特許第6139919号(P6139919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139919
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】信号制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/08 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G08G1/08 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-44782(P2013-44782)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-174646(P2014-174646A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100084261
【弁理士】
【氏名又は名称】笹井 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 彰孝
(72)【発明者】
【氏名】泉 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 知大
【審査官】 柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−083981(JP,A)
【文献】 特開2006−268379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の道路上における横断可否を指示する信号機の灯色を制御する信号制御装置において、
信号機が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者のうち特定の個ないし群を追跡対象として検出可能な検出手段と、
前記追跡対象が道路上における横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置まで移動する状況を追跡可能な追跡手段と、
前記追跡対象が前記指定位置に到達したか否かを判定可能な判定手段と、を有し、
前記検出手段は、前記基準位置から前記指定位置に亘る範囲を少なくとも撮影可能な撮影部から逐次入力された画像に基づいて、信号機が赤信号から青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に前記基準位置を通過した歩行者の個ないし群を追跡対象として検出し、
前記判定手段により前記追跡対象が前記指定位置に到達したと判定された結果に基づいて、信号機の灯色を切り替える契機とすることを特徴とする信号制御装置。
【請求項2】
前記検出手段により、信号機が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者が検出されなかった場合には、信号機が赤信号から青信号に切り替わった時からの所定時間の経過に基づいて、信号機の灯色を切り替える契機とすることを特徴とする請求項1に記載の信号制御装置。
【請求項3】
前記所定時間は、予め定められた規定値を各種パラメータに応じて変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の信号制御装置。
【請求項4】
前記追跡手段は、前記撮影部から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段により検出された前記追跡対象が前記指定位置を通過するまでの間に、該追跡対象である歩行者の個ないし群が分離または結合した場合には、前記追跡対象の属性を引き継いだ新たな追跡対象として認識しつつ追跡することを特徴とする請求項1,2または3に記載の信号制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記撮影部から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段により検出された前記追跡対象の他、前記追跡手段により認識された新たな追跡対象がある場合には、該新たな追跡対象も含む全ての追跡対象が前記指定位置に到達した時に、該判定結果を出力することを特徴とする請求項に記載の信号制御装置。
【請求項6】
前記信号機の灯色の切り替えを制御する制御手段を別に有し、
前記制御手段は、前記判定手段からの判定結果に基づいて、歩行者向けの青信号を点滅させる制御を実行することを特徴とする請求項に記載の信号制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記判定手段からの判定結果に基づいて、歩行者向けの赤信号に切り替える制御を実行することを特徴とする請求項に記載の信号制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の道路上における横断可否を指示する信号機の灯色を制御する信号制御装置であり、特に、歩行者の横断に最適な青時間を確保するための信号制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路上の横断歩道等に備えられている歩行者用の信号機は、所定の周期ごとに青信号と赤信号とに切り替えられて、青信号から赤信号に切り替わる際には青信号が一時的に点滅するように制御されていた。ここで、歩行者向きの青信号の時間が短ければ、交通弱者の横断に支障を来す虞があり、逆に青信号の時間が長すぎても、車両の通行を過度に妨げる虞があった。
【0003】
そこで、歩行者の横断に十分配慮しつつ車両の不必要な停止を抑制するために、既に様々な信号制御装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、横断歩道付近に設定された検出エリア内の歩行者の密度や人数を逐次検出し、青信号点灯後における歩行者の密度や人数の最大値を検出し、最大値に対する逐次検出された割合が所定の閾値を下回ると青信号の点滅開始を要求する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、横断歩道の周辺等の信号待ちエリアにおける歩行者の人数を検出し、信号待ちエリアの歩行者の人数に応じて、歩行者向けの青信号の時間幅を段階的または連続的に増減する制御を行う技術が開示されている。さらに、この青信号の終盤において横断歩道に歩行者が存在する場合は、青信号の点灯時間を延長する特別な制御も行うようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4368259号公報
