(手足口病、ヘルパンギーナ)、ライノ(感冒)などが挙げられる。
【0022】
最後に、二本鎖RNAウイルス(エンベロープを有しないもの)として、レオウイルス科などが存在する。
なお、ロタウイルスは、レオウイルス科に属している。
二本鎖RNAウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患としては、ロタ(感性性胃腸炎)などが挙げられる。
【0023】
ロタウイルスは、レオウイルス科のロタウイルス属に属するRNAウイルスである。
ロタウイルス粒子は、コア、内殻及び外殻の3層で構成される二重殻粒子からなり、ウイルス粒子内にRNAポリメラーゼやキャップ合成関連酵素を有する。コアは、タンパク質VP1、VP2、VP3からなり、内殻タンパク質VP6によって覆われて一重殻粒子を形成し、さらに外殻タンパク質VP4、VP7で覆われて二重殻粒子つまり感染性ウイルス粒子を形成する。
ロタウイルスは、内殻タンパク質VP6の抗原性によってA〜H群の8種類に分類される。ヒトへの感染が報告されているロタウイルスは主にA群〜C群である。
ロタウイルスは、ヒトの小腸の腸管上皮細胞に感染し、微絨毛の配列の乱れや欠落などの組織病変の変化を引き起こす。これによって腸からの水の吸収が阻害され下痢症を発症する。通常約48時間の潜伏期間をおいて発症し、主に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こす。
主症状は下痢(血便、粘血便は伴わない)、嘔気、嘔吐、発熱、腹痛であり、通常約1〜2週間で自然に治癒するが、脱水がひどくなるとショック、電解質異常、時には死に至ることもある。
【0024】
ロタウイルスを含むRNAウイルスが細胞内で増殖する過程を説明すると、ウイルスが宿主細胞に吸着する「吸着時期」、吸着したウイルスが細胞内に侵入する「侵入時期」、侵入したウイルスが細胞内でRNAを放出する(脱殻する)「脱殻時期」、脱殻したRNAから新たなウイルスが複製される「複製時期」、そして、複製されたウイルスが細胞から放出される「放出時期」を経ていく。
ウイルスは、核酸やタンパク質の合成に必要な素材を有しておらず、必ず生体細胞を必要とする。生体細胞内に寄生して、細胞の代謝を利用して増殖し、材料、宿主細胞の代謝酵素、タンパク質合成のための宿主細胞リボソームを利用して自己成分を合成する。
例えば細菌は基本的に2分裂によって増殖していくのに対し、ウイルスは1つの粒子が感染した宿主細胞内で一気に数を増やしていく。
【0025】
「吸着時期」では、ウイルス表面にある結合タンパク質(リガンド)が、宿主細胞の表面の受容体(レセプター)に結合する。ウイルスへの感染性は、そのウイルスに対するレセプターを宿主細胞が有しているかどうかに依存する。
ロタウイルスの場合、ウイルス表面にある結合タンパク質(外殻タンパク質VP4、VP7)が細胞側にある受容体に結合する。
【0026】
「侵入時期」では、ウイルスは、一般に細胞の飲食作用(エンドサイトーシス)によって細胞内のエンドソームに取り込まれまる。そして、エンドソーム内の酸性化によって、ウイルス表面の結合タンパク質(リガンド)と、宿主細胞の細胞膜とが融合する。
ロタウイルスの場合、宿主細胞由来のプロテアーゼ(トリプシン)によって、外殻タンパク質VP4が、タンパク質VP5とタンパク質VP8に開裂している必要がある。この開裂の後、まずタンパク質VP8がシアル酸を含む分子(第1レセプター)と接触し、次にタンパク質VP5及び外殻タンパク質VP7がインテグリン(第2レセプター)と結合することによって、直接侵入あるいはエンドサイトーシスで細胞内へ侵入すると考えられている。
【0027】
「脱殻時期」では、細胞内へ侵入したウイルスの結合タンパク質(カプシド)が分解され、RNAが宿主細胞内を遊離する(脱殻)。脱殻からウイルス粒子が再構成されるまでの期間は、ウイルス粒子が見かけ上存在しなくなり、この期間を暗黒期とも言う。
ロタウイルスの場合、細胞侵入の際に外殻タンパク質VP4、VP7が除去される。外殻タンパク質VP4、VP7が外れることで、細胞内に放出された内殻タンパク質VP6の再配置が起こり、RNA転写が開始される。
【0028】
「複製時期」では、脱殻したRNAが宿主細胞の核内に取り込まれて、新たなRNAが大量に複製されると同時にRNAの転写(mRNAの合成)を経てウイルス独自のタンパク質が大量に合成される。RNAの複製の際には、RNA複製酵素となるRNA依存性のRNAポリメラーゼが機能する。また、mRNAからタンパク質への合成の際には、宿主細胞の持つリボソームなどのタンパク質合成系が機能する。複製されたRNAと、合成されたタンパク質とが細胞内で集合し、新たなウイルスが組み立てられる(複製される)。
「放出時期」では、ウイルスは、宿主細胞の細胞膜や核膜をかぶって出芽することや宿主細胞が死滅することで、宿主細胞外へ放出される(詳細は非特許文献1参照)。
【0029】
