(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板上に形成した半透光膜と遮光膜がパターニングされることにより形成された、透光部と半透光部と遮光部を含む転写用パターンをもつ、フラットパネルディスプレイ製造用のフォトマスクであって、
前記透光部は、5μm以下の幅で透明基板が露出してなり、
前記半透光部は、前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、かつ、前記透光部のエッジに沿って前記透光部を囲み、露光装置の解像限界以下の一定幅に形成されるとともに、対向する位置に形成された前記半透光部は、互いに対称に、同一幅に形成され、
前記遮光部は、露光光に対する光学濃度ODが3以上であって、前記透明基板上に前記半透光膜と前記遮光膜が積層されてなり、前記半透光部を囲んで形成され、
前記半透光膜は、露光光の代表波長に対する透過率が30〜50%、位相シフト量が90°以下であることを特徴とする、フォトマスク。
前記転写用パターンは、被転写体上に3μm以下の径をもつホールを形成するためのホールパターンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、フラットパネルディスプレイの配線パターンの微細化が望まれている。そしてこうした微細化は、フラットパネルディスプレイの明るさの向上、反応速度の向上といった画像品質の高度化のみならず、省エネルギーの観点からも、有利な点があることに関係する。これに伴い、フラットパネルディスプレイの製造に用いられるフォトマスクにも微細な線幅精度の要求が高まることとなる。しかし、フォトマスクの転写用パターンを単純に微細化することによって、フラットパネルディスプレイの配線パターンを微細化しようとすることは容易ではない。
【0006】
フォトマスクに形成される転写パターンを微細化していくと、以下の問題があることが本発明者らにより見出された。例えば、透光部と遮光部を備えた、いわゆるバイナリマスクのパターンを微細化するとともに、遮光部、透光部の寸法(線幅)が小さくなると、透光部を介して被転写体上に形成されたレジスト膜に照射される透過光の光量が低下してしまう。この状態を、
図1に示す。
【0007】
ここでは
図1(a)に示す、パターニングされた遮光膜によってなるラインアンドスペースパターンを例とし、ピッチ幅Pを次第に小さく(これに応じて、ライン幅MLとスペース幅MSが次第に小さく)していく際に、被転写体上に形成したレジスト膜上に生じる、透過光の光強度カーブを示す(
図1(b))。ピッチ幅Pが8μm(ライン幅ML=4.8μm、スペース幅MS=3.2μm)から、ピッチ幅Pが4μm(ライン幅ML=2.8μm、スペース幅MS=1.2μm)まで次第に微細化したときは、光強度の波型曲線のピーク位置が、著しく低下していることがわかる。尚、ここでは、ライン幅MLとスペース幅MSを、それぞれピッチ幅Pに対して、P/2+0.8μm、P/2−0.8μmに設定した。
【0008】
このとき、被転写体上のレジスト膜が形成するレジストパターンの側面形状を、
図2(a)〜(d)に示す。この場合、
図2(d)に示すように、ピッチPが5μm(ライン幅ML=3.3μm、スペース幅MS=1.7μm)に達した時点で、レジストパターンにラインアンドスペース形状を形成するための光量が不足し、後工程におけるエッチングマスクとするためのレジストパターンが形成できなくなったことが理解できる。尚、
図1、及び
図2は、
図1に記したシミュレーション条件を用いて得たものである。「g/h/i=1/1/1」は、露光光に含まれるg線、h線、i線の各波長の強度比が1:1:1であることを表わす。また、これらの照射光量(Eop)は、100mJに規格化した。
【0009】
そこで、転写時の解像度を上げ、より微細なパターニングを行う方法としては、従来LSI製造用の技術として開発されてきた、露光機の開口数拡大、単一波長、かつ短波長を使用した露光が考えられる。しかし、これらの技術を適用する場合には、莫大な投資と技術開発を必要とし、市場に提供される液晶表示装置の価格との整合性が取れなくなる。
【0010】
ところで、
図1(b)に示されるように、光強度の波型曲線のピーク位置が、著しく低下している現象に対して、この光量不足を補うための方法として、露光装置の照射光量を増加させることが考えられる。照射光量が増加すれば、スペース部を透過する光量が増大するため、レジストパターンの形状を良化する、すなわち、ラインアンドスペースパターンの形状に分離させることができると考えられる。但し、このために、露光装置の光源を大光量に変更することは現実的でなく、露光時の走査露光時間を大幅に増加させなければならない。実際、
図2(e)には、照射光量を増加させることによって、レジストパターンを良好に分離させた場合を示す。ここでは、
図2(a)〜(d)に用いた照射量に対し、1.5倍の照射光量が必要であった。
【0011】
ところで上記特許文献1には、透明基板上に形成した半透光膜をパターニングすることによって所定のパターンを形成した、透光部と半透光部とを有するフォトマスクであって、該フォトマスクを透過した露光光によって、被転写体上に線幅3μm未満の転写パターンを形成するフォトマスクにおいて、前記透光部又は前記半透光部の少なくとも一方が3μm未満の線幅の部分を有する、前記透光部と前記半透光部とからなるパターンを含むフォトマスクが記載されている。
【0012】
上記フォトマスクによれば、
図1(b)において顕著に生じていた透光部のピーク位置の低下が抑止され、ラインアンドスペースパターン形状のレジストパターンが形成できる。これは、透明基板上に形成した半透光膜のパターンが、透光部を含む、転写用パターン全体の透過光量を補助し、レジスト(ここではポジレジスト)がパターニングされうる必要光量に到達させることができたことを意味する。
