(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リミッタは、前記出力電力制御器の最高許容電圧を上限値として前記太陽電池の出力電圧を決定する電圧の大きさを制限する一方、前記出力電力制御器の最低許容電圧を下限値として前記太陽電池の出力電圧を決定する電圧の大きさを制限することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
前記太陽電池の出力電圧から前記リミッタが出力する電圧を減算し、減算後の電圧が一定値以上または一定値未満の場合には、前記積分器に出力する前記減算後の電圧を補償する補償器をさらに有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
前記補償器は、前記減算後の電圧が一定値以上の場合には、一定値を超えた電圧の大きさが大きくなるにしたがって補償値を大きくする一方、前記減算後の電圧が一定値未満の場合には、一定値に達するまでの電圧の大きさが大きくなるにしたがって補償値を大きくすることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
前記電力微分器及び前記電圧微分器は、前記出力電力制御器が前記太陽電池の出力電圧を決定する電圧を用いて制御した前記太陽電池の出力電圧に含まれるリップルを利用して、前記太陽電池の出力電力及び出力電圧を微分することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電源系統と連系し負荷に電力を供給する太陽電池発電システムが用いられている。太陽電池は、その出力電圧によって出力電力が大きく変動するという特性を有している。このため、太陽電池発電システムには、太陽電池の出力電力を最大限に利用するための工夫が施されている。
【0003】
その工夫の1つに、山登り法による最大電力点追尾制御(MPPT制御)がある。
【0004】
図18は従来のMPPT制御の説明図である。太陽電池の出力電力Pを太陽電池の出力電圧Vに対してプロットすると、プロットした点群は、図の曲線AまたはBに示すようにほぼ山形状の曲線(電圧−電力特性曲線)を形成する。なお、曲線Aは、太陽の日射量及び温度が比較的大きい場合を示し、曲線Bは、曲線Aの場合よりも太陽の日射量及び温度が小さい場合を示す。
【0005】
曲線Aの場合、電圧−電力特性曲線の頂点は、太陽電池の出力電力Pが最大となる最大電力点Pmaxである。最大電力点Pmaxのときの太陽電池の出力電圧Vは最適動作点Vmaxである。電圧−電力特性曲線は、太陽の日射量及び温度の変動に応じて変化する。太陽の日射量及び温度が小さくなり、たとえば、曲線Aから曲線Bのように変化すると、太陽電池の最大出力点Pmax及び最適動作点Vmaxは、最大出力点PmaxからP´maxに、及び、最適動作点VmaxからV´maxに変化する。
【0006】
最大電力点は、太陽の日射量及び温度の変動によって常に変化するので、太陽電池の出力電力を最大限に利用しようとすると、最大電力点を追尾するMPPT制御が必要になる。MPPT制御では、太陽電池の出力電力Pを周期的に計測し、出力電力Pが増加するように、太陽電池の動作電圧を制御する。
【0007】
下記特許文献1に記載されている、山登り法を用いた最大電力点追尾方法は、電圧−電力特性曲線上の2点の電圧値及び電流値を測定し、測定した電圧値及び電流値を用いて2点の電力値を算出する。算出した2点の電力値を比較し、電力値が大きい方に動作電圧を移動させる。そして、電圧−電力特性曲線の頂上付近(最大電力点付近)では、動作電圧がわずかに上昇下降を繰り返しても電力値があまり変化しない領域が有るので、その領域の両端の動作電圧を最大動作点とする。
【0008】
しかし、下記特許文献1に記載されている、最大電力点追尾方法では、最大動作点の移動量分、最大電力点を挟んで太陽電池の出力電力が変動し続ける。したがって、太陽電池の出力電力の変動を小さく抑えるためには、最大動作点の範囲(動作電圧の移動量)は大きくすることができない。一方で、太陽電池の出力電力の変動を小さく抑えるために最大動作点の範囲を小さくしすぎると、動作電圧を現動作点から最大電力点付近まで移動させるのに時間がかかり、最大電力点を太陽の日射量及び温度の変動に追従させることが難しくなる。
【0009】
また、下記特許文献2に記載されている、山登り法を用いた最大電力点追尾方法は、電圧−電力特性曲線上の最大電力点での電力の微分値がゼロ(頂点では傾きが0)であることを利用している。
【0010】
現動作点での動作電圧を微小に変化させたときの電圧及び電流を検出し、検出した電圧及び電流から求めた電力の微分値を演算し、電力の微分値がゼロになるような動作電流を求め、動作電流を繰り返し変動させて最大電力点に到達させる。
【0011】
この制御方法も、特許文献1と同様、最大電力点を挟んで太陽電池の出力電力が変動し続けるという問題がある。
【0012】
特許文献1及び2の問題を解消する技術として、下記特許文献3に示すものがある。特許文献3に開示されている最大電力点追尾方法では、太陽電池の動作電圧が、増加方向または減少方向のいずれかの方向に、設定した回数だけ変化した場合には、動作電圧の変化幅を大きくするように制御する。一方、太陽電池の動作電圧が、増加方向と減少方向とを繰り返すように変化した場合には、動作電圧の変化幅を小さくするように制御する。この制御によって、最大電力点を迅速に追尾するとともに最大電力点付近での太陽電池の出力電力の変動を抑えることができる。
【0013】
しかし、特許文献3に開示されている最大電力点追尾方法では、最大電力点を挟む太陽電池の出力電力の変動をある程度は抑制できるものの、最大電力点の追尾の応答性や安定性の面ではまだ不十分な点がある。
【0014】
さらに、特許文献3に開示されている技術を補う技術として、下記特許文献4に示す技術がある。特許文献4に開示されている太陽電池の発電制御装置では、追尾した最大電力点を所定時間一定に保持することによって、最大電力点付近での出力電力の変動を少なくしている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の実施形態を[実施形態1]から[実施形態4]に分けて説明する。
【0028】
[実施形態1]
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
図1は、実施形態1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。最大電力点追尾装置100は、乗算器110、微分器120、電圧微分器130、除算器140及び積分器150を有する。乗算器110と微分器120とで電力微分器160を構成する。電力変換装置200は、最大電力点追尾装置100、電力変換制御器220及び電力変換器230を有する。電力変換制御器220と電力変換器230とで出力電力制御器250を構成する。
【0029】
乗算器110は、太陽電池210の出力電流と出力電圧とを掛け合わせ、太陽電池210の出力電力を算出する。
【0030】
微分器120は、乗算器110が算出した太陽電池210の出力電力を微分する。太陽電池210の出力電力は、日照変動や負荷変動の影響により変動する。また、出力電力制御器250による太陽電池210の出力制御により、太陽電池210の出力電力は、微視的に見ても、僅かではあるが、微小時間の間に変動している。したがって、微分器120の微分結果によって太陽電池210の出力電力が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、一定であるのかが分かる。
【0031】
上記のように、乗算器110は太陽電池210の出力電力を算出し、微分器120は太陽電池210の出力電力を微分する。このため、乗算器110と微分器120とで構成される電力微分器160は、太陽電池210の出力電力を微分し、その微分値を出力する。
【0032】
