(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139961
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20170522BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20170522BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20170522BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F01N3/28 301U
F01N3/28 301W
F01N3/24 N
F01N3/28 301Q
B01D53/94 222
B01J35/04 301D
B01J35/04 301E
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-93302(P2013-93302)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214684(P2014-214684A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】509185192
【氏名又は名称】株式会社 ACR
(74)【代理人】
【識別番号】100092347
【弁理士】
【氏名又は名称】尾仲 一宗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 寛
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−169347(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0070236(US,A1)
【文献】
特表2006−524777(JP,A)
【文献】
特開2005−226599(JP,A)
【文献】
特開平08−024670(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第01395960(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
B01J 35/04
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に配設して適用されるハニカム体に排気ガスを通して前記排気ガス中に含まれる有害物質を酸化・還元反応させて消失させて前記排気ガスを浄化することから成るハニカム構造体において,
多数の入口と出口を備えた長手方向に延びる多数の通路が形成された前記ハニカム体,前記ハニカム体の外周側の全面を覆い且つ前記排気ガスが流入する流入口と前記排気ガスを排出する排出口とを備えた筒状の外ケース,及び前記外ケースの内壁面に配設されて前記ハニカム体の外周部に位置する前記通路の前記入口を閉鎖する閉鎖部材を有し,
前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記通路の前記入口が前記閉鎖部材によって閉鎖されており,前記ハニカム体には,前記閉鎖部材によって閉鎖された前記入口に通じる前記外周部に位置する前記通路が前記排気ガスが流れない空気層で形成される第1遮熱層に構成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記閉鎖部材は,前記外ケースの前記流入口側から前記ハニカム体の前記外周部の前記入口へと延びると共に前記外ケースの内壁面から全周にわたって隔置して第2遮熱層を形成して配設された内側筒体であり,前記内側筒体の前端面は前記外ケースと前記内側筒体との間に前記遮熱層を形成するため前記排気ガスの前記流入口に対して閉鎖されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記外ケースと前記内側筒体との間の前記第2遮熱層は,空気層又は該空気層と断熱材とで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記閉鎖部材は,前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記通路の前記入口を閉鎖するリング状板であり,前記リング状板が前記通路