【0013】
このように、上記特許文献1のフォトマスクによると、従来のLCD用露光機において解像できなかった3μm未満のパターンが形成できるようになったが、更に異なるパターンへの適用性、及び、パターニング安定性や精度を高めるニーズが生じた。
【0014】
例えば、コンタクトホールを形成するためのホールパターンをもつフォトマスクにおいては、更に厳しいニーズがある。フラットパネルディスプレイ分野においては、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)のパッシベーション層に形成するコンタクトホールなど、様々な電子デバイスに必要なホールパターンなどに、微細なホールを確実に形成することが望まれる場面が多い。こうしたホールの形成においては、確実にホールが形成されることが、最終製品の動作不良防止のためには必須である。しかしながら、径が微細化される動向とともに、フォトマスクによる転写時に、被転写体上に到達する光量不足が生じて、不完全なホールの形成が生じやすい。
【0015】
ところで、上記用途におけるホールの形成は、フォトマスクを用いて、露光装置により、被転写体上に形成したレジスト膜にフォトマスクのもつ転写用パターンを転写し、該レジスト膜を現像することによって得たレジストパターンをマスクとしてエッチング加工を行う。このエッチングにおいては、ウェットエッチングによるほか、パターンの微細化とエッチング精度へのニーズに応じて、ドライエッチングを用いることも多い。
【0016】
しかしながら、ドライエッチングを適用する際には、レジストパターン自体もエッチングされるため、減膜し、かつ、線幅精度に狂いが生じにくいように、レジストパターンの断面の傾斜角を大きくしたい場合がある(傾斜角については
図9(d)を参照)。更に、ホールパターンにおいては、線幅のわずかなずれが、ホール面積に対して二乗の差異となって影響するため、線幅精度に対する制御の要求は高い。
【0017】
また、ホールパターンの形成にあたっては、その断面の傾斜角を所望値に制御したいとのニーズもある。例えば、層間絶縁膜中に配線形状の溝を形成し、金属を埋め込むことを想定したとき、埋め込みの容易さを考慮すると、溝には所定の傾斜角(例えば20°〜60°)を精度高く形成したい場合などが考えられる。このような場合には、ホールを形成するためのレジストパターンの傾斜角を上記にように制御することが有用であり、また、所定の形状に形成されたレジストパターンをそのまま最終製品の一部とすることも可能である。
【0018】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、微細かつ高精度なホールパターンの形成が可能なフォトマスク、パターン転写方法、及びフラットパネルディスプレイの製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の形態1によれば、
透明基板上に形成された、少なくとも半透光膜がパターニングされることにより形成された、透光部と半透光部を含む転写用パターンをもつフォトマスクであって、前記透光部は、5μm以下の幅で透明基板が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された半透光膜によってなり、
前記半透光膜は、露光光の代表波長に対する透過率が2〜60%、位相シフト量が90°以下であることを特徴とする、フォトマスクが提供される。
【0020】
本発明の形態2によれば、
透明基板上に形成した半透光膜と遮光膜がパターニングされることにより形成された、透光部と半透光部と遮光部を含む転写パターンをもつフォトマスクであって、
前記透光部は、5μm以下の幅で透明基板が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された半透光膜によってなり、
前記遮光部は、前記半透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された少なくとも遮光膜によってなり、
前記半透光膜は、露光光の代表波長に対する透過率が2〜60%、位相シフト量が90°以下であることを特徴とする、フォトマスクが提供される。
【0021】
本発明の形態3によれば、
前記半透光部は、前記透光部を囲んで前記透光部のエッジに沿って一定幅に形成され、かつ、前記幅は、露光装置の解像限界以下であることを特徴とする、形態2に記載のフォトマスクが提供される。
【0022】
本発明の形態4によれば、
前記転写用パターンは、被転写体上に3μm未満の径をもつホールを形成するためのホールパターンであることを特徴とする、形態1〜3のいずれかに記載のフォトマスクが提供される。
【0023】
本発明の形態5によれば、
形態1〜4のいずれかに記載のフォトマスクを用い、露光装置によって、前記転写用パターンを被転写体上に転写することを特徴とする、パターン転写方法が提供される。
【0024】
本発明の形態6によれば、
形態1〜4のいずれかに記載のフォトマスクを用い、露光装置によって、前記転写用パターンを被転写体上のレジスト膜に転写する、パターン転写方法であって、
前記レジスト膜が現像後に形成するレジストパターンの側面形状を、傾斜角40°以上とすることを特徴とする、パターン転写方法が提供される。
【0025】
本発明の形態7によれば、
形態5又は6に記載のパターン転写方法を用いることを特徴とする、フラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフォトマスク、パターン転写方法によれば、露光に必要な照射光量を節減し、しかも、エッチングマスクとして優れた形状のレジストパターンを形成することができる。
