(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140123
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ストレーナ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20170522BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20170522BHJP
B01D 35/16 20060101ALI20170522BHJP
F16L 55/24 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B01D35/02 A
B01D29/10 501C
B01D29/10 510C
B01D29/10 520C
B01D29/10 530A
B01D35/16
F16L55/24 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-213647(P2014-213647)
(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-77986(P2016-77986A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000155285
【氏名又は名称】株式会社明和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 隆
(72)【発明者】
【氏名】中尾 年雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲司
(72)【発明者】
【氏名】明渡 章生
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−185411(JP,U)
【文献】
特開2014−094346(JP,A)
【文献】
特開2013−150940(JP,A)
【文献】
実開昭57−002111(JP,U)
【文献】
米国特許第08524075(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D29/00−29/96
B01D35/00−35/34
F16L55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口および流出口を有するケーシングと、前記ケーシング内に縦置きされる円筒状のろ過部材と、前記ケーシングから上端部を突出させた状態でろ過部材の内側に配され、上端のみが開放された中空軸と、前記中空軸の下端側に取り付けられ、前記ろ過部材の内面に対向する外周溝を有するスクレーパと、前記中空軸と同軸上に設けられ、中空軸の上端部を収容するシリンダと、前記中空軸の上端部に取り付けられ、前記シリンダ内の空間を上部の液室と下部の気室に仕切るピストンと、前記シリンダの液室のシリンダポートに接続される排出弁とを備え、
前記スクレーパは円環状に形成され、前記スクレーパの外周溝の内側空間と前記中空軸の中空部とを連通する排出流路の中央部を形成する複数のスポークで前記中空軸に取り付けられており、
前記排出弁を開いたときに、前記ろ過部材の外側の流体が前記スクレーパの外周溝に流れ込み、前記排出流路、中空軸の中空部およびシリンダの液室を通って外部へ排出されると同時に、前記スクレーパが前記ピストンおよび中空軸と一体に上昇するようにしたストレーナ。
【請求項2】
前記円環状に形成したスクレーパを、前記ろ過部材の軸方向に対して傾斜させて配したことを特徴とする請求項1に記載のストレーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水等のパイプラインに取り付けられ、ろ過部材に付着した異物を除去する機構を備えたストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
上水、農業用水および工業用水等の流体を流すパイプラインの途中に設置され、流体中に含まれる異物を円筒状の網かご等のろ過部材で取り除くストレーナは、そのろ過部材の目詰まりによるトラブルを防止するために、定期的にまたはろ過部材の目詰まりの状況に応じてろ過部材に付着した異物を除去する必要がある。しかし、ろ過部材をストレーナから取り外して洗浄する際には、その作業に非常に手間がかかるし、作業中はストレーナの下流側に流体を流せなくなるという問題があった。
【0003】
そこで、ケーシング内に円筒状のろ過部材を設けたストレーナでは、そのろ過部材と同心に配される回転軸に、ろ過部材の内面または外面に近接または摺接する状態で軸方向に延びるスクレーパを取り付け、その回転軸をモータや人力で回転させることにより、ろ過部材を取り外すことなく、スクレーパでろ過部材に付着した異物を掻き落とし、ケーシングの異物排出口に取り付けたバルブを開いて掻き落とした異物を外部に排出できるようにしたものが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、特許文献2には、上記と同様に回転軸に取り付けられて円筒状のろ過部材の内面に対向するスクレーパを中空に形成し、そのスクレーパのろ過部材との対向面に吸引口を設けるとともに、その中空部を回転軸に沿って延びる逆洗排出管の中空部に連通させたストレーナが提案されている。このストレーナでは、逆洗排出管の一端を大気に開放すると、ろ過部材の外側の流体がろ過部材を逆洗してスクレーパの吸引口に流れ込み、この逆洗流体とともに異物がスクレーパおよび逆洗排出管の中空部を通って外部に排出される。したがって、逆洗排出管の開放と同時に回転軸を回転させることにより、ろ過部材全体の異物除去を行うことができる。
