(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項4記載の火災検知装置に於いて、前記火災検知手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断することを特徴とする火災検知装置。
請求項9記載の火災検知方法に於いて、前記火災判断手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断することを特徴とする火災検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、火災初期の段階で多い燻焼燃焼では、ごく微量の煙が立ち上がり、時間の経過と共に煙の量が増し、最終的には煙層が天井面に沿って発生し、従来の煙感知器は、天井面に発生した煙層を検知するようにしている。
【0007】
このように、ごく微量の煙が立ち上がり火災初期の段階で火災を検知することが重要になるが、従来の画像に対し画像処理を施して煙を検知する装置にあっては、例えば立ち立ち上る煙の動き(流動)を検知するようにしているが、この流動検知のためには十分な量の煙が立ち昇る段階にならないと検知することが困難であり、細い筋のようになってごく微量の煙が立ち上がる火災の初期で検知することはできないという問題があった。
【0008】
本発明は、燻焼火災および初期火災における煙を画像処理により検知可能とする火災検知装置及び火災検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(装置)
本発明は、火災検知装置に於いて、
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
撮像手段で撮像した画像から稜線を抽出して稜線画像を生成する稜線抽出手段と、
稜線抽出手段で生成した予め定められた時間間隔の稜線画像から稜線差分画像を生成する差分処理手段と、
差分処理手段で生成した稜線差分画像の中から煙
により形成される稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を
備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の形態にあっては、火災検知装置に於いて、
監視領域の画像を撮像する撮像手段と、
撮像手段で撮像した予め定められた時間間隔の画像から差分画像を生成する差分処理手段と、
差分処理手段で生成した差分画像から稜線を抽出して稜線差分画像を生成する稜線抽出手段と、
稜線抽出手段で生成した稜線差分画像の中から煙
により形成される稜線を検知して火災を判断する火災判断手段と、
を
備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、稜線抽出手段は、画像にエッジ強調処理を施して稜線を抽出し、
火災判断手段は、
稜線差分画像を複数の画像領域に分割し、画像領域毎に稜線の直線成分を抽出する直線成分抽出手段と、
画像領域毎に、直線成分抽出手段で抽出した直線成分の
時系列変化を検出する時系列変化検出手段と、
時系列変化検出手段で検出した
直線成分の時系列変化の中から煙による特徴的な所定の時系列変化を検知した場合に火災と判断する火災検知手段と、
を備える。
【0012】
直線成分抽出手段は、画像領域毎に、直線成分の傾きと発生頻度を抽出し、
時系列変化検出手段は、
直線成分抽出手段で抽出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を
検出し、
火災検知手段は、
煙による特徴的な時系列変化として、時系列変化検出手段で検出した直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと
発生頻度となる所定の時系列変化を検知した場合に火災と判断する。
【0013】
火災検知手段は、傾きが一定で発生頻度の異なる直線成分の時系列変化を1又は複数検知した場合に、火災と判断する。
【0014】
(方法)
本発明は、火災検知方法に於いて、
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
撮像手段で撮像した画像から稜線を稜線抽出手段により抽出して稜線画像を生成し、
稜線抽出手段で生成した予め定められた時間間隔の稜線画像から差分処理手段により稜線差分画像を生成し、
差分処理手段で生成した稜線差分画像の中から火災判断手段により煙
により形成される稜線を検知して火災を判断する、
ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の別の形態にあっては、火災検知方法に於いて、