現在のところでは、ロタウイルスに効果のある一般的な抗ウイルス剤はなく、脱水症状を防止するための水分補給や、体力消耗を防ぐために栄養補給をすることが治療の中心となっている。
【0030】
ノロウイルスは、カリシウイルス科に属するRNAウイルスであって、培養細胞や実験動物への感染がいまだに成功しておらず、ヒトが唯一の感受性動物であると言われている。
ノロウイルスは、ヒトに対して嘔吐、下痢等の急性胃腸炎症状を引き起こし、症状が消失した後も約3〜7日間ほど患者の便中に排出されるため、2次感染に注意が必要である。
ノロウイルスはヒトの空腸の上皮細胞に感染して繊毛の委縮と扁平化、さらに剥離と脱落を引き起こして下痢を生じると考えられている。
潜伏期間は約24〜48時間であると考えられ、嘔気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感などを伴うこともある。特別な治療を必要とせずに軽快するが、乳幼児や高齢者およびその他、体力の弱っている者での嘔吐、下痢による脱水や窒息には注意をする必要がある。
現在のところでは、ノロウイルスに効果のある一般的な抗ウイルス剤はなく、通常、対症療法が行われており、脱水症状を防止するための水分補給や、体力消耗を防ぐために栄養補給をすることが治療の中心となっている。また臨床症状からだけではノロウイルス感染症を特定することは難しいとされている。
【0031】
<抗ウイルス剤>
本発明の抗ウイルス剤の有効成分となる「ユーグレナ由来物質」とは、ユーグレナ又はユーグレナの乾燥物や熱水抽出物のほか、ユーグレナ細胞から抽出されたパラミロン、パラミロン粉末や、パラミロンの加工品等が含まれる。
【0032】
「ユーグレナ細胞」としては、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)、特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることが望ましい。そのほか、ユーグレナ・グラシリス・クレブス、ユーグレナ・グラシリス・バルバチラス等の種、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株由来のβ−1,3−グルカナーゼ、Euglena intermedia、 Euglena piride、及びその他のユーグレナ類、例えばAstaia longaであっても良い。
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
本発明に係るユーグレナは、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、例えば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0033】
ユーグレナ細胞の培養において、培養液としては、例えば、窒素源,リン源,ミネラルなどの栄養塩類を添加した培養液、例えば、改変Cramer-Myers培地((NH4)2HPO4 1.0g/L,KH2PO4 1.0g/L,MgSO4・7H2O 0.2g/L,CaCl2・2H2O 0.02g/L,Fe2(SO2)3・7H2O 3mg/L,MnCl2・4H2O 1.8mg/L,CoSO4・7H2O 1.5mg/L,ZnSO4・7H2O 0.4mg/L,Na2MoO4・2H2O 0.2mg/L,CuSO4・5H2O 0.02g/L,チアミン塩酸塩(ビタミンB1) 0.1mg/L,シアノコバラミン(ビタミンB12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NH4)2HPO4は、(NH4)2SO4やNH3aqに変換することも可能である。また、そのほか、ユーグレナ 生理と生化学(北岡正三郎編、株式会社学会出版センター)の記載に基づき調製される公知のHutner培地,Koren-Hutner培地を用いてもよい。
【0034】
培養液のpHは好ましくは2以上、また、その上限は、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下である。pHを酸性側にすることにより、光合成微生物は他の微生物よりも優勢に生育することができるため、コンタミネーションを抑制することができる。
ユーグレナ細胞の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行っても良い。
また、ユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行っても良い。
ユーグレナ細胞の分離は、例えば培養液の遠心分離又は単純な沈降によって行われる。
【0035】
「パラミロン(paramylon)」とは、約700個のグルコースがβ−1,3−結合により重合した高分子体(β−1,3−グルカン)で多孔質であり、ユーグレナ属が含有する貯蔵多糖である。パラミロン粒子は、扁平な回転楕円体粒子であり、β−1,3−グルカン鎖がらせん状に絡まりあって形成されている。
【0036】
