(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140070
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/344 20060101AFI20170522BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20170522BHJP
F04C 27/00 20060101ALI20170522BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F04C18/344 321
F04C18/344 351M
F04C25/02 L
F04C27/00 321
F04C29/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-264365(P2013-264365)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-121121(P2015-121121A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】九野 雄一朗
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−112332(JP,A)
【文献】
実開昭54−072704(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/344
F04C 25/02
F04C 27/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に楕円形のポンプ室を有するハウジングと、前記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて前記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、前記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、を有するバキュームポンプにおいて、
前記ハウジングの外周に、外周縁を円形状に形成したフランジ部を設け、
前記ハウジングを閉鎖する円形状の底面と、底面から立設した側面とを有するハウジングカバーを設け、
前記フランジ部とハウジングカバーとの間に環状のシール部材を配置し、
前記ハウジングカバーの内周面と前記ハウジングのフランジ部の外周縁とは、前記ハウジングカバーの底面と垂直となる接合面を形成し、
前記シール部材は、前記接合面に配置され、
前記ハウジングカバーの内周面と前記ハウジングのフランジ部とを環状のシール部材を介して固定した、
ことを特徴とするバキュームポンプ。
【請求項2】
前記ハウジングカバーの側面内周面に螺子部を設け、前記フランジ部外周縁に前記螺子部と対応する螺子部を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体に取り付けるバキュームポンプの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の真空ポンプとして使用されるベーン式のバキュームポンプは公知である(例えば、特許文献1参照)。
従来のバキュームポンプにおいては、ハウジングのポンプ室で回転するロータの摺動部分に潤滑油を供給するように構成されており、摺動部分を潤滑した後の潤滑油はロータの回転に伴って、気体とともに排出通路からポンプ室の外部へ排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3874300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、特許文献1に記載されたポンプ室は断面視において楕円形状に形成しており、ポンプ室とポンプ室を閉鎖するカバーとは、シール部材を介して螺子等の固定部材によって固定されている。しかし、シール部材も楕円形状に形成しているため、均一な力が加わり難く、低温始動時のオイルにじみの原因となっていた。また、固定のための螺子等の固定部材を用意する必要があり、部品点数が増大していた。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、シール部材に均一な力を加えることができ、部品点数を少なくすることができるバキュームポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、内部に楕円形のポンプ室を有するハウジングと、前記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて前記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、前記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、を有するバキュームポンプにおいて、前記ハウジングの外周に、外周縁を円形状に形成したフランジ部を設け、前記ハウジングを閉鎖する円形状の底面と、底面から立設した側面とを有するハウジングカバーを設け、前記フランジ部とハウジングカバーとの間に環状のシール部材を配置し、前記ハウジングカバーの内周面と前記ハウジングのフランジ部の外周縁とは、前記ハウジングカバーの底面と垂直となる接合面を形成し、
前記シール部材は、前記接合面に配置され、前記ハウジングカバーの内周面と前記ハウジングのフランジ部とを環状のシール部材を介して固定したものである。
【0008】
請求項2においては、前記ハウジングカバーの側面内周面に螺子部を設け、前記フランジ部外周縁に前記螺子部と対応する螺子部を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、シール部材を環状にしたことにより、シール部材に係る力が均一となり、低温始動時のオイルにじみを防止することができる。
【0011】
請求項2においては、固定部材を設ける必要が無くなり、部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るバキュームポンプを示す断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る
図1のA−A線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係るバキュームポンプを
図1及び
図2を用いて説明する。
1はバキュームポンプとしてのベーンポンプである。このベーンポンプ1は図示しないエンジンルームの側面に固定されており、例えば、図示しないブレーキ倍力装置の負圧源として機能するようになっている。
ベーンポンプ1は、略楕円形のポンプ室2Aを有するハウジング2と、ポンプ室2A内に配置されるとともにポンプ室2Aの中心に対して軸心を偏心させて配置されたロータ3と、ポンプ室2A内に配置されるとともにロータ3とともに矢印方向に回転されてポンプ室2A内を常時複数の作動空間2a〜2cに区画するベーン4と、ハウジング2における大径部2Bの開口、すなわちポンプ室2Aの一端開口を閉鎖するハウジングカバー5とを備えている。
