(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、一部の地域の気温がその周辺の地域に比べて異常な高温を示すヒートアイランド現象が、都市部で頻発している。
ヒートアイランド現象の原因として、開発による緑地や水辺、裸地の減少、舗装による降雨の地面への浸透量の減少、土中の保水力の低下、蒸発、蒸散量の減少が挙げられている。またヒートアイランド現象が進むほど、冷房需要が増加し、その排熱の増加がさらにヒートアイランド現象を促進させているといわれている。
【0003】
そのためヒートアイランド現象対策として緑化面積を確保するために、芝生や地被植物を植栽する等の方法によりコンクリート建築物の屋上を緑化する対策が、進められている。
【0004】
しかし天気の晴雨に関わらず植物をコンクリート面で生育するためには、植物が生育できる環境、すなわち水分と養分を確保できる環境を屋上に設ける必要がある。
【0005】
一方建築基準上の問題として、屋上に設ける構造物の重量は、法律で制限されている。
そのため水分と養分を確保し、なおかつ基準より重量を小さくするために特許文献1や特許文献2のような緑化用敷設板が提案されていた。
【0006】
図1は、特許文献1と特許文献2に開示された緑化用敷設板1、10の説明図である。(A)は特許文献1の緑化用敷設板1の外観図であり、(B)は敷設後の(A)のA−A断面図である。また(C)は特許文献2の緑化用敷設板10の斜視図であり、(D)は特許文献2の緑化用敷設板10を敷設する際の説明断面図である。
【0007】
図1に示す特許文献1の緑化用敷設板1は、発泡樹脂成形体2の上面に粒状の多孔質固形物3が敷き詰められて付着し、成形苗等の根部を植え込むための植孔4が、発泡樹脂成形体2の上面から下面に貫通して設けられている。特許文献1の植孔4は、根部を植え込むための大径の円筒状の大径植孔部4aと、大径植孔部4a内の土の流出を抑制するための貫通孔4bとが連通して設けられている。貫通孔4bは小径の円筒状の孔であり、大径植孔部4aの下に設けられている。つまり、大径植孔部4aは緑化用敷設板1の上面に開口し、貫通孔4bは大径植孔部4aと緑化用敷設板1の下面とに貫通している。
なお発泡樹脂成形体2とは、透水性発泡スチロールペレットを接着物質で加圧形成した軽量な方形平板状体や透水性発泡スチロールである。
【0008】
図1(B)に示すように屋上のコンクリート床面Aに特許文献1の緑化用敷設板1を敷設する際には、まずコンクリート床面Aに防根シートBを敷き、その上に保水性と透水性とを有する粒状の軽石などの多孔質固形物材を投入し、敷設して、保水兼排水層5を形成する。次に保水兼排水層5上に緑化用敷設板1を敷き並べ、これらの相互を金具等で連結する。そして土と共に植物の根部を植孔4に挿入して固定する。
これにより貫通孔4bを通過した植物の根は保水兼排水層5内に伸びる。
【0009】
特許文献2の緑化用敷設板10も、上部表面を覆う軽石等の多孔質粒状材13と、その下層部に粒状の発泡スチロール等による疎水性の弾性粒状材を接着硬化剤で混合攪拌し、加圧固化させた発泡樹脂成形体12とからなり、植物の根部を植え込むための複数の角注型の植孔14が貫通して形成されている。
【0010】
そして
図1(D)に示すように特許文献2の緑化用敷設板10を敷設する際も、まずコンクリート床面A上に防根シートBを敷き、防根シートBの所望領域を縁囲い材17で包囲した上、細粒の軽石又は多孔質体若しくは海綿構造のシート状部片による保水層18を敷設し、その上に培養土又はピートモス若しくはそれらの混合物からなる活着層15を敷設する。その後活着層15上に緑化用敷設板10を敷設する。これにより特許文献2の緑化用敷設板10は、植孔14に移植された根部の底面が活着層15に接触する。
【0011】
このように特許文献1の緑化用敷設板1や特許文献2の緑化用敷設板10は、軽量な発泡スチロールを使用することにより、重量の軽量化を実現していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1や特許文献2の緑化用敷設板1、10は、表層を除く素材のほとんどを発泡樹脂成形体2、12が占める。しかし発泡樹脂成形体2、12は、発泡スチロール等の疎水性の粒状材であるため、保水力がない。そのため根腐れさせずに水分と養分を確保するためには、緑化用敷設板1、10の下に軽石などの多孔質固形物材からなる保水兼排水層5もしくは保水層18や、培養土もしくはピートモス等からなる活着層15を設けなければならなかった。
そのため屋上のコンクリート床面Aの上に防根シートBを敷き、縁囲い材17を形成した中に、保水兼排水層5や活着層15、保水層18(以下、保水兼排水層5等)を敷設するという作業が必要となる。しかしその作業は煩雑であるうえに、現場での作業時間が長くかかり、作業者の負担が大きく、コストも高かった。
【0015】
また、屋上のメンテナンスのために防水工事をする際には、コンクリート床面A上の全ての構造物を一旦撤去しなければならない。しかし保水兼排水層5等は粒状の軽石等を敷き詰めて形成されたものなので、保水兼排水層5等の撤去には手間がかかる。その上、植物の根は保水兼排水層5等に張るため、撤去作業時に根を傷つけやすく、メンテナンス後に緑化用敷設板1、10の状態を元に戻すことはできなかった。
【0016】
このような特許文献1や2の問題点を改善するために、特許文献3の緑化用敷設板20や非特許文献1の緑化用敷設板30が提案された。
図2は、特許文献3の緑化用敷設板20、非特許文献1の緑化用敷設板30、及び特許文献4の保水性パネル31の説明図である。(A)は特許文献3の緑化用敷設板20の説明図であり、(B)は非特許文献1の緑化用敷設板30の生育前の説明図、(C)は非特許文献1の緑化用敷設板30の生育後の説明図、(D)は特許文献4の保水性パネル31の説明図である。
【0017】
図2(A)に示すように特許文献3の緑化用敷設板20は、樹脂または金属製のドレイン板23と、ドレイン板23の上部に設けられたトレー状の育苗パン24とを互いに固定したものである。ドレイン板23は、水を溜める保水部21と通気性のある排水部22とが複数一体に形成されている。そして育苗パン24の上には客土28が入れられ、その客土28には植物が植立する。また保水部21に勘合した育苗パン24の底面の突出部24aから客土28に水を供給する。
【0018】