撮像手段により監視領域の画像を撮像し、
撮像手段で撮像した予め定められた時間間隔の画像から差分処理手段により差分画像を生成し、
差分処理手段で生成した差分画像から稜線を稜線抽出手段により抽出して稜線差分画像を生成し、
差分処理手段で生成した稜線差分画像の中から火災判断手段により煙
により形成される稜線を検知して火災を判断する、
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の火災検知方法による他の特徴は、前述した火災検知装置の場合と基本的に同じになることから、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の火災検知装置及び火災検知方法によれば、撮像手段により撮像した監視領域の画像から、煙により発生する稜線を抽出して稜線画像を生成すると共に、予め定められた時間間隔の稜線画像の差分をとることで稜線差分画像を生成し、この稜線差分画像を対象に稜線の直線成分を抽出し、その傾きと発生頻度について時系列での変化を求めた結果、煙による特徴的な変化が得られ、これを検知することで、燃焼火災やゴミ入れに捨てた煙草等により発生するごく微量の煙の立ち上りを確実に検知し、火災を早期に判断して報知することを可能とする。
【0018】
また、画像から稜線を抽出した場合、煙以外の背景による稜線も抽出されるが、予め定められた時間間隔の稜線画像の差分をとることで、背景から抽出した稜線を消去して煙による稜線のみを抽出し、煙は揺らぎつつ上方に伸びていることから、稜線から抽出した直線成分の傾きと発生頻度について時系列変化を求めることで、煙による特徴的な直線成分の変化を検知して火災の判断を可能とする。
【0019】
また、予め定められた時間間隔の稜線画像の差分をとる場合、揺らぎつつ上方に伸びる煙から抽出した稜線は時間的に位置が異なり、このため差分画像には、現時点では消失している前回画像の煙稜線と新たに出現した現在画像の煙稜線の両方(2本の煙稜線)が生成され、差分を取らない場合に比べ略2倍となる稜線の直線成分が抽出され、煙による特徴的な直線成分の変化が強調されることで、火災の判断の確実性を向上可能とする
【発明を実施するための形態】
【0021】
[火災検知装置の概要]
図1は本発明による火災検知装置を設置した監視領域を示した説明図であり、
図1(A)は側面を示し、
図1(B)は監視カメラから見た正面を示す。
【0022】
図1(A)に示すように、監視領域16には撮像手段として機能する監視カメラ10が設置され、
図1(B)に示す監視領域の状態を撮像して画像を得ている。
【0023】
監視領域16に置かれた可燃物が何らかの原因で火災が発生する状況となり、火災の初期では図示のようにごく微量の煙24が細い筋となって立ち上っている。また監視領域16の壁面には構造や壁紙などにより、縦方向や横方向に直線的な筋として現れている。
【0024】
監視カメラ10で撮像した画像は伝送路を介して管理人室などに設置した画像処理装置12に伝送され、画像処理によりゴミ入れなどの火源18から立ち上がっている微量の煙24を検知して火災を判断し、火災検知信号を火災報知設備
14に出力して火災警報を出力するようにしている。
【0025】
[検出原理]
本発明により微量の煙を検知する原理を説明すると次のようになる。本発明は、
図2(A)に示す火源18から立ち上がる微量の煙24を画像処理により検知するが、この場合、初期の煙24は、
図2(B)に示すように、半透明かつ円筒状の物体が、揺らぎつつ火源18より上方へ伸びて行く煙モデル25として考えられる。
【0026】
この煙モデル25は、
図2(C)の濃度分布に示すように、中心部ほど煙濃度は濃く、周辺では相対的に薄くなるため、監視カメラ10で撮像した画像においては背景に対し煙24の中心が最も透過しない稜線を描くと考えられる。
【0027】
そこで、撮像した画像に対しエッジ強調処理を適用して煙の稜線を抽出し、次に、予め定められた時間間隔の2つの稜線画像から稜線差分画像を生成する。この稜線差分画像の生成により定常的(固定的)に存在する背景の稜線は消去され、煙稜線のみが残る。続いて、稜線差分画像を細かい領域に分割した後に、各々の領域に対してハフ変換を行って煙稜線の直線成分を抽出する。このようにして抽出した煙による直線成分は、時間の経過に伴い揺らぎつつ上方へ伸びて行く。このため抽出した直線成分の時系列での変化を捉えれば、煙による特徴的な時系列的変化を捉えることができる。
【0028】
以上の結果を基に、所定周期毎に撮像した画像から抽出した稜線の差分画像における各領域の直線成分の方向と
