(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139823
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】コンピュータ断層撮影装置及び医用画像診断支援方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
A61B6/03 360N
A61B6/03 350V
A61B6/03 371
A61B6/03ZDM
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-80890(P2012-80890)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208310(P2013-208310A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若井 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】新野 俊之
(72)【発明者】
【氏名】風間 正博
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 正邦
【審査官】
亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−103263(JP,A)
【文献】
特開2011−067687(JP,A)
【文献】
特開2006−087921(JP,A)
【文献】
特開2009−276163(JP,A)
【文献】
特開2003−190144(JP,A)
【文献】
特開2001−216508(JP,A)
【文献】
特開平06−319731(JP,A)
【文献】
実開昭63−137609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を曝射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を含み、前記被検体をスキャンして投影データを収集する撮影部と、
表示部と、
前記撮影部で収集した投影データをもとに断層画像データをリアルタイムに再構成する第1の処理と、前記第1の処理により再構成した画像データをもとに作成され、前記表示部に表示されたMPR画像上に設定された優先再構成領域の断層画像データを前記第1の処理よりも高い解像度で再構成する第2の処理と、を行う再構成処理部と、
を具備し、
前記再構成処理部は、前記スキャンの終了後に、前記優先再構成領域及び前記優先再構成領域とは異なる領域の投影データをもとに前記第1の処理よりも高い解像度で再構成を行うコンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
被検体にX線を曝射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を含み、前記被検体をスキャンして投影データを収集する撮影部と、
表示部と、
前記撮影部で収集した投影データをもとに断層画像データをリアルタイムに再構成する第1の処理と、前記スキャンの終了前に開始される処理であって、前記第1の処理により再構成した画像データをもとに作成され、前記表示部に表示されたMPR画像上に設定された優先再構成領域の断層画像データを前記第1の処理よりも高い解像度で再構成する第2の処理と、前記第2の処理の後かつ前記スキャンの終了後に行われる処理であって、前記撮影部による撮影領域のうち、前記優先再構成領域とは異なる領域の断層画像データを再構成する第3の処理と、を行う再構成処理部と、
を具備するコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
操作部を備え、前記操作部によって前記MPR画像上の注目位置を指定し、前記指定した注目位置を含む予め設定した領域を前記優先再構成領域とする請求項1又は2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記操作部の操作に応答して、前記MPR画像上に前記注目位置を含むROIを表示し、前記ROIで示す範囲を前記優先再構成領域として設定する請求項3記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記第1の処理により再構成した画像データを順次に格納する記憶部と、