電圧微分器130は、太陽電池210の出力電圧を微分する。太陽電池210の出力電圧は、日照変動の影響により変動する。また、出力電力制御器250による太陽電池210の出力制御により、太陽電池210の出力電圧は、微視的に見ても、僅かではあるが、微小時間の間に変動している。したがって、電圧微分器130の微分結果によって太陽電池210の出力電圧が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのかが分かる。
【0033】
除算器140は、微分器120で算出した太陽電池210の出力電力の微分値を、電圧微分器130で算出した太陽電池210の出力電圧の微分値で除算する。除算した結果は、太陽電池210の出力電力を太陽電池210の出力電圧で微分した値となる。
【0034】
積分器150は、除算器140で除算した結果、すなわち、太陽電池210の出力電力を太陽電池210の出力電圧で微分した値を積分し、積分した結果を、太陽電池の出力電圧を決定する電圧として出力する。
【0035】
最大電力点追尾装置100は、上記のように、太陽電池210の出力電力と出力電圧とから、太陽電池の出力電圧を決定する電圧を求める。太陽電池の出力電圧を決定する電圧は、最大電力点を迅速に追尾するために用いられる。
【0036】
電力変換制御器220は、太陽電池210の出力電圧を積分器150が出力した太陽電池の出力電圧を決定する電圧と比較し、太陽電池210の出力電圧を積分器150が出力した太陽電池の出力電圧を決定する電圧に一致させるための信号を出力する。
【0037】
電力変換器230は、電力変換制御器220が出力する、太陽電池210の出力電圧を積分器150が出力した太陽電池の出力電圧を決定する電圧に一致させるための信号を用いて、太陽電池210から出力される直流電力を、負荷240に適合する電圧または電流に変換して出力する。なお、電力変換器230にはIGBT等のスイッチングトランジスタを使用する。
【0038】
電力変換制御器220と電力変換器230とで出力電力制御器250を構成するが、出力電力制御器250は、最大電力点追尾装置100が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を用いて、太陽電池210の出力電力を制御する。最大電力点追尾装置100が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、太陽電池210の最大電力点を追尾するための電圧であるので、出力電力制御器250は、太陽電池210の最大電力点の直流電力を負荷240に供給することになる。
【0039】
上述の太陽電池210は、複数の太陽電池が配置された太陽電池パネルであり、負荷240は、一般的な電気機器のみならず、入力する電力を直流電力または交流電力に変換する機器、商用電源系統、直流電源系統、蓄電池も含む。最大電力点追尾装置100及び電力変換装置200は、回路要素(コンデンサ、コイル、抵抗器、リニアIC)を用いたハードウェアによって形成しても良いし、コンピュータを動作させるソフトウェアを用いてコンピュータ内に形成しても良い。
【0040】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
次に、実施形態1に係る最大電力点追尾装置100及び電力変換装置200の動作を
図2から
図5を参照しながら説明する。最大電力点追尾装置100は、太陽電池210の最大電力点を追尾するための、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を出力し、太陽電池210の使用効率を最大化する。なお、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を求めるに際しては、太陽電池210と出力電力制御器250とを接続するラインの電圧及び電流の微小変動を利用する。太陽電池210の出力電圧は出力電力制御器250により、僅かではあるが振動しており、出力電圧にはリップルが存在するからである。
【0041】
図2は、実施形態1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作説明に供する図である。具体的には、太陽電池210の出力電圧vと太陽電池210の出力電力pとの関係を示す電圧−電力特性曲線を示している。図中の最大電力点Pmaxは、電圧−電力特性曲線において、その曲線の頂点に位置する電力であり、太陽電池210から取り出すことのできる最大電力を示す。図中の最適動作点Vpmは、太陽電池210の出力電力がピークの時の太陽電池210の出力電圧である。実施形態1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の概略の動作を以下に説明する。
【0042】
(動作の概要)
微分器120は、太陽電池210の出力電力pを時間tで微分する。また、電圧微分器130は、太陽電池210の出力電圧vを時間tで微分する。
図2に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmよりも小さい(v<Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が正の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は正であり、また、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が負の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は負である。
【0043】
除算器140は、太陽電池210の出力電力pの微分値(dp/dt)を、太陽電池210の出力電圧vの微分値(dv/dt)で除算する。つまり、除算器140は、(dp/dt)/(dv/dt)を算出する。その算出結果はdp/dvであり
図2の太陽電池の電圧−電力特性曲線からv<Vpmの領域ではdp/dvは正となることがわかる。したがって、除算器140の除算結果が正であれば、(v<Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)/(dv/dt)の積分値}は、上昇方向にあり、次第に増加する。
【0044】
一方、
図2に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmよりも大きい(v>Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が正の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は負であり、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が負の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は正である。
【0045】
除算器140は、太陽電池210の出力電力pの微分値(dp/dt)を、太陽電池210の出力電圧vの微分値(dv/dt)で除算する。つまり、除算器140は、(dp/dt)/(dv/dt)を算出する。その算出結果は(dp/dv)であり
図2の太陽電池の電圧−電力特性曲線からv>Vpmの領域ではdp/dvは負となることがわかる。したがって、除算器140の除算結果が負であれば、(v>Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)/(dv/dt)の積分値}は、下降方向にあり、次第に減少する。
【0046】
さらに、
図2に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpm付近にある(v≒Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)がほぼ0になる。この場合、除算器140の除算結果はほぼ0であるので、(v≒Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)/(dv/dt)の積分値}は、一定になる。
