(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る熱感知器10を、
図1及び
図2に基づいて説明する。
[熱感知器10の構成]
熱感知器10は、図示しないベースと本体カバー(以下、カバー1とする。)とで構成され、天井面に固定したベースに、カバー1を取り付けている。
【0013】
3は仕切壁で、カバー1に、中心部から外周部にかけて放射状に立設されている。
図1に示すように、仕切壁3は、隣り合う仕切壁3と直角に接しており、4枚の仕切壁3を有している。すなわち、隣り合う仕切壁3同士はなす角が90度となっており、対向する仕切壁3は同一直線上に位置し、カバー1を4つの区画に分けている。また、仕切壁3の高さは、後述する熱検出素子5の高さより高くなっている。
【0014】
5は熱検出素子で、サーミスタからなり、周囲の温度を電気抵抗の変化によって測定して、後述する制御回路12に出力する。熱検出素子5は、カバー1の中心から離れた位置であり、かつ仕切壁3に仕切られた区画に1つずつ設けられている。そして、カバー1に設けられる複数の熱検出素子5は、カバー1の中心部を中心とする同一円周上に設けられている。すなわち、熱検出素子5は、カバー1の中心から同一の距離だけ離れている。そして、熱検出素子5は、熱検出素子5a、5b、5c及び5dの4つからなり、熱検出素子5aは5bと、5cは5dと対向して、点対称の位置に設けられている。
【0015】
熱感知器10の制御回路12は、熱検出素子5a、5b、5c、5dがそれぞれ接続しており、火災受信機20の制御回路21とも接続している。そして、制御回路12は、各熱検出素子5から周囲温度に対応する出力値を受信する。その後、制御回路12は、熱検出素子5の出力値に基づいて、周囲温度を判別し、コード化された信号等を火災受信機20の制御回路21へ出力している。
【0016】
図2及び
図3を参照して、本発明の熱感知器1が接続される火災受信機20の構成を説明する。
[火災受信機20の構成]
21は、火災受信機20の制御回路で、熱感知器の制御回路12と接続されている。制御回路21は、制御回路12から出力される各熱検出素子5の周囲温度の情報を受信し、火災の判定と、火源30の方向を特定する演算を行う。そして、制御回路21は、演算処理して求めた火源30の位置情報を表示装置23に出力する。
【0017】
23は表示装置で、液晶画面等のモニタからなり、制御回路21から出力された火源30の位置情報を受信すると、火源30の位置を表示するものである。
【0018】
図1乃至
図3を参照して、制御回路21による火源30の方向を特定する演算の例を説明する。
[火源30の方向を特定する演算方法1]
熱検出素子5a〜5dは、カバー1の仕切壁3に仕切られた区画にそれぞれ位置しており、熱検出素子5a〜5dの高さより仕切壁3の高さの方が高くなっている。そのため、火源30から発生する熱気流が天井を伝って、熱感知器10に当たったときに、熱気流の方向(火源30の方向)にある仕切壁3に囲まれた区画の熱検出素子5の周囲が最も温度が高くなる。より詳細には、仕切壁3で囲まれた区画の開口部(熱感知器10の外縁の一部)の向きが、熱気流の方向である場合、その区画の熱検出素子5の周囲の温度が最も高くなる。以下、仕切壁3で囲まれた区画の開口部の方向を、その区画に設けられた熱検出素子5の方向とする。
【0019】
一方、熱気流の方向以外を向いている区画は、仕切壁3で熱気流が各区画にある熱検出素子5に当たることを防いでいるので、それらの区画の熱検出素子5の周囲の温度は上昇しづらくなる。
【0020】
つまり、火源30から近い位置にある熱検出素子5ほど周囲は高い温度となり、大きな出力値を出力する。一方、火源30から遠い位置にある熱検出素子5ほど、周囲は低い温度となり、小さな出力値を出力する。
【0021】
制御回路21は、熱検出素子5a〜5dの周囲温度の情報信号(出力値)を受信すると、対向する熱検出素子5同士の温度差を演算して求める。
図1のように、熱検出素子5aと5b、並びに5cと5dが対向して設けられている場合、熱検出素子5aと5bとの温度差、そして熱検出素子5cと5dとの温度差を求める。
【0022】