【特許文献2】特許第3736463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の技術では、歩行者が少ない場合には、単に歩行者が横断歩道を渡り終わるのを待つ制御と変わりがなかった。しかも、歩行者がいない時は最大値(0人)が継続することになり、歩行者向けの信号が不必要に青信号に維持され、車両の通行の妨げとなる虞があった。さらに、青信号の終盤に次々と歩行者が進入する場合(3人→2人→3人→2人等)には、徒に青信号の点灯時間が長引くことになり冗長性が増すという問題もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、あくまで信号待ちエリアの歩行者の人数に応じた制御であり、実際に横断歩道を横断している実歩行者数に応じた制御ではなかった。そのため、歩行者の歩行速度に応じた制御ができず、歩行速度の遅い交通弱者に対する特別な制御も合わせて行う必要があった。さらに、この特別な制御は、交通弱者に対してだけでなく、青信号の終盤の駆け込み等により、不必要に実行される可能性があり、制御が煩雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の有する問題点に着目してなされたものであり、歩行者の実際の横断状況を追跡して歩行者向けの信号機の灯色を制御することにより、歩行者の横断に最適な青時間を確保することができると共に、車両の円滑な通行も実現することができる信号制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]歩行者の道路上における横断可否を指示する信号機(11)の灯色を制御する信号制御装置(10)において、
信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者のうち特定の個ないし群を追跡対象として検出可能な検出手段(43)と、
前記追跡対象が道路上における横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置まで移動する状況を追跡可能な追跡手段(44)と、
前記追跡対象が前記指定位置に到達したか否かを判定可能な判定手段(45)と、を有し、
前記検出手段(43)は、前記基準位置から前記指定位置に亘る範囲を少なくとも撮影可能な撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に前記基準位置を通過した歩行者の個ないし群を追跡対象として検出し、
前記判定手段(45)により前記追跡対象が前記指定位置に到達したと判定された結果に基づいて、信号機(11)の灯色を切り替える契機とすることを特徴とする信号制御装置(10)。
【0010】
[2]前記検出手段(43)により、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者が検出されなかった場合には、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わった時からの所定時間の経過に基づいて、信号機(11)の灯色を切り替える契機とすることを特徴とする[1]に記載の信号制御装置(10)。
【0011】
[3]前記所定時間は、予め定められた規定値を各種パラメータに応じて変更可能であることを特徴とする[2]に記載の信号制御装置(10)。
【0013】
[4]前記追跡手段(44)は、前記撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段(43)により検出された前記追跡対象が前記指定位置を通過するまでの間に、該追跡対象である歩行者の個ないし群が分離または結合した場合には、前記追跡対象の属性を引き継いだ新たな追跡対象として認識しつつ追跡することを特徴とする[1],[2]または[3]に記載の信号制御装置(10)。
【0014】
[5]前記判定手段(45)は、前記撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段(43)により検出された前記追跡対象の他、前記追跡手段(44)により認識された新たな追跡対象がある場合には、該新たな追跡対象も含む全ての追跡対象が前記指定位置に到達した時に、該判定結果を出力することを特徴とする[4]に記載の信号制御装置(10)。
【0015】
[6]前記信号機(11)の灯色の切り替えを制御する制御手段(50)を別に有し、
前記制御手段(50)は、前記判定手段(45)からの判定結果に基づいて、歩行者向けの青信号を点滅させる制御を実行することを特徴とする[5]に記載の信号制御装置(10)。
【0016】
[7]前記制御手段(50)は、前記判定手段(45)からの判定結果に基づいて、歩行者向けの赤信号に切り替える制御を実行することを特徴とする[6]に記載の信号制御装置(10)。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の信号制御装置(10)によれば、検出手段(43)により、横断を開始する歩行者のうち特定の個ないし群を追跡対象として検出する。歩行者は横断歩道を渡る際に、一人だけで行動する場合(「個」と定義)もあるし、複数人で集団となって行動する場合(「群」と定義)もあり、これらの形態に応じて検出手段(43)は、特定の個ないし群を任意に選別した上で追跡対象とする。
前記検出手段(43)は、道路上における横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置に亘る範囲を少なくとも撮影可能な撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に前記基準位置を通過した歩行者の個ないし群を追跡対象として検出する。
ここでの検出は、逐次入力される現在のフレームとその前のフレームの差分に対して、画像処理では一般的な2値化(閾値処理)を行い、さらにラベリング処理によって、画像内の背景から歩行者(の個ないし群)を追跡対象として検出することができる。かかる画像処理の詳細については後述する。
なお、追跡対象を選別する上で、信号機(11)が青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に前記基準位置を通過した歩行者とすることで、要は最初に渡り始める歩行者を対象とすることになる。一般的に交通弱者は、青信号に変わった直後に横断を始めると考えられるため、このような時間による選別によって、追跡対象に交通弱者が含まれる可能性を高めることができる。
【0018】
次いで、追跡手段(44)により、追跡対象が横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置まで移動する状況を追跡する。ここで追跡手段(44)は、追跡対象である個ないし群の動きをリアルタイムで把握することになる。そして、判定手段(45)により、追跡対象が指定位置に到達したか否かを判定する。
【0019】
前記判定手段(45)によって、前記追跡対象が前記指定位置に到達したと判定されると、その判定結果に基づいて、信号機(11)の灯色を切り替える契機とする。ここでの信号機(11)の灯色の切り替えは、判定手段(45)あるいは信号制御装置(10)自体で行う必要はなく、別にある制御装置で行うようにしても良い。なお、灯色を切り替える契機とは、例えば青信号から赤信号に替える赤信号要求信号の出力のみならず、青信号の点滅を開始させる青点滅要求信号の出力も含まれる。
【0020】
