特許第6140007号(P6140007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140007
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20170522BHJP
   H02M 3/28 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   H02M7/12 W
   H02M7/12 A
   !H02M3/28 Q
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-138138(P2013-138138)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-12750(P2015-12750A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】石内 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋一
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−027201(JP,A)
【文献】 特開2005−295671(JP,A)
【文献】 特開2005−073362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相交流電圧源と、3つの電力変換部と、直流電圧源とを備え、スイッチング素子にコンデンサが並列接続されダイオードが逆並列接続されたスナバ付きスイッチを用いて3相交流電圧源と直流電圧源の間で電力転送を行う電力変換装置であって、
前記電力変換部は、正極端子にダイオードのカソードが接続されたスナバ付きスイッチと、負極端子にダイオードのアノードが接続されたスナバ付きスイッチとを、接続端子を介して同方向に直列接続した第1の相ブリッジ、第2の相ブリッジ、第3の相ブリッジ、及び第4の相ブリッジを有し、
前記第1の相ブリッジ及び前記第2の相ブリッジは並列接続され、前記第3の相ブリッジ及び前記第4の相ブリッジは並列接続され、前記第1の相ブリッジ及び前記第2の相ブリッジと、前記第3の相ブリッジ及び前記第4の相ブリッジとは負荷を介して接続され、
前記第1の相ブリッジは、それぞれの正極端子が前記3相交流電圧源の各相に接続され、それぞれの負極端子同士が短絡接続され、
前記第4の相ブリッジは、それぞれの正極端子同士が短絡接続され、それぞれの負極端子同士が短絡接続され、
前記第4の相ブリッジのいずれか1つに前記直流電圧源が並列接続されており、
前記第2の相ブリッジの接続端子に対する前記第1の相ブリッジの接続端子の電圧である1次電圧が、半周期毎に零電圧を介して、位相期間γで前記3相交流電圧源の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、前記第1の相ブリッジのスナバ付きスイッチ及び前記第2の相ブリッジのスナバ付きスイッチはスイッチングされ、
前記第4の相ブリッジの接続端子に対する前記第3の相ブリッジの接続端子の電圧である2次電圧が、前記1次電圧と同じ周波数で前記1次電圧より位相が(180度−制御角δ)だけ遅れて、半周期毎に零電圧を介して、前記位相期間γで前記直流電圧源の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、前記第3の相ブリッジのスナバ付きスイッチ及び前記第4の相ブリッジのスナバ付きスイッチはスイッチングされることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部の前記負荷は、
前記第1の相ブリッジの接続端子に接続された第1のインダクタと、
前記第3の相ブリッジの接続端子に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタと前記第2の相ブリッジの接続端子との間に1次巻線が接続され、前記第2のインダクタと前記第4の相ブリッジの接続端子との間に2次巻線が接続されたトランスと、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記位相期間γは、ゼロ以上の値を切片とした前記制御角δの一次関数であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相交流電圧源と直流電圧源との間で電力転送を行う電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3相交流電圧源と直流電圧源との間で電力転送を行う電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。