(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例である炭素系燃料のガス化システムについて図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて
図1を引用して説明する。
【0022】
図1に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムは、溶融スラグの冷却水貯留部で発生する高温水の顕熱を効率良く利用し、炭素系燃料をガス化してできた生成ガスを冷却する熱回収部を小型化した炭素系燃料のガス化システムである。
【0023】
燃料に石炭を用い、生成ガスでガスタービンと蒸気タービンを駆動させる場合を例として、本発明の第1実施例である炭素系燃料のガス化システムについて
図1を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の第1実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントの構成を示す系統図であり、炭素系燃料の石炭を貯蔵する石炭ホッパ2と、空気から酸素と窒素を製造する空気分離器4と、石炭ホッパ2から石炭を気体によってガス化炉3に搬送する燃料供給系統aと、この燃料供給系統aを通じて供給した石炭と空気分離器4から供給したガス化剤の酸素を共に燃焼して生成ガス5を生成するガス化炉3と、ガス化炉3の下流側に設置されており、ガス化炉3から出た生成ガス5を脱塵すると共に該生成ガス5に含まれたチャー9を回収する脱塵装置8と、脱塵後の生成ガス5を冷却する熱交換器10及びベンチュリ11と、生成ガス5に含まれるハロゲン系物質や、脱塵装置8で捕集できなかった微細なダスト分を除去する水洗塔13と、生成ガス5中の硫黄分を除去する脱硫装置17とをそれぞれ備えている。
【0025】
また、脱塵装置8で回収されたチャー9は、チャーホッパ25に貯めて、チャー供給系統bを通じて空気分離器4で空気から分離させた窒素で搬送されてガス化炉3に再投入される。
【0026】
更に、脱硫装置17で脱硫した後の生成ガス39は、脱硫装置17から上記した生成ガスの熱交換器10に供給されて再加熱された後に、ガスタービン装置に燃料として供給される。
【0027】
このガスタービン装置は、空気を圧縮するコンプレッサ24と、燃料として供給された生成ガス39をコンプレッサ24で圧縮した空気と混合して燃焼し、高温の燃焼ガスを生成するガスタービン燃焼器18と、ガスタービン燃焼器18で生成した燃焼ガスで駆動するタービン19から構成されている。
【0028】
また、タービン19から排出した排ガスは、排ガスの排熱を回収して蒸気を発生させる排ガスボイラ20に供給された後に煙突22から大気中に排出される。
【0029】
排ガスボイラ20で発生した蒸気は蒸気タービン装置を構成する蒸気タービン21に供給されて該蒸気タービン21を駆動する。蒸気タービン21を流下した蒸気は復水器26で冷却して復水となり、この復水が排ガスボイラ20に供給されるように構成している。
【0030】
上記した構成を備えた本実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて更に詳細に説明すると、石炭1は、石炭ホッパ2から空気分離器4で製造された窒素によってガス化炉3に搬送される。空気分離器4で製造された酸素は、石炭1のガス化剤としてガス化炉3に供給される。
【0031】
ガス化炉3では、石炭1を空気分離器4で製造された酸素でガス化(部分燃焼)し、COやH
2を主成分とする生成ガス5を発生させる。石炭1には、約10wt%の灰分(無機物)が含まれる。
【0032】
ガス化炉3で生成した生成ガス5は、発電用の気体燃料等に利用されるため、灰分と分離する必要がある。そこで、ガス化炉3内の燃焼温度を、灰の融点以上に高め、灰分を溶融スラグ化する。
【0033】
ガス化炉3では、気体の生成ガス5をガス化炉3から上方に抜き出し、液体の溶融スラグをガス化炉3から下方に抜き出すことで、石炭1から生成ガス5を取り出す。このため、ガス化炉3の出口における生成ガス5の温度は、1000℃以上に達する。
【0034】
生成ガス5を気体燃料として利用するには、脱塵、脱塩、脱硫といった不純物を除去する精製プロセスが必要である。このためには、生成ガス5を400℃未満に冷却する必要がある。ガス化炉3から出た生成ガス5には、未燃カーボンや灰分からなる粒子状のチャーも同伴する。