このように、前記追跡対象が全て渡り終えた時点で灯色を替えることになるため、前記追跡対象に高齢者、障害者、子供等の交通弱者を含ませることにより、交通弱者がより安全に、安心して渡れる信号制御を実現することができる。また、青信号の終盤になって駆け込みで渡る歩行者が現れたとしても、このような駆け込み歩行者を前記追跡対象に含ませないことにより、灯色の切り替えが影響を受けることがなく、切り替えが著しく遅れるような事態も生じない。
【0021】
前記[2]に記載の信号制御装置(10)によれば、前記検出手段(43)により、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者が検出されなかった場合には、信号機(11)が赤信号から青信号に切り替わった時からの所定時間の経過に基づいて、信号機(11)の灯色を切り替える契機とする。
【0022】
ここでの所定時間は、車両の通行をなるべく妨げないように必要最低限の短い時間に設定すると良い。これにより、歩行者がいないときには、歩行者向けの青信号の点灯時間は最短となり、車両を効率良く流通させることができる。
【0023】
ただし、前記[3]に記載したように、前記所定時間は、予め定められた規定値を各種パラメータに応じて変更可能とすると良い。ここで規定値とは、初期設定された基準となる時間であり、前述したように必要最低限の短い時間とするが、その時々の曜日や時間、季節等の各種パラメータに応じて、例えば歩行者数が多いと予想される週末には規定値より長い所定時間に設定する等、臨機応変に変更することができる。
【0028】
また、前記[4]に記載の信号制御装置(10)によれば、前記追跡手段(44)は、前記撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段(43)により検出された追跡対象が前記指定位置を通過するまでの間に、該追跡対象である歩行者の個ないし群が分離または結合した場合には、前記追跡対象の属性を引き継いだ新たな追跡対象として認識しつつ追跡する。
このように、追跡対象の様々な動きに応じて、最初に検出した追跡対象を漏れなく正確に追跡することができる。
【0029】
さらに、前記[5]に記載の信号制御装置(10)によれば、前記判定手段(45)は、前記撮影部(20)から逐次入力された画像に基づいて、前記検出手段(43)により検出された追跡対象の他、前記追跡手段(44)により認識された新たな追跡対象がある場合には、該新たな追跡対象も含む全ての追跡対象が前記指定位置に到達した時に、該判定結果を出力する。
これにより、最初に検出した追跡対象の全てが無事に渡り終えた時点で、判定結果を出力することにより、該判定結果に基づいて信号機(11)の灯色を切り替える制御を行うことが可能となる。
【0030】
ここで、信号機(11)の灯色を切り替える制御は、前述したように信号制御装置(10)自体で行う必要はないが、信号制御装置(10)の構成の一部とする制御手段(50)によって実現しても良い。
前記[6]に記載の信号制御装置(10)によれば、前記制御手段(50)は、前記判定手段(45)からの判定結果に基づいて、歩行者向けの青信号を点滅させる制御を実行する。
あるいは、前記[7]に記載したように、前記青信号の点滅に加えて、青信号を赤信号に切り替える制御も実行するようにしても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る信号制御装置によれば、歩行者の実際の横断状況を追跡して歩行者向けの信号機の灯色を制御することにより、歩行者の横断に最適な青時間を確保することができると共に、車両の円滑な通行も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の制御で用いる係数テーブルを示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る信号制御装置による画像処理の一例を示す一連の画面遷移図である。
図4】本発明の実施の形態に係る信号制御装置による画像処理の一例を示すイメージ図である。
図5】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の処理内容の変形例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の領域検出処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係る信号制御装置の追跡判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る信号制御装置10は、歩行者の道路上における横断可否を指示する信号機11の灯色を制御するものである。以下、横断歩道における歩行者専用の信号機11に適用する場合について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る信号制御装置10の構成例を示すブロック図であり、信号制御装置10は、撮影部20と、設定部30と、処理部40と、それに信号制御装置50と、を備えている。ここで信号制御装置50は、信号機11の灯色の切り替え等を総合的に制御する「制御手段」であり、本来は信号制御装置10と独立して別のシステムを構成するものであるが、信号制御装置10の一部として捉えることもできる。この信号制御装置50については、周知のシステムであるので詳細な説明は省略する。
【0035】
撮影部20は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSセンサ等を搭載した一般的なビデオカメラの他、赤外線ビデオカメラ等を主とする構成である。撮影部20は、横断歩道の周辺、例えば、信号機11を設置したポスト等の適所に、横断歩道において歩行者の横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置までを撮影エリアとしてカバーし得るように配置される。
【0036】
撮影部20で撮影された画像(映像)は、処理部40に逐次入力されて記憶され、後述する人検出部43等によって画像処理される。なお、撮影部20を構成するビデオカメラは、例えば、1秒間に30フレームを撮影するものが一般的であるが、1秒間のフレーム数を任意に変更可能な可変フレームレートのものを用いても良い。また、ビデオカメラによる撮影は、例えば信号機11が青信号に切り替わった時点や、その少し前の時点等と、所定のタイミングで開始するように制御すると良い。
【0037】
本信号制御装置10では、撮影部20で撮影された画像の画像処理によって、追跡対象として検出した全ての歩行者が横断歩道を渡り終えたタイミングで、信号機11の灯色を切り替える契機、すなわち、信号制御装置50を介して信号機11を青信号から赤信号に替える予告の青点滅に切り替える。ただし、信号機11が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者が検出されなかった場合には、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時から所定時間の経過に基づいて、信号機11の灯色を再び青信号から赤信号に切り替える契機としている。
