(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記衛星トランシーバ(STR)は、上記広角ビーム(W)をスキャンして捕捉するように構成され、いったん捕捉すると、上記誘導ビームの支援を受けて上記光地上端末(30)のアップリンクチャネル(UC)を追尾することを特徴とする請求項1記載の光通信システム(10)。
上記通信サブシステム(CS)は、上記衛星トランシーバ(STR)から上記地上トランシーバ(GTR)へ上記光ダウンリンクチャネル(DL)を介して複数のデータフレームとして伝送するために、上記ペイロードデータ(PD)を、変調された電気信号に変換するように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の光通信システム(10)。
上記低地球軌道衛星(20)はさらに、ダウンリンク速度の増大及び冗長性のために、第2光ダウンリンクチャネル(DL2)を介して上記光地上端末(30)に接続されることを特徴とする請求項1〜4のうちの1つに記載の光通信システム(10)。
上記光地上端末(30)は、受信に失敗した/受信時にエラーがあった1つ又は複数のフレームの範囲の境界を識別する複数の否定応答NACK信号を送信し、これにより、上記境界によって示されたフレームの範囲全体の再送信を要求することを特徴とする請求項9記載のペイロードデータ(PD)を光伝送する方法。
上記通信サブシステム(CS)は、上記光ダウンリンクチャネル(DL)を介して複数のデータフレームとして伝送するために、送信前に、上記ペイロードデータ(PD)を、変調された電気信号に変換することを特徴とする請求項6〜12のうちの1つに記載のペイロードデータ(PD)を光伝送する方法。
上記光ダウンリンクチャネル(DL)は、上記低地球軌道衛星(20)及び上記光地上端末(30)の間に見通し線が確立されたとき利用可能になることを特徴とする請求項6〜16のうちの1つに記載のペイロードデータ(PD)を光伝送する方法。
上記低地球軌道衛星(20)の通過について通知されたとき、上記光地上端末(30)の指向−捕捉−追尾サブシステム(PAT)は、上記光地上端末(30)を待機モードから復帰させ、上記アップリンクチャネル(UC)を起動し、上記低地球軌道衛星(20)の指向、捕捉、及び追尾を行って上記光ダウンリンクチャネル(DL)及び上記アップリンクチャネル(UC)を保持し、
上記光地上端末(30)の指向−捕捉−追尾サブシステム(PAT)は、いったん上記低地球軌道衛星(20)が通過し終わり、上記低地球軌道衛星(20)及び上記光地上端末(30)の間の見通し線を保持することができなくなると、上記アップリンクチャネル(UC)を停止し、上記光地上端末(30)は再び上記待機モードに切り換えられることを特徴とする請求項6〜17のうちの1つに記載のペイロードデータ(PD)を光伝送する方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、本発明のさらなる特徴及び優位点を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
注意: 図面は厳密な縮尺で描かれたものではなく、例示としてのみ提供され、理解の助けとなることのみを目的とし、本発明の範囲を定義することを目的とするものではない。これらの図面では、本発明のいかなる機能の限定も意図していない。
【0014】
本願特許明細書では特定の用語を用いるが、その定式化は、選択した特定の用語によって限定されると解釈すべきではなく、特定の用語の背後にある一般的概念に関連する。
【0015】
図1に記号的に示すように、本発明の光通信システム10は、2つの主要な機能的及び構造的装置、すなわち、低地球軌道衛星20及び光地上端末30を含む。低地球軌道衛星20は、光ダウンリンクチャネルDLを介して光地上端末30と接続可能であり、光地上端末30は、アップリンクチャネルUCを介して低地球軌道衛星20と接続可能である。
図1に記号的に示すように、アップリンクチャネルUCは、地上ビーコンGBによる捕捉及び追尾ビーコンチャネルであり、広角ビームW及び誘導ビームGを含む。
