(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。下記における方向の表現は、輻射パネルを
図1に示すように壁面Wに設置した場合における方向による。なお、本発明が下記において説明する方向の態様のみに限定解釈されないことは言うまでもない。
【0019】
本実施形態の輻射パネルPは、
図1及び
図2に示すものであり、パネル部1と、パネル部1の背面側に位置し、内部を熱媒体が流される熱交換用パイプ2とを備える。パネル部1の正面である熱交換面1aから室内に居る人等に対して及ぼす輻射熱、また、熱交換面1aと室内の空気との熱交換(暖房の場合は放熱、冷房の場合は吸熱による)により、室内の冷暖房を行うことができる。そして、パネル部1と熱交換用パイプ2との組み合わせの上端部に上カバー5が取り付けられ、下端部に下カバー6が取り付けられる。この輻射パネルPは、室内における壁面Wに設置するのに適している
。この輻射パネルPは、
本発明外の参考例として、壁面W以外に天井や床面に設置することも可能である(設置位置に適した設計を行う必要がある)。
【0020】
パネル部1は、正面視にて縦長長方形状である単体パネル11が幅方向(本実施形態では横方向)に複数枚接続されて構成されたユニットである。図示のように、本実施形態では3枚の単体パネル11により1ユニットのパネル部1が構成される。単体パネル11の各々は、
図2(C)(D)に示すように、背面側にて幅方向に延びる固定バー3にビス止めで固定される。
【0021】
前記のように、本実施形態のパネル部1は、複数枚の単体パネル11から構成されており、特許文献1に係る発明における一枚物の構成とは異なっている。本実施形態では、パネル部1を構成する単体パネル11の枚数により輻射パネルPの冷暖房能力を容易に設定できる。よって、前記一枚物の構成では、冷暖房能力に対応して大きさの異なるパネル部が必要となるのに対し、本実施形態では、長手寸法が同一である一種類の単体パネル11だけで複数の幅寸法に対応できるため、部品を共通化できる。よって、パネル部1の製造工程を簡略化でき、部品の在庫負担を軽くできる。このため、コストダウンに貢献できる。また、輻射パネルPの設計も簡略化できる。
なお本発明の範囲を外れるが、参考例として、押出成形により形成された一枚のパネル部1により輻射パネルPを構成することも可能である。
【0022】
単体パネル11は金属製の押出成形品で、板状の本体部111、本体部111の背面にて長手方向に延びるパイプ支持部112、本体部111の幅方向端部にて背面側に延びる側端部113がすべて一体とされている。この単体パネル11は押出成形品であるため、断面形状が長手方向で同一である。このため、所定の長手寸法で切断するだけで単体パネル11を製造でき、バリ取り以外には端部の加工を格別必要としない。このため、単体パネル11の製造が容易であり生産性に優れる(コストダウンに貢献できる)。なお、このような一体形状である単体パネル11(またはパネル部1)はプレス加工では形成困難であるが、本実施形態のような押出成形では形成可能である。また、本実施形態における単体パネル11の材料は、アルミニウム合金押出形材(JIS H 4100 A6063S-T5)であるが、その他種々の金属材料を用いることができる。また、場合によっては金属以外の材料も使用可能である。単体パネル11に用いる材料としては、熱伝導率が大きく、かつ、押出成形に適した物性を有する材料が好ましい。
【0023】
本体部111は、本実施形態では厚みT1(
図3参照)が2.2mmの平板状であり、正面、背面が平行な平面とされている。この本体部111は、例えば正面側にて効率良く放熱または吸熱するためのフィンや凹凸を備えたり、背面側に断熱材を保持するためのピン状の突出部を備えたりしても良い。本体部111の厚みT1に関しては、薄い方が熱容量を小さくできるために熱媒体の温度に鋭敏に追従できることで、良好に熱伝達されるが、強度との兼ね合いがあるため、1.5mm〜3.0mmとすることが好ましい。
【0024】