発生頻度の時系列変化を求めてみると、煙による特徴的な時系列変化が得られ、火災の初期で細い筋となって立ち上る微量の煙24の検知が可能となる。
【0029】
[火災検知装置]
(火災検知装置の機能構成)
図3は本発明による火災検知装置の機能構成の概略を示したブロック図である。
図3に示すように、火災検知装置は、監視カメラ10と画像処理装置12で構成され、画像処理装置12は、そのハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、稜線抽出手段として機能する稜線抽出部28、差分処理手段として機能する差分処理部30、火災判断手段として機能する火災判断部32を備え、更に、火災判断部32の機能として、直線成分抽出手段として機能する直線成分抽出部34、時系列変化検出手段として機能する時系列変化検出部36、及び火災検知手段として機能する火災検知部38を設けている。また、伝送部26は監視カメラ10で撮像した画像データを受信する適宜の伝送インタフェースが使用される。
【0030】
撮像手段として機能する監視カメラ10は、伝送部26の伝送制御により動画像データとして、例えば毎秒30フレームとなる監視領域の画像データを伝送し、画像処理装置12に設けた図示しないメモリに記憶する。
【0031】
稜線抽出部28は、メモリに記憶したフレーム単位の画像から稜線を抽出して稜線画像を生成する。例えばこの場合、稜線抽出部28は画像に対しエッジ強調処理の1つであるゾーベルフィルタ(Sobel Filter)を適用し、例えば
図4(A)の稜線画像20に示すように、稜線を抽出して稜線画像を生成する。なお、稜線抽出部28による稜線抽出処理は、全フレーム画像を対象とせず、処理速度の関係で所定フレーム数を間引きしたフレーム毎に行うようにしても良い。
【0032】
ゾーベルフィルタは、ある注目画素を中心とした上限左右の9つの画素値に対し、水平方向と垂直方向の2つの係数行列による所定の係数を乗算して総和を求めることで、画像中に存在するある領域の境界(エッジ)を検出可能とする微分処理であり、これを適用して、稜線抽出部28は
図1(B)に示した火源18から上方に立ち上がる煙の画像から煙24の稜線を抽出する。
【0033】
差分処理部30は、稜線抽出部28で生成した予め定められた時間間隔の2つの稜線画像から稜線差分画像を生成する。
図4は煙が存在しないた場合の差分処理を示した説明図であり、稜線抽出部28から時系列で生成される画像は
図4(A)のように変化のない背景の稜線を抽出した稜線画像20となる。差分処理部30は
図4(A)の変化のない隣接した2枚の同じ稜線画像20の差分をとることから、
図4(B)に示す点線のように背景稜線が消去された稜線差分画像21を生成する。
【0034】
図5は、
図1に示した微量の煙24が細い筋となって立ち上った状況において、稜線抽出部28により所定の間引きフレーム周期毎に生成した稜線画像F1〜F5と、これに基づき差分処理部30で生成した稜線差分画像F12〜F45を、火源を含む一部の画面領域を取り出して示した説明図である。
【0035】
まず稜線画像F1は煙が立ち昇る直前の画像であり、次の稜線画像F2は最初に煙が立ち昇り始めた画像である。稜線差分画像F12は、稜線画像F2が生成されたタイミングで、前回生成した稜線画像F1との差分を画素単位に演算し、所定の閾値以上の画素値を有効な差分画素(例えば黒の画素値)として残すことで、稜線差分画像F12を生成する。この稜線差分画像F12にあっては、固定的な背景稜線は点線のように消去され、新たに出現した煙稜線24aのみが抽出される。
【0036】
続いて稜線画像F3が生成されると、前回生成した稜線画像F2との差分処理を行って稜線差分画像F23を生成する。この稜線差分画像F23にあっては、固定的な背景稜線は点線のように消去され、新たに出現した煙稜線24bが抽出され、また前回出現した煙稜線24aが抽出される。即ち、稜線差分画像F23には前回出現したが現在は消失している煙稜線24aと、新たに出現した煙稜線24bの両方が生成される。なお、煙稜線24a,24bの重なり合う部分は消去される。
【0037】
以下、稜線画像F4,F5が生成された場合にも、同様な差分処理により、前回出現したが現在は消失している煙稜線と新たに出現した煙稜線を含む稜線差分画像F34,F45が生成される。
【0038】
図3の火災判断部32は、差分処理部30で抽出した稜線差分画像の中から煙による特徴的な所定の稜線を検知して火災を判断するものであり、具体的には、直線成分抽出部34、時系列変化検出部36、及び火災検知部38により火災を検知する。
【0039】
直線成分抽出部34は、差分処理部30で生成した稜線差分画像を、