図5は、3相交流電圧源と直流電圧源との間で電力転送を行う従来の電力変換装置の一例を表した回路図である。3相フルブリッジコンバータ83は、交流リアクトル(ACL)82を介して3相交流電圧源80に接続されている。また、3相フルブリッジコンバータ83の出力はコンデンサ85に接続されているので、コンデンサ85との間で電力転送することができる。しかし、コンデンサ85の電圧は3相交流電圧源80の線間電圧最大値よりも低くすることができないため、昇降圧チョッパ84を用いて、コンデンサ85と直流電圧源6との間の電力転送を行っている。つまり、交流リアクトル82、3相フルブリッジコンバータ83、コンデンサ85、及び昇降圧チョッパ84により、3相交流電圧源と任意の電圧の直流電圧源との間の電力転送を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−348834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図5に示す従来の電力変換装置は、3相フルブリッジコンバータ83や昇降圧チョッパ84のスイッチング素子のスイッチング時点において、必ずしもスイッチング素子の両端電圧が零であったり流れている電流が零であったりしないのでハードスイッチングとなりスイッチング損失が発生する。スイッチング損失はスイッチング周波数に比例するので、システムの効率を上げるためにスイッチング周波数を高くすることができない。すると、交流リアクトル82や昇降圧チョッパ84内のインダクタに流れるリップル電流を抑制するために、交流リアクトル82や昇降圧チョッパ84内のインダクタのインダクタンスを大きくする必要があり、その結果、交流リアクトル82や昇降圧チョッパ84内のインダクタの大きさが大きくなるという問題がある。またハードスイッチングであるが故に、スイッチング時点において回路内の電流や電圧の時間的変化率が非常に大きくなり、スイッチングに伴う大きな電磁波ノイズが発生してしまうという問題がある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、ソフトスイッチングが維持されたまま、3相交流電圧源と直流電圧源との間で電力転送することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換装置は、3相交流電圧源と、3つの電力変換部と、直流電圧源とを備え、スイッチング素子にコンデンサが並列接続されダイオードが逆並列接続されたスナバ付きスイッチを用いて3相交流電圧源と直流電圧源の間で電力転送を行う電力変換装置であって、前記電力変換部は、正極端子にダイオードのカソードが接続されたスナバ付きスイッチと、負極端子にダイオードのアノードが接続されたスナバ付きスイッチとを、接続端子を介して同方向に直列接続した第1の相ブリッジ、第2の相ブリッジ、第3の相ブリッジ、及び第4の相ブリッジを有し、前記第1の相ブリッジ及び前記第2の相ブリッジは並列接続され、前記第3の相ブリッジ及び前記第4の相ブリッジは並列接続され、前記第1の相ブリッジ及び前記第2の相ブリッジと、前記第3の相ブリッジ及び前記第4の相ブリッジとは負荷を介して接続され、前記第1の相ブリッジは、それぞれの正極端子が前記3相交流電圧源の各相に接続され、それぞれの負極端子同士が短絡接続され、前記第4の相ブリッジは、それぞれの正極端子同士が短絡接続され、それぞれの負極端子同士が短絡接続され、前記第4の相ブリッジのいずれか1つに前記直流電圧源が並列接続されており、前記第2の相ブリッジの接続端子に対する前記第1の相ブリッジの接続端子の電圧である1次電圧が、半周期毎に零電圧を介して、位相期間γで前記3相交流電圧源の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、前記第1の相ブリッジのスナバ付きスイッチ及び前記第2の相ブリッジのスナバ付きスイッチはスイッチングされ、前記第4の相ブリッジの接続端子に対する前記第3の相ブリッジの接続端子の電圧である2次電圧が、前記1次電圧と同じ周波数で前記1次電圧より位相が(180度−制御角δ)だけ遅れて、半周期毎に零電圧を介して、前記位相期間γで前記直流電圧源の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、前記第3の