【0047】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいとき)
次に、実施形態1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の概略の動作をさらに具体的に説明する。
図3は、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。
【0048】
太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの電圧(電力変換器230の入力電圧)は、前述のように、出力電力制御器250により、僅かではあるが振動しており、その電圧にはリップルが存在するため、たとえば図に示すような三角波状に変動する電圧vとなる。この電圧vが
図2の電圧−電力特性曲線上を動くので、太陽電池210の出力電力を算出する乗算器110から、図に示すように変動する出力電力pが出力される。なお、出力電力Pの波形は、太陽電池210の電圧−電力特性曲線に沿った波形となる。また、太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの三角波状に変動する電圧は、電圧微分器130によって微分され、その微分結果は、たとえば図に示すような矩形状に変動する波形dv/dtとなる。
【0049】
微分器120は乗算器110から出力される出力電力pを微分するので、微分器120からは図に示すようなdp/dtの波形を有する信号が出力され、電圧微分器130からは図に示すようなdv/dtの矩形状の波形を有する信号が出力される。なお、増減している出力電力pを微分すると、出力電力pが増加している領域では正の波形となり、出力電力が減少している領域では負の波形となる。
【0050】
次に、除算器140は微分器120から出力されるdp/dtの波形を有する信号を電圧微分器130から出力されるdv/dtの波形を有する信号で除算する。このため、除算器140からは、図に示すような折れ線状の(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvの波形を有する信号が出力される。なお、dv/dtが正の領域ではdp/dtは正であり、したがってdp/dvは正となる。また、dv/dtが負の領域ではdp/dtは負であり、したがって動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいときにはdp/dvは正となる。
【0051】
積分器150は、除算器140から出力される、dp/dvの波形を有する信号を積分する。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい領域では、除算器140の出力は正になるので、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間とともに上昇する。
【0052】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいとき)
図4は、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。
【0053】
太陽電池210と電力変換部230とを接続するラインの電圧(電力変換部230の入力電圧)は、図に示すような三角波状に変動する電圧vとなっている。この電圧vが
図2の電圧−電力特性曲線上を動くので、太陽電池210の出力電力を算出する乗算器110から、図に示すように変動する出力電力pが出力される。また、太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの三角波状に変動する電圧は、電圧微分器130によって微分され、その微分結果は、たとえば図に示すような矩形状に変動する波形dv/dtとなる。
【0054】
微分器120は乗算器110から出力される出力電力pを微分するので、微分器120からは図に示すようなdp/dtの波形を有する信号が出力され、電圧微分器130からは図に示すようなdv/dtの矩形状の波形を有する信号が出力される。なお、増減している出力電力pを微分すると、出力電力pが減少している領域では負の波形となり、出力電力が増加している領域では正の波形となる。
【0055】
次に、除算器140は微分器120から出力されるdp/dtの波形を有する信号を電圧微分器130から出力されるdv/dtの波形を有する信号で除算する。このため、除算器140からは、図に示すような折れ線状の(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvの波形を有する信号が出力される。なお、dv/dtが正の領域ではdp/dtは負であり、したがってdp/dvは負となる。また、dv/dtが負の領域ではdp/dtは正であり、したがって動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいときにはdp/dvは負となる。
【0056】
積分器150は、除算器140から出力される、dp/dvの波形を有する信号を積分する。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい領域では、除算器140の出力は負になるので、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間とともに下降する。
【0057】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmほぼ一致しているとき)
図5は、動作電圧Vが最適動作点Vpmとほぼ一致しているときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい電圧から最適動作点Vpmまで増加している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは正であり、また出力電力pも増加するので微分器120から出力されるdp/dtも正である。したがって、除算器140から出力される(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvも正となる。また、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい電圧に増加している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは正であり、また出力電力pは減少するので微分器120から出力されるdp/dtは負である。したがって、除算器140から出力される(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvは負となる。
【0058】
次に、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい電圧から最適動作点Vpmまで減少している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは負であり、また出力電力pは増加するので微分器120から出力されるdp/dtは正である。したがって、除算器140から出力される(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvは負となる。また、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい電圧に減少している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは負であり、また出力電力pは減少するので微分器120から出力されるdp/dtは負である。したがって、除算器140から出力される(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvは正となる。