前記記憶部に格納した画像データをもとに前記MPR画像を作成する画像処理部と、を備える請求項1又は2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記被検体を横方向からみたMPR画像と、正面方向からみたMPR画像と、を生成して前記表示部に出力する請求項5記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記第1の処理により再構成した画像、前記MPR像、及び前記第2の処理により再構成した画像を選択的に前記表示部に出力する請求項5記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記第1の処理により再構成した画像のアキシャル画像を前記表示部に出力する請求項5記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
被検体にX線を曝射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を含む撮影部によって、前記被検体をスキャンして投影データを収集し、
前記撮影部で収集した投影データをもとに断層画像データをリアルタイムに再構成する第1の処理と、前記第1の処理により再構成した画像データをもとに作成され、表示部に表示されたMPR画像上に設定された優先再構成領域の断層画像データを前記第1の処理よりも高い解像度で再構成する第2の処理と、を行い、
前記スキャンの終了後に、前記優先再構成領域及び前記優先再構成領域とは異なる領域の投影データをもとに前記第1の処理よりも高い解像度で再構成を行う医用画像診断支援方法。
【請求項10】
被検体にX線を曝射するX線管と前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を含む撮影部によって、前記被検体をスキャンして投影データを収集し、
前記撮影部で収集した投影データをもとに断層画像データをリアルタイムに再構成する第1の処理と、前記スキャンの終了前に開始される処理であって、前記第1の処理により再構成した画像データをもとに作成され、表示部に表示されたMPR画像上に設定された優先再構成領域の断層画像データを前記第1の処理よりも高い解像度で再構成する第2の処理と、前記第2の処理の後かつ前記スキャンの終了後に行われる処理であって、前記撮影部による撮影領域のうち、前記優先再構成領域とは異なる領域の断層画像データを再構成する第3の処理と、を行う医用画像診断支援方法。
【請求項11】
操作部によって前記MPR画像上の注目位置を指定し、
前記MPR画像上に前記注目位置を含むROIを表示し、
前記ROIで示す範囲を前記優先再構成領域として設定する請求項9又は10に記載の医用画像診断支援方法。
【請求項12】
前記第1の処理により再構成した画像、前記MPR像、及び前記第2の処理により再構成した画像を選択的に前記表示部に表示する請求項9乃至11のうちいずれか一項に記載の医用画像診断支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リアルタイム再構成画像をMPR表示するコンピュータ断層撮影装置及び医用画像診断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医療機関では、コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)等の画像診断装置が使用されており、被検体を撮影して得た投影データを収集して医用画像情報を観察するようにしている。このようなX線CT装置では、X線管とX線検出器を対向配置し、X線管とX線検出器の間に被検体を載せた天板を移動して投影データを収集する。
【0003】
また従来のX線CT装置では、リアルタイム再構成の機能を備えたものがある。リアルタイム再構成は、リアルタイムに被検体の断層画像を表示するものであり、スキャン開始と同時にリアルタイム再構成が始まり、スキャン位置確認のために、操作者(医師または放射線技師)のモニタには、リアルタイム再構成画像が表示される。特許文献1には、リアルタイム再構成の一例が記載されている。
【0004】
例えば、交通事故などで救急患者が運ばれてきた場合、全身のどこに傷害を負っているのか分からないので、全身スキャンを行う。全身スキャンする場合は、通常、頭部から足へとヘリカルスキャンして行き、頭部からリアルタイム再構成が始まり、順次断面画像が表示される。
【0005】
