特許第6139858号(P6139858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6139858-クラッチ制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139858
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】クラッチ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20170522BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20170522BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20170522BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20170522BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20170522BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20170522BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B60W10/00 102
   F16D48/02 640K
   F16D48/02 640L
   F02D45/00 310Z
   F02D29/00 C
   F02D29/02 L
   F02D45/00 314Z
   F02D45/00 310G
   F02D45/00 314G
   B60W10/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-239892(P2012-239892)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88129(P2014-88129A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智博
(72)【発明者】
【氏名】山田 武雄
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−103232(JP,A)
【文献】 特開2003−130092(JP,A)
【文献】 特開昭61−157443(JP,A)
【文献】 特開平01−285427(JP,A)
【文献】 特開昭62−209257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/02
B60W 10/04
B60W 10/06
F02D 29/00
F02D 29/02
F02D 45/00
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停止待機モードからアクセルペダルが予め設定された設定踏み込み速度以下で踏み込まれたとき、クラッチによる動力接続が行われたが車両は停止している状態に設定されるアクセルペダル踏み込み量領域を運転者に通知するペダル踏み込み量領域通知手段を作動制御するペダル踏み込み量領域通知部と、
前記アクセルペダルが前記設定踏み込み速度以下であって、かつ、前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたときクラッチを半クラッチモードに設定するとともに、前記半クラッチモードで前記アクセルペダルが解放されたとき前記クラッチを切断して前記半クラッチモード解消し、前記アクセルペダルが更に踏み込まれたとき前記半クラッチモードを維持するように、前記クラッチを断接するクラッチアクチュエータを作動制御するクラッチ制御部と、
前記アクセルペダルが前記設定踏み込み速度以下であって、かつ、前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたとき車両が停止している状態となり、前記アクセルペダルが更に踏み込まれた場合に車両が予め設定された速度以下の微速走行する状態となるエンジン回転数を指示するエンジン回転数指示部と、
前記アクセルペダルが前記設定踏み込み速度以下であって、かつ、前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたとき車両が停止している状態となり、前記アクセルペダルが更に踏み込まれた場合に車両が予め設定された速度以下の微速走行する状態となるエンジントルクを指示するエンジントルク指示部と、