そして、制御回路21は、その温度差の履歴を、温度差の数値と、高い温度を検出した熱検出素子5の方向の両方の情報を併せ持つベクトル値に変換し、熱検出素子5aと5bの方向を結んだ直線をX軸、熱検出素子5cと5dの方向を結んだ直線をY軸とする直交座標系において合成演算する。高い温度を検出した熱検出素子5の方向の情報とは、具体的には、熱検出素子5aの値が5bの値より大きければX軸上の負の値とし、熱検出素子5bの値が5aの値より大きければX軸上の正の値とし、熱検出素子5cの値が5dの値より大きければY軸上の負の値とし、熱検出素子5dの値が5cの値より大きければY軸上の正の値とする、ということである。
【0023】
図1及び
図3に基づいて、火災が起きたときの制御回路21による火源30の方向の特定方法を具体的な値を用いて、説明する。
【0024】
図3(a)では、熱検出素子5bと5dの中間あたりの方向に火源30が発生した場合である。この場合、各熱検出素子5a〜5dから出力値が制御回路21に出力される。ここでは、熱検出素子5の出力値を簡略化して説明することとし、熱検出素子5aの出力値を1、熱検出素子5bの出力値を9、熱検出素子5cの出力値を2、熱検出素子5dの出力値を6とする。
【0025】
まず、制御回路21は、対となる熱検出素子5a及び5b、並びに熱検出素子5cと5dの出力値の差分を求めて、向き情報を併せ持つベクトル値に変換する。
図3(a)の例では、出力値の差分を求めると、熱検出素子5bの値が5aの値より大きいのでX軸方向に+8、熱検出素子5dの値が5cの値より大きいのでY軸方向が+4となる。X軸、Y軸からなる直交座標系においては、熱検出素子5bと5aの差が(X,Y)=(8,0)となり、矢印Aで表され、熱検出素子5dと5cの差が(X,Y)=(0,4)となり、矢印Bで表される。このベクトル値(矢印A及びB)を合成すると、(X,Y)=(8,4)となり、矢印Cで表される。矢印Cは、熱検出素子5bの方向(矢印Bの方向)とのなす角が約26.6度となり、この矢印Cの方向が火源の方向を示している。
【0026】
つまり、上記の例の場合、火源30は熱検出素子5bと5dの中間の方向にあり、より詳細には、カバー1の中心と熱検出素子5bとを結んだ直線と、カバー1の中心と火源30とを結んだ直線とのなす角が約26.6度になる位置に、火源30が位置する。すなわち、制御回路21が演算した矢印CとX軸又はY軸とのなす角により、火源の方向がわかる。
【0027】
上記では対になる熱検出素子5同士の差を求めてベクトル値に変換し、その値を合成演算することで火源30の方向を特定する方法を示したが、下記のように、各熱検出素子5の出力値をベクトル値に変換し、全ての値を合成演算することで、火源30の方向を特定することもできる。その火源30の方向の特定方法を
図1及び
図6を用いて、以下に説明する。
[火源30の方向を特定する演算方法2]
制御回路21は、熱検出素子5a〜5dの周囲温度の情報(出力値)を受信すると、その出力値を各熱検出素子5a〜5dの方向によるベクトル値に変換して、それらのベクトル値を合成演算する。より詳細には、
図1のように、熱検出素子5aと5b、並びに5cと5dが対向して設けられている場合、熱検出素子5aと5bの方向を結んだ直線をX軸、熱検出素子5cと5dの方向を結んだ直線をY軸とする直交座標系において、各熱検出素子5の出力値はベクトル値として演算することができる。具体的には、熱検出素子5aの値をX軸上の負の値とし、熱検出素子5bの値をX軸上の正の値とし、熱検出素子5cの値をY軸上の負の値とし、熱検出素子5dの値をY軸上の正の値とする。
【0028】
火災が起きたときの制御回路21による火源30の方向の特定方法を具体的な値を用いて、説明する。
【0029】
図4では、熱検出素子5bと5dの中間あたりの方向に火源30が発生した場合である。この場合、各熱検出素子5a〜5dから出力値が制御回路21に出力される。ここでは、熱検出素子5の出力値を簡略化して説明することとし、熱検出素子5aの出力値を3、熱検出素子5bの出力値を7、熱検出素子5cの出力値を2、熱検出素子5dの出力値を9とする。
【0030】