【0027】
また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法によれば、薄膜トランジスタ(TFT)の製造等において、微細なホールを確実に形成し、歩留や最終製品の精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のフォトマスクは、
透明基板上に形成された、少なくとも半透光膜がパターニングされることにより形成された、透光部と半透光部を含む転写用パターンをもつフォトマスクであって、
前記透光部は、5μm以下の幅で透明基板が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された半透光膜によってなり、
前記半透光膜は、露光光の代表波長に対する透過率が2〜60%、位相シフト量が90°以下であることを特徴とする(形態1)。
【0030】
更に本発明の他のフォトマスクは、
透明基板上に形成した半透光膜と遮光膜がパターニングされることにより形成された、透光部と半透光部と遮光部を含む転写パターンをもつフォトマスクであって、
前記透光部は、5μm以下の幅で透明基板が露出してなり、
前記半透光部は、前記透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された半透光膜によってなり、
前記遮光部は、前記半透光部を囲んで、前記透明基板上に形成された少なくとも遮光膜によってなり、
前記半透光膜は、露光光の代表波長に対する透過率が2〜60%、位相シフト量が90°以下であることを特徴とする(形態2)。
【0031】
上記構成からなる本発明はいずれも、ホールパターン等の、囲まれた(閉じた)形状のパターンを転写し、被転写体にコンタクトホールなどを形成するために用いるフォトマスクであり、その実施の形態1に係る構成を
図3、及びその実施の形態2に係る構成を
図4に例示する。
【0032】
本発明のフォトマスクにおける前記転写用パターンは、被転写体上に3μm以下の径をもつホールを形成するためのホールパターンであるときに特に有用である。ここでホールの径とは、円形であればその直径、矩形であればその最短の一辺の長さをいう。また、本発明のフォトマスクにおける「透明基板上に形成された」とは、透明基板上に直接又は間接に形成されたことを意味する。
【0033】
<形態1について>
図3(a)、(b)において、本形態1のフォトマスク1の透明基板10としては、表面を研磨した石英ガラス基板などが用いられる。大きさは特に制限されず、当該マスク1を用いて露光する基板(例えばフラットパネルディスプレイ用基板など)に応じて適宜選定される。例えば一辺300mm以上の矩形基板が用いられる。
【0034】
本形態1のフォトマスクは、透光部11と半透光部21を有する。露光光を透過する透光部11においては、透明基板10が露出している。半透光部21は、透明基板10上に半透光膜20が形成されてなり、この半透光膜20は単層でもよく、複数層の積層により成るものであっても良い。この半透光膜20は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対して、90°以下の位相シフト作用を有する。
【0035】
この90°以下の位相シフト作用とは、好ましくは、前記露光光の代表波長に対する位相シフト量が、0°を越え90°以下である。この場合の半透光部21は、いわゆる位相シフト作用を発揮させてコントラストを向上する機能を発揮するよりも、むしろ透光部11の透過光量を補助する機能をもつ。従って、半透光膜20は、透過補助膜と考えることができ、半透光部21は、透過補助部と考えることができる。
【0036】
尚、仮に半透光膜20の位相シフト量が180°に近いものであると、透光部11と半透光部21の境界において位相反転した回折光が互いに干渉し、本発明でいう透過補助の機能がむしろ阻害されることが、発明者らの検討により見出されている。
【0037】
また、位相シフト量が過度に小さい場合には、半透光膜20を構成する素材の選択が容易でないこと、位相シフト量が過度に大きい場合には、逆位相の光の干渉が生じて透過光量の補助効果が損なわれることを考慮して、該膜20の素材と膜厚とを選択することが望ましい。半透光膜20の位相シフト量の範囲は、0°を超え、90°以下(これは、ラジアン表記すると、(2n−1/2)π〜(2n+1/2)π(nは整数)との意味である)とし、好ましくは5〜60°、更に好ましくは5〜45°である。
【0038】
半透光膜20の透過率とは、透明基板10の、前記代表波長による透過率を100%とした場合の、半透光膜20の透過率である。
【0039】
半透光膜20の透過率があまりにも小さいと、本発明の透過補助の機能を十分に発揮できず、透過率が大きすぎると、半透光膜の膜厚制御等、マスク製造の難度が高くなるため、半透光膜20の透過率は上記の2〜60%の範囲とする。なお、半透光膜20の好ましい透過率範囲は3〜45%、より好ましくは3〜30%、更に好ましくは5〜20%である。
【0040】
ここで、代表波長としては、露光光が複数波長を含む場合(例えば、i線、h線、g線を含む光源を使用する場合)には、これらの波長のいずれかとすることができる。例えば、i線を代表波長とすることができる。これら波長のいずれに対しても、上記数値範囲を充足することがより好ましい。
【0041】
本発明において被転写体とは、本発明のフォトマスクを使用して得ようとするデバイス、又はその中間体であって、例えばTFT基板、又はその中の特定レイヤ(層)などであることができる。一般に、被転写体は薄膜、又はその積層構造を有し、これをエッチングにより加工するために、レジスト膜が塗布される。
【0042】
