(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
(伸線機100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る伸線機100の構成を示す模式図である。また、
図2は、該実施形態に係る伸線機100を制御する制御ユニット200の構成を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態において、伸線機100は、筐体12と、巻出ユニット20と、伸線ユニット40及び90と、巻取ユニット60と、各ユニットを制御する制御ユニット200を備えて構成される。伸線機100においては、金属線10が送り出され、伸線され、巻き取られる経路(以下「通過経路」という。)に沿って、上流側から下流側に(
図1における左から右に)、巻出ユニット20、伸線ユニット40及び90並びに巻取ユニット60が順番に設けられている。そして、伸線機100は、巻出ユニット20から送り出された金属線を、各伸線ユニット40及び90において、順次、その径を縮小して伸線し、伸線された金属線10を、巻取ユニット60において巻き取る。
【0018】
制御ユニット200は、伸線機100の動作を制御する。制御ユニット200は、システムコントローラ110と、巻出ユニットコントローラ120と、伸線ユニットコントローラ140と、巻取ユニットコントローラ160とを有して構成される。システムコントローラ110は、巻出ユニットコントローラ120、伸線ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160と接続されており、各ユニットコントローラを統括的に制御する。
【0019】
巻出ユニットコントローラ120、伸線ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160は、それぞれ、巻出ユニット20、伸線ユニット40及び90、並びに巻取ユニット60に設けられた各種構成と接続されており、各ユニットを制御する。なお、
図2では、伸線ユニットコントローラ140が1つしか図示されていないが、伸線ユニットコントローラ140は、n段(nは正の整数)の伸線ユニット40−1〜n及び90のそれぞれについて設けられている。
【0020】
このように、制御ユニット200に設けられた、システムコントローラ110並びに巻出ユニットコントローラ120、伸線ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160が、巻出ユニット20、伸線ユニット40、及び巻取ユニット60を制御して、金属線10を、巻出ユニット20から送り出し、各伸線ユニット40−1〜n及び90を通過させて伸線し、巻取ユニット60において巻き取る。
【0021】
図1及び
図2に基づいて、伸線機100の各構成について説明する。なお、本実施形態では、
図1に示すとおり、巻出ユニット20と巻取ユニット60との間に、金属線10が送り出される経路に沿って、n段の伸線ユニット40及び伸線ユニット90が、金属線10を順次伸線するように、直列に設けられている。以下、各伸線ユニット40を、巻出ユニット20から巻取ユニット60に向かって、それぞれ、伸線ユニット40−1〜nという。
【0022】
(巻出ユニット20)
巻出ユニット20は、巻出ボビン22と、ガイドローラ24、26、28及び30と、ダンサ部32とを有して構成される。巻出ユニット20において、金属線10は、巻出ボビン22、ガイドローラ24、ガイドローラ26、ダンサローラ34、ガイドローラ26、ガイドローラ28の順に、これらにわたって所定の張力がかかった状態で掛け渡されている(以下「張架」という。)。
【0023】
巻出ボビン22は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。巻出ボビン22は、巻出モータ122が接続されており、その駆動により回転する。これにより、巻出ボビン22に巻かれた金属線10が引き出され、通過経路に送り出される。本実施形態において、巻出ボビン22は、巻出モータ122によって速度制御で駆動される。すなわち、巻出ユニットコントローラ120は、巻出ボビン22が所定の速度で回転するように、巻出モータ122の駆動を制御する。
【0024】
ガイドローラ24、26、28及び30は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ24、26、28及び30は、それぞれ、金属線10をノンスリップで送り出すように所定の回数巻かれている。ガイドローラ24、26、28及び30は、伸線ユニット40によって金属線10に付加された張力によって回転し、巻出ボビン22から送り出された金属線10を、通過経路に沿って、ノンスリップで順次送り出す。
【0025】
ダンサ部32は、ダンサローラ34と、ダンサアーム36と、トルクモータ38とを有して構成されており、巻出ボビン22から送り出された金属線10に、所望の張力を付加する。
【0026】
ダンサローラ34は、棒状に形成されるダンサアーム36の一端側に回転可能に支持されている。金属線10は、ガイドローラ24、ガイドローラ26、ダンサローラ34、ガイドローラ26、ガイドローラ28の順に張架されており、ダンサローラ34によって図中下方に向かう方向に、所定の張力が付加されている。
【0027】
ダンサアーム36は図中略水平に、すなわち、ダンサローラ34によって金属線10に張力が付加される方向と略垂直方向に配置されており、この水平に位置する状態をダンサアーム36の基準位置としている。ダンサアーム36の他端側は、トルクモータ38の駆動軸に固定されて支持されており、トルクモータ38の駆動軸がダンサアーム36の回動軸となっている。
【0028】
ポテンショメータ138(