この特許文献3の緑化用敷設板20は、コンクリート床面Aの上に防水層Cと防根シートBを敷き、その上にドレイン板23をセットし、予め植物を客土28で成育させておいた育苗パン24を載せて、ドレイン板23に固定することにより敷設する。これにより、緑化用敷設板20の設置工事の手間も少ない。また屋上のコンクリート床面Aに防水工事を施す際にはドレイン板23を撤去すればよく、緑化用敷設板20の撤去作業が容易であるうえ、防水工事後には緑化用敷設板20を再敷設すれば緑化用敷設板20の状態を元に戻すことができた。
【0019】
しかし特許文献3の緑化用敷設板20の保水力はドレイン板23の保水部21によるものであるため、保水部21に溜められる水量しか保水できない。そのため灌水パイプ27でほぼ毎日水をやらないと植物を管理できず、メンテナンスフリーでは緑化用敷設板20の緑化を維持できなかった。その上保水のためにドレイン板23を設けなければならないため、余分なコストがかかってしまっていた。
【0020】
またドレイン板23の上方からしかドレイン板23に水を供給できない。そのため、1つの緑化用敷設板20の上に1本の灌水パイプ27を配置することとなり、相当な長さの灌水パイプ27が必要であった。その上灌水パイプ27は複雑であり施工しづらかった。
【0021】
また、特許文献3の緑化用敷設板20は灌水パイプ27が育苗パン24の上に配置されるため、育苗パン24の上に露出した灌水パイプ27を人が踏んで損傷させるおそれがあった。
また、このような灌水パイプ27の問題点を解決するために緑化用敷設板20の下に灌水パイプ27が敷設すると、施行時には緑化用敷設板20の設置作業と灌水パイプ27の敷設作業とを平行して行う必要が生じ、作業効率が悪い。その上灌水パイプ27が緑化用敷設板20に隠蔽されるため、使用時には灌水パイプ27からの出水状況が見えず、灌水パイプ27の管理が難しいという問題点があった。
【0022】
また屋上等の高所では、常に不規則な方向から風が吹く。特許文献3の緑化用敷設板20は、ドレイン板23に入れた客土28が重りの役割を果たし、緑化用敷設板20が飛ぶことを防いでいる。しかし育苗パン24の客土28は表層に露出しているため、風により客土28が飛散する。その結果、客土28を失った緑化用敷設板20が軽くなり、緑化用敷設板20自体が風に飛ばされるおそれがあった。
【0023】
また植物を安定して成育するためには、育苗パン24を使用して植物の成育に適した環境下で予め植物を栽培成育させておく必要がある。しかしそのためには植物を育苗パン24で成育するための専用の農場を用意する必要があり、その建設費用と維持費も含め、特許文献3の緑化用敷設板20の製造コストが高くなってしまっていた。
【0024】
図2(B)と(C)に示す非特許文献1の緑化用敷設板30は、排水処理時に使用した微生物の集合体であるバイオマスケイクを珪藻土や粘度と混ぜ合わせ、1000度以上の高温で焼き上げたスポンジ状の孔をもつ多孔スポンジ状セラミックス基板である。そして非特許文献1では、緑化用敷設板30の上面に設けた薄い土壌に直接種を蒔き、緑化用敷設板30の上で発根させる。そしてその根は、緑化用敷設板30に開口した微細な多孔に入り込み、緑化用敷設板30内に根を張る。
これにより予め植物を成育させておいた緑化用敷設板30を防根シートB上に置くだけで、非特許文献1の緑化用敷設板30を敷設する。
【0025】
しかし非特許文献1の緑化用敷設板30上で発芽、発根させるためには、予め適切な条件下で十分に植物を成育する必要がある。その上特許文献1や2にあるような植孔4、14がないため、十分に発根が進むまで種の位置が変わらないように、風に種が飛ばされないようになど、その成長具合にあわせて適切に温度、光源、湿度等を細かく管理する必要がある。
そのため非特許文献1の緑化用敷設板30を製造するためには、専門の農場と、それに精通した作業員が必要であるため、専門の農場施設の建設費用だけでなく技術に精通したベテランの作業員を常に雇用する必要があり、緑化用敷設板30の製造費用が高かくなっていた。
【0026】
その上緑化用敷設板30は、微細な多孔から緑化用敷設板30内に根を張らせるため、根の伸展により緑化用敷設板30がひび割れるおそれがあった。そのためコンクリート床面Aのメンテナンスとして防水工事が必要になったときには、緑化用敷設板30が細かく砕けているおそれがあり、その撤去作業は容易でなかった。また緑化用敷設板30を撤去してコンクリート床面Aに防水工事を施した後に、屋上の緑化を再び元の状態に戻すことはできなかった。
【0027】
また緑化用敷設板30は、良好な土壌の構成とは異なり、微細なスポンジ状の孔の集合体である。すなわち緑化用敷設板30には団粒がなく、また団粒がないために孔隙を形成しない。そのため、緑化用敷設板30は透水機能、通気機能、及び保水機能の3つをバランスよくもつことができず、植物が根腐れを起こすおそれがあった。
【0028】
一方特許文献4ではヒートアイランド現象の対策として、
図2(D)に示す保水性パネル31を使用している。この保水性パネル31は、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分としたパネルであり、防水層C上に設けられた空気層32と基板層33との上に積層される。
【0029】
保水性パネル31は屋上に溜まった雨水を可能な限り多く保水して維持することにより下水管に一気に流れ込む雨水の量を低減し、都市型水害の発生を防止できる。その上、保水性パネル31から水が蒸散する際に生じる気化熱によって建物を冷却するため冷房の使用量が抑えられる。それにより保水性パネル31からの蒸発、蒸散量が増加すると共に、冷房の排熱を減少させることにより、ヒートアイランド現象の促進の抑制に貢献できる。
【0030】
それに対し緑化を建物に施すと、葉の裏からの蒸散作用が期待でき、植物が赤外線を反射するため夏季の冷房が削減可能であることが確認されている。
しかし仮に非特許文献1のように、保水性パネル31の表面で種を出芽させたとしても、専門の農場と発芽技術に精通したベテランの作業員が必要であり、製造費用が高いという非特許文献3の問題点は解消できない。
【0031】
また貫通した特許文献1や特許文献2の植孔4、14を保水性パネル31に設けても、根は貫通した植孔4、14を通じてパネルの下面に延びるため、根を支えるための保水兼排水層5等が必要となる。そのため特許文献1や特許文献2の植孔4、14を保水性パネル31に設けるだけでは特許文献1や2の問題点を解決できなかった。
【0032】
さらに特許文献1や特許文献2の植孔4、14を保水性パネル31に設けると密実な構成ではなくなるため、人が上を歩いた時に保水性パネル31が割れてしまう。しかし保水性パネル31のメンテナンスをするときには人が上を歩く必要があるため、保水性パネル31に特許文献1や特許文献2の植孔4、14を設けただけでは実用化できなかった。