【0038】
設定部30は、前述の所定時間を、予め定められた規定値から各種パラメータに応じて変更可能なものであり、例えば、外部入力手段としての形態で処理部40に接続されている。ここで各種パラメータとしては、規定値に乗算する係数項目として、本実施の形態では、図2の係数テーブルに示す「曜日」、「時間」、「季節」が定められている。なお、設定部30によって、後述する画像処理における検出領域や、基準位置および指定位置等についても適宜変更できるようにしても良い。
【0039】
各係数項目の種類、ないし各係数項目ごとの具体的な係数は、設定部30による所定の入力操作によって適宜変更することができる。例えば、「曜日」が日曜日であれば係数1.1が規定値に乗算され、「時間」が0時台であれば係数0.5がさらに乗算され、「季節」が年末年始であれば係数2.0がさらに乗算されて、具体的な所定時間が算出される。なお、規定値は、歩行者がいない場合に車両の通行の妨げとならないように、なるべく最低限の値(要は短い時間)に予め定めると良い。
【0040】
設定部30によって設定されたパラメータ31は処理部40に記憶され、また、処理部40内にある時計41によってリアルタイムで日時や曜日、季節が計測されており、これらのデータに基づき、処理部40にある係数算出部42によって、その都度、前述の所定時間が算出される。そして、横断歩道を渡る歩行者がいなかった場合には、算出された所定時間が経過した時点で、信号制御装置50を介して信号機11が青信号から青点滅に切り替わるように制御される。
【0041】
処理部40は、各種制御の中枢的機能を果たすCPU(中央処理装置)と、CPUの実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROMと、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM、その他、インターフェース等を主要部とするマイクロコンピュータから成る。この処理部40は、代表的な機能として、人検出部43と、人追跡部44と、判定部45とを、有している。これらは、画像処理の手法によって歩行者を検出したり追跡するための機能である。
【0042】
人検出部43は、信号機11が赤信号から青信号に切り替わってから、横断歩道の横断を開始する歩行者のうち特定の個ないし群を追跡対象として検出可能な「検出手段」である。
人追跡部44は、前記追跡対象が横断歩道(道路)上における横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置まで移動する状況を追跡可能な「追跡手段」である。
ここで、横断開始側の基準位置は、図3の画面遷移図に示すように、前記撮影部20から入力され画像処理を行う画像内の横断歩道上で、横断開始側に任意に定めた線が相当する。横断終了側の指定位置も、同じく画像内の横断歩道上で、横断終了側に任意に定めた線が相当する。
【0043】
判定部45は前記追跡対象が前記指定位置に到達したか否かを判定可能な「判定手段」である。
前記判定部45により前記追跡対象が前記指定位置に到達したと判定された結果に基づいて、信号機11の灯色を切り替える契機とする。すなわち、前記判定部45により前記追跡対象が前記指定位置に到達したと判定されると、判定部45から信号制御装置50に対して、信号機11の青信号の点滅を開始させる青点滅要求信号が出力されるように設定されている。ここで、青点滅要求信号の代わりに、青信号から赤信号に替える赤信号要求信号を出力しても良い。
【0044】
詳しく言えば人検出部43は、前記撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に、前記基準位置を通過した歩行者の個ないし群を追跡対象として検出する。ここでの具体的な画像処理については後述する。
【0045】
また、人追跡部44は、前記撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、前記人検出部43により検出された前記追跡対象が前記指定位置を通過するまでの間に、該追跡対象である歩行者の個ないし群が分離または結合した場合には、前記追跡対象の属性を引き継いだ新たな追跡対象として認識しつつ追跡する。ここでの具体的な画像処理についても後述する。
【0046】
そして、判定部45は、前記撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、前記人検出部43により検出された前記追跡対象の他、前記人追跡部44により認識された新たな追跡対象がある場合には、該新たな追跡対象も含む全ての追跡対象が前記指定位置に到達した時に、該判定結果を出力するように設定されている。ここでの具体的な画像処理についても後述する。
【0047】
また、図1において信号機11は、信号制御装置50の制御によって、図示省略した車両用信号機が青信号の時は赤信号であり、車両用信号機は所定の時間が経過すると、黄信号になってから赤信号に切り替わり、これと同時に信号機11は赤信号から青信号に切り替わる。そして、前述したように全ての追跡対象が指定位置に到達すると、青点滅してから赤信号に切り替わり、これと同時に車両用信号機は青信号に切り替わる。
【0048】
次に、本実施の形態に係る信号制御装置10の作用を画像処理を中心に説明する。
図5は、処理部40の処理内容を示すフローチャートである。本ルーチンは、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時に開始される(ステップS100)。なお、青信号への切り替わりは、信号制御装置50から得る情報より判断する。そして、先ずステップS101で青点滅要求信号をOFFとし、次のステップS102では青点滅フラグをOFFとする。
【0049】
続いて、ステップS103に進むと、撮影部20から入力された画像(映像)を取り込み、今回の画像処理の対象とする。そして、ステップS104では、前記ステップS103で取り込んだ画像と指定フレーム前の画像との差分を取る。なお、差分を取る画像を、例えば一つ前など近いフレームとせずに、指定フレーム前の画像とするのは、歩行者の歩行速度が遅いと、近いフレームの差分では移動領域が出にくいためである。
【0050】
次いで、ステップS105に進むと、前記ステップS104で生成した差分画像を、所定の閾値で例えば輝度0と輝度2(8bit)に2値化する。このような2値化(閾値処理)により、画像内の各画素の明るさを一定の基準値で例えば黒色と白色とに択一的に変換することができる。ここで、2値化した画像内において、背景から歩行者(の個ないし群)を追跡対象として検出するためにラベリング処理を行う。
【0051】
ラベリング処理とは、2値化した画像内で互いに連結している各画素に同じラベル(番号)を属性として付加する処理であり、複数の領域をグループとして分類すると共に特定の領域を抽出することができる。そこで、ステップS106により、前記ステップS105で生成した2値画像をラベリング処理することで、歩行者(の個ないし群)に相当する領域の座標や面積を求める。これにより、画像内において、背景から歩行者(の個ないし群)を追跡対象として検出することができ、後述するが追跡対象は、所定秒ごとに区分A,B,C…というグループ属性が付加される。なお、具体的なラベリング処理の手法には様々な種類があるが、既に公知であるので詳細な説明は省略する。