前記エンジン回転数指示部から指示されたエンジン回転数および前記エンジントルク指示部から指示されたエンジントルクとなるようにエンジンを制御するエンジン制御部と、
を少なくとも備えていることを特徴とするクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記クラッチを制御するとともに自動変速機を制御する変速機制御装置を備え、
前記クラッチ制御部、前記ペダル踏み込み量領域通知部、エンジン回転数指示部、およびエンジントルク指示部は前記変速機制御装置に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置におけるクラッチの断接を自動的に制御するクラッチ制御装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バスやトラック等の大型車両のクラッチおよび変速機においては、例えば、運転者がチェンジレバーを所望のシフト位置に操作すると、このチェンジレバーのシフト位置に基づいて変速機ECUにより自動的に制御されるクラッチおよび自動変速機が種々提案されている。
【0003】
このような従来のクラッチの断接を自動的に制御するクラッチ制御装置として、車両の発進時、または変速ギヤが第1速段、第2速段、あるいは後進段に設定されているときに、クラッチを半クラッチ・モードに設定して車両を微速走行可能にするとともに、車両が半クラッチ・モードで微速走行しているときで、路面が急に平坦になるかあるいは進行方向に下り坂になるかなどにより車両の負荷が急に小さくなる場合に、半クラッチ・モードが解除されなくエンジン回転が上昇することで、クラッチの滑り状態が継続して発生する現象を回避するクラッチ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のクラッチ制御装置の一例では、半クラッチ・モードが設定されているときに、アクセル・ストロークの小さい状態でエンジン回転速度が所定以上になったことを検出すると、強制的に半クラッチ・モードの設定を解除してクラッチ接続状態にするようにしている。
【0005】
また、特許文献1に記載のクラッチ制御装置の他の例では、チェンジレバーに設けられた押しボタン・スイッチを押すことでクラッチを半クラッチ・モードに設定して車両を微速走行可能に設定するとともに、半クラッチ・モードが設定されているときに押しボタン・スイッチを再び押すことで、半クラッチ・モードの設定を解除するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−133824号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両が微速走行する場合として、例えば図3に示すように荷下ろし場31においてトラック33から積み荷を下ろすために、トラック33を比較的短い距離の後進微速走行で荷下ろし場31のプラットフォーム32に対して所定位置(例えば、トラック33の荷台33aの後端がプラットフォーム32の先端に接触する位置等)に停止させるような場合がある。このような場合、従来は運転者がアクセルペダルをゆっくりと小さく踏み込んだり、アクセルペダルを解放したりすることを繰り返してトラック33を前述の所定位置に停止させるようにしている。
【0008】
このようなトラック33の運転操作では、トラック33の後端がプラットフォーム32に衝突する場合がある。このため、ゴム等の弾性材からなる緩衝部材34がプラットフォーム32の先端に配設されていて、トラック33の後端がこの緩衝部材34に当接することで衝撃が緩和されるとともに、トラック33およびプラットフォーム32の損傷が抑制されるようになっている。
【0009】
しかしながら、前述のような緩衝部材34を用いても、アクセルペダルのゆっくりとした小さい踏み込みおよびアクセルペダルの解放を繰り返して行う必要がある。しかも、アクセルペダルの少しの踏み込みで半クラッチにより車両がすぐに比較的大きく動き出す可能性があることから、運転者はトラック33を注意深く移動させなければならなく、アクセルペダルの踏み込み操作が煩雑となるという問題がある。
【0010】
特に、このような荷下ろし場31においては、トラック33が位置する路面35が、プラットフォーム32から遠ざかる方へ小さな傾斜角θで若干傾斜している場合が多い。このため、アクセルペダルの踏み込みでプラットフォーム32に接近したトラック33は、アクセルペダルを解放するとプラットフォーム32から遠ざかる方向へ移動してしまう。したがって、アクセルペダルの踏み込み操作が更に一層煩雑となる。
【0011】