図6の破線で示すように、複数の領域、例えば64×64画素の領域に分割し、領域毎に例えばハフ変換(Hough変換)を施して稜線24aの直線成分を抽出する。ハフ変換は画像中の直線線分を抽出する方法として知られており、画像中のn個の点に対し、ρ―θ平面上ではn個の曲線が得られ、この内、m個の曲線が1点で交わっていれば、このm個の点に対応する画像上のm個の点は同一直線上にあることとなり、これにより直線成分を抽出できる。
【0040】
時系列変化検出部36は、直線成分抽出部34によるハフ変換で抽出した煙稜線24aの直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化を求める。
【0041】
図7は、
図5の稜線差分画像F12,F23の全体を示した説明図であり、処理対象とする領域として、火源18の直上の領域A1、その上の領域A2を例にとって示している。
【0042】
図7(A)の差分領域画像F12にあっては、火源18から煙稜線24aが立ち上がって先端が領域A1にあり、
図7(B)の次の差分領域画像F23では、煙稜線24bが更に立ち上がって領域A1及び領域A2を通過し、また前回の煙稜線24aが生成されている。一方、時間的に変化のない背景稜線は、点線で示すように、消失している。
【0043】
図8は
図7の火源18の直上となる領域A1について所定の間引きフレーム周期毎の時刻t1〜t4で稜線差分画像の煙稜線から抽出した直線成分の時系列変化を示している。時刻t1では、領域A1を通過する煙稜線の直線成分は、領域下辺中央を原点とした二次元座標において、上方をθ1=0°とすると発生頻度は2本となり、右斜め上方をθ2とすると発生頻度は2本となり、左斜め上方をθ3とすると発生頻度は1本となる。
【0044】
このような領域A1を通過する煙稜線の直線成分は、立ち上がる煙の揺らぎに応じ時刻t2〜t4に示すように、その方向と発生頻度が変化する。また時刻t2〜t4では、前回の煙稜線の直線成分と今回の煙直線成分の両方が存在し、このため差分処理を行わない稜線画像の場合に対し、2本の煙稜線の直線成分を抽出することで、その発生頻度が略2倍程度増加することとなり、煙による特徴的な直線成分の変化を強調することができ、火災の判断の確実性を向上に寄与する。
【0045】
図9は
図8の領域A1の直線成分の時系列変化を示した説明図であり、直線成分を傾きθと発生頻度の長さを持つベクトルを累積して示している。
【0046】
図9に示すように、時刻t1で
ベクトルB1は(θ1,2)
ベクトルB2は(θ2,2)
ベクトルB2は(θ3,1)
となり、時刻t2〜t4では、その時系列変化に応じて累積的に増加していく。
【0047】
図10は
図7の火源18の直上となる領域A1の上となる領域A2について、所定の間引きフレーム周期毎の時刻t1〜t4で抽出した直線成分の時系列変化を示している。領域A2では立ち上がる煙の揺らぎが多くなっており、このため、時刻t1では、領域A2を通過する煙稜線の直線成分は、上方をθ1=0°とすると発生頻度は1本となり、右斜め上方をθ2とすると発生頻度は1本となり、左斜め上方をθ3とすると発生頻度は2本となり、更にθ2より大きい右斜め上方をθ4とすると発生頻度は1本となり、θ3より大きい左斜め上方をθ5とすると発生頻度は1本となる。
【0048】
このように領域A2を通過する煙稜線の直線成分は、立ち上がる煙の揺らぎに応じ時刻t2〜t4に示すように、その方向と発生頻度が変化する。また時刻T2〜t4では、前回の煙稜線の直線成分と今回の煙直線成分の両方が存在する。
【0049】
図11は
図10の領域A2の直線成分の時系列変化を示した説明図であり、直線成分を傾きθと発生頻度の長さを持つベクトルを累積して示している。
【0050】
図11に示すように、時刻t1で
ベクトルB1は(θ1,1)、
ベクトルB2は(θ2,1)
ベクトルB3は(θ3,2)、
ベクトルB4は(θ4,1)、
ベクトルB5は(θ5,1)
となり、時刻t2〜t4では、その時系列変化に応じて累積的に増加していく。
【0051】
図3の火災検知部38は、時系列変化検出部36により検知された各領域の直線成分の時系列変化の中から、煙による特徴的な時系列変化を検知して火災と判断する。
【0052】
例えば、時系列変化検出部36により、
図9及び
図11の時刻t4に示す直線成分の傾きと発生頻度の累積で与えられる時系列変化が検知された場合、煙による特徴的な時系列変化は、
図7及び
図9の時刻t4に示すように、傾きと発生頻度と異なる累積ベクトルが放射状に複数存在する所謂デイジーパターンとなっており、火災検知部38は、煙による特徴的な時系列変化を示すデイジーパターンを検知して火災を判断する。
【0053】
また、監視領域を人が移動した場合、例えば