【0016】
アップリンクチャネルUCは、図面において破線により例示的に示され、ダウンリンクチャネルDLは実線により示される。
【0017】
複数の光地上端末30は、好ましくは複数の光地上局の一部であるものとする。各光地上局は、
−通信と、指向、捕捉、及び追尾(point, acquisition, and track:PAT)とを担当する少なくとも1つの光地上端末30と、
−光地上端末30の動作をサポートするために必要とされる全電子的要素である地上局装置と、
−光地上端末30の動作をサポートするために必要とされる全構造的要素である地上局設備と
を備えるものとする。
【0018】
地上局の厳密な動作は、特定の実装に依存する可能性があり、使用の状態に基づいて変わる可能性がある。しかしながら、動作の主要なステップは常に同様である。
1.地上局は、専用の電気的インターフェース(例えばLAN)を介して、ある/既知の低地球軌道衛星20に係る次の「衛星の通過」について通知を受ける。
2.地上局設備及び地上局装置は、衛星の通過のために「準備」する。例えば、雨が降っていないことを気象センサが確かめたときには、ドームを開く。
3.光地上端末30は、その通信サブシステム及び指向−捕捉−追尾サブシステム(PATサブシステム)を起動して調整する。これらのサブシステムは主に互いに独立して動作する。
a)指向−捕捉−追尾サブシステムPATは、低地球軌道衛星20の指向、捕捉、及び追尾を行う。
b)通信サブシステムCSは、信号を待ち受け、低地球軌道衛星20が通過する時間全体にわたって動作する。
4.いったん衛星が通過し終わると、受信データは専用メモリに転送され、次いでさらに(直接に、又は、要求に応じて)転送される。
5.光地上端末30、地上局装置、及び地上局設備は、待機モードに戻る。
【0019】
地上局装置及び地上局設備は、当該技術分野において既知のものであり、本発明の主題ではないので、さらに詳しくは説明しない。
【0020】
上述のステップ3.a)、すなわち、低地球軌道衛星20の指向、捕捉、及び追尾において、指向−捕捉−追尾サブシステムPATは、アップリンクチャネルのための地上ビーコンGBを用いる方式に従う。地上ビーコンGBは、低地球軌道衛星20の捕捉のための広角ビームW及び追尾のための誘導ビームGを有する。
【0021】
広角の捕捉ビームと、捕捉後の追尾のためにより狭い角度の誘導ビームとを組み合わせて用いることは、当該技術分野において既知である。しかしながら、このタイプの既知の通信リンクでは、捕捉後、ビーコンはスイッチオフされ、別の通信レーザビームがまた誘導ビームとして使用される。このアプローチとは異なり、本発明では、地上ビーコンGBは常にオンである。従って、アップリンクチャネルUCのための地上ビーコンGBは、3つの機能、すなわち、
I.捕捉のための広角ビームWと、
II.追尾のための誘導ビームGと、
III.PPM変調を用いたアップリンクチャネルUCのための低データレート伝送と
を有するので、別の地上通信レーザビームが必要とされない。しかしながら、拡張された端末アーキテクチャの場合には、オプションとして、別の地上通信レーザビームが並列に設けられてもよい。
【0022】
低地球軌道衛星20は、広角ビームWをスキャンして捕捉する。ここで、いったん光地上端末
30の地上ビーコンGBを捕捉すると、低地球軌道衛星20は、地上ビーコンGBの誘導ビームGを永久に追尾する。通信フェーズの間において、低地球軌道衛星20は、その衛星トランシーバSTRを(見込み角(the point ahead angle)によって補正された)光地上端末の方向に方向付ける。
【0023】
従って、広角ビームWは、光地上端末30の近似的な方向に係る最初のどちらかといえば不正確な捕捉のためのものであり、誘導ビームGは、厳密な方向の正確な捕捉のために使用される。
【0024】
図2に、光地上
端末30の地上通信サブシステムGCSの構造ブロック図を示す。
図2は本発明の範囲に関連する構造ブロックのみを示すということに注意すべきである。地上通信サブシステムGCSの全体は、別の既知のタイプの構成要素を備えてもよい。アップリンクチャネルUCは、図面において破線により例示的に示され、ダウンリンクチャネルDLは実線により示され、制御信号は点線により示される。