【0059】
出力電圧vのリップルの中心と最適動作点Vpmとがほぼ等しくなるところで、除算器140から出力される(dp/dt)/(dv/dt)=dp/dvが正負対称となる。したがって、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間に依らず一定となる。
【0060】
なお、太陽電池210の出力電力pが最適動作点Vpm付近にあるときには、太陽電池210と電力変換部230とを接続するラインの電圧(電力変換部230の入力電圧)は、
図3及び
図4と同様に、三角波状に変動する電圧vとなる。
【0061】
以上のように、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmよりも小さい場合には、最大電力点追尾装置100の出力は上昇し、太陽電池210の出力電圧vは最適動作点Vpmに向かう。さらに、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmより離れたところでは,太陽電池210の電圧−電力特性曲線のカーブの傾きも大きいので,微分器120から出力されるdp/dtの絶対値の値は大きくなり最適動作点Vpmへより速く向かう。
【0062】
一方、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmよりも大きい場合には、最大電力点追尾装置100の出力は下降し、太陽電池210の出力電圧vは最適動作点Vpmに向かう。さらに,太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmより離れたところでは,太陽電池210の電圧−電力特性曲線のカーブの傾きも大きいので,微分器120から出力されるdp/dtの絶対値の値は大きくなり最適動作点Vpmへより速く向かう。
【0063】
さらに、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmとほぼ一致している場合には、最大電力点追尾装置100の出力は一定となり出力電圧Vpmを維持する。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る最大電力点追尾装置100及び電力変換装置200によれば、最大電力点Pmaxを迅速に追尾することができ、しかも安定した最大電力を得ることができる。
【0065】
[実施形態2]
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
図6は、実施形態2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。最大電力点追尾装置100Aは、第1乗算器115、微分器120、電圧微分器130、第2乗算器145及び積分器150を有する。第1乗算器115と微分器120とで電力微分器160を構成する。電力変換装置200Aは、最大電力点追尾装置100A、電力変換制御器220及び電力変換器230を有する。電力変換制御器220と電力変換器230とで出力電力制御器250を構成する。
【0066】
実施形態2に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aは、実施形態1に係る最大電力点追尾装置100及び電力変換装置200と比較して、除算器140に代えて第2乗算器145を有していることが異なり、その他の構成は同一である。
【0067】
実施形態2に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aの、第1乗算器115、微分器120、電圧微分器130、積分器150、電力変換制御器220及び電力変換器230は、実施形態1に係る最大電力点追尾装置100及び電力変換装置200の、乗算器110、微分器120、電圧微分器130、積分器150、電力変換制御器220及び電力変換器230と同一である。
【0068】
第2乗算器145は、微分器120で算出した太陽電池210の出力電力と電圧微分器130で算出した太陽電池210の出力電圧とを掛け合わせる。なお、積分器150は、第2乗算器145で算出した乗算結果を積分し、積分した結果を、太陽電池の出力電圧を決定する電圧として出力する。
【0069】
上述の太陽電池210は、複数の太陽電池が配置された太陽電池パネルであり、負荷240は、一般的な電気機器のみならず、入力する電力を直流電力または交流電力に変換する機器、商用電源系統、直流電源系統、蓄電池も含む。最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aは、回路要素(コンデンサ、コイル、抵抗器、リニアIC)を用いたハードウェアによって形成しても良いし、コンピュータを動作させるソフトウェアを用いてコンピュータ内に形成しても良い。
【0070】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
次に、実施形態2に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aの動作を
図7から
図10を参照しながら説明する。最大電力点追尾装置100Aは、太陽電池210の最大電力点を追尾するための、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を出力し、太陽電池210の使用効率を最大化する。なお、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を求めるに際しては、実施形態1と同様に、太陽電池210と出力電力制御器250とを接続するラインの電圧及び電流の微小変動を利用する。
【0071】
図7は、実施形態2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作説明に供する図である。具体的には、太陽電池210の出力電圧vと太陽電池210の出力電力pとの関係を示す電圧−電力特性曲線を示している。図中の最大電力点Pmaxは、電圧−電力特性曲線において、その曲線の頂点に位置する電力であり、太陽電池210から取り出すことのできる最大電力を示す。図中の最適動作点Vpmは、太陽電池210の出力電力がピークの時の太陽電池210の出力電圧である。実施形態2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の概略の動作を以下に説明する。
【0072】
(動作の概要)
微分器120は、太陽電池210の出力電力pを時間tで微分する。また、電圧微分器130は、太陽電池210の出力電圧vを時間tで微分する。
図7に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmよりも小さい(v<Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が正の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は正であり、また、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が負の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は負である。
【0073】
第2乗算器145は、太陽電池210の出力電力pの微分値(dp/dt)と、太陽電池210の出力電圧vの微分値(dv/dt)とを掛け合わせる。つまり、第2乗算器145は、(dp/dt)・(dv/dt)を算出する。その算出結果は正の値となる。したがって、第2乗算器145の乗算結果が正であれば、(v<Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)・(dv/dt)の積分値}は、上昇方向にあり、次第に増加する。
【0074】
一方、