【0035】
また、1000℃以上の生成ガス5を冷却する過程で、溶融した灰分の伝熱管への付着(スラッギング)、析出したアルカリ金属塩(Na
2SO
4等)の伝熱管への付着(ファウリング)といったトラブルを防止する必要がある。
【0036】
このため、生成ガス5を冷却する熱回収部7をガス化炉3の上部に設けている。熱回収部7の内部には伝熱管を設置せず、水冷壁で生成ガス5を800〜900℃に冷却する。これは、スラッギングやファウリングを防止するためである。
【0037】
前記熱回収部7を出た生成ガス5は、ガス化炉3の下流側に設置した脱塵装置8に供給されて脱塵され、チャー9が回収される。脱塵装置8で生成ガス5から回収されたチャー9は、チャーホッパ25に供給され、このチャーホッパ25に貯めて、石炭1と同様に、空気分離器4から供給された窒素に搬送されてチャーホッパ25からチャー供給系統dを通じてガス化炉3に再投入される。
【0038】
脱塵装置8で脱塵された後の生成ガス5は、脱塵装置8の下流側に設置した生成ガスの熱交換器10で300℃以下に冷却され、さらに、生成ガスの熱交換器10の下流側にそれぞれ設置したベンチュリ11および水洗塔13に供給されて100℃程度まで冷却される。
【0039】
前記水洗塔13では、生成ガス5に含まれるハロゲン系物質や、脱塵装置8で捕集できなかった微細なダスト分が除去される。さらに、水洗塔13の下流側に設置した脱硫装置17で、生成ガス5中の硫黄分が除去される。この脱硫装置17で生成ガス5中から回収された硫黄分は、硫黄分燃焼炉23で焼却される。
【0040】
脱硫装置17で脱硫された生成ガス39は40℃程度に冷却されており、前記脱硫装置17から生成ガスの熱交換器10に供給されて再加熱され、ガスタービン装置を構成するガスタービン燃焼器18に燃料として供給される。
【0041】
ここで、脱硫装置17で脱硫された生成ガス39は、ガスタービン燃焼器18でコンプレッサ24から供給された空気と混合し、燃焼して高温の燃焼ガスを生成する。
【0042】
ガスタービン燃焼器18で発生した燃焼ガスはタービン19を駆動し、タービン19から排出された燃焼排ガスは排ガスボイラ20に供給されて燃焼排ガスの排熱を排ガスボイラ20で回収し、この排ガスボイラ20で発生させた蒸気で蒸気タービン21を駆動する。
【0043】
一方、ガス化炉3内でできた溶融スラグは1200℃以上となるので、冷却して固体のスラグ6としてガス化炉3から回収する。本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントでは、溶融スラグをスラグ冷却水14で急冷して、非晶質(ガラス状)の水砕スラグとして回収する場合を示す。
【0044】
ガス化炉3の直下には、スラグ冷却水14を貯留するスラグ冷却水貯留部12が設置されている。スラグ冷却水貯留部12に貯留したスラグ冷却水14は、高温で流下する溶融スラグにより加熱されて高温水15となるが、この高温水15には水中に浮遊するスラグやチャーといった固形物が含まれることになる。
【0045】
そこで、スラグ冷却水貯留部12で加熱された高温水15を抜き出して上記のスラグやチャー等の固形物30を処理する必要がある。
【0046】
スラグ冷却水貯留部12で加熱された高温水15は、常圧下でも沸騰しない100℃未満(例えば80℃)で運用すると便利である。この場合、高温水15の質量流量は、石炭の0.5〜2倍程度(灰分や融点等で変動)に達する。
【0047】
そこで、
図1に示した本発明の第1実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントには、ガス化炉3で生成した生成ガス5を冷却するスラグ冷却水貯留部12で加熱した高温水15を処理する水処理系統cが配設されている。
【0048】
この高温水15を処理する水処理系統cは、スラグ冷却水貯留部12で加熱された高温水15を圧送するスラリーポンプ58を備えており、スラグ冷却水貯留部12に供給されたスラグ冷却水14が前記スラグ冷却水貯留部12で加熱された高温水15は、前記したように高温で流下する溶融スラグにより水中に浮遊するスラグやチャーといった固形物を含んだ高温水27となるので、スラリーポンプ58で加圧して、該水処理系統cを通じて固形物を含む高温水27をガス化炉3の下流側の生成ガス5中に供給するように構成している。