【0025】
光地上端末30の2つの主要な構成要素は、図示するように、地上トランシーバGTR及び指向−捕捉−追尾サブシステムPATである。地上トランシーバGTRは既知の種類のものであり、光送信機Tx及び光受信機Rxを備える。
【0026】
図3は、本発明に係る低地球軌道衛星20の通信サブシステムCS、ペイロードデータ源PDS、及び衛星トランシーバSTRの構造ブロック図を示す。
【0027】
衛星トランシーバSTRは既知の種類のものであり、光送信機Tx及び光受信機Rxを備える。衛星トランシーバSTRは、地上ビーコンGBの空間的方向に関して調整できるように調整可能である。
【0028】
通信サブシステムCSは、ペイロードデータ源PDSから光地上端末30へ高い信頼性でペイロードデータPDを伝送するためのディジタル処理側の機能を提供する。
【0029】
通信サブシステムCSは、2つの主要な機能装置、すなわち、
−ユーザデータインターフェースアダプタUDIAと、
−通信コントローラCOMCOと
を備える。
【0030】
通信サブシステムCSは以下のことを担当する。
・ペイロードデータPDを取り出す。
・低地球軌道衛星20及び光地上端末30の間の見通し線が利用可能になる前に上記ペイロードデータPDを一時的に格納し、これにより、光ダウンリンクチャネルDLを介したペイロードデータPDの高速ダウンリンク伝送を可能にするために、送信前にペイロードデータをバッファBにバッファリングする。
・ペイロードデータPDを複数のフレームにグループ化する。
・アップリンクチャネルUC信号を捕捉する。
・通信コントローラCCによる自動要求ARQプロトコル(後の段落で詳述する)を用いて、光地上端末30によりすべてのフレームが受信されることを確実にする。
・汎用インターフェースを介して制御及びコマンド(C&C)を提供する。
・(エンコーダENCにより)変調されて符号化されたデータを、(RF増幅器を用いる)衛星トランシーバSTRのレーザに電気的に送る。
・変調されたデータを検波器DETを介して受信する。
【0032】
図3には、通信サブシステムのCSの主要な機能も示され、ここで、制御信号は点線により示される。目的は高い信頼性のデータ伝送である。システムは、空間的損失、大気のシンチレーション効果、及び背景ノイズにうまく対処しなければならない。
【0033】
通信サブシステムCSにはペイロードデータ源PDSが接続される。ペイロードデータ源PDSは、光ダウンリンクチャネルDLを介して光地上端末30へ伝送すべきペイロードデータPDを、通信サブシステムCSに供給する。ペイロードデータ源PDSは、大容量記憶装置であってもよく、又は、インターフェースをとることが可能な任意のデータ源であってもよい。ペイロードデータPDは、好ましくは、送信前にCSにバッファリングされる。ダウンリンクチャネルDLが利用可能であるとき、ペイロードデータPDはプロトコルスタックにわたされる。ここで、受信機、すなわち光地上端末30においてデータを同期化、識別、及び検証を実施できるようにするために、ペイロードデータPDは複数のフレームにグループ化される。フレームヘッダは、フレーム番号、ポート又は宛先及びチェックサムなどの情報を含む。エラーを含むフレームの再送信を要求するために、比較的低速のアップリンクチャネルUCが必要である。
【0034】
通信サブシステムCSはさらに、フレームデータを、変調された電気信号に変換する。データレートを最大化するために、好ましい実施形態では、ダウンリンクチャネルDLでオン−オフキーイング変調形式が使用される。異なる経路を通った信号は後でRF増幅器によって増幅され、RF増幅器は光サブシステムにおいてレーザを変調する。
【0036】
図3に、ペイロードデータPDの流れを示す。特に好ましい実施形態では、1Gbpsのダウンリンク容量をそれぞれ有し、合計で2Gbpsのダウンリンク容量を有する2つのダウンリンクチャネルDL及びDL2と、1つのアップリンクチャネルUCとが実装され(ただし、この方法は2つよりも多くのダウンリンクチャネルにも同様にスケーラブルに適用可能である)、通信チャネルは以下の転送レートを有する。
