(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、仕切り部材が、剛性部材および弾性部材の2つの部材により形成されていて、構造の簡素化について改善の余地がある。
また前記従来の防振装置では、振動が入力されて外部材と内部材とが相対的に変位するときに、仕切り部材のうちの弾性部材が変形することで、例えば仕切り部材が変形しない場合などに比べて、両分割液室の各容積の変化量が小さくなり、制限通路内を流通する液体の流通量が抑えられて減衰特性が得にくくなる。その結果、所望する減衰特性を得るためには、この防振装置全体を大型化する必要が生じ、スペース効率が悪化する。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造の簡素化を図りつつ、スペース効率を高めてなお、所望の減衰特性を得ることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る防振装置は、振動発生部および振動受部のうちの一方に連結される筒状の外部材、および他方に連結される内部材と、前記外部材の軸方向に間隔をあけて配置されるとともに、前記外部材と前記内部材とを各別に連結する第1弾性体および第2弾性体と、前記外部材内において前記第1弾性体と前記第2弾性体との間に画成された液室を前記軸方向に区画し、前記第1弾性体を壁面の一部とする第1分割液室および前記第2弾性体を壁面の一部とする第2分割液室を画成する仕切り部材と、を備えるとともに、これらの両分割液室を連通する制限通路が形成された防振装置であって、前記内部材は、前記第1弾性体に連結された第1内部材と、前記第2弾性体に連結された第2内部材と、を備え、これらの両内部材は、前記仕切り部材を前記軸方向に挟んで配置されるとともに、前記液室の外側に配設された連結体を介して互いに接続され、前記第1弾性体および前記第2弾性体はそれぞれ、
外周部が前記外部材に連結されて内周部が前記内部材に連結された環状に形成されるとともに、前記軸方向を向く両面が、前記防振装置全体の縦断面視において、前記外部材側から前記内部材側に向かうに従い漸次、
前記防振装置全体においての前記軸方向の一方側から他方側に向けて延在する脚部を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、両内部材が、液室の外側に配設された連結体を介して互いに接続されているので、例えば前記軸方向の振動や、外部材の径方向の振動などが入力されたときに、仕切り部材を変形させなくても、外部材と内部材とを相対的に変位させることができる。
したがって、仕切り部材を、弾性部材のような分割液室の液圧変動に応じて変形し易い材料に代えて、分割液室の液圧が変動しても変形し難い材料で形成することができる。これにより、振動が入力されたときに、両分割液室の各容積の変化量を確保して、防振装置の減衰特性を効果的に発揮させることが可能になり、防振装置の大型化を抑えつつ所望する減衰特性を得やすくしてスペース効率を高めることができる。
また前述のように、仕切り部材を変形させなくても、外部材と内部材とを相対的に変位させることができるので、仕切り部材を、分割液室の液圧が変動しても変形し難い材料で一体に成形し、1つの部材により形成することもできる。この場合、仕切り部材の部品点数を低減して構造の簡素化を図ることが可能になり、仕切り部材自体や防振装置全体の製造コストを抑えること等ができる。
さらに、両弾性体それぞれが脚部を備えているので、この防振装置を、振動発生部と振動受部との間に介在させ、この防振装置に、外部材を内部材に対して前記軸方向の他方側に変位させるような初期荷重が加えられたときに、両弾性体の各脚部を圧縮変形させることができる。したがって、例えば初期荷重が加えられたときに、両弾性体が引張変形させられるような場合などに比べて、この防振装置の耐久性を向上させることができる。
【0008】
また、前記仕切り部材は剛体であってもよい。
【0009】
この場合、仕切り部材が剛体であるので、振動が入力されたときに、仕切り部材を変形させることなく、外部材と内部材とを相対的に変位させることが可能になり、両分割液室の各容積の変化量を効果的に確保することができる。
【0012】
また、前記第1弾性体および前記第2弾性体それぞれの前記脚部が前記外部材の軸線に対して傾斜する各傾斜角度は、互いに同等となっていてもよい。