【0049】
前記水処理系統cはガス化炉3の上部に設置した熱回収部7の下流側に接続されており、前記水処理系統cを通じて導かれた固形物を含む高温水27をガス化炉3内に供給、或いはガス化炉3から出た生成ガス5中に供給して脱塵装置8に流入するように構成されている。
【0050】
上記した高温水15を処理する水処理系統cを備えることによって、スラグ冷却水貯留部12でスラグ冷却水14を加熱した高温水15は、スラリーポンプ58によって前記水処理系統cを通じて圧送され、固形物を含む高温水27として、ガス化炉3、或いはガス化炉3の下流側の脱塵装置8に供給して、生成ガス5の冷却に用いている。
【0051】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントでは、ガス化炉3の上部に設置した熱回収部7の下流側に、スラグ冷却水貯留部12から前記水処理系統cを通じて固形物を含む高温水27を供給する構成を記載しているが、ガス化炉3の熱回収部7内に固形物を含む高温水27を供給するように前記水処理系統cを配設しても良い。
【0052】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントに示すように、スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて高温水15(固形物を含んだ高温水27)をスラリーポンプ58で圧送して、ガス化炉3で生成した生成ガス5に混合した場合、次の4点の効果が得られる。
【0053】
一つ目の効果は、機器コストと建設コストの低減である。スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて供給される高温水15の蒸発潜熱および顕熱を利用してガス化炉3から出た生成ガス5を冷却することで、ガス化炉3の熱回収部7を小型化できる。
【0054】
二つ目の効果は、スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて供給される高温水15(固形物を含んだ高温水27)の排熱利用によるエネルギー効率の向上である。さらに、スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて供給される高温水15の温度が常温より高い分、ガス化炉3で生成した生成ガス5との混合時に蒸発しやすくなり、生成ガス5の冷却にも有利である。
【0055】
三つ目の効果は、廃棄物とカーボンロスの削減である。スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて供給される高温水15(固形物を含んだ高温水27)に含まれ、廃棄物となるスラグやチャーといった固形物30をガス化炉3から出た生成ガス5に混合する。そしてこの高温水15に含まれた固形物30を脱塵装置8で回収し、チャー9とともにチャーホッパ25からガス化炉3に再投入することで、廃棄物となった固形物30の重量を削減できる。さらに、固形物30に含まれるカーボンロスも削減できる。
【0056】
四つ目の効果は、シフト反応促進による、ガス化炉3で生成した生成ガス5中のH
2濃度の増加である。シフト反応式を式(1)に示す。
【0057】
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ・・・・(1)
このシフト反応は、1000℃を超える雰囲気で進むことが知られている。従って、ガス化炉3を出た直後の生成ガス5に、例えば生成ガス冷却部7内で生成ガス5に水噴霧した場合に、シフト反応による生成ガス5中のH
2濃度の増加が期待される。
【0058】
後述する第5実施例に記載したように、ガス化炉3で生成した生成ガス5からのCO
2回収手段を設置すれば、生成ガス5の主成分はH
2となる。主成分H
2となった生成ガス5は、発電用の気体燃料のみならず、メタノールやアンモニア等の化学原料にも利用できうる。
【0059】
上記した構成の本実施例の炭素系燃料のガス化システムでは、スラグ冷却水貯留部12から水処理系統cを通じて供給される高温水15とガス化炉3で生成した生成ガス5を混合させて前記生成ガス5を効果的に冷却させることで、系統構成の簡素化、排熱利用によるエネルギー効率向上、廃棄物削減、生成ガス5の高付加価値化といった効果を見込める。
