特許第6139972号(P6139972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139972
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】移動式トンネル防音壁のダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/12 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   E21F17/12
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-102083(P2013-102083)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-221993(P2014-221993A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】小野 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昌徳
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3018657(JP,U)
【文献】 特開2006−283545(JP,A)
【文献】 実開昭56−130100(JP,U)
【文献】 特開平06−074000(JP,A)
【文献】 特開2010−229759(JP,A)
【文献】 特開平08−134851(JP,A)
【文献】 特開2004−218305(JP,A)
【文献】 実開昭49−087750(JP,U)
【文献】 米国特許第04118894(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00−17/18
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑口又は坑内を閉塞する移動式トンネル防音壁のダンパー装置であって、
前記移動式トンネル防音壁には、
車両が出入りする主扉と、
風管を通す風管開口部と、
前記風管開口部に配置されるダンパー機構と
を備え、
前記ダンパー機構が、倒立式ダンパーを有し、
前記倒立式ダンパーは、一端を前記移動式トンネル防音壁に回動自在に設け、他端を自由端とし、前記風管の外部に設けたことを特徴とする移動式トンネル防音壁のダンパー装置。
【請求項2】
前記自由端を上方へ引き上げることで前記風管開口部を閉塞状態とし、前記風管開口部を開放状態とした時には、前記倒立式ダンパーによって前記風管を下方から支えることを特徴とする請求項1に記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置。
【請求項3】
前記自由端には、凹部が形成され、前記風管開口部を閉塞状態とした時には、前記凹部に前記風管を収容することを特徴とする請求項2に記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置。
【請求項4】
前記倒立式ダンパーを、前記移動式トンネル防音壁の切羽面に設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置。
【請求項5】
前記ダンパー機構が、前記風管開口部の周囲に固定されるダンパー受け部材を有し、
前記ダンパー受け部材は、少なくとも天板と一対の側板とによって開口部を形成し、
前記開口部に前記倒立式ダンパーを当接させて前記風管開口部を閉塞状態とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの坑口又は坑内を閉塞する移動式トンネル防音壁のダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事の進行に伴う現場の移動に際しても、容易に移動することができる移動式トンネル防音壁が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に開示されているような移動式トンネル防音壁には、トンネル内に清浄な空気を導入するために風管が取り付けられる。特許文献1では、風管接続金具として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−52319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、トンネル内に清浄な空気を導入するための風管内には、ダンパーが配置される。このダンパーは、空気導入時には風管内を開とするように位置し、空気の導入停止時にはトンネル内からの粉塵が外部に漏れないように風管内を閉とする。
しかし、風管内にダンパーを配置すると、空気導入時にも通風抵抗となり圧力損失を生じる。
特にトンネル工事は、交替制で24時間作業が行われることもあり、ダンパーによる圧力損失で生じる電力ロスは決して小さくなく、シミュレーションによれば、年間数百〜数千万円の費用が無駄になることが判明した。
【0005】