図7に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmよりも大きい(v>Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が正の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は負であり、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)が負の場合、太陽電池210の出力電圧vの微分(dv/dt)は正である。
【0075】
第2乗算器145は、太陽電池210の出力電力pの微分値(dp/dt)と、太陽電池210の出力電圧vの微分値(dv/dt)とを掛け合わせる。つまり、第2乗算器145は、(dp/dt)・(dv/dt)を算出する。その算出結果は負の値となる。したがって、第2乗算器145の乗算結果が負であれば、(v>Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)・(dv/dt)の積分値}は、下降方向にあり、次第に減少する。
【0076】
さらに、
図7に示すように、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpm付近にある(v≒Vpm)ときには、太陽電池210の出力電力pの微分(dp/dt)がほぼ0になる。この場合、第2乗算器145の乗算結果はほぼ0であるので、(v≒Vpm)であることがわかり、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧{(dp/dt)・(dv/dt)の積分値}は、一定になる。
【0077】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいとき)
次に、実施形態2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の概略の動作をさらに具体的に説明する。
図8は、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。
【0078】
太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの電圧(電力変換器230の入力電圧)は、前述のように、出力電力制御器250により、僅かではあるが振動しており、その電圧にはリップルが存在するため、たとえば図に示すような三角波状に変動する電圧vとなる。この電圧vが
図7の電圧−電力特性曲線上を動くので、太陽電池210の出力電力を算出する第1乗算器115から、図に示すように変動する出力電力pが出力される。なお、出力電力Pの波形は、太陽電池210の電圧−電力特性曲線に沿った波形となる。また、太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの三角波状に変動する電圧は、電圧微分器130によって微分され、その微分結果は、たとえば図に示すような矩形状に変動する波形dv/dtとなる。
【0079】
微分器120は第1乗算器115から出力される出力電力pを微分するので、微分器120からは図に示すようなdp/dtの波形を有する信号が出力され、電圧微分器130からは図に示すようなdv/dtの矩形状の波形を有する信号が出力される。なお、増減している出力電力pを微分すると、出力電力pが増加している領域では正の波形となり、出力電力が減少している領域では負の波形となる。
【0080】
次に、第2乗算器145は微分器120から出力されるdp/dtの波形を有する信号と電圧微分器130から出力されるdv/dtの波形を有する信号とを掛け合わせる。このため、第2乗算器145からは、図に示すような折れ線状の(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号が出力される。なお、dv/dtが正の領域ではdp/dtは正であり、したがって(dp/dt)・(dv/dt)は正となる。また、dv/dtが負の領域ではdp/dtは負であり、したがって動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さいときには(dp/dt)・(dv/dt)は正となる。
【0081】
積分器150は、第2乗算器145から出力される、(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号を積分する。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい領域では、第2乗算器145の出力は正になるので、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間とともに上昇する。
【0082】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいとき)
図9は、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。
【0083】
太陽電池210と電力変換部230とを接続するラインの電圧(電力変換部230の入力電圧)は、図に示すような三角波状に変動する電圧vとなっている。この電圧vが
図7の電圧−電力特性曲線上を動くので、太陽電池210の出力電力を算出する第1乗算器115から、図に示すように変動する出力電力pが出力される。また、太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの三角波状に変動する電圧は、電圧微分器130によって微分され、その微分結果は、たとえば図に示すような矩形状に変動する波形dv/dtとなる。
【0084】
微分器120は第1乗算器115から出力される出力電力pを微分するので、微分器120からは図に示すようなdp/dtの波形を有する信号が出力され、電圧微分器130からは図に示すようなdv/dtの矩形状の波形を有する信号が出力される。なお、増減している出力電力pを微分すると、出力電力pが減少している領域では負の波形となり、出力電力が増加している領域では正の波形となる。
【0085】
次に、第2乗算器145は微分器120から出力されるdp/dtの波形を有する信号と電圧微分器130から出力されるdv/dtの波形を有する信号とを掛け合わせる。このため、第2乗算器145からは、図に示すような折れ線状の(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号が出力される。なお、dv/dtが正の領域ではdp/dtは負であり、したがってdp/dvは負となる。また、dv/dtが負の領域ではdp/dtは正であり、したがって動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きいときには(dp/dt)・(dv/dt)は負となる。
【0086】
積分器150は、第2乗算器145から出力される、(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号を積分する。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい領域では、第2乗算器145の出力は負になるので、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間とともに下降する。
【0087】
(動作電圧Vが最適動作点Vpmほぼ一致しているとき)
図10は、動作電圧Vが最適動作点Vpmとほぼ一致しているときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい電圧から最適動作点Vpmまで増加している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは正であり、また出力電力pも増加するので微分器120から出力されるdp/dtも正である。したがって、第2乗算器145から出力される(dp/dt)・(dv/dt)も正となる。また、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい電圧に増加している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは正であり、また出力電力pは減少するので微分器120から出力されるdp/dtは負である。したがって、第2乗算器145から出力される(dp/dt)・(dv/dt)は負となる。