また人が上を歩いても保水性パネル31が割れないようにするために保水性パネル31をかなり厚くする方法もある。しかし屋上に使用するには建築の法律上の重量制限があるため、保水性パネル31を厚くすることはできなかった。
【0033】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、植物を生育させても重量が軽く、根を支えるための保水兼排水層が不要であり、敷設作業が容易で、現場で敷設にかかる作業時間が短く、作業者の負担が軽く、一度撤去しても再び元の緑化の状態に戻すことができ、メンテナンスが容易であり、風により飛散せず、根腐れを防止でき、予め植物を成育する専門の農場やベテランの作業員が不要であり、製造コストや敷設コストが安い屋上緑化用敷設板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、多数の孔を有し水を適度に該孔に吸収する軽量多孔質コンクリートの粒状物と、
排水性を適度に有する空隙を複数の粒状物の間に設けて互いに粒状物を接着するバインダと、
粒状物とバインダとの混合物内で粒状物とバインダとの結合を補強する補強手段と、を備え、
粒状物とバインダは、矩形の上面と下面とを有する平板形状に固められており、
さらに前記上面に開口し内部に植物を植栽可能な植栽窪みを有し、
植栽窪みは、前記下面に貫通しない底面を有
し、
前記上面の四辺の端部小口がL字状又はJ字状に切り欠かれた辺切り欠き部を有し、
辺切り欠き部は、側面が、隣接する該側面と互いに接することにより、隣接する辺切り欠き部と合わさり壁面に開けられた小孔から水を排出する灌水パイプを通すパイプ敷設用溝を形成する、ことを特徴とする屋上緑化用敷設板が提供される。
【0035】
また補強手段は、前記混合物とともに混合されるビニロン短繊維であり、
前記植栽窪みの底面は、前記下面に平行な平面である。
【0036】
また他の実施形態では、補強手段は、前記混合物とともに混合されるビニロン短繊維であり、
前記植栽窪みの底面は、前記下面に貫通しない球面である。
【0037】
さらに他の実施形態では、補強手段は、ワイヤを格子状に編んだ鉄筋であり、前記底面と前記下面との間に前記下面と水平に設けられ、
前記植栽窪みの底面は、前記下面に貫通しない球面である。
【0039】
前記上面の四隅の角が切り欠かれた角切り欠き部を有し、
前記角切り欠き部は、隣接する、若しくは相対する位置の角切り欠き部と合わさり、前記上面の四隅を固定する固定金具を設置する設置空間を形成する。
【0040】
軽量多孔質コンクリートは、ALC建材の廃材であり、
粒状物は、ALC建材の廃材を粉砕して形成された粒である。
【0041】
バインダは、無機系接着剤あるいは有機系接着剤である。
【0042】
また、本発明によれば、上述の屋上緑化用敷設板の製造方法であって、
底面が平面の下面型に粒状物とバインダとの混合物を入れ、
次に前記植栽窪みの形状に下方に突出した窪み形成突起を備える上面型を下面型内の混合物の上から押しつけてバインダを固化させる、ことを特徴とする屋上緑化用敷設板の製造方法が提供される。
【0043】
また、下面型に混合物を入れる際に、
はじめに下面型に混合物の一部を入れ、
次に粒状物とバインダとの結合を補強するワイヤを格子状に編んだ鉄筋である補強手段を前記一部の混合物の上に敷き、
その後、補強手段の上に残りの混合物を入れる。
【発明の効果】
【0044】
上述した本発明の屋上緑化用敷設板によれば、屋上緑化用敷設板は、粒状物とバインダとの混合物を固化させて製造しているので、粒状物同士が互いにバインダで接着している。そのため粒状物が風に飛ばされない。
【0045】
また屋上緑化用敷設板が粒状物とバインダとの混合物を固化させた混合物であることから、水の浸透吸収性がよく、コンクリート床面に流れた下面にある水を浸透吸収できる。そのため灌水パイプを短くでき、経済的である。そのためドレイン板が必要なく経済的であるうえ、灌水パイプを使用しない運用も可能であり、メンテナンスフリーにできる。
【0046】
さらに屋上緑化用敷設板は、粒状物と粒状物との間の隙間である空隙と粒状物とを組み合わせた構造となっている。これにより植物が根を空隙内に伸ばすことができる。すなわち本発明の屋上緑化用敷設板の空隙と粒状物とを組み合わせた構造は、良質な土壌の構造を再現している。
また本発明の屋上緑化用敷設板は、大小様々な大きさの粒状物により大小様々な大きさの空隙を形成するので、良質な土壌と同様に透水機能、通気機能、及び保水機能をバランスよく有することができ、植物の根腐れを防ぐことができる。
【0047】
さらに本発明の屋上緑化用敷設板は、補強手段を有するので、建築基準の重量制限に適う薄さに屋上緑化用敷設板を製造しても、屋上緑化用敷設板の強度を保つことができる。そのため人が上を歩いても、屋上緑化用敷設板が割れることがない。また、補強手段が入るので、植栽窪みを設けても屋上緑化用敷設板の構造を強く保てる。
【0048】
また本発明の屋上緑化用敷設板は、植栽窪みを有するため、植栽窪みに土壌や養分、及び市販の苗ポットの根部を入れ、苗ポットの根を屋上緑化用敷設板に張らせることができる。それにより屋上に並べた屋上緑化用敷設板の植栽窪みに土壌、養分、苗ポットの根部を入れるだけで、容易に屋上を緑化できる。
【0049】
また緑化により植物の葉で日光の赤外線を反射できると同時に、葉の裏からの蒸散作用により植物を冷たいままに保ち、輻射熱が発生せず、さらに葉で屋上緑化用敷設板を日陰に保つことができるため、さらなるビルの冷却効果が期待できる。同様に、容易に屋上を緑化できるので、ヒートアイランド現象の減少、屋上緑化用敷設板と植物の両者の保水性によるミニダムの機能、及び屋上緑化用敷設板とそれに植えた植物との両者からの蒸散、蒸発による周囲の環境の温度低下が期待できる。
【0050】
さらに本発明の屋上緑化用敷設板は、植栽窪みを有することにより、一般の農場で育てられた市販の苗ポットを使用できる。その上植栽窪みが設けられているので、植物に養分を与えることができ、屋上緑化用敷設板内に伸びるほどに十分に根を育成することができる。
【0051】
また屋上緑化用敷設板の設置工事の際には、屋上に屋上緑化用敷設板を配置した後に、植栽窪みに苗ポットを植え付けるので、屋上緑化用敷設板を積み重ねて屋上に搬入でき、作業を効率化できる。また、屋上緑化用敷設板を積み重ねて搬送できるので、効率的に屋上緑化用敷設板や苗ポットを現場に輸送できる。
【0052】