【0013】
この場合、両弾性体それぞれの脚部の前記軸線に対する各傾斜角度が、互いに同等となっているので、例えばこの防振装置に前記軸方向の振動が入力されたとき等に、両弾性体の各脚部の変形量を同等にすることができる。これにより、例えば両弾性体のうちの片方だけが早期に劣化してしまうのを抑えること等が可能になり、この防振装置の耐久性を向上させることができる。
またこのように、両弾性体の各脚部の変形量を同等にすることができるので、第1弾性体の脚部の変形により第1分割液室の容積が変化させられる変化量(第1弾性体によるポンプ力)と、第2弾性体の脚部の変形により第2分割液室の容積が変化させられる変化量(第2弾性体によるポンプ力)と、を同等にし易くすることができる。したがって、両弾性体が変形したときに、制限通路内に液体を効果的に流通させることが可能になり、高い減衰特性を発揮させることができる。
【0014】
また、前記第1弾性体および前記第2弾性体のうちの少なくとも一方には、前記外部材内に装着された装着筒が固着されていてもよい。
【0015】
この場合、第1弾性体および第2弾性体のうちの少なくとも一方に、装着筒が固着されているので、弾性体および装着筒の連結部材と、外部材と、を各別に成形した後、連結部材と外部材とを組み付けることで、この防振装置を形成することが可能になり、この防振装置を容易に製造することができる。
【0016】
また、前記制限通路は、前記外部材と前記装着筒との間に画成されていてもよい。
【0017】
この場合、制限通路が、外部材と装着筒との間に画成されているので、部品点数の増大を抑えつつ制限通路を形成することが可能になり、この防振装置の構造の簡素化を確実に図ることができる。
【0018】
また、前記装着筒は、前記外部材における前記軸方向の端部内に嵌合された大径部と、前記大径部よりも、前記軸方向に沿って仕切り部材側に位置し、開口端部が前記仕切り部材に当接する小径部と、前記大径部と前記小径部とを連結する段部と、を備え、前記制限通路は、前記小径部および前記段部により画成されていてもよい。
【0019】
この場合、制限通路が、装着筒の小径部および段部により画成されているので、装着筒を単に多段筒状に形成するといった簡素な構造により制限通路を形成することができる。
【0020】
また、前記小径部の開口端部の端面には、弾性膜が形成されていてもよい。
【0021】
この場合、小径部の開口端部の端面に弾性膜が形成されているので、小径部の開口端部の端面と仕切り部材の表面との間で弾性膜を圧縮変形させて両者間のシール性を高めることができる。これにより、振動が入力され液体が制限通路内を流通するときに、液体が制限通路から漏出するのを効果的に抑制することが可能になり、この防振装置の減衰特性を確実に発揮させることができる。
また弾性膜が、小径部の開口端部の端面に形成されているので、前述した連結部材と外部材とを組み付けるときに、連結部材を外部材内に前記軸方向に押し込む押し込み量を調整し、弾性膜が、小径部の開口端部の端面と仕切り部材の表面との間で圧縮される圧縮量を変更することで、前記シール性を調節することができる。
【0022】
また、前記外部材および前記仕切り部材は、全体が一体に形成されていてもよい。
【0023】
この場合、外部材および仕切り部材の全体が一体に形成されているので、この防振装置の構造の更なる簡素化を図ることができる。
また、外部材および仕切り部材の全体が一体に形成されているので、簡素な構造を維持しつつ仕切り部材と外筒体との間の固定強度を高めることが可能になり、この防振装置の耐久性を確実に向上させることができる。
【0024】
また、前記外部材は、振動発生部としてのエンジンに連結され、前記内部材は、振動受部としての車体に連結されてもよい。
【0025】
この場合、両内部材が両弾性体に各別に連結されているので、液室内でキャビテーションを起因とする異音が発生したときに、このキャビテーション異音を、第1弾性体または第2弾性体により吸収することができる。そして内部材が、振動受部としての車体に連結されているので、前述のようにキャビテーション異音を第1弾性体または第2弾性体により吸収することで、例えば、車体に伝達される異音の大きさを小さくしたり、車体に異音が伝達されるのを抑制したりすること等ができる。なおこの防振装置のように、振動が入力されたときに、両分割液室の各容積の変化量が確保される場合には、各分割液室内でキャビテーションが生じ易いことから、この作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0026】
