特許第6139988号(P6139988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139988
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】多軸骨固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A61B17/70
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-119677(P2013-119677)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-255794(P2013-255794A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月20日
(31)【優先権主張番号】12171525.4
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/658,120
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・フィッシャー
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−519755(JP,A)
【文献】 特開2007−021206(JP,A)
【文献】 特開2013−248397(JP,A)
【文献】 特開2013−244412(JP,A)
【文献】 特開2011−125715(JP,A)
【文献】 特開2011−041802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0160981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨固定装置であって、
骨に固定されるシャンク(2)とヘッド(3)とを有する骨固定要素(1)と、
前記シャンクに結合され、枢動可能に前記ヘッドを受けるように構成され、ロッド(6)を受けるためのチャンネル(56)と中心軸(C)とを有する受け部(5)と、
前記受け部内に配置され、前記受け部内でヘッドをロックするために圧力を加えるように構成される、前記ロッドを受けるためのチャンネルを含む加圧部材(7,7′)と、
前記チャンネル内に挿入可能なロック部材(8,8′)とを備え、前記ロック部材は、上端部(81)と前記加圧部材に面する下端部(82)とを含み、
加圧部材(7,7′)の前記チャンネルの少なくとも1つの側壁(77,78,76′)は、変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)を有し、
ロック部材(8,8′)が中心軸(C)の方向で前記チャンネル内に進むと、まずロック部材(8,8′)が加圧部材(7,7′)に接触して、ヘッド(3)を締め付ける前記加圧部材に負荷が加えられ、
前記ロック部材がさらに進むと、ロック部材(8,8′)が加圧部材(7,7′)を押すことにより、変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)が変形し、それによりロック部材(8,8′)の下端部(82)が前記チャンネル内へより深く移動し、前記ロック部材はロッド(6)と接触してロッド(6)を締め付けるように構成され、 変形可能部分は、中心軸(C)に対して実質的に横方向に延在する少なくとも1つの切り欠き(107a,107b)を含む、多軸骨固定装置。
【請求項2】
多軸骨固定装置であって、
骨に固定されるシャンク(2)とヘッド(3)とを有する骨固定要素(1)と、
前記シャンクに結合され、枢動可能に前記ヘッドを受けるように構成され、ロッド(6)を受けるためのチャンネル(56)と中心軸(C)とを有する受け部(5)と、
前記受け部内に配置され、前記受け部内でヘッドをロックするために圧力を加えるように構成される、前記ロッドを受けるためのチャンネルを含む加圧部材(7,7′)と、
前記チャンネル内に挿入可能なロック部材(8,8′)とを備え、前記ロック部材は、上端部(81)と前記加圧部材に面する下端部(82)とを含み、
加圧部材(7,7′)の前記チャンネルの少なくとも1つの側壁(77,78,76′)は、変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)を有し、
ロック部材(8,8′)が中心軸(C)の方向で前記チャンネル内に進むと、まずロック部材(8,8′)が加圧部材(7,7′)に接触して、ヘッド(3)を締め付ける前記加圧部材に負荷が加えられ、
前記ロック部材がさらに進むと、ロック部材(8,8′)が加圧部材(7,7′)を押すことにより、変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)が変形し、それによりロック部材(8,8′)の下端部(82)が前記チャンネル内へより深く移動し、前記ロック部材はロッド(6)と接触してロッド(6)を締め付けるように構成され、