【0088】
次に、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい電圧から最適動作点Vpmまで減少している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは負であり、また出力電力pは増加するので微分器120から出力されるdp/dtは正である。したがって、第2乗算器145から出力される(dp/dt)・(dv/dt)は負となる。また、動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも小さい電圧に減少している領域では、電圧微分器130から出力されるdv/dtは負であり、また出力電力pは減少するので微分器120から出力されるdp/dtは負である。したがって、第2乗算器145から出力される(dp/dt)・(dv/dt)は正となる。
【0089】
出力電圧vのリップルの中心と最適動作点Vpmとがほぼ等しくなるところで、第2乗算器145から出力される(dp/dt)・(dv/dt)が正負対称となる。したがって、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間に依らず一定となる。
【0090】
なお、太陽電池210の出力電力pが最適動作点Vpm付近にあるときには、太陽電池210と電力変換部230とを接続するラインの電圧(電力変換部230の入力電圧)は、
図8及び
図9と同様に、三角波状に変動する電圧vとなる。
【0091】
以上のように、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmよりも小さい場合には、最大電力点追尾装置100Aの出力は上昇し、太陽電池210の出力電圧vは最適動作点Vpmに向かう。さらに、太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmより離れたところでは,太陽電池210の電圧−電力特性曲線のカーブの傾きも大きいので,微分器120から出力されるdp/dtの絶対値の値は大きくなり最適動作点Vpmへより速く向かう。
【0092】
一方、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmよりも大きい場合には、最大電力点追尾装置100Aの出力は下降し、太陽電池210の出力電圧vは最適動作点Vpmに向かう。さらに,太陽電池210の出力電圧vが最適動作点Vpmより離れたところでは,太陽電池210の電圧−電力特性曲線のカーブの傾きも大きいので,微分器120から出力されるdp/dtの絶対値の値は大きくなり最適動作点Vpmへより速く向かう。
【0093】
さらに、太陽電池210の出力電圧vが、最適動作点Vpmとほぼ一致している場合には、最大電力点追尾装置100Aの出力は一定となり出力電圧Vpmを維持する。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aによれば、最大電力点Pmaxを迅速に追尾することができ、しかも安定した最大電力を得ることができる。
【0095】
[実施形態3]
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
図11は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。最大電力点追尾装置100Aは、第1乗算器115、微分器120、電圧微分器130、第2乗算器145及び積分器150を有する。第1乗算器115と微分器120とで電力微分器160を構成する。電力変換装置300は、最大電力点追尾装置100A、リミッタ170、補償器180、増幅器190、電力変換制御器220及び電力変換器230を有する。電力変換制御器220と電力変換器230とで出力電力制御器250を構成する。
【0096】
実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300は、実施形態2に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aと比較して、リミッタ170、補償器180、増幅器190を有していることが異なり、その他の構成は同一である。
【0097】
実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300の、第1乗算器115、微分器120、電圧微分器130、第2乗算器145、積分器150、電力変換制御器220及び電力変換器230は、実施形態2に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200Aと同一である。なお、本実施形態の電力変換制御器220は、出力電力または出力電流を制限する回路保護機能及び系統電圧が上昇した際に系統を保護する電力制限機能を有している。電力変換制御器220は、たとえば、太陽電池210から供給される直流電力が電力変換器230の最大定格電力を超えるときにその電力を制限する。また、電力変換器230は正常に安定して動作できる最低許容電圧および最高許容電圧を有する。
【0098】
リミッタ170は、積分器150が出力電力制御器250に出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の大きさを制限する。実施形態1及び2で説明したように、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、たとえば、起動時、制御が安定するまでの間、太陽電池210の電圧−電力特性曲線上を大きく変動する。リミッタ170は、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧が、設定した最低許容電圧を超えて低下しないように、また、設定した最高許容電圧を超えて増加しないように、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の変動幅を制限する。
【0099】
したがって、リミッタ170は、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の変動幅を制限することによって、最大電力点を迅速に追尾できるようにする。
【0100】
補償器180は、太陽電池210の出力電圧からリミッタ170が出力する電圧を減算し、減算後の電圧(偏差)が正側設定値以上または負側設定値以下の場合には、積分器150に出力する減算後の電圧を補償する。たとえば、補償器180に入力される電圧が正側設定値よりも大きければ、設定値を減算して出力し、補償器180に入力される電圧が負側設定値以下であれば、設定値を加算して出力する。さらに、補償器180に入力される電圧が負側設定値から正側設定値の範囲内であれば、ゼロの電圧を出力する。
【0101】
補償器180は、減算後の電圧が正側設定値以上の場合には、設定値を超えた電圧の大きさが大きくなるにしたがって補償値を大きくする。一方、減算後の電圧が負側設定値以下の場合には、設定値に達するまでの電圧の大きさが大きくなるにしたがって補償値を大きくする。つまり、補償器180は、偏差が大きくなると、その偏差を迅速になくすように、より大きな電圧を積分器150に出力する。したがって、補償器180は、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を、太陽電池210が実際に出力する電圧に収束させる役割を果たす。
【0102】