また、前記連結体は、内部に前記外部材および前記内部材が配置されるとともに、内周面に前記両内部材が各別に接続される筒状に形成され、前記外部材と前記連結体との間には、前記外部材と前記内部材とが相対的に変位したときに互いに当接することで、前記外部材と前記内部材との更なる変位を規制するストッパ部が設けられていてもよい。
【0027】
この場合、外部材と連結体との間にストッパ部が設けられているので、外部材と内部材とが相対的に変位し過ぎるのを抑えることが可能になり、例えばこの防振装置の耐久性を向上させること等ができる。
しかもストッパ部が、外部材と連結体との間に設けられているので、この防振装置の大型化を抑えつつストッパ部を設けることが可能になり、スペース効率を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る防振装置によれば、構造の簡素化を図りつつ、スペース効率を高めてなお、所望の減衰特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る防振装置を説明する。この防振装置は、いわゆる液体封入型の差動式であり、車両のエンジンマウントとして用いられる。
【0031】
図1および
図2に示すように、防振装置10は、振動発生部および振動受部のうちの一方に連結される筒状の外部材11、および他方に連結される内部材12、13と、外部材11の軸方向に間隔をあけて配置されるとともに、外部材11と内部材12、13とを各別に連結する第1弾性体14および第2弾性体15と、これらの両弾性体14、15に前記軸方向に挟まれた仕切り部材16と、を備えている。
【0032】
外部材11は円筒状に形成されている。外部材11において前記軸方向の一方側に位置する一端部内には、前記軸方向の一方側に向けて開口する周溝18が形成されている。
外部材11には棒状部17が設けられている。棒状部17の軸線は、外部材11の軸線Oに直交する直交面に沿って延在していて、棒状部17の側面は、外部材11の外周面に連結されている。棒状部17は、外部材11の一端部に連結されている。これらの棒状部17および外部材11は、同一材料で一体に形成されている。
【0033】
内部材12、13は、前記軸方向に間隔をあけて2つ配置されている。内部材12、13には、前記軸方向の一方側の第1内部材12と、前記軸方向の他方側の第2内部材13と、が備えられている。両内部材12、13は、外部材11と同軸に配置されている。
第1内部材12は、外部材11の一端部に配設されている。第1内部材12は、前記軸方向に延在する筒状に形成され、第1内部材12の内周面には、雌ねじが形成されている。第2内部材13は、外部材11において前記軸方向の他方側に位置する他端部に配設されている。第2内部材13は、前記軸方向の他方側に向けて開口する有頂筒状に形成され、第2内部材13の内周面には、雌ねじが形成されている。
【0034】
両弾性体14、15のうち、第1弾性体14は、前記軸方向の一方側に配置され、第2弾性体15は、前記軸方向の他方側に配置されている。第1弾性体14は、第1内部材12に連結されて外部材11の一端部を閉塞している。第2弾性体15は、第2内部材13に連結されて外部材11の他端部を閉塞している。
【0035】
第1弾性体14は、第1本体部14aと、第1脚部14bと、を備えている。これらの第1本体部14aおよび第1脚部14bは、同一材料で一体に形成されていて、図示の例ではゴム材料により形成されている。
第1本体部14aは、第1内部材12において前記軸方向の他方側に位置する他端部に固着されている。第1本体部14aは、外部材11の軸線O上に位置し、第1内部材12および前記周溝18に対して前記軸方向の他方側に位置している。第1本体部14aは、第1内部材12を前記軸方向の他方側から覆っていて、第1本体部14aにおいて前記軸方向の一方側を向く部分が第1内部材12に加硫接着されている。
【0036】
第1本体部14aには、前記軸方向の他方側に向けて開口する有頂筒状の筒状部19が埋設されている。筒状部19は外部材11と同軸に配置され、筒状部19の頂壁部は第1内部材12の他端部に連結されている。筒状部19の周壁部には、複数の貫通孔が形成されている。
