(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記曝射信号を受ける毎に、受けたときからの前記所定時間を計測するタイマーを有し、前記タイマーが前回の曝射信号に基づく前記所定時間の計測を終えたときから次の曝射信号を受けるときまで継続する許可信号を生成し、その後前記タイマーが次の前記所定時間の計測を終えるまで許可信号の生成を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線CT装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
このX線CT装置の第1の実施形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1はX線CT装置のブロック図、
図2はX線CT装置の正面図、
図3はX線CT装置を斜め後方から見たときの斜視図である。
【0011】
図1〜
図3に示すように、X線CT装置としては、医用診断に用いるX線CT装置を例に示している。X線CT装置10は、架台11、環状回転体12、回転機構(図示省略)、カバー16、冷却手段40、及びダクト45を有している。
【0012】
(架台)
架台11の内部には、環状回転体12、回転機構(図示省略)、架台制御部25及び高電圧発生部39が設けられている。架台制御部25には、高電圧発生部39が接続されている。架台制御部25の詳細については後述する。
【0013】
(環状回転体)
環状回転体12は、回転機構によって回転する。環状回転体12は、回転中心を筒軸とする円筒部123、並びに、回転中心(筒軸)に直交する正面壁124及び背面壁125を有している。
【0014】
環状回転体12には、X線管17、X線検出器18、スリップリング22、X線制御部24、放熱器26、電源27、及び、バランサ28等を含む機器が設けられている。架台11及び環状回転体12の中心部には、寝台70の天板71に載置された被検者Pを前方から挿入するための開口部15が設けられている。
【0015】
(カバー)
図2及び
図3に示すように、カバー16は、架台11および環状回転体12を覆うように形成されている。ここで、環状回転体12の両側方向、上下方向(高さ方向)、及び、体軸方向(前後方向)をX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向という場合がある。
【0016】
図2及び
図3に示すように、カバー16は、架台11の底部を覆う底カバー161と、架台11の前面部を覆う前カバー162と、架台11の後面部を覆う後カバー163と、架台11の天井部を覆う天井カバー164と、架台11の側面部を覆う側面カバー165とを有している。
【0017】
前カバー162は筒口前部162aを有している。筒口前部162aは、筒状に形成され、開口部15の略前半分をZ軸方向(体軸方向)から覆うように開口部15に前方から嵌め込まれている。後カバー163は筒口後部163aを有している。筒口後部163aは、筒状に形成され、開口部15の略後半分をZ軸方向から覆うように開口部15に後方から嵌め込まれている。
【0018】
後カバー163の上部には、後述する放熱器26からの熱をカバー16の外部に放出するための排気口163bが設けられている。
【0019】
(X線管等)
X線管17とX線検出器18とは、開口部15を中心にして対向して配置されている。X線管17から被検者Pに対してX線が曝射される。被検者Pを透過したX線はX線検出器18で検出されて電気信号に変換される。電気信号は、データ収集部(DAS)19で増幅され、デジタルデータに変換される。
【0020】
X線検出器18は、例えばシンチレータアレイ、フォトダイオードアレイから成る複数の検出素子アレイを含み、X線管17の焦点を中心とした円弧に沿って配列される。またDAS19からのデジタルデータ(投影データ)は、データ伝送部20を介してコンソール21に伝送される。
【0021】
データ伝送部20は、環状回転体12からコンソール21へ投影データを非接触で伝送するものであり、環状回転体12側に設けた送信部201と、架台11の固定部23に設けた受信部202を含み、受信部202で受信したデータをコンソール21に供給する。なお、送信部201は、円環状の回転体に取り付けられ、受信部202は円環状の固定体に取り付けられている。
【0022】
(コンソール)
コンソール21は、コンピュータシステムを構成するものであり、データ伝送部20からの投影データが前処理部31に供給される。前処理部31では投影データに対してデータ補正等の前処理を行いバスライン32上に出力する。