また本発明の植栽窪みは、底面が下面に貫通していないので、植物の根を屋上緑化用敷設板内に張らせることができ、屋上緑化用敷設板の下に保水兼排水層等を設ける必要がない。それにより、保水兼排水層等を敷設する作業をする必要がなく、屋上緑化用敷設板の敷設工事の作業を効率化でき、作業時間の短縮化、作業者の負担の軽減、屋上緑化用敷設板の敷設費用の削減を実現できる。
【0053】
また植栽窪みの底面が下面に貫通しないため、植物の根の多くは、屋上緑化用敷設板の中に伸びる。そのため緑化工事後に屋上のコンクリート床面に防水のメンテナンス工事をする必要が生じたときに、屋上緑化用敷設板を撤去するだけで植物の根を傷つけずに緑化を撤収でき、また屋上緑化用敷設板を再び置くだけで、屋上を再度緑化状態に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0056】
図3は、本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50の説明図である。(A)は上から見た外観図であり、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(B)の混合物55の拡大図、(D)は本発明の屋上緑化用敷設板50の斜視図である。
図3(B)に示すように、本発明の屋上緑化用敷設板50は、粒状物52、バインダ54、及び補強手段56を備える。
【0057】
粒状物52は、軽量多孔質コンクリートを粉砕して形成された粒である。軽量多孔質コンクリートは、多数の孔を有し水を適度に孔に吸収する。軽量多孔質コンクリートはALC建材の廃材であることが好ましい。しかし、ALC建材の廃材でなくても、多数の孔を有し水を適度に孔に吸収する軽石等でもよい。
このように粒状物52を使用することは、ALC建材の廃材をリサイクルでき、環境によい。
【0058】
図3(C)に示すように、バインダ54は、排水性を適度に有する空隙51を複数の粒状物52の間に設けた状態で、互いに粒状物52を接着する。バインダ54は、無機系接着剤あるいは有機系接着剤であることが好ましい。
【0059】
屋上緑化用敷設板50は、粒状物52とバインダ54との混合物55を固化させて製造しているので、バインダ54により粒状物52同士が互いに接着している。そのため粒状物52が風に飛ばされない。
【0060】
また屋上緑化用敷設板50が粒状物52とバインダ54との混合物55を固化させた混合物55であることから、後述する実験結果のように、水の浸透吸収性がよい。そのため、コンクリート床面Aに流れた水を浸透吸収できるため、1本の灌水パイプ62で複数の屋上緑化用敷設板50に潅水できる。また、1本の灌水パイプ62で複数の屋上緑化用敷設板50に潅水できることからドレイン板23が必要なく、灌水パイプ62も省略若しくは短くでき、経済的である。
【0061】
また屋上緑化用敷設板50は、
図3(C)に示すように、粒状物52と粒状物52との間の隙間である空隙51と粒状物52とを組み合わせた構造となっている。これにより植物の根は、粒状物52と粒状物52との間の空隙51に根を伸ばすことができる。
また空隙51に植物の根を十分に伸ばせるので、屋上緑化用敷設板50が割れる可能性を低くできる。
【0062】
また本発明の屋上緑化用敷設板50は、大小様々な大きさの粒状物52と大小様々な大きさの空隙51を構成する。この構成は、良質な土壌と同様である。また良質な土壌と同様の構成を有することから、良質な土壌と同様に透水機能、通気機能、及び保水機能を屋上緑化用敷設板50も有している。
つまり、粒状物52が土壌の団粒の機能を果たし、空隙51が孔隙の機能を果たす。そして空隙51を水(液相)と空気(気相)とが分け合う。そのため良質な土壌と同様に、屋上緑化用敷設板50を固体(固相)である粒状物52と、空隙51内の水(液相)と空気(気相)とで構成することができる。
このように構成が良質な土壌の構成と同様なので、本発明の屋上緑化用敷設板50は植物の根部の根腐れを効果的に防ぐことができる。
【0063】
なお、透水機能とは、水やり時に土壌の大きい孔隙を通って水をはかせる機能であり、通気機能とは、大きい孔隙を水が通ることで孔隙内の空気が押し出され、しみ込む水の後を追うように新鮮な空気を孔隙に補給する機能である。また保水機能とは、土壌中の小さな孔隙内に入った水が大きな孔隙の水が抜けた後に入ってくる空気との界面にメニスカスができるために、水の中の圧力の方が外圧より低くなり、孔隙の中に水を閉じ込める機能である。
なおメニスカスとは、細管内の液体の中央部が管壁に沿う部分に比べて盛り上がったりまたは下がったりしてできる曲面のことである。
【0064】
また本発明の粒状物52とバインダ54とは、矩形の上面50aと下面50bとを有する平板形状に固められて屋上緑化用敷設板50を形成している。さらに屋上緑化用敷設板50は、上面50aに開口し内部に植物を植栽可能な植栽窪み50cを有する。
また1平米あたりの緑の量を広くし、製造費用と重量を小さくし、かつ土壌の量を多くする必要から、本発明の本実施形態で植栽窪み50cの数は、7つ設けられている。しかし植栽窪み50cの数はこれよりも多くても少なくてもよい。
【0065】
本発明の屋上緑化用敷設板50は植栽窪み50cを有することにより、土壌や養分、及び市販の苗ポット72の根部を植栽窪み50cに入れ、植物の根を屋上緑化用敷設板50に張らせることができる。このように屋上に配置した屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cに土壌、養分、苗ポット72の根部を入れるだけで、容易に屋上を緑化できる。
【0066】
また容易に屋上を緑化できることにより、植物の緑により日光の赤外線を反射できる。また葉の裏からの蒸散作用により植物を冷たいままに保つので輻射熱が発生せず、さらに葉で屋上緑化用敷設板50を日陰に保つことができる。そのため、屋上緑化用敷設板50で緑化することにより、さらなるビルの冷却効果が期待できる。
また容易に屋上を緑化できるので、ヒートアイランド現象の減少が期待でき、植物と屋上緑化用敷設板50の保水性による雨水流出抑制の機能を期待でき、屋上緑化用敷設板50と植物からの蒸散、蒸発による周囲環境の温度低下が期待できる。
【0067】
また本発明の屋上緑化用敷設板50は植栽窪み50cを有することにより、一般の農場で育てられた市販の苗ポット72を使用できる。その上植栽窪み50c内に養分を入れることにより植物に養分を与えられるため、植物が、屋上緑化用敷設板50内に十分に根を伸ばすように促せる。
【0068】
また