【0037】
第1脚部14bは、外部材11側から内部材12側に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側から他方側に向けて延在している。第1脚部14bは、内周部が第1本体部14aに連結されるとともに外周部が外部材11に連結された環状に形成されている。第1脚部14bは、内周部から外周部に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側に向けて延在している。
【0038】
第1脚部14bには、外部材11内に装着された第1装着筒20が固着されている。第1装着筒20は、第1脚部14bの外周部に加硫接着されている。第1装着筒20は、外部材11と同軸に配置された多段筒状に形成されている。第1装着筒20は、前記軸方向の他方側に位置する大径の拡径部20aと、前記軸方向の一方側に位置する小径の縮径部20bと、が連結されてなる。拡径部20aは前記周溝18内に嵌合されている。
【0039】
第2弾性体15は、第2本体部15aと、第2脚部15bと、を備えている。これらの第2本体部15aおよび第2脚部15bは、同一材料で一体に形成されていて、図示の例ではゴム材料により形成されている。
第2本体部15aは、第2内部材13の頂面および外周面に固着されている。第2本体部15aは、第2内部材13を前記軸方向の一方側から覆っていて、第2本体部15aにおいて前記軸方向の他方側を向く部分が第2内部材13に加硫接着されている。第2脚部15bは、外部材11側から内部材13側に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側から他方側に向けて延在している。第2脚部15bは、内周部が第2本体部15aに連結されるとともに外周部が外部材11に連結された環状に形成されている。第2脚部15bは、内周部から外周部に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側に向けて延在している。
【0040】
第2脚部15bには、外部材11内に装着された第2装着筒21が固着されている。第2装着筒21は、第2脚部15bの外周部に加硫接着されている。第2装着筒21は、外部材11と同軸に配置された多段筒状に形成されている。第2装着筒21は、前記軸方向の他方側に位置する大径部21aと、前記軸方向の一方側に位置する小径部21bと、これらの大径部21aと小径部21bとを連結する段部21cと、を備えている。大径部21aは外部材11の他端部(外部材における前記軸方向の端部)内に嵌合されている。
【0041】
第2装着筒21には、弾性膜22と、位置決め部23と、が設けられている。弾性膜22は、第2装着筒21の前記軸方向の一方側の端部である小径部21bの開口端部の端面に形成されている。弾性膜22は、第2弾性体15と同一材料で一体に形成されている。位置決め部23は、第2装着筒21の前記軸方向の他方側の端部である大径部21aの開口端部に設けられている。位置決め部23は、第2装着筒21から外部材11の径方向の外側に突設され、外部材11と同軸の環状に形成されている。位置決め部23は、外部材11の他端部に前記軸方向の他方側から係合していて、第2装着筒21を前記軸方向に位置決めしている。
【0042】
ここで、第1弾性体14および第2弾性体15それぞれの脚部14b、15bが前記軸線Oに対して傾斜する各傾斜角度は、互いに同等となっていて、第1脚部14bおよび第2脚部15bは、実質的に平行に延在している。図示の例では、これらの両脚部14b、15bの前記軸方向に沿った厚さ、および両脚部14b、15bの体積も、互いに同等となっている。
【0043】
外部材11内における両弾性体14、15の間には、液体が封入された液室24が画成されている。液室24には、前記液体として、例えばエチレングリコール、水、シリコーンオイル等が封入されている。
仕切り部材16は、液室24を前記軸方向に区画し、第1弾性体14を壁面の一部とする第1分割液室24aおよび第2弾性体15を壁面の一部とする第2分割液室24bを画成している。仕切り部材16は、外部材11において、前記軸方向の両端部の間に位置する中央部に配設されている。仕切り部材16は、表面が前記軸方向を向く板状に形成され、仕切り部材16の表面は、前記小径部21bの開口端部の端面に、弾性膜22を圧縮変形させながら当接している。