本発明は、ダンパーによる風管内の圧力損失を無くし、電力ロスの無い移動式トンネル防音壁のダンパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の移動式トンネル防音壁のダンパー装置は、トンネルの坑口又は坑内を閉塞する移動式トンネル防音壁のダンパー装置であって、前記移動式トンネル防音壁には、車両が出入りする主扉と、風管を通す風管開口部と、前記風管開口部に配置されるダンパー機構とを備え、前記ダンパー機構が、倒立式ダンパーを有し、前記倒立式ダンパーは、一端を前記移動式トンネル防音壁に回動自在に設け、他端を自由端とし、前記風管の外部に設けたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、前記自由端を上方へ引き上げることで前記風管開口部を閉塞状態とし、前記風管開口部を開放状態とした時には、前記倒立式ダンパーによって前記風管を下方から支えることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、前記自由端には、凹部が形成され、前記風管開口部を閉塞状態とした時には、前記凹部に前記風管を収容することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、前記倒立式ダンパーを、前記移動式トンネル防音壁の切羽面に設けたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、前記ダンパー機構が、前記風管開口部の周囲に固定されるダンパー受け部材を有し、前記ダンパー受け部材は、少なくとも天板と一対の側板とによって開口部を形成し、前記開口部に前記倒立式ダンパーを当接させて前記風管開口部を閉塞状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、風管開口部を閉塞する倒立式ダンパーを風管外に配置することで、風管を使った送風時に風管内での抵抗を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による移動式トンネル防音壁をトンネルの外から見た正面図
図2】同移動式トンネル防音壁の上面図
図3】同装置の風管開口部を開放状態とした時の左側面図
図4】同装置の風管開口部を開放状態とした時の斜視図
図5】同装置の風管開口部を閉塞状態とした時の左側面図
図6】同装置の風管開口部を閉塞状態とした時の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による移動式トンネル防音壁のダンパー装置は、ダンパー機構が、倒立式ダンパーを有し、倒立式ダンパーは、一端を移動式トンネル防音壁に回動自在に設け、他端を自由端とし、風管の外部に設けたものである。本実施の形態によれば、風管開口部を閉塞する倒立式ダンパーを風管外に配置することで、風管を使った送風時に風管内での抵抗を生じることがない。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、自由端を上方へ引き上げることで風管開口部を閉塞状態とし、風管開口部を開放状態とした時には、倒立式ダンパーによって風管を下方から支えるものである。本実施の形態によれば、倒立式ダンパーによって風管を下方から支えるため、送風時に風管の躍りを防止でき、風管が風管開口部によって損傷することを防ぐことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、自由端には、凹部が形成され、風管開口部を閉塞状態とした時には、凹部に風管を収容するものである。本実施の形態によれば、風管を凹部に収容できるので、防音壁の移動時やトンネル発破時に、風管を切断したり取り外す必要が無いため、工事費の大幅な低減を図れる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、倒立式ダンパーを、防音壁の切羽面に設けたものである。本実施の形態によれば、トンネル発破時に発生する圧力によって倒立式ダンパーが開かれることがなく、倒立式ダンパーの閉塞の負担を軽減できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による移動式トンネル防音壁のダンパー装置において、ダンパー機構が、風管開口部の周囲に固定されるダンパー受け部材を有し、ダンパー受け部材は、少なくとも天板と一対の側板とによって開口部を形成し、開口部に倒立式ダンパーを当接させて風管開口部を閉塞状態とするものである。本実施の形態によれば、閉塞時にダンパー受け部材と倒立式ダンパーとの間に空間が形成されるため、この空間に風管を収めることができ、またこの空間に風管を収めることでトンネル発破時に発生する圧力が風管開口部から外に伝わることを防止できる。
【実施例】
【0014】
以下本発明の実施例について図面とともに詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施例による移動式トンネル防音壁をトンネルの外から見た正面図である。
移動式トンネル防音壁10は、車両が出入りする観音開きの主扉11a、11bと、主扉11a、11bの両側に配置される側部防音パネル12a、12bと、主扉11a、11bの上側に配置される上部防音パネル13と、主扉11a、11b、側部防音パネル12a、12b、及び上部防音パネル13を支える台座14a、14bとを備え、トンネル30の坑口又は坑内を閉塞する。
【0016】
主扉11a、11bは、長方形状の2枚のパネル板で構成される。
側部防音パネル12a、12bは、主扉11a、11b側の直線状の内側辺と、台座14a、14b側の直線状の底辺と、トンネル30内面側の円弧状の外側辺とで囲まれるパネル板で構成される。
上部防音パネル13は、主扉11a、11b側の直線状の内側辺と、トンネル30内面側の円弧状の外側辺とで囲まれるパネル板で構成される。
主扉11a、11bは、一対の支柱15a、15bの間に配置され、側部防音パネル12a、12bは、支柱15a、15bの外側に配置される。
台座14a、14bは、支柱15a、15bの下部に配置される。
【0017】
主扉11aは、蝶番16aで支柱15aに取り付けられ、主扉11bは、蝶番16bで支柱15bに取り付けられ、切羽方向に開く内開きとしている。