図3(B)に示すように、本発明の屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cは、下面50bに貫通しない底面50gを有する。
本発明の植栽窪み50cの底面50gが下面50bに貫通しないので、植物の根を屋上緑化用敷設板50内に張らせることができる。そのため屋上緑化用敷設板50の下に保水兼排水層5等を設ける必要がない。それにより、保水兼排水層5等を敷設する作業をする必要がなく、屋上緑化用敷設板50の敷設にかかる作業時間を短くでき、作業者の負担を軽減でき、さらに屋上緑化用敷設板50の敷設費用を低くできる。
【0069】
また本実施形態の植栽窪み50cの底面50gが下面50bに貫通しない球面であるため、植物の根の多くは、屋上緑化用敷設板50の中に伸びる。そのため緑化工事後に屋上のコンクリート床面Aに防水のメンテナンス工事をする必要が生じたときに、屋上緑化用敷設板50を撤去するだけで植物の根を傷つけずに緑化を撤収でき、屋上緑化用敷設板50を再び置くだけで、屋上を再度緑化状態に戻すことができる。
【0070】
また本発明の屋上緑化用敷設板50は、
図3(A)、(B)、及び(D)に示すように、上面50aの四辺の端部小口58がL字状に切り欠かれた辺切り欠き部50dを有する。本発明の屋上緑化用敷設板50は、辺切り欠き部50dの形状がL字状だが、J字状のように切り欠きが曲面でもよい。
【0071】
図4は、敷設した本発明の屋上緑化用敷設板50の説明図である。(A)は屋上緑化用敷設板50を敷き並べた説明図であり、(B)は固定金具64と灌水パイプ62を敷設した所である。また(C)は(B)のC−C断面図、(D)は(B)のD−D矢視図、(E)は固定金具64を上から見た図である。
図4(A)に示すように、辺切り欠き部50dは、屋上緑化用敷設板50を敷き並べたときに、屋上緑化用敷設板50の側面が隣接する側面と互いに接することにより隣接する辺切り欠き部50dと合わさり、パイプ敷設用溝60を形成する。そしてパイプ敷設用溝60は、壁面に開けられた小孔から水を排出する灌水パイプ62を
図4(B)と(C)のように通すことができる。
【0072】
なお、本発明の屋上緑化用敷設板50は、後述する実験結果で示すように、水の浸透性に優れているため、灌水パイプ62を使用しなくても、メンテナンスフリーの状態で植物を成育させることができる。
【0073】
また屋上の環境により灌水パイプ62を使用する場合でも、灌水パイプ62の敷設はパイプ敷設用溝60に灌水パイプ62を置き、固定金具64で押さえるだけで完了する。そのため屋上緑化用敷設板50を設置した後に灌水パイプ62を敷設できる、すなわち、屋上緑化用敷設板50の設置作業と灌水パイプ62の敷設作業を同時にする必要がないため、敷設作業の省力化と効率化を図ることができる。その上、灌水パイプ62が屋上緑化用敷設板50の下に収まらないので、灌水パイプ62を管理しやすい。その上灌水パイプ62はパイプ敷設用溝60に隠蔽されないので、人が屋上緑化用敷設板50の上面50aを歩いても灌水パイプ62が損傷されるおそれがない。
【0074】
さらに本発明の屋上緑化用敷設板50は、
図3(A)、(D)に示すように、上面50aの四隅の角が切り欠かれた角切り欠き部50eを有する。
角切り欠き部50eは、屋上緑化用敷設板50を敷き並べたときに、隣接する若しくは相対する位置の角切り欠き部50eと合わさり、上面50aの四隅を固定する固定金具64を設置する設置空間T(
図4(A)、(D)を参照)を形成する。
【0075】
固定金具64は、コンクリート床面Aもしくは防根シートBに接着される接着面64aと、接着面64aに鉛直に固定された棒状の支柱64bと、支柱64bの上端部に設置された水平かつ平面状の抑え金具64cを備えることが好ましい。すなわち、屋上緑化用敷設板50を敷設する際には、支柱64bが取り付けられた接着面64aを防根シートBもしくはコンクリート床面Aに接着させ、その後必要に応じてパーライトDで屋上緑化用敷設板50の高さを調整した上に屋上緑化用敷設板50を設置し、その後に抑え金具64cを支柱64bに貫通させて固定することが好ましい。
なお、接着面64a及び抑え金具64cと支柱64bとの結合はナットで固定することが好ましい。
【0076】
また、固定金具64は、上面50aの四隅のうち、対角線上の2つの角を押さえることが好ましい。このように固定金具64を千鳥に配置することにより、最小限の固定金具64で効率的に、効果的にその上経済的に屋上緑化用敷設板50を押さえられる。
また、
図4(B)、(D)のように、固定金具64は、灌水パイプ62が屋上緑化用敷設板50の上面50aに飛び出ないように押さえる。
【0077】
このように、本発明の屋上緑化用敷設板50は、上面50aの四隅の角に角切り欠き部50eを有し、設置空間Tを形成するので、屋上緑化用敷設板50の四隅と固定金具64とが干渉しない。また、屋上緑化用敷設板50の四隅に固定金具64を設置しても、側面と側面とを接触させて屋上緑化用敷設板50を配置することができ、無駄がない。また屋上緑化用敷設板50と屋上緑化用敷設板50との隙間に灌水パイプ62を挟むおそれがない。
【0078】
本発明の補強手段56は、粒状物52とバインダ54との混合物55内で粒状物52とバインダ54との結合を補強する。また本発明の第1実施形態の補強手段56はワイヤを格子状に編んだ鉄筋56aであり、
図3(B)に示すように、植栽窪み50cの底面50gと下面50bとの間に、下面50bと水平に設けられる。
このように本発明の屋上緑化用敷設板50には補強手段56が入っているので、重量制限に適う厚さに屋上緑化用敷設板50を製造し、その屋上緑化用敷設板50の上を人が上を歩いても、屋上緑化用敷設板50が割れることがない。また、補強手段56が入ることにより構造的に屋上緑化用敷設板50が強くなるので、強度を保ったまま屋上緑化用敷設板50に植栽窪み50cを設けられる。
【0079】
本発明の第1実施形態の補強手段56は、3mmの太さのスチールのワイヤを5cm×5cmの格子状に編んだものである。しかしワイヤの太さはこれよりも太くても細くてもよい。また格子の大きさも、これよりも大きくても小さくてもよい。
また、ワイヤの材質は、スチール以外の金属でもよい。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50について説明する。
第2実施形態の屋上緑化用敷設板50の補強手段56は、粒状物52とバインダ54との混合物55とともに混合されるビニロン短繊維56bである。
【0081】
ビニロン短繊維56bは、高強度の水溶性繊維である。本実施形態に用いるビニロン短繊維56bは、3〜5cmの長さのものが好ましい。
