特許第6139895号(P6139895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139895医用画像処理装置,X線CT装置及び医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139895
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】医用画像処理装置,X線CT装置及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A61B6/03 360B
   A61B6/03ZDM
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-18192(P2013-18192)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-176550(P2013-176550A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-20441(P2012-20441)
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 恭子
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−161220(JP,A)
【文献】 特開2002−360563(JP,A)
【文献】 特開2009−183468(JP,A)
【文献】 David Sarrut et al.,"Simulation of four-dimensional CT images from deformable registration between inhale and exhale breath-hold CT scans",Medical Physics,2006年 2月 9日,Vol. 33, No. 3,p.605-617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内部の経時的に変形する対象部位を所定のタイミングごとに撮影して取得された
複数の画像データを記憶する画像データ記憶部と、
前記複数の画像データのそれぞれから前記対象部位を抽出する抽出部と、
前記画像データごとに、抽出された前記対象部位の変形の度合いを算出し、この度合い
を基に、当該画像データから抽出された前記対象部位のCT値を補正する補正部と、
を備え
前記補正部は、前記対象部位の変形の度合いに対する前記対象部位のCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶し、
前記算出された変形の度合いと前記管理情報とに基づき前記CT値を補正すること
を特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記算出された変形の度合いは、
前記対象部位の体積から算出した密度情報の変化であること
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記算出された変形の度合いは、
前記対象部位の体積、前記対象部位中の所定の領域の面積、または
前記対象部位中の所定の領域の幅の変化であること
を特徴とする請求項に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記対象部位を前記密度情報の変化に応じて複数の領域に分割し、前記複数の領域の位置関係に応じて、前記複数の領域毎に前記密度情報の変化に重み付けを行うこと
を特徴とする請求項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記複数の画像データに対して、前記CT値が補正された前記対象部位間で、前記CT値が同じ領域を特定して位置合わせを行うこと
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
被検体内部の経時的に変形する対象部位を所定のタイミングごとに撮影して取得された
複数の画像データを記憶する画像データ記憶部と、
前記複数の画像データのそれぞれから前記対象部位を抽出する抽出部と、
前記画像データごとに、抽出された前記対象部位の変形の度合いを算出し、この度合い
を基に、当該画像データから抽出された前記対象部位のCT値を補正する補正部と、
を備え、
前記補正部は、前記対象部位の変形の度合いに対する前記対象部位のCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶し、
前記算出された変形の度合いと前記管理情報とに基づき前記CT値を補正すること