図2)は、トルクモータ38の駆動軸に設けられており、ダンサアーム36の回動角を検出する。また、ポテンショメータ138は、巻出ユニットコントローラ120と接続されており、ポテンショメータ138により検出された回動角を、伸線ユニットコントローラ140に供給する。なお、本実施形態では、ポテンショメータ138が、ダンサアーム36の回動角を検出しているが、ダンサローラ34の位置や変位、例えば、ダンサローラ34が金属線10に対して張力を付与する方向における、該ダンサローラ34の位置や変位を検出してもよい。この場合、ダンサローラ34を回動させずに、垂直移動(金属線に張力を付与する方向に直線移動)させて、金属線10に張力を付与してもよい。
【0029】
トルクモータ38は、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して、金属線10に所定の張力を付与する。すなわち、トルクモータ38は、該トルクモータ38の回転トルクを、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して金属線10に伝達して、金属線10に張力を付与する。トルクモータ38は、巻出ユニットコントローラ120と接続されており、該巻出ユニットコントローラ120の指令(トルク指令)に基づいて、所定の回転トルクを生成する。
【0030】
ダンサ部32は、かかる構成によって、トルクモータ38が生成した所定のトルクを、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して金属線10に伝達することにより、該金属線10に所定の設定された張力を付与する。すなわち、巻出ユニット20から送り出される金属線10に付与される張力は、トルクモータ38の回転トルクに応じて定まる。
【0031】
以上のとおり、本実施形態における巻出ユニット20は、巻出ボビン22から一定の速度で送り出された金属線10に対して、ダンサ部32が所定の張力を付与することによって、金属線10が所望の張力を有した状態で、伸線ユニット40−1に該金属線10を送り出すことができる。
【0032】
(伸線ユニット40)
本実施形態において、伸線機100は、巻出ユニット20と巻取ユニット60との間に、n段の伸線ユニット40−1〜n及び最終段の伸線ユニット90を有して構成される。巻出ユニット20、伸線ユニット40−1〜n及び90、並びに巻取ユニット60は、連結して設けられている。そして、巻出ユニット20から送り出された金属線10は、伸線ユニット40−1、40−2、・・・40−n、90の順番に通過して伸線される。伸線ユニット90において伸線された金属線10は、巻取ユニット60に送り出される。なお、本実施形態において、伸線ユニット40−1〜nは、同一の構成を有するので、以下、伸線ユニット40−1〜nを個々に特定しない限り、伸線ユニット40−1〜nを「伸線ユニット40」と総称して説明する。また、伸線ユニット40−1〜nに含まれる各構成についても、同様に総称して説明する。
【0033】
伸線ユニット40は、伸線ダイス42と、ガイドローラ44及び46と、駆動キャプスタン50とを有して構成される。伸線ユニット40において、金属線10は、ガイドローラ44、伸線ダイス42、ガイドローラ46、駆動キャプスタン50にわったって張架されている。
【0034】
伸線ダイス42は、ガイドローラ44とガイドローラ46との間に設けられている。伸線ダイス42は、金属線10が張架される方向にダイス孔を有しており、金属線10が該ダイス孔を通過して引き抜かれると、金属線10の径が縮小し、金属線10が伸線される。このとき、金属線10の径の縮小率(断面積の減少率)は、伸線ダイス42に設けられたダイス孔の径に応じて定まり、該縮小率に応じて、金属線10が伸線される。伸線ユニット40−1〜nの各段の伸線ダイス42のダイス孔の径は、最終段の伸線ユニットである伸線ユニット40−nにおいて伸線された金属線10が所望の線径となるように、適宜選択される。
【0035】
本実施形態において、伸線ユニット40−1〜nは、通過する金属線10の径を徐々に縮小する。従って、伸線ダイス42−nに設けられたダイス孔の径は、伸線ダイス42−1に設けられたダイス孔よりも小さい。また、伸線ダイス42−1に設けられたダイス孔の径は、伸線ダイス42−1に設けられたダイス孔よりも小さい。
【0036】
本実施形態において、伸線ダイス42は、筐体12に固定されたダイスホルダに格納されている。伸線機100は、金属線10が伸線ダイス42から引き抜かれて伸線されるときに、その引抜加工力を測定する手段を有してもよい。該手段は、例えば、伸線ダイス42がダイスホルダを押圧する力を検出して該引抜加工力を測定する手段であってもよく、また、筐体12に固定されたダイスホルダの歪みを検出して該引抜加工力測定する手段であってもよい。
【0037】
なお、金属線10及び/又は伸線ダイス42を潤滑油に浸漬しておくと、伸線ダイス42を通過する金属線10の揺れ等を防止し、その安定性を向上させることができる。このため、金属線10及び/又は伸線ダイス42を潤滑油に浸漬するためのオイルタンクを設けてもよい。例えば、伸線ダイス42とガイドローラ44との間に、オイルタンクを配置し、該オイルタンクを金属線10が通過するよう構成してもよい。この場合、伸線動作中に、潤滑油がオイルタンクからオーバーフローするように、該潤滑油をオイルタンクに供給する手段を有することが好ましい。また、伸線ダイス42をオイルタンク内に配置し、該オイルタンクを金属線10が上下または水平方向に貫通するように配置してもよい。但し、貫通する部分にはシールが必要となる。
【0038】
金属線10及び/又は伸線ダイス42を潤滑油に浸漬することで、次のような利点がある。各伸線ユニット40内の伸線ダイス42において行う伸線加工に最適な潤滑油を使用することができる。潤滑油の組成は、伸線ダイス42の消耗に対して大きな影響を与えるが、かかる構成を有することにより、伸線加工に特化した組成の潤滑油を安定して供給することが可能になる。また、金属線10と駆動キャプスタン50との摩擦による潤滑油の汚れの影響を低減するため潤滑油の循環や浄化システムが必要であったが、循環や浄化システムが簡易なものでよくなるため、生産コストの低減が可能となる。
【0039】