このようなフォトマスクを利用し、レジスト膜を塗布した被転写体上に露光する結果、被転写体上には、
図9(d)に示すレジストパターンとして形成される。
【0043】
ここでは透光部11によるレジストの抜きパターンと、半透光部21によるレジスト残膜がなだらかに連結している。そして、ここでの半透光部21の機能は、透光部11による光の透過量を補助する役割を果たしており、いわば透過補助パターンとして機能している。
【0044】
半透光部21に用いる半透光膜20の透過率により、上記レジストパターンの形状を制御することが可能である。例えば、レジストパターンの側面の傾斜角を20〜60°、より好ましくは40〜60°、或いは、より倒れの顕著なパターンを得ようとする場合は、20〜40°とすることができる。
【0045】
<形態2について>
図4(a)〜(c)において、本形態2のフォトマスク2の透明基板10については形態1と同様である。本形態2のフォトマスク2は、透光部11と半透光部21に加えて遮光部31を有する。露光光を透過する透光部11においては、透明基板10が露出している。半透光部21は、透明基板10上に半透光膜20が形成されてなり、この半透光膜20は単層でもよく、複数層の積層により成るものであっても良い。この半透光膜20は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対して、90°以下の位相シフト作用を有する点は上記と同じである。
【0046】
上記形態1と同様に、この90°以下の位相シフト作用とは、好ましくは、前記露光光の代表波長に対する位相シフト量が、0°を越え90°以下である。ここでも半透光部21は、いわゆる位相シフト作用を発揮させてコントラストを向上する機能を発揮するよりも、透光部11の透過光量を補助する透過補助部と考えることができる。
【0047】
また、仮に半透光膜20の位相シフト量が180°に近いものであると、透光部11と半透光部21の境界において位相反転した回折光が互いに干渉し、本発明でいう透過補助の機能がむしろ阻害されることも、上記形態1と同様に確認されている。
【0048】
ここでも、半透光膜20の位相シフト量の範囲は、0°を超え、90°以下(これは、ラジアン表記すると、(2n−1/2)π〜(2n+1/2)π(nは整数)との意味である)とし、好ましくは5〜60°、更に好ましくは5〜45°である。
尚、半透光膜20の透過率とは、透明基板10の、前記代表波長による透過率を100%とした場合の、半透光膜20の透過率である。
【0049】
本形態2の半透光膜20の露光光透過率は、上記形態1と同様2〜60%の範囲とする。尚、半透光膜20の好ましい透過率範囲は10〜60%、より好ましくは20〜60%、更に好ましくは30〜50%である。
【0050】
本形態2においても、代表波長とは、上記形態1と同様である。すなわち、露光光が複数波長を含む場合(例えば、i線、h線、g線を含む光源を使用する場合)には、これらの波長のいずれかとすることができ、例えば、i線を代表波長とすることができる。これら波長のいずれに対しても、上記数値範囲を充足することがより好ましい。
【0051】
本形態2において、遮光膜30は、必ずしも露光光に対する完全な遮光性を持たなくても良い。遮光部31を(単層で又は半透光膜20との積層で)形成したときに、この部分の露光光透過率が、半透光部21より小さければよい。積層とする場合の遮光部31の好ましい露光光透過率についていえば、半透光膜20と積層したときに、露光光に対する光学濃度ODが3以上であることが好ましく、より好ましくは、遮光膜単独でODが3以上である。
【0052】
また、遮光部31は、遮光膜30単独で形成されることもできるが、
図4(b)、(c)に示されるように、半透光膜20と遮光膜30の積層で構成されることが好ましい。この場合、積層順には制約は無い。
【0053】
本形態2によると、半透光部21は、透光部11を囲み、かつ、透光部11のエッジに沿って所定幅で形成されている。その幅は、露光装置に解像されない幅に形成されている。この様子は、
図4(a)〜(c)に示すとおりである。ここで、半透光部21は遮光部31のエッジに隣接しており、かつ、透光部11にも隣接している。すなわち、半透光部は、遮光部31と透光部11の間に位置している。そして好ましくは一定幅に形成されている。
【0054】
半透光部21の幅は、露光装置によって解像されない。一般にLCD用露光装置(後述)においては、解像限界が3μmとしている。本形態2の半透光部21の幅は、この寸法以下である。また、本形態2の半透光部21は、露光時に被転写体上に解像しない程度の微細な幅である。すなわち、露光条件によって、転写用パターンに露光光を照射したとき、被転写体が受ける透過光の光強度曲線には、半透光部21に相当する部分において、独立のパターン形状が観測されず、透光部11による光強度のピークと、遮光部31による光強度のボトムをなだらかに連続するカーブを描く。
【0055】
この結果、被転写体上のレジスト膜は、
図9(d)に示すレジストパターンとして形成される。
【0056】
ここで、
図9(d)に示すレジストパターンの側面形状には、一定幅の半透光部21による独立した転写形状としては現われず、ここでは透光部11によるレジストの抜きパターンと、遮光部31によるレジスト残膜をなだらかに連結させている。ここでは、レジストパターンの一側面において、残膜量は単調増加、または単調減少している。そして、ここでの半透光部21の機能は、透光部11の周囲において、透光部11による光の透過量を補助する役割を果たしており、いわば透過補助パターンとして機能している。
【0057】
また、本形態2のフォトマスク2の断面は
図4(b)、(c)のような構成とすることができる。これらの相違は、遮光膜30と半透光膜20の積層順が逆であることである。