【0052】
次いで、ステップS107では領域検出処理を実行し、さらに、ステップS108では追跡判定処理を実行する。これら各処理について詳しくは後述する。その後、ステップS109に進んで、横断歩道を横断している追跡対象(例えば区分A)がいるか否かを判定する。ここで、追跡対象がいなければ(ステップS109でYes)、ステップS110に移行して所定時間が経過したか否かを判定する。一方、追跡対象がいれば(ステップS109でNo)、ステップS113に移行して追跡対象の横断が終了したか否かを判定する。
【0053】
ステップS110の判定で、所定時間が経過していれば(ステップS110でYes)、ステップS111で青点滅フラグをONにして、続くステップS112で青点滅要求信号をONにする。その後、ステップS116に移行する。一方、所定時間が経過していなければ(ステップS110でNo)、そのままステップS116にジャンプする。ここで、所定時間とは、横断歩道を渡る歩行者がいなかった場合の前述した所定時間である。
【0054】
また、ステップS113の判定で、追跡対象(例えば区分A)の横断が終了していれば(ステップS113でYes)、ステップS114で青点滅フラグをONにして、続くステップS115で青点滅要求信号をONにする。一方、追跡対象(例えば区分A)の横断が終了しておらず、未だ基準位置ないし指定位置の間に存在すれば(ステップS113でNo)、そのままステップS116にジャンプする。
【0055】
ステップS116に進むと、信号機11が青信号であるか否かを判定する。ここで、信号機11がまだ青信号であれば(ステップS116でYes)、前述したステップS103まで戻って、それ以降の処理を繰り返す。一方、信号機11が青信号でなければ(ステップS116でNo)、ステップS117で青点滅要求信号をONにして、本ルーチンの処理を一旦終了し(ステップS118)、再びステップS100の待機状態となる。
【0056】
本ルーチンによれば、信号機11が青信号に切り替わった後、例えばx秒間に検出した渡り始めの歩行者を追跡対象(区分A)として追跡する。そして、追跡対象(区分A)の全てが渡り終えたら青点滅要求信号を伝達する。また、追跡対象(区分A)が発生しない場合には、所定時間の経過後に青点滅要求信号を伝達する。これにより、歩行者の横断に最適な青時間を確保することができると共に、車両の円滑な通行も実現することができる。
【0057】
図6は、処理部40の処理内容の変形例を示すフローチャートである。本ルーチンも、前述した図5の処理と同様に、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時に開始される(ステップS200)。そして、先ずステップS201で青点滅要求信号をOFFとし、次のステップS202では赤信号要求信号をOFFとする。さらに、ステップS203で青点滅フラグをOFFとし、次のステップS204では赤フラグをOFFとする。
【0058】
次いで、ステップS205に進むと、撮影部20から入力された画像(映像)を取り込み、今回の画像処理の対象とする。そして、ステップS206では、前記ステップS205で取り込んだ画像と、指定フレーム前の画像との差分を取る。ここで、差分を取る画像を、例えば一つ前など近いフレームとせずに、指定フレーム前の画像とするのは、前記ステップS104の場合と同様に、歩行者の歩行速度が遅いと近いフレームの差分では移動領域が出にくいためである。
【0059】
そして、ステップS207に進むと、前記ステップS206で生成した差分画像を、所定の閾値で例えば輝度0と輝度2(8bit)に2値化する。さらに、ステップS208では、前記ステップS207で生成した2値画像をラベリング処理する。ここでも、前記ステップS106の場合と同様に、画像内で背景から検出した追跡対象に対して、所定秒ごとに区分A,B,C…というグループ属性を付加し、各追跡対象ごとに座標や面積を求める。
【0060】
次いで、ステップS209では領域検出処理を実行し、さらに、ステップS210では追跡判定処理を実行する。これら各処理について詳しくは後述する。その後、ステップS211に進んで、青点滅フラグがOFFであるか否かを判定する。ここで、青点滅フラグがOFFであれば(ステップS211でYes)、ステップS212に移行して横断歩道を横断している追跡対象(区分A)がいるか否かを判定する。一方、青点滅フラグがOFFでなければ(ステップS211でNo)、ステップS219に移行して追跡対象(区分B)の横断が終了したか否かを判定する。
【0061】
ステップS212の判定で、追跡対象(区分A)がいなければ(ステップS212でYes)、ステップS213に移行して所定時間が経過したか否かを判定する。一方、追跡対象(区分A)がいれば(ステップS212でNo)、ステップS216に移行して追跡対象(区分A)の横断が終了したか否かを判定する。
【0062】
ステップS213の判定で、所定時間が経過していれば(ステップS213でYes)、ステップS214で青点滅フラグをONにして、次のステップS215で青点滅要求信号をONにする。その後、ステップS223に移行する。一方、所定時間が経過していなければ(ステップS213でNo)、そのままステップS223にジャンプする。ここで、所定時間とは、横断歩道を渡る歩行者がいなかった場合の前述した所定時間である。
【0063】
また、ステップS216の判定で、追跡対象(例えば区分A)の横断が終了していれば(ステップS216でYes)、ステップS217で青点滅フラグをONにして、次のステップS218で青点滅要求信号をONにする。一方、追跡対象(例えば区分A)の横断が終了しておらず、未だ基準位置ないし指定位置の間に存在すれば(ステップS216でNo)、そのままステップS223にジャンプする。
【0064】
さらに、前記ステップS211からステップS219に移行すると、追跡対象(区分B)の横断が終了したか否かを判定する。ここで、追跡対象(区分B)の横断が終了していれば(ステップS219でYes)、ステップS220で赤フラグをONにして、次のステップS221で赤信号要求信号をONにする。さらに、ステップS222で青点滅フラグをONにして、ステップS223に移行する。一方、追跡対象(区分B)の横断が終了していなければ(ステップS219でNo)、ステップS222にジャンプして青点滅フラグをONにし、ステップS223に移行する。
【0065】
その後、ステップS223に進むと、信号機11が青信号あるいは青点滅信号であるか否かを判定する。ここで、信号機11が青信号あるいは青点滅信号であれば(ステップS223でYes)、前述したステップS205まで戻って、それ以降の処理を繰り返す。一方、信号機11が青信号あるいは青点滅信号でなければ(ステップS223でNo)、ステップS224で青点滅要求信号をONにして、次のステップS225で赤信号要求信号をONにして、本ルーチンの処理を一旦終了し(ステップS226)、再びステップS200の待機状態となる。