の前記入口を閉鎖して前記ハニカム体の前記外周部に前記第1遮熱層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム体は,金属薄板が平らに成形された平ら状薄板と,長手方向に伸びる稜線及び該稜線間の溝から成る波板状に成形された波状薄板又は波状金網とを交互に重ねて丸められた柱状体のメタルハニカムから構成され,或いはコージライト,シリコンカーバイト又はチタン酸アルミから形成されたセラミックハニカムから構成され,前記外ケースと前記セラミックハニカムとの間にはセラミックフェルトやセラミックファイバーの緩衝材が介在されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記外ケースは,前記ハニカム体を配設した本体筒部,前記本体筒部の前端側に前記流入口から前記本体筒部へと拡がる入口筒部,及び前記本体筒部の後端側に前記本体筒部から前記排出口へと収束する出口筒部から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記外ケースの前記入口筒部には,前記排気ガスを分散させる拡散筒体が嵌合固着されており,前記拡散筒体の一端は開口して前記排気ガスの前記流入口を形成し,前記拡散筒体の他端には多数の通孔付き邪魔板が固着され,前記外ケースの前記入口筒部内に位置する前記拡散筒体の周囲には前記排気ガスを拡散させる多数の通孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記内側筒体は,前記外ケースの前記入口筒部に沿って前記入口筒部の前記内壁面から隔置して伸びており,前記内側筒体の前記前端面が前記拡散筒体の外周面に固着されていることを特徴とする請求項7に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカム体に担持される触媒は,酸化触媒,三元触媒,及び/又はNOX 還元触媒であり,前記NOX 還元触媒は,炭化水素系燃料,アンモニア及び/又は尿素を還元剤として機能させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記排気ガスが流入しない前記通路を形成する領域には,前記触媒が担持されていないことを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記波状薄板又は前記波状金網の前記稜線は前記柱状体の軸に対して平行なストレート状又は屈曲して伸びていることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記メタルハニカム体を構成する前記平ら状薄板と前記波状薄板又は前記波状金網とは,ステンレス鋼又は鉄クロムアルミ合金から構成されていることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記メタルハニカム体を構成する前記平ら状薄板と前記波状薄板又は前記波状金網とは,予め決められた所定の部位でロウ材で互いに接合されていることを特徴とする請求項5〜12のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,エンジン,バーナ,燃焼装置等の排出口から排気される排気ガスを,ハニカム体に接触通過させて排気ガス中に含まれる有害物質を酸化・還元反応によって消失除去して排気ガスを浄化することから成るハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ディーゼルエンジンでは,熱効率が高いということからトラック,船舶等に多く用いられており,近年では,CO
2 の排出量少ない原動機として見直され,乗用車についても採用が増え続けている。しかしながら,ディーゼルエンジンは,圧縮着火式であるため,NO
X はもとよりガソリンエンジンではほとんど発生しない粒子状物質(PMという)が排気ガス中に含まれている。また,金属製ハニカムについて,排気ガスとの接触面積を増やすことは有効であるが,更にハニカムのセルで構成されたガス通路を流れる排気ガスに乱れを与えて,排気ガスを触媒に積極的に接触させる構造のものが提案されている。該ハニカム構造は,薄板を孔開き構造に形成し,表面積の増大という点では損失であるが,ガス通路内に乱流を生成し,乱れによる排気ガスを触媒に積極的に接触させるものである。
【0003】