【0023】
バスライン32には、システム制御部33、入力部34、データ記憶部35、再構成処理部36、データ処理部37、表示部38等が接続されている。
【0024】
システム制御部33はホストコントローラとして機能し、コンソール21の各部の動作や、架台制御部25を制御する。データ記憶部35は断層画像等のデータを記憶するものであり、再構成処理部36は投影データから3D画像データを再構成する。データ処理部37は、データ記憶部35に保存された画像データまたは再構成したあとの画像データを処理する。表示部38は画像データ処理によって得られた画像等を表示する。
【0025】
入力部34はキーボード、マウス等を有し、ユーザ(医師、オペレータ等)によって操作され、データ処理する上で各種の設定を行う。また被検者の状態や検査方法等の各種情報を入力するものである。
【0026】
高電圧発生部39は、スリップリング22を介してX線制御部24を制御し、X線管17に電源27から電力を供給し、X線の曝射に必要な電力(管電圧、管電流)を与える。X線管17は、被検者Pの体軸方向に平行なスライス方向と、それに直交するチャンネル方向の2方向に広がるビームX線を発生する。ビームX線のスライス方向の広がり角をコーン角、チャンネル方向の広がり角をファン角という場合がある。
【0027】
冷却手段40は、X線管17を冷却するもので、ファン41を有している。ファン41は、放熱器26の近傍に配置され、放熱器26からの熱を、通気口122及び連通口112(
図4参照)に通してダクト45に送り出すものである。
【0028】
〔架台制御部〕
以上に、X線CT装置の基本的な構成について説明した。
次に、架台制御部25の詳細について
図5〜
図7を参照して説明する。
図5は架台制御部のブロック図である。
【0029】
図5に示すように、架台制御部25は、位置検出手段251、コンパレータ252、制御手段253、及び、照射指示手段254を有している。
【0030】
図6は、指定位置θbに回転したX線管17を示す図である。
図6に、X線管17の回転位置、例えば0°、90°、180°、270°を示す。
図9においても同様に示す。
【0031】
架台制御部25は、被検者の背面側からX線を照射するように、X線管17が指定位置θbに回転したとき、撮影手段に対して照射指示を送るように構成されている。ここで、被検者の背面側とは、例えば、
図6にL1で示すX線管17の回転位置90°−δ〜270°+δの背面曝射の期間をいう。また、撮影手段の一例としては、X線制御部24及び高電圧発生部39を含むものである。
【0032】
X線管17の回転位置が指定位置θbを含む所定範囲に入ったとき、撮影手段に対する照射指示の制御を開始すると、X線管17の回転位置(90°−δ)のときにX線の照射を開始するようになっている。ここで、所定範囲としては、たとえば、(θb±α)の範囲で表わされる。指定位置θbからX線管17の回転位置(90°−δ)までの期間がX線の照射を指示するための制御期間を
図6にL2で示す。
【0033】
位置検出手段251は、X線管17の回転位置θを検出する。位置検出手段251は、被検者Pを中心とする円軌道上におけるX線管17の位置情報を取得する。具体的には、位置検出手段251は、操作者によって撮影が開始され、環状回転体12が回転されると、環状回転体12を回転させるモータに取り付けられたエンコーダから、モータ軸の回転角度の情報や回転速度の情報を取得することで、X線管17の位置情報を取得し、X線管17が指定位置θbに回転したとき、検出信号(
図5及び
図7に”s”で示す)を出力する。位置検出手段251は、検出信号sをコンパレータ252に出力する。
【0034】
コンパレータ252は、検出信号sを予め定められた基準信号とを比較して、検出信号sが出力されたかどうかの比較結果を出力する。一例として、コンパレータ252は検出信号sのパスルカウントデータと基準カウントデータとを比較して、例えば、カウントデータが一定の幅に入っているときに、照射指示手段254にコンパレータ出力aを送り、カウントデータが一定の幅に入っていないとき、照射指示手段254にコンパレータ出力aを送らない。
【0035】
制御手段253は、撮影手段を制御するシーケンスに対応して許可信号cを照射指示手段254に出力する。ここで、シーケンスとは、制御手段253に対して時系列に連続して出力または入力される信号をいう。なお、シーケンス及びそれに対応して出力される許可信号cの詳細については後述する。
【0036】