【0058】
半透光部21の幅が大きすぎると、形成されるレジストパターンの側面形状の倒れが顕著になりやすい(傾斜角が小さくなりやすい)。従って、側面形状の倒れを防ぎたい場合には、この幅を、1μm以下とすることが好ましい。好ましい範囲としては、0.1〜1μmである。遮光部31の対向するエッジに隣接して、それぞれ第1半透光部21A、第2半透光部21Bが形成される場合には、第1半透光部21Aと第2半透光部21Bの幅が、いずれも1μm以下(0.1〜1μm)であることが好ましい。
【0059】
ここで、半透光部21の幅が一定とは、例えば、
図4(b)、(c)において、透光部11を囲む半透光部21(第1半透光部21Aと第2半透光部21B)の幅の相違(角部を除く)が0.1μm以内であることが好ましい。より好ましくは、0.05μm以内である。また、当該フォトマスク2が備える転写用パターンの全体において、半透光部21の線幅精度を、上記範囲内とすることが好ましい。このようにすることにより、透光部11に与える透過光量の補助作用が対称になり、被転写体上に形成されるパターンの線幅精度を精緻に制御することができる。
【0060】
半透光部21に用いる半透光膜20の透過率や、半透光部21の幅の調整により、被転写体上に形成されるレジストパターンの形状を制御することが可能である。例えば、レジストパターンの側面の傾斜角を20〜60°としたり、より好ましくは、40〜60°とすることができる。
【0061】
本形態2においても、被転写体とは、上記形態1におけるものと同様である。
【0062】
上記形態1、2のいずれにおいても、フォトマスク1、2は、5μm以下の幅をもつ透光部11を有する。例えば、正方形のパターンであれば1辺が5μm以下、長方形であれば短辺が5μm以下、円であれば直径5μm以下である。従来はこのような微細寸法のホールパターンを転写しようとすると、透光部11を透過する光に生じる回折の影響が無視できないほどに大きくなり、被転写体上のレジスト膜を感光させる光量に至らない場合や、形成されるレジストパターン形状にばらつきが生じるなどの不都合があった。しかしながら、本発明によれば、このような微細幅のホールパターンも、確実に転写し、被転写体の加工が行いやすい、優れた形状のレジストパターンを形成できる。透光部11の寸法は、3μm以下のときに本発明の効果が顕著であり、2.5μm以下である場合に更に顕著である。
【0063】
そして、このような転写パターンをもつフォトマスク1、2によって、被転写体上に、径3μm以下のホールHを形成する際に、本発明は有利である。ホールHの寸法は、径2μm以下のときに、本発明の効果はより顕著である。
【0064】
上記形態1、2のいずれにおいても、フォトマスク1、2は、被転写体の受ける光強度分布、及びそれによって形成されるレジストパターン形状を、光学シミュレーションによって得ている。シミュレーション条件としては、転写に用いる露光装置の光学条件を考慮して設定する。ここで、転写に用いる露光装置は、標準的なLCD(LCD:Liquid Crystal Display)用露光装置とすることができる。この場合、例えば、開口数NAを0.06〜0.10、コヒーレンスファクターσを0.5〜1.0の範囲とすることができる。こうした露光装置は、一般に、3μm程度を解像限界としている。
【0065】
もちろん、本発明は、より広い範囲の露光機を用いた転写に際して適用することも可能である。例えば、NAが0.06〜0.14、又は0.06〜0.15の範囲とすることができる。NAが0.08を超える、高解像度の露光機にもニーズが生じており、これらにも適用できる。
【0066】
こうした露光装置は、光源としてi線、h線、g線を含み、これらをすべて含んだ照射光(単一光源に対し、ブロードな光源であるため、以下ブロード光ともいう)を用いることができる。この場合、代表波長とは、i線、h線、g線のいずれとしても良いことは、前述のとおりである。シミュレーションにおいては、単純化のためにこれらの強度比を1:1:1としても良く、または実際の露光装置の強度比を考慮した比率にしても良い。
尚、本発明のフォトマスクは、被転写体上に形成される転写像が2階調となる用途に有利に用いられる。すなわち、いわゆる多段階のレジスト残膜値を得ようとする、3階調以上の多階調フォトマスクとは異なる機能をもつ。
また、本発明のフォトマスクにおいては、半透光部は、該半透光部が遮光部であった場合(形態2においては、遮光部の一部であった場合)に比較して、透光部を透過する光強度曲線のピークを上昇させる機能をもつ。このため、本発明のフォトマスクは、被転写体上に3μm未満のホールパターンを形成するときに、特に有利である。
【0067】
<フォトマスクの製造方法の実施形態>
次に、本発明のフォトマスクの製造方法の実施形態について、
図5〜
図8を参照しつつ説明する。
【0068】
[製造方法1]
図3(b)に示すフォトマスク1の製造方法1について、
図5(a)〜(d)を参照しつつ説明する。
【0069】
まず、
図5(a)に示すフォトマスクブランクを準備する。
図3(b)に示すフォトマスク1を製造するためのフォトマスクブランクは、透明基板10上に半透光膜20を形成し、この半透光膜20上にフォトレジスト膜40を形成する。
【0070】
次に、
図5(a)に示すように、図示しない描画機を用い、
図3(b)に示す半透光部21を形成するためのパターンをフォトレジスト膜40に描画する。
【0071】
そして、
図5(b)に示すように、上記の描画工程を経たフォトレジスト膜40を現像し、レジストパターン41を形成する。
【0072】
次いで、