パイプ支持部112は本体部111と一体であり、特許文献1に係る発明におけるパネル部と受け具が別体の構成とは異なる。材質が同じでかつ一体であることにより、パイプ支持部112から本体部111への熱伝達にロスが生じにくい。よって、熱交換用パイプ2を流れる熱媒体から熱交換面1aへの熱伝達が阻害されにくく、効率良く冷暖房を行うことができる。
【0025】
このパイプ支持部112は、
図2(C)(D)及び
図3(A)に示すように、1枚の単体パネル11当たりで平行な2列が、単体パネル11の長手方向に沿い、一端から他端にわたって延びている。単体パネル11におけるパイプ支持部112の幅方向の位置は、幅方向端部から65mmであり、平行なパイプ支持部112同士の間隔は130mmとされている。この2列のパイプ支持部112は、熱交換用パイプ2の2往復分(熱媒体の往還2回分)に対応している。また、前記の130mmは、熱交換用パイプ2の曲げについて加工上許容される最小半径よりも大きくなるように決定された寸法である。
【0026】
これにより、単体パネル11が幅方向に複数枚接続されたパネル部1にて、パイプ支持部112が幅方向に同一間隔(130mm)をおいて並列する。
図2(C)に示すように、このパイプ支持部112には熱交換用パイプ2における直線部21が取り付けられる。一方、熱交換用パイプ2における、湾曲した部分である連結部22は、パネル部1から上下にはみ出て位置する。ちなみに、この熱交換用パイプ2のはみ出た部分は、
図1及び
図2(A)(B)に示すように、パネル部1の上下端部に取り付けられる上カバー5及び下カバー6により覆われる。
【0027】
このように、熱交換用パイプ2における湾曲した部分(連結部22)はパイプ支持部112に取り付けられず、直線部21のみがパイプ支持部112に取り付けられる。ここで、例えば特許文献1に記載の輻射パネルでは、パネル部に対して長手方向の全部でなく部分的に受け具を配置することにより、熱交換用パイプが干渉しないようにしていた。これに対し、本実施形態のパネル部1では、押出成形されたままの単体パネル11に対し、熱交換用パイプ2を取り付けるための加工(例えばパイプ支持部112の一部を切断する等)を施したり、熱交換用パイプ2をパネル部1から浮かすように曲げる加工をしたりすることなく、熱交換用パイプ2(特に連結部22)が干渉しない取り付けが可能である。このため、熱交換用パイプ2の取り付けが容易で能率的に輻射パネルPを組み立てることができ、作業工数が削減され(施工性が良好で)コストダウンに貢献できる。
【0028】
このパイプ支持部112は、嵌合によりパネル部1(単体パネル11)から脱落しない程度に熱交換用パイプ2を支持すべく、内面112aが熱交換用パイプ2の外面に沿ってまわり込み、熱交換用パイプ2の横断面形状における外周縁のうち半分を超えて覆う形状とされている。より詳しく述べると、
図3(B)に示すように、幅方向における外側に位置する外支持部1121と、中央側に位置する中間支持部1122とを有する、断面略「ω」字形とされている。そして、パイプ支持部112における、外支持部1121の内面112aが、水平断面視(パイプ支持部112の長手方向に直交する断面視)における断面形状で略円弧状とされ、この内面112aの曲率Rが、熱交換用パイプ2の取り付け時に熱交換用パイプ2の外面の曲率と一致する。この内面112aの曲率Rに関し、本実施形態では、直径16mmの熱交換用パイプ2が取り付けられるため、曲率半径が8mm(製造誤差を考えない場合)とされている。中間支持部1122において熱交換用パイプ2に当接する当接面1122aも同一の曲率半径とされている。
【0029】
