【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、パイプの製造方法を提供するものであり、この方法は、適当な支持部材(又は、支持体)上に
直接、粒子をコールドスプレーし、それによりパイプを作成することと、パイプを支持部材から分離することを含んでいる。もちろん、パイプに要求される性質に従うことを条件として、粒子は、支持部材上にパイプ構造を形成するため、コールドスプレーをすることのできる如何なる材料を含んでいてもよい。粒子は、一以上の金属、セラミック、ポリマー、複合材料又はこれらの材料の任意の二以上の組み合わせを含んでいてもよい。使用する材料の組み合わせを選択する時に、適合性(compatibility)の問題を、考慮する必要がある。
【0005】
コールドスプレーは、表面にコーティングを施すのに用いられている公知の方法である。一般的に言って、この方法は、(金属及び/又は非金属の)粒子を、高圧ガス流に送り込んだ後、この高圧ガス流に、このガス流を超音速に加速させる先細/末広ノズルを通過させること、または、粒子を、ノズルスロート後の超音速ガス流に送り込むことを含んでいる。次いで、粒子は、付着させる表面へと向けて送られる。この方法は、付着させる支持体及び粒子の融点よりも低い比較的低温で、粒子の支持体表面への衝突の結果としてコーティングが形成されながら、行われる。この方法が比較的低温で行われることが、被覆されている表面及びコーティングを形成している粒子に対する熱力学的、熱的及び/又は化学的影響を減少又は防止できるようにしている。これは、そうでなければ、プラズマ溶射、高速フレーム(HVOF)溶射、アーク溶射、ガスフレーム溶射又は他の溶射方法などの高温被覆方法に伴うことのある相変態等を生じることなしに、粒子の元来の構造及び性質を保つことができることを意味する。コールドスプレーの基本的な原理、装置及び手法は、例えば、米国特許第5,302,414号に記載されている。
【0006】
本発明の方法においては、支持部材の表面上にパイプ構造を作り上げるのにコールドスプレーが使用され、その後、独立の(free-standing)パイプ構造を製造するため、支持部材が取り除かれる。パイプの支持部材からの分離は、パイプ及び/又は支持部材を加熱又は冷却することによって行うことができる。ほかに、パイプの支持体からの分離は、支持部材を溶解、溶融又は蒸発させることによって、あるいは壊すことによって行うことができる。
【0007】
本発明に従い、粒子が適当な支持部材の表面上にコールドスプレーされる。ここで、支持部材の表面は、パイプの形の層を構築するため、上に粒子を付着させる表面であることが理解さるべきである。
【0008】
支持部材は、いろいろな形態をとることができる。そのため、一つの実施の形態では、支持部材は、マンドレルの形をとっている。この場合、マンドレルの外側表面は、製造するパイプの内側表面を画定することになる。マンドレルの横断面が円状である場合には、マンドレルの外径が、製造するパイプの内径に相当することになる。
【0009】
他の実施の形態では、支持部材は、成形された支持部材(即ち、モールド)の形をとることができる。この場合、本発明の方法は、モールドの表面上への粒子のコールドスプレーを含むものであり、ここで、モールドの内側表面が、製造する製品の外側表面を画定することが認められよう。そのため、支持部材が、支持部材を貫通して延びる空孔を有しており、その空孔の横断面が円状である場合には、空孔の内径が製造するパイプの外径に相当することになる。もちろん、適当に成形したモールドを使用することにより、他の可能性はあり得るが、製造するパイプは、横断面が円状であるのが典型的である。
【0010】
粒子で被覆する支持部材の表面は、製造するパイプの対応する表面の特性に影響を与える。被覆する支持部材の表面は、滑らかで欠陥がないのが望ましい。支持部材の表面特性は、コールドスプレーによるパイプの形成後に要求される加熱、冷却、溶解、溶融又は蒸発によって支持部材とパイプを分離することのできる容易さに影響する。アルミニウムのマンドレルは、例えば、水酸化ナトリウムを用いて溶解させることができる。
【0011】
被覆する支持部材の表面が滑らかで欠陥(例えば、擦り傷、くぼみ、あな、孔隙、ピンホール、夾雑物、マーキング等)がない場合には、製造したパイプの表面も、滑らかで欠陥がないはずである。かかるパイプは、パイプを通って輸送されているプロセス流体からの粒子のパイプの内側表面への付着が、流れの乱れやことによるとパイプの閉塞につながることがあるので、この付着を最小限にするのが望ましい懸濁液の移送に応用することができる。
【0012】