パラミロンは、すべての種,変種のユーグレナ細胞内に顆粒として存在し、その個数,形状,粒子の均一性は、種により特徴がある。
パラミロンは、グルコースのみからなり、E. gracilis Zの野生株と葉緑体欠損株SM-ZKから得られたパラミロンの平均重合度は、グルコース単位で約700である。
パラミロンは、水,熱水には不溶性であるが、希アルカリ,濃い酸,ジメチルスルホキシド,ホルムアルデヒド,ギ酸に溶ける。
パラミロンの平均密度は、E. gracilis Zでは、1.53、E. gracilis var. bacillaris
SM-L1では、1.63である。
なお、パラミロン((株)ユーグレナ製)の粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したときのメジアン径が、1.5〜2.5μmである。
【0037】
パラミロン粒子は、培養されたユーグレナ細胞から任意の適切な方法で単離及び微粒子状に精製され、通常、粉末体として提供されている。
例えば、パラミロン粒子は、(1)任意の適切な培地中でのユーグレナ細胞の培養;(2)当該培地からのユーグレナ細胞の分離;(3)分離されたユーグレナ細胞からのパラミロンの単離;(4)単離されたパラミロンの精製;および必要に応じて(5)冷却及びその後の凍結乾燥によって得ることができる。
パラミロンの単離は、例えば、大部分が生物分解される種類の非イオン性又は陰イオン性の界面活性剤を用いて行われる。パラミロンの精製は、実質的には単離と同時に行われる。
【0038】
なお、ユーグレナからのパラミロンの単離および精製は周知であり、例えば、E. Ziegler, "Die naturlichen und kunstlichen Aromen" Heidelberg, Germany, 1982, Chapter 4.3 "Gefriertrocken"、DE 43 28 329、又は特表2003−529538号公報に記載されている。
【0039】
「パラミロンの加工品」としては、例えば、アモルファスパラミロン、エマルジョンパラミロンが挙げられる。
「アモルファスパラミロン」とは、ユーグレナ由来の結晶性パラミロンをアモルファス化した物質である。
アモルファスパラミロンは、ユーグレナから公知の方法で生成された結晶性のパラミロンに対する相対結晶度が、1〜20%である。
但し、この相対結晶度は、特許第5612875号記載の方法により求めたものである。
つまり、アモルファスパラミロン及びパラミロンを、それぞれ、粉砕機(Retsh社製ボールミルMM400)にて、振動数20回/秒で5分間粉砕後、X線回折装置(スペクトリス社製H’PertPRO)を用い、管電圧45KV、管電流40mAにて、2θが5°乃至30°の範囲でスキャンを行い、パラミロンとアモルファスパラミロンの2θ=20°の付近の回折ピークPc,Paを得る。
このPc,Paの値を用い、アモルファスパラミロンの相対結晶度を、
アモルファスパラミロンの相対結晶度=Pa/Pc×100(%)
により算出する。
【0040】
アモルファスパラミロンは、特許第5612875号記載の方法に従い、結晶性のパラミロン粉末を、アルカリ処理した後に酸で中和し、その後洗浄、水分除去工程を経て、乾燥を行うことにより調製されるアルカリ処理物である。
【0041】
「エマルジョンパラミロン」とは、その加工方法及び物性が乳化物に類似していることから、エマルジョンパラミロンとも呼ばれる物質であって、パラミロンに水を加えて得た流体を超高圧で細孔ノズルから噴出させて被衝突物に衝突させる衝突処理を行うことにより得られ、4倍以上の水と結合して膨潤した加工パラミロンである。
エマルジョンパラミロンは、粉体等の固体に水溶性溶媒を加えたスラリーを、細孔ノズルから超高圧で噴出させて被衝突物に衝突させる公知の物性改質装置(例えば、特開2011−88108号公報、特開平6−47264号公報記載の装置)で、噴出時のノズル圧力245MPaで、1回以上衝突処理を行うことにより得ることができる。
エマルジョンパラミロンは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で粒度を測定したときのメジアン径が、パラミロンの5倍以上であり、7μm以上であって、光学電子顕微鏡により、粒子が、隣接する粒子と付着していることが観察され、パラミロンに対して4倍以上の水と結合して膨潤している。
原料パラミロンと水を混合したスラリーは、さらさらした流体であるが、エマルジョンパラミロンは、パラミロンが水分子中に分散して、粘度が増加して粘性を有し、触ったときに手に付着するような粘着性と、弾力性を有し、糊のような触感を備えている。
なお、その処理方法と物性から、得られた加工パラミロンを本明細書においてエマルジョンパラミロンと呼んでいるが、エマルジョン化しているか否かは不明であり、パラミロンが水と結合して膨潤している状態である。
【0042】
パラミロンの加工品としては、そのほか、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、硫酸化パラミロン等や、パラミロン誘導体も含まれる。