しかし、リアルタイム再構成画像は、撮影位置の確認を目的としているため、画像が瞬時に更新され、また再度、観察・診断できるように作られていない。このため、スキャン終了と同時に、解像度の高い再構成(本再構成)が行われ、頭部から順に本再構成が始まり、順次断面画像が表示される。このため、最終位置が本再構成されて断面画像が表示されるまでには、数分の時間を要する。したがって、医師が診断に必要な部位を本再構成画像で診断するには、スキャン開始位置から必要な部位まで本再構成を待たなければならず、数分の待ち時間が必要になり、救急患者の診断に遅れを生じるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−323027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、必要部位の画像を優先的に再構成して表示し、診断までの待ち時間を短くするコンピュータ断層撮影装置及び医用画像診断支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るコンピュータ断層撮影装置は、被検体にX線を曝射するX線管と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を含み、前記被検体をスキャンして投影データを収集する撮影部と、表示部と、前記撮影部で収集した投影データをもとに断層画像データを
リアルタイムに再構成する第1の処理と、前記第1の処理により再構成した画像データをもとに作成され、前記表示部に表示されたMPR画像上に設定された優先再構成領域の断層画像データを前記第1の処理よりも高い解像度で再構成する第2の処理と、を行う再構成処理部と、を具備し、前記再構成処理部は、前記スキャンの終了後に、前記優先再構成領域及び前記優先再構成領域とは異なる領域の投影データをもとに前記第1の処理よりも高い解像度で再構成を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示すブロック図。
【
図2】一実施形態において全身スキャンをする場合を概略的に示す説明図。
【
図3】スキャン開始から診断までの動作の一般例を概略的に示す説明図。
【
図4】一実施形態におけるスキャンから診断までの動作を概略的に示す説明図。
【
図5】一実施形態におけるスキャンから診断までの動作を具体的に説明するフローチャート。
【
図6】一実施形態におけるリアルタイム再構成の動作を示す説明図。
【
図7】一実施形態におけるMPR画像の表示と本再構成の動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るコンピュータ断層撮影装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係るコンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)の全体構成を示すブロック図である。
図1において、X線CT装置100は、ガントリ(架台)11を有している。ガントリ11内には回転部12が設けられ、回転部12は回転機構によって回転する。回転部12内には、X線管13と、X線検出器14が対向して配置されており、回転部12の中心部分は開口し、開口部に寝台の天板15に載置された被検体Pが挿入される。
【0012】
被検体Pを透過したX線はX線検出器14で電気信号に変換され、データ収集部16で増幅され、デジタルデータに変換される。このデジタルデータは、データ伝送装置17を介して投影データとして操作コンソール22(後述)に伝送される。X線検出器14は、多数のX線検出素子が被検体Pの体軸方向(スライス方向)及び体幅方向(チャンネル方向)にマトリクス状に配列されており、スライス方向に配列された検出器列毎に投影データを収集する。X線管13及びX線検出器14は、被検体Pをスキャンして投影データを収集する撮影部を構成する。
【0013】
また、ガントリ11には架台制御部18、スリップリング19を設けている。天板15は、寝台20に設けた寝台駆動装置によって架台11の開口部に進退可能であり、寝台駆動装置には寝台制御部21から駆動信号が供給される。寝台20には、天板15のスライス方向(被検体Pの体軸方向)の位置を電気的に検出する検出器を備えており、寝台20は寝台制御部21に対して寝台の位置情報を送る。したがって、回転部12の回転と天板15の移動によって連続スキャンが可能であり、連続スキャンにより多方向の投影データを時系列的に収集することができる。
【0014】
またX線CT装置100は、操作コンソール22を備えている。操作コンソール22は、コンピュータシステムを構成するもので、前処理部23を有し、データ伝送装置17からのデータが前処理部23に送られる。前処理部23では、信号強度の補正や信号欠落の補正等の処理を行い、投影データをバスライン221上に出力する。バスライン221にはシステム制御部24が接続され、システム制御部24には、操作部25が接続されている。またバスライン221には、データ記憶部26、再構成処理部27、ボリュームメモリ28、画像処理部29、表示部30が接続されている。