【0060】
本実施例によれば、ガス化システムで生じた高温水の排熱を効率良く利用してガス化炉から出た生成ガスを冷却すると共に、炭素系燃料から生じるカーボンロス及び廃棄物の低減を図った炭素系燃料のガス化システムが実現できる。
【実施例2】
【0061】
次に本発明の第2実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて
図2を用いて説明する。
図2に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントは、
図1に示した第1実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0062】
図2に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムにおいて、ガス化炉3の直下のスラグ冷却水貯留部12で溶融スラグによって昇温した高温水15は、スラグ冷却水貯留部12から水供給系統cを通じて引き出されて該水供給系統cに設置した固形物分離部29に供給され、この固形物分離部29によって高温水15に含まれた固形物30を分離する。
【0063】
前記固形物分離部29によって固形物を分離した高温水31は、該水供給系統cに設置したポンプ16で圧送され、この該水供給系統cを通じて前記ガス化炉3の下流側から前記脱塵装置8に至る領域となる前記ガス化炉から取り出された生成ガスを流下する生成ガスの流路に供給され、この生成ガス5に混合されて前記生成ガス5を冷却する。
【0064】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムは、スラグ冷却水貯留部12から昇温した高温水31を引き出す水供給系統cに設けた固形物分離部29で固形物を分離した高温水31を前記水供給系統cを通じてガス化炉3に設けた熱回収部7の下流側に供給する場合を示す。
【0065】
一方、水供給系統cに設けた固形物分離部29で高温水31から分離した固形物30は、固形物分離部29から固形物供給系統dを通じてガス化炉3に再投入される。
【0066】
ここで、固形物30は微細なスラグやチャー9である。ガス化炉3に再投入されたチャー9中の可燃分(殆どカーボン)は、ガス化炉3でガス化して生成ガス5となる。
【0067】
チャー9中の灰分とスラグは、溶融スラグ化してガス化炉3の下部に設けた冷却水貯留部12に流下し、スラグ6として回収される。
【0068】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムは、スラグ冷却水貯留部12から引き出す高温水15に固形物30が多く含まれていて、この固形物30を多く含む高温水15を前記ガス化炉3の下流側、或いは前記脱塵部8の上流側に直接供給することが困難な場合に有効である。
【0069】
すなわち、スラグ冷却水貯留部12から引き出す高温水15に含まれる固形物30が多く、水供給系統cに設けられて高温水15を昇圧するスラリーポンプ58が使えなかったり、生成ガス5に水供給系統cを通じて供給する高温水15を噴霧させるノズル等を閉塞させたり、水供給系統cを通じて高温水15を供給する熱回収部7や生成ガス5を流下させる配管を損傷させたりする可能性のある場合である。
【0070】
本実施例によれば、ガス化システムで生じた高温水の排熱を効率良く利用してガス化炉から出た生成ガスを冷却すると共に、炭素系燃料から生じるカーボンロス及び廃棄物の低減を図った炭素系燃料のガス化システムが実現できる。
【実施例3】
【0071】
次に本発明の第3実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて
図3を用いて説明する。
図3に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントは、
図1に示した第1実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0072】
図3に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムにおいて、ガス化炉3の直下のスラグ冷却水貯留部12で溶融スラグによって昇温した高温水15は、スラグ冷却水貯留部12から水供給系統cを通じて引き出されて該水供給系統cに設置した固形物分離部29に供給され、この固形物分離部29によって高温水15に含まれた固形物30を分離する。