また,排気ガス浄化用メタルハニカム体を,熱膨張や熱応力による変形や破損に対する耐久性を改善するものが知られている。該排気ガス浄化用メタルハニカム体は,薄肉金属板製の異なる二種の波形帯材を交互に当接するように重積した軸方向に多数の網目状通気孔路を有して,排気ガス浄化触媒が担持されている。二種の波形帯材は,略正三角形を長手方向に連接させた構造の三角波形を有する帯材と略正弦波を有する帯材とから構成されている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,内燃機関用排気ガス浄化装置として,メタルハニカムを用いたものが知られている。該内燃機関用排気ガス浄化装置は,メタル基体を使用したリーンNO
X 触媒を用いてHC浄化を行なうものであり,内燃機関の排気通路に排気ガス流れ方向に沿って,排気ガス柱の窒素酸化物を酸素過剰雰囲気下で浄化する触媒層をメタルハニカム(金属基体)に担持したリーンNO
X 触媒と,排気ガス柱の少なくとも炭化水素(HC)の酸化反応を行なわせる反応触媒(酸化触媒)とを配置したものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,排気ガス浄化装置として,メタルハニカムを用いたものが知られている。該排気ガス浄化装置は,内燃機関の冷間始動時にマイクロ波を効果的に吸収して触媒の温度を急速に触媒動作温度に到達させ,冷間始動時に排出される有害排気ガスを浄化するものであり,空洞共振器の一方の反射端を,Pt/RhやPd/Rh等の触媒材料がコーティングされたメタルハニカムのマイクロ波吸収体側の面で構成するとともに,ケーシングを介してメタルハニカムと空洞共振器とを電気的に導通させたものである(例えば,特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−24670号公報
【特許文献2】特開2003−206733号公報
【特許文献3】特開2000−104540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,メタルハニカムは,波状薄板と平ら薄板とを交互に重ねて巻き上げると共に,波状薄板と平ら薄板とをロウ材によって結合したものである。メタルハニカムは,外ケースで覆って互いにロウ材によって結合されてメタルハニカム構造体に構成されている。メタルハニカム構造体は,上記のように,極めて強固な構造に構成されており,排気ガスが高温時及び/又は高振動加速度時においても,極めて高い耐久性を有しており,低圧力損失であるため,オートバイ等に排気ガス浄化のために搭載されている。しかしながら,メタルハニカム構造体は,上記のような高強度の反面,金属製の外ケースに金属製の薄板が密着して強固に接合されているため,熱伝導が良好になり,メタルハニカムの内部温度が外ケースに伝わり易く,外ケースが高温になるという問題があった。
【0008】
この発明の目的は,上記の問題を解決するため,外ケースとメタル又はセラミックスから成るハニカム体との間に排気ガスが流れない空気や断熱材による遮熱層を形成し,高温排気ガスによるハニカム体の内部の高温を外ケースに伝わり難く構成し,外ケースの温度を排気ガス温度よりも低温に維持して安全性を向上させ,また,ハニカム体を流れる排気ガス温度を適正に維持して排気ガスに含まれる有害物質を酸化・還元して有害物質を消失除去し,排気ガスを浄化することから成るハニカム構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,排気管に配設して適用されるハニカム体に排気ガスを通して前記排気ガス中に含まれ
る有害物質を酸化・還元反応させて消失させて前記排気ガスを浄化することから成るハニカム構造体において,
多数の入口と出口を備えた長手方向に延びる
多数の通路が形成された前記ハニカム体,前記ハニカム体の外周側の全面を覆い且つ前記排気ガスが流入する流入口と前記排気ガスを排出する排出口とを備えた筒状の外ケース,及び前記外ケースの内壁面に配設されて前記ハニカム体の外周部に位置する前記通路の前記入口を閉鎖する閉鎖部材を有し,
前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記通路の前記入口が前記閉鎖部材によって閉鎖され
ており,前記ハニカム体
には,前記閉鎖部材によって閉鎖された前記入口に通じる前記外周部に位置する前記通路
が前記排気ガスが流れない
空気層で形成される第1遮熱層