ここで、特許文献2に係る発明では、パネル部の本体部111に相当する部分の厚みと断面「U」字形状であるパイプ支持部の厚みとが同一であった。こうしていた理由として、厚みの小さな部分における成形時の押出不良を抑制するためと推定される。また、特許文献2に係る発明では、押出成形後の冷却中にパネル部が歪むことを抑制するため、略平板状部分が対向してなる断面「U」字形状が採用されたと推定される。このような、パネル部の本体部111に相当する部分の厚みと同一である、厚みの大きな断面「U」字形状では、パイプ支持部を弾性変形させて熱交換用パイプを支持することは不可能である。このため、特許文献2に係る発明では、熱交換用パイプがパイプ支持部に直接当接するのが正面側半分のみとなり、熱交換用パイプの外面における正面側半分しか熱交換に寄与できず、熱交換用パイプからパイプ支持部への熱伝達にロスが生じる可能性がある。また、パイプ支持部に熱交換用パイプを固定するための部材(パイプ固定部材)が別に必要であった。
【0030】
これに対して本実施形態のパイプ支持部112は断面略「ω」字形状である。このため、熱交換用パイプ2の取り付け時に、パイプ支持部内面112a、及び、中間支持部1122の当接面1122aが熱交換用パイプ2の外面に、周方向に沿って位置し、しかも、パイプ支持部内面112a、及び、中間支持部1122の当接面1122aと熱交換用パイプ2の外面とを密着させることができる。この密着により、前記両者の当接面積を大きくとることができるため、熱交換用パイプ2からパイプ支持部112への熱伝達にロスが生じにくい。よって、熱交換用パイプ2を流れる熱媒体から熱交換面1aへの熱伝達が阻害されにくく、効率良く冷暖房を行うことができる。なお本実施形態では、パイプ支持部内面112aのほぼ全面が熱交換用パイプ2の外面に密着しているが、これに限定されず、パイプ支持部内面112aのうち少なくとも一部が熱交換用パイプ2の外面に当接して、熱伝達がなされる構成であれば良い。
【0031】
また、このパイプ支持部112は、パイプ支持部内面112aの曲率中心C(取り付けられた熱交換用パイプ2の中心と略一致、本実施形態では、一つのパイプ支持部112に二つの曲率中心Cが存在する)を通り、本体部111と平行に延びる仮想面Lよりも背面側に先端112bが位置する。本実施形態では、この先端112bの位置は前記(各)曲率中心Cから背面側回りで20°を超えた位置にある。本実施形態では、中間支持部1122の先端1122bも同位置にある。そして、先端112bと中間支持部1122の先端1122bとの組み合わせにより開口部112cが規定される。この開口部112cの、幅寸法(1本の熱交換用パイプ2に対応する幅寸法)は熱交換用パイプ2の直径よりも狭い。また、パイプ支持部112の外支持部1121は一定厚みを有する形状で、当該一定厚み部分の厚みT2は1.5mmである。このパイプ支持部112における前記一定厚み部分の厚みT2は、本体部111の厚みT1(2.2mm)よりも小さい。このため、熱交換用パイプ2を嵌合させる際にパイプ支持部112を容易に弾性変形させることができる。よって、嵌合作業時の施工性が良好である。
【0032】
また、
図3(B)に示すように、パイプ支持部112の基部と本体部111との接続箇所にはアールが形成されている。このため、この基部においてパイプ支持部112の厚みが大きくなっている。これにより、パイプ支持部112と本体部111との間の熱伝達が、両者の接続箇所で阻害されることがなくスムーズになされる。
【0033】
パイプ支持部112がこのように断面略「ω」字形状とされたことにより、熱交換用パイプ2を嵌合させるべく、背面側から熱交換用パイプ2が押し込まれた場合、パイプ支持部112(特に外支持部1121)が押し込みに係る外力を受け、開口部112cが広がるようにパイプ支持部112が幅方向に弾性変形する。本実施形態では、パイプ支持部112の基端が本体部111に接続されているため、接続部分よりも背面側に位置するパイプ支持部112(特に外支持部1121)の全体を弾性変形させることができ、一部だけしか弾性変形しない構成に比べて、弾性変形時の変位を均等にできる。このため、熱交換用パイプ2に対して均等に弾性力をかけることができて、熱交換用パイプ2が損傷しにくい。そして、熱交換用パイプ2がパイプ支持部112に押し込まれた後は、前記弾性変形が、開口部112cが狭まるようにして復帰する。これにより、熱交換用パイプ2がパネル部1(単体パネル11)から脱落しない程度の適度な弾性により嵌合される。
【0034】