また、微速走行モードが終了すると車両を通常発進モードに切り替える必要がある。そこで、一般にアクセルペダルを大きく踏み込んでアクセル開度を大きくすることで、微速走行モードから通常発進モードに切り替えている場合が多い。
【0012】
そこで、プラットフォーム32に対するトラック33の所定位置への停止操作に、前述の特許文献1に一例として記載したクラッチ制御装置による微速走行を用いることが考えられる。しかし、アクセル・ストロークの小さい状態でエンジン回転速度が所定以上になったとき強制的に半クラッチ・モードを解除してクラッチを接続するようにした場合には、運転者によるモード切換操作が不要になるものの、トラック33が急加速してしまい、トラック33がプラットフォーム32に比較的速い速度で衝突する可能性が考えられる。したがって、前述のアクセルペダルの踏み込み操作が煩雑となるという問題を解決することは難しい。
【0013】
しかも、このような荷下ろし場31においてトラック33を短い距離で微速走行させる場合、車両の微速走行を特許文献1に記載のようにアクセル・ストロークのみに基づいて判断したのでは、微速走行の実行判断を正確に行うことは難しい。
【0014】
また、特許文献1に他の例として記載したクラッチ制御装置のように半クラッチ・モードの設定および設定解除を押しボタン・スイッチの押圧操作により行うようにした場合には、運転者が一々押しボタン・スイッチを操作しなければならない。したがって、前述の従来のモード切替におけるアクセル開度を大きくする場合と同様に運転者によるモード切換操作が必要となるという問題がある。しかも、押しボタン・スイッチを設ける必要があるため、部品点数が多くなるばかりでなく、モード切替の構造が複雑となるいう問題がある。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、微速走行を行うための半クラッチモードの設定および半クラッチモードの設定解除をより一層簡単に行いつつ、部品点数を削減してモード切替の構造を簡単にすることができるクラッチ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の課題を解決するために、本発明に係るクラッチ制御装置は、車両の停止待機モードからアクセルペダルが予め設定された設定踏み込み速度以下で踏み込まれたとき、クラッチによる動力接続が可能な状態であるが車両は停止している状態に設定されるアクセルペダル踏み込み量領域を運転者に通知するペダル踏み込み量領域通知手段を作動制御するペダル踏み込み量領域通知部と、前記アクセルペダルが前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたときクラッチを半クラッチモードに設定するとともに、前記半クラッ
チモードで前記アクセルペダルが解放されたとき前記クラッチを切断して前記半クラッチモード解消するように、前記クラッチを断接するクラッチアクチュエータを作動制御するクラッチ制御部と、前記アクセルペダルが前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたとき車両が停止している状態となるエンジン回転数を指示するエンジン回転数指示部と、前記アクセルペダルが前記アクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたとき車両が停止している状態となるエンジントルクを指示するエンジントルク指示部と、前記エンジン回転数指示部から指示されたエンジン回転数および前記エンジントルク指示部から指示されたエンジントルクとなるようにエンジンを制御するエンジン制御部とを少なくとも備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係るクラッチ制御装置は、前記クラッチを制御するとともに自動変速機を制御する変速機制御装置を備え、前記クラッチ制御部、前記ペダル踏み込み量領域通知部、エンジン回転数指示部、およびエンジントルク指示部が前記変速機制御装置に配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された本発明に係るクラッチ制御装置によれば、車両の停止待機モード(発進モードで、ギア段が1速段、2速段、または後進段(R)に設定されているが、アクセルペダルが踏み込まれていなく車両が停止している状態)からアクセルペダルが設定踏み込み速度以下で踏み込まれたとき、クラッチ制御部によりクラッチアクチュエータが作動制御されるとともに、エンジン制御部によりエンジンがエンジン回転数指示部から指示されたエンジン回転数およびエンジントルク指示部から指示されたエンジントルクとなるように制御される。