なお、混合する繊維は、ビニロン短繊維56bのほかに、炭素繊維、アラミド繊維や、ポリプロピレン・ポリエチレン等のポリオレフィン系繊維でもよい。
【0082】
本発明の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50は、ビニロン短繊維56b(補強手段56)を混合物55に入れることにより、ビニロン短繊維56bの架橋効果によって全体が繊維補強される。そのため、建築基準の重量制限に適う薄さに屋上緑化用敷設板50を製造しても、屋上緑化用敷設板50の強度を保つことができる。それにより、人が上を歩いても、屋上緑化用敷設板50が割れることがない。また、ビニロン短繊維56bが入るので、植栽窪み80を設けても屋上緑化用敷設板50の構造を強く保てる。
【0083】
また、第2実施形態の植栽窪み80の底面50gは、屋上緑化用敷設板50の下面50bに平行な平面でもよく、第1実施形態と同様に下面50bに貫通しない球面であってもよい。また、第2実施形態の植栽窪み80の底面50gは、下面50bに貫通しなければ、他の形状でもよい。
【0084】
その他の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50の構成は、第1実施形態と同様である。
【0085】
次に、本発明の屋上緑化用敷設板50の使用方法を説明する。
図5は、屋上緑化用敷設板50の使用方法の説明図である。(A)は屋上のコンクリート床面Aに化粧枠70、防水層C及び防根シートBを設置したときの説明図であり、(B)は屋上緑化用敷設板50を敷き並べたときの説明図、(C)は固定金具64と灌水パイプ62を設置したときの説明図、(D)は植栽窪み50cに苗ポット72を植え込んだときの説明図である。
【0086】
(1)屋上緑化用敷設板50の使用する際には、まず屋上のコンクリート床面Aの上に化粧枠70を設け、化粧枠70内に防水層Cと防根シートBを敷く(
図5(A)、
図4(D))。化粧枠70は、配置された屋上緑化用敷設板50の周囲を取り囲む枠であり、雨水は化粧枠70の下からコンクリート床面Aをつたって排水される。
この化粧枠70があることにより、屋上緑化用敷設板50を横風が吹き上げることを防ぐことができる。
なお、
図5(A)で、防水層Cは、防根シートBの下に敷かれている。
【0087】
(2)次いで、屋上緑化用敷設板50の高さ調節のために、防根シートBの上にパーライトDを敷設する。
なお、パーライトDは、植物の育成に必ずしも必要ではなく、防根シートBの上に屋上緑化用敷設板50を直接置いてもよい。
【0088】
このように屋上緑化用敷設板50の設置工事の際には、屋上緑化用敷設板50を屋上に配置した後に、植栽窪み50cに苗ポット72を植え付けるので、屋上緑化用敷設板50を積み重ねて搬入でき、作業を効率化できる。また、屋上緑化用敷設板50を積み重ねて搬送できるので、効率的に屋上緑化用敷設板50や苗ポット72を現場に輸送できる。
【0089】
次に、本発明の屋上緑化用敷設板50の製造方法について説明する。
本発明の第1実施形態と第2実施形態の屋上緑化用敷設板50の製造には、矩形の箱型の型である下面型66,84と、下面型66,84の矩形の型に嵌る蓋状の平板である上面型68,86とを使用する。上面型68,86は、下方(下面50b側)に、植栽窪み50cを形成するための窪み形成突起68a,82を備える。窪み形成突起68a,82は、植栽窪み50cの形状に下面型66,84側(下方)に突出した突起である。
なお、以下の説明で、下面型66、上面型68、及び窪み形成突起68aは第1実施形態に使用する型であり、下面型84、上面型86、及び窪み形成突起82は第2実施形態に使用する型である。
【0090】
はじめに、本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50の製造方法について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50の製造方法の断面説明図である。(A)は下面型66に混合物55を入れたときの断面図であり、(B)は補強手段56(鉄筋56a)を敷いたときの断面図、(C)は上面型68を押し付ける直前の断面図、(D)は下面型66に上面型68を押し付けたときの断面図である。
また
図7は、本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cの形状についての比較説明図である。(A)は本発明の窪み形成突起68aを混合物55に押しつける前の断面図であり、(B)は本発明の窪み形成突起68aを混合物55に押しつけたときの断面図である。(C)は切頭円錐形の窪み形成突起82を混合物55に押しつける前の断面図であり、(D)は切頭円錐形の窪み形成突起82を混合物55に押しつけたときの断面図である。
【0091】
(1)まず底面が平面の下面型66に、粒状物52とバインダ54との混合物55を入れる。
下面型66に混合物55を入れる際には、はじめに
図6(A)のように下面型66に混合物55の一部を入れ、次に
図6(B)のように粒状物52とバインダ54との結合を補強する補強手段56(鉄筋56a)を一部の混合物55の上に敷き、その後
図6(C)のように補強手段56(鉄筋56a)の上に残りの混合物55を入れることが好ましい。
【0092】
(2)その後
図6(D)に示すように、上面型68を下面型66内の混合物55の上から押しつけてバインダ54を固化させる。
【0093】
例えば補強手段56として鉄筋56aを使用するときの球面状の植栽窪み50cの形状と切頭円錐形の植栽窪み80の形状について比較する。
底面50gが平面である切頭円錐形の植栽窪み80の敷設板81を、補強手段56として鉄筋56aを使用して製造する際、切頭円錐形の窪み形成突起82が下面型84側に突出した上面型86を使用することとなる。このとき、下方にある粒状物52の移動を格子状の鉄筋56aが拘束するため、粒状物52が横に移動しにくい。そのため、この上面型86を下面型84内の混合物55の上から押しつけると、
図7(C)に示すように切頭円錐形の窪み形成突起82の底面82aによって、粒状物52が下方へ押される。
【0094】
そのため、完成した敷設板81は、
図7(D)のように上方の粒状物52が少なく下方の粒状物52が多い敷設板となる。すなわち植栽窪み80の上方の内側面はバインダ54が主に形成する壁面となる。それにより植栽窪み80の上方の内側面は、ほとんど粒状物52も空隙51も無い状態となり、根が側面から敷設板81内に伸びることは難しい。