相ブリッジのスナバ付きスイッチ及び前記第4の相ブリッジのスナバ付きスイッチはスイッチングされることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明に係る電力変換装置において、前記電力変換部の前記負荷は、前記第1の相ブリッジの接続端子に接続された第1のインダクタと、前記第3の相ブリッジの接続端子に接続された第2のインダクタと、前記第1のインダクタと前記第2の相ブリッジの接続端子との間に1次巻線が接続され、前記第2のインダクタと前記第4の相ブリッジの接続端子との間に2次巻線が接続されたトランスと、を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る電力変換装置において、前記位相期間γは、ゼロ以上の値を切片とした前記制御角δの一次関数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3相交流電圧源と直流電圧源の間でソフトスイッチングを維持したまま電力転送することが可能となる。そのため、電磁波ノイズ及びスイッチング損失を小さくすることができる、スイッチング周波数を上げることができる、インダクタを小さくすることができるといった効果がある。さらに、交流リアクトルを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の第1の例を表した回路図である。
図2】直流電圧源間で電力転送を行う電力変換装置の一例を表した回路図である。
図3図2の回路図の動作電圧波形例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電力変換装置において、各相ブリッジの負極端子からみた正極端子の電圧波形を示す図である。
図5】従来の3相交流電圧源と直流電圧源の間の電力変換回路の一例を表した回路図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の第2の例を表した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による電力変換装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図2は直流電圧源間で電力転送を行う電力変換装置の一例を表した回路図である。電力変換装置100は、直流電圧源5と、電力変換部30と、直流電圧源6とを備える。相ブリッジ1は、正極端子にダイオードのカソードが接続されたスナバ付きスイッチ21と、負極端子にダイオードのアノードが接続されたスナバ付きスイッチ22とを、接続端子を介して同方向に直列接続することで構成される。同様に、相ブリッジ2はスナバ付きスイッチ23とスナバ付きスイッチ24から構成され、相ブリッジ3はスナバ付きスイッチ25とスナバ付きスイッチ26から構成され、相ブリッジ4はスナバ付きスイッチ27とスナバ付きスイッチ28から構成される。ここで、スナバ付きスイッチとは、単方向の電流をスイッチングできるスイッチング素子にダイオードを逆並列接続し、さらにコンデンサを並列接続したスイッチのことをいう。
【0013】
相ブリッジ1及び相ブリッジ2は並列接続され、相ブリッジ3及び相ブリッジ4も同様に並列接続される。相ブリッジ1及び相ブリッジ2と、相ブリッジ3及び相ブリッジ4とは、負荷を介して接続される。図2では、負荷として、外付けインダクタ11,12、及びトランス8を使用するが、その他の例として、相ブリッジ1の接続端子と相ブリッジ3の接続端子の間にインダクタを接続し、相ブリッジ2の接続端子と相ブリッジ4の接続端子とを短絡接続してもよい。
【0014】
相ブリッジ1と相ブリッジ2の正極端子には直流電圧源5の高電位側が接続され、相ブリッジ1と相ブリッジ2の負極端子には直流電圧源5の低電位側が接続され、直流電圧源5と相ブリッジ1と相ブリッジ2からブリッジ回路が構成される。同様に、相ブリッジ3と相ブリッジ4の正極端子には直流電圧源6の高電位側が接続され、相ブリッジ3と相ブリッジ4の負極端子には直流電圧源6の低電位側が接続され、直流電圧源6と相ブリッジ3と相ブリッジ4からブリッジ回路が構成される。
【0015】
トランス8の1次巻線には外付けインダクタ11と相ブリッジ2の接続端子とが接続され、外付けインダクタ11の他方には相ブリッジ1の接続端子が接続される。同様に、トランス8の2次巻線には外付けインダクタ12と相ブリッジ4の接続端子とが接続され、外付けインダクタ12の他方には相ブリッジ3の接続端子が接続される。
【0016】