なお、X線管17が指定位置θbに回転したとき、位置検出手段251が検出信号sを出力するようにしたが、所定範囲(θb±α)に入ったとき、検出信号sを出力するようにしてもよい。また、制御手段253は、操作部(図示省略)による入力を受けて、θb及び/またはαを調整することで、所定範囲(θb±α)を変更するように構成されてもよい。
【0037】
照射指示手段254は、制御手段253から許可信号cを受けている間のみ、コンパレータ出力aを受ける。照射指示手段254の一例としてはアンドゲートであり、許可信号cを受けている間に、コンパレータ出力aを受けたとき、X線を照射する指示信号dを撮影手段(高電圧発生部39)に出力する。撮影手段は、指示信号dを受けて、被検者の背面側からX線を照射する。
【0038】
次に、X線を照射するときのシーケンスについて
図7を参照して説明する。
図7は、X線を照射するときのタイミングチャートである。
図7の横軸に時間t、縦軸に電圧、コンパレータ出力a、曝射操作信号b、許可信号c、指示信号d、及び、検出信号sを示す。
【0039】
図7に示すように、モータを始動させると、環状回転体12が回転速度V1に達するまで加速し(加速期間)、その後、一定の回転速度V1となる(定速期間)。制御手段253は、前述したモータ軸の回転角度の情報や回転速度の情報を取得することにより、環状回転体の回転速度Vを求めることができる。
【0040】
以下に、モータを始動させてから曝射の許可信号cを出力するまでの流れを示すと、i)環状回転体12の回転速度V1が一定になる(そのときの時間を
図7に”t2”で示す)。ii)コンソール21がその状態を認識する。iii)曝射スイッチ(図示省略)が点灯する(レディ状態)。iv)曝射スイッチをオンする(そのときの時間を
図7に”t2”で示す)。それにより、曝射操作信号bが出力され(
図7参照)。v)曝射の許可信号cが出力される(
図7参照)。
【0041】
図7に示すように、照射指示手段254は、制御手段253から許可信号cを受けるまで、コンパレータ出力aを受けない。照射指示手段254は、制御手段253から許可信号cを受けている間のみ、コンパレータ出力aを受ける。照射指示手段254は、許可信号c及びコンパレータ出力aを共に受けているとき、X線を照射する指示信号dを高電圧発生部39に出力する。それにより、高速回転時においても被検者の背面の適正な位置でX線を照射することが可能となる。
【0042】
なお、前記i)として、環状回転体12の回転速度V1が一定になるを代えて、モータを始動してから環状回転体12が回転速度V1に達するまでの時間経過がt1(
図7に示す)になるときにしてもよい。それにより、ii)では、時間t1になったことをコンソール21が認識する。制御手段253は、前述したモータ軸の回転角度の情報や回転速度の情報を取得することにより、時間t1を求めることができる。
【0043】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、X線管17が指定位置θbに回転したとき、位置検出手段251が検出信号sを出力するものを示し、さらに、X線管17が所定範囲(θb±α)に入ったとき、検出信号sを出力するようにしてもよいことを述べた。
【0044】
この所定範囲を設けたことにより、検出信号sが確実に出力されるメリットがあるものの、所定範囲内で検出信号sが複数回出力されてしまい、X線が複数回曝射されるおそれがある。検出信号sの複数回の出力を防止するための対策としては、X線が曝射されてからX線管17が所定量回転されたときにのみと、位置検出手段251から検出信号sが出力されるようにすればよい。
【0045】
次に、第2の実施形態に係る架台制御部25について
図8及び
図9を参照して説明する。
【0046】
第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成について説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0047】
第1の実施形態では、制御手段253から許可信号cを受けている間のみ、照射指示手段254がコンパレータ出力aを受けるように構成された架台制御部25ついて説明したが、第2の実施形態では、さらに、X線が曝射されてからX線管17が所定量回転されたときのみ、照射指示手段254がコンパレータ出力aを受けるように構成された架台制御部25ついて説明する。X線管17が所定量回転されないと、コンパレータ出力aが受け付けられないことにより、所定範囲(θb±α)内でX線が複数回曝射されるのを防止することが可能となるからである。