なお、熱交換用パイプ2の嵌合作業のし易さと嵌合状態の確実な保持とを考慮して、パイプ支持部先端112b及び中間支持部1122の先端1122bは、前記(各)曲率中心Cから背面側回りで15°〜25°の位置とすることが好ましい。つまり、開口部112cの好ましい開口範囲は130°〜150°となる。ただし、開口範囲は前記に限定されず、熱交換用パイプ2の横断面形状が円形の場合、パイプ支持部内面112aの(各)曲率中心C(取り付けられた熱交換用パイプ2の中心と略一致する)を基準とした角度で180°未満であれば良い。この開口範囲であれば、パイプ支持部112の内面112aを熱交換用パイプ2の外面に沿ってまわり込むように位置させることができるためである。また、外支持部1121の厚みT2については、本体部111の厚みT1と同様に熱伝達と強度との兼ね合い、そして、弾性及び押出成形が可能な厚みを総合的に考慮し、1.0mm〜2.5mmとすることが好ましい。
【0035】
このように、本実施形態のパイプ支持部112は、嵌合により熱交換用パイプ2が支持される(特にこのパイプ支持部112は、
図2(D)に示すように、狭い間隔をおいて並行する2本の直線部21a,21bを一括して支持する)。よって、例えば特許文献2に係る発明において、パイプ支持部を断面「U」字形状としたことに伴い必要となるパイプ固定部材のような、パネル部1と熱交換用パイプ2とを固定するための別個の部品が不要である。また、背面側から熱交換用パイプ2を押し込むだけのワンタッチ取り付けが可能であり、取り付けのための工具も不要である。このため、部品点数及び作業工数を削減でき、施工性が良好でコストダウンに貢献できる。また、パイプ支持部112の弾性により、前記外支持部1121の内面112a、及び、中間支持部1122の当接面1122aと熱交換用パイプ2の外面との密着状態が確実に保たれるため、熱交換用パイプ2を流れる熱媒体から、パネル部1の正面である熱交換面1aへの良好な熱伝達が安定的になされる。
【0036】
側端部113は、
図3(C)に示すように、いずれも板状である接続面部113a、控え部113b、背面部113cを備える。接続面部113aは、本体部111の幅方向端部が90°背面側に折り曲げられた部分である。控え部113bは、接続面部113aの途中から幅方向内側に分岐した後、接続面部113aと平行に背面側に延びる部分である。背面部113cは、控え部113bにおける背面側の端部が幅方向内側に折り曲げられた部分である。そして、接続面部113aと控え部113bとの間には、正面・背面方向に沿う溝部113dが形成される。この溝部113dの幅方向寸法は、側面板4(
図2(D)参照)の厚みに略一致している。また、少なくとも接続面部113a及び控え部113bの幅方向外側の面と、背面部113cの背面側の面とは平面とされている。また、
図2(D)に示すように、控え部113bには、側面板4の固定用であるねじ(ドリルネジ)41が貫通する。そして背面部113cには、固定バー3の固定用であるねじ(ドリルネジ)31が貫通する。なお、本実施形態では控え部113b及び背面部113cにはドリルネジであるねじ31,41の貫通に伴い穴あけがなされるが、控え部113b及び背面部113cに、ねじ31,41が通る貫通穴があらかじめ形成されていても良い。
【0037】
単体パネル11が幅方向に複数枚接続される際には、
図2(D)に示すように、単体パネル11同士の接続部分においては、接続面部113aの幅方向外側の面同士が当接する。そして、幅方向端部に位置する単体パネル11の、更に幅方向端部における溝部113dには、側面板4が取り付けられる。側面板4は、溝部113dに取り付けられると正面側の端部が隠されるため、美観を向上でき、かつ、作業者が側面板4における正面側の端部(切断面)に触れて負傷することを抑制できる。
【0038】
ここで、固定バー3は、パネル部1の幅寸法と略一致する長さとされており、本実施形態ではC形チャンネル形状とされている。この固定バー3は、
図2(C)に示すように、単体パネル11の長手方向に直交するように略等間隔に4本が配置され、この固定バー3と前記背面部113cとが重ね合わされた状態で、