【0073】
前記固形物分離部29によって高温水31から分離された固形物30は、固形物分離部29から固形物供給系統eを通じてチャーホッパ25に供給され、ガス化炉3から取り出された生成ガス5を脱塵する脱塵装置8から回収したチャー9とチャーホッパ25で混合される。
【0074】
この固形物30は、チャー9とともに、空気分離器4から供給された窒素で搬送され、チャーホッパ25からチャー供給系統bを通じてガス化炉3に再投入される。
【0075】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムの利点は、固形物30を既存のチャー供給系統bでガス化炉3に供給するため、ガス化炉3を従来通りの運用方法を適用できる点である。
【0076】
但し、固形物30を加温する工程が必要になる。脱塵装置8で回収されたチャー9は、チャーホッパ25およびガス化炉3へのチャー供給系統bを保温することで、水分の凝縮を防いでいる。従って、固形物30も、チャー9と同程度(200℃程度)に加温する必要がある。
【0077】
本実施例によれば、ガス化システムで生じた高温水の排熱を効率良く利用してガス化炉から出た生成ガスを冷却すると共に、炭素系燃料から生じるカーボンロス及び廃棄物の低減を図った炭素系燃料のガス化システムが実現できる。
【実施例4】
【0078】
次に本発明の第4実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて
図4を用いて説明する。
図4に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントは、
図1に示した第1実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0079】
図4に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムにおいて、脱塵装置8で脱塵された生成ガス5は、脱塵装置8の下流側に設置した熱交換器10にて脱硫装置17を経た生成ガス5によって300℃以下に冷却され、さらに前記熱交換器10の下流側に設置したベンチュリ11および水洗塔13に従事供給されて100℃程度に冷却される。
【0080】
前記ベンチュリ11および水洗塔13では、生成ガス5は、ベンチュリ11および水洗塔13に外部から補給した補給水36である液体の冷却水との気液接触により冷却される。ベンチュリ11と水洗塔13の冷却水は、生成ガス5を冷却する過程で、該生成ガス5によって100℃以上に加熱される。これらの冷却水の総流量は、ガス化炉3への石炭1の供給量の約1〜2倍程度に達する。
【0081】
仮に、前記冷却水として温度100℃、流量を石炭1の供給量と同じとした場合、前記ベンチュリ11と水洗塔13で生成ガス5と気液接触により高温化した冷却水の顕熱は、石炭の総発熱量の約1%となる。
【0082】
そこで、本実施例の炭素系燃料のガス化システムでは、ベンチュリ11と水洗塔13で生成ガスと5の気液接触で高温化した冷却水の一部をベンチュリ11及び水洗塔13からそれぞれ抜き出し、前記ベンチュリ11及び水洗塔13から高温化した冷却水の一部をガス化炉3の出口と脱塵装置8の間の領域に噴霧してガス化炉3から取り出された生成ガス5を冷却する昇温水供給系統f1、f2をそれぞれ配設した。
【0083】
ベンチュリ11及び水洗塔13から前記昇温水供給系統f1、f2を通じてガス化炉3の出口と脱塵装置8の間の領域に噴霧して生成ガス5を冷却する冷却水は、生成ガス5との混合時に、自身の持つ顕熱と合わせて蒸発しやすく、生成ガス5を効率良く冷却できる。
【0084】
なお、第1実施例の炭素系燃料のガス化システムにおける前述したスラグ冷却水貯留部12で昇温し、固形物30を分離した高温水31を供給する水供給系統cを含めて、昇温水供給系統f1、f2で供給する高温化した冷却水を1系統に纏めても良いし、複数系統のままで生成ガス5に噴霧しても良い。
【0085】