に構成されていることを特徴とするハニカム構造体に関する。
【0010】
このハニカム構造体において,前記閉鎖部材は,前記外ケースの前記流入口側から前記ハニカム体の前記外周部の前記入口へと延びると共に前記外ケースの内壁面から全周にわたって隔置して第2遮熱層を形成して配設された内側筒体であり,前記内側筒体の前端面は前記外ケースと前記内側筒体との間に前記遮熱層を形成するため前記排気ガスの前記流入口に対して閉鎖されているものである。更に,
前記外ケースと前記内側筒体との間の前記第2遮熱層は,空気層又は
該空気層と断熱材
とで構成されている。
或いは,前記閉鎖部材は,前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記通路の前記入口を閉鎖するリング状板であり,前記リング状板が前記通路の前記入口を閉鎖して前記ハニカム体の前記外周部に前記第1遮熱層が形成されている
【0011】
また,このハニカム構造体において,前記ハニカム体は,金属薄板が平らに成形された平ら状薄板と,長手方向に伸びる稜線及び該稜線間の溝から成る波板状に成形された波状薄板又は波状金網とを交互に重ねて丸められた柱状体のメタルハニカムから構成され,或いはコージライト,シリコンカーバイト又はチタン酸アルミから形成されたセラミックハニカムから構成され,前記外ケースと前記セラミックハニカムとの間にはセラミックフェルトやセラミックファイバーの緩衝材が介在されている。
【0012】
このハニカム構造体において,前記外ケースは,前記ハニカム体を配設した本体筒部,前記本体
筒部の前端側に前記流入口から前記本体
筒部へと拡がる入口筒部,及び前記本体
筒部の後端側に前記本体
筒部から前記排出口へと収束する出口筒部から構成されているものである。また,前記外ケースの前記入口筒部には,前記排気ガスを分散させる拡散筒体が嵌合固着されており,前記拡散筒体の一端は開口して前記排気ガスの前記流入口を形成し,前記拡散筒体の他端には多数の通孔付き邪魔板が固着され,前記外ケースの前記入口筒部内に位置する前記拡散筒体の周囲には前記排気ガスを拡散させる多数の通孔が形成されている更に,前記内側筒体は,前記外ケースの前記入口筒部に沿って前記入口筒部の前記内壁面から隔置して伸びており,前記内側筒体の前記前端面が前記拡散筒体の外周面に固着されている。
【0013】
このハニカム構造体において,前記ハニカム体に担持される触媒は,酸化触媒,三元触媒,及び/又はNO
X 還元触媒であり,前記NO
X 還元触媒は,炭化水素系燃料,アンモニア及び/又は尿素を還元剤として機能させるものである。更に,このハニカム構造体は,前記ハニカム体の前記外周部に位置する前記排気ガスが流入しない前記通路を形成する領域には,前記触媒が担持されていない。
【0014】
このハニカム構造体において,前記波状薄板又は前記波状金網の前記稜線は前記柱状体の軸に対して平行なストレート状又は屈曲して伸びている。また,前記メタルハニカム体を構成する前記平ら状薄板と前記波状薄板又は前記波状金網とは,ステンレス鋼又は鉄クロムアルミ合金から構成されている。更に,前記メタルハニカム体を構成する前記平ら状薄板と前記波状薄板又は前記波状金網とは,予め決められた所定の部位でロウ材で互いに接合されているものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によるハニカム構造体は,上記のように,外ケースの内壁面に沿って第1遮熱層及び/又は第2遮熱層が形成されているので,前記ハニカム体の外周部には,高温の排気ガスが流入することがなく,ハニカム体が位置する前記外ケースへは排気ガスの熱エネルギーが伝導されず,外ケースが排気ガスで高温にならず,安全性を確保することができ,しかも,前記ハニカム体は排気ガス温度で適正な温度に維持され,触媒の助けで排気ガスに含まれるHC等の有害物質を反応させて消滅させることができ,更に,前記外ケースに対して閉鎖部材を設けるだけの簡単な構造であって,製造コストを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明によるハニカム構造体の第1実施例を示す断面図である。
【
図4】
図1のハニカム構造体におけるハニカム体を構成する平ら状薄板と波状薄板から成る金属素材を説明するための斜視図である。
【
図5】
図4の金属製の平ら状薄板と波状薄板とを重ねた状態を示す端面図である。
【
図6】