ロック部材(8)は、傾斜した表面部分(88)を含み、加圧部材(7)は、加圧部材の傾斜した表面部分(88)と接触する、対応する傾斜した表面部分(77b,78b)を含み、ロック部材(8)が加圧部材(7)に向けて進んだ時に変形可能部分(77,78)を中心軸から離れる方向に変形させる増大する力を発生させる、多軸骨固定装置。
【請求項3】
変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)は弾性的に変形可能である、請求項1または2に記載の多軸骨固定装置。
【請求項4】
チャンネルの側壁(77,78;76′)は、ロッドがチャンネル内に着座した時にロッド(6)の表面の上方を延在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項5】
前記変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)は前記側壁の各々に形成される、請求項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項6】
変形可能部分(77,78)は、変形可能部分を変形可能とする、中心軸(C)に対して実質的に平行な方向に延在する少なくとも1つのスリット(77a,78a)を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項7】
変形可能部分(76′,107a,107b)は、加圧部材(7′)の一部であり、ロック部材(8′)が押し付けられるとロック部材と加圧部材との間の軸方向の距離が減少するように変形する、請求項1からのいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項8】
変形可能部分(77,78;76′,107a,107b)は、加圧部材(7,7′)に一体片として形成される、請求項1からのいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項9】
ロック部材(8,8′)は一体成形物である、請求項1からのいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項10】
ロック部材(8,8′)は位置決めねじである、請求項1からのいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項11】
ロック部材の下端部(82)は、ロッドに接触するロック部材なくして加圧部材(7,7′)に接触する表面部分(88,108)を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項12】
表面部分(108)はリング形状を有する、請求項11に記載の多軸骨固定装置。
【請求項13】
受け部(5)は、上端部(51)および下端部(52)と、上端部から下端部に延在するボア(53)とを含み、ロッドのチャンネルは、実質的にU字の断面を有する上端部に隣接する凹部(56)によって形成される、請求項1から12のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項14】
2つの開放脚部(57,58)が凹部(56)によって形成され、内部ねじ切り部 (59)が、ロック部材(8,8′)の上で外部ねじ切り部(83)と協働する脚部に設けられる、請求項13に記載の多軸骨固定装置。
【請求項15】
加圧部材(7,7′)は、ボア(53,53a)内に設けられ、加圧部材は、実質的に変形可能部分(77,78;76′,107a)の位置において加圧部材とボアの内壁との間に隙間(79)が設けられるようにボア(53,53a)に対して寸法設定される、請求項13または14に記載の多軸骨固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に背骨または外傷への外科手術に使用される多軸骨固定装置に関する。多軸骨固定装置は、骨に固定されるシャンクとヘッドとを有する骨固定要素を含む。ヘッドは、受け部に枢動可能に保持され、加圧部材を介して圧力を加えることによって傾斜して固定することができる。受け部を伴い、骨固定要素は、受け部のチャンネルに配置されてロック部材によってしっかりと固定される安定化ロッドに結合される。加圧部材は、変形可能部分を含む。ロック部材がチャンネル内に進むと、まずロック部材が加圧部材に接触し、ヘッドを締め付ける加圧部材に負荷が加えられる。その後、ロック部材は変形可能部分が変形するように加圧部材に接触し、ロック部材はロッドと接触してロッドを締め付ける。このようなロック部材を伴い、ヘッドおよびロッドは、ロック部材と係合する単一の駆動部を有するツールを使用して順次固定することができる。