を特徴とするX線CT装置。
【請求項7】
医用画像処理装置により、
被検体内部の経時的に変形する対象部位を所定のタイミングごとに撮影して取得された
複数の画像データを記憶する画像データ記憶部から、複数の画像データ取得し、
前記複数の画像データのそれぞれから前記対象部位を抽出し、
前記画像データごとに、抽出された前記対象部位の変形の度合いを算出し、
予め記憶した前記対象部位の変形の度合いに対する前記対象部位のCT値の変化を示す管理情報と、前記算出した変形の度合いとから、前記画像データから抽出された前記対象部位のCT値を補正する、
医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、X線CT装置及び医用画像処理方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置により収集された3次元画像データを表示する医用画像処理装置がある。ここでいう医用画像診断装置とは、X線コンピュータ断層撮影(Computer Tomography:CT)装置や磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、X線診断装置、超音波診断装置などである。医用画像処理装置は、医用画像診断装置により生成された画像データの画像処理を行う装置である。
【0003】
また、このような医用画像診断装置には、マルチスライスX線CT装置のように、単位時間に高精細(高解像度)且つ広範囲に画像の撮影を可能とするものが含まれる。このマルチスライスX線CT装置では、2次元検出器が用いられる。2次元検出器は、シングルスライスX線CT装置で用いられている検出器の列(1列)を、その列に直交する方向に複数列(例えば4列、8列など)並べて、全体でmチャンネル×n列(m,nは正の整数)の検出素子を有する。
【0004】
このようなマルチスライスX線CT装置は、検出器が大きくなるほど(構成する検出素子の数が増えるほど)、一度の撮影でより広い領域の投影データを取得することが可能である。即ち、このような検出器を備えたマルチスライスX線CT装置を用いて経時的に撮影を行うことで、所定部位のボリュームデータを、高いフレームレートで生成することができる。この撮影につき、以降では、「Dynamic Volumeスキャン」と呼ぶ場合がある。これにより、操作者は、単位時間内における所定部位の動きを、三次元画像により評価することが可能となる。
【0005】
また、医用画像処理装置は、このような医用画像診断装置により取得された画像データを基に医用画像を生成する。例えば、医用画像処理装置は、X線CT装置により再構成されたボリュームデータを基に医用画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−201157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、CT値を基に画像処理を行う場合がある。またCT値を解析に用いる場合がある。例えば、観察対象として肺を撮影して取得した画像データでは、肺気腫(患部)の部分のCT値が他の部分のCT値と異なる。そのため、医用画像処理装置により画像データ中のCT値を解析することにより、この肺気腫を示す領域を特定することができる。また、タイミングの異なる複数の画像データ間で位置合わせを行う際に、画像データ中のCT値を用いて解剖学的に一致する領域を特定することにより、位置合わせの精度を向上させる場合がある。なお、解剖学的に一致する領域とは、例えば、組成が一致することを示す。
【0008】
しかしながら、肺や心臓などの部位は、経時的に拡張、収縮、または変形をする。そのため、これらの部位を構成する組織は、異なるタイミング間で、その密度または密度分布(以降では、総じて単に「密度」と呼ぶ)が変化する場合がある。この密度の変化により、これらの変形する部位を観察対象とした場合、異なるタイミングで取得された複数の画像データ間で、解剖学的に同じ領域のCT値が異なるおそれがある。同じ領域のCT値が異なると、上述した解析処理や位置合わせを正しく行えない場合がある。
【0009】
この発明の実施形態は、観察対象の変形により、複数の画像データ間で、解剖学的に同じ領域のCT値にずれが生じる場合においても、このずれを補正可能な医用画像処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この実施形態の第1の態様は、画像データ記憶部と、抽出部と、補正部とを備えた医用画像処理装置である。画像データ記憶部は、被検体内部の経時的に変形する対象部位を所定のタイミングごとに撮影して取得された複数の画像データを記憶する。抽出部は、複数の画像データのそれぞれから対象部位を抽出する。補正部は、画像データごとに、抽出された対象部位の変形の度合いを算出し、この度合いを基に、当該画像データから抽出された対象部位のCT値を補正する。補正部は、対象部位の変形の度合いに対する対象部位のCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶し、算出された変形の度合いと管理情報とに基づきCT値を補正する。