【0044】
そして本実施形態では、仕切り部材16は、全体が一体に形成された剛体である。さらに、外部材11および仕切り部材16は、全体が一体に形成されていて、仕切り部材16の外周縁は、外部材11の内周面に境界面なく連結されている。外部材11および仕切り部材16は、各弾性体14、15よりも剛性が高い材料、例えば金属材料などの同一材料により一体に形成されている。
前記防振装置10には、両分割液室24a、24bを連通する制限通路25が形成されている。制限通路25は、外部材11と第2装着筒21との間に画成されている。制限通路25は、外部材11、仕切り部材16、並びに第2装着筒21の小径部21bおよび段部21cにより画成されている。
【0045】
制限通路25は、第1連通孔26を通して第1分割液室24a内に連通し、第2連通孔27を通して第2分割液室24b内に連通している。第1連通孔26は、仕切り部材16に前記軸方向に延設された図示しない貫通孔と、外部材11の内周面に形成された窪み部26aと、を備えている。窪み部26aは、前記貫通孔に連続して形成されていて、前記貫通孔を通して制限通路25内に連通する。第2連通孔27は、小径部21bを前記径方向に貫通している。
【0046】
ここで前記防振装置10では、外部材11、内部材12、13、第1弾性体14、第2弾性体15および仕切り部材16により、防振装置本体28が構成されている。この防振装置本体28では、両内部材12、13が、仕切り部材16を前記軸方向に挟んで配置されるとともに、液室24の外側に配設された連結体29を介して互いに接続されていて、両内部材12、13は、外部材11に対して一体的に変位する。
【0047】
連結体29は、内部に外部材11および内部材12、13が配置された筒状に形成されている。連結体29内には、防振装置本体28がその前記軸方向の全長にわたって収容される一方、棒状部17が連結体29の外部に位置している。防振装置本体28では、両内部材12、13が連結体29の内周面に前記軸方向に各別に対向している。連結体29において内部材12、13に前記軸方向に対向する各部分には、この連結体29を前記軸方向に貫通する挿通孔が各別に形成されている。
【0048】
そして本実施形態では、連結体29の内周面には、両内部材12、13が各別に接続されている。各内部材12、13は、ボルト31、32により連結体29に固定されている。ボルト31、32は、第1内部材12を連結体29に固定する第1ボルト31と、第2内部材13を連結体29に固定する第2ボルト32と、を備えている。第1ボルト31は、前記軸方向の一方側から前記挿通孔を通して第1内部材12の前記雌ねじ部にねじ込まれている。第2ボルト32は、前記軸方向の他方側から前記挿通孔を通して第2内部材13の前記雌ねじ部にねじ込まれている。
【0049】
外部材11と連結体29との間には、例えばゴム材料などにより形成され弾性のストッパ部33、34が設けられている。ストッパ部33、34は、外部材11と内部材12、13とが相対的に変位したときに互いに当接することで、外部材11と内部材12、13との更なる変位を規制する。ストッパ部33、34には、外部材11と内部材12、13との前記軸方向の変位量を規制する第1ストッパ部33と、外部材11と内部材12、13との前記径方向の変位量を規制する第2ストッパ部34と、が備えられている。
【0050】
図2に示すように、第1ストッパ部33は、外部材11の前記軸方向の両端部の端面に各別に形成されていて、連結体29の内周面に前記軸方向に対向している。第1ストッパ部33のうち、外部材11の一端部に設けられた一方側ストッパ33aは、第2ストッパ部34と一体に形成され、外部材11の他端部に設けられた他方側ストッパ33bは、第2弾性体15と一体に形成されている。
図1に示すように、第2ストッパ部34は、外部材11の一端部の外周面に形成されていて、外部材11の一端部を径方向の外側から全周にわたって覆っている。第2ストッパ部34のうち、外部材11の軸線Oを前記径方向に挟んだ各部分は、連結体29の内周面に前記径方向に対向している。
【0051】
以上のように構成された防振装置10を形成するときには、まず第1内部材12、第1弾性体14および第1装着筒20が連結されてなる第1連結部材10aと、第2内部材13、第2弾性体15および第2装着筒21が連結されてなる第2連結部材10bと、外部材11および仕切り部材16が連結されてなる第3連結部材10cと、を各別に成形する。そして、これらの連結部材10a、10b、10cを組み付けて、防振装置本体28を形成した後、この防振装置本体28を連結体29に組み付ける。