【0002】
米国特許出願公開第2003/0100896号A1は、多軸骨固定装置を開示している。ある実施形態において、固定要素が締められる際にヘッドとロッドとを同時にロックするために、一体成形の固定要素が使用される。
【背景技術】
【0003】
米国特許第7,972,364号は、第1のロック要素と第2のロック要素とを含む骨固定装置のロッド受け部においてロッドをしっかりと固定するためのロックアセンブリを開示している。第1のロック要素と第2のロック要素とを伴い、骨固定要素のヘッドおよびロッドは、2つの駆動部分を有するツールを使用して個別にロックすることができる。
【0004】
米国特許第8,088,152号B2は、ヘッド部とヘッド部に枢動可能に取り付けられるねじ切りされたシャフトとを有する少なくとも1つの骨ねじを含む整形外科用の保持システムを開示している。締め付け要素はヘッド部内に取り付けられ、ねじ切りされたシャフトに対して上方側から押し付けることができ、ねじ切りされたシャフトをヘッド部に対してしっかりと固定する。保持バーは、ヘッド部の受け部内に配置される。さらに、締め付け装置がヘッド部の上方側に設けられる。これにより、ねじ切りされたシャフトと保持バーとがヘッド部に対して定位置でしっかりと固定されるように、締め付け要素と保持バーとがヘッド部内に押し付けられる。締め付け装置は、締め付け装置の作動時に締め付け位置に変移する弾性的に変形可能な加圧要素を含む。このような構成を伴い、締め付け装置が作動すると、まず加圧要素は締め付け要素に当接する。これにより、枢動可能なねじ切りされたシャフトがヘッド部の定位置でしっかりと固定され、その一方で保持バーは自由に変移可能な状態のままとなる。さらに締め付け装置が作動した場合にのみ、加圧要素は弾性的に変形し、これによって保持バーに当接し、保持バーを定位置に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0100896号A1
【特許文献2】米国特許第7,972,364号
【特許文献3】米国特許第8,088,152号B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、操作が簡易化され、ヘッドとロッドとの固着が確実となる、改良された多軸骨固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に係る多軸骨固定装置によって達成される。さらなる発展形は、従属クレームに示される。
【0008】
多軸骨固定装置は、単一の駆動部分を有する単一のツールのみを使用して受け部内の骨固定要素のヘッドおよびロッドを順次ロックすることを可能とする。この順次ロック機構により、ヘッドをまずロックして、またはヘッドを少なくとも事前に締め付け、その後にロッドを締め付けてロッドおよびヘッドを最終的にロックすることができる。さらに、ヘッドおよびロッドを完全に固定し、その後にロッドの調節を行うためにロッドの固定を緩めることができる。
【0009】
これらのステップに必要なものは単一の駆動部分と一体成型の負荷部材とを有する単一のツールのみであるため、多軸骨固定装置の使用が容易となる。
【0010】
多軸骨固定装置は、数点の部品のみを含む。加圧部材およびロック部材は、既存の受け部と併せて使用することができる。これ故に、既存の受け部は、ヘッドおよびロッドを個別に固着させることができるように順次ロック機構によって改良することができる。順次ロック機構を有する多軸骨固定装置の部品の数は、ヘッドとロッドとが同時にロックされる多軸骨固定装置の部品の数と同じである。
【0011】
加圧部材およびロック要素は、製造が比較的容易である。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面により、実施形態の記載から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る多軸骨固定装置を示す展開斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る多軸骨固定装置の組み立てられた状態を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る多軸骨固定装置の加圧部材を底部から見た斜視図である。
図4図3に示される加圧部材を示す上面図である。
図5a図4のA−A線に沿った加圧部材の断面を示す断面図である。
図5b図5aの一部を示す拡大図である。
図6】第1の実施形態に係る多軸骨固定装置のロック部材を一方側から見た斜視図である。
図7図6のロック部材の上面図である。
図8図7のB−B線に沿ったロック部材の断面を示す断面図である。
図9】ロック部材の第1の構成におけるロッド軸に対して垂直な面に沿った、ロッドが挿入された多軸骨固定装置の断面を示す断面図である。