【0015】
システム制御部24は、ホストコントローラとして機能し、CPUやROMを含み、操作コンソール22の各部の動作や、架台制御部18、寝台制御部21、及び高電圧発生部31を制御する。データ記憶部26は、収集した投影データから得た断層画像データ(生データ)を記憶する。
【0016】
再構成処理部27は、データ記憶部26に記憶した断層画像データから関心領域或いは関心臓器を抽出し、3D画像データ等を再構成する。また操作者によって設定された優先再構成領域(後述)の断層画像データを再構成する(本再構成)。
【0017】
また再構成処理部27は、リアルタイム(Real-Time)再構成を行う。リアルタイム再構成は、撮影部によって被検体Pをスキャンして多方向の投影データを収集する際に、例えば1回転で1枚の断層画像データを再構成し、次の1回転で次の1枚の断層画像データを再構成するというように、短時間で予め設定した回転数分の断層画像データを順次に再構成して繰り返す。したがって、スキャンの連続的な動作と並行してリアルタイム再構成が行われる。尚、再構成処理部27は、本再構成を行う本再構成部と、リアルタイム再構成を行うリアルタイム再構成部として機能する。
【0018】
ボリュームメモリ28は、リアルタイム再構成した画像データ(以下、リアルタイム画像データと称す)を順次保存する記憶部である。ボリュームメモリ28に保存したリアルタイム画像データは、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像を生成するために使用される。画像処理部29は、再構成処理部27で本再構成した画像、又はリアルタイム画像データを処理して、表示部30へ表示用の画像を出力する。また画像処理部29は、ボリュームメモリ28に保存したリアルタイム画像データを処理してMPR画像を生成し、表示部30へ出力する。
【0019】
表示部30は、画像処理部29によって得られた各種の画像等を表示する。操作部25はキーボード、マウス等を有し、ユーザによって操作され、データ処理する上で各種の設定を行う。また、操作部25は患者の状態や検査方法等の各種情報を入力したり、マウス操作によりROI(Region Of Interest)の設定を行う。
【0020】
高電圧発生部31は、スリップリング19を介してX線管13に電力を供給し、X線の曝射に必要な電力(管電圧、管電流)を与える。X線管13は、被検体Pの体軸方向に平行なスライス方向と、それに直交するチャンネル方向の2方向に広がるビームX線を発生する。
【0021】
次に第1の実施形態に係るX線CT装置100の動作について説明する。本実施形態では、リアルタイム再構成により得たリアルタイム画像データを用いて、MPR画像を作成する。MPR(Multi Planer Reconstruction)は、任意多断面再構成であり、MPR画像は、多数のスライスから切り出した任意の断面の二次元画像である。またリアルタイム画像データを用いて作成したMPR画像をもとに任意の部位の位置を指定し、指定した部位の本再構成を行う。尚、以下の説明及び図ではリアルタイム再構成をRT再構成と略称する。
【0022】
一般のCTスキャンでは、交通事故などの救急患者が運ばれてきた場合、全身のどこに傷害を負っているのか分からないので、
図2で示すように全身スキャンを行う。
図2は、頭部から脚部にかけて全身スキャンをする場合を概略的に示し、スキャン位置を例えば0〜100の数値で示している。
【0023】
また、一般のCTスキャンでは、
図3で示すように、スキャン開始と同時にRT再構成が始まり、スキャン位置確認のためにリアルタイムに再構成した画像(RT画像)が表示される。しかし、RT画像は撮影位置の確認を行うことを目的としているため、解像度が劣り、かつ画像が瞬時に更新される。また再度、観察・診断できるように作られていない。
【0024】
したがって、スキャン終了と同時に、例えば512×512画素の解像度の高い再構成(本再構成)を行い、本構成による画像を順次表示する。例えば、頭部から足先までの全身スキャンをした場合、頭部から再構成が始まり順次断面画像が表示される。しかし、最終位置が再構成されて画像が表示されるまでに、数分の時間を要する。このため、医師が診断に必要な部位を本再構成画像で診断するには、スキャン開始位置から必要な位置まで再構成を待たなければならず、数分の待ち時間が必要になってくる。