図11の時刻t1に示すようなデイジーパターンとなる分割領域が一時的に発生するが、時系列的な
発生頻度となる累積ベクトルは増加せず、
発生頻度に対し所定の閾値を設定し、閾値以上の
発生頻度を煙判断の対象とすることで、人の移動に伴う稜線の直線成分を排除できる。
【0054】
また、監視領域に人が留まっている場合には、稜線画像の差分処理により、背景稜線として消去することができ、火災判断に影響を及ぼすことはない。
【0055】
[火災判断動作]
図12は
図3の画像処理装置による火災検知動作を示したフローチャートである。
【0056】
図12において、画像処理装置12は、ステップS1(以下「ステップ」は省略)で監視カメラ10により動画画像として例えば30フレーム/秒で撮像した監視領域の画像を取得してメモリに記憶し、S2で稜線検出部28によるゾーベルフィルタの適用により、所定の間引きフレーム周期で抽出した画像から稜線を抽出し、稜線画像を生成する。
【0057】
続いてS3で差分処理部30により今回生成した稜線画像から前回生成した稜線画像を差し引いて稜線差分画像を生成する。
【0058】
続いてS4で直線成分抽出部34により稜線差分画像を複数の領域に分割し、S5で領域毎にハフ変換を施して稜線の直線成分を抽出した後、S6に進んで時系列変化検出部36により、S5で抽出した直線成分の傾きと
発生頻度による時系列変化を求め、S7で火災検知部36により直線成分の傾きと発生頻度の時系列変化の中から煙による特徴的な直線成分の傾きと
発生頻度となる所定の時系列変化、例えばデイジーパターンを検知する火災判断を行い、その結果としてS8で火災を検知した場合はS9で火災検知信号を火災報知設備に出力して火災警報を出力させる。一方、S9で火災を検知しなかった場合は、S1に戻り、同様な処理を繰り返す。
【0059】
[画像処理装置の他の実施形態]
図13は他の実施形態となる火災検知装置の機能構成の概略を示したブロック図である。
図13に示すように、火災検知装置は、監視カメラ10と画像処理装置12で構成され、画像処理装置12は、差分処理部30、稜線抽出部28、火災判断手段として機能する火災判断部32を備え、更に、火災判断部32の機能として、直線成分抽出部34、時系列変化検出部36、及び火災検知部38を設けている。また、伝送部26は監視カメラ10で撮像した画像データを受信する適宜の伝送インタフェースが使用される。
【0060】
この実施形態は、
図3の実施形態に対し、稜線抽出部28の前段に差分処理部30を設けたことを特徴とする。このため差分処理部30は、メモリに時系列に記憶した隣接する画像から差分画像を生成する。この差分処理により差分画像を生成することで、定常的に存在する背景画像を消去し、火災の初期で細い筋となって立ち上るごく微量の煙の画像を抽出することを可能とする。
【0061】
また差分処理部30により生成する差分画像にはスパイク状のノイズが抽出される場合があることから、これに対しては孤立点を除去する処理を施す。
【0062】
稜線抽出部28は、差分処理部30で生成した差分画像から稜線を抽出して稜線差分画像を生成する点で相違するが、稜線抽出処理は
図3の実施形態と基本的に同じになる。
【0063】
また火災判断部32に設けた直線成分抽出部34、時系列変化検出部36、及び火災検知部38は
図3の実施形態と同じになることから、その説明を省略する。
【0064】
なお、稜線抽出部28は、差分処理部30で生成した差分画像を対象に稜線抽出処理を行うため、エッジ強調処理の1つであるゾーベルフィルタを適用する場合、画面全体に占める差分画像は例えば煙画像といった少ない画面部分だけとなり、差分処理により生成した画素値を持たない無効画素(消去画素)については、注目画素としてゾーベルフィルタの適用を行わないようにすることで、稜線抽出処理の負担を大幅に低減し、高速に稜線抽出を行うことが可能となる。
【0065】
〔本発明の変形例〕
(稜線抽出)
上記の実施形態にあっては、画像にゾーベルフィルタを適用して煙の稜線を抽出しているが、プレヴィットフィルタ(Prewitt Filter)等のエッジ強調処理に用いた適宜のフィルタを適用しても良い。
【0066】
(直線成分抽出)
上記の実施形態にあっては、ハフ変換を適用して煙の稜線を抽出しているが、Line Segment Detector(LSD)等の画像から直線成分を抽出する処理方法を適用しても良い。
【0067】
(画像処理装置)
上記の実施形態にあっては、監視カメラと画像処理装置を分離配置して伝送路により接続しているが、両者を一体化した装置としても良い。
【0068】
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。