【0048】
図8は、架台制御部25のブロック図である。
図8に示すように、架台制御部25は、位置検出手段251、コンパレータ252、制御手段253、照射指示手段254に加えて、タイマー255を有している。タイマー255は、制御手段253内に設けられてもよく、制御手段253と別個に設けられても良い。
【0049】
X線管17が回転されてからの所要時間(経過時間)t3は、タイマー255により計測することが可能である。制御手段253は、所要時間t3が予め定められた時間Tを経過していると判断したとき、経過信号eを出力する。
【0050】
なお、時間Tに一定の範囲を設けるようにしてもよい。時間Tの範囲としては、例えば、(T±γ)で表される。すなわち、制御手段253は、T−γ≦t3≦T+γのときのみ、経過信号eを出力する。
【0051】
また、制御手段253は、操作部(図示省略)による入力を受けて、時間Tの範囲を変更するように構成されてもよい。
【0052】
経過信号eを制御信号として用いることにより、所定範囲(θb±α)内でX線が複数回曝射されるのを防止する手段が構成される。
【0053】
一例として防止手段は、経過信号eを受けている場合のみ、位置検出手段251が検出信号sをコンパレータ252に対して出力するように構成されている。他の例として防止手段は、経過信号eを受けている場合のみ、位置検出手段251からの検出信号sをコンパレータ252が受けるように構成されている。
【0054】
さらに、他の例として防止手段は、経過信号eを受けている場合のみ、コンパレータ252がコンパレータ出力aを照射指示手段254に送るように構成されている。さらに、他の例として防止手段は、経過信号eを受けている場合のみ、照射指示手段254がコンパレータ出力aを受けるように構成されている。
【0055】
次に、X線を照射するときの動作について
図9を参照して説明する。
図9は、X線を照射するときのタイミングチャートである。
図9の横軸に時間t、縦軸に、コンパレータ出力a、曝射操作信号b、許可信号c、指示信号d、経過信号e、曝射信号f、及び検出信号sを示す。
以下、経過信号eを受けている場合のみ、位置検出手段251が検出信号sをコンパレータ252に対して出力するように構成される防止手段の例を挙げて、説明する。
【0056】
スキャン開始時(
図9に示すt4)に、操作部の入力により、曝射操作信号bを制御手段253に出力すると、制御手段253は、許可信号cを照射指示手段254に出力する。
【0057】
X線管17が所定位置θbに位置すると、位置検出手段251は、検出信号sを出力する。コンパレータ252は、検出信号sのパルスカウントデータと基準のカウントデータとを比較して、カウントデータが一定の幅に入っているときに、コンパレータ出力aを照射指示手段254に送る。
【0058】
照射指示手段254は、許可信号c及びコンパレータ出力aを受けて、指示信号dを高電圧発生部39に出力する。それにより、撮影手段がX線を曝射する。
【0059】
制御手段253は、高電圧発生部39から曝射信号fを受けて、X線を曝射したときからの所要時間をタイマー255により計測する。また、制御手段253は、高電圧発生部39から曝射信号fを受けて、許可信号cの出力を停止する(
図9に”t5”で示す)。
【0060】
タイマー255により計測された所要時間t3が予め定められた時間Tを経過したとき、制御手段253は、経過信号eを位置検出手段251に出力する。また、制御手段253は、許容信号cを照射指示手段254に出力する(
図9に”t6”で示す)。
【0061】
X線管17が所定位置θbに位置すると、位置検出手段251は、検出信号sを出力する。コンパレータ252は、検出信号sのパスルカウントデータと基準のカウントデータとを比較して、カウントデータが一定の幅に入っているときに、コンパレータ出力aを照射指示手段254に送る。
【0062】
照射指示手段254は、許可信号c及びコンパレータ出力aを受けて、指示信号dを高電圧発生部39に出力する。それにより、高速回転時においても被検者の背面の適正な位置でX線を曝射することが可能となる。
【0063】
このようにして、制御手段253から照射指示手段254に許可信号cが出力されていて、かつ、制御手段253から位置検出手段251に経過信号eが出力されているのみ、X線が曝射される。それにより、所定範囲(θb±α)内でX線が複数回曝射されるのを防止することが可能となる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。