また、この実施形態の第2の態様は、撮影部と、抽出部と、補正部とを備えたX線CT装置である。撮影部は、被検体内部の経時的に変形する対象部位を所定のタイミングごとに撮影して複数の画像データを取得する。抽出部は、複数の画像データのそれぞれから対象部位を抽出する。補正部は、画像データごとに、抽出された対象部位の変形の度合いを算出し、この度合いを基に、当該画像データから抽出された対象部位のCT値を補正する。補正部は、対象部位の変形の度合いに対する対象部位のCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶し、算出された変形の度合いと管理情報とに基づきCT値を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示したブロック図である。
図2A】観察対象の変形や収縮による密度変化について説明するための図である。
図2B】観察対象の変形や収縮による密度変化について説明するための図である。
図3】相対密度の変化に伴うCT値の変化を示した管理情報の一例である。
図4】本実施形態に係る医用画像処理装置の一連の動作を示したフローチャートである。
図5】心臓に適用した場合の一態様について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る医用画像処理装置は、X線CT装置のような医用画像診断装置により取得された画像データ(例えば、ボリュームデータ)を基に医用画像を生成する。以降では、本実施形態に係る医用画像処理装置の構成について、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態に係る医用画像表示装置は、画像データ記憶部10と、画像処理ユニット20と、表示制御部30と、U/I40とを含んで構成されている。また、U/I40は、表示部401と、操作部402とを含んで構成されたユーザーインタフェースである。
【0013】
(画像データ記憶部10)
画像データ記憶部10は、撮影部500により検査ごとに被検体を撮影して取得された複数タイミングの3次元画像データ(例えば、ボリュームデータ)を記憶する記憶部である。撮影部500は、例えば、X線CT装置のように3次元画像データを取得可能な医用画像診断装置である。なお、以降では、この3次元画像データを「画像データ」と呼ぶ。また、以降では、画像データは、X線CT装置により取得されたボリュームデータであるものとして説明する。
【0014】
(画像処理ユニット20)
画像処理ユニット20は、解析部21と、画像処理部22と、画像記憶部23とを含んで構成されている。
【0015】
(解析部21)
解析部21は、オブジェクト抽出部211と、補正部212とを含んで構成されている。解析部21は、まず、画像データ記憶部10から、異なるタイミングで取得された複数の画像データを取得されたタイミングごとに読み出す。解析部21は、読み出された画像データそれぞれをオブジェクト抽出部211に出力する。それにより解析部21は、オブジェクトの抽出を指示する。
【0016】
(オブジェクト抽出部211)
オブジェクト抽出部211は、各タイミングの画像データを受けたことに応じて、各医用画像データ中のボクセル値に基づき、当該画像データそれぞれから、肺や心臓等の部位のオブジェクトを抽出する。オブジェクト抽出部211は、各部位のオブジェクトを抽出すると、例えば、セグメンテーション処理等の生体情報に基づく処理を行う。それにより、オブジェクト抽出部211は、タイミング間において、実質的に同一の部位(例えば、肺)に相当するオブジェクトを、解析対象として特定する。なお、この特定は各タイミングにおける画像データごとに行われる。オブジェクト抽出部211は、各タイミングについて特定されたオブジェクトを示す情報それぞれを、その情報の抽出元である画像データに付帯して、この画像データを補正部212に出力する。
【0017】
(補正部212)
ここで、図2A及び図2Bを参照する。図2A及び図2Bは、観察対象の変形や収縮による密度変化について説明するための図である。図2A及び図2BにおけるM1aは、肺が膨らんだ状態の概形を模式的に示している。また、M1bは、M1aとは異なるタイミングを示している。すなわち、M1bは、肺がしぼんだ状態の概形を示している。なお、以降では、特にタイミングを指定しない場合には、M1a及びM1bを「M1」と記載する場合がある。また、図2Bにおける領域M11a及びM11bは、M1aとM1bとの間で、解剖学的に一致する(即ち、組成が一致する)所定の領域をそれぞれ示している。以降では、特にタイミングを指定しない場合には、領域M11a及びM11bを「領域M11」と記載する場合がある。