図2(D)に示すように、ねじ(ドリルネジ)31が貫通されて固定される。固定バー3に背面部113cを沿わせることで組み合わされた複数の単体パネル11によりフラットな熱交換面1aを容易に形成できる。
【0039】
また、側面板4は、壁面Wに設置された状態のパネル部1と壁面Wとの間の隙間を埋めることのできる平板状体であり、この側面板4の正面−背面方向の寸法は、前記溝部113dの底面から壁面Wまでの寸法に略一致している。また、この側面板4における背面側の端部は、
図2(D)に示すように折り返しがなされている。これにより、例えば壁面Wへ輻射パネルPを設置する際に、作業者が側面板4の背面側の端部に触れて負傷することを抑制でき、安全な作業ができる。
【0040】
以上のように側端部113が形成されたことにより、単体パネル11を幅方向に複数枚接続してユニットであるパネル部1を構成することが容易にできる。
【0041】
熱交換用パイプ2は、断面形状が円形のパイプであり、
図2(C)及び
図4に示すように、パネル部1に沿って延び、幅方向に並行する複数(本実施形態では12本)の直線部21と、これら直線部21のうちで隣り合うものの端部同士を結ぶ、湾曲した部分である連結部22とを有する。連結部22は、直線部21の端部にて熱媒体の流れる方向を転換するもので、本実施形態では180°方向転換される。本実施形態では、直線部21と連結部22とが交互に位置しており、一端が熱媒体の入口となり、他端が熱媒体の出口となる連続する一つの流路を構成している。ただし、この形態に限定されるものではなく、1ユニットのパネル部1で複数の入口・出口を有するように構成されていても良い。また本実施形態では、図示のように、入口・出口とも壁面Wへ配置した状態で上端に位置しているが、入口・出口のうち一方あるいは両方が下端に位置しても良い。
【0042】
ここで、前記並行する直線部21〜21は、図示のように、広い間隔と狭い間隔とを交互において並行する。狭い間隔をおいて並行する部分では、熱媒体の流れを基準とした往方向直線部21aと還方向直線部21bとが並行する。つまり、この部分では、熱媒体の流れが対向する関係にある2本の直線部21a,21bが並行し、一つのパイプ支持部112に一括して支持される。このため、別個に支持する場合よりも並行する2本の直線部21a,21bの間隔を狭くできる。なお、この狭い間隔をおいて並行する部分での2本の直線部21a,21bは、本実施形態では、パイプ支持部112の中間支持部1122が位置できる隙間をおいて離れているが、中間支持部1122が各直線部21a,21bに挟まらないような形状であること等により、各直線部21a,21bの外面が当接していても良い。
【0043】
また前記連結部22は、加工上許容される最小半径以上の曲げ半径で折り返されている。このため前記連結部22は、前記並行する直線部21,21同士が広い間隔をおいて並行する部分にあっては、
図4の上側にて示したように、前記並行する直線部21,21の各端部寄り延長部分が次第に狭い間隔となるようにして連結がなされた、「U」字形状で湾曲するU形連結部22aとなる。一方、前記並行する直線部21,21同士が狭い間隔をおいて並行する部分にあっては、
図4の下側にて示したように、前記並行する直線部21,21(21a,21b)の各端部寄り延長部分が一度広げられた後、次第に狭い間隔となるようにして連結がなされた、略「ラケット」形状で湾曲するラケット形連結部22bとなる。
【0044】
このように連結部22がU形連結部22a(広い側)とラケット形連結部22b(狭い側)との組み合わせとされたことで、パイプの曲げ加工により熱交換用パイプ2を形成する際に、加工上許容される最小半径以上の曲げ半径(U形連結部22aにおける曲げ半径R1、ラケット形連結部22bにおける曲げ半径R2)を保ちつつ、高い密度で直線部21〜21を並行させることができる。よって、パネル部1の1枚当たりに配置される熱交換パイプ2の密度を向上でき、輻射パネルPの単位面積当たりの性能を向上できる。
【0045】
