(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
次の(a)〜(e)成分を含み、(d)成分の配合量が70質量%未満であって、(e)成分の配合量が(b)成分の配合量の2倍以上であることを特徴とする液状制汗用組成物。
(a)メントールまたはその誘導体
(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤
(c)パラフェノールスルホン酸亜鉛
(d)エタノール
(e)粘土鉱物
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる液状制汗用組成物は、(a)メントールまたはその誘導体、(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤、(c)パラフェノールスルホン酸亜鉛、(d)エタノールを含み、
(d)成分の配合量が50質量%以上である、または、
(d)成分の配合量が70質量%未満であって、さらに(e)粘土鉱物を含むことを特徴とする。
以下、各成分について詳述する。
【0011】
((a)メントールまたはその誘導体)
(a)メントールまたはその誘導体は、通常外用剤に配合可能な成分を配合することができる。
(a)成分としては、例えば、l−メントール、dl−メントール等のメントール、乳酸メンチル、l−メンチルグリセリルエーテル、l−メンチルグルコシド、l−メンチルヒドロキシブチレート、メントキシプロパンジオール、メントキシフラン等のメントール誘導体が挙げられる。
【0012】
(a)成分の配合量は、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。配合量が0.001質量%未満の場合、清涼感を感じにくい場合がある。
また、(a)成分の配合量は3質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。配合量は多くても構わないが、敏感肌の人への刺激が強すぎる場合がある。
【0013】
((b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤)
(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤として、下記式(I)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0015】
式(I)中、R
1〜R
4のうちいずれか2つはそれぞれ、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜36の直鎖または分岐のアルキル基、またはR
5−(Z1)
q−(Y1)
p−を表す。R
5はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜36の直鎖または分岐のアルキル基を表し、Y1は−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2O−、−CH(OH)CH
2O−から選択される結合基を示し、Z1はアミド結合(−CONH−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)から選択される結合基を表す。pおよびqはそれぞれ0または1の整数を表す。
また、R
1〜R
4の残りの2つはそれぞれ、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を表し、同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
Xはハロゲン原子、炭素数1または2のアルキル硫酸基、または有機酸の水素原子を除いた残基等のアニオンを表す。
【0016】
上記式(I)で示されるジ長鎖型カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、臭化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジミリスチルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジパルミチルジメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジココイルヒドロキシエチルメチルモニウムメトサルフェート、ジステアリルエチルヒドロキシエチルモニウムクロライド等が挙げられる。
ジ長鎖型カチオン性界面活性剤として、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートを用いることが好ましい。
【0017】
(b)成分の配合量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましい。配合量が0.001質量%未満の場合でも、(c)成分と混合すると白色析出物を形成するが、清涼感に満足できない場合がある。
また、(b)成分の配合量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。配合量は多くても構わないが、効果の上昇が見られない場合がある。
【0018】
((c)パラフェノールスルホン酸亜鉛)
本発明において、(c)成分の配合量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。配合量が0.01質量%未満の場合でも、(b)成分と混合すると白色析出物を形成するが、制汗効果に満足できない場合がある。
また、(c)成分の配合量は3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。配合量は多くても構わないが、効果の上昇が見られない場合がある。
【0019】
((d)エタノール)
(e)粘土鉱物が配合されていない場合、(d)成分の配合量は、50質量%以上であることが必要である。また、配合量が65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。配合量が50質量%未満の場合、白色析出物が発生してしまう。
【0020】
(e)粘土鉱物を配合する場合、(d)成分の配合量は、70質量%未満であることが好ましい。配合量が70質量%以上では、(e)成分配合による白色析出物抑制効果の発現を顕著に感じることができない場合がある。
【0021】
((e)粘土鉱物)
本発明の液状制汗用組成物において、(d)エタノールの配合量が70質量%未満の場合、(e)粘土鉱物を配合することが好ましい。
(d)成分の配合量が少ない場合、特に低温領域において白色析出物が発生しやすいが、(e)成分を配合することにより、白色析出物を抑制し、安定性に優れた組成物を得ることができる。
【0022】
(e)粘土鉱物としては、外用剤に通常配合される成分を用いることができる。
(e)成分としては、例えば、ベントナイト、カオリン、タルク、マイカ、ヘクトライト、モンモリロナイト、スメクタイト、サポナイト等が挙げられる。
(e)成分として、ベントナイト、カオリン、タルク、マイカを用いることが好ましく、ベントナイトを用いることがより好ましい。
【0023】
(e)成分の配合量は、0.001質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましい。配合量が0.001質量%未満の場合、白色析出物が発生してしまう場合がある。
また、(e)成分の配合量は、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。配合量は多くても構わないが、べたつきが発生し、使用感が悪くなる場合がある。
【0024】