冷却水の蒸発しやすさの観点からは、前記水供給系統cと前記昇温水供給系統f1、f2との複数系統を用いて生成ガス5に噴霧して冷却する方式が良く、その順序は、生成ガス5の温度の高い上流側に固形物30を分離した高温水31(前述の第1実施例で100℃未満)を水供給系統cを通じて供給し、下流側にベンチュリ11と水洗塔13で高温化した冷却水(100℃以上)を昇温水供給系統f1、f2を通じて供給する炭素系燃料のガス化システムを推奨する。
【0086】
これは、水供給系統cを通じて固形物30を分離した高温水31をガス化炉3の出口と脱塵装置8との間の領域における上流側で生成ガス5に噴霧することにより、生成ガス5の温度は400〜700℃程度(石炭1の性状、固形物30を分離した高温水31の流量や温度、蒸発割合等で変動する)に低下すると考えられる。
【0087】
さらなる水噴霧で生成ガス5を冷却するには、温度が高く蒸発しやすいベンチュリ11と水洗塔13で高温化した冷却水33、35を生成ガス5の冷却に用いるのが良い。
【0088】
そこで、生成ガス5を400度未満の所定温度に保てるように、ベンチュリ11と水洗塔13で高温化した冷却水33、35を抜き出し、昇温水供給系統f1、f2を通じてガス化炉3の出口と脱塵装置8との間の領域における下流側で生成ガス5に噴霧する冷却水33、35の流量を調整することで、脱塵装置8における凝縮水の発生を抑える炭素系燃料のガス化システムを構築できる。
【0089】
以下に、本実施例の炭素系燃料のガス化システムにおけるベンチュリ11および水洗塔13の冷却水の系統を説明する。
【0090】
ベンチュリ11の冷却水33は、300℃近くに達する生成ガス5との気液接触で高温化するため、高温熱交換器32で常温に冷却されて、ベンチュリ11に再投入される。
【0091】
ベンチュリ11で高温化したベンチュリ11の冷却水33の温度は150℃程度に達する。高温化したベンチュリ11の冷却水の一部33をベンチュリ11から抜き出し、ベンチュリ11から昇温水供給系統f1を通じて冷却水33をガス化炉3の下流側の生成ガス5に噴霧・混合させることで、冷却水33の蒸発潜熱と顕熱を用いて生成ガス5を効果的に冷却できる。
【0092】
特に、ベンチュリ11の冷却水の一部33の温度は150℃程度であり、常温の水よりも蒸発しやすく、扱いやすい。なお、ベンチュリ11の冷却水33の流量確保のため、高温熱交換器32の下流で外部から補給水36を供給し、ベンチュリ11に供給するように構成している。
【0093】
水洗塔13の冷却水35についても、上記ベンチュリ11の冷却水33と同様に、冷却水35の一部を生成ガス5の冷却に用いると良い。
【0094】
即ち、高温化した水洗塔13の冷却水の一部35を水洗塔13から抜き出し、水洗塔13から昇温水供給系統f2を通じて冷却水35をガス化炉3の下流側の生成ガス5に噴霧・混合させることで、冷却水35の蒸発潜熱と顕熱を用いて生成ガス5を効果的に冷却できる。
【0095】
水洗塔13を出た水洗塔13の冷却水35の温度は100℃程度と上記したベンチュリ11の冷却水33より低温であるが、常温の水より蒸発しやすく、扱いやすい特徴は同じである。なお、水洗塔13の冷却水35の流量確保のため、低温熱交換器34の下流で外部から補給水36を供給し、水洗塔13に供給するように構成している。
【0096】
以上より、本実施例の炭素系燃料のガス化システムにおいては、ガス化炉3のスラグ冷却水貯留部12で発生する高温水31を供給する水供給系統cと、ベンチュリ11及び水洗塔13で発生する高温水33、35を供給する昇温水供給系統f1、f2を配設して、前記ガス化炉3の下流側、或いは前記脱塵装置8の上流側に供給してガス化炉3で生成した生成ガス5の冷却に用いる構成としたことで、プラントの排熱利用によるエネルギー効率の向上と、生成ガス5を冷却する熱回収部の小型化による低コスト化を両立することが可能となる。
【0097】
本実施例によれば、ガス化システムで生じた高温水の排熱を効率良く利用してガス化炉から出た生成ガスを冷却すると共に、炭素系燃料から生じるカーボンロス及び廃棄物の低減を図った炭素系燃料のガス化システムが実現できる。
【実施例5】
【0098】
次に本発明の第5実施例である炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントについて
図5を用いて説明する。
図5に示した本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントは、