図10a】ロック部材が第2の構成を有する、図9の多軸骨固定装置を示す断面図である。
図10b図10aの一部を示す拡大図である。
図11a】ロック部材が第3の構成を有する、図9の多軸骨固定装置を示す断面図である。
図11b図11aの一部を示す拡大図である。
図12】第2の実施形態に係る多軸骨固定装置を示す展開斜視図である。
図13図12に係る多軸骨固定装置の加圧部材を示す上面図である。
図14a図13のC−C線に沿った図13の加圧部材を示す断面図である。
図14b図13の一部を示す拡大図である。
図15】第2の実施形態に係る多軸骨固定装置のロック部材の底部から見た斜視図である。
図16】第2の実施形態に係るロック部材を示す断面図である。
図17】ロッド軸に対して垂直な面に沿った断面を示し、ロック部材が第1の構成を有する、ロッドが挿入された第2の実施形態に係る多軸骨固定装置の断面図である。
図18a】第2の構成のロック部材を有する第2の実施形態に係る多軸骨固定装置を示す断面図である。
図18b図18aの一部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態に係る多軸骨固定装置は、図1および図2に示される。多軸骨固定装置は、ねじ切りされた部分を有するシャンク2とヘッド3とを有する固定要素1を含む。ヘッド3は球形の表面部分を有し、ツールと係合するための凹部4をシャンク2と対向する側に有する。受け部5は、骨固定要素1をロッド6に結合させるために設けられる。受け部5において、加圧部材7は、骨固定要素のヘッド3に圧力を加えるように配置される。
【0014】
図1および図2、ならびに図9から図12を参照すると、受け部5は、上端部51と下端部52とを有し、上端部および下端部を通って延在する長手軸Cを有する実質的に筒状の構成からなる。上端部51から下端部52に所定の距離を延在するボア53が長手軸Cと同軸上に設けられる。下端部52には開口54が設けられ、開口54の直径はボア53の直径よりも小さい。同軸のボアは、開口54に向けて狭まり、たとえば、ヘッド3のための座部を提供する球形の部分55を有する。部分55は、たとえば、玉継ぎ手と同様に受け部5内で枢動可能に保持されるヘッド3の機能を確保する、たとえば円錐形状などの任意の他の形状を有することができる。
【0015】
受け部5は、上端部51を始点に下端部52の方向に延在するU字凹部56をさらに含む。このU字凹部により、上端部51に向けて開放され、ロッド6を受けるためのチャンネルを規定する2つの自由脚部57,58が形成される。上端部51に隣接して、脚部57,58の内側面には、内部ねじ切り部59を有する部分が設けられる。示される実施形態において、内部ねじ切り部59は、実質的に水平な上方および下方ねじ切りフランクを有する平坦なねじ切り部である。他の任意のねじ切り部の形態を内部ねじ切り部59に使用することができるが、脚部の広がりを減少させる、または無くすねじ切り部の形態が好ましい。内部ねじ切り部59を有する部分の下方において、ボア53は、僅かに拡大された部分53aを含む。この部分53aは、以下に記載される加圧部材7の一部を拡大させるための空間をもたらす。
【0016】
図1および図3から図5に示されるように、加圧部材7は、上端部71と、下端部72と、2つの端部を通って延在し、加圧部材を取り付けた状態で受け部5の長手軸Cと同じであるシリンダ軸Cとを有する実質的に筒状の構成からなる。
【0017】
加圧部材は、その上端部71が受け部5の上端部51に向けて配向され、下端部72が受け部の下端部52に向けて配向されるように、受け部内に配置される。加圧部材7は、受け部のボア53の内径よりも僅かに小さい外径を有して下端部72に隣接する第1の筒状部分73を含む。これにより、加圧部材は、上端部51から受け部5に導入することができる。下端部72に隣接して、骨固定要素1のヘッド3の球形の外表面部分と協働する球形の凹部74が設けられる。同軸上の貫通穴75は、加圧部材を通って延在し、ツール(図示せず)を用いたねじ頭へのアクセスを可能とする。下端部72と対向する筒状部分73の端部は周縁部73aを有し、実質的に筒形状の凹部76がこの周縁部73aから下端部72の方向に延在する。凹部76は、ロッド6を挿入してガイドできる寸法となっている。
【0018】