増幅器190は、補償器180が補償した補償後の電圧(補償値)を増幅し積分器150に出力する。増幅器190の増幅率は、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の応答性を勘案して、最適な値に設定する。補償器180が出力する補償値は、第2乗算器145が出力する乗算結果と加算されて、積分器150に出力される。
【0103】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
次に、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300の動作を
図12から
図14を参照しながら説明する。最大電力点追尾装置100Aは、太陽電池210の最大電力点を追尾するための、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を出力し、太陽電池210の使用効率を最大化する。電力変換装置300は、最大電力点追尾装置100Aが出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧が、電力変換制御器220の回路保護機能または電力制限機能が働くことに起因して大きく変動することを抑制する。なお、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧を求めるに際しては、実施形態1と同様に、太陽電池210と出力電力制御器250とを接続するラインの電圧及び電流の微小変動を利用する。
【0104】
図12は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作説明に供する図であり、リミッタの動作説明に供する図である。太陽電池210の出力電圧vと太陽電池210の出力電力pとの関係を示す電圧−電力特性曲線を用いてリミッタ170の動作を説明する。
【0105】
図中の最大電力点PmaxおよびP´maxは、それぞれの電圧−電力特性曲線において、その曲線の頂点に位置する電力であり、太陽電池210から取り出すことのできる最大電力を示す。図中の最適動作点VpmおよびV´pmは、太陽電池210の出力電力がピークの時の太陽電池210の出力電圧である。また、図中のVAmaxおよびVAminは、電力変換器230が有する正常に安定して動作できる最低許容電圧および最高許容電圧である。太陽電池210の出力電圧を決定する最大許容電圧VAmax及び最小許容電圧VAminは、最大電力点追尾装置100Aから出力される値とは異なる値である。
【0106】
なお、図中のPmaxおよびVpmは、太陽電池210の動作領域の電圧が高く、かつ、日射量が大きい場合の太陽電池210の最大電力点とその時の最適動作電圧である。また、P´maxおよびV´pmは、太陽電池210の動作領域の電圧が低く、かつ、日射量がはるかに小さい場合の太陽電池210の最大電力点とその時の最適動作電圧である。日射量が大きい場合の最大電力点はPmaxであり、そのときの太陽電池210の出力電圧Vpmは、電力変換器230の最高許容電圧を超えているので、電力変換器230が安定して運転することができない。また、太陽電池210に対する日射量がはるかに小さい場合の最大電力点はP´maxであり、そのときの太陽電池210の出力電圧V´pmは、電力変換器230の最低許容電圧以下であるので、電力変換器230が安定して運転することができない。
【0107】
太陽電池210に対する日射量が大きく、その最適動作電圧Vpmが電力変換器230の最高許容電圧VAmaxより大きい場合に、リミッタ170により制限された最大許容電圧VAmaxが電力変換制御器220に出力され、太陽電池210の出力電圧はVAmaxに制限される。この時、積分器150からは最大許容電圧VAmaxよりも大きいVpmの電圧が出力されているが、この電圧が最大許容電圧VAmaxに制限される。また、太陽電池210に対する日射量が小さく、その最適動作電圧V´pmが電力変換器230の最低許容電圧VAminより小さい場合に、リミッタ170により制限された最小許容電圧VAminが電力変換制御器220に出力され、太陽電池210の出力電圧はVAminに制限される。この時、積分器150からは最小許容電圧VAmimよりも小さいV´pmの電圧しか出力されていないが、この電圧が最小許容電圧VAminに上昇される。このように、電力変換装置300は、太陽電池210に対する日射量が変動し、最大電力点が大きく変動したとしても、リミッタ170の作用によって、許容範囲内の電圧を出力できる。
【0108】
実施形態3に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置は、電力変換器230が入力する動作電圧が最適動作点よりも大きいとき、その動作電圧が最適動作点よりも小さいとき、その動作電圧が最適動作点とほぼ一致しているときの、それぞれの動作が実施形態2の
図8から
図10に対応する動作と同一である。しかし、電力変換器230の電力制限機能または回路保護機能が働いたときには実施形態2の上記の動作とは異なる。
【0109】
図13は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作説明に供する図であり、補償器の動作説明に供する図である。太陽電池210の出力電圧vと太陽電池210の出力電力pとの関係を示す電圧−電力特性曲線を用いて補償器180の動作を説明する。図中の電圧−電力特性曲線は、太陽電池210に対する日射量がはるかに大きく、その最大電力が電力変換装置300の出力の装置最大定格電力PAmaxを越える場合のカーブを示す。
【0110】
図中の最大電力点Pmaxは、電圧−電力特性曲線において、その曲線の頂点に位置する電力であり、太陽電池210から取り出すことのできる最大電力を示す。図中の最適動作点Vpmは、太陽電池210の出力電力がピークの時の太陽電池210の出力電圧である。また、図中のV1は、電力変換装置300の電力制限機能または回路保護機能が働き、電力変換装置300の出力が装置最大定格電力PAmaxで制限されたときの太陽電池210の動作点である。さらに、図中のV2は、補償器180が働いたときの積分器150が出力する太陽電池210の出力電圧を決定する電圧である。
【0111】
図13に示すように、太陽電池210の動作電圧V1が最適動作電圧Vpmよりも大きいときは、実施形態2の説明
図9のように積分器150から出力される太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の大きさが低下する。
【0112】
この場合、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の大きさが0近くまで低下しようとするため、太陽電池210の最適動作点Vpmまでその電圧が復帰するのには時間がかかってしまう。そのため、太陽電池210の出力電圧と太陽電池210の出力電圧を決定する電圧との偏差が設定値を超えて大きくなったときには、補償器180によりその偏差の設定値を越えた量を取り出し、増幅器190で増幅し、積分器150の前段に加え、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧の大きさが大幅に低下しないようにしている。つまり、本実施形態の電力変換装置300では補償器180の作用によって、0近くまで低下しようとする太陽電池210の出力電圧をV1の電圧に収まるようにしている。
【0113】
図14は、電力変換制御器230が出力電力または出力電流を制限したときの最大電力点追尾装置及び電力変換装置の各部の波形図である。
【0114】
太陽電池210と電力変換部230とを接続するラインの電圧(電力変換部230の入力電圧)は、前述のように、出力電力制御器250により、僅かではあるが振動しており、その電圧にはリップルが存在するため、たとえば図に示すような三角波状に変動する電圧vとなる。太陽電池210の出力電力を算出する第1乗算器115から、図に示すように変動する出力電力pが出力される。また、太陽電池210と電力変換器230とを接続するラインの三角波状に変動する電圧は、電圧微分器130によって微分され、その微分結果は、たとえば図に示すような矩形状に変動する波形dv/dtとなる。