ある用途(例えば、熱交換器)においては、パイプの厚さを横切る熱伝達を最大限にするため、大きな表面積を有するパイプを用いるのが望ましい。熱伝達の大きさ及び/又は方向は、パイプのどの表面(内側及び/又は外側)を好適に大きな表面積を有するように設計するかに影響する。本発明は、大きな外側表面積を有するマンドレル又は大きな内側表面積を有するモールドを、コールドスプレーすることにより、それぞれ、大きな内側又は外側表面積を有するパイプの製造を可能にするものである。マンドレル又はモールドの表面は、パイプのそれぞれの表面上に複製されることになり、製造中のパイプにおける所望の表面積配置をもたらすことになる任意の構造的特徴を含むことができる。例えば、マンドレル又はモールドの表面は、パイプの対応する表面に大きな表面積を付与するため、一以上のフィンを備えていてもよい。かかるパイプは、従来の製造方法を用いて製造できるとは考えにくい。特に、チタン及び/又はチタン合金を含む本発明の表面積の大きなパイプは、熱交換器に用いるのに適している。
【0013】
本発明の潜在的な利点は、コールドスプレーによって付着させる組成物は、製造するパイプの長さに沿って及び/又は厚さを横切って変化させることができることである。このことは、製品の特徴の面から見て、適応性をもたらすことができる。例えば、反対側の端部において異なる溶接特性を有する金属製パイプを製造することであり、これは、異なる端部の間で組成を変えることにより達成できる。パイプの厚さを横切って組成を変えることも、望ましいことがある。例えば、ニッケル密度の高い内側領域と、それよりもニッケル密度の低い(おそらくより廉価な)物質を外側領域に有するパイプを提供することが望ましいことがある。
【0014】
パイプの組成を変えるのに、幾つかの異なるアプローチが可能である。パイプの性質(例えば、熱膨張係数)が、パイプの長さに沿って及び/又は厚さを横切って変化することが望ましければ、パイプの組成を変化させればよい。したがって、パイプは、異なる材料の個々に区別できる長さ及び/又は層を備えていてもよく、あるいは、パイプの組成を、パイプの長さに沿って及び/又は厚さを横切って徐々に変化させてもよく、あるいは、パイプは、これらの構成の組み合わせを備えていてもよい。
【0015】
複数の材料からパイプを製造する場合には、異なる材料の適合性を考慮しなければならない。もしも、二以上の候補材料が、何らかの点で(例えば、密着性/結合性)不適合であれば、それらの不適合な材料を、互いに適合する材料の一以上の領域によって隔てることが必要な場合がある。そのほか、使用する材料の間の不適合性の問題を緩和するため、一つの材料から次の材料へと組成を徐々に変化させる様にパイプを製造することができる。
【0016】
本発明は、二以上のはっきり区別できる層を備え、個々の層が、化学的に(粒子の組成を変えればよい)及び/又は物理的に(用いる粒子の大きさ、充填密度(packing density)等を変えればよい)異なるパイプの製造手段を提供するものである。最内層と最外層の材料の選択は、パイプの意図する用途並びにパイプの内側及び外側表面が使用の間に曝されるプロセス流体によって決定されるのが一般的である。そのため、内側及び/又は外側表面が、耐蝕性又は耐摩耗性であるパイプを製造するのが望ましいことがある。パイプの層の特性が重要でない場合には、この層を、比較的廉価な材料を用いて形成し、それにより、費用対効果を高めることができる。チタン及びニッケル(及びそれらの対応する合金)を、それぞれ、酸性及びアルカリ性のプロセス流体に対する耐蝕性をもたらすのに用いることができる。タングステン及び/又は炭化タングステンを、摩耗性のプロセス流体に対する耐摩耗性をもたらすのに用いることができる。より廉価な材料は、アルミニウム、銅及び/又は亜鉛を含んでいてもよい。
【0017】
比較的小さな直径を有する多層パイプの製造には、レイヤー・バイ・レイヤーのアプローチが特に役に立つ。例えば、チタンの内側層と異なる材料の外側層とを有する小さなパイプを考える。かかるパイプを、チタンで既成のパイプをコールドスプレーすることによって製造することは、コールドスプレーノズルが、大きすぎてパイプの空洞を通って移動することができない場合には、きわめて困難である(不可能でさえある)ことが分かるであろう。しかしながら、本発明によれば、チタンの均一な層をマンドレル(このマンドレルの外径が、パイプに要求される内径に相当する)にコールドスプレーし、次いで、異なる材料の均一な層をチタンで被覆したマンドレルにコールドスプレーした後、マンドレルを取り除いて多層パイプを得ることによって、かかるパイプを製造することができる。種々のプロセスパラメーターの精密な制御が、パイプ壁を構成する異なる層の間の好適な付着を可能にするものである。
【0018】
本発明においては、パイプの材料は、チタン又はチタン合金を含んでいるのが好ましい。チタンのパイプは、強くて耐蝕性であり、地上、地下及び海中で水、油、ガス及び種々の薬品を移送するための優れた候補である。本発明のコールドスプレー方法を用いたチタンパイプの製造は、厳格な性能要件を満たすことが分かっており、従来の高温パイプ製造法に対する低費用の代替の要求を満たすものである。
【0019】
支持部材上にパイプを形成した後、支持部材とパイプを分離する必要がある。一つの実記の形態では、支持部材の材料とパイプを形成する材料との間の熱膨張係数の違いに起因して分離が生じる(コールドスプレーは、支持部材の局部的な加熱を引き起こすことがある)。したがって、支持部材がマンドレルの形をとっている場合には、マンドレルの外側表面上に形成されたパイプから離れる方向へのマンドレルの収縮によって分離を達成することができる。この場合、マンドレルの熱膨張係数は、製造するパイプの熱膨張係数よりも大きいように選択される。コールドスプレーの開始前に、支持部材を加熱することも有益である。