また、植栽窪み80の底面50gには粒状物52ばかりが集まるため、粒状物52同士の接着が弱くなる。また粒状物52や空隙51が底面50gにしかない構成になるため、植物の根のほとんどが底面50gから伸びることとなる。そのため、植物の根がほとんど敷設板81の中に伸びずに底面50gに突き出ることとなり、植物の自立が不安定となってしまう。
【0095】
一方、本発明の屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cの底面50gは球面(すなわち上面型68の窪み形成突起68aが球面状の突起)なので、下面型66内の混合物55の上から上面型68を押し付けると、
図7(B)に示すように粒状物52が横方向に均一に広がる。そのため、植栽窪み50cの内壁面50f全体に粒状物52と空隙51とを均一に出すことができる。
それにより植栽窪み50cの内壁面50f全体から植物が根を伸ばし、屋上緑化用敷設板50内に根を張ることができるため、植物を安定して自立させることができる。
【0096】
また本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cの底面50gは球面であり、球面の窪み形成突起68aを有する上面型68を使用するので、切頭円錐形の窪み形成突起82を有する上面型86を使用する場合よりも、上面型68を混合物55の上面50aに押しつけるときに生じる抵抗が小さく済む。
【0097】
また、植物の根を十分に張らせるためには、植栽窪み50cの表面積が大きい方がよく、植物を自立させるためには、できるだけ植物を深く植える方がよい。
本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50は、植栽窪み50cの底面50gが球面であるため、内容量が同じ切頭円錐形の植栽窪み80よりも、大きい面積の内壁面50fを有する。そのため、本発明の屋上緑化用敷設板50は、切頭円錐形の植栽窪み80をもつ敷設板81よりも植物の根を十分に張らせることができる。
【0098】
また切頭円錐形の植栽窪み80の敷設板81の場合、植物を深く植えるために、
図7(D)のように植栽窪み80の底面50gから敷設板81の下面までの距離を短くすると、下面に貫通する穴が一部に開いたり、補強手段56が見えたりするおそれがある。しかし本発明の第1実施形態の屋上緑化用敷設板50は、植栽窪み50cの底面50gが球面なので、底面50gの中心から屋上緑化用敷設板50の下面50bまでの距離を短くしたとしても、中心以外の底面50gから下面50bまでの距離は厚く保てる。そのため、下面50bに貫通する穴が開いたり、鉄筋56a(補強手段56)が見えたりする心配がない。それにより均一な品質の屋上緑化用敷設板50を安定して製造することができ、無駄がない。
【0099】
次に、本発明の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50の製造方法について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50の製造方法の断面説明図である。(A)は下面型84に混合物55aを入れたときの断面図であり、(B)は下面型84に上面型86を押し付けたときの断面図である。(C)は切頭円錐形の窪み形成突起82を混合物55aに押しつける前の断面図、(D)は切頭円錐形の窪み形成突起82を混合物55aに押しつけたときの断面図、(E)は第2実施形態の
図3(A)のB−B断面図である。
【0100】
第2実施形態の上面型86の窪み形成突起82は、下面型84側に突出した切頭円錐形の突起である。
【0101】
(1)まず粒状物52とバインダ54との混合物55とともに補強手段56(ビニロン短繊維56b)を混合し、混合物55aを作成する。
(2)次に、
図8(A)に示すように、底面が平面の下面型84に、粒状物52とバインダ54と補強手段56(ビニロン短繊維56b)との混合物55aを入れる。
【0102】
(3)その後、
図8(B)に示すように上面型86を下面型84内の混合物55aの上から押しつけてバインダ54を固化させる。
【0103】
本発明の第2実施形態の屋上緑化用敷設板50は、補強手段56がビニロン短繊維56bなので、補強手段56に粒状物52の移動が拘束されない。そのため、植栽窪み80の形状を切頭円錐形にしても、
図8(C)と(D)に示すように粒状物52が窪み形成突起82の底面82aから横に移動できる。
【0104】
したがって、ビニロン短繊維56bを補強手段56として使用することにより、第2実施形態の場合も、植栽窪み50cの内壁面50f全体に粒状物52と空隙51とを均一に出すことができる。
それにより植栽窪み50cの内壁面50f全体から植物が根を伸ばし、屋上緑化用敷設板50内に根を張ることができるため、植物を安定して自立させることができる。
【0105】
このように、第2実施形態の屋上緑化用敷設板50は、ビニロン短繊維56bを補強手段56として使用することにより、植栽窪み80の形状を切頭円錐形にすることができる。
なお、第2実施形態の植栽窪み80の形状は、第1実施形態と同様に球面でもよい。
【0106】
次に、本発明の屋上緑化用敷設板50を使用した実験結果について説明する。
図9は、強アルカリにおける耐性試験の試験結果を示す写真であり、
図10は水吸上げ試験の試験結果を示す写真である。
(植生試験)
2011年7月初頭から2012年10月末まで、本発明の発明者は本発明の屋上緑化用敷設板50を使用した植生試験と屋上緑化用敷設板性能試験を行った。植生試験の結果は、以下のようになった。
【0107】
(植栽別成育の優劣)
セダム類4種、マツバギク、常緑キリンソウ、及び落葉キリンソウの計7種の多肉植物の生育状況を観察した。
その結果メンテナンスなしの状態で、夏期冬期を経て植栽6種が生育した。そのなかでも、剛健性のある植栽としてマツバギクと常緑キリンソウを確認できた。
【0108】
(補助保水層18の必要性試験)
補助保水層18の有無で、植物の生育状況を比較した。
その結果、補助保水層18がなくても植物の生育が可能であることを確認できた。
【0109】
(強アルカリにおける耐性試験)
屋上緑化用敷設板50はpH12の強アルカリ性であるため、強アルカリ性(pH12)と弱アルカリ性(pH8)とで植物の生育状況を比較した。
図9の写真の手前の屋上緑化用敷設板50が強アルカリ性であり、奥の屋上緑化用敷設板50が弱アルカリ性である。
その結果、
図9の写真に示すように、強アルカリ性の屋上緑化用敷設板50での生育は、弱アルカリ性の板での生育と差異がほとんどなかった。
【0110】
(無潅水における耐性試験)