ガイドローラ44及び46は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ44及び46には、それぞれ、それらの軸部に、歪みゲージ152及び156並びにエンコーダ154及び158(
図2参照)が設けられている。
【0040】
歪みゲージ152及び156は、それぞれ、ガイドローラ44及び46の歪を検出して、金属線10の張力を検出する。すなわち、伸線機100において張架された金属線10は、各箇所において所定の張力を有しており、歪みゲージ152は、ガイドローラ44の歪みを検出して、伸線ダイス42を通過する前の金属線10の張力(以下「
バックテンション」という。)を検出する。また、歪みゲージ156は、ガイドローラ46の歪みを検出して、伸線ダイス42を通過した後の金属線10の張力(以下「
フロントテンション」という。)を検出する。具体的には、歪みゲージ152(156)は、金属線10がガイドローラ44(46)に入るときに送られる方向における該金属線10の張力と、金属線10が該ガイドローラ44(46)から出るときに送られる方向における該金属線10の張力との合力を、該歪みとして検出する。
【0041】
エンコーダ154及び158は、それぞれ、ガイドローラ44及び46の回転数を検出して、金属線10が送り出される速度を検出する。すなわち、エンコーダ154は、ガイドローラ44の回転数を検出して、伸線ダイス42の前方において金属線10が送り出される速度を検出する。また、エンコーダ158は、ガイドローラ46の回転数を検出して、伸線ダイス42の後方において金属線10が送られる速度を検出する。
【0042】
駆動キャプスタン50は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。駆動キャプスタン50は、駆動モータ150(
図2参照)が接続されており、伸線ユニットコントローラ140からの指令に基づいて、所定のトルクで回転する。駆動キャプスタン50は、該回転トルクによって、伸線ダイス42から金属線10を引き出し、次段の伸線ユニット40又は伸線ユニット90に、引き出した金属線10を送り出す。
【0043】
駆動キャプスタン50の外周面は、溶射加工されており、その表面硬度を上げて耐久性を高くするとともに、駆動キャプスタン50の表面(金属線10との接触面)と金属線10との間に滑りが発生することを防止している。また、駆動キャプスタン50の外周面は、摩擦係数の大きい弾性体(例えば、ウレタンやゴム等の樹脂)によって被覆されてもよい。このように、表面加工された駆動キャプスタン50により、金属線10がノンスリップで伸線ダイス42から引き抜かれ、次段に送り出される。
【0044】
(伸線ユニット90)
伸線ユニット90は、伸線ダイス92と、ガイドローラ94及び96と、駆動キャプスタン98とを有して構成される。伸線ユニット90において、金属線10は、ガイドローラ94、伸線ダイス92、ガイドローラ96、駆動キャプスタン98にわったって張架されている。
【0045】
なお、ガイドローラ94及び96は、伸線ユニット40のガイドローラ44及び46と略同一又は同様の構成を有する。また、駆動キャプスタン50は、伸線ユニットコントローラ140によって速度制御される点を除き、伸線ユニット40の駆動キャプスタン50と略同一又は同様の構成を有する。
【0046】
伸線ダイス92は、金属線10の応力や歪みを適切に調整(付加又は低減)する機能を有する点を除き、伸線ユニット40の伸線ダイス42と略同一又は同様の構成を有する。具体的には、伸線ダイス92は、金属線10が引き抜かれる方向に対して、ダイス孔の中心軸の角度を自在に調整できるように設けられている。また、伸線ダイス92は、金属線10が引き抜かれる方向に対して略垂直な方向に、ダイス孔の位置を自在に調整できるように設けられている。これにより、金属線10を真直化したり、必要に応じてカールさせたりすることができる。また、金属線10の伸線方向に応じてダイス孔の軸方向を調整することができるので、ダイスの偏磨耗を抑制することができる。
【0047】
(巻取ユニット60)
巻取ユニット60は、ガイドローラ66、68及び70と、ダンサ部72と、巻取ボビン80とを有して構成される。巻取ユニット60において、金属線10は、ガイドローラ66、ダンサローラ74、ガイドローラ66、68、70、巻取ボビン80の順に張架されている。
【0048】
ガイドローラ66、68及び70は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ66、68及び70は、それぞれ、金属線10をノンスリップで送り出すように所定の回数巻かれている。ガイドローラ66、68及び70は、巻取ボビン80の回転によって金属線10に付加された張力によって回転し、伸線ユニット90において伸線された金属線10を、通過経路に沿って、ノンスリップで順次送り出す。
【0049】
ダンサ部72は、ダンサローラ74と、ダンサアーム76と、トルクモータ78とを有して構成されており、伸線ユニット90において伸線された金属線10に、所望の張力を付加する。
【0050】
ダンサローラ74は、棒状に形成されるダンサアーム76の一端側に回転可能に支持されている。金属線10は、ガイドローラ66、ダンサローラ74、ガイドローラ66、ガイドローラ68、ガイドローラ70の順に張架されており、ダンサローラ74によって図中下方に向かう方向に、所定の張力が付加されている。
【0051】
ダンサアーム76は図中略水平に、すなわち、ダンサローラ74によって金属線10に張力が付加される方向と略垂直方向に配置されており、この水平に位置する状態をダンサアーム76の基準位置としている。ダンサアーム76の他端側は、トルクモータ78の駆動軸に固定されて支持されており、トルクモータ78の駆動軸がダンサアーム76の回動軸となっている。
【0052】
ポテンショメータ178(
図2)は、トルクモータ78の駆動軸に設けられており、ダンサアーム76の回動角を検出する。また、ポテンショメータ178は、巻取ユニットコントローラ160と接続されており、ポテンショメータ178により検出された回動角を、巻取ユニットコントローラ160に供給する。