【0018】
M1a及びM1bに示すように、肺は、呼吸に同期して拡張収縮を繰り返すため、タイミングに応じてその密度が異なる。この密度の変化により、異なるタイミングで取得された画像データ間(例えば、領域M11a及びM11b)における解剖学的に同じ領域のCT値が、それぞれ異なる場合がある。そのため、例えば、このCT値の違いにより、本来、解剖学的に同じ領域である領域M11a及びM11bについて、異なる物質(即ち、異なる領域)として判断される場合がある。これにより、医用画像処理装置がCT値に基づき、例えば肺気腫や腫瘍のような患部を特定する場合に、これらを正しく検出できないおそれがある。また、各画像データで解剖学的に同じ領域について異なるCT値が検出されることにより、それぞれが異なる領域と判断される。それにより医用画像処理装置が画像データ間の精密な位置合わせを行えない場合もある。そこで、補正部212は、この密度変化によるCT値のずれを補正する。以下に、補正部212の動作について具体的に示す。
【0019】
補正部212は、オブジェクト抽出部211から、画像データをあらかじめ決められたタイミングごとに受ける。この画像データには、解析対象である部位のオブジェクトを示す情報が付帯されている。補正部212は、このオブジェクトを示す情報を各画像データから抽出する。
【0020】
補正部212は、抽出されたオブジェクトを示す情報を基に、そのオブジェクトの体積を算出する。このオブジェクトは、例えば、解析対象の部位である。抽出されたオブジェクトの質量が一定であるとの仮定の下(例えば標本値)、補正部212は、その質量を体積で除算する。それにより補正部212は、そのオブジェクトの相対値としての密度を算出する。この算出された密度について、以降では、「相対密度」と記載することがある。このようにして、各画像データに対して、その画像データ中に含まれた解析対象のオブジェクトの相対密度が算出される。
【0021】
また、補正部212は、相対密度の変化に伴うCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶している。図3は、この管理情報の一例を示している。図3では、縦軸を相対密度、横軸をCT値で示している。この管理情報は、例えば、相対密度とCT値との関係を実験等により測定し、この結果を基にあらかじめ作成される。また作成された当該管理情報は、補正部212に記憶される。
【0022】
補正部212は、画像データごとに算出されたオブジェクトの相対密度と、図3に示した管理情報とを比較し、部位の経時的な密度変化に伴うCT値のずれを特定する。具体的には、補正部212は、所定のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度を基準として、他のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度の差を算出する。補正部212は、この相対密度の差に基づくCT値のずれを、管理情報を基に特定する。なお、上記では、所定のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度を、CT値のずれを特定するための基準とする。ただし本実施形態はこれに限らず、例えば、あらかじめ決められた標本値としての相対密度を、CT値のずれを特定するための基準としてもよい。
【0023】
補正部212は、特定されたCT値のずれを示す情報に基づき、その画像データ中における解析対象のオブジェクトに相当する部分のCT値を補正する。これにより、複数の画像データ間で、解剖学的に同じ領域についてCT値が一致するように補正される。経時的な拡張、収縮、または変形により密度が変化して、画像データ間でCT値にずれが生じても、医用画像処理装置は、このような処理により解剖学的に同じ領域について、同じCT値の領域(即ち、同じ組成の領域)として認識することが可能となる。
【0024】
このように、補正部212は、観察対象の変形や収縮に伴い相対的に変化するCT値を、いずれかの場合(所定の相対密度となる場合)を基準として補正することで、複数の画像データ間で解剖学的に同じ領域のCT値を相対的に一致させる。そのため、医用画像処理装置は、CT値のずれを特定するために、必ずしも絶対値としての密度を求める必要は無い。なお、解析対象の部位の質量を算出可能であれば、この質量とオブジェクトの体積とに基づき、絶対値としての密度を相対密度に替えて算出してもよい。なお、このような絶対値としての密度や相対密度は、「密度情報」の一例に該当する。