メンテナンスフリーを実現できるか否かを検証するため、夏期4週間の無潅水状況を再現し、観察した。
その結果、夏期の無潅水状況においても、多肉植物は生存した。植栽は萎み縮小するが、枯死には至らなかった。
【0111】
また屋上緑化用敷設板性能試験の結果は次のようになった。
(凍結融解試験)
10℃〜−10℃の温度変化を100サイクル繰り返し、屋上緑化用敷設板50の性能の変化を観察した。
結果、屋上緑化用敷設板50に変化は認められなかった。
【0112】
(固定金具接着強度試験)
設計風荷重を4300Paとし、JISに従って固定金具64の接着強度試験を行った。
その結果、固定金具64と防根シートBとの接着強度は、固定金具64の一本あたり約20kNであった。この結果は、設計風荷重2.2kN/本の約9倍であり、問題がないことが確認できた。
【0113】
(水吸上げ試験)
屋上緑化用敷設板50と同素材の10cmキューブ型のプランタ90で、水鉢による発芽観察を行った。この実験は、乾燥した10cmキューブ型のプランタ90に入れた乾燥した土壌に種子を植え、このプランタ90を入れた受け皿92を水で満たした(
図10)。
その結果、
図10の写真に示すように、プランタ90の下面にある重力水が吸い上げられ、種子が発芽した。
【0114】
これにより、毛管水の植栽への移動を確認した。この実験結果により、本発明の屋上緑化用敷設板50の素材が水の浸透吸収性がよいことを確認した。
このように、本発明の屋上緑化用敷設板50は、下面50bにある水を浸透吸収し、植栽窪み50c内の植物に提供するため、灌水パイプ62を使用しなくてもメンテナンスフリーの状態で植物を成育させられることが確認できた。また、この実験により灌水パイプ62を使用する場合、1本の灌水パイプ62で複数の屋上緑化用敷設板50に潅水でき、灌水パイプ62を短くできることが確認できた。
【0115】
(保水性試験)
乾燥状態から湿潤時における保水量を測定した。
その結果本発明の屋上緑化用敷設板50の保水量は、約12L/m2であることが確認できた。
【0116】
上述した本発明の屋上緑化用敷設板50によれば、屋上緑化用敷設板50は、粒状物52とバインダ54との混合物55を固化させて製造しているので、粒状物52同士が互いにバインダ54で接着している。そのため粒状物52が風に飛ばされない。
【0117】
また屋上緑化用敷設板50が粒状物52とバインダ54との混合物55を固化させた混合物55であることから、水の浸透吸収性がよく、コンクリート床面Aに流れた下面50bにある水を浸透吸収できる。そのため灌水パイプ62を短くでき、経済的である。そのためドレイン板23が必要なく経済的であるうえ、灌水パイプ62を使用しない運用も可能であり、除草、施肥を除けばメンテナンスフリーにできる。
【0118】
さらに屋上緑化用敷設板50は、粒状物52と粒状物52との間の隙間である空隙51と粒状物52とを組み合わせた構造となっている。これにより植物が根を空隙51内に伸ばすことができる。すなわち本発明の屋上緑化用敷設板50の空隙51と粒状物52とを組み合わせた構造は、良質な土壌の構造を再現している。
また本発明の屋上緑化用敷設板50は、大小様々な大きさの粒状物52により大小様々な大きさの空隙51を形成するので、良質な土壌と同様に透水機能、通気機能、及び保水機能をバランスよく有することができ、植物の根腐れを防ぐことができる。
【0119】
さらに本発明の屋上緑化用敷設板50は、補強手段56を有するので、建築基準の重量制限に適う薄さに屋上緑化用敷設板50を製造しても、屋上緑化用敷設板50の強度を保つことができる。そのため人が上を歩いても、屋上緑化用敷設板50が割れることがない。また、補強手段56が入るので、植栽窪み50cを設けても屋上緑化用敷設板50の構造を強く保てる。
【0120】
また本発明の屋上緑化用敷設板50は、植栽窪み50cを有するため、植栽窪み50cに土壌や養分、及び市販の苗ポット72の根部を入れ、苗ポット72の根を屋上緑化用敷設板50に張らせることができる。それにより屋上に並べた屋上緑化用敷設板50の植栽窪み50cに土壌、養分、苗ポット72の根部を入れるだけで、容易に屋上を緑化できる。
【0121】
また緑化により植物の葉で日光の赤外線を反射できると同時に、葉の裏からの蒸散作用により植物を冷たいままに保ち、輻射熱が発生せず、さらに葉で屋上緑化用敷設板50を日陰に保つことができるため、さらなるビルの冷却効果が期待できる。同様に、容易に屋上を緑化できるので、ヒートアイランド現象の減少、屋上緑化用敷設板50と植物の両者の保水性によるミニダムの機能、及び屋上緑化用敷設板50とそれに植えた植物との両者からの蒸散、蒸発による周囲の環境の温度低下が期待できる。
【0122】
さらに本発明の屋上緑化用敷設板50は、植栽窪み50cを有することにより、一般の農場で育てられた市販の苗ポット72を使用できる。その上植栽窪み50cが設けられているので、植物に養分を与えることができ、屋上緑化用敷設板50内に伸びるほどに十分に根を育成することができる。
【0123】
また屋上緑化用敷設板50の設置工事の際には、屋上に屋上緑化用敷設板50を配置した後に、植栽窪み50cに苗ポット72を植え付けるので、屋上緑化用敷設板50を積み重ねて屋上に搬入でき、作業を効率化できる。また、屋上緑化用敷設板50を積み重ねて搬送できるので、効率的に屋上緑化用敷設板50や苗ポット72を現場に輸送できる。
【0124】
また本発明の植栽窪み50cの底面50gが下面50bに貫通していないので、植物の根を屋上緑化用敷設板50内に張らせることができ、屋上緑化用敷設板50の下に保水兼排水層5等を設ける必要がない。それにより、保水兼排水層5等を敷設する作業をする必要がなく、屋上緑化用敷設板50の敷設工事の作業を効率化でき、作業時間の短縮化、作業者の負担の軽減、屋上緑化用敷設板50の敷設費用の削減を実現できる。
【0125】
また植栽窪み50cの底面50gが下面50bに貫通しないため、植物の根の多くは、屋上緑化用敷設板50の中に伸びる。そのため緑化工事後に屋上のコンクリート床面Aに防水のメンテナンス工事をする必要が生じたときに、屋上緑化用敷設板50を撤去するだけで植物の根を傷つけずに緑化を撤収でき、また屋上緑化用敷設板50を再び置くだけで、屋上を再度緑化状態に戻すことができる。
【0126】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。また、本発明の屋上緑化用敷設板50は、屋上に使用する場合について実施例として説明しているが、屋上以外の場所に屋上緑化用敷設板50を使用してもよい。