この熱交換用パイプ2は、継手を介してヒートポンプやチラーユニット等の熱媒体供給機器に接続され、熱媒体供給機器により所定温度とされた熱媒体(水(暖房の場合は温水、冷房の場合は冷水)や不凍液等の冷媒あるいは熱媒となる流体)が所定の流速で流される。この熱交換用パイプ2としては、金属(アルミ)層を樹脂層で挟んだ三層管が用いられている。この三層管は曲げ加工が容易であるとのメリットがある。なお、少なくともパイプ支持部112に取り付けられる部分において、金属層が外面に露出したパイプを用いても良い。このようなパイプを用いた場合、熱交換用パイプ2の金属層と金属製のパイプ支持部112とが直接当接するため、樹脂層が外面に露出したパイプよりも効率の良い熱伝達が可能となる。また、パイプの断面形状は真円でなく、例えば楕円形や多角形であっても良い。
【0046】
上カバー5は、パネル部1の上方にて、熱交換用パイプ2がはみ出た部分(直線部21の一部と連結部22)を、
図5に示すように覆う。この上カバー5は鋼板製で、正面と左右側面とを覆うことができるように、水平断面形状が略「コ」の字状とされている。そして、この上カバー5は、
図5(B)に示すように、パネル部1における側端部113と側面板4に対してねじ止めにより固定される。
【0047】
上カバー5の上下端部は、鋼板が内側に折り返された返し部51とされている。この返し部51により、上カバー5の上下端部が鋼板を単に切断したままであるものに比べて、輻射パネルPを設置する作業者が負傷しにくく、安全に作業できる。
【0048】
また、上カバー5の内面には樹脂製のスペーサー52が取り付けられている。このスペーサー52は、
図5(A)に示すように略「L」字状とされ、上カバー5の本体部分とパネル部1及び側面板4との間に介在するように配置される。このため、パネル部1から伝わる熱をこのスペーサー52が遮断することができ、意図しない上カバー5への熱伝達を防止できる。これにより、上カバー5の外面または内面に結露が発生して床面等を濡らしてしまうことを抑制できる。また、このスペーサー52は前記のように略「L」字状とされていることから、上カバー5を前記のようにねじ止め固定する際に、パネル部1における側端部113及び側面板4の上端に仮置きできる。このため、作業者が固定作業を楽にでき、施工性が良い。なお、上カバー5の全体を樹脂製としても良い。
【0049】
下カバー6は上カバー5と同一形状であり、パネル部1の下方にて、熱交換用パイプ2がはみ出た部分(直線部21の一部と連結部22)を、
図6に示すように覆う。上カバー5と同様、この下カバー6は鋼板製で、正面と左右側面とを覆うことができるように、水平断面形状が略「コ」の字状とされている。そして、この下カバー6は、
図6(B)に示すように、パネル部1における側端部113と側面板4に対してねじ止めにより固定される。
【0050】
上カバー5と同様、下カバー6の上下端部は、鋼板が内側に折り返された返し部61とされており、安全に作業できる。また、作業中に床面を傷つけてしまうことを抑制できる。この下カバー6は、
図6(A)(B)に示すように、わずかな隙間をおいてパネル部1に固定される。このため、例えば子供が隙間に指を差し込んで負傷したり、ごみや小物を下カバー6に落とし込んだりすることを抑制できる。
【0051】
また、上カバー5と同様、下カバー6の内面には樹脂製のスペーサー62が取り付けられている。このスペーサー62は、
図6(A)に示すように略「L」字状とされ、下カバー6の本体部分とパネル部1及び側面板4との間に介在するように配置される。このため、パネル部1から伝わる熱をこのスペーサー62が遮断することができ、意図しない下カバー6への熱伝達を防止できる。これにより、下カバー6の外面または内面に結露が発生して床面等を濡らしてしまうことを抑制できる。なお、下カバー6の全体を樹脂製としても良い。
【0052】