【0066】
本ルーチンによれば、信号機11が青信号に切り替わった後、例えばx秒間に検出した渡り始めの歩行者を追跡対象(区分A)として追跡する。また、x秒経過後からy秒間に検出した次の渡り始めの人を追跡対象(区分B)として追跡する。そして、追跡対象(区分A)の全てが渡り終えたら青点滅要求信号を伝達する。追跡対象(区分A)が発生しない場合には、所定時間の経過後に青点滅要求信号を伝達する。また、青点滅要求信号の伝達後、追跡対象(区分B)が全て渡り終えたら赤信号要求信号を伝達する。追跡対象(区分B)が発生しない場合には、所定時間の経過後に赤信号要求信号を伝達する。このように、追跡対象が渡り終えた判定結果に基づき、青信号の点滅を開始させるだけでなく、赤信号に切り替える契機としても良い。
【0067】
図7は、処理部40の人検出部43ないし人追跡部44による領域検出処理を示すフローチャートである。本ルーチンは、図5で説明した処理内容におけるステップS107、図6で説明した処理内容におけるステップS209に相当する。本ルーチンは、前述した画像のラベリング処理の一環として開始され(ステップS300)、先ずはステップS301で変数iを0で初期化する。
【0068】
次いで、ステップS302に進むと、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時点の処理開始からx秒経過したか否かを判定する。ここで、未だx秒経過していなければ(ステップS302でYes)、ステップS303で、現在区分(変数)を(区分A)とする。一方、既にx秒経過していれば(ステップS302でNo)、ステップS304でy秒経過したか否かを判定する。
【0069】
そして、未だy秒経過していなければ(ステップS304でYes)、ステップS305に進み、現在区分(変数)を(区分B)とする。一方、既にy秒経過していれば(ステップS304でNo)、ステップS306に進んで、現在区分(変数)を(区分C)とする。
【0070】
このようなラベリング処理においては、後述するが図3の画面遷移図に示すように、処理開始から所定秒経過する毎にグループ属性(区分)が付加された領域は、1つずつに限られることはない。すなわち、実際の画像内において歩行者として検出された領域が互いに分離している場合には、各区分(A,B…)内でさらに枝番(A1,A2…)が付加され、それぞれ別々の個ないし群として識別される。
【0071】
その後、ステップS307に進むと、前記変数iがラベル数に達しているか否かを判定する。ここで、前記変数iがラベル数に達していれば(ステップS307でNo)、そのまま本ルーチンの処理を終了する(ステップS331)。一方、前記変数iがラベル数に達していなければ(ステップS307でYes)、ステップS308に進み、ラベルiに一番近い追跡中の領域を検索する。なお、「一番近い」か否かを判断する距離とは、例えば、それぞれの領域毎の中点の間の距離とする。
【0072】
次いで、ステップS309では、前記ステップS308で検索した追跡中の領域とラベルiとの距離が、予め設定した追跡距離(パラメータ)より近いか否かを判定する。ここで、距離が近ければ(ステップS309でYes)、ステップS310に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域に今回関連付けられた領域があるか否かを判定する。一方、距離が遠いか、または追跡中の領域がなければ(ステップS309でNo)、後述するステップS323に進む。
【0073】
前記ステップS310の判定で、前記ステップS308で検索した追跡中の領域に今回関連付けられた領域があれば(ステップS310でYes)、ステップS311に進んで、ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっているか否かを判定する。一方、今回関連付けられた領域がなければ(ステップS310でNo)、ステップS322に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域にラベルiを関連付けた後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0074】
また、前記ステップS311の判定で、ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっていれば(ステップS311でYes)、ステップS312に進んで、ラベルiを新規検出領域として関連付け済みとして追跡中の領域に追加する。続くステップS313では、前記ステップS312で追加した領域の区分を現在区分(前記ステップS302〜S306で設定したもの)とした後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0075】
一方、前記ステップS311の判定で、ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっていなければ(ステップS311でNo)、ステップS314に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域とラベルiとの距離が、予め設定した結合判定距離(パラメータ)より近いか否かを判定する。
【0076】
ここで、結合判定距離(パラメータ)より近ければ(ステップS314でYes)、ステップS315で、前記ステップS308で検索した追跡中の領域に関連付けた領域とラベルiとを結合して、両者を組み合わせた最大矩形となるように関連付けを更新する。その後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0077】
一方、結合判定距離(パラメータ)より遠ければ(ステップS314でNo)、ステップS316に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域から、ラベルiが関連付け領域よりも遠いか否かを判定する。ここで、遠ければ(ステップS316でYes)、ステップS317で、ラベルiを新規検出領域として関連付け済みとして追跡中の領域に追加し、続くステップS318で、前記ステップS317で追加した領域の区分を現在区分(前記ステップS302〜S306で設定したもの)とする。
【0078】
このように、追跡中の領域(追跡対象)が分離した場合には、図4(a)のイメージ図にも示すように、それぞれ同じ区分(例えばA)の属性が引き継がれることになる。
その後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0079】
また、前記ステップS316の判定で、前記ステップS308で検索した追跡中の領域から、ラベルiが関連付け領域よりも近ければ(ステップS316でNo)、ステップS319に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域に関連付けた領域を、新規検出領域として関連付け済みとして追跡中の領域に追加する。続くステップS320で、前記ステップS308で検索した追跡中の領域にラベルiを関連付けるが、ステップS321で、前記ステップS319で追加した新規領域の区分を、前記ステップS320の領域の区分と同じとする。その後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0080】