−アップリンクチャネルUCレート: 低速のパルス位置変調PPMを用いるアップリンクチャネルは、約100kbpsのユーザデータレートの転送レートを有する。
−ダウンリンクチャネルDLレート: ダウンリンクチャネルは、2.5Gbpsの生データレート及び2Gbpsのユーザデータレートを有する高速なオン−オフ−キーイング(OOK)変調を用いる。典型的には、データはグループ化されて転送される。データグループは本明細書で定義されるように記述される。
−ペイロードデータバッチ: ペイロードデータバッチは、衛星20に係る1回の衛星の通過の時間区間にわたって光地上端末30に伝送されるペイロードデータ源PDS内のデータ量である。1つのペイロードデータバッチのサイズは、典型的には、100kBのオーダーである。データを伝送するために利用可能な時間長は、典型的には、数分のオーダーである。
−ペイロードデータブロック: ペイロードデータPDは、ペイロードデータブロックと呼ばれる複数のグループとして取り出される。ペイロードデータブロックのサイズは、ペイロードインターフェースPI自体によって制限されてもよく、又は、完全に定義されていてもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、通信サブシステムCSは、柔軟性及び開発の容易さのために、
図3に示すように物理的に異なる2つのエンティティに分割される。
【0040】
図4に記号的に示すように、衛星トランシーバSTR及び地上トランシーバGTRの間の通信のプロトコルスタックは、2つの層に分割される。通信のリンク層及びPHY層の区別は以下の通りである。
・PHY層(物理層)は、信号生成(高速シリアル信号)、信号捕捉(ADCインターフェース)、変調(復調)、符号化/復号化、同期化などの低レベル通信機能を実行する。これらの機能は、PHY機能と呼ばれる。PHY機能は、典型的には、ソフトウェアを必要とせず、ハードウェア論理回路のみを必要とする。
・リンク層は、フレーム生成、自動再送要求(ARQ)などの高レベル通信機能を実行する。これらの機能は、リンク機能と呼ばれる。リンク機能は、典型的には、ソフトウェアを必要とする。
【0041】
オプションとして、本発明の別の実施形態では、例えば多重化などの追加機能が要求されるとき、さらなる層(例えばトランスポート層)が追加されてもよい。
【0043】
リンク層は以下の機能を有する。
・データは複数のフレーム(例えば、組み込まれたシステムの性能に依存して約1Mb又はそれよりも小さいサイズのフレーム)に分割される。
・フレームは一意的な識別子を有する。
・通信チャネルは本質的に信頼できないので、自動再送要求(ARQ)プロトコルが実装される。
・フロー制御機構として、「スライディングウィンドウ」アルゴリズムが実装される。
【0045】
最も好ましい実装によれば、送信、再送要求、及びフレームの再送は、選択的再送機構として、好ましくは自動再送要求ARQ機構として実装される。選択的再送機構を用いることで、特定のフレームを再送信することができる。
【0046】
この方式を用いることで以下の機能が実装される。
・「スライディングウィンドウ」アルゴリズムが実装される。スライディングウィンドウは以下の情報を含む:
−現在のウィンドウ境界、
−肯定応答された受信フレームのリスト、
−まだ肯定応答されていない受信フレームのリスト、及び、
−まだ受信されていないフレームのリスト。
・スライディングウィンドウに係るすべての情報が光地上端末30で保持される必要がある一方、低地球軌道衛星20は現在のウィンドウ境界のみを保持する。このことは、処理要件及びメモリ要件に関して、低地球軌道衛星
20の複雑さを劇的に低減する。
・ACKが受信されなかったとき、古いフレームが再送信される。