【0043】
<<ウイルス増殖阻害作用>>
抗ウイルス剤は、ユーグレナ由来物質が有するウイルス増殖の阻害作用、特にRNAウイルス増殖の阻害作用を通じて、抗ウイルス作用を発揮するものである。
具体的な作用メカニズムは、以下の通りである。
(1)ユーグレナ由来物質は、RNAウイルスの増殖過程のうち「吸着時期」において当該ウイルス表面にある結合タンパク質(リガンド)が宿主細胞表面にある受容体(レセプター)に結合する際に、当該ウイルスの宿主細胞への吸着を阻害する作用を果たす。
詳しく言うと、RNAウイルスがロタウイルスの場合、ユーグレナ由来物質が、当該ウイルスの吸着時期に関与する結合タンパク質(外殻タンパク質VP4、VP7)や特異的酵素の活性を阻害する作用を果たす。
【0044】
(2)また、ユーグレナ由来物質は、RNAウイルスの増殖過程のうち「複製時期」において複製されたRNAと、合成されたタンパク質とが集合し、新たなウイルスが組み立てられる際に、当該ウイルスの宿主細胞内での複製を阻害する作用を果たす。
詳しく言うと、RNAウイルスがロタウイルスの場合、ユーグレナ由来物質が、当該ウイルスの複製時期に関与する結合タンパク質や特異的酵素の活性を阻害する作用を果たす。
【0045】
従って、抗ウイルス剤の有効主成分となるユーグレナ由来物質は、従来の抗ウイルス剤にはない作用として、ウイルスの増殖過程のうち少なくとも「吸着時期」及び「複製時期」において当該ウイルス増殖を阻害する作用を果たす。
そのため、ウイルスの増殖過程のうち特定の一時期においてのみ抗ウイルス活性を発揮する従来の抗ウイルス剤と比較して、本抗ウイルス剤であれば、ウイルス増殖過程の前半の吸着時期であったとしても、また後半の複製時期であったとしても抗ウイルス活性を発揮することが可能となる。
【0046】
<<用途>>
本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルス感染症患者、ウイルス感染症に罹患したヒト以外の動物に投与されることで、ウイルス感染症の治療剤として、またウイルス性疾患の治療剤として用いることができる。
また、ウイルス感染症を罹患する前のヒト、ウイルス感染症予備軍のヒト、これらヒト以外の動物を対象としたウイルス感染症の予防剤として、またウイルス性疾患の予防剤として用いることもできる。
また、本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルスを病原体とする感染性胃腸炎の予防剤又は治療剤として用いることもできる。
【0047】
本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルスのうち、特にロタウイルス及びノロウイルスに感染した患者に対して投与されることが望ましい。
ロタウイルスの場合、A群ロタウイルスに感染した患者に対して投与されることが望ましく、さらに当該ウイルスがA群ロタウイルスWa株(G1P[8])であることが望ましい。
【0048】
本実施形態の抗ウイルス剤は、ウイルスのうち、特にロタウイルス及びノロウイルスに対して上記作用効果を発揮する抗ウイルス剤を含有する医薬組成物、食品組成物等の組成物等として利用することができる。
(医薬組成物)
医薬の分野では、ウイルス増殖を阻害する作用、すなわち、ウイルスの宿主細胞への吸着阻害作用、または、ウイルスの宿主細胞からの放出阻害作用を有効に発揮できる量のユーグレナ由来物質と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また外用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
【0049】
(食品組成物)
食品の分野では、ウイルス増殖を阻害する作用を生体内で発揮できる有効な量のユーグレナ由来物質を食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
すなわち、本発明は、食品の分野において、ウイルス増殖阻害用等と表示された食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
【0050】
ここで特定保健用食品とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。本発明においては、特定の保健用途としてウイルス感染症の予防、治療、ウイルス増殖の阻害、感染性胃腸炎の予防、治療などと表示して販売される食品となる。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
上記において本発明は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含み、ウイルス感染症患者、ウイルス感染症を罹患したヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品や、抗ウイルス剤栄養機能食品、抗ウイルス剤機能性表示食品として用いることができる。