【0025】
また、上記では、観察対象の変形や収縮による密度が、観察対象中の位置に限らず等しく変化するものとして説明している。ただし、本実施形態の医用画像処理装置の処理は、このような場合に適用するものに限られない。例えば、節等のように形状的に特徴があり、他と比べて変形や収縮の度合いが小さい(CT値のずれが小さい)部分が存在する場合がある。この度合いの誤差が許容できない場合、医用画像処理装置は、例えば、上記のような変形や伸縮の度合いが小さい部分を形状解析等により特定する。さらに医用画像処理装置は、その特定された部分と他の部分の位置関係(例えば、距離)に応じて、他の部分における相対密度の変化量を重み付けする。そのうえで、医用画像処理装置は、上述した管理情報と、この重みとに基づき、CT値のずれを位置ごとに特定する。また、別の方法として、医用画像処理装置は、観察対象を複数の領域に分割し、その領域ごとに管理情報を作成する。この方法において、さらに医用画像処理装置は、この領域ごとの管理情報に基づき各領域のCT値を補正する。
【0026】
補正部212は、CT値が補正された画像データを画像処理部22に出力する。これにより、例えば、タイミングの異なる複数の画像データ間で、解剖学的に同じ位置を特定して位置合わせを行う際に、画像処理部22は、解剖学的に同じ領域をCT値が同じ領域として特定することができる。医用画像処理装置は、この方法による位置合わせと他の方法による位置合わせ(例えば、形状特徴に基づく位置合わせ)とを併用することで、位置合わせの精度を向上させることが可能となる。また、CT値による閾値処理を施すことにより所望の対象を選択的に表示させた医用画像を生成するような場合においても、CT値のずれが補正されているため、画像処理部22は、各画像データから同様の処理結果を得ることが可能となる。
【0027】
(患部特定部213)
また、患部特定部213が設けられていてもよい。この患部特定部213は、画像データ中のCT値に基づき、肺気腫や腫瘍等のような患部の領域を特定する。この場合には、補正部212は、CT値が補正された画像データを患部特定部213に出力する。患部特定部213は、各画像データ中のCT値を解析することにより、患部領域を特定する。すなわち患部特定部213は、患部に相当するCT値を示す領域を患部領域として特定する。この際に、組成が同じ領域のCT値が一致するように、各画像データの当該領域のCT値が補正されている。そのため、患部特定部213は、異なる画像データ間で患部の位置が異なる場合においても、共通のCT値に基づき患部を容易に特定することが可能となる。患部特定部213は、特定された患部領域を示す情報を画像データに付帯する。さらに、患部特定部213は、これを画像処理部22に出力する。これにより、画像処理部22は、この画像データを基に医用画像を生成する際に、その医用画像中における患部領域を特定し、この患部領域を識別可能に表示させるための識別情報を生成することが可能となる。
【0028】
(画像処理部22)
画像処理部22は、補正部212または患部特定部213から、各タイミングにおける、CT値が補正された画像データを受ける。このとき、画像処理部22は、例えば、各画像データ中のCT値に基づき、複数の画像データ間で解剖学的に同じ領域を特定し、これらを関連付けてもよい。換言すると、画像処理部22は、複数の画像データ間の位置合わせの精度を向上させるために、画像データ中の、補正後のCT値を用いてもよい。
【0029】
また、画像処理部22は、これら画像データに対してCT値による閾値処理を施してもよい。このような閾値処理を施すことで、その画像データから、所望の対象を選択的に表示させた医用画像を生成することが可能となる。
【0030】
また、画像処理部22は、画像データ中に患部領域を示す情報が付帯されている場合には、この情報を基に、生成された医用画像における患部領域の位置及び大きさを特定する。画像処理部22は、特定された患部領域の位置及び大きさを示す情報を、生成された医用画像に付帯する。
【0031】
なお、画像処理部22が医用画像を生成するための条件をあらかじめ画像処理部22に記憶させておいてもよい。あるいは、操作者により指定された条件を示す情報を操作部402から受けてもよい。これは、上述した閾値処理の条件についても同様である。
【0032】
画像処理部22は、生成された医用画像を表示制御部30に出力する。表示制御部30は、この医用画像を表示部401に表示させる。なお、画像データ中に患部領域の位置及び大きさを示す情報が付帯されている場合には、表示制御部30は、この情報を基に医用画像上の患部領域に相当する部分を特定し、その部分を他とは異なる態様で表示させてもよい。具体的な一例として、表示制御部30は、特定された部分の色を変える。または表示制御部30は、特定された部分をハイライトする等して強調表示させることで、医用画像上に患部領域を識別可能に表示させてもよい。