次に、前記ステップS309に戻って、このステップS309の判定結果がNoのときは、ステップS323に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域にラベルiの領域が重なるか否かを判定する。ここで、重なれば(ステップS323でYes)、ステップS324に進んで、前記ステップS308で検索した追跡中の領域にラベルiを関連付けた後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。一方、重ならなければ(ステップS323でNo)、ステップS325に進んで、ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっているか否かを判定する。
【0081】
ここで、前記ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっていれば(ステップS325でYes)、ステップS326で、ラベルiを新規検出領域として関連付け済みとして追跡中の領域に追加する。さらに、ステップS327で、前記ステップS326で追加した新規領域の区分を現在区分(前記ステップS302〜S306で設定したもの)とした後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0082】
一方、前記ラベルiの領域が領域検出範囲の外枠と重なっていなければ(ステップS325でNo)、ステップS328で、ラベルiを新規検出領域として関連付け済みとして追跡中の領域に追加する。さらに、ステップS329で、前記ステップS328で追加した新規領域の区分を現在区分(前記ステップS302〜S306で設定したもの)とした後、ステップS330で変数iに1を加算してから、前記ステップS307まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0083】
図8は、処理部40の人追跡部44ないし判定部45による追跡判定処理を示すフローチャートである。本ルーチンは、図5で説明した処理内容におけるステップS108、図6で説明した処理内容におけるステップS210に相当する。本ルーチンも、前述した画像のラベリング処理の一環として開始され(ステップS400)、先ずはステップS401で変数iを0で初期化する。
【0084】
次いで、ステップS402に進むと、前記変数iが追跡中の領域数より多いか否かを判定する。ここで、多ければ(ステップS402でNo)、そのまま本ルーチンの処理を終了する(ステップS415)。一方、少なければ(ステップS402でYes)、ステップS403に進んで、追跡中の領域iに関連付け領域があるか否かを判定する。
【0085】
ここで、新規検出領域であれば(ステップS403でYes)、ステップS404で、追跡中の領域iの見失い数(変数)を0で初期化してから、ステップS405に進む。一方、関連付け領域がなければ(ステップS403でNo)、ステップS407で、追跡中の領域iに一番近い追跡中の領域を検索してから、ステップS408に進む。なお、ここで「一番近い」か否かを判断する距離は、前記ステップS308の場合と同様に、例えば、それぞれの領域毎の中点の間の距離とする。
【0086】
そして、ステップS405に進むと、追跡中の領域iが指定位置(パラメータ)を越えているか否かを判定する。ここで、指定位置を越えていれば(ステップS405でYes)、ステップS406に進み、追跡中の領域iの区分を追跡の対象外(削除しても良い)とする。その後、ステップS414で前記変数iに1を加算してから、前記ステップS402まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。一方、追跡中の領域iが未だ指定位置を越えていなければ(ステップS405でNo)、そのままステップS414に進み前記変数iに1を加算してから、前記ステップS402まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0087】
次に、前記ステップS407に戻って、追跡中の領域iに一番近い追跡中の領域を検索してから、ステップS408に進むと、前記ステップS407で検索した領域との距離が予め設定した結合距離(パラメータ)以内であるか否かを判定する。ここで、結合距離以内であれば(ステップS408でYes)、ステップS409で、追跡中の領域iと前記ステップS407で検索した領域の区分を優位側で統一して、続くステップS410で、追跡中の領域iと前記ステップS407で検索した領域を1つの領域として結合する。
【0088】
前記ステップS409にて「優位側で統一」とは、図4(b)のイメージ図にも示すように、異なる領域(追跡対象)のうち、経時的に早い方の区分(A>B>C>対象外)で統一されるという意味である。また、前記ステップS410にて、1つの領域として結合することにより、その結果、追跡中の領域である追跡対象の数は1つ減ることになる。
その後、ステップS414で前記変数iに1を加算してから、前記ステップS402まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0089】
また、前記ステップS407で検索した領域と追跡中の領域iとの距離が結合距離以内でなければ(ステップS408でNo)、ステップS411で、追跡中の領域iの見失い数(変数)が予め定めた基準値(パラメータ)以下であるか否かを判定する。ここで、基準値以下であれば(ステップS411でYes)、続くステップS412で、追跡中の領域iの見失い数(変数)に1を加える。その後、ステップS414で前記変数iに1を加算してから、前記ステップS402まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0090】
一方、追跡中の領域iの見失い数(変数)が基準値以下でなければ(ステップS411でNo)、ステップS413で、追跡中の領域iを削除する(行方不明と認定する)。その後、ステップS414で前記変数iに1を加算してから、前記ステップS402まで戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0091】
図3は、前述した画像処理において追跡対象が移動する状況を処理部40の表示ディスプレイ上に示すイメージ図である。図3(a)〜(h)に示すように、画面上にて追跡対象は、信号機11が青信号に切り替わった時点から所定秒ごとに検出されつつ追跡される。各画面は、撮影部20から逐次入力された画像を加工したものであり、背景である横断歩道の上辺が基準位置、下辺が指定位置となっている。これらの具体的な位置は、前述したように設定部30によって適宜変更することが可能である。
【0092】