また本発明は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含み、生体、例えばウイルス感染症を罹患する前のヒト、ウイルス感染症予備軍のヒト、これらヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品や、抗ウイルス剤用栄養機能食品、抗ウイルス剤用機能性表示食品として用いることができる。
【0051】
<<用法及び用量>>
本実施形態の抗ウイルス剤の用法としては、例えばロタウイルスやノロウイルスの場合、ヒトの腸内で感染し易いため、腸内で抗ウイルス剤が溶解するように(胃では溶解しないように)処方すると良い。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒又はシロップ等によって経口投与すると良い。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
ユーグレナ由来物質として、ユーグレナ・グラシリス粉末((株)ユーグレナ製)を用いた。当該ユーグレナ・グラシリス粉末100mgをエタノール1mlにて溶解し、0.45μM滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ溶液(100mg/ml)を調製した。当該溶液を抗ウイルス剤として用いた。
【0053】
<実施例2>
ユーグレナ由来物質としてのユーグレナの熱水抽出物を、以下の手順により調製した。
ユーグレナグラシリス粉末((株)ユーグレナ社製)を、常圧下、熱水で抽出処理した後、減圧濾過して残渣を分離し、熱水抽出液を得た。
調製した熱水抽出液を0.45μM滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナの熱水抽出液(原液)を得た。当該抽出液を抗ウイルス剤として用いた。
【0054】
<実施例3>
ユーグレナ由来物質としてのパラミロンを、以下の手順により調製した。
ユーグレナグラシリス粉末((株)ユーグレナ社製)を蒸留水に入れ、室温で2日間撹拌した。これを超音波処理して細胞膜を破壊し、遠心分離により粗製パラミロン粒子を回収した。回収したパラミロン粒子を1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に分散し、95℃で2時間処理し、再度遠心分離により回収したパラミロン粒子を0.1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に分散して50℃で30分間処理した。当該操作により脂質やタンパク質を除去し、その後アセトン及びエーテルで洗浄した後、50℃で乾燥して、精製パラミロン粒子を得た。
調製したパラミロン粉末100mgをジメチルスルホキシド(DMSO)1mlにて溶解し、0.45μM滅菌フィルターにて濾過することで、パラミロン溶液(100mg/ml)を得た。当該溶液を抗ウイルス剤として用いた。
【0055】
<実施例4>
ユーグレナ由来物質としてのアモルファスパラミロン(パラミロンのアルカリ処理物)を、以下の手順により調製した。
実施例2で調製したパラミロン粉末を、1Nの水酸化ナトリウム水溶液に5%(w/v)添加して溶解させ、1〜2時間スターラで撹拌して、アルカリ処理した。その後、1Nの塩酸を、パラミロン粉末が溶解した1N水酸化ナトリウム水溶液に滴下して中和した。遠心分離の後上澄みを捨て、沈殿を蒸留水で洗浄する工程を繰り返した後、沈殿したゲルを回収し、凍結させた後凍結乾燥機で凍結乾燥し、アモルファスパラミロンを得た。
調整したアモルファスパラミロン粉末10mgをジメチルスルホキシド(DMSO)1mlにて溶解し、0.45μM滅菌フィルターにて濾過することで、アモルファスパラミロン溶液(10mg/ml)を得た。当該溶液を抗ウイルス剤として用いた。
【0056】
<試験例1 ロタウイルスの増殖過程における感染阻害試験>
実施例1〜4の抗ウイルス剤を用いて、ロタウイルス増殖を阻害する作用を確認する試験を行った。宿主細胞としてMA−104細胞(アカゲザル腎細胞)を使用し、またウイルスとしてロタウイルスWa株(G1P[8])を使用し、また液体培地として10%FBS(Fetal Bovine Serum)含有のDMEM(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium)培地を使用した。
【0057】
まず、MA−104細胞を1.0×10
4cells/wellになるように24wellプレートにそれぞれ播種し、37℃、5%CO
2の条件下で24時間単層培養した。
そして培養したMA−104細胞にロタウイルスを0.1moi(感染多重度)で感染させて室温で1時間放置した(吸着させた)。
その後、液体培地に対して、実施例1のユーグレナ溶液を所定濃度含むように添加し、CO