図5(c)に示すように、上記の現像工程を経て形成されたレジストパターン41をマスクにして、半透光膜用エッチャントで半透光膜20をエッチングする。これにより、所定幅の半透光部21及び透光部11が形成される。尚、遮光膜のエッチングはドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。エッチャントは公知のものを使用できる。
【0073】
その後、
図5(c)に示すレジストパターン41を剥離することにより、
図5(d)に示す構成のフォトマスク1が完成する。
【0074】
[製造方法2]
次に、
図4(b)に示すフォトマスク2の製造方法2について、
図6(a)〜(g)を参照しつつ説明する。
【0075】
まず、
図6(a)に示すフォトマスクブランクを準備する。
図4(b)に示すフォトマスク2を製造するためのフォトマスクブランクは、透明基板10上に半透光膜20と遮光膜30とをこの順に形成し、更に遮光膜30上にフォトレジスト膜50を形成する。
【0076】
そして、
図6(a)に示すように、図示しない描画機を用い、
図4(b)に示す遮光部31を形成するためのパターンをフォトレジスト膜50に描画する。
【0077】
更に、
図6(b)に示すように、上記の1回目の描画工程を経たフォトレジスト膜50を現像し、レジストパターン51を形成する。
【0078】
次に、
図6(c)に示すように、上記の1回目の現像工程を経て形成されたレジストパターン51をマスクにして、遮光膜30をエッチングする。これにより、半透光膜20上に遮光部31が形成される。尚、遮光膜30のエッチングはドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。エッチャントは公知のものを使用できる。
【0079】
図6(c)に示すレジストパターン51を剥離した後、
図6(d)に示すように、遮光部31が形成された半透光膜20の全面に、再度、フォトレジスト膜60を形成する。その後、図示しない描画機を用い、
図4(b)に示す半透光部21を形成するためのパターンをフォトレジスト膜60に描画する。
【0080】
そして、
図6(e)に示すように、上記の2回目の描画工程を経たフォトレジスト膜60を現像し、レジストパターン61を形成する。
【0081】
次いで、
図6(f)に示すように、上記の2回目の現像工程を経て形成されたレジストパターン61をマスクにして、半透光膜20をエッチングする。これにより、半透光部21が形成される。上記の遮光膜30のエッチング工程と同様に、半透光膜20のエッチングも、ドライ又はウェットエッチングを、公知のエッチャントを用いて行うことができる。
【0082】
その後、
図6(f)に示すレジストパターン61を剥離することにより、
図6(g)に示す構成のフォトマスク2が完成する。
【0083】
上述した製造方法2において、
図6(a)〜(f)の工程を、下記i)〜vi)のように変更してもよい。
【0084】
i)上記製造方法2と同様のフォトマスクブランクを用意する。そして、描画機を用い、半透光部21を形成するためのパターンをフォトレジスト膜に描画する。
【0085】
ii)そして、上記i)のフォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する。
【0086】
iii)上記ii)のレジストパターンをマスクにして、遮光膜をエッチングし、続けて半透光膜をエッチングする。
【0087】
iv)上記iii)を経たレジストパターンを剥離した後、再度、全面にフォトレジスト膜を形成して、遮光部31を形成するためのパターンをフォトレジスト膜に描画する。
【0088】
v)上記iv)のフォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する。
【0089】
vi)上記v)のレジストパターンをマスクにして、遮光膜をエッチングする。これにより、所定の幅の遮光部31が形成され、
図6(g)に示す構成のフォトマスク2が完成する。
【0090】
尚、本発明のフォトマスクの機能を失わない限りにおいて、半透光膜、遮光膜の他に他の膜が形成される場合を排除しない。例えば、半透光膜と遮光膜のエッチング選択性が十分でない場合、すなわち、上層膜のエッチャントに対して、下層膜が十分な耐性をもたない場合には、下層膜と上層膜の間にエッチングストッパ層を設けてもかまわない。好ましくは、遮光膜と半透光膜はそれぞれのエッチング選択性をもつ膜材料からなることが好ましい。
【0091】
[製造方法3]
次に、
図4(c)に示すフォトマスク2の製造方法3について、
図7(a)〜(g)を参照しつつ説明する。
【0092】
まず、
図7(a)に示すフォトマスクブランクを準備する。これは、透明基板10上に遮光膜30を成膜し、更に遮光膜30上にフォトレジスト膜50を形成する。
【0093】
次に、
図7(a)に示すように、図示しない描画機を用い、
図4(c)に示す遮光部31を形成するためのパターンをフォトレジスト膜50に描画する。
【0094】
そして、
図7(b)に示すように、上記の1回目の描画工程を経たフォトレジスト膜50を現像し、レジストパターン51を形成する。
【0095】
次いで、
図7(c)に示すように、上記の1回目の現像工程を経て形成されたレジストパターン51をマスクにして、遮光膜30をエッチングする。これにより、透明基板10上に遮光部31が形成される。
【0096】
更に、
図7(c)に示すレジストパターン51を剥離した後、
図7(d)に示すように、上記の遮光膜のエッチング工程を経て形成された遮光部31を含む透明基板10の全面に、半透光膜20を成膜する。
【0097】
そして、
図7(e)に示すように、半透光膜20上に再度フォトレジスト膜60を形成した後、図示しない描画機を用い、
図4(c)に示す半透光部21を形成するためのパターンをフォトレジスト膜60に描画する。