図1のハニカム構造体であって,平ら状薄板と波状金網との金属素材を丸めて柱状体に構成したハニカム体を示す端面図である。
【
図7】
図1のハニカム構造体におけるハニカム体を構成する平ら状薄板と波状金網から成る別の金属素材を説明するための斜視図である。
【
図8】
図7の金属製の平ら状薄板と波状金網とを重ねた状態を示す端面図である。
【
図9】この発明によるハニカム構造体の第2実施例を示す断面図である。
【
図10】この発明によるハニカム構造体の第3実施例を示す断面図である。
【
図11】
図10に示す第3実施例の符号B領域を示す拡大断面図である。
【
図12】ハニカム体の入口温度に対して,
図1のハニカム構造体の線B−Bに対応する部位において本発明のハニカム構造体と内側筒体を備えていない従来のハニカム構造体とに対して比較テストした測温変化を示すグラフである。
【
図13】この発明によるハニカム構造体と従来のハニカム構造体とのHC削減率の比較テストした低温性能を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,図面を参照して,この発明によるハニカム構造体の実施例について説明する。このハニカム構造体は,排気管(図示せず)の途中に配設して適用されるものであり,エンジン,バーナ,燃焼装置,煙道等の排出口から排気管に排出される排気ガスGに含まれるHC,NO
X 等の有害物質を,ハニカム体1に担持した触媒を用いて水,二酸化炭素,窒素に酸化・還元反応させて消失させ,排気ガスGを浄化するものであり,ここではハニカム体1にはPM(パティキュレート・マター)を捕集する機能を備えていない担体を構成しているものである。
【0018】
図1〜
図8を参照して,この発明によるハニカム構造体の第1実施例を説明する。このハニカム構造体は,概して,排気ガスGが流入する多数の入口16と出口26とを備えた長手方向に伸びる
多数の通路8,8N
が形成
されたハニカム体1,ハニカム体1の外周側の全面を覆う筒状の外ケース2,及び外ケース2の前端側の内壁面20から全周にわたって隔置して第1遮熱層10を形成して配設された内側筒体3を有するものである。第1実施例では,内側筒体3は,ハニカム体1の外周部19の通路8,8Nに排気ガスGを流入させない閉鎖部材として機能すると共に,外ケース2に内壁面20に沿って第1遮熱層10を形成する機能を有している。外ケース2は,排気ガスGが流入する流入口14と,流入口14から流入した排気ガスGがハニカム体1を通過して排気ガス通路へと排出される排出口15とを有している。内側筒体3は,概して,外ケース2の流入口14からハニカム体1の排気ガス流入端面の入口17へと延びて配設され,外ケース2との間には第1遮熱層10が形成されている。また,ハニカム体1の上流側の入口16には,内側筒体3の後端面17が当接して位置しており,内側筒体3の後端面17に対応するハニカム体1の外周部19には,排気ガスGが流入されない第2遮熱層24が形成されている。また,このハニカム構造体において,外ケース2と内側筒体3との間に形成される第1遮熱層10及びハニカム体1の外周部19の第2遮熱層24は,空気層及び/又は断熱材で構成されている。
【0019】
また,ハニカム体1は,
図4〜
図6に示すように,金属薄板が平らに成形された平ら状薄板4と,金属薄板が長手方向に伸びる稜線6及び該稜線6間の溝7とから成る波板状に成形された波状薄板5とを交互に重ねて丸められた柱状体21から構成され,各溝7に通路8が形成されている。或いは,
図7及び
図8に示すように,金属薄板が平らに成形された平ら状薄板4と,金属金網が長手方向に伸びる稜線6N及び該稜線6N間の溝7Nとから成る波板状に成形された波状金網5Nとを交互に重ねて丸められた柱状体21と同様な柱状体から構成され,各溝7Nに通路8Nがそれぞれ形成されている。また,このハニカム構造体において,波状薄板5の稜線6又は波状金網5Nの稜線6Nは,柱状体21の軸に対して平行なストレート状又は屈曲して伸びる形状に形成されている。ハニカム体1を構成する平ら状薄板4と波状薄板5又は波状金網5Nとは,ステンレス鋼又は鉄クロムアルミ合金から形成されている。更に,ハニカム体1を構成する平ら状薄板4と波状薄板5又は波状金網5Nとは,予め決められた所定の部位でロウ材で互いに接合されている。
【0020】