【0053】
トルクモータ78は、ダンサアーム76及びダンサローラ74を介して、金属線10に所定の張力を付与する。すなわち、トルクモータ78は、該トルクモータ78の回転トルクを、ダンサアーム76及びダンサローラ74を介して金属線10に伝達して、金属線10に張力を付与する。トルクモータ78は、巻取ユニットコントローラ160と接続されており、該巻取ユニットコントローラ160の指令(トルク指令)に基づいて、所定の回転トルクを生成する。
【0054】
巻取ボビン80は、伸線機100の筐体12に回転可能に設けられている。巻取ボビン80は、巻取モータ180が接続されており、その駆動により回転する。これにより、伸線ユニット90において伸線された金属線10、巻取ボビン80に巻き取られる。本実施形態において、巻取ボビン80は、巻取モータ180によって速度制御で駆動される。すなわち、巻取ユニットコントローラ160は、巻取ボビン80が所定の速度で回転するように、巻取モータ180の駆動を制御する。具体的には、巻取ユニットコントローラ160は、駆動キャプスタン98の回転速度及びダンサアーム76の回動角に基づいて、巻取モータ180の回転速度を制御する。
【0055】
以上のとおり、本実施形態における巻取ユニット60では、ダンサ部72が伸線ユニット90から送り出された金属線10に所定の張力を付与しつつ、巻取ボビン80が一定の速度で金属線10を巻き取っている。
【0056】
(伸線機100の伸線動作)
次に、以上のように構成された伸線機100が、金属線10を伸線する動作を、
図1及び
図2に基づいて説明する。なお、以下の例においては、n段の伸線ユニット40のうち、i段目の伸線ユニット40の伸線ダイス42によって伸線される金属線10のバックテンションをBTi、フロントテンションをFTi、駆動キャプスタン50の回転トルクをCTiとする(iはn以下の正の整数)。
【0057】
(第1実施例)
第1実施例では、各伸線ユニット40における金属線10のフロントテンションに基づいて、駆動キャプスタン50の回転トルクを制御して、金属線10を伸線する。具体的には、巻出ユニット20、伸線ユニット40及び巻取ユニット60の各構成に金属線10を張架した後に、各構成を以下のとおり制御して、金属線10を伸線する。
【0058】
(巻出ユニット20の動作)
まず、巻出ユニット20は、金属線10を、巻出ユニット20から略一定の速度で送り出す。すなわち、巻出ユニットコントローラ120は、巻出ユニット20から金属線10が送り出される速度(以下、金属線10が通過経路の各位置において送られる速度を「線速度」という。)が、駆動キャプスタン90から金属線10が送り出される速度に応じた、略一定の速度に維持されるように、巻出モータ122の回転数を制御する。
【0059】
本実施形態において、巻出ユニットコントローラ120は、ガイドローラ44における金属線10の線速度をフィードフォワード信号とし、ダンサアーム36の回動角をフィードバック信号として、巻出モータ122の回転数を制御する。具体的には、巻出ユニット20から金属線10が送り出される速度、つまり、ガイドローラ44を通過する金属線10の線速度は、ガイドローラ44に設けられたエンコーダ154によって検出され、伸線ユニットコントローラ140に供給される。そして、巻出ユニットコントローラ120は、該線速度を示す速度信号をフィードフォワード信号として、巻出モータ122に供給して、巻出モータ122の回転を制御する。
【0060】
他方で、ダンサアーム36が回動して、巻出ボビン22から送り出された金属線10に所定の張力が付与されると、巻出ボビン22から送り出された金属線10の線速度と、ガイドローラ44を通過する金属線10の線速度との間に、所定の誤差が生じる。巻出ユニットコントローラ120は、ポテンショメータ138によって検出された該回動角に基づくフィードバック信号を生成し、巻出モータ122の回転を制御して、該誤差による線速度のずれを補正し、巻出ユニット20から送り出される金属線10の線速度を略一定に維持する。
【0061】
具体的に説明すると、巻出ユニットコントローラ120は、ポテンショメータ138が検出した、ダンサアーム36の該回動角と、ダンサアーム36が基準位置にあるときの回動角との回動角偏差を演算する。そして、巻出ユニットコントローラ120は、該回動角偏差がゼロに近づくように、巻出モータ22の回転速度を決定して、それに基づく回転速度指令を巻出モータ122に供給する。巻出ユニットコントローラ120は、該回動角偏差をフィードバック信号として、例えば、P制御、PI制御、PID制御等の制御によって、巻出モータ22の回転速度を制御する。
【0062】
巻出ボビン22に巻かれた金属線10を一定速度で送り出すためには、巻出ボビン22に巻かれた金属線10の巻き直径に応じて、巻出ボビン22の回転数を制御する必要があるところ、巻出ユニット20は、以上の動作により、巻出ユニット20から送り出される金属線10の線速度を略一定に維持しつつ、該金属線10が予め設定された張力を有するように、所定の張力を付与する。該張力は、伸線ダイス42−1を通過する金属線10のバックテンションBT1となる。例えば、巻出ユニットコントローラ120は、巻出ユニット20を制御して、BT1が巻出ボビン22に巻かれた金属線10の降伏応力の10%程度となるように、金属線10に所定の張力を付与する。
【0063】
なお、本実施形態では、巻出ユニットコントローラ120が、巻出モータ122の回転数を制御して金属線10の線速度を略一定に維持しつつ、ダンサアーム36の回動角を制御して金属線10に所定の張力を付与しているが、ダンサ部32を設けずに、巻出ユニットコントローラ120が、巻出モータ122の回転数及び/又は回転トルクを制御するよう構成して、金属線10の張力及び/又は線速度を制御してもよい。これにより、伸線機100において、ダンサ部32の数をさらに低減させることができる。
【0064】