【0052】
この防振装置10では、外部材11が、振動発生部としてのエンジンに棒状部17を介して連結され、内部材12、13が、振動受部としての車体に連結体29を介して連結される。このとき防振装置10は、第1分割液室24aが鉛直方向上側に位置しかつ第2分割液室24bが鉛直方向下側に位置するように取り付けられ、この防振装置10には、外部材11を内部材12、13に対して前記軸方向の他方側(鉛直方向下側)に変位させるような初期荷重が加えられる。つまりこの防振装置10では、前記軸方向の他方側が、装着時に静荷重(初期荷重)が入力されるバウンド側であり、前記軸方向の一方側が、バウンド側の反対側のリバウンド側となっている。
【0053】
前記防振装置10では、例えば前記軸方向の振動や、前記径方向の振動などが入力されたときに、外部材11と、連結体29により互いに接続された両内部材12、13と、が、第1弾性体14および第2弾性体15を弾性変形させながら、仕切り部材16を変形させることなく相対的に変位する。このとき、両分割液室24a、24bの各容積が変化することで液体が制限通路25内を流通し、この防振装置10の減衰特性が発揮される。なお、防振装置10に前記軸方向の振動が入力された場合には、両分割液室24a、24bの一方の容積が一定量、増大し、他方の容積が、前述の一定量と同等量、減少する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置10によれば、両内部材12、13が、液室24の外側に配設された連結体29を介して互いに接続されているので、例えば前記軸方向の振動や、前記径方向の振動などが入力されたときに、仕切り部材16を変形させなくても、外部材11と内部材12、13とを相対的に変位させることができる。したがって、仕切り部材16を、弾性部材のような分割液室24a、24bの液圧変動に応じて変形し易い材料に代えて、分割液室24a、24bの液圧が変動しても変形し難い材料で形成することができる。これにより、振動が入力されたときに、両分割液室24a、24bの各容積の変化量を確保して、防振装置10の減衰特性を効果的に発揮させることが可能になり、防振装置10の大型化を抑えつつ所望する減衰特性を得やすくしてスペース効率を高めることができる。
また前述のように、仕切り部材16を変形させなくても、外部材11と内部材12、13とを相対的に変位させることができるので、本実施形態のように、仕切り部材16を、分割液室24a、24bの液圧が変動しても変形し難い材料で一体に成形し、1つの部材により形成することもできる。これにより、仕切り部材16の部品点数を低減して構造の簡素化を図ることが可能になり、仕切り部材16自体や防振装置10全体の製造コストを抑えること等ができる。
【0055】
また仕切り部材16が剛体であるので、振動が入力されたときに、仕切り部材16を変形させることなく、外部材11と内部材12、13とを相対的に変位させることが可能になり、両分割液室24a、24bの各容積の変化量を効果的に確保することができる。
【0056】
また、外部材11および仕切り部材16の全体が一体に形成されているので、この防振装置10の構造の更なる簡素化を図ることができる。
また、外部材11および仕切り部材16の全体が一体に形成されているので、簡素な構造を維持しつつ仕切り部材16と外筒体との間の固定強度を高めることが可能になり、この防振装置10の耐久性を確実に向上させることができる。
【0057】
また、両弾性体14、15それぞれが脚部14b、15bを備えているので、この防振装置10を、振動発生部と振動受部との間に介在させ、この防振装置10に、外部材11を内部材12、13に対して前記軸方向の他方側に変位させるような初期荷重が加えられたときに、両弾性体14、15の各脚部14b、15bを圧縮変形させることができる。したがって、例えば初期荷重が加えられたときに、両弾性体14、15が引張変形させられるような場合などに比べて、この防振装置10の耐久性を向上させることができる。
【0058】
