(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139855
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】多孔質チタン薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/11 20060101AFI20170522BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20170522BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B22F3/11 B
B22F3/02 M
B22F3/02 L
B22F7/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-234897(P2012-234897)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84505(P2014-84505A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 智
(72)【発明者】
【氏名】叶野 治
(72)【発明者】
【氏名】竹中 茂久
【審査官】
川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−124833(JP,A)
【文献】
特開2006−028616(JP,A)
【文献】
特開平11−181505(JP,A)
【文献】
特開2006−097075(JP,A)
【文献】
特開2014−065968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/00− 8/00
C22C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化チタン粉末を含むチタン原料とアクリル樹脂からなるチタンペーストを基材に塗工して成膜し、これを焼結して、多孔質チタン薄膜を製造する方法において、
前記アクリル樹脂の体積率を調整することによって、多孔質チタン薄膜の空隙率Aを制御することを特徴とする多孔質チタン薄膜の製造方法。
ここで、多孔質チタン薄膜の空隙率Aは、アクリル樹脂の体積率Vと以下の関係がある。
A=αV+β … (1)
多孔質チタン薄膜の空隙率:A(%)
アクリル樹脂の体積率:V(%)
V=100×Vb(アクリル樹脂の体積)/(Vt(チタン原料の体積)+Vb)
α、β:焼結温度および焼結時間によって決まる定数であり、α:0.9〜1.1、β:10〜15である。
【請求項2】
前記アクリル樹脂が、粒径1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質チタン薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質チタン薄膜の製造方法に係り、焼結後の多孔質チタン薄膜の空隙率を精度よく制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の空隙率を有する金属多孔体は、近年、電池材料の隔膜や電極の素材として、盛んに利用される状況にある。
【0003】
特に、前記した電池材料の中でも、色素増感型太陽電池においては、導電性の高い薄膜が隔膜として有効に利用されている。この導電性の高い隔膜は、電解液中のイオンの流通が可能な特性を有していることが求められている。
【0004】
しかしながら、前記した導電性の高い隔膜は、10〜50μm程度の薄膜であって、更に、空隙率が、25〜65%もの高い数値を有していることが求められているが、このような特性を有している薄膜は得られていないのが実情である。
【0005】
このような観点については、例えば、水素化チタン粉末または水素化チタン粉末とチタン粉末の混合粉末を原料として、チタンペースト法によって、多孔質チタン薄膜を含むチタン薄膜を製造する技術に関しては、何件か特許文献により報告がなされており、多孔質チタン薄膜の空隙率(気孔率)を調整するために種々の手段あるいは方法が以下のように開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、結合剤と分散剤を使いてチタン粉をスラリー化した後、成膜、乾燥、焼結する工程において製造された焼結体を更に、成形後冷間加工することにより空隙率を調整する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法においては、チタン粉を含有するスラリーを調整後、これを成膜後、更に乾燥および加熱して、焼結体とした後、これを更に圧延することにより空隙率の制御された多孔体を製造することができるという効果を奏するものの、更に、圧延工程が必要となるため、工程が複雑となり改善の余地が残されている。
【0008】
また、特許文献2では、水素化チタン粉を35%〜95%の割合で配合使用したチタンペーストを射出成形し、チタン焼結部材を得る方法が開示されているが、得られるチタン焼結部材の密度は95%以上であり、任意の空隙率を有した焼結体の製造を目的とするものではない。
【0009】