下カバー6は、内部に樋状の結露受け部7を備える。この結露受け部7は、壁面Wに固定されるものであり、熱交換用パイプ2の下方に位置し、特に冷房時において発生する熱交換用パイプ2及びパイプ支持部112の結露水を受け、結露受け部7に接続された排水パイプ71を通して排水できる。このように結露受け部7を備えることで、輻射パネルPからの結露水の落下により床面を濡らしてしまうことを抑制できる。本実施形態の輻射パネルPでは、結露自体を抑制するという思想はなく、むしろ、積極的に結露を発生させてそれを結露受け部7で受け止めるようにしている。このように積極的に結露を発生させることにより、室内の除湿を行えるというメリットがある。
【0053】
以上のように構成された輻射パネルPは、
図1に示すように壁面Wに設置される。そして、
図2(B)に示すように、この輻射パネルPは、床面Fから離して設置される。このため、室内を掃除機等で掃除する際の邪魔になりにくく、輻射パネルPの設置場所を美しく保つことができる。
【0054】
この輻射パネルPは、
図2(A)(B)に示すように、壁面Wに取り付けられたブラケットBに固定バー3を引掛けることにより設置される。このように、輻射パネルPは壁面Wに直接固定がなされず、吊り下げられた形で設置されるため、例えばメンテナンス時に輻射パネルPを壁面Wから取り外すことが比較的容易であり、作業性が良い。
【0055】
次に、他の実施形態について述べる。この実施形態は、
図7に示すように、本体部111の背面側に導熱部8を設けたものである。この導熱部8は、少なくともパイプ支持部112に施され、少なくともパイプ支持部112と本体部111の背面側に位置する空気との間での熱交換を、熱流路の形成、断熱部の形成のいずれかにより抑制する。暖房の場合では、少なくともパイプ支持部112から本体部111の背面側に位置する空気への放熱を抑制し、冷房の場合では、本体部111の背面側に位置する空気から少なくともパイプ支持部112への吸熱を抑制する。
【0056】
ここで、
図2(D)に示すような状態では、パイプ支持部112及び熱交換用パイプ2の背面側における露出面にて、パネル部1の背面側の空気に対して熱交換が行われてしまい、前記熱交換に係る熱の分は、パネル部1の熱交換面1aから室内に居る人等に対して及ぼす輻射熱、また、熱交換面1aと室内の空気との熱交換に直接寄与できない。これに対し、この実施形態のように導熱部8を設けた場合、前記状態に比べると、暖房の場合は前記背面側から放熱される熱を正面側に導くことができ、冷房の場合は前記背面側の熱を吸熱しにくくして、その分、正面側で放熱または吸熱ができる。このため、背面側で熱交換されていた熱に相当する分、熱交換面1aから室内に居る人等に対して輻射熱を有効に及ぼすことができる。また、熱交換面1aにて室内の空気との熱交換を行うことができる。よって、熱交換面1aで熱交換を集中的に行うことができ、輻射パネルPの性能を向上できる。
【0057】
この導熱部8の具体的な実施形態として3種を以下に例示する。まず、一つ目の例は背面側から正面側への熱流路を確保するための導熱カバー81である。これは、パイプ支持部における外支持部1121の先端112b、中間支持部1122の先端1122b、熱交換用パイプ2のうち開口部112cにおいて露出した外面を覆うようにしてパイプ支持部112に背面側から取り付けられるカバーである。本例の導熱カバー81は、導熱カバー81自体の弾性によりパイプ支持部112に嵌合し、内面が熱交換用パイプ2のうち開口部112cに露出した外面に当接する。本例の導熱カバー81の材質はパイプ支持部112と同一材質であるが、他の材質であっても良い。
【0058】
この導熱カバー81はパイプ支持部112に当接することから、暖房の場合、特に熱交換用パイプ2のうち開口部112cに露出した外面における熱を、導熱カバー81を介してパイプ支持部112に導くことができる。そして冷房の場合、熱交換面1aで吸熱された熱のうち一部をパイプ支持部112から導熱カバー81を介して熱交換用パイプ2に導くことができる。このようにして、熱交換用パイプ2(特に開口部112cに露出した外面)と熱交換面1aとを結ぶ熱流路を確保でき、無駄な熱を冷暖房のために必要な部分に移動できる。
【0059】