2インキュベータにて48時間培養した。
その後、感染細胞から放出されたウイルスを含む上清を回収し、フォーカス減少法を用いて上清中のウイルス力価(FFU/ml)を測定し、ウイルス増殖阻害率(%)を算出した。また、細胞のウイルス感染を50%阻害する抗ウイルス剤の濃度(IC50)を算出した。
比較対象として、(1)実施例2のユーグレナ熱水抽出液を添加して培養したもの、(2)実施例3のパラミロン溶液を添加して培養したもの(3)実施例4のアモルファスパラミロン溶液を添加して培養したものについて、それぞれ同様にウイルス増殖阻害率を算出した。
【0058】
(試験例1の結果)
上記試験結果を解析して、ユーグレナ(実施例1)による各濃度(0.1mg/ml、1.0mg/ml、2.0mg/ml)のウイルス増殖阻害率を比較したグラフを
図1に示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に40.4%、96.8%、98.0%であって、IC50は、0.66mg/mlであった。
ウイルス増殖阻害率は、ユーグレナの濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
なお、「ユーグレナの濃度0.1mg/ml」とは、液体培地1mlに対して0.1mgのユーグレナが含まれる濃度であることを示し、言い換えれば、液体培地に対してユーグレナ溶液(100mg/ml)が0.1体積%含まれる濃度であることを示す。
【0059】
また
図2において、ユーグレナ熱水抽出物(実施例2)による各濃度(0.02mg/ml、0.04mg/ml、0.06mg/ml)のウイルス増殖阻害率を比較したグラフを示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に95.2%、94.9%、93.9%であって、IC50は、0.012mg/mlであった。
ウイルス増殖阻害率は、ユーグレナ熱水抽出物の上記全ての濃度で90%以上となった。
【0060】
また
図3において、パラミロン(実施例3)による各濃度(0.1mg/ml、1.0mg/ml、2.0mg/ml)のウイルス増殖阻害率を比較したグラフを示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に0%、17.8%、30.1%であった。
ウイルス増殖阻害率は、パラミロンの濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
【0061】
また
図4において、アモルファスパラミロン(実施例4)による各濃度(0.1mg/ml、1.0mg/ml、2.0mg/ml)のウイルス増殖阻害率を比較したグラフを示す。
各濃度のウイルス増殖阻害率は、順に3.8%、33.3%、53.4%であって、IC50は、1.74mg/mlであった。
ウイルス増殖阻害率は、アモルファスパラミロンの濃度が高くなるにつれてさらに増加した。
なお、これら試験は複数回行い、同様の再現性が得られた。
【0062】
(試験例1の考察)
試験例1の結果から、ユーグレナを添加したもの、ユーグレナ熱水抽出物を添加したものについては、全ての濃度においてロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、ユーグレナを添加したものについては、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
また、パラミロンを添加したものについては、比較的高濃度(例えば2.0mg/ml以上)になると、ロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
また、アモルファスパラミロンを添加したものについては、比較的高濃度(例えば0.1mg/ml以上)になると、ロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。また、濃度依存的にウイルス増殖を阻害する作用が高くなった。
【0063】
試験例1の結果から、ユーグレナよりも、ユーグレナ熱水抽出物を添加したもののほうが、より低い濃度でロタウイルス増殖を阻害する作用を有していることが確認された。
このことから、ユーグレナを熱水抽出処理することで多く得られる物質がロタウイルス増殖を阻害する作用を有していることが分かった。
また、パラミロン、アモルファスパラミロンよりも、ユーグレナを添加したもののほうが、より低い濃度でロタウイルス増殖を阻害する作用を有していることが確認された。
このことから、ユーグレナに含まれる物質のうち、パラミロン以外の物質がロタウイルス増殖を阻害する作用を有していることが分かった。
また、パラミロンよりも、アモルファスパラミロン(パラミロンのアルカリ処理物)を添加したもののほうが、より低い濃度でロタウイルス増殖を阻害する作用が確認された。
このことから、パラミロンをアルカリ処理して多く得られる物質がロタウイルス増殖を阻害する作用を有していることが分かった。
【0064】