また、特許文献3においては、50%以上の気孔率を有する焼結体を得るために、有機バインダー、発泡剤および界面活性剤を添加して、気孔率60%以上のグリーン成形体を焼結する技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、製造される焼結体の空隙率を調整する方法に関する態様は開示されていない。
【0011】
更には、特許文献4においては、チタンペーストに水溶性樹脂結合材、有機溶剤、可塑剤、界面活性剤を添加することで50%以上の気孔率を有する3次元状の多孔体を製造する技術が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献4は、3次元方向に大きさを有する、すなわち厚手の多孔質体に関するものであり、薄手チタン製シートでありながら、気孔率の小さいシートの製作方法に関する態様は開示されていない。
【0013】
特許文献5では、チタンペーストに水溶性樹脂結合材、有機溶剤、可塑剤、界面活性剤に加えて発泡剤を添加することで、50%以上の気孔率の多孔体を得る技術が開示されている。同公報では、多孔体の強度向上のためにチタン粉に水素化チタン粉末を使った技術が開示されている。
【0014】
しかしながら、当該引例においても、薄手のシート状多孔体に対する製法に関する態様は開示はされていない。
【0015】
特許文献6では、チタン粉末および水素化チタン粉末の少なくとも一方を含むチタンペーストに水溶性樹脂結合材、有機溶剤、可塑剤、界面活性剤を添加したスラリーを原料とし、これをシート状の成形体とした後、乾燥・焼結させることによるシート状多孔体の製法が開示されている。
【0016】
特許文献7では、金属粉で構成したシート状の成形体を電源に係合された2組のロールで挟みこむ形で前記シートを水平方向に連続的に移動させつつ、前記ロール間に印加された電圧により生成されたシート状成型体の自己発熱により、焼結を促進させることを特徴とする技術が開示されている。
【0017】
しかしながら、特許文献6および7においても、同シート状多孔体の空隙率の制御方法に関する態様は開示されていない。
【0018】
特許文献8では、チタン粉および水素化チタン粉を含むスラリーをシート状の成形体とし、これを焼結体に加工する方法が開示されている。同公報では、多孔体シートの空隙率の調整を、焼結圧密化処理(具体的には焼結・圧延・再焼結)で行なう方法が開示されている。
【0019】
同公報においては、2段階で行う技術を開示しているが、1回目の焼結温度、2回目の焼結温度は、次の条件を満足する必要があり、工程が複雑となり、また手間も増える。
900℃<T
1≦1300℃、1000℃<T
2≦1400℃、T
1+50℃<T
2
【0020】
また、前記方法で製造されたシート状多孔体の厚みは、55〜240μmの厚みであり、密度比が74〜91%というものであり、本願が目指すところの10〜50μmの薄手のシートであって、更に気孔率が25〜65%程度のシート状成形体に関する製法の記載は見当たらない。
【0021】
特許文献9では、特許文献8と同様に、焼結シート圧延法でチタン薄膜を製造するにあたり、クラックの発生しにくい製造法を開示している。また、粘性組成物の重量比を制御することで、クラックが発生しにくいとし、粉末を100として、結着剤(B)、可塑剤(P)が0.03<B≦3、2<P≦30、B<Pの条件を満足する時にクラックが発生しにと記載されている。
【0022】
しかしながら、前記公報においても、10〜50μmの薄手のシートであって、更に気孔率が25〜65%程度のシート状成形体に関する製法の記載は見当たらない。
【0023】
以上のことをまとめると、多孔質のチタン薄膜の空隙率(気孔率)を制御するための技術としては、以下の方策が知られている。
(1)成形後冷間加工
(2)チタンペーストを射出成形後、成形(小空隙率狙い)
(3)気孔率60%以上のグリーン成型体を焼結(50%空隙率狙い)
(4)圧密化処理
【0024】
上記2および3の方法では、特定の空隙率のチタン多孔質を製造する方法であり、空隙率を調整あるいは制御する方法についての開示はない。また、上記1および4の方法では、冷間加工という特別な工程を必要とするので工程が長くなりまたクラック防止等も必要となり、その結果、安価なチタン多孔質を製造するのが困難になってくる。
【0025】
このように、10〜50μm程度の厚みであって、気孔率が25〜65%程度のシート状多孔体を、最小限の工程で効率よく安価に製造する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開昭63−184265号公報
【特許文献2】特開2000−17301号公報
【特許文献3】特開2004−043976号公報
【特許文献4】特開2006−138005号公報
【特許文献5】特開2007−046089号公報
【特許文献6】特開2009−102701号公報
【特許文献7】特開2010−261073号公報
【特許文献8】特開2010−261093号公報
【特許文献9】特開2011−42828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、空隙率が25〜65%程度であり、厚さが10〜50μm程度のチタン製シートを効率よく安価に製造する方法および同空隙率を制御する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めたところ、水素化チタン粉末を含むチタン原料と有機バインダーからなるチタンペーストを基材に塗工、成膜および焼結工程により、多孔質チタン薄膜を製造する方法において、前記チタンペースト中に配合する有機バインダーの容積比率を主に調整することで、同成形体を焼結して得られた多孔体の気孔率を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