・パッケージを再送信するきっかけを効果的に与えることで性能を向上させるために、受信に失敗した/受信時にエラーがあった1つ又は複数のフレームの再送信を要求する否定応答NACKメッセージが使用され、好ましくは、受信に失敗した/受信時にエラーがあった1つ又は複数のフレームの範囲の境界を識別する否定応答NACK信号を送信し、これにより、上記境界によって示されたフレームの範囲全体の再送信を要求する。この実装によれば、所定範囲にわたるフレーム(すなわちフレーム1000−1200)の再送信を要求(NACK)することができる。従って、失われたフレームのそれぞれを個別に要求することは不要になる。ダウンリンクチャネルDLの性質に起因して、通常、伝送エラーはバーストとして発生する。従って、受信に失敗した/受信時にエラーがあった1つ又は複数のフレームの範囲の境界を識別する否定応答NACK信号を送信できることは、効率を大幅に向上させ、また、アップリンクチャネルUCの限られた容量のより良好な使用を保証する。
【0047】
図5に、否定応答NACKを用いた選択的再送ARQの概念の概要を大幅に簡単化して示す。ここで、フレームP2が失われている/伝送時のエラーを含む。フレームP3を受信した光地上端末30は、そのシーケンス番号が誤っていることを検出し、フレームP2の再送信を要求するために否定応答信号NACK P2を送出する。低地球軌道衛星20は、NACK P2信号を受信すると、フレームP2を再送信する。
【0048】
「スライディングウィンドウ」を用いた否定応答NACK
【0049】
選択的再送、すなわち、「スライディングウィンドウ」アルゴリズムを用いた否定応答NACKは、以下のように動作する。このプロトコルは選択的再送プロトコルを用いる。光地上端末30及び低地球軌道衛星20の両側で、2つのポインタ、すなわち先頭ポインタ及び末尾ポインタがある。
【0050】
光地上端末30において、末尾ポインタは、まだ受信されていないフレームのうちの最も古いもののインデックスである。末尾ポインタは低地球軌道衛星20に送られ、所定の時間遅延を有して低地球軌道衛星20に到着する。低地球軌道衛星20における末尾ポインタの意味は、正しく受信されたものとして光地上端末30によってまだ確認されていないフレームのうちの最も古いものを指すというものである。
【0051】
光地上端末30における先頭ポインタは、受信されるべき通常のシーケンスに係る次のフレームを指す。受信されたフレームが他のインデックスを有するとき、このことは、いくつかのフレームが中間で失われたことと、又は、当該フレームが既に送られたフレームを再送信したものであることとのいずれかを意味する。低地球軌道衛星20における先頭ポインタは、送信されるべき次のフレームのインデックスへのポインタである。低地球軌道衛星20がそのようなフレームを送信する毎に、先頭ポインタは1つ増大される。送信されたフレームが再送信に係るものである場合には、先頭ポインタは増大されない。低地球軌道衛星20における先頭ポインタ及び末尾ポインタの間の距離が所与のウィンドウサイズよりも大きいときには、低地球軌道衛星20は、先頭ポインタをそれ以上増大させることができず、光地上端末30が新たな末尾ポインタを送信するまで待機しなければならない。
【0052】
「スライディングウィンドウ」のメモリ要件は以下の通りである。
−低地球軌道衛星20は現在のウィンドウ境界のみを保持するので、スライディングウィンドウの先頭及び末尾を保存するためのメモリ要件は限定的である。
−スライディングウィンドウに係る完全な情報が光地上端末30で保持される必要がある。スライディングウィンドウの状態を記憶するために必要なメモリは、スループット、パケット長、及びラウンドトリップ時間に大きく依存する。シーケンス番号のうちで記憶されなければならない番号は、「ラウンドトリップ時間」/「1フレームの時間」の倍数(例えば10倍)である。好ましくは、フレームサイズは、光地上端末30の地上通信サブシステムGCSがこの処理負荷にうまく対処できるように選択される。
【0053】
低地球軌道衛星20がその先頭ポインタをそれ以上増大させることができない場合、低地球軌道衛星20は、末尾ポインタから始まるフレームの再送信を開始する。低地球軌道衛星20は、光地上端末30から新たな末尾ポインタを有するフレームを受信するとすぐに、通常の送信に復帰する。
【0054】