【0115】
微分器120は第1乗算器115から出力される出力電力pを微分するので、微分器120からは図に示すようなdp/dtの波形を有する信号が出力され、電圧微分器130からは図に示すようなdv/dtの矩形状の波形を有する信号が出力される。なお、増減している出力電力pを微分すると、出力電力pが減少している領域では負の波形となり、出力電力が増加している領域では正の波形となる。
【0116】
次に、第2乗算器145は微分器120から出力されるdp/dtの波形を有する信号と電圧微分器130から出力されるdv/dtの波形を有する信号とを掛け合わせる。このため、第2乗算器145からは、図に示すような折れ線状の(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号が出力される。なお、dv/dtが正の領域ではdp/dtは負であり、したがって(dp/dt)・(dv/dt)は負となる。また、dv/dtが負の領域ではdp/dtは正であり、したがって(dp/dt)・(dv/dt)は負となる。
【0117】
積分器150は、第2乗算器145から出力される、(dp/dt)・(dv/dt)の波形を有する信号を積分する。動作電圧Vが最適動作点Vpmよりも大きい領域では、第2乗算器145の出力は負になるので、積分器150が出力する、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、時間とともに下降する。しかし、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は太陽電池210の出力電圧と比較され、その偏差が補償器180に入力される。補償器180は、その偏差をなくすような電圧を出力し、増幅器190がその電圧を増幅して第2乗算器145の出力に加算し積分器150に入力する。そのため、積分器150から出力される、太陽電池210の出力電圧を決定する電圧は、
図14に示すように、ほぼ一定に保たれる。
【0118】
本実施形態に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300では、リミッタ170と補償器180の両方を設けて、安定した最大電力が得られるようにしている。しかし、リミッタ170または補償器180のどちらかを用いて、最大電力点追尾装置及び電力変換装置を構成することも可能である。
【0119】
[実施形態3の変形例1]
図15は、実施形態3の変形例1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。
【0120】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
図に示すように、変形例1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300と比較して、補償器180及び増幅器190を除いていることが異なり、その他の構成は同一である。
【0121】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
また、変形例1に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300の補償器180を除いた動作と同一である。
【0122】
すなわち、電力変換装置300は、太陽電池210に対する日射量が変動し、最適動作電圧が大きく変動したとしても、リミッタ170の作用によって、許容範囲内の電圧を出力できる。
【0123】
[実施形態3の変形例2]
図16は、実施形態3の変形例2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。
【0124】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
図に示すように、変形例2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300と比較して、リミッタ170を除いていることが異なり、その他の構成は同一である。
【0125】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
また、変形例2に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300のリミッタ170を除いた動作と同一である。
【0126】
すなわち、電力変換装置300は、日射量が変動し、最大電力点が大きく変動したとしても、補償器180の作用によって、0近くまで低下しようとする積分器150の太陽電池210の出力電圧を決定する電圧V1の近くの電圧に収まるようにしている。
【0127】
[実施形態4]
図17は、実施形態4に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成図である。
【0128】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の構成〕
実施形態4に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置400は、実施形態1に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置200と比較して、リミッタ170、補償器180、増幅器190を有していることが異なり、その他の構成は同一である。
【0129】
〔最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作〕
上記のような構成を有する、本実施形態に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の動作は、実施形態3に係る最大電力点追尾装置100A及び電力変換装置300と同一である。
【0130】
実施形態4に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置においても、実施形態3と同様に、太陽電池210の利用効率を向上させることができる。なお、実施形態4に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置も、実施形態3に係る変形例1及び変形例2と同様の構成を採用しても良い。
【0131】
以上のように、本発明に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置によれば、太陽電池から最大電力を受けるための制御に連続性を持たせながら、最大電力点から離れたところでは最大電力点への追従速度が速くなるようにし、また、最大電力点付近では太陽電池の動作電圧を決定する電圧の変動がなくなり,最大電力点を維持できるようになる。
【0132】
本発明に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の追従性能を弊社従来製品と比較すると、従来製品の追従速度が数V/1秒であるのに対して、本発明品は、100V/1〜2秒程度と高速化される。さらに、本発明に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置の最大電力点付近での変動性能を弊社従来製品と比較すると、従来製品の変動性能が最大電力点±数Vであるのに対して、本発明品は、最大電力点の電圧でほぼ固定される。
【0133】
したがって、本発明に係る最大電力点追尾装置及び電力変換装置によれば、最大電力点を迅速に追尾でき、真の最大電力点で電力変換部を動作させることができる。したがって、太陽電池の利用効率を最大化することができる。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。