【0025】
図4は、本実施形態におけるスキャンから診断までの動作を概略的に示す説明図である。動作手順を(a)〜(g)で示す。本実施形態では、スキャン(a)と同時にRT再構成が始まり(b)、リアルタイムに再構成した画像(RT画像)をもとにしてMPR画像が作成され、表示される(c)。そしてMPR画像で注目部位の位置を選択し(d)、選択位置を中心とする領域(優先再構成領域)を本再構成していく(e)。
【0026】
即ち、医師は、スキャンと同時に表示されるRT画像で、傷害部分の検討をつけ、MPR画像をもとに障害部分の位置を選択する。これにより、再構成処理部27は、最優先にその選択した領域を本再構成して画面に表示することで、より速い診断が可能になる(f)。また選択した部分以外の部位を本再構成したい場合は、操作者(医師、技師)の指示に基づいて指定された部位の本再構成処理を行う(g)。
【0027】
図5は、上記の動作をより具体的に説明するフローチャートである。
図5において、ステップS1でヘリカルスキャンを行う。次にステップS2において、再構成処理部27は、RT再構成を行い、リアルタイム画像データをボリュームメモリ28に格納する。ステップS3では、ボリュームメモリ28に格納されたリアルタイム画像データを用いて随時MPR画像を作成し、ステップS4でRT再構成のMPR画像を表示する。尚、RT再構成のMPR画像は、正面方向からと横方向からの両画像を表示するとよい。
【0028】
ステップS5では、RT再構成のアキシャル画像(横断面の画像)を表示する。ステップS6では、アキシャル画像をもとに現在のスキャン位置を確認し、優先再構成位置を決定する。
【0029】
一方、ステップS4におけるRT再構成のMPR画像の表示と、ステップS6でのアキシャル画像によるスキャン位置を確認から、ステップS7では優先再構成領域(FOV:Field Of View)をROIで設定する。優先再構成領域は、医師が障害部分と判断し、より詳細な画像を表示するために本再構成を行う領域である。医師は、MPR画像で優先的に本再構成したい注目位置を指定し、注目位置を含むROIを表示する。
【0030】
そして、ステップS8で本再構成スタートボタンが押されると、再構成処理部27は、ステップS9においてROIで示す範囲を優先再構成領域として設定し、データ記憶部26に格納した生データから設定した優先再構成領域の生データを抽出し本再構成を実行する。ステップS10では、本再構成した画像が表示部30に表示され、ステップS11で診断に利用される(
図4f参照)。
【0031】
RT再構成のMPR画像の表示は、スキャンが終了するまで行われ、ステップS12でRT再構成の処理を終了する。ステップS13ではスキャンを終了したあとに全体(又は優先再構成領域以外の)の本再構成処理が行われ(
図4g参照)、ステップS14において診断のために利用される。MPR画像の表示中もリアルタイムに再構成した画像(RT画像)を順次に表示して位置確認を行ってもよいし、本再構成を優先させるために、RT再構成を止めてもよい。
【0032】
図6、
図7は、
図5の動作を具体的に示す説明図である。ヘリカルスキャンを行うと、
図6(a)において、再構成処理部27はRT再構成の処理を開始する。
図6(b)は、RT再構成で作成した画像(RT画像)を示す。RT再構成により順次に作成したRT画像41は、ボリュームメモリ28に格納される。
図6(c)は、ボリュームメモリ28に格納された画像データよって形成されるボリュームデータ42を模式的に示す。ボリュームデータ42は、順次に形成されるRT画像41が積み重なったものであり、間引きされたように粗いデータである。
【0033】
画像処理部29は、ボリュームメモリ28に格納されたRT再構成画像41を用いて随時MPR画像を作成して表示する。尚、画像処理部29は、積み重なったRT画像41を補間処理した上で、MPR画像を作成する。これにより画質が向上する。
【0034】
図7は、MPR画像の一例を示す。MPR画像43は、
図7(a)に示すように被検体を横方向から見た画像と、(b)で示すように正面方向から見た画像の両方を表示する。横方向及び正面方向から見たMPR画像43を表示することで、本再構成位置の指定時に拡大再構成も指定できて、より実用的である。MPR画像43は、スキャンが進んでいくに連れて随時表示を更新して行き、RT再構成した部分が追加され延びる。
図7の矢印Aで示す範囲は、RT再構成が完了した領域を示し、
図7(c)は、正面方向から見たMPR画像43が随時更新され矢印方向に延びていく様子を示している。
【0035】