【0033】
また、医用画像を記憶するための画像記憶部23を設け、かつ画像処理部22が、生成した医用画像を画像記憶部23に記憶させてもよい。このような構成とすることで、例えば、画像処理部22は、各タイミングにおいて医用画像を生成し、それらを画像記憶部23に記憶させる。表示制御部30は、画像記憶部23に記憶された医用画像を読み出す。表示制御部30は、読出した医用画像を時系列に沿った順または配列となるように表示部401に表示させる。これにより、所定の部位(例えば、肺M1)中の所望の生態部位の経時的な変化を観察可能に動画として表示部401に表示させることが可能となる。
【0034】
次に、図4を参照しながら、本実施形態に係る医用画像処理装置の一連の動作について説明する。図4は、本実施形態に係る医用画像処理装置の一連の動作を示したフローチャートである。
【0035】
(ステップS11)
解析部21は、まず、画像データ記憶部10から異なるタイミングで取得された複数の画像データを取得されたタイミングごとに読み出す。解析部21は、読み出された画像データそれぞれをオブジェクト抽出部211に出力し、オブジェクトの抽出を指示する。
【0036】
(ステップS12)
オブジェクト抽出部211は、各タイミングの画像データを受けて、各医用画像データ中のボクセル値に基づき、当該画像データそれぞれから、肺や心臓等の部位のオブジェクトを抽出する。オブジェクト抽出部211は、各部位のオブジェクトを抽出すると、例えば、セグメンテーション処理等の生体情報に基づく処理を行う。それにより、オブジェクト抽出部211は、タイミング間においてあらかじめ決められた実施的に同一の部位(例えば、肺)に相当するオブジェクトを、解析対象として各タイミングについて特定する。オブジェクト抽出部211は、各タイミングについて特定されたオブジェクトを示す情報それぞれを、その情報の抽出元である画像データに付帯する。オブジェクト抽出部211は、この画像データを補正部212に出力する。
【0037】
(ステップS13)
補正部212は、オブジェクト抽出部211から、各タイミングの画像データを受ける。補正部212は、オブジェクトを示す情報を各画像データから抽出する。
【0038】
補正部212は、抽出されたオブジェクトを示す情報を基に、例えば解析対象の部位を示すオブジェクトの体積を算出する。抽出されたオブジェクトの質量が一定であるとの仮定の下(例えば標本値)、補正部212は、その質量を体積で除算する。それにより補正部212は、そのオブジェクトの相対密度を算出する。このようにして、各画像データに対して、その画像データ中に含まれた解析対象のオブジェクトの相対密度が算出される。
【0039】
(ステップS14)
また、補正部212は、相対密度の変化に伴うCT値の変化を示す管理情報をあらかじめ記憶している。図3は、この管理情報の一例を示している。図3では、縦軸を相対密度、横軸をCT値で示している。この管理情報は、例えば、相対密度とCT値との関係を実験等により測定し、この結果を基にあらかじめ作成される。また作成された当該管理情報は、補正部212に記憶される。
【0040】
補正部212は、画像データごとに算出されたオブジェクトの相対密度と、図3に示した管理情報とを比較し、部位の経時的な密度変化に伴うCT値のずれを特定する。具体的には、補正部212は、所定のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度を基準として、他のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度の差を算出する。補正部212は、この相対密度の差に基づくCT値のずれを、管理情報を基に特定する。なお、上記では、所定のタイミングに対応するオブジェクトの相対密度を、CT値のずれを特定するための基準とする。ただし本実施形態はこれに限らず、例えば、あらかじめ決められた標本値としての相対密度を、CT値のずれを特定するための基準としてもよい。
【0041】
補正部212は、特定されたCT値のずれを示す情報に基づき、その画像データ中における解析対象のオブジェクトに相当する部分のCT値を補正する。これにより、複数の画像データ間で、解剖学的に同じ領域についてCT値が一致するように補正される。このように動作させることで、経時的な拡張、収縮、または変形により密度が変化して、画像データ間でCT値にずれが生じても、医用画像処理装置は、このような処理により解剖学的に同じ領域については、同じCT値の領域(即ち、同じ組成の領域)として認識することが可能となる。