【0014】
ハウジング2は、その内部がポンプ室2Aとなる大径部2Bと、大径部2Bの端面の隣接位置に形成された中径部2Cと、中径部2Cの隣接位置となる小径部2Dとを備えており、中径部2Cおよび小径部2Dの内周面によってロータ3を回転自在に軸支している。ハウジング2の大径部2Bには、前記ブレーキ倍力装置からポンプ室2Aへ気体(空気)を吸引するための吸引通路6が設けられおり、この吸引通路6内には、前記ブレーキ倍力装置の負圧を維持するための図示しない逆止弁が設けられている。また、ポンプ室2Aの最下部に隣接する中径部2Cには、ポンプ室2Aから段部端面2Eまで貫通する軸方向の貫通孔が穿設されており、この貫通孔が、ポンプ室2Aからハウジング2の外部へ気体を排出するための排出通路7となっている。また、後に詳述するが、ハウジング2の段部端面2Eには、所要時に排出通路7を開閉するリードバルブ8が設けられている。
【0015】
ポンプ室2A内となるロータ3の軸方向の一端には直径方向のガイド溝3Aが形成されており、このガイド溝3Aに板状のベーン4が直径方向に摺動自在に取り付けられている。ベーン4の両先端にはポンプ室2Aの内周面と摺動するキャップ4Aが取り付けられている。
図1に示すように、ロータ3とベーン4が矢印方向に回転される際には、両キャップ4Aがポンプ室2Aの内周面と気密を保持して摺動するとともに、ベーン4の軸方向の両端面4B、4Bはハウジングカバー5の内壁面およびポンプ室2Aの内壁面と摺動し、かつ、ロータ3の外周面の一部がポンプ室2Aの内周面と接触した状態に維持される。それによって、ポンプ室2A内が拡縮可能な作動空間2a〜2cとして区画されるようになっている。
また、ロータ3の他端側の軸部とハウジング2の内周面とにわたっては、給油通路11が形成されている。給油通路11は、ロータ3の軸部に穿設されるとともに給油パイプ12が接続される軸方向孔3Bと、軸方向孔3Bの他端から連続する直径方向孔3Cと、さらに、ロータ3が矢印方向に回転される際に直径方向孔3Cと間欠的に連通するハウジング2の軸方向溝2Fとから構成されている。
【0016】
そして、エンジンが駆動されると、エンジンの駆動に連動してロータ3およびベーン4が
図1の矢印方向に回転されるので、3つの作動空間2a〜2cの容積が拡縮される。これにともなって吸引通路6を介して各作動空間2a〜2c内へ前記ブレーキ倍力装置内の気体(空気)が吸引されるとともに各作動空間2a〜2c内の気体は、排出通路7および開放された状態のリードバルブ8を介してポンプ室2Aの外部である前記エンジンルーム内へ排出されるようになっている。また、このようにロータ3とベーン4が回転される作動時には、給油通路11を介してポンプ室2A内とベーン4の摺動部分に潤滑油が供給されるようになっている。そして、ポンプ室2A内に流入した潤滑油はポンプ室2A内の下部に一次貯溜された後に、回転されるベーン4とそのキャップ4Aによって移動されてから排出通路7と開放状態のリードバルブ8を介してポンプ室2Aの外部である前記エンジンルーム内へ排出されるようになっている。
前記構成は、例えば特許文献1に開示された従来公知のベーンポンプの構成と変わるところはない。
【0017】
次に、ハウジング2のフランジ部2H及びハウジングカバー5について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
ハウジング2の外周には、外周縁を円形状に形成したフランジ部2Hが設けられている。フランジ部2Hは、ハウジング2の大径部2Bの中心と同心の円形状に形成されており、フランジ部2Hの直径は大径部2Bの長径よりも大きくなるように構成されている。また、フランジ部2Hには、外周縁に螺子部20aを設けている。
また、ハウジング2を閉鎖するためのハウジングカバー5は、円形状の底面5aと、底面5aから立設した側面5bとを有する。ハウジングカバー5の側面5bには、螺子部5cが設けられている。また、ハウジングカバー5の側面5bの螺子部5cが設けられた位置とは軸方向にずれた位置には、シール部材21を配置するための溝5dを設けている。フランジ部2Hとハウジングカバー5との間には、環状のシール部材21を配置している。
シール部材21は、ゴム等の弾性部材からなるOリングであり、油のにじみを防止する部材である。
【0018】
このように構成することにより、溝5dにシール部材21を配置し、ハウジングカバー5をフランジ部2Hに螺合することで、ハウジングカバー5の内周面とハウジング2のフランジ部2Hの外周面とを環状のシール部材21を介して固定することができる。
【0019】
フランジ部2Hが円形状に形成されており、シール部材21も円形状に形成されているため、ポンプ室2Aの圧力が高まった場合においても、シール部材21に圧力が均一にかかるため、油にじみを防止することができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、フランジ部2Hとハウジングカバー5との間に環状のシール部材21を介して固定する手段として、螺子部20a及び螺子部5cを設けたがこれに限定するものではなく、例えば、かしめ固定や、溶接固定を行うこともできる。
【0021】
以上のように、内部に楕円形のポンプ室2Aを有するハウジング2と、ポンプ室2A内に配置されるとともにロータ3によって回転されてポンプ室2Aを複数の作動空間2a〜2cに区画するベーン4と、ポンプ室2A内に潤滑油を供給する給油通路11と、を有するベーンポンプ1において、ハウジング2の外周に、外周縁を円形状に形成したフランジ部2Hを設け、ハウジング2を閉鎖する円形状の底面5aと、底面5aから立設した側面5bとを有するハウジングカバー5を設け、フランジ部2Hとハウジングカバー5との間に環状のシール部材21を配置し、ハウジングカバー5の内周面とハウジング2のフランジ部2Hとを環状のシール部材21を介して固定したものである。
このように構成することにより、シール部材21を環状にしたことにより、シール部材21に係る力が均一となり、低温始動時のオイルにじみを防止することができる。
【0022】
また、ハウジングカバー5の側面内周面に螺子部20aを設け、フランジ部2H外周縁に前記螺子部20aと対応する螺子部5cを設けたものである。
このように構成することにより、ボルト、ナット等の固定部材を設ける必要が無くなり、部品点数を少なくすることができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、溝5dをハウジングカバー5の側面5bに設けているが、これに限定するものではなく、例えば、ハウジングのフランジ部の底面に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ベーンポンプ(バキュームポンプ)
2 ハウジング
2A ポンプ室
2B 大径部
2C 中径部
2D 小径部
2F 軸方向溝
2H フランジ部
3 ロータ
3A ガイド溝
3B 軸方向孔
3C 直径方向孔
4 ベーン
4A キャップ
4B 両端面
5 ハウジングカバー
5a 底面
5b 側面
5c 螺子部
5d 溝
6 吸引通路
7 排出通路
8 リードバルブ
11 給油通路
12 給油パイプ
20a 螺子部
21 シール部材