また、巻出ユニット20において、例えば、ガイドローラ28又は30に歪みゲージ等を設けて、金属線10が有する張力を測定してもよい。この場合、巻出ユニットコントローラ120は、設定された張力と該歪みゲージ等で測定された張力との差をフィードバック信号として、トルクモータ38の回転トルクをフィードバック制御してもよい。これにより、金属線10が有する張力が、設定された張力にさらに近くなるように、金属線10に所定の張力を付与することができる。
【0065】
(伸線ユニット40の動作)
次に、各伸線ユニット40が、巻出ユニット20から送り出された金属線10を伸線する動作について説明する。
【0066】
第1段の伸線ユニット40−1は、伸線ダイス42−1を通過する金属線10のフロントテンションFT1に基づいて、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1を制御して、金属線10を伸線する。具体的には、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1は、伸線ダイス42−1を通過する金属線10のフロントテンションFT1、及び、第2段の伸線ユニット40−2の伸線ダイス42−1を通過する金属線10のバックテンションBT2と以下の関係を有する。
CT1=FT1−BT2
従って、第1段のフロントテンションFT1を測定できれば、第1段の回転トルクCT1を制御して、第2段のバックテンションBT2を所定の値に制御することができる。本実施例では、伸線ユニットコントローラ140は、ガイドローラ46−1に設けられた歪みゲージ156によって測定された、金属線10のフロントテンションFT1に基づいて、第2段のバクッテンションBT2が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1を制御する。すなわち、伸線ユニットコントローラ140は、フロントテンションFT1に基づいて、回転トルクCT1をフィードフォワード制御する。これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50−1によって伸線ダイス42−1から、フロントテンションFT1の引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、バックテンションBT2が付与された状態で、伸線ユニット40−2にノンスリップで送り出される。例えば、バックテンションBT2は、伸線ダイス42−1から引き抜かれた金属線の降伏応力の10%程度である。
【0067】
第2段の伸線ユニット40−2は、第1段の伸線ユニット40−1と同様に、金属線10をさらに伸線する。すなわち、伸線ユニットコントローラ140は、ガイドローラ46−2に設けられた歪みゲージ156によって測定された、金属線10のフロントテンションFT2に基づいて、第3段のバクッテンションBT3が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−2の回転トルクCT2を制御する。
CT2=FT2−BT3
【0068】
同様に、伸線ユニットコントローラ140は、第i段の伸線ユニット40−iにおいて、ガイドローラ46−iに設けられた歪みゲージ156によって測定された、金属線10のフロントテンションFTiに基づいて、第3段のバクッテンションBTi+1が所定の値となるように、駆動キャプスタン50nの回転トルクCTiを制御する。
CT(i)=FT(i)−BT(i+1)
これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50iによって伸線ダイス42iから、フロントテンションFTiの引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、バックテンションBTi+1が付与された状態で、伸線ユニット40i+1(又は伸線ユニット90)にノンスリップで送り出される。なお、上式において、i=nの場合、伸線ユニット90の伸線ダイス92によって伸線される金属線10のバックテンションをBT(i+1)とする。
【0069】
なお、本実施例では、伸線ユニットコントローラ140は、バックテンションBTi+1を設定値として、駆動キャプスタン50の回転トルクCTを制御しているが、フロントテンションFTi及びバックテンションBTi+1の双方を測定して、駆動キャプスタン50の回転トルクCTを制御してもよい。また、各伸線ダイス42において引抜加工力DTを測定し、駆動キャプスタン50の回転トルクCTを制御してもよい。これにより、伸線ダイス42における引抜加工力を、伸線動作時に測定することができる。
【0070】
本実施例によれば、駆動キャプスタン50が、実測されたフロントテンションFTiに基づいて、次段のバックテンションBTi+1を設定する。すなわち、本実施例では、各段においてフロントテンションを実測しているため、当該段のバックテンションにおいて発生した誤差(バックテンションの設定値と実際値との差)が、当該段のフロントテンション(又はそれ以降の段のバックテンション及びフロントテンション)に引き継がれ、累積されることがない。また、バックテンションの設定値と実際値との間で誤差が発生する要因は、駆動キャプスタン50における機械的な誤差に過ぎない。従って、本実施例によれば、バックテンションの設定値と実際値との間の誤差がきわめて少ない伸線機を提供することができる。
【0071】
(伸線ユニット90の動作)
次に、伸線ユニット90が、伸線ユニット40−nから送り出された金属線10を伸線する動作について説明する。なお、以下では、伸線ユニット40の動作と異なる点を中心に、伸線ユニット90の動作について説明する。
【0072】
伸線ユニット90は、伸線ユニット40−nにおいて伸線された金属線10の応力や歪みを適切に調整するとともに、金属線10が巻取ユニット60へ送られる線速度を決定する。
【0073】
具体的には、まず、伸線ユニット40−nの伸線ダイス42−nによって伸線された金属線10は、特に伸線ダイスの減面率が大きい場合には、金属線10が送り出される方向に対して垂直方向に応力ないし歪みを有する。伸線ダイス92は、金属線10に対して、その周囲から伸線ダイス42−nよりも均一に引抜加工力を付与して、かかる応力ないし歪みを適切に調整する。