主扉11a、11bは、例えばかんぬき部材のような閉塞部材18によって閉塞状態を維持される。閉塞部材18は、切羽側に設けている。
トンネル発破時に発生する圧力は主扉11a、11bの切羽側の面に加わるが、主扉11a、11bを内開きとしていることで、主扉11a、11bの閉塞部材18の負担を軽減できる。
上部防音パネル13には、風管開口部20を設けている。
本実施例による移動式トンネル防音壁10は、重機によって牽引され、トンネル30の坑口又は坑内に設置され、トンネル30の坑口又は坑内から撤去される。
【0018】
図2は同移動式トンネル防音壁の上面図である。
図2に示すように、風管50を通す風管開口部20にはダンパー機構40が配置される。ダンパー機構40は、移動式トンネル防音壁10の切羽面に設けている。倒立式ダンパー41を、移動式トンネル防音壁10の切羽面に設けることで、トンネル発破時に発生する圧力によって倒立式ダンパー41が開かれることがなく、倒立式ダンパー41の閉塞の負担を軽減できる。
風管50は、可撓性を有し例えばビニールで形成される。
【0019】
図3は同移動式トンネル防音壁において、風管開口部を開放状態とした時の左側面図、図4は同移動式トンネル防音壁の風管開口部を開放状態とした時の斜視図、図5は同移動式トンネル防音壁の風管開口部を閉塞状態とした時の左側面図、図6は同移動式トンネル防音壁の風管開口部を閉塞状態とした時の斜視図である。
ダンパー機構40は、倒立式ダンパー41と、風管開口部20の周囲に固定されるダンパー受け部材42とを有している。
【0020】
倒立式ダンパー41は、一端41aを移動式トンネル防音壁10に回動自在に設け、他端41bを自由端とし、風管50の外部に設けている。本実施例のように、風管開口部20を閉塞する倒立式ダンパー41を風管50外に配置することで、風管50を使った送風時に風管50内での抵抗を生じることがない。
図3及び図4に示すように、倒立式ダンパー41は、風管開口部20を開放状態とした時には、倒立式ダンパー41によって風管50を下方から支える。本実施例によれば、倒立式ダンパー41によって風管50を下方から支えるため、送風時に風管50の躍りを防止でき、風管50が風管開口部20によって損傷することを防ぐことができる。
図5及び図6に示すように、倒立式ダンパー41は、他端(自由端)41bを上方へ引き上げることで風管開口部20を閉塞状態とする。
【0021】
図4及び図6に示すように、倒立式ダンパー41は、自由端41bに凹部41cが形成され、風管開口部20を閉塞状態とした時には、凹部41cに風管50を収容する。また、自由端41bの凹部41cの両側端は、凹部41cに向けて傾斜させている。なお、凹部41cは、自由端41bの全幅に渡って形成してもよい。また、凹部41cは、図示のように開口側が広い台形状であることが好ましい。また、凹部41cを形成する内周端には、ローラのような摺動部材41dを設けることが好ましい。
本実施例によれば、風管50を凹部41cに収容できるので、移動式トンネル防音壁10の移動時やトンネル発破時に、風管50を切断したり、取り外す必要が無いため、工事費の大幅な低減を図れる。なお、倒立式ダンパー41の上方への引き上げに伴い、風管50は凹部41cの両側端の傾斜によって凹部41cに導かれ、凹部41c内に収容される。凹部41cを開口側が広い台形状とし、又は摺動部材41dを設けることで、風管50はスムーズに凹部41cに導かれる。
図3及び図4に示すように、倒立式ダンパー41の自由端41bには、ワイヤー43の一端が接続されている。
ワイヤー43の他端は、図3及び図5に示すウインチ44に接続されている。
ウインチ44によってワイヤー43を巻き取ることで、倒立式ダンパー41は閉塞状態となり、ウインチ44によってワイヤー43を緩めることで、倒立式ダンパー41は開放状態となる。
【0022】
ダンパー受け部材42は、少なくとも天板42aと一対の側板42bとによって開口部42cを形成し、開口部42cに倒立式ダンパー41を当接させて風管開口部20を閉塞状態とする。本実施例によれば、閉塞時にダンパー受け部材42と倒立式ダンパー41との間に空間が形成されるため、この空間に風管50を収めることができ、またこの空間に風管50を収めることでトンネル発破時に発生する圧力が風管開口部20から外に伝わることを防止できる。
【0023】
ダンパー機構40は、開放状態にある倒立式ダンパー41を支える保持部材45を有している。保持部材45は、それぞれの側板42bに一端を接合した一対の第1保持部材45aと、移動式トンネル防音壁10に一端を接合して移動式トンネル防音壁10から延出させた一対の第2保持部材45bと、一対の第1保持部材45aのそれぞれの他端、及び一対の第2保持部材45bのそれぞれの他端に接合される第3保持部材45cとで構成している。
開放状態にある倒立式ダンパー41は、第2保持部材45bと第3保持部材45cとによって保持される。
風管50は、倒立式ダンパー41の上面で保持されるとともに、一対の側板42b及び一対の第1保持部材45aによって水平方向の動きを規制される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の移動式トンネル防音壁のダンパー装置は、移動式でないトンネル防音壁にも適用できる。
【符号の説明】
【0025】
10 移動式トンネル防音壁
11a、11b 主扉
12a、12b 側部防音パネル
13 上部防音パネル
14a、14b 台座
20 風管開口部
30 トンネル
40 ダンパー機構
41 倒立式ダンパー
41a 一端
41b 他端(自由端)
41c 凹部
42 ダンパー受け部材
42a 天板42a
42b 側板
42c 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6