図3に示す例では、同図(a)が青信号に切り替わった時点であり、この時点では未だ横断歩道上に追跡対象は現れていない。その後、同図(b)〜(c)に示すx秒経過時点までに、追跡対象(区分A)の2つ(A1,A2)が出現し、続く同図(d)〜(e)に示すy秒経過までの間に、新たな追跡対象(区分B)の3つ(B1,B2,B3)が出現する。なお、同図(f)に示すy秒経過後に出現した新たな領域(区分C)以降については、ステップS226で終了するまで追跡対象を検出する。
【0093】
そして、図3(g)に示すように、最初の追跡対象(区分A)が全て指定位置に到達した時に、当該時点で青点滅要求信号を信号制御装置50に出力する。さらに、図3(h)に示すように、次の追跡対象(区分B)が全て指定位置に到達した時に、赤信号要求信号を信号制御装置50に出力する。ここでの赤信号要求信号の出力は、前述した図6のフローチャートのステップS221に相当する。このように、前記判定部45の制御により、信号制御装置50に赤信号要求信号を出すこともできる。
【0094】
以上に説明した本実施の形態(変形例を含む)に係る信号制御装置10によれば、人検出部43により、横断を開始する歩行者のうち特定の個ないし群を追跡対象として検出する。歩行者は横断歩道を渡る際に、一人だけで行動する場合もあるし、複数人で集団となって行動する場合もあり、これらの形態に応じて人検出部43は、特定の個ないし群を任意に選別した上で追跡対象とする。
【0095】
次いで、人追跡部44により、追跡対象が横断開始側の基準位置から横断終了側の指定位置まで移動する状況を追跡する。ここで人追跡部44は、追跡対象である個ないし群の動きをリアルタイムで把握することになる。そして、判定部45により、追跡対象が指定位置に到達したか否かを判定する。
【0096】
判定部45によって、追跡対象が指定位置に到達したと判定されると、その判定結果に基づいて、信号機11の灯色を切り替える契機とする。ここでの信号機11の灯色の切り替えは、判定部45あるいは信号制御装置10自体で行う必要はなく、別にある信号制御装置50で行うようにしても良い。なお、灯色を切り替える契機とは、前述したように、青信号から赤信号に替える赤信号要求信号の出力のみならず、青信号の点滅を開始させる青点滅要求信号の出力も含まれる。
【0097】
このように、前記追跡対象が全て渡り終えた時点で灯色を替えることになるため、前記追跡対象に高齢者、障害者、子供等の交通弱者を含まれる場合には、交通弱者がより安全に、安心して渡れる信号制御を実現することができる。また、青信号の終盤になって駆け込みで渡る歩行者が現れたとしても、このような駆け込み歩行者を前記追跡対象に含ませないことにより、灯色の切り替えが影響を受けることがなく、切り替えが著しく遅れるような事態も生じない。
【0098】
また、人検出部43により、信号機11が赤信号から青信号に切り替わってから横断を開始する歩行者が検出されなかった場合には、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時からの所定時間の経過に基づいて、信号機11の灯色を切り替える契機とする。ここでの所定時間は、前述したように、車両の通行をなるべく妨げないように必要最低限の短い時間に設定すると良い。これにより、歩行者がいないときには、歩行者向けの青信号の点灯時間は最短となり、車両を効率良く流通させることができる。
【0099】
前記所定時間は、設定部30により予め定められた規定値を各種パラメータに応じて変更することができる。ここで規定値とは、初期設定された基準となる時間であり、前述したように必要最低限の短い時間とするが、図2で説明したように、その時々の曜日や時間、季節等の各種パラメータに応じて、例えば歩行者数が多いと予想される週末には規定値より長い所定時間に設定する等、臨機応変に変更することができる。
【0100】
前述した各手段による制御を実現するために、本実施の形態では、横断歩道の状況を1つの撮影部20だけで確認できる画像処理を行っている。すなわち、前記人検出部43は、基準位置から指定位置に亘る範囲を少なくとも撮影可能な撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、信号機11が赤信号から青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に基準位置を通過した歩行者の個ないし群を追跡対象として検出する。
【0101】
なお、追跡対象を選別する上で、信号機11が青信号に切り替わった時から所定秒経過するまでの間に基準位置を通過した歩行者とすることで、要は最初に渡り始める歩行者を対象とすることになる。一般的に交通弱者は、青信号に変わった直後に横断を始めると考えられるため、このような時間による選別によって、追跡対象に交通弱者が含まれる可能性を高めることができる。
【0102】
また、人追跡部44は、撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、人検出部43により検出された追跡対象が指定位置を通過するまでの間に、該追跡対象である歩行者の個ないし群が分離または結合した場合には、追跡対象の属性を引き継いだ新たな追跡対象として認識しつつ追跡する。このように、追跡対象の様々な動きに応じて、最初に検出した追跡対象を漏れなく正確に追跡することができる。
【0103】
さらに、判定部45は、撮影部20から逐次入力された画像に基づいて、人検出部43により検出された追跡対象の他、人追跡部44により認識された新たな追跡対象がある場合には、該新たな追跡対象も含む全ての追跡対象が指定位置に到達した時に、該判定結果を出力する。これにより、最初に検出した追跡対象の全てが無事に渡り終えた時点で、判定結果を出力することにより、該判定結果に基づいて信号機11の灯色を切り替える制御を行うことが可能となる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。なお、道路は横断歩道に限られることなく、歩行者が横断可能な様々な道路や踏切等も該当し、信号機11も歩行者用専用に限られることなく、車両との兼用であっても良い。また、歩行者には、車椅子や自転車等を含めても良い。
【0105】
また、前述した各手段による制御を実現するための歩行者の検出に関しては、赤外線、超音波センサ、レーザー光による検出等と、画像処理以外の技術を用いても良い。
なお、歩行者向け青信号を継続する最長時間を予め設定しておき、何らかの理由で追跡対象の指定位置への到達を確認できなくても、最長時間の経過によって青点滅ないし赤信号に切り替えるように設定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、歩行者の道路上における横断可否を指示する信号機の灯色を制御する信号制御装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
10…信号制御装置
11…信号機
20…撮影部
30…設定部
40…処理部
41…時計
42…係数算出部
43…人検出部
44…人追跡部
45…判定部
50…信号制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8