【0098】
次いで、
図7(f)に示すように、上記の2回目の描画工程を経たフォトレジスト膜40を現像し、レジストパターン61を形成する。その後、このレジストパターン61をマスクにして、半透光膜20をエッチングする。これにより、半透光部21が形成される(
図7(g)を参照)。
【0099】
その後、
図7(f)に示すレジストパターン61を剥離することにより、
図7(g)に示す構成のフォトマスク2が完成する。
【0100】
上述した製造方法3の場合には、半透光膜20と遮光膜30の間に、特にエッチング選択性は必要ないため、材料選択の自由度が広いという利点がある。
【0101】
[製造方法4]
次に、
図4(b)に示すフォトマスク2の製造方法4について、
図8(a)〜(f)を参照しつつ説明する。
【0102】
まず、
図8(a)に示すフォトマスクブランクを準備する。これは、透明基板10上に半透光膜20と遮光膜30とをこの順に形成し、更に遮光膜30上にフォトレジスト膜70を形成する。
【0103】
そして、
図8(a)に示すように、図示しない描画機を用い、
図4(b)に示す半透光部21を形成するためのパターンをフォトレジスト膜70に描画する。
【0104】
次に、
図8(b)に示すように、上記の描画工程を経たフォトレジスト膜70を現像し、レジストパターン71を形成する。
【0105】
そして、
図8(c)に示すように、上記の現像工程を経て形成されたレジストパターン71をマスクにして、遮光膜用エッチャントで遮光膜30をエッチングする。
【0106】
更に、
図8(d)に示すように、引き続き、半透光膜用エッチャントで半透光膜20をエッチングする。これにより、所定幅の半透光部21及び透光部11が形成される。
【0107】
次いで、
図8(e)に示すように、レジストパターン71をマスクにして、遮光膜用ウェットエッチャントで遮光膜30をサイドエッチングする。これにより、所定幅の遮光部31が形成される。
【0108】
その後、
図8(e)に示すレジストパターン71を剥離することにより、
図8(f)に示す構成のフォトマスク2が完成する。
【0109】
上述した製造方法4の場合には、半透光膜20と遮光膜30とは、互いにエッチング選択性のある材料を用いる。また、
図8(e)に示す2回目の遮光膜のエッチング工程においては、等方性エッチングによるサイドエッチングを利用するため、ウェットエッチングを適用することが適切である。
【0110】
この製造方法4によると、描画工程が1回で良いため、2回の描画を必要とする製造方法1及び2に比べて、アライメントによるパターン精度の劣化を避けることができる。
【0111】
<フォトマスクを用いた転写方法>
本発明は更に、当該フォトマスクを用いた転写方法を含む。本発明のフォトマスクを用いた転写は、露光装置の照射光量を増加させずに(或いは減少させつつ)、微細パターンの転写が可能となる作用効果をもち、省エネルギー、或いは露光時間の短縮、生産効率の向上に著しいメリットをもたらす。
【0112】
本発明のフォトマスクにおいて、半透光膜の材料としては、Cr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)、Si化合物(SiO
2、SOG)、金属シリサイド化合物(TaSi、MoSi、WSi又はそれらの窒化物、酸窒化物など)等を挙げることができる。
【0113】
遮光膜の材料としては、Cr又はCr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)の他、Ta、W又はそれらの化合物(上記金属シリサイドを含む)等を挙げることができる。
【0114】
遮光膜と半透光膜の間にエッチング選択性が必要な場合には、遮光膜にCr又はCr化合物を用い、半透光膜にSi化合物又は金属シリサイド化合物を用いれば良い。或いは、逆に半透光膜にCr化合物を用い、遮光膜に金属シリサイド化合物を用いても良い。
【0115】
尚、本発明は、転写時に使用するレジストの種類による制限は特に無いが、本実施の形態においては、すべてポジ型のフォトレジスト(P/R)を用いて説明している。
【実施例】
【0116】
以下、転写用パターンをホールパターンとしたフォトマスクの比較例、実施例1、実施例2について、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。
【0117】
ホールパターンを転写用パターンとしてもつ、本発明の実施例1、実施例2に係るフォトマスクについて光学シミュレーションを行い、そのシミュレーション結果を比較例と比較した。
【0118】
<比較例、実施例1、実施例2の各フォトマスクの構成>
まず、比較例、実施例1、実施例2の各フォトマスクの構成について、
図9(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
図9(a)〜(c)は、それぞれ転写用パターンをホールパターンとしたフォトマスクの比較例(バイナリマスク3)、実施例1(透過補助マスク1)、実施例2(透過補助マスク2)のマスクイメージを示すものである。
【0119】
図9(a)において、比較例のフォトマスク3は、図示しない透明基板上に遮光膜(OD3以上)からなる遮光部31を形成し、この遮光部31の中央に、透光部11である正方形のホールHを形成したバイナリマスクである。
【0120】
図9(b)において、本発明の実施例1のフォトマスク1は、上記比較例と同一デザインの転写用パターンであって、上記比較例の遮光部31を、半透光膜からなる半透光部21に置き換えた透過補助マスク1である。この透過補助マスク1の半透光膜は、代表波長i線に対する露光光透過率が7%、位相シフト量が45°となっている。
【0121】