まず、制御回路21は、各熱検出素子5の出力値を直交座標系におけるベクトル値として演算するために、熱検出素子5aの出力値を(X,Y)=(−3,0)、熱検出素子5bの出力値を(X,Y)=(7,0)、熱検出素子5cの出力値を(X,Y)=(0,−2)、熱検出素子5dの出力値を(X,Y)=(0,9)と変換する。これらを直交座標軸上に表したものが
図4であり、熱検出素子5aのベクトル値が矢印D、熱検出素子5bのベクトル値が矢印E、熱検出素子5cのベクトル値が矢印F、熱検出素子5dのベクトル値が矢印Gとなる。
【0031】
そして、制御回路21は、各熱検出素子5の出力値を変換したベクトル値を合成する。
図3において、矢印D〜Gの4つのベクトル値を合成したものが矢印Hとなり、矢印Hが火源30の方向を示している。上記の例では、矢印Hは(X,Y)=(4,6)となり、X軸とのなす角は約60.2度である。つまり、カバー1の中心と熱検出素子5bとを結んだ直線と、カバー1の中心と火源30とを結んだ直線とのなす角が60.2度になる位置に、火源30が位置する。
【0032】
図1及び
図2を参照して、本発明の熱感知器10の動作例を説明する。
[動作説明]
先ず、火災が発生すると、火源30の周囲の空気が熱せられて、熱気流の対流が起こる。そして、熱気流により熱感知器10周囲の空気が熱せられると、熱検出素子5の電気抵抗が変化し、その変化の出力値は、制御回路12によって火災受信機20の制御回路21に出力される。
【0033】
次に、火災受信機20の制御回路21は、熱検出素子5a〜5dのうち、1つでも火災確定とする閾値を超える温度を検出した場合には、火災と判定する。火災受信機20は、火災と判別したときに、警報部に火災信号を出力し、ブザー鳴動や表示灯の点灯、火災の通報等の処理を行う。
【0034】
それと同時に、上述したいずれかの方法で、制御回路21は、熱検出素子5a〜5dの出力値による火源30の位置の特定を行う。そして、火源30の位置情報を表示装置23に出力する。
【0035】
最後に、制御回路21は、火源30の位置情報を表示装置23に出力し、表示装置23は火源30の位置を表示する。表示の方法としては、例えば、熱感知器10が備えられる火災報知設備全体の地図が表示されており、その地図上で火災を感知した熱感知器10と火源30の位置を表示すると良い。
【0036】
本発明にかかる熱感知器10は以上のように、仕切壁3に仕切られた区画に熱検出素子5がそれぞれ設けられていることから、火源30に近い熱検出素子5ほど高い温度を検出できるため、火源の方向を特定することができる。
【0037】
また、熱検出素子5は4つあり、カバー1の中心部を中心とする同一円周上に全て設けられており、熱検出素子5aは5bと、5cは5dと対向して、点対称の位置に設けられているため、それぞれの熱検出素子5の出力値をベクトル値に変換することで、精度良く火源30の位置を特定することができる。
【0038】
なお、各熱検出素子5は、火源30の方向を特定できるようにカバー1に配置されていれば良く、
図1や
図5に示した配置に限定されず、それ以外の配置であっても良い。例えば、熱検出素子5は4つ設けられていると説明したが、それ以外の個数でも良く、少なくとも2つ以上あれば良い。熱検出素子5と同じ数だけカバー1上に区画ができるように仕切壁があれば良い。熱検出素子5が2つの場合は、おおよそどちらの位置に火源30があるかがわかる。
【0039】
また、本発明の実施の形態では、火災受信機20の制御回路21が、各熱検出素子5の出力値を演算して火源30の方向を特定したが、熱感知器10の制御回路12が、火災受信機20の制御回路21と同様に、各熱検出素子5の出力値を演算することで火源30の方向を特定するようにしても良い。さらに、熱感知器10の制御回路12が、火源30の方向の特定と共に、火災の判定を行っても良い。
【0040】
また、本発明の実施の形態では、熱検出素子5を
図1のようなサーミスタで説明したが、
図6のように、フレキシブル基板9上に集熱パターン6を設け、チップサーミスタ部8を備える平板状の熱検出素子7でも良い。このような熱検出素子7の場合、
図5に示すように、カバー1の側面に4枚貼付すれば良く、隣り合う熱検出素子7同士を90度おきに貼付すれば良い。具体的には、熱検出素子7aは7bと、熱検出素子7cは7dと対向しており、それぞれはカバー1の中心を対称の中心とする点対称の位置に設けられる。