【0005】
一方、特許文献3には、上記の回転軸とスクレーパに代えて、円筒状のろ過部材の内側で上下動可能に支持される操作軸の外周に、ろ過部材の内面に摺接する円盤状のスクレーパを固定した機構を設け、その操作軸を手動で上下させることにより、ろ過部材に付着した異物をスクレーパで掻き落とすようにしたストレーナが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4−54803号公報
【特許文献2】実公昭56−7297号公報
【特許文献3】実開平1−65610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述したような従来のストレーナでは、ろ過部材に付着した異物を除去する機構(以下、単に「異物除去機構」とも称する。)を作動させる(回転軸を回転させたり操作軸を上下させたりする)のに大きなモータの駆動力や人力などの外部動力を必要とする。このため、異物除去作業を行う際に、電動式のものでは電力消費量が大きくなるし、手動式のものでは作業負荷が大きくなり、作業に手間がかかることが多い。また、電動式のものは、電源のないところ、例えばほ場で農業用水を流すパイプライン等には設置できないという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、大きな外部動力を必要とせずに異物除去機構を作動させることができるストレーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のストレーナは、流入口および流出口を有するケーシングと、前記ケーシング内に縦置きされる円筒状のろ過部材と、前記ケーシングから上端部を突出させた状態でろ過部材の内側に配され、上端のみが開放された中空軸と、前記中空軸の下端側に取り付けられ、前記ろ過部材の内面に対向する外周溝を有するスクレーパと、前記中空軸と同軸上に設けられ、中空軸の上端部を収容するシリンダと、前記中空軸の上端部に取り付けられ、前記シリンダ内の空間を上部の液室と下部の気室に仕切るピストンと、前記シリンダの液室のシリンダポートに接続される排出弁とを備え、前記スクレーパの外周溝の内側空間と前記中空軸の中空部とは排出流路で連通されており、前記排出弁を開いたときに、前記ろ過部材の外側の流体が前記スクレーパの外周溝に流れ込み、前記排出流路、中空軸の中空部およびシリンダの液室を通って外部へ排出されると同時に、前記スクレーパが前記ピストンおよび中空軸と一体に上昇する構成としたのである。
【0010】
上記の構成によれば、シリンダの排出弁を開くだけで、ろ過部材の外側の流体がろ過部材を逆洗してスクレーパの外周溝に流れ込み、この逆洗流体とともに異物が排出流路、中空軸の中空部およびシリンダの液室を通って外部へ排出されるようになるとともに、シリンダの液室内の圧力が低下してスクレーパがピストンおよび中空軸と一体に上昇し、ろ過部材のスクレーパ外周溝と対向する部位、すなわちスクレーパに逆洗される部位が上方へ移っていって、ろ過部材全体の異物除去を行うことができる。
【0011】
ここで、前記スクレーパは、円環状に形成し、前記排出流路の中央部を形成する複数のスポークで前記中空軸に取り付けるようにすることができる。また、前記円環状に形成したスクレーパは、前記ろ過部材の軸方向に対して傾斜させて配するようにしてもよい。
【0012】
また、前記ケーシングの流入口と流出口に圧力センサを取り付けて、前記両圧力センサで測定される流体圧の差に基づいて、前記排出弁を開閉させるようにすれば、異物除去作業の自動化が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のストレーナは、上述したように、円筒状のろ過部材の内面に対向するスクレーパの外周溝の内側空間とシリンダの液室とを連通させ、シリンダの液室に設けた排出弁を開くことにより、スクレーパがろ過部材を逆洗しながら上昇して、ろ過部材全体の異物除去を行えるようにしたものであるから、その異物除去機構を作動させるのに排出弁を開閉するだけの小さな外部動力しか必要としない。したがって、排出弁を電動で操作する場合には、従来の電動式のものに比べて異物除去作業を行う際の電力消費量を大幅に低減できるし、排出弁を手動操作する場合は、従来の手動式のものに比べて異物除去作業の際の労力が小さくてすむので、効率よく作業を行える。また、従来の電動式のものを手動化して、電源のないところに配設されているパイプライン等にも設置可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】
図1のストレーナの異物除去時の動作を説明する正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このストレーナは、
図1乃至
図3に示すように、上水や農業用水等の流体を流すパイプライン(図示省略)の途中に介設されるケーシング1と、ケーシング1内に縦置きされる円筒状の網かご(ろ過部材)2と、ケーシング1から上端部を突出させた状態で網かご2の中心に通され、上端のみが開放された中空軸3と、中空軸3の下端側の外周に複数のスポーク4で上下に取り付けられた2つの円環状のスクレーパ5、6と、中空軸3と同軸上に設けられ、中空軸3の上端部を収容するシリンダ7と、中空軸3の上端部の外周に取り付けられ、シリンダ7内の空間を上部の液室8と下部の気室9に仕切るピストン10とを備えている。そのシリンダ7は、液室8のシリンダポート7aに排出弁11が接続され、気室9のシリンダポート7bが開放されている。
【0016】
前記ケーシング1は、一端側(
図1の左側)に流入口1aが、他端側(