【0074】
また、駆動キャプスタン98は、伸線機100における金属線10の線速度を決定する。すなわち、伸線ユニットコントローラ140は、金属線10の線速度が予め設定された速度となるように、回転速度指令を駆動モータ198に供給し、駆動モータ198を回転制御する。駆動モータ198は、該指令に基づいて、駆動キャプスタン98の回転数を制御する。例えば、伸線ユニットコントローラ140は、金属線10が巻取ユニット60へ送られる線速度が1000m/分となるように、駆動キャプスタン98の回転数を制御する。
【0075】
なお、伸線ユニットコントローラ140は、ガイドローラ96に設けられたエンコーダ158によって検出された、該ガイドローラ96の回転数に基づいて、駆動キャプスタン98から送り出された金属線10の線速度を測定し、該線速度をフィードバック信号として、駆動モータ198の回転数をフィードバック制御してもよい。
【0076】
本実施例によれば、伸線ユニット40の駆動キャプスタン50をトルク制御するとともに、伸線ユニット90の駆動キャプスタン98を速度制御するので、伸線動作において、金属線10が有する張力及び金属線10の線速度の双方を、より安定させることができる。
【0077】
(巻取ユニット60の動作)
巻取ユニット60は、巻出ユニット20から送り出され、各伸線ユニット40において伸線された金属線10の線速度が略一定となるように、該金属線10を巻き取る。すなわち、巻取ユニットコントローラ160は、巻取ユニット60に供給される金属線10の線速度が略一定に維持されるように、巻取モータ180の回転数を制御する。
【0078】
本実施形態において、巻取ユニットコントローラ160は、例えば、巻取ユニット60の前段にある駆動キャプスタン98の回転数、すなわち、金属線10の線速度をフィードフォワード信号とし、ダンサアーム76の回動角をフィードバック信号として、巻取モータ180の回転数を制御する。具体的には、駆動キャプスタン98を通過する金属線10の線速度は、駆動キャプスタン98に設けられたエンコーダによって検出され、伸線ユニットコントローラ140に供給される。そして、巻取ユニットコントローラ160は、該線速度を示す速度信号をフィードフォワード信号として、巻取モータ180に供給して、巻取モータ180の回転を制御する。
【0079】
また、巻取ユニットコントローラ160は、ポテンショメータ178によって検出された該回動角に基づくフィードバック信号を生成し、巻取モータ180の回転を制御する。
【0080】
具体的に説明すると、巻取ユニットコントローラ160は、ポテンショメータ178が検出した、ダンサアーム76の該回動角と、ダンサアーム76が基準位置にあるときの回動角との回動角偏差を演算する。そして、巻取ユニットコントローラ160は、該回動角偏差がゼロに近づくように、巻取モータ180の回転速度を決定して、それに基づく回転速度指令を巻取モータ180に供給する。巻取ユニットコントローラ160は、該回動角偏差をフィードバック信号として、例えば、P制御、PI制御、PID制御等の制御によって、巻取モータ180の回転速度を制御する。
【0081】
巻取ユニット60は、以上の動作により、巻取ボビン80において既に巻き取られた金属線10の巻取量に拘らず、伸線ユニット40−nから送り出される金属線10の線速度(すなわち、駆動キャプスタン98における金属線10の線速度)を略一定に維持し、他方で、当該線速度とガイドローラ68及び70を通過する金属線10の線速度との間にずれが生じないように、該金属線10を巻取ボビン80において巻き取ることができる。
【0082】
以上の動作により、伸線機100は、巻出ボビン22に巻かれた金属線10を、伸線ユニット40及び90において伸線し、巻取ボビン80において巻き取ることができる。例えば、伸線機100が5段の伸線ユニット40を有し(すなわち、n=5)、巻出ボビン22に巻かれた金属線10が120μmの直径を有するピアノ線であり、5つの伸線ダイス42が、それぞれ、111μm、102μm、94μm、87μm、80μmのダイス孔径を有する場合、巻取ボビン80において巻き取られる金属線10の直径は80μmとなる。
【0083】
(第2実施例)
第2実施例では、各伸線ユニット40において駆動キャプスタン50を速度制御で回転させたときに測定された、金属線10のフロントテンションの値(以下「サンプル値」という。)を予め取得し、それに基づいて、駆動キャプスタン50を速度制御ではなくトルク制御で回転させて、金属線10を伸線ダイス42から引き抜いて、伸線する。
【0084】
伸線機100では、伸線動作を行う前に、まず、金属線10を各伸線ユニット40に張架する。本実施例では、各伸線ユニット40において、金属線10の先端部を細く加工して伸線ダイス42のダイス孔を通過させた後、駆動キャプスタン50を速度制御で回転させ、金属線10を伸線ダイス42から引き抜いて、駆動キャプスタン50に所定の長さ巻きつける動作を行う(以下「仕掛け運転」という。)。本実施例では、かかる仕掛け運転時に、金属線10を速度制御で伸線ダイス42から引き抜いたときにおける、金属線10のフロントテンションを、該フロントテンションのサンプル値FT’として、伸線動作を行う。
【0085】
(仕掛け運転の動作)
本実施例では、まず、巻出ユニット20において金属線10を張架した後に、伸線ユニット40−1において、金属線10を、ガイドローラ44−1、伸線ダイス42−1、ガイドローラ46−1に張架する。そして、伸線ユニットコントローラ140は、駆動キャプスタン50−1を速度制御により略一定の速度で回転させて、金属線10を所定の長さ(又は一定時間)駆動キャプスタン50−1に巻きつける。伸線ユニットコントローラ140は、このときに、ガイドローラ46に設けられた歪みゲージ156において検出された、金属線10のフロントテンションFT1を、フロントテンションFT1のサンプル値FT1’として記憶する。FT1’は、該フロントテンションFT1の瞬間値であってもよく、平均値であってもよい。