即ち、本発明に係る多孔質チタン薄膜の製造方法は、水素化チタン粉末を含むチタン原料とアクリル樹脂からなるチタンペーストを基材に塗工して成膜し、これを焼結して、多孔質チタン薄膜を製造する方法において、アクリル樹脂の体積率を調整することによって、多孔質チタン薄膜の空隙率Aを制御することを特徴とする多孔質チタン薄膜の製造方法である。
ここで、多孔質チタン薄膜の空隙率Aは、アクリル樹脂の体積率Vと以下の関係がある。
A=αV+β … (1)
多孔質チタン薄膜の空隙率:A(%)
アクリル樹脂の体積率:V(%)
V=
100×Vb(アクリル樹脂の体積)/(Vt(チタン原料の体積)+Vb)
α、β:焼結温度および焼結時間によって決まる定数であり、α:0.9〜1.1、β:10〜15である。
【0031】
更に、本発明に係る多孔質チタン薄膜の製造方法においては、
アクリル樹脂が、粒径1〜10μm
であることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来の成形体の冷間加工や焼結後の圧密化工程を経ることなく、通常のペースト法による成膜法のみで、空隙率が25〜65%、厚みが10〜50μmのシート状多孔体を製造することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
本発明に係る多孔質チタン薄膜の製造方法は、水素化チタン粉末を含むチタン原料と
アクリル樹脂からなるチタンペーストを基材に塗工して成膜し、これを焼結して、多孔質チタン薄膜を製造する方法において、
アクリル樹脂の体積率を調整することによって、多孔質チタン薄膜の空隙率を制御することを特徴とするものである。
【0034】
本発明においては、前記アクリル樹脂の体積率は、目的とする多孔質チタン薄膜の空隙率Aを与えることにより、以下の関係式を用いて決定することができる。
A=αV+β …(1)
多孔質チタン薄膜の空隙率:A(%)
アクリル樹脂の体積率:V(%)
V=
100×Vb(アクリル樹脂の体積)/(Vt(チタン原料の体積)+Vb)
α、β:焼結温度および焼結時間によって決まる定数であり、α:0.9〜1.1、β:10〜15である。
【0035】
本発明に係る多孔質チタン薄膜とは、空隙率が25〜65%にあり、かつ、厚みが10〜50μmの範囲にあるものをいう。このような特徴を有する多孔質チタン薄膜は、例えば、二次電池と呼ばれている太陽電池の隔膜や電極あるいは燃料電池の電極や拡散膜として好適に利用適用することができるという効果を奏するものである。
【0036】
本発明に用いる水素化チタンは、チタン材を水素化処理して得られた水素化チタンを粉砕・整粒することにより、製造されたものを用いることが好ましい。原料として使用するチタン材は、純チタン材のみならず、チタン合金材でも使用することができる。
【0037】
前記の方法で製造された水素化チタン粉
末の粒度
範囲は、5μm〜20μmの範囲とすることが好ましい。前記した粒度範囲の水素化チタン
粉末を用いることにより、10〜50μmの厚みのシート状多孔体を製造することができるという効果を奏するものである。
【0038】
本発明に使用する有機バインダーの有機成分としては、アクリル樹脂を用いることを好ましい。前記アクリル樹脂は、直径1μm、5μm、10μm等の球状粒子として入手することができる。チタン原料とアクリル樹脂および溶剤を混合し、粘度が1000〜1500mPa・Sになるよう調整してペースト状組成物を調整することが好ましい。溶剤としては、イソプロピルアルコール等の一般的な溶剤を使用することができる。
【0039】
本発明においては、このときチタン原料に対して、アクリル樹脂の添加量を調整することで、焼結後のチタン多孔質薄膜の空隙率を制御することができるという効果を奏するものである。
【0040】
配合するチタン原料
(チタンとする)の重量をM(g)、アクリル樹脂の重量をP(g)とする。このとき、チタンの密度は4.5g/cm
3、アクリル樹脂の密度は1.19g/cm
3であることから、チタン原料とアクリル樹脂の成形体に対するアクリル樹脂の体積率V(%)は(2)式のように近似的に制御できる。
V=(P/1.19)÷(M/4.5+P/1.19)×100 …(2)
こうして事前に決定されたバインダー成分の体積率Vとなるように、上記(1)式で定義したチタン粉末
(チタン)の重量とバインダーを決定することができる。
【0041】
また、本発明においては、求める多孔質チタン薄膜の空隙率Aを事前に決定しておくと、下記(1)式により、水素化チタンに配合する
アクリル樹脂の体積率Vを、以下の関係式を使用することにより、求めることができる。
A=αV+β …(1)
ここで、Aは多孔質チタン薄膜の空隙率(%)、Vは
アクリル樹脂の体積率(%)で、係数αとβは、焼結温度および焼結時間によって決まってくるものである。
【0042】
本発明においては、(1)式の定数αは0.9〜1.1、βは、10〜15を好ましい範囲とするものである。上記の値を使用した(1)式を用いることにより、水素化チタンに配合する