このハニカム構造体において,外ケース2は,ハニカム体1が配設された本体筒部2M,排気ガスGの流入側に位置する入口筒部2F,及び排気ガスGの流出側に位置する出口筒部2Rが順次連結して一体構造に構成されている。入口筒部2Fは,本体筒部2Mの前端側で,排気ガスGを排出する排気管(図示せず)から本体筒部2Mへと拡がる形状に構成され,出口筒部2Rは,本体筒部2Mの後端側で,本体筒部2Mから排気管(図示せず)へと収束する形状に構成されている。また,このハニカム構造体は,外ケース2の排気ガスGが流入する流入口14には,排気ガスGを分散させてハニカム体1の排気ガス流入端面である入口17の全面から均一にハニカム体1に流入するように,拡散筒体9が嵌合固着されている。即ち,外ケース2の入口筒部2Fには,拡散筒体9が嵌合固着されている。また,出口筒部2Rには,出口筒体13が嵌合固着されている。
【0021】
拡散筒体9は,その一端が開口した排気ガスGの流入口14を構成し,他端には多数の通孔11付きの邪魔板12が固着されている。また,外ケース2の入口筒部2F内に位置する拡散筒体9の周囲には,排気ガスGを拡散させる多数の通孔11が形成されている。従って,拡散筒体9の流入口14から流入した排気ガスGは,一部が邪魔板12の通孔11を通過するが,拡散筒体9の周囲の通孔11を通って拡散して入口筒部2F内の内側筒体3内へ拡散して流入し,内側筒体3内の排気ガスGはハニカム体1の多数の入口16へ均等に分散して流入することに成る。更に,内側筒体3は,外ケース2の入口筒部2Fに沿って,第1遮熱層10を形成するように入口筒部2Fの内壁面20から隔置して伸びており,内側筒体3の前端面22が拡散筒体9の外周面23に固着部18で固着されている。
【0022】
このハニカム構造体において,ハニカム体1に担持される触媒は,酸化触媒,三元触媒,及び/又はNO
X 還元触媒である。更に,前記NO
X 還元触媒は,炭化水素系燃料,アンモニア及び/又は尿素を還元剤として機能させるものである。また,このハニカム構造体は,外ケース2と内側筒体3との間に対応するハニカム体1の外周部19に位置する平ら状薄板4と波状薄板5とには,触媒が担持されていないものである。また,触媒が担持されるハニカム体1の外面には,触媒を確実に担持するように,アルミナ(Al
2 O
3 ),シリカ(SiO
2 ),ジルコニア(ZrO
2 ),セリア(CeO
2 ),チタニア(TiO
2 )の少なくとも1種以上のセラミックスがコーティングされている。また,ハニカム体1に担持されている触媒は,具体的には,白金(Pt),銀(Ag),カリウム(K),パラジウム(Pd),イリジウム(Ir),鉄(Fe),銅(Cu),バリウム(Ba),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh)の少なくとも1種類以上の酸化・還元触媒である。
【0023】
この発明によるハニカム構造体の外周面への熱伝達の効果を試験するため,内側筒体を備えていないノーマルな従来のハニカム構造体を作製した。
図1に示す線B−Bの位置の外ケース2の外周面である側面温度を,本発明のハニカム構造体と従来のノーマルのハニカム構造体についてそれぞれ測定した。
測定温度は,
図12に示すように,ハニカム体1の入口温度200℃,300℃,400℃,500℃に対して,外ケース2の外周面である側面温度をそれぞれ測定した。本発明のハニカム構造体の外ケース1の外周面である側面温度◆は,ノーマルのハニカム構造体の外ケースの外周面である側面温度■と比較して,15℃〜50℃低くなることが確認できた。本発明のハニカム構造体は,内側筒体3をハニカム体1の排気ガスGの入口側に設けて外ケース1の入口側に第1遮熱層10を形成し,ハニカム体1の外周部19に排気ガスGが流れないようにしてハニカム体1の外周部19に第2遮熱層24が形成されているので,従来のハニカム構造体よりも排気ガスGに対する外ケース1への遮熱効果があることが分かった。また,第2実施例のリング状板25を設けた場合にも,第1実施例と同様に,ハニカム体1の外周部19に第2遮熱層24が形成されているので,外ケース1への遮熱効果があることが確認できた。
【0024】
図13を参照して,この発明によるハニカム構造体と従来のノーマルのハニカム構造体とについて,ハニカム体1の外ケース2の入口温度200℃,300℃,400℃,500℃についてのHC削減率をそれぞれ測定した。
図11のグラフから分かるように,本発明のハニカム構造体のHC削減率◆は,ノーマルのハニカム構造体のHC削減率■と比較して向上していることが確認できた。
【0025】
次に.