【0086】
同様に、伸線ユニットコントローラ140は、伸線ユニット40−2及びCにおいても、金属線10のフロントテンションFT2及びFT3のサンプル値FT2’及びFT3’を取得し、記憶する。
【0087】
次に、本実施例において、伸線機100が金属線10を伸線する動作について説明する。なお、本実施例において、巻出ユニット20、伸線ユニット90及び巻取ユニット60は、第1実施例と同様に動作するため、以下では、伸線ユニット40の動作について説明する。
【0088】
(伸線ユニット40の動作)
第1段の伸線ユニット40−1は、予め取得された、フロントテンションFT1のサンプル値FT1’に基づいて、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1を制御して、金属線10を伸線する。本実施例において、FT1’は、金属線10のバックテンションとして設定値BT1が付加された状態で取得されたサンプル値である。従って、伸線ダイス42−1の引抜加工力のサンプル値DT1’は、以下に基づいて算出できる。
DT1’=FT1’−BT1
【0089】
駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1は、伸線ダイス42−1を通過する金属線10のフロントテンションFT1、及び、第2段の伸線ユニット40−2の伸線ダイス42−1を通過する金属線10のバックテンションBT2と以下の関係を有する。
CT1=FT1−BT2
また、フロントテンションFT1、バックテンションBT1及び引抜加工力DT1は、以下の関係を有する。
FT1=BT1+DT1
従って、本実施例において、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1は、バックテンションBT1及びBT2(共に設定値)並びに引抜加工力DT1’(サンプル値)に基づいて、以下のとおりとなる。
CT1=BT1+DT1’−BT2
【0090】
本実施例において、伸線ユニットコントローラ140は、上式によって、バックテンションBT1の設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DT1’に基づいて、バックテンションBT2が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1をフィードフォワード制御する。これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50−1によって伸線ダイス42−1から、FT1’の引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、設定上、バックテンションBT2が付与される状態で、伸線ユニット40−2にノンスリップで送り出される。
【0091】
第2段の伸線ユニット40−2は、第1段の伸線ユニット40−1と同様に、下式によって、バックテンションBT2の設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DT2’に基づいて、バックテンションBT3が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−2の回転トルクCT2をフィードフォワード制御する。
CT2=BT2+DT2’−BT3
【0092】
同様に、伸線ユニットコントローラ140は、下式によって、第i段のバックテンションBTiの設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DTi’に基づいて、バックテンションBTi+1が所定の値となるように、駆動キャプスタン50iの回転トルクCTiをフィードフォワード制御する。
CT(i)=BT(i)+DT(i)’−BT(i+1)
これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50iによって伸線ダイス42iから、FTi’の引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、設定上、バックテンションBTi+1が付与される状態で、伸線ユニット40i+1(又は伸線ユニット90)にノンスリップで送り出される。なお、上式において、i=nの場合、伸線ユニット90の伸線ダイス92によって伸線される金属線10のバックテンションをBTi+1とする。
【0093】
なお、本実施例では、伸線動作において、DT1’が引抜加工力のサンプル値であり、すなわち、引抜加工力が伸線動作において実測されていないため、仮に駆動キャプスタン50に巻きつけられた金属線10が緩んだとしても、DT1’は変化しない。従って、本実施例において、伸線機100は、駆動キャプスタン50に巻きつけられた金属線10を、駆動キャプスタン50に対して押圧する構成をさらに有することが好ましい。該押圧する構成は、例えば、ローラであってもよい。
【0094】
また、本実施例では、仕掛け運転時におけるフロントテンションの値をサンプル値として取得しているが、サンプル値の取得方法は、これに限られるものではない。
【0095】
本実施例によれば、駆動キャプスタン50の回転トルクCTがサンプル値によって制御され、伸線動作においてフロントテンションやバックテンション等を実測する構成を有する必要がないため、構成が簡略な伸線機を提供することができる。また、本実施例によれば、駆動キャプスタン50の回転トルクCTがサンプル値によって制御され、駆動キャプスタン50の回転トルクCTが外乱によって変動することがないため、動作が安定した伸線機を提供することができる。
【0096】
(第3実施例)
第3実施例では、第2実施例に加えて、さらに金属線10のバックテンションBTを測定する。そして、本実施例では、所定段における駆動キャプスタン50の回転トルクを、同段のフロントテンションFT及び次段のバックテンションBTに基づいてフィードフォワード制御する。また、本実施例では、測定されたバックテンションBTが所定の値となるようにフィードバック制御する。