また、両弾性体14、15それぞれの脚部14b、15bの前記軸線Oに対する各傾斜角度が、互いに同等となっているので、例えばこの防振装置10に前記軸方向の振動が入力されたとき等に、両弾性体14、15の各脚部14b、15bの変形量を同等にすることができる。これにより、例えば両弾性体14、15のうちの片方だけが早期に劣化してしまうのを抑えること等が可能になり、この防振装置10の耐久性を向上させることができる。
またこのように、両弾性体14、15の各脚部14b、15bの変形量を同等にすることができるので、第1脚部14bの変形により第1分割液室24aの容積が変化させられる変化量(第1弾性体14によるポンプ力)と、第2脚部15bの変形により第2分割液室24bの容積が変化させられる変化量(第2弾性体15によるポンプ力)と、を同等にし易くすることができる。したがって、両弾性体14、15が変形したときに、制限通路25内に液体を効果的に流通させることが可能になり、高い減衰特性を発揮させることができる。
【0059】
また、第1弾性体14および第2弾性体15に、装着筒20、21が各別に固着されているので、第1連結部材10a、第2連結部材10bおよび第3連結部材10cを各別に成形した後、これらの連結部材10a、10b、10cを組み付けることで、防振装置本体28を形成することが可能になり、この防振装置10を容易に製造することができる。
【0060】
また制限通路25が、外部材11と第2装着筒21との間に画成されているので、部品点数の増大を抑えつつ制限通路25を形成することが可能になり、この防振装置10の構造の簡素化を確実に図ることができる。
さらに制限通路25が、第2装着筒21の小径部21bおよび段部21cにより画成されているので、第2装着筒21を単に多段筒状に形成するといった簡素な構造により制限通路25を形成することができる。
【0061】
また、小径部21bの開口端部の端面に弾性膜22が形成されているので、小径部21bの開口端部の端面と仕切り部材16の表面との間で弾性膜22を圧縮変形させて両者間のシール性を高めることができる。これにより、振動が入力され液体が制限通路25内を流通するときに、液体が制限通路25から漏出するのを効果的に抑制することが可能になり、この防振装置10の減衰特性を確実に発揮させることができる。
また弾性膜22が、小径部21bの開口端部の端面に形成されているので、第2連結部材10bと第3連結部材10cとを組み付けるときに、第2連結部材10bを外部材11内に前記軸方向に押し込む押し込み量を調整し、弾性膜22が、小径部21bの開口端部の端面と仕切り部材16の表面との間で圧縮される圧縮量を変更することで、前記シール性を調節することができる。
【0062】
また、両内部材12、13が両弾性体14、15に各別に連結されているので、液室24内でキャビテーションを起因とする異音が発生したときに、このキャビテーション異音を、第1弾性体14または第2弾性体15により吸収することができる。そして内部材12、13が、振動受部としての車体に連結されているので、前述のようにキャビテーション異音を第1弾性体14または第2弾性体15により吸収することで、例えば、車体に伝達される異音の大きさを小さくしたり、車体に異音が伝達されるのを抑制したりすること等ができる。なおこの防振装置10のように、振動が入力されたときに、両分割液室24a、24bの各容積の変化量が確保される場合には、各分割液室24a内でキャビテーションが生じ易いことから、この作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0063】
また、外部材11と連結体29との間にストッパ部33、34が設けられているので、外部材11と内部材12、13とが相対的に変位し過ぎるのを抑えることが可能になり、例えばこの防振装置10の耐久性を向上させること等ができる。
しかもストッパ部33、34が、外部材11と連結体29との間に設けられているので、この防振装置10の大型化を抑えつつストッパ部33、34を設けることが可能になり、スペース効率を一層高めることができる。
【0064】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、棒状部17、筒状部19、位置決め部23およびストッパ部33、34はなくてもよい。
【0065】
また前記実施形態では、外部材11および仕切り部材16は、全体が一体に形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、外部材と仕切り部材とが別体に形成され、外部材内に仕切り部材が装着されていてもよい。