図9を参照して,この発明によるハニカム構造体の第2実施例を説明する。第2実施例は,第1実施例のハニカム構造体が有する内側筒体3を備えておらず,内側筒体3の代わりに,ハニカム体1の排気ガスGの流入側にリング状板25を配設したものである。リング状板25は,ハニカム体1の外周部19の入口16を閉鎖するように外ケース2又はハニカム体の外周部19に固着され,通路8Nの入口16を閉鎖して通路8,8Nに排気ガスGを流入させないようにする閉鎖部材として機能する。リング状板25がハニカム体1の外周部19の入口16を閉鎖することによって,ハニカム体1の外周部19には,排気ガスGが流入することができず,第2遮熱層24が形成される。第2実施例では,外ケース2の入口筒体2Fは排気ガスGに晒された状態になっており,第1実施例のような第1遮熱層10は形成されていないが,その他に関しては第1実施例と同様に形成されている。
【0026】
更に,
図10及び
図11を参照して,この発明によるハニカム構造体の第3実施例を説明する。この発明によるハニカム構造体を構成するハニカム体1は,コージライト,シリコンカーバイト,又はチタン酸アルミから形成されたセラミックハニカムからセラミックハニカム体1Cで構成することができる。
図10及び
図11に示すように,第3実施例は,
図1及び
図3に示した第1実施例のように,外ケース2の前端側の内壁面20から全周にわたって隔置して第1遮熱層10を形成して配設された内側筒体3を配設した構成は同様である。ハニカム体1をセラミックハニカム体1Cで構成した場合には,セラミックハニカム体1Cとして,外ケース2内にセラミックハニカム体1Cを収容する構造に作製すると,セラミックハニカム体1Cを構成するコージライト,シリコンカーバイト,チタン酸アルミ等のセラミックスを衝撃等による破損が発生する可能性があるので,第3実施例では,セラミックスの破損を防止するため,外ケース2とセラミックハニカム体1Cとの境界にセラミックフェルト,セラミックファイバー等から成る緩衝材27を介在させている。緩衝材27は,遮熱層の機能を有しているが,セラミックハニカム体1Cの外周領域に排気ガスGを流さないことによって一層の遮熱効果を確保でき,或いは,緩衝材を不要に厚く構成する必要がなく,外ケース2への熱の伝達が阻止され,過熱することが防止できる。更に,セラミックハニカム体1Cの保温状態を確保でき,触媒の活性化の向上が期待でき,ハニカム構造体の周辺機器或いは排気管外周部の温度上昇を防止でき,熱害防止が期待でき,周辺領域の可燃物への熱伝達が防止できる。
【0027】
また,図示していないが,この発明によるハニカム構造体の第4実施例を説明する。第4実施例は,第3実施例では外ケース2の内壁面20に内側筒体3を配設したが,必ずしもその構成に限ることはなく,例えば,
図9に示す第2実施例のように,セラミックハニカム体1Cの排気ガスGの流入側に外周部を閉鎖するリング状板を配設して構成することもできる。第4実施例は,
図10及び
図11に示した第3実施例と同様な作用効果を発揮することができることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明によるハニカム構造体は,エンジン,バーナ,燃焼装置等の排出口から排気される排気ガスを接触通過させて排気ガス中に含まれる有害物質を酸化・還元反応させて消失除去して排気ガスを浄化する担体として適用して好ましいものである。
【符号の説明】
【0029】
1 ハニカム体
1C セラミックスハニカム体
2 外ケース
2F 入口筒部
2M 本体筒部
2R 出口筒部
3 内側筒体(閉鎖部材)
4 平ら状薄板
5 波状薄板
5N 波状金網
6,6N 稜線
7,7N 溝
8,8N 通路
9 拡散筒体
10 第2遮熱層
11 通孔
12 邪魔板
14 流入口
15 排出口
16 入口
19 外周部
20 内壁面
21 柱状体
22 前端面
23 外周面
24 第1遮熱層
25 リング状板(閉鎖部材)
27 緩衝材
G 排気ガス