全てのスナバ付きスイッチは、デューティー比50%の同じ周波数でスイッチングを行う。スナバ付きスイッチ22,24,26,28は、それぞれスナバ付きスイッチ21,23,25,27のデッドタイムを介した反転動作でスイッチングを行う。
【0017】
図3は、図2に示す電力変換装置100の動作波形を示す図である。電圧Vは相ブリッジ2の接続端子に対する相ブリッジ1の接続端子の電圧(1次電圧)であり、半周期毎に零電圧期間が存在する。電圧Vは相ブリッジ4の接続端子に対する相ブリッジ3の接続端子の電圧(2次電圧)であり、半周期毎に零電圧期間が存在する。2次電圧Vは1次電圧Vより位相が(180度−制御角δ)だけ遅れている。制御角δは伝送電力量で決まり、制御にて与えられる。制御角δが零の場合、1次電圧Vと2次電圧Vの極性が反転する事となる。制御角δを図3のように与えると、直流電圧源5から直流電圧源6へ電力を転送することができる。
【0018】
位相期間γは、1次電圧V又は2次電圧Vが直流電圧源5,6の電圧又は反転電圧を出力している位相期間である。また制御角δは、2次電圧Vが直流電圧源6の反転電圧−Eから零電圧に切替る位相から、1次電圧Vが直流電圧源5の電圧Eから零電圧に切替る位相までの期間としている。図3の1次電圧V及び2次電圧Vが切替る時刻t〜tにおける各電流I〜Iの大きさは、式(1)〜(4)で表される。また伝送電力Pは1次電圧V、2次電圧V2、及び電流Iが図3で示されるときに、1次電圧Vの波形と電流Iの波形から式(5)が導き出せる。
【0019】
【数1】
【0020】
【数2】
【0021】
【数3】
【0022】
【数4】
【0023】
【数5】
【0024】
ここで、角周波数ω=2πfでありfはスイッチング周波数、Lは負荷のインダクタンスであり、図2に示す例では、外付けインダクタ11,12、及びトランス8の合成インダクタンスとなる。式(5)より伝送電力Pは制御角δを使って制御できることがわかるので、制御角δは伝送電力Pの制御角として使用することができる。
【0025】
1次電圧Vが零電圧から+Eへ切替る時刻tでのスイッチング動作は、スナバ付きスイッチ22がターンオフし、デッドタイム期間経過後にスナバ付きスイッチ21がターンオンする。スナバ付きスイッチ22のターンオフはスナバ付きスイッチ22のコンデンサCによってスナバ付きスイッチ22の両端の電圧の上昇率が抑制されるので、スナバ付きスイッチ22のスイッチング損失が零の零電圧スイッチングでターンオフできる。
【0026】
時刻tのようにスナバ付きスイッチ22がターンオフした際に電流Iの極性が負であると、電流Iはスナバ付きスイッチ21のコンデンサCとスナバ付きスイッチ22のコンデンサCへ分流し、コンデンサC,C、外付けインダクタ11,12、及びトランス8の漏れインダクタとの共振が開始する。電流IはCを充電させてCを放電し、Cの電圧がEまで充電されてCの電圧が零まで放電されるとスナバ付きスイッチ1のダイオードDが導通する。
【0027】
この時、電流Iの絶対値が所定値Iminよりも大きければデッドタイム期間中にコンデンサCが零電圧まで放電してダイオードDを導通させることができる。そのため、スナバ付きスイッチ21のターンオン時にはダイオードDに電流が流れた状態でターンオンでき、スイッチング損失が零の零電圧スイッチングでターンオンすることができる。時刻t〜tにおいても同様な現象で零電圧スイッチングによるソフトスイッチングができる。ただし時刻t〜tの各スイッチングポイントにおいて、時刻t,t,t,tでは電流Iの極性が正、時刻t,t,t,tでは極性が負で、電流Iの絶対値が所定値Iminよりも大きい必要がある。
【0028】
例えば、1次電圧Vが零電圧から電圧Eへ切替る時刻tで零電圧スイッチングを行う条件は、電流Iの極性が負であり、Iの絶対値が所定値Imin以上であることである。ここで所定値Iminは、デッドタイム期間中にスナバコンデンサ充放電に必要な最小電流である。IからIが所定値Imin以上になるようにするには、図3から|I|,|I|>|I|,|I|なので、|I|,|I|>Iminとすればよい。ソフトスイッチングするための条件は、式(1),(2)から式(6)のようになる。式(6)から位相期間γを求めると式(7)のようになる。式(7)は式(8)と式(9)に分解され、式(9)のGは1〜2の値をとる。
【0029】
【数6】
【0030】
【数7】
【0031】
【数8】
【0032】
【数9】
【0033】