また、(e)成分の配合量は、(b)成分の配合量の2倍以上であることが好ましい。この場合、低温領域においてより優れた白色析出物抑制効果を実現することができる。
【0025】
本発明の液状制汗用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常外用剤に配合可能な成分を配合することもできる。そのような成分としては、例えば、水、低級アルコール、界面活性剤、粉末、薬剤、緩衝剤、香料、殺菌剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、美白剤、紫外線吸収剤、色材等が挙げられる。
【0026】
本発明の液状制汗用組成物の製品形態は、特に制限されず、制汗剤、ボディローション、化粧水、美容液等が挙げられる。
また、本発明の液状制汗用組成物に噴射剤を含有させることにより、制汗用エアゾール組成物を提供することもできる。
【実施例】
【0027】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた安定性評価方法について説明する。
【0028】
・安定性評価方法
−5℃または0℃または5℃または10℃または25℃で1週間保存後の試料の安定性を評価した。
◎:白色析出物が発生せず、全体に透明感があった。
○:ほとんど白色析出物が発生しなかった。
△:少し白色析出物が発生した。
×:白色析出物が全体に発生した。
【0029】
メントールまたはその誘導体とジ長鎖型カチオン性界面活性剤を組み合わせることにより、清涼感に優れた組成物を得られる。そこで、これらの化合物と制汗効果を有するパラフェノールスルホン酸亜鉛を組み合わせた制汗用組成物について検討を行った。
すなわち、下記表1に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
また、−5℃での安定性を評価した時の試験例1−2の試料を撮影した写真を、
図1に示す。
【0030】
【表1】
(*1):メントールJP(高砂香料工業社製)
(*2):FRESCOLAT(シムライズ社製)
(*3):カチオンDSV(三洋化成工業社製)
(*4):スルフォ石炭酸亜鉛(マツモトファインケミカル社製)
【0031】
メントール、メントール誘導体およびジ長鎖型カチオン性界面活性剤を配合した試験例1−1は、清涼感に優れていたが、制汗効果はなかった。
しかし、試験例1−1の組成物にパラフェノールスルホン酸亜鉛を配合した試験例1−2は、制汗効果を有していたが、安定性が悪くなってしまった。
表1および
図1より、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤およびパラフェノールスルホン酸亜鉛を併用すると、コンプレックスを形成してしまい、白色析出物が発生し、組成物の安定性が悪くなることが明らかになった。
なお、試験例1−3の組成物は、安定性に優れていたが、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤が配合されていないため、試験例1−2の組成物よりも清涼感が感じられなかった。
【0032】
ジ長鎖型カチオン性界面活性剤およびパラフェノールスルホン酸亜鉛を配合した組成物において、白色析出物を抑制し、安定性を高める成分を検討した。
本発明者らは、下記表2に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2によると、エタノールの配合量を増やすにつれて、安定性が向上することが明らかになった。
【0035】
したがって、本発明にかかる液状制汗用組成物は、(a)メントールまたはその誘導体、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムに代表される(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤、(c)パラフェノールスルホン酸亜鉛、(d)組成物中50質量%以上のエタノールを含むことが必要である。このような本発明の制汗用組成物は、清涼感、制汗効果に優れるだけではなく、安定性にも優れている。
【0036】
次に、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤およびパラフェノールスルホン酸亜鉛を配合した組成物において、低温安定性を高める成分を検討した。
本発明者らは、下記表3に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
(*5):ベンゲルFW(ホージュン社製)
【0038】
表3によると、試験例2−3にベントナイトを配合した試験例3−1は、低温でも安定性に優れていることが明らかになった。
【0039】
したがって、特にエタノールの配合量が70質量%未満の場合、本発明にかかる液状制汗用組成物は、(a)メントールまたはその誘導体、(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤、(c)パラフェノールスルホン酸亜鉛、(d)エタノール、ベントナイトに代表される(e)粘土鉱物を含むことが好ましい。この液状制汗用組成物は、低温安定性に優れているため、冷蔵庫に保管することもできる。
【0040】
次に、(e)粘土鉱物の配合量を検討した。
本発明者らは、下記表4に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4によると、ベントナイトの配合量が少量でも、安定性が向上することがわかった。
これらのことから、(e)粘土鉱物の配合量は0.001〜1質量%であることが好ましい。
【0043】
次に、(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤の種類について検討した。
本発明者らは、下記表5に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
(*6):Dehyquart L80(BASF社製)
【0045】
表5の結果から、本発明の(b)ジ長鎖型カチオン性界面活性剤として、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートを用いることもできる。
また、表4および表5より、より優れた低温安定性を有する組成物を得るためには、(e)成分の配合量が、(b)成分の配合量の2倍以上であることが好ましい。
【0046】
次に、(e)粘土鉱物の種類について検討した。
本発明者らは、下記表6に示す組成の試料を常法により製造し、各試料を上記評価方法にて評価した。結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
(*7):ASP-900(BASF Catalysts社製)
(*8):タルク JA-68R(浅田製粉社製)
(*9):セリサイト MAS (T)(キンセイマテック社製)
【0048】
表6によると、本発明の(e)粘土鉱物として、ベントナイト以外に、カオリン、タルク、マイカを用いることができる。これらの(e)成分を用いた場合でも、通常、冷蔵庫で保管することができる。
しかし、0℃以下で保管する場合には、(e)成分としてベントナイトを用いることが好ましい。
【0049】
以下に、本発明の液状制汗用組成物の処方例を挙げる。
【0050】
処方例1 液状制汗用ボディローション
l−メントール 0.3 質量%
乳酸メンチル 0.2
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.005
パラフェノールスルホン酸亜鉛 0.5
エタノール 45
ベントナイト 0.01
塩化ベンザルコニウム液(48%) 0.1
乳酸 0.04
香料 適 量
水 残 余