【0097】
以下、本実施例において、伸線機100が金属線10を伸線する動作について説明するが、本実施例において、巻出ユニット20、伸線ユニット90及び巻取ユニット60は、第1実施例と同様に動作し、また、サンプル値の取得は第2実施例と同様に行われるため、以下では、伸線動作時における伸線ユニット40の動作について説明する。
【0098】
(伸線ユニット40の動作)
第1段の伸線ユニット40−1は、予め取得された、フロントテンションFT1のサンプル値FT1’に基づいて、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1を制御して、金属線10を伸線する。本実施例において、FT1’は、金属線10のバックテンションとして測定値BT1’が付加された状態で取得されたサンプル値である。従って、伸線ダイス42−1の引抜加工力のサンプル値DT1’は、以下に基づいて算出できる。
DT1’(サンプル値)=FT1’(サンプル値)−BT1’(測定値)
【0099】
駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1は、伸線ダイス42−1を通過する金属線10のフロントテンションFT1、及び、第2段の伸線ユニット40−2の伸線ダイス42−1を通過する金属線10のバックテンションBT2と以下の関係を有する。
CT1=FT1−BT2
伸線ユニットコントローラ140は、上式によって、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1をフィードバック制御する。すなわち、伸線ユニットコントローラ140は、バックテンションBT2の測定値が設定値に近づくように、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1を制御する。
【0100】
また、フロントテンションFT1、バックテンションBT1及び引抜加工力DT1は、以下の関係を有する。
FT1=BT1+DT1
本実施例において、駆動キャプスタン50−1の回転トルクは、さらにフィードフォワード制御されており、そのフィードフォワード量CT1’は、バックテンションBT1及びBT2(共に設定値)並びに引抜加工力DT1’(サンプル値)に基づいて、以下のとおりとなる。
CT1’=BT1(設定値)+DT1’(サンプル値)−BT2(設定値)
【0101】
本実施例において、伸線ユニットコントローラ140は、上式によって、バックテンションBT1の設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DT1’に基づいて、バックテンションBT2が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−1の回転トルクCT1をフィードフォワード制御する。これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50−1によって伸線ダイス42−1から、FT1’の引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、設定上、バックテンションBT2が付与される状態で、伸線ユニット40−2にノンスリップで送り出される。
【0102】
第2段の伸線ユニット40−2は、第1段の伸線ユニット40−1と同様に、下式によって、バックテンションBT2の設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DT2’に基づいて、バックテンションBT3が所定の値となるように、駆動キャプスタン50−2の回転トルクCT2をフィードフォワード制御する。
CT2=BT2+DT2’−BT3
【0103】
同様に、伸線ユニットコントローラ140は、下式によって、第i段のバックテンションBTiの設定値及び予め取得された引抜加工力のサンプル値DTi’に基づいて、バックテンションBTi+1が所定の値となるように、駆動キャプスタン50iの回転トルクCTiをフィードフォワード制御する。
CT(i)=BT(i)+DT(i)’−BT(i+1)
これにより、金属線10は、駆動キャプスタン50iによって伸線ダイス42iから、FTi’の引き抜き力で、ノンスリップで引き抜かれるとともに、設定上、バックテンションBTi+1が付与される状態で、伸線ユニット40i+1(又は伸線ユニット90)にノンスリップで送り出される。なお、上式において、i=nの場合、伸線ユニット90の伸線ダイス92によって伸線される金属線10のバックテンションをBTi+1とする。
【0104】
本実施例によれば、金属線10のバックテンションをフィードバック制御するので、第1実施例と同様に、引抜加工力やフロントテンションのサンプル値と実際値との誤差が、次段のバックテンションに引き継がれ、累積されることを防ぐことができる。また、本実施例では、バックテンションを測定するので、測定されたバックテンション及び駆動キャプスタン50の回転トルクに基づいて、伸線ダイス42の引抜加工力を算出することができる。
【0105】
以上説明した伸線機及び伸線方法によれば、伸線ユニットにダンサを設ける必要がないため、その構成を簡易なものとすることができる。また、バックテンションや金属線の減面率を任意に設定できる等、伸線加工条件を任意に調整できる伸線機を提供することができる。従って、本実施形態の伸線機及び伸線方法によれば、バックテンションを任意に設定して伸線ダイスの損耗を低減させることができ、また、減面率を任意に設定して伸線ダイスの使用数を減らせる等の優れた作用効果を奏することができる。さらに、本実施形態の伸線機及び伸線方法によれば、伸線速度、バックテンション、フロントテンション等の伸線加工条件を任意に調整できるので、線径やカール径等において種々の特性を有する金属線や、従来よりも破断荷重や引張強さ等の特性が優れた金属線を作成することができる。
【0106】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。