アクリル樹脂の配合率を適用することにより、目的とする焼結体の気孔率を精度よく制御することができるという効果を奏するものである。
【0043】
αは、焼結温度の上昇および焼結時間には、殆ど影響されず、ほぼ1.0±0.1の範囲で一定の値を示すものである
。
【0045】
以上、述べたように本発明に従うことにより、気孔率25〜65%を有し、かつ、厚みが10〜50μmの多孔質薄膜を効率よく製造することができるという効果を奏するものである。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細かつ具体的に説明する。
本願実施例で製造された部品の厚さおよび空隙率は以下のようにして測定した。
1.厚さの測定方法
マイクロメータで、得られた多孔質チタン薄膜(長方形)を3方向に等間隔で3箇所、合計9箇所の厚さを測定し、その平均値を求めた。3方向とは、多孔質チタン薄膜の中央部、上辺部、下辺部である。
【0047】
2.空隙率の測定方法
空隙率(A)は、前記厚さと多孔質チタン薄膜(長方形)の大きさから計算した体積(B)と、測定試料の質量(W)と、チタンの真密度(4.50g/cm
3)から下式により算出した。
空隙率A(%)=(B−W/4.50)/B×100
測定試料の大きさは、ノギスで測定し求めた。
【0048】
[実施例1]
(アクリル樹脂体積率:
33.0%、水素化チタン比率:100%、焼結温度:800℃)
最大粒径が15μm、平均粒径が10μmの水素化チタン粉末1000gに、5μmのアクリル樹脂、150g、イソプロピルアルコール100mLを混合し、粘度が1200mPa・Sになるよう調整し、ペースト状組成物を作製した。
(2)式においてチタン密度4.5g/cm3に代えて公知の水素化チタン密度3.9g/cm3を用いて計算し、このペースト状組成物におけるアクリル樹脂の体積率は
33.0%と算出された。このペーストを用いて、スクリーン印刷法でPETシートにコーティングし成形体厚みが25μmの成形体を作製、成形体を150℃で乾燥させ、乾燥成形体を得た。
【0049】
乾燥成形体を、300mm×300mmに切断し、PETシートから剥離後、300℃で2時間脱バインダー処理をし、その後800℃で、2時間焼結処理をした。冷却後、材料をとりだして、焼結材を調査したところ、空隙率は50%の多孔質チタン薄膜が得られた。
【0050】
[実施例2、比較例1]
(アクリル樹脂体積率:
14.1%〜
45.0%、水素化チタン:100%、焼結温度:800℃)
実施例1で用いた水素化チタン粉末1000gに対して、実施例1に用いたアクリル樹脂の混合比率を表1に示す割合で変化させ、イソプロピルアルコール100mLを混合し、ペースト状組成物を作製した。各々のペースト状組成物におけるアクリル樹脂の体積率は表1に記載の通りである。実施例1と同じ要領で、スクリーン印刷法でPETシートにコーティングし、成形体を150℃で乾燥させ、乾燥成形体を得た。
【0051】
乾燥成形体を、300mm×300mmに切断し、PETシートから剥離後、300℃で2時間脱バインダー処理をし、その後800℃で、2時間焼結処理をした。冷却後、材料をとりだして、焼結材を調査したところ、空隙率は表1に示した通りである。
【0052】
【表1】
【0053】
空隙率が65%を超える比較例1−1も、25%以下となる比較例1−2も、アクリル樹脂の体積率を制御することで焼結後のチタン多孔質薄膜の空隙率を調整することは可能であった。しかし、空隙率65%を超える場合は、チタン多孔質薄膜の強度が弱く、実用化は困難と思われた。空隙率が25%未満の場合は、成形体の強度が弱く、成形体の形状を維持することが難しく実用化困難なプロセスであると考えられた。
【0054】
[実施例3]
(焼結温度:900℃)
実施例1で用いた水素化チタン粉末1000gに対して、アクリル樹脂の混合比率を表2に示す割合で変化させ、焼結温度を900℃とした以外は実施例1と同じ要領でチタン多孔質薄膜を製造した。冷却後、材料を取り出して、焼結材を調査したところ、空隙率は表2に示した通りであった。
【0055】
【表2】
【0056】
[実施例4]
(焼結温度:1000℃)
実施例1で用いた水素化チタン粉末1000gに対して、アクリル樹脂の混合比率を表3に示す割合で変化させ、焼結温度を1000℃とした以外は実施例1と同じ要領でチタン多孔質薄膜を製造した。冷却後、材料を取り出して、焼結材を調査したところ、空隙率は表3に示した通りであった。
【0057】
【表3】
【0060】
[実施例
5]
実施例1に用いた水素化チタン粉、
最大粒径が18μm、平均粒径が12μmのチタン粉末を水素化チタン比率30%で混合し、このチタン混合粉に添加するバインダー配合比率を種々変更して、生成された焼結体の空隙率の測定値と、(1)式を使用して計算された空隙率との予測値との比較結果を表5に示した。両者の値は、完全には一致してはいないが、試験や解析の精度を考慮すると両者の整合性は良好であると判断される。
なお、計算式(1)式中のα、βは、α=0.95、β=13.5を用いて計算した。また、焼結温度は、850℃、焼結時間は、2Hrである。
【0061】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法を適用することにより、ペースト成分の調整をするだけで、チタン多孔質薄膜を、電池の隔膜に好適な空隙率25〜65%、厚さ10〜50μmの範囲で調整することが可能である。