二つ目の例は、断熱により正面側との熱交換を優先的に行わせるための断熱部であって、具体的には、パイプ支持部112の外面(熱交換用パイプ2に接しない部分)及び本体部111の背面に太線で図示したように形成された、熱反射部としての断熱層82である。この例では、黒色の塗料が塗布されて形成された塗膜(または樹脂層)であり、パイプ支持部112の外面及び本体部111の背面全面に形成されている。暖房の場合、熱交換用パイプ2からパイプ支持部112及び本体部111の内部を介して伝わる熱はこの断熱層82により前記各部の内部で反射させられて熱交換面1aに導かれる。そして冷房の場合、熱交換面1aで吸熱された熱のうち一部が本体部111の内部及びパイプ支持部112を伝わり、断熱層82により反射させられて熱交換用パイプ2に導かれる。この断熱層82は、塗装の他に、メッキ、蒸着、フィルム貼付により形成されても良い。また、塗膜の場合、他種塗料(断熱性塗料など)や他色の塗料により形成されたものであっても良い。また、この断熱層82は、パイプ支持部112に加え、熱交換用パイプ2の背面側における露出面に形成されていても良い。
【0060】
三つ目の例も同じく断熱部であって、具体的には、本体部111、パイプ支持部112、熱交換用パイプ2を背面側から覆う断熱材83である。この断熱材83により、暖房の場合、パイプ支持部112及び熱交換用パイプ2の背面側における露出面における熱が、パネル部1の背面側へと放熱されることが妨げられ、冷房の場合、パネル部1の背面側からパイプ支持部112及び熱交換用パイプ2の背面側における露出面への吸熱が妨げられる。この断熱材83としては、パイプ支持部112及び熱交換用パイプ2が嵌め込まれるような凹部が形成された発泡スチロール板、ガラス繊維、吹付により付着された樹脂層(ウレタン等)、エアバッグが例示できるが、その他種々の断熱性を有する物質を用いることができる。
【0061】
特に、導熱部8として断熱材83を用いる場合には、輻射パネルPを壁面Wに埋め込み(ビルトイン)、断熱材83を建物側の断熱材と兼用することもできる。
【0062】
また、上記3種の他に、例えば、導熱カバー81の背面側に部分的に断熱材83を配置するなど、前記各例を適宜組み合わせた形態でも良い。また、導熱部8として本体部111、パイプ支持部112、熱交換用パイプ2の背面側に離隔して熱反射部材を配置し、例えば暖房の場合、前記各部の熱を背面側にて反射させ、本体部111の正面に導くこともできる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について、いくつかの例を挙げて説明したが、本発明は前記各例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0064】
例えば、パイプ支持部112に中間支持部1122が設けられず、当該パイプ支持部112に支持される熱交換用パイプ2の2本の直線部21a,21b同士が当接するものであっても良い。また、中間支持部1122が設けられた場合であっても、
図3(B)に示す以外の形状であって良い。
【0065】
また、パイプ支持部112が本体部111とは別体に形成され、各々が接着されて一体とされても良い。
【0066】
また
参考例として、単体パネル11が長手方向に接続される複数パーツからなるものであっても良い。この構成では、例えばパイプ支持部112を形成したパーツと形成しないパーツを組み合わせることにより、パイプ支持部112が長手方向に断続的に配置された単体パネル11を形成できる。
【0067】
また、前記実施形態のようにパイプ支持部112が幅方向に弾性変形して、熱交換用パイプ2を脱落しないように嵌合させる構成以外に、熱交換用パイプ2がパイプ支持部112に位置するだけであり、例えば断熱材による押圧により両者が保持される構成であっても良い。
【0068】
また、パイプ支持部112の開口部112cは、
図3(A)(B)に示すような背面方向に開口したものに限らず、例えば幅方向(図示左右方向)に開口したものや、斜め方向に開口したものであっても良い。
【0069】
また、前記実施例のように、壁面Wに対して輻射パネルPの長手方向が上下方向に一致する縦方向設置に限らず、横方向設置であっても良い。