図1に示した第1実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0099】
ガス化炉3への石炭1およびチャー9の搬送媒体には、後述するCO
2回収手段で回収したCO
252の一部を用いる。このCO
2を、ガス化炉再投入用のCO
253と定義する。
【0100】
搬送媒体をN
2からCO
2に変えることで、ガス化炉3内のCO
2濃度が高まり、(2)式に示すCO
2ガス化反応が促進される。これにより、ガス化剤であるO
2使用量の低減が期待される。
【0101】
C + CO
2 → 2CO ・・・・(2)
O
2使用量の低減は、空気分離器4の小型化による機器コスト低減、及びO
2製造動力低減によるランニングコスト低減とエネルギー効率向上に繋がる。
【0102】
次に、ガス化炉3で生成された生成ガス5中の主成分は、CO、H
2、CO
2である。この生成ガス5に水を噴霧して蒸発させると、生成ガス5を冷却できるだけでなく、生成ガス5中の水蒸気濃度が高まる。
【0103】
これにより、第1実施例の(1)式に示したシフト反応が進むだけでなく、後述するガス化炉3の下流側に設置したシフト反応器40で添加する水蒸気41の流量も削減できる。
【0104】
本実施例では、1000℃以上の高温雰囲気でシフト反応を促進させるべく、水供給系統cに設置した固形物分離部29によって固形物を分離した高温水31を、この水供給系統cを通じてガス化炉3の上部に設置した生成ガス冷却部7内に供給するように構成している。
【0105】
ガス化炉3の下流側で生成ガス5に噴霧する冷却水は、第4実施例の場合と同様に、石炭ガス化複合発電プラントで発生する高温水(スラグ冷却水貯留部12で昇温した高温水15、ベンチュリ11の冷却水の一部37、水洗塔13の冷却水の一部38など)を用いる。
【0106】
これら高温水の持つ顕熱は、これまで有効利用されていなかった。
【0107】
一方、脱硫装置17の下流側に設置され、ガス化炉5で生成した生成ガス5中の一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素にシフト反応させるシフト反応器40で添加する水蒸気41は、シフト反応用に製造されたものを用いる。
【0108】
従って、シフト反応機器40で生成ガス5に添加する水蒸気41の流量を削減できれば、削減分の水蒸気41を製造する動力を低減できるため、ランニングコスト低減とエネルギー効率向上に繋がる。
【0109】
前記水洗塔13の下流側に設置され、生成ガス5を脱硫する脱硫装置17で脱硫された40℃程度に冷却された生成ガス39は、脱硫後の生成ガス39を加熱する熱交換器42及び生成ガス加熱器43で200℃以上に再加熱されて、脱硫装置17の下流側に設置された生成ガス5中のシフト反応器40に供給される。
【0110】
前記シフト反応器40では、脱硫後の生成ガス39に水蒸気41を添加して、第1実施例の(1)式に示したシフト反応が進む。このシフト反応により、脱硫後の生成ガス39中のCOはCO
2とH
2になって、H
2濃度が増加する。なお、シフト反応器40への脱硫後の生成ガス39、及び水蒸気41の投入温度は、シフト反応触媒の特性で決まる。
【0111】
前記シフト反応器40でシフト反応後の生成ガス44の温度は、シフト反応器40の出口で200℃以上である。このため、シフト反応後の生成ガス44は、脱硫後の生成ガスの熱交換器42で150℃程度に冷却され、前記シフト反応器40の下流側に設置されたCO
2吸収塔45に供給される。
【0112】
前記CO
2吸収塔45において、シフト反応後の生成ガス44は、CO
2吸収塔45に流入し、このCO
2吸収塔45でCO
2吸収液47と接触する。これにより、シフト反応後の生成ガス44中のCO
2は、CO
2吸収液47に回収されてCO
2が除去された生成ガス46となる。
【0113】
ここで、CO
2吸収塔45へのシフト反応後の生成ガス44の投入温度は、CO
2吸収液47の特性で決まる。そしてCO
2吸収塔45にてCO
2除去後の生成ガス46の主成分は、H
2となる。
【0114】
CO
2吸収塔45でCO
2除去後の生成ガス46は、CO
2吸収塔45からガスタービン燃焼器18に燃料として供給され、コンプレッサ24からガスタービン燃焼器18に供給された燃焼用の空気と混合して燃焼し、高温の燃焼ガスを発生する。
【0115】