図7(a),(b)において、操作者(医師)がマウスを操作して本再構成したい注目位置を指定(例えばマウスでクリック)すると、指定した位置を中心とするROIが表示される。ROIの大きさはマウスの操作により、左右方向、上下方向に調整することができる。
【0036】
ROIを指定するときに、MPR画像が更新により延びていくことで表示の大きさが変動するとROIの指定がしづらくなる。そこで、最初に操作者が指定したスキャン範囲をもとにモニタ上でのMPR画像の全体の大きさを決めておき、MPR表示が始まる位置を固定しておくとよい。
【0037】
こうして操作者(医師または放射線技師)は、瞬時に入れ替わるRT再構成の画像やMPR画像43を見ながら、負傷している部分の検討をつけて、最優先に本再構成したい部分をMPR画像43上にROIで指定する。そして、
図7(d)で示すように、操作者が本再構成スタートボタン44を押すと、優先再構成領域が設定され、再構成処理部27は、データ記憶部26に格納した生データから優先再構成領域の断層画像データを抽出して最優先に本再構成を行う。このとき再構成処理部27は、システム制御部24からスキャン位置の情報をもらい、ROIで示す優先再構成領域に相当するスキャン範囲の断層画像データを抽出し、抽出した断層画像データをもとに本再構成を行う。
【0038】
本再構成スタートボタン44は、表示部30の画面上にボタンを表示し、表示したボタンを操作者がクリックすることで本再構成がスタートする。或いは操作部25に本再構成スタートボタン44を設け、操作者が本再構成スタートボタン44を押すことで本再構成がスタートするようにしてもよい。
【0039】
データ記憶部26及びボリュームメモリ28のメモリ容量が多く、RT再構成と本再構成を同時に行うことができれば、本再構成ボタン44を押した後も、
図7(e)のようにRT再構成を続けて、RT再構成画像を表示しながらMPR像を表示し、本再構成画像も随時表示していくことができる(並列処理)。もし、再構成限度、メモリ限度がある場合は、
図7(f)のように、RT再構成を一旦止めて、スキャンした断層画像データの中から優先領域の本再構成を進めてもよい。
【0040】
並列処理するかRT再構成を中止するかは、操作者が選択できるようにする。即ち、画像処理部29は、リアルタイム再構成した画像(RT画像)、RT再構成のMPR画像、及び優先再構成領域の本再構成画像を、操作者の操作によって選択し、表示部30に出力する。
【0041】
また、本再構成の優先部分は、複数指定することもでき、優先順位をつけることができる。また、優先的に指定された部分以外は、優先部分の再構成が終わった後に、順次スキャン開始位置から本再構成していく。そして、本再構成された画像が全部できたら、ボリュームメモリ28に格納したリアルタイム画像データは破棄する。また本再構成した画像は、スキャン開始位置から終了位置まで順に並べ替える。
【0042】
以上述べたように、本発明の実施形態によれば、リアルタイム再構成画像を使ったMPR像を表示することにより、障害部分の位置を容易に把握することができ、障害部分を最優先に本再構成することができる。したがって、スキャン開始してから診断までの時間を短縮することができ、救急患者等の診断を素早く行うことができる。
【0043】
尚、以上の実施形態では、画像処理部29及び表示部30を操作コンソール22の中に設ける例を述べたが、画像処理部29と表示部30はX線CT装置100の外部装置として配置したPC(パーソナルコンピュータ)内に設けてもよい。この場合は、X線CT装置100とPCがネットワークを介して接続される。
【0044】
また、再構成処理部27によってリアルタイム再構成と本再構成を行う例を述べたが、リアルタイム再構成部と本再構成部をそれぞれ別個に設けてもよい。この場合、別個に設けた本再構成部は、データ記憶部26に格納した生データをもとに再構成を行い、別個に設けたリアルタイム再構成部は、生データを順次に取り込むリアルタイム再構成用のメモリを含み、このメモリに取り込んだ生データをもとにリアルタイム再構成を行うようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
100…X線CT装置
11…ガントリ(架台)
12…回転部
13…X線管
14…X線検出器
15…天板
16…データ収集部
17…データ伝送装置
18…架台制御部
19…スリップリング
20…寝台
21…寝台制御部
22…操作コンソール(コンピュータシステム)
23…前処理部
24…システム制御部
25…操作部
26…データ記憶部
27…再構成処理部
28…ボリュームメモリ
29…画像処理部
30…表示部
31…高電圧発生部