図1の右側)に流出口1bがそれぞれ形成されている。また、流れ方向の中央部分は、上部が中空軸3を昇降自在に支持する蓋部1c、下部が漏斗状の異物排出口1dとなっており、その異物排出口1dに下部排出弁12が接続されている。そして、その中央部分の内面には、環状の仕切り片1eが網かご2の上端側開口部の外周に密着するように突出形成されており、これによりケーシング1内の空間が上流側と下流側に仕切られている。
【0017】
前記網かご2は、その上端縁が軸方向に対して斜めに形成されており、ケーシング1の一端側が低くなる姿勢でケーシング1の中央部分に配置されて、ケーシング1の流入口1aから流出口1bへ流体をスムーズに流せるようになっている。なお、網かご2の下端縁は、環状の網かご取付部材13を介してケーシング1内面に固定されている。
【0018】
前記2つの円環状のスクレーパ5、6のうち、下側のスクレーパ6は網かご2(および中空軸3)と同心に配されているが、上側のスクレーパ5は網かご2の上端縁と平行に配され、後述するように上昇したときに網かご2の上部の高くなっている側も確実に異物除去できるようになっている。両スクレーパ5、6は、上側スクレーパ5の低くなっている側で互いに接着され、上側スクレーパ5の高くなっている側で網かご2の軸方向に延びる連結部材14により互いに連結されている。また、各スクレーパ5、6は、外周部が網かご2の内面に近接する寸法に形成されており、その外周部に網かご2の内面に対向する外周溝5a、6aが設けられている。
【0019】
そして、各スクレーパ5、6の外周溝5a、6aの内側空間は、各スクレーパ5、6と中空軸3を連結するスポーク4の中を通る排出流路15で中空軸3の中空部と連通されている。すなわち、排出流路15は、各スクレーパ5、6の外周溝5a、6aの底部から内周面までが入口部、中空軸3の外周面から内周面までが出口部となっており、その入口部と出口部の間の中央部がスポーク4によって形成されている。
【0020】
このストレーナは、上記の構成であり、通常運転時には、
図1に示したように、前記パイプラインの上流側からケーシング1の流入口1aに流れてきた流体が、ケーシング1の中央部で網かご2の内側に入り、網かご2を内側から外側に通過する際に異物を取り除かれて、網かご2の外側からケーシング1の流出口1bを通ってパイプラインの下流側へ流れていくようになっている。
【0021】
このときには、ケーシング1内の圧力が排出流路15および中空軸3の中空部を介してシリンダ7の液室8に伝わっており、この圧力をピストン10が受けることにより、ピストン10と一体に中空軸3および各スクレーパ5、6が下方へ押され、下側のスクレーパ6が網かご取付部材13に押し付けられた状態で停止している。
【0022】
そして、定期的にまたは網かご2の目詰まりの状況に応じて網かご2に付着した異物を除去しようとするときには、
図4に示すように、シリンダ7の排出弁11を開く。この排出弁11を開くと、
図5にも示すように、シリンダ7の液室8内の流体が外部へ排出されるのにともなって、網かご2の外側の流体が網かご2を逆洗して各スクレーパ5、6の外周溝5a、6aに流れ込み、この逆洗流体とともに異物が排出流路15、中空軸3の中空部およびシリンダ7の液室8を通って外部へ排出されるようになる。同時に、シリンダ7の液室8の圧力の低下によって、各スクレーパ5、6がピストン10および中空軸3と一体に上昇し、網かご2のスクレーパ外周溝5a、6aと対向する部位、すなわち各スクレーパ5、6に逆洗される部位が上方へ移っていって、網かご2全体が異物除去される。
【0023】
なお、上記のように各スクレーパ5、6が上昇する際には、その外周部によって網かご2から掻き落とされた異物がケーシング1の下部の異物排出口1dに溜まっていくが、溜まった異物は下部排出弁12を開くことにより容易に排出することができる。
【0024】
このストレーナは、上述したように、シリンダ7の液室8に設けた排出弁11を開くことにより、各スクレーパ5、6が網かご2を逆洗しながら上昇して、網かご2全体の異物除去を行うようにしたので、その異物除去機構(スクレーパ5、6)を作動させる外部動力は排出弁11を開閉するだけの小さな動力でよい。したがって、排出弁11および下部排出弁12を電動で操作する場合には、従来の電動式のものよりも異物除去作業を行う際の電力消費量を低減できるし、手動操作する場合は、従来の手動式のものよりも異物除去作業の際の労力が小さくてすみ、効率よく作業を行える。また、従来電動式であったものを手動化して、電源のないところに配設されているパイプライン等にも設置可能とすることができる。
【0025】
また、図示は省略するが、ケーシング1の流入口1aと流出口1bに圧力センサを取り付けて、両圧力センサで測定される流体圧の差に基づいて、排出弁11を開閉させるようにすれば、異物除去作業の自動化が容易に行えるようになる。その場合の下部排出弁12の操作は、電動でも手動でもよい。
【0026】
なお、上述した実施形態では、スポーク4で中空軸3に上下に取り付けられた円環状のスクレーパ5、6を用いたが、スクレーパは直接中空軸に取り付けられる円盤状のものとし、その内部に排出流路を形成するようにしてもよい。
【0027】
また、ろ過部材としての網かごは、上端縁を軸方向に対して斜めに形成した実施形態のものに代えて、両端縁とも軸方向に直交する一般的なものを用いることもできる。その場合、スクレーパは実施形態の下側のものだけを組込めばよいことになる。
【符号の説明】
【0028】
1 ケーシング
1a 流入口
1b 流出口
2 網かご(ろ過部材)
3 中空軸
4 スポーク
5、6 スクレーパ
5a、6a 外周溝
7 シリンダ
7a、7b シリンダポート
8 液室
9 気室
10 ピストン
11 排出弁
12 下部排出弁
15 排出流路