2つの直立壁77,78は、周縁部73aに設けられ、それぞれの自由端が加圧部材7の上端部71を形成する。壁77,78は、凹部76と併せてロッドを挿入するためのチャンネルを形成するような高さを有し、チャンネルの深さは、ロッドの直径よりも大きい。これ故に、ロッドが挿入されると、加圧部材の上端部71は、ロッドの表面より上方に延在する。壁77,78は、実質的に筒形状を有し、シリンダ軸は加圧部材7のシリンダ軸である。壁77,78の各々は、シリンダ軸Cに実質的に平行な長手方向のスリット77a,78aによって2つの壁部分に分けられる。壁77,78の領域における加圧部材の外径は、筒状部分73における加圧部材の外径よりも僅かに小さい。これ故に、加圧部材が受け部のボア53に挿入され、壁77,78がボア53の部分53aに配置されると、ボア部分53aの内壁と壁77,78との間に隙間79ができる。スリット77a,78aにより、加圧部材7の筒状部分73に対して壁77,78が弾性的に変形可能となる。これは、壁77,78を径方向の外側に向けて曲げ、弾性的に直立位置に戻すことができることを意味する。これ故に、壁によって加圧部材の変形可能部分が形成される。上端部71に隣接して、壁部分77,78は、以下に記載のロック部材を当接させるための傾斜した内側縁部78bを含む。傾斜は、たとえば中心軸Cに対して約45°であってもよい。
【0019】
図1および図6から図8を参照して、ロック部材8について記載する。ロック部材8は、一体片である。示される実施形態において、それは位置決めねじである。ロック部材は、上端部81と、受け部5の脚部57,58の間にロック部材が挿入される時に加圧部材7に面する下端部82とを含む。ロック部材の外部ねじ切り部83は、受け部5の内部ねじ切り部59と協働する。同軸の凹部84は、下端部82に設けられる。凹部84は省略できる、および/または同軸の貫通穴を設ける事ができるものとする。上端部81に隣接して、ツールのための係合部分85が設けられる。係合部分85は、たとえば、長手方向の溝を有する凹部、六角形もしくは他の多角形の溝、またはトルクス(登録商標)形状の溝として形成してもよい、または、係合部分として適した他の任意の形状を有してもよい。これ故に、係合部分85を用い、ロック部材8は、駆動ツールのための単一の駆動部分を有する。
【0020】
下端部82に隣接し、壁77,78の間において加圧部材の内径よりもごく僅かに小さい外径を有する筒状部分87が設けられる。これにより、筒状部分87は、壁77,78の間に延在し得る。筒状部分87と外部ねじ切り部83との間には、壁77,78の傾斜した縁部77b,78bの傾斜角度に対応するように選択された円錐角を有する円錐部分88が設けられる。軸方向における円錐部分88の大きさは、壁部分77,78の傾斜した縁部77a,77bの大きさよりも大きい。このため、円錐部分88が傾斜した縁部77b,78bに係合すると、加圧部材に向かうロック部材の動きによって、傾斜した縁部77b,78bと円錐部分88とが所定長さにわたって接触した状態が維持される。
【0021】
骨固定装置の部品は、生体適合材料からなり、たとえば、生体適合金属、もしくはチタン、ステンレス鋼、ニチノール(登録商標)などのニッケルチタン合金のような金属合金からなる、または、たとえばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような生体適合プラスチック材料からなる。部品は、全てが同じ材料または異なる材料から作ることができる。
【0022】
使用時において、受け部5および固定要素1ならびに加圧部材7は、普通はヘッド3が受け部5の座部55において枢動可能に保持され、加圧部材7がヘッドの上に置かれるように事前に組み立てられる。通常、少なくとも2つの多軸骨固定装置がロッド6を介して接続される。骨固定要素1を骨に挿入した後、ヘッドに対して受け部を枢動させることによって受け部5は配列され、その後にロッド6が挿入される。
【0023】
図9から図11bを参照し、ロックの手順が記載される。まず、図9に示されるように、ロック部材8は、ロック部材の下端部82がロッド6に面した状態で受け部に挿入される。その後、ロック部材8は、壁77,78の間の空間に筒状部分87が延在し、ロック部材の円錐部分88が壁77,78の傾斜した縁部77b,78bに対して当接するまでさらにねじ込まれる。さらにロック部材8を受け部に内に進ませると、図10aおよび図10bに示されるように、加圧部材7がヘッド3に対して押される。これにより、ヘッド3は、調節可能な角度位置において受け部5に対して締め付けられ、摩擦によってこの位置に保持される。ヘッドは、ごく僅かに締め付けられてもよい、またはほぼ完全にロックされてもよい。
【0024】
その後、図11aおよび図11bに示されるように、ロック部材をさらに進ませると、ロック部材8が加圧部材7からの反作用力を受けることとなる。傾斜した縁部77b,78bが円錐部分88によって押されると、壁77,78は径方向外側に向けて曲げられる。これにより、壁部分とボア部分53aの内壁との間にある隙間79内に壁77,78が動く(図11aおよび図11bの矢印を参照)。これにより、ロック部材8の下端部82は、ロッドが位置するチャンネル内に動かされ、最終的にロッドと接触してロックする。この手順により、多軸骨固定装置の全体がロックされる。
【0025】