試験例1の結果から、ロタウイルス増殖を阻害する作用におけるユーグレナの好適な濃度は0.1mg/ml以上であって、より好適な濃度(IC50)は0.66mg/ml以上であることが分かった。
ユーグレナ熱水抽出物の好適な濃度(IC50)は0.012mg/ml以上であることが分かった。
パラミロンの好適な濃度は2.0mg/ml以上であることが分かった。
アモルファスパラミロンの好適な濃度は1.0mg/ml以上であって、より好適な濃度(IC50)は1.74mg/ml以上であることが分かった。
【0065】
試験例1の結果から、例えばユーグレナ由来物質としてユーグレナを少なくとも0.66mg/ml以上の濃度で含有する抗ウイルス剤が、腸内で溶解するように(胃では溶解しないように)、カプセル剤、錠剤、顆粒又はシロップ等によって経口投与されると良いことが分かった。
【0066】
<試験例2 ネコカリシウイルスの不活性化試験>
実施例1の抗ウイルス剤を用いて、ネコカリシウイルスの不活性化試験を行った。
なお、ネコカリシウイルスは、細胞培養が不可能なノロウイルスの代替ウイルスとして広く使用されているウイルスである。
【0067】
(細胞及び培地)
宿主細胞としてCRFK細胞(大日本製薬株式会社)を使用し、ウイルスとしてネコカリシウイルスF9株(Feline calicivirus F−9 ATCC VR−782)を使用した。
細胞増殖培地として、イーグルMEM培地「ニッスイ」1(日水製薬株式会社)にFBSを10%加えたものを使用した。細胞維持培地として、イーグルMEM培地「ニッスイ」1にFBSを2%加えたものを使用した。
【0068】
(ウイルス浮遊液の調製)
・細胞の培養
細胞増殖培地を用い、CRFK細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
・ウイルスの接種
単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、ネコカリシウイルスを接種した。次に、細胞維持培地を加えて37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO
2濃度:5%)内で1〜5日間培養した。
・ウイルス浮遊液の調製
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000rpm/分、10分間)し、得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。
【0069】
(試験操作)
実施例1のユーグレナ粉末の検体懸濁液(99.5%エタノールを用いて調製したもの)を静置後、得られた上澄み液を細胞維持培地で希釈したものを検体溶液とした。細胞維持培地を用いて希釈した検体溶液を用いてウイルス液を10倍希釈し、ウイルス感染価を測定した。なお、対照については、細胞維持培地を用いて同様に試験した。
【0070】
(ウイルス感染価の測定)
まず、細胞増殖培地を用い、CRFK細胞を組織培養用マイクロプレート(96well)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き検体溶液または細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。
次に、作用液の希釈液0.1mlを4wellずつに接種し、37℃±1℃の炭酸ガスインキユベーター(CO
2濃度:5%)内で、4〜7日間培養した。
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウイルス感染価に換算した。
【0071】
(試験例2の結果)
試験例2の結果を表1に示す。
【表1】
表1中の「TCID
50」は、50%組織培養感染量(median tissue culture dose)を意味し、「log TCID
50/ml」は、作用液1mL当たりのTCID
50の常用対数値を示す。
なお、検体濃度0.5mg/mlでは、細胞変性効果が認められなかった。
測定は3回行い、t検定(t−test)にてp<0.05であった。
【0072】
(試験例2の考察)
試験例2の結果から、ユーグレナを添加した場合、ネコカリシウイルスを不活性化する作用が確認された。ネコカリシウイルスは、ノロウイルスの代替ウイルスであり、本試験の結果から、ユーグレナがノロウイルスを不活性化する作用を有しており、ノロウイルスに対する抗ウイルス剤として用いることができることがわかった。
【解決手段】ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、エンベロープを有さないRNAウイルス感染症の予防又は治療に用いられる抗ウイルス剤及び抗ウイルス用食品である。例えば、エンペロープを有さないRNAウイルスは、レオウイルス科に属するロタウイルスである。また例えば、ユーグレナ由来物質は、ユーグレナ、ユーグレナの熱水抽出物、パラミロン、またはパラミロンのアルカリ処理物である。