前記ガスタービン燃焼器18で発生した燃焼ガスはガスタービン19に供給されてこのガスタービン19を駆動し、さらにガスタービン19から排出された排ガスをボイラ20に流下させて排ガスが有する排熱をこのボイラ20で回収して蒸気を発生させ、この発生した蒸気を蒸気タービン21に供給してこの蒸気タービン21を駆動する。
【0116】
また、前記CO
2吸収塔45で生成ガス44からCO
2を吸収したCO
2吸収液48は、CO
2吸収液の熱交換器49、CO
2吸収液の加熱器50で100℃以上に加熱されて、前記CO
2吸収塔45の下流側に設置されたCO
2再生塔51に供給される。
【0117】
前記CO
2再生塔51では、CO
2を吸収したCO
2吸収液48中のCO
2を放出させることで、CO
2吸収液47の再利用が可能となる。
【0118】
前記CO
2再生塔51で回収したCO
252は、その一部をガス化炉3の再投入用のCO
253としてCO
2供給系統gを通じてCO
2再生塔51から導出されて石炭1とチャー9の搬送媒体に再利用されるが、CO
2再生塔51で回収したCO
252の大部分は、地中などに供給して貯留される。
【0119】
ここで、CO
2再生塔51でのCO
2回収率を高く保つためには、CO
2吸収液48を保温する必要がある。そこで、CO
2吸収液48の一部を、再生加熱用のCO
2吸収液54としてCO
2再生塔51から抜き出し、熱交換器55で100℃以上に再加熱した後に、前記CO
2再生塔51に投入する。
【0120】
この熱交換器55に必要な熱容量が大きく、その熱源にはボイラ20で発生した200〜300℃程度の低温蒸気56をボイラ20から蒸気供給系統iを通じて熱交換器55に導いて利用すると良い。この低温蒸気56を、CO
2吸収液54の加熱用蒸気56と呼ぶ。
【0121】
CO
2吸収液48の加熱用蒸気56のもつ顕熱で、熱交換器55で再生加熱用のCO
2吸収液54が再加熱される。このため、熱交換器55を出たCO
2吸収液54の加熱用蒸気56は、200℃以下に低下する。
【0122】
熱交換器55を出たCO
2吸収液54の加熱用蒸気56についても、前記熱交換器55から加熱用蒸気56をガス化炉3の下流側に供給する蒸気供給系統hを配設し、この蒸気供給系統hを通じて前記熱交換器55から加熱用蒸気56をガス化炉3の下流側に供給し、生成ガス5の冷却とシフト反応器40でのシフト反応促進に用いると良い。
【0123】
これは、熱交換器55を出たCO
2吸収液54の加熱用蒸気56を復水器26に戻せば、蒸気の顕熱と潜熱が廃熱となるためである。
【0124】
本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントでは、ガス化炉3の下流に熱交換器55を出たCO
2吸収液54の加熱用蒸気56を供給する蒸気供給系統h、ボイラ20から低温蒸気56を熱交換器55に居給する蒸気供給系統i、スラグ冷却水貯留部13からの高温水15を供給する水供給系統c、ベンチュリ11の冷却水の一部37及び水洗塔13の冷却水の一部38を供給する昇温水供給系統f1、f2の4種類の水又は蒸気を、前記ガス化炉3の下流側、或いは前記脱塵装置8の上流側に供給してガス化炉3で生成した生成ガス5の冷却に用いる構成としたが、これらの各系統のうち、少なくとも1種類以上の水又は蒸気を供給できる系統としても構わない。
【0125】
以上より、本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントによれば、CO
2を排出させず、かつエネルギー効率の高い石炭ガス化複合発電プラントを構築できる。
【0126】
なお、本実施例の炭素系燃料のガス化システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントでは、CO
2回収手段の一例として、CO
2吸収液54を用いたCO
2化学吸収方式を用いたシステムについて説明した。
【0127】
また、CO
2回収手段は、膜分離などの物理吸収方式、吸着剤方式を用いても構わない。
【0128】
本実施例によれば、高温水の排熱を効率良く利用してガス化炉から出た生成ガスを冷却すると共に、高温水中の固形物を既存のガス化炉の脱塵設備で回収しガス化炉への再投入を可能にして炭素系燃料からのカーボンロス及び廃棄物の低減を図った炭素系燃料のガス化システムが実現できる。