そして、アクセルペダルが、半クラッチによる動力接続が可能な状態であるが車両は停止している状態であるペダル踏み込み量領域内に踏み込まれると、ペダル踏み込み量領域通知手段によりこのアクセルペダル踏み込み量領域が運転者に通知される。したがって、運転者は車両が半クラッチモード(つまり、微速走行モード)に設定されたことを認識することが可能となる。このようにアクセルペダル踏み込み量とアクセルペダル踏み込み速度との2つの条件に基づいて車両の微速走行を判断制御することで、運転者の微速走行を行おうとする意思を察知して車両の半クラッチモード(つまり、微速走行モード)を簡便にかつ自動的に作り出すことができるようになる。特に、アクセルペダルの踏み込みがアクセルペダル踏み込み量領域内になったことを運転者に通知することで、運転者は車両を更に一層安定して微速走行させることができる。
【0019】
また、運転者によってアクセルペダルがアクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれると車両が微速走行モードに自動的に設定された後、アクセルペダルをアクセルペダル踏み込み量領域内で更に少量だけ前述のアクセルペダル踏み込み速度で踏み込むことで、車両がゆっくり動き出すクリープ状態に自動的にかつ簡単に設定することができる。
【0020】
更に、微速走行モードを終了するためにアクセルペダルを単に解放することで、クラッチが切断されて、半クラッチモードが自動的に解消される。これにより、車両を半クラッチモードから通常発進モード(自動発進モード)に自動的に切替設定することが可能となる。したがって、車両を微速走行モードから通常発進モードに簡単に切り替えることができる。こうして、運転者はアクセルペダルの踏み込み操作だけで、通常発進モード(自動発進モード)および微速走行モードを自由に選択することが可能となる。
【0021】
更に、前述のようにアクセルペダルを操作するだけで車両を停止待機モードから微速走行モードに自動的に設定することができ、また車両を微速走行モードから通常発進モード(自動発進モード;または、停止待機モード)へ自動的に設定することができることから、車両を微速走行モードに設定するとともに微速走行モードを設定解除するための専用の操作部材(例えば、前述の特許文献1に記載の押しボタン・スイッチ等)が不要となる。
これにより、部品点数を削減できるとともに構造を簡単にすることができ、しかも、運転者による微速走行の車両運転操作も容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るクラッチ制御装置の実施の形態の一例を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明に係るクラッチ制御装置によるクラッチ制御のフローを示す図である。
図3】車両を微速走行させる場合の一例における問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係るクラッチ制御装置の実施の形態の一例を模式的に示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、この例のクラッチ制御装置1は、車両の自動変速機を制御する変速機ECU2(本発明の変速機制御装置に相当)、および、エンジントルクを発生するエンジン3を制御するエンジンECU4(本発明のエンジン制御部に相当)、チェンジレバーシフト位置検出センサ5、車速センサ6、クラッチストロークセンサ7、アクセルペダル踏込量センサ8、エンジン回転数検出センサ9、エンジントルク検出センサ10、クラッチアクチュエータ11、およびペダル踏み込み量領域通知手段12を有する。
【0025】
チェンジレバーシフト位置検出センサ5はチェンジレバーシフト位置を検出してチェンジレバーシフト位置信号(チェンジレバーシフト位置情報)を出力する。また、車速センサ6は車両速度を検出して車速信号(車速情報)を出力する。更に、クラッチストロークセンサ7はクラッチアクチュエータ11のクラッチストロークを検出してクラッチ制御信号を出力する。更に、アクセルペダル踏込量センサ8はアクセルペダル(不図示)の踏込量を検出を検出してアクセル開度信号(アクセル開度情報)を出力する。更に、エンジン回転数検出センサ9はエンジン3の回転数を検出してエンジン回転数信号(エンジン回転数情報)を出力する。更に、エンジントルク検出センサ10はエンジン3の出力するエンジントルクを検出してエンジントルク信号(エンジントルク情報)を出力する。これらの各センサは、それぞれ従来公知のセンサを用いることができる。
【0026】