式(6),(7),(9)中のmax(E,E)は、EとEで大きいほうを選択するということを意味する。γは前述したように、直流電圧源5の電圧E又はその反転電圧−Eが1次電圧Vに出力されている位相期間であり、直流電圧源6の電圧E又はその反転電圧−EがVに出力されている位相期間でもある。式(8)のβ(本明細書において、「調整角」という)の値は大きく変動しないものなので予め求められる一定値とすると、位相期間γは調整角βを切片にもち、制御角δに比例する一次関数となり容易に求めることができる。
【0034】
このように、調整角βと制御角δによって位相期間γを求めることができる。そのため、1次電圧V図3に示すような波形になるようスイッチングすれば、時刻t〜tまでの全てのスイッチングポイントにおいて絶対値が所定値Imin以上の電流Iを流すことができ、零電圧スイッチングによるソフトスイッチングが可能となる。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置を表した回路図である。図1に示す電力変換装置10は、3相交流電圧源80と、3つの図2に示した電力変換部30と、直流電圧源6とを備える。接続方法は、各電力変換部30の相ブリッジ1の正極端子に3相交流電圧源80の各相を接続し、相ブリッジ1の負極端子同士を3つとも短絡接続する。また、直流電圧源6は電力変換装置10全体で1つとし、3つの相ブリッジ4のいずれか1つに並列接続される。また、相ブリッジ4の正極端子同士を3つとも短絡接続させ、同様に相ブリッジ4の負極端子同士も3つとも短絡接続させる。
【0036】
図3に示した電圧波形と同様に、各相ブリッジ2の接続端子からの各相ブリッジ1の接続端子の電圧波形である1次電圧Vが、半周期毎に零電圧を介して、位相期間γで3相交流電圧源80の各相の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、相ブリッジ1のスナバ付きスイッチ21,22、及び相ブリッジ2のスナバ付きスイッチ23,24はスイッチングされる。また、各相ブリッジ4の接続端子からの各相ブリッジ3の接続端子の電圧である2次電圧Vが、1次電圧Vと同じ周波数で1次電圧Vより位相が(180度−制御角δ)だけ遅れて、半周期毎に零電圧を介して、位相期間γで直流電圧源6の電圧と該電圧の反転電圧とを交互に繰り返すように、相ブリッジ3のスナバ付きスイッチ25,26及び相ブリッジ4のスナバ付きスイッチ27,28はスイッチングされる。
【0037】
図1に示す電力変換装置10は、図2に示す電力変換装置100と比較して、相ブリッジ1に並列に接続されるものが直流電圧源5ではなく、3相交流電圧源80の各相に接続されるという点が異なる。相ブリッジ1の負極端子は、3相交流電圧源80の中性点となる。
【0038】
図4は、各相ブリッジ1の負極端子からみた正極端子の電圧波形を示す図である。0は中性点の電位を示している。中性点の電位を図4のように下げることで、各電力変換部30の相ブリッジ1の負極端子からみた正極端子の電位は常に正となる。図4では、相ブリッジ1の負極端子からみた正極端子の最低電圧を、中性点の電位よりもさらにA[V]高いものとしている。3相交流電圧源80の電圧は、図2の回路の直流電圧源5と比べて変化量は大きくなるが、電圧極性が一定の直流電圧とみなせば、図2で示した方式によりソフトスイッチングによる電力変換が可能となる。
【0039】
図6は、電力変換装置10の変形例を示す回路図である。電力変換装置10は、図1に示す例では、相ブリッジ1,2と相ブリッジ3,4との間を外付けインダクタ11,12、及びトランス8を介して接続しているが、図6に示すように、外付けインダクタ7を介して接続するようにしてもよい。ただし、図1に示すようにトランス8を用いることにより、入出力間を電気的に絶縁し、安全性を高めることができる。
【0040】
このように、本発明に係る電力変換装置は、3相交流の1次電圧源と直流の2次電圧源との間で電力転送できる電力変換装置において、スイッチング時の電流をほぼ零にして電圧の立ち上がりを鈍らせ、ソフトスイッチングを維持することができる。かくして、電磁波ノイズやスイッチング損失を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、交流電圧と直流電圧との間で電力転送を行う任意の用途に有用である。例えば、風力発電のインバータと系統電圧との間の電力転送に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1〜4 相ブリッジ
5,6 直流電圧源
7,11,12 外付けインダクタ
8 トランス
10 電力変換装置
21〜28 スナバ付きスイッチ
30 電力変換部
80 3相交流電圧源
図1
図2
図3
図4
図5
図6