ヘッドのロックを緩めることなくロッドの位置を修正することができる。これを実現するために、ロック部材8は、ロッド6が変移可能となるまでねじ戻される。これは、加圧部材7の変形可能な壁77,78の弾性によって可能となる。また、ロック部材を完全に外して、多軸骨固定装置を完全に修正することもできる。
【0026】
多軸骨固定装置の第2の実施形態は、図12から図18bを参照して記載される。第2の実施形態は、加圧部材およびロック部材の設計が第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同じ部品および部分は、同じ参照符号が付与され、これらについての説明は繰り返さない。
【0027】
加圧部材7′は、上端部71および下端部72と、上端部71から下端部72に延在する実質的に筒状の部分73′とを有する。
【0028】
U字凹部76′は上端部71から下端部72に所定距離を延在する。U字凹部76′の深さは、ロッドの直径よりも大きいため、ロッド6が挿入されると、加圧部材の上端部71はロッドの表面の上方を延在する。小さな同軸の筒状凹部76a,76bは、上端部71からU字凹部76′によってそれぞれ形成されるチャンネルの側壁内に延在する。凹部76a,76bは、加圧部材7′の上方部分を変形可能とすることに寄与する。両側壁の上端部71から所定距離を置いて、中心軸Cに対して横方向または周方向に延在する切り欠き107a,107bが外表面に設けられる。切り欠き107a,107bの外形は、実質的にV字形状である、すなわち、切り欠きの幅は外表面に向けて増大する。これにより、加圧部材7′の上方部分が、軸方向において凹部76′の側壁を圧縮するように弾性的に変形可能となり、側壁の高さが減少する。
【0029】
第2の実施形態に係るロック部材8′は、ねじ切り部83から突出する筒状の突出部87′のみを含む点において、第1の実施形態のロック部材とは異なる。筒状の突出部87′は、加圧部材7の上端部71と接触するリング形状の当接部108がねじ切り部分の端部に形成されるように、ロック部材のねじ切り部83よりも小さい直径を有する。
【0030】
使用時において、図17に示されるように、ロック部材8′が受け部に挿入され、加圧部材7′に向けて進むと、リング形状の当接部108は、加圧部材の上端部71に接触する。ロック部材8′がさらに進められると、ヘッド3に対して加圧部材が押され、ヘッド3が摩擦によって締め付けられる。ヘッド3を座部5に押し込んだ時に加圧部材からロック部材8′が受ける反作用力により、ロック部材8がさらに進み、加圧部材7′の上端部71に対して当接部108が押される。これにより、切り欠き107a,107bによって形成された変形可能部分が変形し、切り欠きが狭まる。これ故に、ロック部材8の筒状部分87′は、ロッド6の表面と接触し、ロッドを押してロッドを固定する。
【0031】
ロッドの位置を修正するために、ロック部材を僅かに戻してロッドを再度変移可能にすることができる。加圧部材 7′の変形可能部分のねじ機能により、ヘッド3を定位置に保持するヘッド3に対する圧力が残り、ヘッドが締めつけられたままとなる。ロック部材8を最終的に締めることにより、アセンブリの全体がロックされる。
【0032】
上記の実施形態について、様々な変形が考えられる。特に、変形可能部分は、加圧部材の上方端に取り付けられる弾性要素によっても実現することができる。このような場合、締め付け力は、特定のばね力を有する要素を選択することによって調節することができる。これに加えて、異なる実施形態の特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0033】
多軸骨固定装置については、受け部において枢動可能に受けられる骨固定要素を含む任意の既知の多軸骨固定装置を使用することができる。特に、骨固定要素が受け部の下端部から受け部に導入される骨固定装置を使用してもよい。ヘッドは、球形状を有する必要はない。ヘッドは、単一の面に対する枢動を制限するために使用され得る平坦な部分を有することもできる。受け部は、特に内側において異なって形成されてもよい。受け部は、特定の方向に対して枢動角度を拡大するために傾斜した低い縁部を有することもできる。骨固定要素については、挿管の有無にかかわらず、ねじ、釘、任意の既知の骨固定具を使用することができる。
【0034】
ロック部材と受け部との接続は、ねじ接続である必要はなく、たとえば差し込み接続などの他の接続も可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 骨固定要素、2 シャンク、3 ヘッド、4 凹部、5 受け部、51 上端部、52 下端部、53 ボア、56 U字凹部、57,58 自由脚部、59 内部ねじ切り部、6 ロッド、7 加圧部材、71 上端部、72 下端部、76 凹部、77,78 直立壁、8 ロック部材。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18a
図18b