そして、チェンジレバーシフト位置検出センサ5からのチェンジレバー位置信号、車速センサ6からの車速信号、クラッチストロークセンサ7からのクラッチストローク信号、アクセルペダル踏込量センサ8からのアクセル開度信号、エンジン回転数検出センサ9からのエンジン回転数信号、およびエンジントルク検出センサ10からのエンジントルク信号が変速機ECU2に入力される。
【0027】
また、クラッチアクチュエータ11はクラッチ板の断接作動を行う。更に、ペダル踏み込み量領域通知手段12はペダル踏み込み量領域を運転者に通知する。このペダル踏み込み量領域は、半クラッチによる動力接続が可能な状態であるが車両は停止している状態である領域(つまり、通常のクラッチ接続時におけるクラッチ駆動側とクラッチ従動側との連れ回り可能である通常クラッチ接続点を含む、半クラッチで車両が動くか動かないかのペダル踏み込み量領域)である。
【0028】
ペダル踏み込み量領域通知手段12としては、ブザー、ディスプレイ表示手段、運転者入力デバイス振動手段(例えば、アクセルペダルを運転者が認知可能な程度に軽く振動させるアクセルペダル振動手段等)等を用いることができる。
【0029】
変速機ECU2は、クラッチアクチュエータ11の作動を制御するクラッチ制御部13、ペダル踏み込み量領域通知信号をペダル踏み込み量領域通知手段12に出力するペダル踏み込み量領域通知部14、エンジン回転数指示信号を出力するエンジン回転数指示部15、およびエンジントルク指示信号を出力するエンジントルク指示部16を有する。
【0030】
変速機ECU2のクラッチ制御部13は前述の各センサからの信号に基づいてクラッチの断接を制御するクラッチ制御信号をクラッチアクチュエータ5に出力する。クラッチアクチュエータ5はこのクラッチ制御信号に基づいて作動制御される。
【0031】
また、変速機ECU2のペダル踏み込み量領域通知部14は前述の各センサの出力信号のうち必要な信号(以下、各センサの出力信号という)に基づいてペダル踏み込み量領域通知信号(ペダル踏み込み量領域通知情報)をペダル踏み込み量領域通知手段12に出力する。
【0032】
更に、変速機ECU2のエンジン回転数指示部15は各センサの出力信号に基づいて必要なエンジン回転数(エンジン回転数指示情報)指示信号をエンジンECU4に出力する。更に、変速機ECU2のエンジントルク指示部16はこれらの各信号に基づいて必要なエンジントルク(エンジントルク指示情報)指示信号をエンジンECU4に出力する。
【0033】
更に、エンジンECU4は、エンジン3がこれらのエンジン回転数指示信号およびエンジントルク指示信号にそれぞれ基づいてエンジン制御信号をエンジン3に出力する。このエンジン制御信号により、エンジン3は指示されたエンジン回転数およびエンジントルクに制御される。
【0034】
ところで、この例のクラッチ制御装置1は、基本的には微速走行を行いたいという運転者の意思を察知して、前述の車両が動くか動かないかの状態になるようにクラッチを半クラッチ(つまり、車両の微速走行可能状態;更には、車両のクリープ可能状態)に制御するとともに、半クラッチによる微速走行が終了したとき、自動的にクラッチを切断して半クラッチを解除し車両が通常発進モードとなるように制御している。
【0035】
このために、この例のクラッチ制御装置1のクラッチ制御では、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)およびアクセルペダル踏み込み速度(アクセル開速度)に基づいて、クラッチ接続状態、エンジン3の回転数またはトルクを制御する。これらのアクセルペダル踏み込み量とアクセルペダル踏み込み速度との2つの条件に基づいて車両の微速走行を判断制御することで、前述の運転者の意思を察知するようにしている。より具体的には、アクセルペダルが通常走行時よりゆっくりでかつ小さいストローク量に踏み込まれたときに前述の運転者の意思を察知してクラッチを半クラッチに設定するとともに、アクセルペダルを解放したときにクラッチを切断して車両を通常発進モード(自動発進モード)に設定している。
【0036】
より具体的には、前述の各センサの出力信号に基づいて変速機ECU2は車両の後進(R)微速走行、あるいは車両の低速ギアによる前進走行、あるいは車両の微速走行を判断したときに、車両を半クラッチによる動力接続が可能な状態であるが停止している状態(つまり、車両が動くか動かないかの状態)に設定する。更に、このように車両が動くか動かないかの状態に設定するアクセルペダル踏み込み量の領域を運転者に通知して、運転者が微速走行状態または半クラッチ停止状態を簡便に作り出せる環境を作り、運転者の意思を察知するようにしている。
【0037】
以下、この例のクラッチ制御装置1のクラッチ制御について、図2に示すフローを用いて説明する。