【0020】
他の実施の形態では、支持部材がモールドの形をとっている場合には、パイプの材料が、モールドの材料よりも高い膨張係数を有しているときに、モールドからのパイプの分離を行うことができる。モールドは、溶解、溶融又は蒸発させることのできるワックス又は低融点金属から作ることができる。この場合、冷却すると、パイプの外側表面が、モールドの内側表面から離れる方向に収縮する。
【0021】
支持部材の材料は、製造するパイプの材料に基づいて選択することができる。本発明の一つの実施の形態では、支持部材がマンドレルの形をとっており、パイプの材料がチタン粒子を含んでいる場合には、マンドレルは、ステンレス鋼から形成することができる。
【0022】
他の実施の形態では、支持部材とパイプの分離は、支持部材を壊すことによってなされてもよい。この場合、支持部材は、支持部材の表面上にパイプが形成できるよう、適当に堅くて耐熱性であるが、支持部材とパイプの分離が必要なときに、支持部材を壊して取り除くことができるよう、適当に壊れやすいセラミック材料から形成することができる。
【0023】
本発明の一つの実施の形態では、コールドスプレーする粒子の平均粒径は、支持部材上に結果として形成される付着物の密度、したがって形成されるパイプの密度に影響を与え易い。付着物は、稠密で、欠陥、結合した微少ボイド(漏れ)等がないのが好ましい。かかる欠陥等の存在は、結果として得られるパイプの質にとって有害になることがあるからである。コールドスプレーによって付着させる粒子の粒径は、平均粒径が25ミクロンで、5〜45ミクロンであるのが典型的である。当業者は、粉の形態及び形成するパイプの特性に基づいて、用いる最適な粒径又は粒径分布を決定することができるであろう。本発明で用いるのに適した粒子は、商業的に入手可能なものである。
【0024】
コールドスプレー法の作業パラメータは、所望の特性(密度、表面仕上げ等)を有するパイプを得るため、操作することができる。したがって、温度、圧力、スタンドオフ(コールドスプレーノズルと被覆する支持部材表面との間の距離)、粉末供給速度及び支持部材とコールドスプレーノズルとの相対運動などのパラメータを、必要に応じて調節することができる。一般に、粒径及び粒径分布が小さいほど、支持部材の表面上に形成される層は稠密になる。より高い粒子速度及びより稠密な微細構造を達成するために用いるより高い圧力及びより高い温度を達成可能にするため、又は粒子の予備加熱を実施可能にするため、用いるコールドスプレー装置を改造するのが適当なことがある。
【0025】
本発明の方法を実施するのに用いる装置は、概して従来型のものであり、かかる装置は、市販のものでも個別に造られたものでもよい。概括的に言えば、コールドスプレーに用いる装置の基本構造は、これから述べる通りであり、米国特許第5,302,414号において説明されている。かかるコールドスプレー装置は、必要に応じ、支持部材を保持し操作するための装置と組み合わせてもよい。例えば、支持部材がマンドレルの形をとっている場合には、マンドレルに沿って軸方向に移動する付着物を有するマンドレルを回転させるのに、旋盤を用いてもよい。この場合、ノズルの軸方向の運動と組み合わせたマンドレルの回転は、パイプを製造するために支持部材上に付着物を蓄積させる役割を果たしている。かなりの長さ、肉厚及び/又は直径のマンドレルをコールドスプレーするのに、複数のノズルを直列に用いてもよい。複数のノズルの使用は、製造工程をスピードアップもする。
【0026】
本発明に従ってパイプを製造した後、パイプを、サイジングし、仕上げをしてもよい。例えば、固定荷重をパイプの外側表面にかける適当なローラーを用いて、パイプを圧延してもよい。圧延は、仕上げ前のパイプのサイジングのための手段も提供することができる。パイプの表面は、エンドユーザーの仕様により、研削し、機械加工し又は磨いてもよい。
【0027】
コールドスプレーの間にパイプの圧延を実施することも可能であり、又は、圧延(仕上げ)工程を完全に省略することも可能である。
【発明の効果】
【0028】
従来のパイプ製造方法と比較して本発明の方法による利点は、以下の通りである。
1.種々の等級及び組成のパイプを、溶融することなしに、粉末から直接製造することができる。
2.製造するパイプの直径が、用いた支持部材の大きさのみによって限定される。
3.本方法は、通常、製造するパイプの肉厚に限定をかけない。
4.パイプを製造するのに広く用いられている高価なダイ(dies)、あるいは鍛造、ロール成形、溶接又は押し出し装置を必要としない。
5.本方法は、いろいろなパイプの材料(例えば、金属、セラミック、ポリマー、複合材料及びそれらの混合物)に適用可能であり、種々の用途に適合するよう勾配微細構造(graded microstructure)の製造に適用可能である。
6.コールドスプレーの間、雰囲気制御が不要である。