【0042】
(ステップS15)
補正部212は、CT値が補正された画像データを画像処理部22に出力する。これにより、例えば、タイミングの異なる複数の画像データ間で、解剖学的に同じ位置を特定して位置合わせを行う際に、画像処理部22は、解剖学的に同じ領域をCT値が同じ領域として特定することができる。医用画像処理装置は、この方法による位置合わせと他の方法による位置合わせ(例えば、形状特徴に基づく位置合わせ)とを併用することで、位置合わせの精度を向上させることが可能となる。また、CT値による閾値処理を施すことにより所望の対象を選択的に表示させた医用画像を生成するような場合においても、CT値のずれが補正されているため、画像処理部22は、各画像データから同様の処理結果を得ることが可能となる。
【0043】
画像処理部22は、補正部212または患部特定部213から、CT値が補正された各タイミングの画像データを受ける。このとき、画像処理部22は、例えば、各画像データ中のCT値に基づき、複数の画像データ間で解剖学的に同じ領域を特定し、これらを関連付けてもよい。換言すると、画像処理部22は、複数の画像データ間の位置合わせの精度を向上させるために、画像データ中、補正後のCT値を用いてもよい。
【0044】
また、画像処理部22は、これら画像データに対してCT値による閾値処理を施してもよい。このような閾値処理を施すことで、その画像データから、所望の対象を選択的に表示させた医用画像を生成することが可能となる。
【0045】
なお、画像処理部22が医用画像を生成するための条件をあらかじめ画像処理部22に記憶させておいてもよい。あるいは、操作者により指定された条件を示す情報を操作部402から受けてもよい。これは、上述した閾値処理の条件についても同様である。
【0046】
画像処理部22は、生成された医用画像を表示制御部30に出力する。表示制御部30は、この医用画像を表示部401に表示させる。
【0047】
なお、上記では、相対密度を基にCT値を補正する例について説明したが、これには限定されない。例えば、解析対象となる部位の経時的な変形の度合いを算出し、これに基づきCT値を補正できる。補正部212は、オブジェクトの体積の変化を基にCT値を補正してもよい。この場合には、体積の変化に基づくCT値の変化を示す情報が管理情報として補正部212に記憶される。補正部212は、算出されたオブジェクトの体積と、この管理情報とに基づいてCT値のずれを特定し、これを補正すればよい。
【0048】
また、心筋のように、拍動に同期して所定の領域の幅(例えば、心筋の厚さ)が、所定の範囲で周期的に変化する場合には、この幅の変化を基にCT値を補正してもよい。例えば、図5は、心臓に適用した場合の一態様を示している。図5におけるM2は、心臓を示しており、M21は、左心室付近の心筋を示している。この場合には、心筋M21の厚さLの変化に基づくCT値の変化を示す情報を、管理情報として補正部212に記憶させておく。補正部212は、心臓M2のオブジェクトを基に、心筋M21の厚さLを算出する。補正部212は、算出された厚さLと、この管理情報とに基づいてCT値のずれを特定し、これを補正する。また、所定の領域の幅に替えて、所定の領域の面積を基に、CT値のずれを特定してもよい。このように、運動によって変化する部位の寸法を示すサイズ情報であれば、上述した幅、面積、及び体積のいずれを基準としてもよい。また、このサイズ情報は、観察対象の部位の全体を対象として求めてもよいし、特定の一部を対象として求めてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る医用画像処理装置は、経時的な拡張、収縮、または変形により密度が変化して、画像データ間でCT値にずれが生じても、医用画像処理装置は、このような処理により解剖学的に同じ領域について、同じCT値の領域(即ち、同じ組成の領域)として認識することが可能となる。これにより、例えば、タイミングの異なる複数の画像データ間で、解剖学的に同じ部位を特定して位置合わせを行う際に、画像処理部22は、その部位をCT値が同じ領域として特定することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載されたその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 画像データ記憶部
20 画像処理ユニット
21 解析部
211 オブジェクト抽出部
212 補正部
213 患部特定部
22 画像処理部
23 画像記憶部
30 表示制御部
40 U/I
401 表示部
402 操作部
500 X線撮影部撮影部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5