図2に示すように、このクラッチ制御では、まずステップS1で車両が停止待機状態に設定されている。この停止待機状態は、ギア段が1速、2速、あるいは後進段(R)の発進段に設定されているが車両が停止している状態である。この状態で、ステップS2で車両を発進させるためアクセルペダルが踏み込まれると、ステップS3で変速機ECU2は前述の各センサからの出力信号に基づいてアクセルペダルのペダル踏み込み速度(つまり、アクセル開速度)が予め設定された設定踏み込み速度(つまり、設定アクセル開速度)以下であるか否かを判断する。
【0038】
運転者が車両を微速走行させるためにアクセルペダルを通常走行させる場合に比べてゆっくり踏み込んだ場合、変速機ECU2はペダル踏み込み速度が設定踏み込み速度以下であると判断する。これにより、ステップS4で変速機ECU2はアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたか否かを判断する。そして、変速機ECU2はアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたと判断すると、ステップS5で車両速度が予め設定された設定車両微速度(例えば、4〜5km/sec)以下であるか否かを判断する。
【0039】
変速機ECU2は車両速度が設定車両微速度以下であると判断すると、ステップS6でペダル踏み込み量領域通知手段12にペダル踏み込み量領域通知信号を出力する。すると、ペダル踏み込み量領域通知手段12が運転者にアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内に踏み込まれたことを通知する。同時に、ステップS7で変速機ECU2はクラッチアクチュエータ11にクラッチ制御信号を出力するとともに、エンジン回転数指示信号およびエンジントルク指示信号をエンジンECU4に出力する。
【0040】
すると、クラッチアクチュエータ11が作動するとともに、エンジンECU4がエンジンを指示されたエンジン回転数およびエンジントルクに制御する。これにより、クラッチによる動力接続が行われたが車両は停止した状態(クラッチ駆動側のトルクとクラッチ従動側のトルクがバランスする状態、つまり、車両が動くか動かないかの状態)である半クラッチモード(微速走行モード)が設定される。すなわち、微速走行モードにおける車両のクリープ可能状態が設定される。こうして、運転者は、車両が微速走行モードに設定されたことを認識する。
【0041】
次に、ステップS8で変速機ECU2はアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内で更に前述のペダル踏み込み速度で踏み込まれたか否かを判断する。変速機ECU2はアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内で更に踏み込まれたと判断すると、ステップS9で車両はゆっくり動き出す、つまり設定車両微速度以下で微速走行を行うようになる。
【0042】
次に、ステップS10で変速機ECU2はアクセルペダルが解放されたか否かを判断する。車両が微速走行で所定停止位置に到達すると、運転者はアクセルペダルを解放するとともにブレーキペダルを踏み込んで車両をこの所定停止位置に停止させる。すると、変速機ECU2はアクセルペダルが解放されて非踏み込み位置に戻ることで微速走行モードが終了して半クラッチモードが終端になったと判断し、前述の各センサからの出力信号に基づいてクラッチアクチュエータ11を作動させる。これにより、ステップS11でクラッチが切断されて半クラッチモードが解消される。したがって、微速走行で所定停止位置に停止した車両は通常発進モード(自動発進モード)に設定される。換言すると、車両は停止待機モード設定される。こうして、車両は微速走行モードから通常発進モードに自動的に切り替えられ、通常走行可能な状態となる。
【0043】
ステップS3でアクセルペダルのペダル踏み込み速度が設定踏み込み速度より大きいと判断されると、ステップS11に移行し通常発進モードが設定される。また、ステップS4でアクセルペダルがペダル踏み込み量領域内に踏み込まれないと判断されると、同様に
ステップS11に移行し通常発進モードが設定される。更に、ステップS5で車両速度が設定車両微速度より大きいと判断されると、同様にステップS11に移行し通常発進モードが設定される。更に、ステップS8でアクセルペダルが更に踏み込まれないと判断されると、ステップS10に移行しこのステップS10以降の処理が行われる。更に、ステップS10でアクセルペダルが解放されないと判断されると、ステップS8に移行しこのステップS8以降の処理が行われる。