さらに前記実施形態では、仕切り部材16は、全体が一体に形成された剛体であるものとしたが、これに限られない。例えば、仕切り部材が、剛体からなる複数の分割部材により構成されていてもよい。
【0066】
また前記実施形態では、弾性膜22は、小径部21bの開口端部の端面に設けられているものとしたが、これに限られない。例えば、弾性膜が大径部の外周面に設けられ、大径部の外周面と外部材の内周面との間で圧縮変形させられていてもよい。さらに例えば、弾性膜が、大径部の外周面および小径部の開口端部の端面のうち、少なくとも一方に設けられていてもよい。さらにまた、第1装着筒に弾性膜が形成されていてもよい。
また弾性膜22はなくてもよい。
【0067】
また前記実施形態では、制限通路25は、小径部21bおよび段部21cにより画成されているものとしたが、これに限られず、外部材と装着筒との間に画成される他の構成に適宜変更してもよい。例えば装着筒の外周面に周溝を形成し、この周溝と外部材の内周面との間に制限通路を画成してもよい。さらに、制限通路が外部材と装着筒との間に画成されていなくてもよく、例えば第3連結部材に凹設されていてもよい。
【0068】
また前記実施形態では、第1装着筒20および第2装着筒21が設けられているが、これに限られず、これらの両装着筒のうちの1つが設けられていてもよい。つまり、第1弾性体および第2弾性体のうちの少なくとも一方に、外部材内に装着された装着筒が固着されていてもよい。さらに、第1装着筒20および第2装着筒21の両方がなくてもよい。この場合、弾性体の脚部の外周部が外部材に加硫接着されていてもよい。
【0069】
また前記実施形態では、第1弾性体14および第2弾性体15それぞれの脚部14b、15bの前記軸線Oに対する各傾斜角度は、互いに同等となっているものとしたが、これに限られない。例えば、前述の各傾斜角度が互いに異なっていて、両脚部が、実質的に平行に延在していなくてもよい。
【0070】
さらに前記実施形態では、第1弾性体14および第2弾性体15はそれぞれ、外部材11側から内部材12、13側に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側から他方側に向けて延在する脚部14b、15bを備えているものとしたが、これに限られない。例えば第1脚部が、外部材側から内部材側に向かうに従い漸次、前記軸方向の一方側から他方側に向けて延在する一方で、第2脚部が、外部材側から内部材側に向かうに従い漸次、前記軸方向の他方側から一方側に向けて延在していてもよい。
【0071】
また前記実施形態では、両内部材12、13は、ボルト31、32により連結体29に固定されているものとしたが、これに限られない。例えば、内部材が連結体に接着や溶接などにより固着されていてもよい。さらに両内部材のうち、初期荷重が加えられる方向である前記軸方向の他方側に位置する第2内部材は、初期荷重が加えられた状態で、連結体の内周面に単に当接または圧接するように構成されていてもよい。
【0072】
また前記実施形態では、前記軸方向の他方側がバウンド側となり、かつ前記軸方向の一方側がリバウンド側となって、外部材11を内部材12、13に対して前記軸方向の他方側に変位させるような初期荷重が加えられるものとしたが、これに限られない。例えば、前記軸方向の一方側がバウンド側となり、かつ前記軸方向の他方側がリバウンド側となって、外部材を内部材に対して前記軸方向の一方側に変位させるような初期荷重が加えられてもよい。
さらに前記実施形態では、外部材11が振動発生部に連結され、内部材12、13が振動受部に連結されるものとしたが、これに限られるものではなく、外部材が振動受部に連結され、内部材が振動発生部に連結されてもよい。
【0073】
また、連結体29は前記実施形態に示したものに限られず、液室の外側に配設され、かつ両内部材を互いに接続する他の構成に適宜変更してもよい。例えば、連結体が振動発生部または振動受部と一体に形成されていてもよい。
【0074】
また本発明に係る防振装置10は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0075】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。