図9(c)において、本発明の実施例2に係るフォトマスク2は、遮光膜パターンの中央に、一定幅の半透光膜パターンを有し、この半透光膜パターンによって、透光部11である正方形のホールHが囲まれている。すなわち、連続する遮光部31によって囲まれた領域において、当該遮光部31のエッジに隣接して一定幅の半透光部21を形成した透過補助マスク2である。実施例2における半透光部21の露光光透過率については、次に述べる。
【0122】
上述した比較例、実施例1、実施例2の各フォトマスクの構成で、ホールHの寸法を一辺4.0μm、2.5μm、2.0μmの正方形として製作した、3種類のサンプルを用意した。また、本発明の実施例2においては、3種類のサンプルの半透光部21の幅をいずれも0.5μmとした。更に、実施例2において、ホールHの寸法が一辺4.0μm及び2.5μmのサンプルについては、その半透光部21の代表波長i線に対する露光光透過率を30%とし、ホールHの寸法が一辺2.0μmのサンプルについては、用いた半透光膜の代表波長i線に対する露光光透過率を35%とした。この条件のとき、後述する
図10に示されるように実施例1と実施例2の照射光量Eopがほぼ一致する。
【0123】
ここで、実施例1、実施例2の各フォトマスクに用いた半透光膜は、いずれも、代表波長i線に対する位相シフト量が45°である。
【0124】
尚、本光学シミュレーション結果を示す
図10のグラフ中には、比較例、実施例1、実施例2のそれぞれの評価に3つのプロットが示されているが、この3つのプロットは、上記3種類のサンプルにそれぞれ対応するものである。
【0125】
<シミュレーション条件、評価項目>
比較例、実施例1、実施例2のホールパターンをもつフォトマスクをそれぞれ、露光装置により露光したときの光学シミュレーションを行った。光学シミュレーション条件は、露光装置のNAを0.085、σを0.9、照射光源の強度がi線、h線、g線を含むブロード光であり、強度比をg線:h線:i線=1:0.8:0.95とした。本光学シミュレーションでは、
図9(d)に示す評価項目A〜Cを評価した。以下、評価項目A〜Cについて説明する。
【0126】
<<A:照射光量(DOSE量(Eop))>>
図9(d)の説明図は、ホールパターンをもつフォトマスクによって形成されるレジストパターンの断面形状を示すものである。図中の黒塗りの部分がエッチングマスクとなるレジストパターンであり、その間の白抜きの部分がホールHに対応するレジストパターン上の抜きパターンである。
【0127】
本光学シミュレーションにおける照射光量(DOSE量(Eop))は、フォトマスクのホールHの透光部幅(CD)と、ホールHを透過した露光光によって形成されるレジストパターン上の抜きパターン幅とが等しくなるために必要な照射光量である。
【0128】
照射光量Eopの数値が小さいほど、生産効率が高い、又は省エネルギーとなる。
【0129】
<<B:レジスト傾斜角>>
本光学シミュレーションにおけるレジスト傾斜角は、
図9(d)の説明図に示す黒塗りのレジストパターンのうち、白抜きの部分(抜きパターン)との境界部の傾斜角である。このレジスト傾斜角は、被転写体を水平に載置したとき、被転写体の面に対して垂直である場合の傾斜角(90°)を最大として表現する。製造工程における安定性を重視すれば、レジスト傾斜角は大きいほど好ましい。レジスト傾斜角が大きいほど、このレジストパターンをエッチングマスクとして使用する場合の径や幅の変動を小さく抑えられるからである。また、用途に応じた所望の傾斜角を形成したい場合には、目標傾斜角が正確に得られることが望ましい。
【0130】
<<C:レジスト膜減り>>
レジスト膜の初期膜厚(1.5μm)に対する減膜量を示す。
図9(d)の説明図に示す黒塗りのレジストパターンのレジスト膜減りは、小さいほど好ましい。レジスト膜減りが大きい場合は、このレジストパターンを用いてドライエッチングを行うときに、特に深刻となりうる。
【0131】
<シミュレーション結果>
比較例、実施例1、実施例2の各フォトマスクについて、上記評価項目A〜Cのシミュレーション結果を
図10に示す。
図10は、比較例、実施例1、実施例2のシミュレーション結果を比較するものであり、
図10(a)は照射光量、
図10(b)はレジスト傾斜角、
図10(c)はレジスト膜減りを示すグラフである。
【0132】
図10(a)に示すように、実施例1及び2は、比較例に比べて、必要な照射光量を大幅に少なくすることができる。すなわち、走査露光に必要な時間が短縮でき、生産効率の向上に寄与することが明らかである。
【0133】
図10(b)に示すように、レジスト傾斜角は、実施例1において、比較例より小さくなっているが、実施例2においては、比較例とほぼ同等の大きさを示す。実施例1においては、35°以上、実施例2においては45°以上を示している。また、透光部の幅を2.5μm以上とすれば、50°以上の傾斜角を得られる。
【0134】
図10(c)に示すように、レジスト膜減りについては、実施例1において生じているが、実施例2においては生じていない。このため、実施例2のフォトマスクによって形成したレジストパターンは、ドライエッチングプロセスにも非常に適していることがわかる。
【0135】
以上の評価項目A〜Cを総合評価として、本発明のフォトマスクは、露光に必要な照射光量を節減し、しかも、エッチングマスクとして優れた形状のレジストパターンを形成することができる。このようなレジストパターンを、従来パターニングが困難であった微細パターンにおいて実現する意義は大きい。更に、上記形態1及び2の適切な選択により、上記傾斜角を所望値に調整できる自由度があるため、得ようとする電子デバイスの特性、或いはその製造上の便宜に応じて、ホールパターンのテーパ角を自由に選択できる点において、優位性がある。