【0044】
このように、この例のクラッチ制御装置1によれば、車両の停止待機モード(発進モードで、ギア段が1速段、2速段、および後進段(R)でアクセルペダルが踏み込まれていなく車両が停止している状態)からアクセルペダルが設定踏み込み速度以下で踏み込まれたとき、クラッチ制御部13によりクラッチアクチュエータ11が作動制御されるとともに、エンジン回転数指示部15により指示されたエンジン回転数とエンジントルク指示部16により指示されたエンジントルクとに基づいてエンジンECU4によりエンジン3がエンジン回転数指示部15から指示されたエンジン回転数およびエンジントルク指示部16から指示されたエンジントルクとなるように制御される。そして、アクセルペダルが、半クラッチによる動力接続が可能な状態であるが車両は停止している状態であるペダル踏み込み量領域内に踏み込まれると、ペダル踏み込み量領域通知手段12によりこのアクセルペダル踏み込み量領域が運転者に通知される。したがって、運転者は車両が半クラッチモード(つまり、微速走行モード)に設定されたことを認識することが可能となる。このようにアクセルペダル踏み込み量とアクセルペダル踏み込み速度との2つの条件に基づいて車両の微速走行を判断制御することで、運転者の微速走行を行おうとする意思を察知して車両の半クラッチモード(つまり、微速走行モード)を簡便にかつ自動的に作り出すことができるようになる。特に、アクセルペダルの踏み込みがアクセルペダル踏み込み量領域内になったことを運転者に通知することで、運転者は車両を更に一層安定して微速走行させることができる。
【0045】
また、運転者によってアクセルペダルがアクセルペダル踏み込み量領域内に踏み込まれると車両が微速走行モードに自動的に設定された後、アクセルペダルをアクセルペダル踏み込み量領域内で更に少量だけ前述のアクセルペダル踏み込み速度で踏み込むことで、車両がゆっくり動き出すクリープ状態に自動的にかつ簡単に設定することができる。
【0046】
更に、微速走行モードを終了するためにアクセルペダルを単に解放することで、クラッチが切断されて、半クラッチモードが自動的に解消される。これにより、車両を半クラッチモードから通常発進モード(自動発進モード)に自動的に切替設定することが可能となる。したがって、車両を微速走行モードから通常発進モードに簡単に切り替えることができる。こうして、運転者はアクセルペダルの踏み込み操作だけで、通常発進モード(自動発進モード)および微速走行モードを自由に選択することが可能となる。
【0047】
更に、前述のようにアクセルペダルを操作するだけで車両を停止待機モードから微速走行モードに自動的に設定することができ、また車両を微速走行モードから通常発進モード(自動発進モード;または、停止待機モード)へ自動的に設定することができることから、車両を微速走行モードに設定するとともに微速走行モードを設定解除するための専用の操作部材(例えば、前述の特許文献1に記載の押しボタン・スイッチ等)が不要となる。これにより、部品点数を削減できるとともに構造を簡単にすることができ、しかも、運転者による微速走行の車両運転操作も容易に行うことが可能となる。
【0048】
特に、荷下ろし場31におけるプラットフォーム32に対してトラック33からの荷下ろしが可能となるように所定停止位置に停止させる場合には、トラック33をこの所定停止位置に短時間で簡単に停止させることができ、作業効率を向上させることが可能となる。その場合、プラットフォーム32に隣接するとともにトラック33が微速走行する路面
35が若干傾斜していて、アクセルペダルを解放するとトラック33がプラットフォーム32から遠ざかるように動くような場合にもトラック33をプラットフォーム32に対して所定停止位置に高精度に停止させることができる。
【0049】
なお、本発明は前述の例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るクラッチ制御装置は、クラッチ装置におけるクラッチの断接を自動的に制御するクラッチ制御装置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…クラッチ制御装置、2…変速機ECU、3…エンジン、4…エンジンECU、5…チェンジレバーシフト位置検出センサ、6…車速センサ、7…クラッチストロークセンサ、8…アクセルペダル踏込量センサ、9…エンジン回転数検出センサ、10…エンジントルク検出センサ、11…クラッチアクチュエータ、12…ペダル踏み込み量領域通知手段、13…クラッチ制御部、14…ペダル踏み込み量領域通知部、15…エンジン回転数指示部、16…エンジントルク指示部
図1
図2
図3