図6で、スライディングウィンドウアルゴリズムによる複数のデータフレームの遷移フローを、時刻T0からT4までの5つの異なる瞬間において示す。
図6において、まだ受信されていないフレームは破線パターンを有するものとして示し、受信に成功したフレームは波線パターンを有するものとして示し、伝送中に失われたフレームは格子パターンを有するものとして示す。
【0055】
実装のために、両側で2つのハンドラ、すなわちフレーム受信ハンドラ及びフレーム送信ハンドラが定義される。フレーム送信ハンドラは、最後のフレームの送信が完了する毎に呼ばれる。次いで、フレーム
送信ハンドラは、次に送信すべきフレームを選択する。フレーム受信ハンドラは、フレームが受信される毎に呼ばれる。これは、フレームの内容を分析し、次いで、ローカル変数を更新する。
【0056】
メモリ: スライディングウィンドウの状態を記憶するために必要なメモリの量は、スループット、フレーム長、及びラウンドトリップ時間に大きく依存する。シーケンス番号のうちで記憶されなければならない番号は、近似的には、「ラウンドトリップ時間」/「1フレームの時間」である。フレームサイズは、組み込まれたシステムが処理負荷を扱うことができるように選択される。
【0057】
チャネルフェージング: 大気を通過する光チャネルにはフェージングが生じる。このことは、チャネル状態の一時的な悪化により全データが失われることを意味する。この中断のコヒーレンス時間が重要であり、データ源に依存して2〜50msの間である。ARQは、このような中断にうまく対処できるように設計される。
【0058】
フレームエラーレート: エラー訂正機構を用いることで、結果的に、1e−2よりも良好なフレームエラーレートが得られることが想定される。強力なエラー検出機構により、すべてのエラーが検出されることが想定される。
【0060】
PHY層は以下の機能を有する。
・送信機(Tx):
−エラー検出符号の生成、
−ヘッダ情報の生成、
−好ましくは前方エラー訂正(FEC)を用いた、データの符号化。
・受信機(Rx):
−同期化(PLL)、
−パルス位置変調(PPM)の復調、
−前方エラー訂正FEC符号の復号化、
−エラー検出(例えばCRC)、
−ヘッダ情報の抽出。
【0062】
図3に示すように、低地球軌道衛星20はさらに、低地球軌道衛星20及び光地上端末30の間の見通し線が利用可能になるまで上記ペイロードデータPDを一時的に格納するバッファBを備え、これにより、ペイロードインターフェースPIがずっと低速である場合であっても、上記光ダウンリンクチャネルDLを介したペイロードデータPDの高速ダウンリンク伝送を可能にする。バッファBに関連した動作は、バッファ制御装置BCによって管理される。
【0063】
まず第一に、通信コントローラCOMCOは、ユーザデータインターフェースアダプタUDIAに命令し、ペイロードデータPDの特定の部分をユーザデータインターフェースアダプタUDIAのバッファBに取り出させる。
【0064】
第2のステップとして、通信コントローラCOMCOは、ユーザデータインターフェースアダプタUDIAのバッファBのページ(例えば32kB)に関して利用可能なメモリ範囲を受信する。通信コントローラCOMCOは、ユーザデータインターフェースアダプタUDIAに命令し、バッファBの特定の部分を通信コントローラCOMCOに転送させる。バッファBの部分の送信に成功した後で、通信コントローラCOMCOは、ユーザデータインターフェースアダプタUDIAに命令し、(例えば、8×256KiBのサイズのブロックにおいて)バッファBの対応する部分を消去させる。一方、送信の失敗を検出したときには、通信コントローラCOMCOは、バッファBの特定の部分を通信コントローラCOMCOに転送するようにユーザデータインターフェースアダプタUDIAに要求する。このことを容易にするために、バッファBは、バッファB内のペイロードデータPDのデータブロックへのランダムアクセスを提供する。
【0065】
特許請求の範囲に定義された発明の範囲から離れることなく、ここに説明された特定の構造に基づいて多くの変形を行えるということが理解されるであろう。